JP3686399B2 - 抄紙機のセーブオールパン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溝付きプレスロールにより加圧して湿紙から搾水した白水を回収する、抄紙機のセーブオールパンに関する。
【0002】
【従来の技術】
抄紙機では、ワイヤパートで形成された湿紙は、プレスロールによりフェルトを介して加圧され搾水される。このようなプレスロールとしては、周面に螺旋状に溝が形成された溝付プレスロールが広く使用されており、上記溝により、加圧の際に湿紙から搾水された白水をプレスフェルトから逃がすようにしている。
【0003】
湿紙から搾水された白水は、上記ニップ部の出口側(湿紙走行方向下流側)で、溝付プレスロール周面における接線方向よりも僅かに溝付プレスロール側に傾斜した方向に飛散する。このような白水の飛散量は、溝付プレスロールの回転方向下流側になるにしたがって急激に増加するが、やがて次第に減少していく。
溝付プレスロールの溝内に溜まった白水の一部は、ニップ部から離れたロール回転方向下流側においてもロール周面からミスト状となって飛散する(以下、ミスト状の白水を白水ミストという)。抄紙機の高速運転時、即ち溝付プレスロールの高速回転時においては、ニップ部から約90゜回転方向下流側においても未だ、溝付プレスロールから白水ミストが飛散する。
【0004】
ニップ部を通過したプレスフェルトはやがて上記ニップ部の入側(湿紙走行方向上流側)にリターンして再び湿紙の搾水を行なうが、ニップ部の出側において、飛散した白水がこのプレスフェルトに吸収されてしまうと上記のニップ部の入側でのプレスフェルトの含有水分の増加を招くこととなり、この結果、ニップ部でのプレスフェルトによる搾水性能が低下してしまうこととなる。
【0005】
このため、例えば米国特許4,976,821号公報に開示されているように、溝付プレスロールのニップ部出側にセーブオールパンを配設して、溝付プレスロールやプレスフェルトから飛散した白水をこのセーブオールパンにより回収させることが広く行なわれている。
【0006】
図12及び図13に、具体的なセーブオールパンの従来の配設例を示す。
図12に示す例では、湿紙4を協働して加圧するプレスロール1,2の内、ボトムプレスロール1が溝付プレスロールとして構成されている。溝付プレスロール1の下方にこの溝付プレスロール1を囲うようにしてセーブオールパン5が配設され、また、溝付プレスロール1の相手側のトッププレスロール2にプレスフェルト3を僅かにラップさせている。セーブオールパン5に回収された白水は、セーブオールパン5内の排水口6から機外に排出される。
【0007】
このように、プレスフェルトを溝付プレスロールの相手側のプレスロールに僅かにラップさせる目的は二つあり、第一の目的は湿紙4をロール2に付着させ移送する事である。第二の目的は、溝付プレスロール1の出口においてプレスフェルト3との間の空間を広めにして、セーブオールパン5をプレスフェルトの上部に近接して配置することであり、これにより、溝付プレスロール1から脱水された白水は水平あるいは若干下向きに飛散するので、プレスフェルトからの白水をセーブオールパンにより効率的に回収できるようになる。
【0008】
一方、図13に示す従来例では、湿紙10を協働して加圧するプレスロール7,8の内、トッププレスロール7が溝付プレスロールとして構成されており、ニップ部出側の溝付プレスロール7側にセーブオールパン11が配設され、また、ボトムプレスロール8にプレスフェルト9を僅かにラップさせている。セーブオールパン11に回収された白水は排水口13から機外に排出される。図13中の符号12はビニールシートであり、このビニールシート12により溝付プレスロール7を囲うような空間を形成させている。この空間内には図示しない排気ファンが設置されており、空間内即ち溝付プレスロール7の周囲の白水ミストをこの排気ファンにより吸引させ排出している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように、図12及び図13に示す技術では、プレスフェルト3,9を、溝付プレスロール1,7の相手側のプレスロール2,8にラップさせるようにしているが、これは、ニップ部下流側でプレスロール2,8に巻き付けられる湿紙4,10に、ニップ部を通過してからもプレスフェルト3,9を接触させておくこととなり、この結果、プレスフェルト3,9に吸収された白水が湿紙4,10に戻る「再湿潤現象」が生じてしまう。このため、プレスフェルト3,9のプレスロール2,8に対するラップ角度はできるだけ小さく設定されている。
【0010】
このため、図12に示すような溝付きプレスロール1がボトム側に配設されるケースでは脱水された白水は下方に流れる為に問題ないが、図13に示すような溝付きプレスロール7がトップ側に配設されるケースでは、上記ラップ角度を大きく取れないため、トップロールで脱水された白水を貯めるセーブオールパンの深さを取り難く設計が難しく、また、抄紙速度が高くなると白水ミストが多量に発生するため、プレス配置(プレスロール7,8の位置関係)が大きく制約されることがあった。
【0011】
つまり、図13に示すような溝付きプレスロール7がトップ側となる配置では、白水は溝付きプレスロール7回転方向即ち上方へと飛散するようになるため、セーブオールパン11により回収しづらくなる。プレスフェルト9のボトムプレスロール8に対するラップ角度を大きくしてプレスフェルト9をニップ部出側で下方に傾斜させて走行させれば、白水の飛散する方向を下方に向けることは可能であるが、上述したように再湿潤現象が生じるため好ましくない。このため、特に高速抄紙機では搾水される白水量が通常抄紙機よりも多いため、白水を効果的に回収できるよう、白水がなるべく下方に飛散するように、加えて、セーブオールパンの深さを取れるように、溝付きプレスロール7がドライエンド側に傾むくような(ニップ部がドライエンド側に偏るような)配置に制約されることがあったのである。
【0012】
また、抄紙速度が高くなるとロール周面から多量の白水ミストが発生していた。白水ミストには、僅かながら微細な紙繊維などの固形成分が含まれているので、長時間にわたる運転の後では、プレスロールの周囲一帯の各種機器やフレームなどに上記固形物が堆積してしまう。この固形堆積物が上記各種機器などから剥離して落下しても、図12に示すように溝付きプレスロール1がボトム側にあってセーブオールパン5がこの溝付きプレスロール1の下部を全面的にカバーするような構成であれば、上記固形物はセーブオールパン5により回収されるので問題ないが、図11に示すように溝付きプレスロール7がトップ側にあってセーブオールパン11がこの溝付きプレスロール7の極一部しかカバーできないような構成であれば、上記固形堆積物がプレスフェルト9上に落下してしまい、この固形堆積物が、ニップ部に入ってプレスフェルト9の損傷(いわゆるWAD BURN)を引き起こす虞がある。このため、図13に示す例では、上述したようにビニールフィルム12で溝付きプレスロール7を可能な限り覆うとともに、このビニールフィルム12などにより囲われて成る空間に図示しない排気ファンを設置して白水ミストを排出している。しかし、この排気ファン自体や、排気ファンに接続される排気系統(ダクトや排出口周辺)などにも白水ミスト中の固形成分が付着し、これを除去するのに手間が掛かる。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、溝付きプレスロールの配置にかかわらず白水を回収・排気でき、さらに、ハンドリング性の悪い白水ミスト回収系統の不要な、抄紙機のセーブオールパンを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の抄紙機のセーブオールパンは、対向して配設された溝付きプレスロールとプレス手段とのニップ部において該溝付きプレスロールの下流側に配設され、該ニップ部で加圧された湿紙から搾水された白水を回収する、抄紙機のセーブオールパンであって、ガイド部と、サイクロン部と、排水部とをそなえて構成されたことを特徴としている。
【0015】
該ガイド部は、該ニップ部に面して設けられ、ニップ部の下流側で飛散する白水及び白水ミストを、該溝付きプレスロールの伴流空気と一体に該溝付きプレスロールの周面に沿って案内するものであり、該溝付きプレスロールの周面と、該溝付きプレスロールの周面に沿った曲面状の断面を有し、該溝付きプレスロールに対し所定の間隔をあけて配設されたガイド部材との間に形成されている。
該サイクロン部は、旋回通路と排気部とを有している。該旋回通路は、該ガイド部の後端に前端を接続されるとともに該溝付きプレスロールの回転方向とは逆方向に旋回するように形成され、遠心力を利用して、該白水,該白水ミスト及び伴流空気の混合体を白水と空気とに分離するものである。該排気部は、該旋回通路の後端に接続されるとともに該旋回通路の内側に形成され該空気を排気するためのものである。
該排水部は、該サイクロン部の下方において該旋回通路に接続され、該白水を排出するためのものである(以上、請求項1)。
【0016】
例えば、該ガイド部は、溝付きプレスロールの周面と、該ガイド部材と、該ガイド部材よりも該溝付きプレスロールの回転方向下流側で該溝付きプレスロール周面に摺接する摺接部材との間に形成される(請求項2)。
【0017】
この場合、該摺接部材の該ガイド部に向き合う面に洗浄用の液体を噴射する液体噴射手段が該ガイド部内にそなえられていることが好ましい(請求項3)。
或いは、該ガイド部は、該ガイド部材と、溝付きプレスロールの周面との間に形成され、該ガイド部の下流端に、該溝付きプレスロールの回転方向とは逆方向に該溝付きプレスロールに対して気体を噴射する気体噴射手段がそなえられる(請求項4)。
【0018】
この場合、該溝付きプレスロールに対する該気体噴射手段の姿勢及び/又は距離を調整する調整手段がそなえられていることが好ましい(請求項5)。
さらに、該気体噴射手段により該溝付きプレスロールに向けて噴射された該気体を、該溝付きプレスロールから跳ね返った後、該旋回通路内の該混合体の流れ方向と略同方向に案内する噴射気体ガイド部材が、該溝付きプレスロールに対して隙間をあけて配設されることが好ましい(請求項6)。
【0019】
この場合、該噴射気体ガイド部材が、該ガイド部を流れる該混合体を該旋回通路へ案内する混合体案内面と、該溝付きプレスロールから跳ね返った該気体を該旋回通路内の該混合体の流れ方向と略同方向に案内する気体案内面と、該溝付きプレスロールに向き合うロール対向面とを有することが好ましい(請求項7)。さらに、該噴射気体ガイド部材に、先端が該溝付きプレスロールに摺接する摺接部材が取り付けられ、該噴射気体ガイド部材が、内部が中空の箱形状に形成されるとともに、該ロール対向面に、該中空と連通するノズル穴が設けられ、該中空に洗浄用の液体を供給することにより該ノズル穴から該溝付きプレスロールに上記の洗浄用の液体を噴射させ、該溝付きプレスロールから跳ね返った上記の洗浄用の液体により、該摺接部材及び該噴射気体ガイド部材を洗浄するように構成されることが好ましい(請求項8)。
【0020】
また、該旋回通路を形成する壁面であって外方に面する壁面に開閉可能な蓋部がそなえれらていることが好ましい(請求項9)。
【0021】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態
図1及び図2は本発明の第1実施形態としての抄紙機のセーブオールパンについて示す図であり、図1はその構成を示す側面視による模式的断面矢視図、図2(a)はその構成を示す模式的な背面図(湿紙搬送方向下流側から見た図)、図2(b)はその構成を示す模式的側面図である。
【0022】
先ず、本発明の第1実施形態としてのセーブオールパン19が装備されるプレス装置について説明すると、このプレス装置は、図1に示すように、トッププレスロール14にプレスフェルト16が掛け渡され、ボトムプレスロール(プレス手段)15に不透水ベルト17が掛け渡されており、湿紙18は、プレスフェルト16と不透水ベルト17とに挟まれた状態で、プレスロール14,15のニップ部で加圧され搾水されるようになっている。トッププレスロール14は、溝付きプレスロールであり、図中に破線で示すような略周面に沿って形成された溝が軸方向に連なるように形成されている。また、この溝付きプレスロール14は、その外周面をニップ部に対し加圧するシュープレス装置をその内部にそなえたシュープレスロールでもある。
【0023】
そして、ニップ部の出側(プレスフェルト16,不透水ベルト17及び湿紙18の進行方向下流側)には、ニップ部において飛散する白水や、ニップ部よりも回転方向下流側(図1中左側)で溝付きプレスロール14の周面から飛散する白水ミストを回収すべく、本セーブオールパン19が配設されている。
セーブオールパン19は、溝付きプレスロール14の軸長よりも大きな幅に形成されており、図2(a)に片側だけ示すが、ロール14,15よりも軸方向(機械幅方向)外側に位置する側板19f,19fに、後述するプレート状の部材19a〜19eを掛け渡すようにして構成されている。以下、部材19a〜19eについて説明する。
【0024】
図1に示すように、ガイド部材19aは、溝付きプレスロール14に面して設置され、溝付きプレスロール14の周面に略沿った曲面状の断面を有し溝付きプレスロール14に対し所定の間隔をあけて配設される上流部19aaと、プレスロール14の回転中心軸Oと平行な軸心線Oを中心として溝付きプレスロール14の回転方向とは逆方向に湾曲する略円弧状の断面を有する下流部19abとをそなえている。
【0025】
また、ガイド部材19aの外側には、セーブオールパン19の前後方向(図1中左右方向)の外壁をなすカバー部材19bがそなえられている。カバー部材19bは、ガイド部材19aの下流部19abと同様に、軸心線Oを中心とした略円弧状の断面を有しており、下流部19abに対し所定の間隔をあけて配置されている。カバー部材19bは、その一端19baと溝付きプレスロール14の周面との間に隙間をあけて配置され、上記一端19baにはシールリップ(摺接部材)20が取り付けられている。シールリップ20は、可撓性の素材(例えばゴムなど)により形成され、その先端を溝付きプレスロール14の周面に摺接させている。ここでは、シールリップ20とプレスロール周面との接触位置は、溝付きプレスロール14の回転位相でニップ部よりも約90度下流側に設定されている。
【0026】
さらに、ガイド部材上流部19aaの中間部には突設部材19dがカバー部材19bに向けて突設されている。この突設部材19dのカバー部材19b側の端部19daはフリーとなっており、カバー部材19bの他端19bbに対し隙間19cが形成されている。また、突設部材19dは、カバー部材19bに対し、略同軸且つ略同一半径の円弧状の断面を有している。
【0027】
加えて、ガイド部材19aの上流部19aaの先端とカバー部材19bの端部19bbとの間には、カバー部材19eが掛け渡されており、部材19a,19d,19e,19fにより形成される空間Cが、後述するように白水を回収するための白水ヘッダ(排水部)として機能することとなる。
このような構成により、溝付きプレスロール14,部材19aa,19f,20により形成される空間Aから本発明のガイド部が構成され、ニップ部出側から飛散する液状の白水及びニップ部よりも下流側で飛散する白水ミストが、溝付きプレスロール14の回転に伴う伴流空気と一体に、上記ガイド部Aにより、部材19b,19ab,19d,19fにより形成される本発明のサイクロン部Bへと案内されるようになっている。この際、白水,白水ミスト及び伴流空気との混合体は、シールリップ20によりシールされ、セーブオールパン19の外部への漏洩が防止されるようになっている。
【0028】
溝付きプレスロール14は上述したようにシュープレスロールであって、ロールの表面はスリーブ状のブランケットで構成され、このブランケットはニップ部でロール内部からシューで加圧される。ブランケットは空気で内部加圧されているが可撓性があるので回転する際に振れまわり(ワブリング)を起こす。この振れまわりを許容すべく、シールリップ20は上述したように可撓性を有して変形容易な素材により構成されている。
【0029】
サイクロン部Bは、主に部材19b,19ab間に形成される旋回通路Baと、主に部材19abの内側に形成される排気ヘッダ部(排気部)Bbとをそなえている。ガイド部Aにより案内された空気と白水との混合体は、旋回通路Baを通過する際、部材19b,19abの周面に沿って旋回し、この際、遠心力の作用により、その比重の差によって空気と白水とに分離されるようになっている。つまり、上記混合体の内、比重の大きな白水は大きな遠心力を受けて旋回通路Baの外周側の壁面、即ちカバー部材19bの内壁面に押し付けられて液膜となり、一方、比重の小さな空気は旋回通路Baに沿ってそのまま進むこととなり、この結果、空気と白水とに分離されるようになっているのである。
【0030】
そして、カバー部材19bの内壁面に付着した白水は、壁面を伝って隙間19cを通って下方の上記白水ヘッダCへと流下する。この白水ヘッダCには白水排出口21が設けられており、白水ヘッダC内に回収された白水はこの白水排出口21を通って外部へ排出されるようになっている。
一方、白水から分離した空気は、突設部材19dに案内されて上記排気ヘッダ部Bbへと進むようになっている。この排気ヘッダ部Bbには図示しない排気ファンが取り付けられており、この排気ファンにより排気ヘッダ部Bb内の空気が排気されるようになっている。
【0031】
ガイド部Aの流路断面積(白水などの進行方向に対して垂直となる断面)は、白水がガイド部材19aに付着し流下してガイド部Aから出ていってしまわないように白水などの流速が十分なものとなるように設定される。また、旋回通路Baの流路断面積は、白水やエアの混合体に十分な遠心力を付与して分離できるように、上記混合体の流速が十分なものとなるように設定されるものである。
【0032】
また、排気ヘッダ部Bbに取り付けられる排気ファンの容量は、このように設定された流速でガイド部Aや旋回通路Baを通って排気ヘッダ部Bbに流入するエアを滞りなく排出できるよう設定される。
また、ガイド部Aの流路深さ(換言すればガイド部材上流部19aaと溝付きプレスロール14の最外周面との隙間寸法)dは、5mmから100mm、好適には10mmから50mmである。これは、本実施形態のように溝付きプレスロールがシュープレスの場合、回転するスリーブ状のブランケットの振れ回りを考慮して上記深さdは少なくとも5mm以上必要であり、上記深さdが100mm以上になると、旋回通路Baで白水やエアの混合体を気液分離するのに十分な流速を確保できなくなったり、排気ヘッダ部Bbに取り付けられる排気ファンの容量が過大になったりしてしまうためである。
【0033】
さて、図2(a)に示すように、カバー部材19bには、サイクロン部Bの旋回通路Baに面して、機械幅方向(=ロール14,15の軸方向)に沿って長い開閉可能な清掃・点検用の蓋部24が、上記機械幅方向に複数並設されている。これらの蓋部24を開ければ旋回通路Baの内部点検や清掃を行なえるようになっている。なお、蓋部24はここではスイング式で構成されているが、取り外し式のものであっても良い。
【0034】
さらに、図2(b)に示すように、側板19fの少なくとも一方には、排気ヘッダBbに面して開閉可能な清掃・点検用の蓋部25が設けられ、白水ヘッダCに面して開閉可能な清掃・点検用の蓋部26が設けられている。蓋部25を開ければ排気ヘッダBbの内面の点検・清掃が行なえ、また、蓋部26を開ければ白水ヘッダCの内面の点検・清掃が行なえるようになっている。なお、蓋部25,26はここではボルト締めにより側板19fに固定された取り外し式のもので構成されているが、スイング式のものであっても良い。
【0035】
本発明の第1実施形態としてのセーブオールパンは上述したように構成されているので、溝付きプレスロール14がトップ側に配置されている場合において、溝付きプレスロール14が略ボトムプレスロール15の鉛直上方に配置されているような場合であっても、白水をガイド部15Aによりセーブオールパン19内に案内して回収することができる。つまり、本セーブオールパン19を装備すれば、プレスロール14,15の位置関係の制約がなくなり、プレスロールを上下鉛直方向に並べて配置できるようになり、このようなロール及び周辺機器の配置の統一・単純化を図ることができ、設計コストや製造コストの低減や組立精度の改善を図ることが可能となる。
【0036】
また、ニップ部出側から飛散する液状の白水だけでなく、ニップ部から下流側に離れたロール周面より飛散する白水ミストを回収することができる。白水ミスト(白水と空気との混合体)は、サイクロン部Bを通過する際に空気と白水とに分離され、別々に回収されるので、上述した従来技術で問題となっていた白水ミストに起因したWAD BURNや断紙が大幅に低減できる。また白水ミストの排出系統(ダクト,ファン及び排気口周辺)の白水ミストによる汚染などを未然に防止できる。
【0037】
(2)第2実施形態
図3は本発明の第2実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。なお、上述した第1実施形態で説明した部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
セーブオールパン19Aに入る白水量が少ない場合には、シールリップ20の内面(ガイド部材19aに向き合う面)には白水ミスト中の固形成分が堆積することがある。本発明の第2実施形態としてのセーブオールパン19Aには、シールリップ内面を洗浄して固形成分の堆積を抑制するためのシールリップ洗浄シャワー(液体噴射手段)27が取り付けられている。
【0038】
シールリップ洗浄シャワー27は、パイプ状のシャワー本体27aと、このシャワー本体27aに機械幅方向に沿って適宜の間隔をあけて複数設けられたノズル部27bとをそなえて構成されており、ノズル部27bをシールリップ20に向けてガイド部材19aに取り付けられている。シャワー本体27aの内部には、外部から洗浄用の水が供給されるようになっており、この水がノズル部27bからシールリップ20に噴射され、シールリップ20が洗浄される。シールリップ洗浄シャワー27からの水の噴射は連続的に行なっても良いし、間欠的に行なっても良い。噴射を連続的に行なうのであれば、単位時間当たりの水消費量の少ないミスト状シャワーでも良い。
この他は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0039】
本発明の第2実施形態としてのセーブオールパン19Aは上述したように構成されているので、シールリップ20への固形物の堆積が抑制され、したがって本セーブオールパン19Aによれば、運転中の固着物の付着が低減され停機時の掃除時間の短縮を図ることができるようになる。
【0040】
(3)第3実施形態
図4〜図8は本発明の第3実施形態としての抄紙機のセーブオールパンについて示す図であり、図4はその構成を示す側面視による模式的断面矢視図、図5はエアジェットノズル(気体噴射手段)の構成の一例を示す図であって、(a)はその模式的な横断面図、(b)は(a)のX矢視図、図6はエアジェットノズル(気体噴射手段)の構成の一例を示す図であって、(a)はその先端の模式的な横断面図、(b)はその先端の模式的な断面斜視図、図7はエアジェットノズル(気体噴射手段)の構成の一例を示す図であって、(a)はその先端の模式的な横断面図、(b)は(a)のY矢視図、図8はエアジェットノズルの調整手段の構成を示す図であって、(a)はその模式的な側面図、(b)は(a)のZ矢視図である。なお、上述した各実施形態で説明した部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0041】
本発明の第3実施形態としてのセーブオールパン19Bでは、上述した第1及び第2実施形態のセーブオールパンに対し、ガイド部Aの下流端、即ち、カバー部材19bの上流端19baと溝付きプレスロール14との間の隙間にシールリップ20を取り付ける代わりに、図4に示すように、上記下流端にエアジェットを吹き付けるエアジェットノズル(気体噴射手段)28が使用される。
【0042】
また、カバー部材19bの先端部19baは、一対の金属板29a,29bを有するヒンジ29により、カバー本体(カバー部材19bの先端部19ba以外の部分)19bcに接続されている。先端部19baは金属板29aに固定される一方、金属板29bはカバー本体19bcに固定されており、先端部19baはカバー本体19bcに対し外方(ガイド部材19aから離隔する側)に傾動可能な可動型リップとして構成されている。この可動型リップ19baを外方に傾動させることにより、この可動型リップ19baの清掃を行なえるようになっている。
なお、可動型リップ19baを開放する際には、エアジェットノズル28を、後述の調整手段により可動型リップ19baから離隔させる。
【0043】
上記エアジェットノズル28は、機械幅方向に沿って長いスリット状の開口部28aを有しており、外部から供給された圧縮空気がこの開口部28aからエアジェットとして噴射されるようになっている。このエアジェットは、溝付きプレスロール14の回転方向とは逆らうような方向に噴射されるようになっており、溝付きプレスロール14の伴流空気とミストとの混合体と衝突して、この結果、シールリップ20の代わりに、溝付きプレスロール14の振れまわりを許容しつつ上記混合体がガイド部Aから漏洩することを防止するようになっている。
【0044】
さらに、このエアジェットは、溝付きプレスロール14の周面、特に溝の中をフラッシングすることができ、溝付きプレスロール14の周面は次にニップ部に到達する前に溝内の水分(白水)を除去されるようになっている。
なお、図5(a),(b)に示すように、波形の板28bを開口部28aの介装しても良い。これにより、エアジェットノズル28の開口部28aの隙間寸法tを機械幅方向が一定とされ、また、空気流(エアジェット)が整流されるようになる。
【0045】
又は、図6(a),(b)に示すように、上記隙間寸法tを規定するためのピン部材28cを機械幅方向に等間隔をあけて開口部28aに複数取り付けるようにしても良い。
或いは、図7(a),(b)に示すように、エアジェットノズル28の先端に、細孔28dを機械幅方向に等間隔をあけて複数設けた構成としても良い。
【0046】
さて、ここでは、上記エアジェットノズル28には、図8に示すように、機械幅方向に平行な4つの回転中心軸P,Q,R,Sを頂点とする可変四辺形構造をベースとするリンク機構(調整手段)がそなえられており、このリンク機構により、エアジェットの溝付きプレスロール14に当たる角度(=エアジェットの噴射方向)や、セーブオールパン19Bに対する噴射位置(=開口部28aの位置)を調整できるようになっている。
【0047】
図8(a),(b)に示すリンク機構は、図示するように流体圧シリンダ33,34を有している。流体圧シリンダ33はエアジェットノズル28に対し操作側と駆動側に(つまり機械幅方向両端部に)それぞれ1つずつ設けられており、これらの2つの流体圧シリンダ33は常に駆動ロッドのストローク長が互いに等しくなるように同期制御される。同様に、流体圧シリンダ34はエアジェットノズル28に対し操作側と駆動側にそれぞれ1つずつ設けられており、これらの2つの流体圧シリンダ34は常に駆動ロッドのストローク長が互いに等しくなるように同期制御される。
【0048】
なお、流体圧シリンダ33,34の代わりにウォームジャッキを使用しても良く、この場合、対をなして機械幅方向両端部に設けられるウォームジャッキをクロスシャフトで連結して同期制御するよう構成すればよい。
流体圧シリンダ33の本体33aは、装置フレーム50に上記軸心線Qを中心に回転可能にピン結合され、また、その駆動ロッド先端33bには、エアジェットノズル28の後端(エアジェット噴射方向において開口部28aとは反対となる端部)28bが上記軸心線Pを中心に回転可能にピン結合されている。
【0049】
一方、流体圧シリンダ34の本体34aは、装置フレーム51に回転可能にピン結合され、また、その駆動ロッド先端34bは、部材60〜63を介して、エアジェットノズル28の開口部側方に上記軸心線Sを中心に回転可能にピン結合されている。リンク部材60は、2つのアーム60a,60bを有し、これらのアーム60a,60b間の基部60cを、装置フレーム52に上記軸心線Rを中心に回転可能にピン結合されている。そして、上記アーム60aは、流体圧シリンダ34の駆動ロッド先端34bに回転可能にピン結合される一方、上記アーム60bは、円筒状部材61に固定されている。
【0050】
円筒状部材61の内部には、上記軸心線Sを共通の軸心線として、円筒状部材61の内径よりも僅かに小さな外径の円筒状部材62の一端が挿入されており、円筒状部材62は軸心線Sを中心に円筒状部材61に対し回転可能な構成となっている。円筒状部材62は、そのエアジェットノズル28側の端部の外周面に接続用部材63が固設されており、この接続用部材63を介してエアジェットノズル28の開口部28a近傍に接続されている。
【0051】
このリンク機構は、回転中心P,Sを結んだ線分PSと回転中心Q,Rを結んだ線分QRとが平行且つそれらの大きさ(回転中心P,Sの距離と、回転中心Q,Rの距離)が互いに等しくなる状態を標準状態として設定されている。この標準状態においては、エアジェットノズル28は、図8中に実線で示す状態となり、この状態から流体圧シリンダ34の駆動ロッド34bを縮退させると、軸心線Sは、軸心線Rを中心に反時計廻りに回転してポイントSへと移動し、同様に、軸心線Pは、軸心線Rの回転角度と同じ角度だけ、軸心線Qを中心に反時計廻りに回転してポイントPへと移動し、エアジェットノズル28は、二点鎖線で示す状態となる。この際、線分PSは線分QRに対して平行な状態が保持されるので、図示するようにエアジェットノズル28の溝付きロール14に対する向きを変更することなくエアジェットノズル28を溝付きロール14から離隔することができる。逆に、標準状態から流体圧シリンダ34の駆動ロッド34bを伸長させれば、エアジェットノズル28の溝付きロール14に対する向きを変更することなくエアジェットノズル28を溝付きロール14に近接させることができる。つまり、流体圧シリンダ34の駆動ロッド34bのストローク量を調整することで、溝付きロール14からのエアジェットノズル28の距離を調整できるようになっているのである。
【0052】
また、流体圧シリンダ33の駆動ロッド33bのストローク量を調整することで、エアジェットノズル28の向き、つまり溝付きロール14へのエアジェットの噴射方向を変更できるようになっている。例えば、図8(a)に実線で示す標準状態から、流体圧シリンダ33の駆動ロッド33bの駆動ロッド33bを伸長させて、軸心線Pを軸心線Sを中心に時計回りに回転させて位置Pに移動させれば、簡略化して示すがエアジェットノズル28は一点鎖線で示すような姿勢となって、エアジェットの噴射方向を、溝付きロール14の接線方向に近づけることができるようになっている。
【0053】
このようなエアジェットノズル28の位置や向きの調整は、運転中に適宜調整できる。特に、ここでは、上述したようにエアジェットノズル28を支持する部材61,62が円筒状部材により構成されており、円筒状部材62の内部空間62aを通してエアジェットが溝付きロール14に当たっている位置を観察することができる。すなわちエアジェットの溝付きロール14に対する噴射状態を目視により直接監視できるようになっており、上記エアジェットノズル28の調整を運転状況に応じて適宜行なうことが可能となっている。
【0054】
なお、このようにエアジェットノズル28を使用する場合は、排気ヘッダ部Bbに取り付けられる排気ファンの容量は、ガイド部Aから導入されるエア量W1に加え、エアジェットノズル28から噴射されるエア量W2、さらには、エアジェットノズル28とセーブオールパン19Bとの隙間やエアジェットノズル28と溝付きプレスロール14との隙間から、エアジェットノズル28からのエアジェットにより引っ張られるようにしてセーブオールパン19B内に浸入するエア量W3を見込んで設定する必要がある。上記エア量W3は、エアジェットノズル28の噴射エア量W2の0.5倍程度と見込んでおけばよい。すなわち、排気ファンの容量は、ガイド部Aから導入されるエア量W1にエアジェットノズル28の噴射エア量W2の1.5倍を加算した量(W1+1.5×W2)とする必要がある。
【0055】
本発明の第3実施形態としての抄紙機のセーブオールパン19Bはこのように構成されているので、このエアジェット28によりフラッシングされ溝付きプレスロール14の周面は次にニップ部に到達する前に溝内の水分(白水)が除去されるので、このように水分の除去されたロール周面によりニップ部での湿紙の搾水を効果的に行なえるようになる。
【0056】
(4)第4実施形態
図9は本発明の第4実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。なお、上述した各実施形態で説明した部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の抄紙機のセーブオールパン19Cでは、上記第3実施形態のセーブオールパン19Bに対し、ガイドベーン30が追設されている。ガイドベーン30は、セーブオールパン19Bの全幅にわたって側板19f(図2参照)に掛け渡されている。
【0057】
このガイドベーン30は、図9に示すように楔型の断面を有し、溝付きロール14と対向するロール対向面30aと、エアジェットノズル28から噴射されたエアを案内するエア案内面(気体案内面)30bと、ガイド部Aからの混合体を案内する混合体案内面30cとを有している。
また、ガイドベーン30は、内部30dが中空の箱形状であり、ロール対向面30aには、この内部30dと連通するシャワーノズル(ノズル穴)30eが所定の間隔をあけて機械幅方向に複数並べられている。そして、この内部30dには外部から洗浄水が供給され、この洗浄水がシャワーノズル30eから溝付きロール14に向けて噴射されるようになっている。
【0058】
さらに、エア案内面30bには、エア案内面30bを延設するようにして可撓性のワイパ(摺接部材)31が取り付けられており、このワイパ31の先端は回転する溝付きロール14の周面に摺接する。
本発明の第3実施形態の抄紙機のセーブオールパン19Cは、上述したように構成されているので、シャワーノズル30eから噴射された洗浄水が、溝付きロール14に当たって跳ね返り、溝付きロール14の回転により上方へ送られ、ワイパ31の下面及びガイドベーン30のロール対向面30aを洗浄する。したがって、白水中の固形成分が上記のワイパ31の下面及びロール対向面30aに堆積してしまうことを防止できる。
【0059】
また、溝付きロール14の周面に沿って昇ってきた白水を含む空気流(混合体)は、ワイパ31によって止められ、混合体案内面30cにより旋回通路Baへと案内される。さらに、上記のシャワーノズル30eから噴射され溝付きロール14に当たって跳ね返った洗浄液によっても、溝付きロール周面に沿って昇ってきた混合体は止められてガイドベーン30の混合体案内面30cにより旋回通路Baへと案内されることとなる。
【0060】
そして、エアジェットノズル28から噴射されたエアは、溝付きロール14をフラッシングして溝付きロール14から跳ね返った後、ガイドベーン30のエア案内面30bにより旋回通路Baへと案内される。
このように、ガイドベーン30により、エアジェットノズル28からのエアと溝付きロール周面に沿って昇ってきた混合体とが共に旋回通路Baへと案内されるようになる。したがって、上記のエアと混合体との流れが略同方向となってその混合がスムーズに行なわれるようになり、混合体が滞り無く旋回通路Baを通って淀みなく回収されるようになる。
【0061】
( 5) 第5実施形態
図10は本発明の第5実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。なお、上述した各実施形態で説明した部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
上述した図1〜図9に示す各実施形態では、トッププレスロールである溝付きプレスロール14はシュープレスロールとして構成されていたが、本実施形態では、トッププレスロール70は、ソリッドタイプの溝付きプレスロールとして構成され、ロール周面がソリッドであって、ロール周面にゴムが巻き付けられ、このゴム表面には螺旋状の溝が加工されている。
【0062】
上述したようにシュープレスロールではブランケットが可撓性を有しているので振れまわりを起こすため、上記各実施形態では、この振れまわりを許容しつつセーブオールパンと溝付きプレスロールとのシールを行なえるよう、可撓性のあるシールリップ20やエアジェットノズル28のエアの噴射によりシールを行なっていた。
【0063】
これに対し、本実施形態の溝付きプレスロール70はソリッドロールなので可撓性が低くワブリングの虞がない。そこで、本実施形態では、ロール表面の付着物の除去能力に優れたドクタ40を使用している。
ドクタ40は、一般的に広く使用される公知の技術であり、先端が溝付きプレスロール70の周面に摺接し比較的硬度の高いドクタブレード41,ドクタブレードを保持するブレードホルダ42,ブレードホルダ42が固定されたドクタ本体43,ドクタ本体43を機械幅方向両側で回動可能に支持するドクタ支持軸44とをそなえて構成されている。また、ドクタ支持軸44を中心に回動するドクタ本体43とセーブオールパン19Dとの隙間をシールするために、上記隙間を塞ぐようにゴムシート45がドクタ本体43に固定されている。
【0064】
本発明の第5実施形態としてのセーブオールパン19Dは上述したように構成されているので、ドクタ40により、溝付きプレスロール70の周面の付着物を効果的に除去できるようになる。
【0065】
(6)第6実施形態
図11は本発明の第6実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。なお、上述した各実施形態で説明した部材については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態では、トッププレスロールには、上記第1〜第4実施形態と同様にシュープレスロールにより構成される溝付きプレスロール14が使用され、一方、ボトムプレスロールには、上記第5実施形態でトッププレスロールに使用されたソリッドロールにより構成される溝付きプレスロール70が使用されている。
そして、トップ側の溝付きシュープレスロール14のニップ出側には、上記第3実施形態で使用されたセーブオールパ19Bが設備され、ボトム側の溝付きソリッドプレスロール70のニップ出側には、上記第5実施形態で使用されたセーブオールパ19Dに対し略上下反対に構成されたセーブオールパ19D′が設備されている。
本発明の第6実施形態によれば、2つの溝付きプレスロール14,70に対しそれぞれセーブオールパ19B,19D′が設備されているので、上記溝付きプレスロール14,70の両ロールにおいて白水を効果的に回収できる利点がある。
【0066】
(7)その他
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記各実施形態では、溝付きプレスロールと協働して湿紙を加圧するプレス手段をプレスロールを使用した例を説明したが、プレスロールの代わりにプレスシューを溝付きプレスロールに対抗して配置し、溝付きプレスロールとプレスシュートとにより協働して湿紙を加圧するように構成しても良い。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の抄紙機のセーブオールパンによれば、ニップ部の下流側で飛散する白水及び白水ミストが、溝付きプレスロールの伴流空気とともにガイド部によりセーブオールパン内に案内されるようになるので、溝付きプレスロールの配置にかかわらず白水を回収・排気でき、溝付きプレスロールの配置を自由に設定できるようになる。
【0068】
また、白水,白水ミスト及び伴流空気は、旋回通路を流通する際に遠心力の作用により白水と空気とに完全に分離され、分離された白水は下方の排水部に回収されて排出され、分離された空気は旋回通路の内側の排気部に回収されて排出されるようになるので、白水ミストに含まれる固形物の堆積に起因するWAD BURNを未然に防止でき、またハンドリング性の悪い白水ミスト回収系統を不要にできる。
【0069】
さらに、溝付きプレスロールに対して気体を噴射する気体噴射手段をそなえれば、この気体により、ガイド部に対する白水,白水ミスト及び伴流空気の混合体が溝付きプレスロールとガイド部との隙間から漏洩してしまうことを抑制して上記混合体の回収を確実に行なえるようになり、さらに、溝付きプレスロールの溝内がフラッシングされるようになるので、フラッシングにより固形成分や水分の除去された清浄なロール周面により湿紙の搾水を効果的に行なえるようになる。
【0070】
旋回通路を形成する壁面であって外方に面する壁面に開閉可能な蓋部をそなえれば、セーブオールパンの内部の清掃作業やメンテナンス作業などを容易に行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての抄紙機のセーブオールパンについて示す図であって、(a)はその構成を示す模式的な背面図、(b)はその構成を示す模式的側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。
【図4】本発明の第3実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるエアジェットノズル(気体噴射手段)の構成の一例を示す図であって、(a)はその模式的な横断面図、(b)は(a)のX矢視図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるエアジェットノズル(気体噴射手段)の構成の一例を示す図であって、(a)はその先端の模式的な横断面図、(b)はその先端の模式的な断面斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかるエアジェットノズル(気体噴射手段)の構成の一例を示す図であって、(a)はその先端の模式的な横断面図、(b)は(a)のY矢視図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかるエアジェットノズルの調整手段の構成を示す図であって、(a)はその模式的な側面図、(b)は(a)のZ矢視図である。
【図9】本発明の第4実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。
【図10】本発明の第5実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。
【図11】本発明の第6実施形態としての抄紙機のセーブオールパンの構成を示す側面視による模式的断面矢視図である。
【図12】従来の抄紙機のセーブオールパンの構成を示す模式的な側面図である。
【図13】従来の抄紙機のセーブオールパンの構成を示す模式的な側面図である。
【符号の説明】
14 溝付きプレスロール(シュープレスロール)
15 ボトムプレスロール(プレス手段)
16 プレスフェルト
17 不透水ベルト
18 湿紙
19,19A〜19D,19D′ 抄紙機のセーブオールパン
19a ガイド部材
19aa ガイド部材19aの上流部
19ab ガイド部材19aの下流部
19b カバー部材
19ba カバー部材19の端部
19bc カバー部材19bの本体
19c 隙間
19d 突設部材
19e カバー部材
19f 側壁
19da 突設部材19dの端部
20 シールリップ(摺接部材)
24〜26 清掃・点検用の蓋部
27 シールリップ洗浄シャワー(液体噴射手段)
27a シャワー本体
27b ノズル部
28 エアジェットノズル(気体噴射手段)
28a 開口部
28b 波形の板
28c ピン部材
28d 細孔
29 ヒンジ
29a,29b 金属板
30 ガイドベーン
30a ロール対向面
30b エア案内面(気体案内面)
30c 混合体案内面
30d ガイドベーンの内部
30e シャワーノズル(ノズル穴)
31 ワイパ(摺接部材)
33,34 流体圧シリンダ
33a,34a シリンダ本体
33b,34b 駆動ロッド
40ドクタ
41ドクタブレード(摺接部材)
42ブレードホルダ
43ドクタ本体
44ドクタ支持軸
45ゴムシート
50〜52 装置フレーム
60 リンク部材
60a,60b リンク部材60のアーム
60c リンク部材60の基部
61,62 円筒状部材
62a 円筒状部材の内部空間
63 接続用部材
70 溝付きプレスロール(ゴム巻きソリッドロール)
A ガイド部
B サイクロン
Ba 旋回通路
Bb 排気ヘッダ部(排気部)
C 白水ヘッダ(排水部)
溝付きプレスロール14の回転中心軸
旋回通路の旋回中心軸
P,Q,R,S エアジェットノズル28のリンク機構(調整手段)の回転中心軸

Claims (9)

  1. 対向して配設された溝付きプレスロールとプレス手段とのニップ部において該溝付きプレスロールの下流側に配設され、該ニップ部で加圧された湿紙から搾水された白水を回収する、抄紙機のセーブオールパンであって、
    該ニップ部に面して設けられ、ニップ部の下流側で飛散する白水及び白水ミストを、該溝付きプレスロールの伴流空気と一体に該溝付きプレスロールの周面に沿って案内するガイド部と、
    該ガイド部の後端に接続されるとともに該溝付きプレスロールの回転方向とは逆方向に旋回するように形成され、遠心力を利用して、該白水,該白水ミスト及び伴流空気の混合体を白水と空気とに分離する旋回通路と、該旋回通路の後端に接続されるとともに該旋回通路の内側に形成され該空気を排気するための排気部とを有する、サイクロン部と、
    該サイクロン部の下方において該旋回通路に接続され該白水を排出するための排水部とをそなえて構成され
    該ガイド部は、該溝付きプレスロールの周面と、該溝付きプレスロールの周面に沿った曲面状の断面を有し、該溝付きプレスロールに対し所定の間隔をあけて配設されたガイド部材との間に形成された
    ことを特徴とする、抄紙機のセーブオールパン。
  2. 該ガイド部が、
    溝付きプレスロールの周面と、該ガイド部材と、該ガイド部材よりも該溝付きプレスロールの回転方向下流側で該溝付きプレスロール周面に摺接する摺接部材との間に形成された
    ことを特徴とする、請求項1記載の抄紙機のセーブオールパン。
  3. 該摺接部材の該ガイド部に向き合う面に洗浄用の液体を噴射する液体噴射手段が該ガイド部内にそなえられている
    ことを特徴とする、請求項2記載の抄紙機のセーブオールパン。
  4. 該ガイド部が、
    該ガイド部材と、溝付きプレスロールの周面との間に形成され、
    該ガイド部の下流端に、該溝付きプレスロールの回転方向とは逆方向に該溝付きプレスロールに対して気体を噴射する気体噴射手段がそなえられている
    ことを特徴とする、請求項1記載の抄紙機のセーブオールパン。
  5. 該溝付きプレスロールに対する該気体噴射手段の姿勢及び/又は距離を調整する調整手段がそなえられている
    ことを特徴とする、請求項4記載の抄紙機のセーブオールパン。
  6. 該気体噴射手段により該溝付きプレスロールに向けて噴射された該気体を、該溝付きプレスロールから跳ね返った後、該旋回通路内の該混合体の流れ方向と略同方向に案内する噴射気体ガイド部材が、該溝付きプレスロールに対して隙間をあけて配設された
    ことを特徴とする、請求項4又は5記載の抄紙機のセーブオールパン。
  7. 該噴射気体ガイド部材が、
    該ガイド部を流れる該混合体を該旋回通路へ案内する混合体案内面と、該溝付きプレスロールから跳ね返った該気体を該旋回通路内の該混合体の流れ方向と略同方向に案内する気体案内面と、該溝付きプレスロールに向き合うロール対向面とを有する
    ことを特徴とする、請求項6記載の抄紙機のセーブオールパン。
  8. 該噴射気体ガイド部材に、先端が該溝付きプレスロールに摺接する摺接部材が取り付けられ、
    該噴射気体ガイド部材が、
    内部が中空の箱形状に形成されるとともに、該ロール対向面に、該中空と連通するノズル穴が設けられ、該中空に洗浄用の液体を供給することにより該ノズル穴から該溝付きプレスロールに上記の洗浄用の液体を噴射させ、該溝付きプレスロールから跳ね返った上記の洗浄用の液体により、該摺接部材及び該噴射気体ガイド部材を洗浄するように構成された
    ことを特徴とする、請求項7記載の抄紙機のセーブオールパン。
  9. 該旋回通路を形成する壁面であって外方に面する壁面に開閉可能な蓋部がそなえられている
    ことを特徴とする、請求項1〜8の何れかの項に記載の抄紙機のセーブオールパン。
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