JP3685815B2 - 溶液中のペルオキシダーゼの安定化方法 - Google Patents

溶液中のペルオキシダーゼの安定化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物を含有する溶液の安定化方法及び安定化された分析試薬溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】
ペルオキシダーゼ(以下「POD」という)は、発色測定に於ける活性が高いことから生化学的測定法、特に免疫学的測定法のラベル酵素として繁用されている。
しかしながら、PODは遊離の状態でも、他の成分に修飾されている場合でも、実際に測定時に使用される低濃度領域では、安定性が悪く、測定に必要な活性を溶液状態で長い期間維持することは非常に困難であった。従って、一般的にPODの保存は、凍結乾燥品とするか溶液状態では高濃度溶液として給されている。これらの形態のPODは、用事に水による復元や希釈などの煩雑な操作が必要であるばかりでなく、時に操作時のミスを生じさせ、測定の信頼性を減じる要因ともなっていた。
【0003】
それ故、使用時の濃度に予め調整された、溶液状態の安定なPOD試薬の供給が強く望まれている。そのためのアプローチとして、POD標識物に様々な安定化剤を添加して安定性を向上させた例が先行技術として提示されている。例えば、特公昭58−5668号公報には8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸が、特開昭58−23786号公報には4−アミノアンチピリンが、特開昭59−25683号公報及び特開昭59−210885号公報にはポリアルキレングリコールが、特開昭60−192260号公報、特開昭61−78385号公報及び特開昭61−212286号公報にはフェノール又はこの誘導体が、特表昭62−50210号公報には3,3′,5,5′−テトラメチルベンチジン(TMB)がPOD標識物の活性を安定化する物質として報告されている。
【0004】
しかしながら、POD等の安定化剤は、PODを安定化させることはもとより、溶液中に存在する他の成分に対してなんらの影響も及ぼさず、かつ安全性に優れることが要求され、従来の安定化物質は、これらの点で必ずしも満足行くものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、POD又はPOD標識物が、実際の使用時に用いられる低濃度の溶液でも、長期間安定に保存でき、かつこれを用いた測定になんら影響を及ぼさない安定化方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
斯かる実状に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行った結果、POD又はこの標識物を含む溶液に尿酸又は溶液中で尿酸イオンとなり得るその塩を添加することにより、この溶液の十分な安定化を図ることができ、かつこの添加物が測定系になんら影響を及ぼさないことを見出し本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物を含有する溶液に尿酸又は溶液中で尿酸イオンとなり得るその塩を添加することを特徴とする溶液中のペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物の安定化方法、並びに(A)ペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物と、(B)尿酸又は溶液中で尿酸イオンとなり得るその塩を含有する分析試薬溶液を提供するものである。
【0008】
本発明が適用し得るPODは特に限定されず、全てのPOD、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ricehullペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が挙げられるが、入手のしやすさ、品質の安定性の観点からHRPが好ましい。
【0009】
また、POD標識物中のPOD結合成分として用いられる物質としては抗体又は抗体フラグメント、抗原、DNA、RNA、ビオチン、アビジン、他のリガンド・レセプターなどが挙げられるが、PODで標識した有効成分を用いた測定で通常用いられる物質ならいかなるものでも用いることができる。
本発明の分析試薬溶液中のPOD又はPOD標識物の濃度は、通常免疫測定などに用いられる濃度であれば特に限定されないが0.01〜5μg /mlとすることが好ましい。
【0010】
本発明に用いられる尿酸そのものの他、ナトリウム塩又はカリウム塩等の溶液中で尿酸イオンとなるもの(以下、あわせて尿酸化合物と記載することがある)であれば用いることができる。
【0012】
尿酸化合物のPOD若しくはPOD標識物の溶液への添加量は尿素としての濃度が該溶液に対して0.1〜500μg /ml、特に2〜200μg /mlとなる量が好ましい。本発明の分析試薬溶液の溶媒は基本的に水であるが、種々の緩衝液が好ましい。
【0013】
また、上記成分に加え、溶液の防腐を達成するための保存剤が必要な場合は、PODの活性に影響を与えないものを添加すれば良く、例えば、これにはチモール、MICROCIDE I(AMRESCO社)等を挙げることができる。
【0014】
尿酸化合物の溶液への溶解方法は任意の方法を用いることができるが通常粉末状態で溶液に加えて溶解すればよく、有機溶媒や界面活性剤、シクロデキストリン等の溶解補助剤を用いることなく容易に溶解することができる。このことは、溶解補助剤による溶液成分への影響を考慮しなくてよいため、本発明の有利な点の一つである。
【0015】
【発明の効果】
本発明のPOD又はPOD標識物含有溶液は安定であり、しかも尿酸化合物は該溶液に各種血清若しくは血清成分が含まれていてもそれらの成分に対して影響を与えない。従って溶液中に含まれる血清若しくは血清成分の動物種や成分種は問わず用いることができる。例えば、ウシ血清、ウシ胎児血清、ヤギ血清、ウサギ血清、それらのアルブミン分画、グロブリン分画などが存在しても影響を受けない。
【0016】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
実施例1
尿酸添加による標識抗体の安定化試験:
HRP標識抗ヒトIgG(γ−chains P406)(Dako社製)を標識抗体希釈液〔50mMトリス塩酸緩衝液,0.15M NaCl,1%ウシ血清アルブミン(BSA),0.5%ウサギ血清(NRS),0.01% MICROCIDE I pH8.0を無菌濾過後使用〕にて3000倍に希釈し、希釈標識抗体液とした。得られた希釈標識抗体液に尿酸(SIGMA)を250、100、50、25、10、5、3μg /mlの各濃度で添加した。対照として尿酸無添加の希釈標識抗体液を作成した。それぞれの希釈標識抗体液3mlを10ml容の褐色スクリューガラスチューブ(マルエムNo.3;21×45)に充填し、37℃恒温庫に保存し、7日間及び14日間保存後に希釈標識抗体液の活性を測定した。陽性対照としては、測定当日に上記と同様にして尿酸無添加の希釈標識抗体液を調製(以下用事調製と略す)して活性を測定し、その値を100%活性とした。結果を図1に示す。
【0018】
POD標識抗体の活性は、HBs抗原を固定化した96穴マイクロプレート(ヌンク社)を用いた酵素免疫試験にて調べた。抗HBsヒト免疫グロブリン(日本製薬)を検体希釈液(標識抗体希釈液と同じ)で1000倍に希釈した後、HBs抗原固定化マイクロプレートに50μl 分注し、37℃にて1時間反応させ、PBS−Tween 20洗浄液(pH7.3)にて5回洗浄した。次いで、先の希釈標識抗体液を50μl 分注し、37℃、30分間反応させ5回洗浄の後、テトラメチルベンジジン発色基質100μl を分注して室温で30分間反応させ、1N硫酸100μl を分注し、反応を停止させた。450nmの吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて測定し、それぞれの標識抗体の活性を比較した。またこのとき抗体活性の低下がないことを別途確認した。
【0019】
このとき、各濃度の尿酸を添加した希釈標識抗体液が、尿酸の存在により標識抗体の発色に影響を受けていないかどうかを調べるために、各尿酸濃度の希釈標識抗体液を用事調製し、先の実施例と同様の試験を行って活性の変動の有無について調べた。尿酸無添加の希釈標識抗体液の活性を100%としたときのデータを図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】尿酸を添加した場合の安定化効果を示す図である。
【図2】尿酸が標識抗体の発色に及ぼす影響を示す図である

Claims (2)

  1. ペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物を含有する溶液に尿酸又は溶液中で尿酸イオンとなり得るその塩を添加することを特徴とする溶液中のペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物の安定化方法。
  2. (A)ペルオキシダーゼ又はペルオキシダーゼ標識物と、(B)尿酸又は溶液中で尿酸イオンとなり得るその塩を含有する分析試薬溶液。
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