JP3685699B2 - 転写電流設定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接触転写方式を採用している電子写真装置等の画像形成装置に関するもので、特に、コピア、レーザープリンタにおける像担持体に当接して使用される転写装置部分を中心とする画像形成における転写電流設定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法においては、従来、金属ワイヤーに高電圧を印加して、発生するコロナにより感光体を帯電させたり、転写させたりしている。しかし、このコロナチャージ方式ではコロナ発生時にオゾンやNOx等のコロナ生成物により感光体の表面を変質させるため、画像白抜けや黒スジが生じる等の画像品質上の他、オフィス環境の点においても問題があった。そこで、オゾンやNOx等を発生させない方式として、導電性弾性体を感光体などに接触させて帯電及び転写させる方式が提案されている。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置において、像担持体上に形成されたトナー像を記録材に転移させるための手段として、像担持体に対向して付設された導電性弾性体に記録材の背面側より数百〜3kV程度の電圧を印加して接触転写を行うプロセスがある。
これら接触転写の接触転写部材として導電性弾性体を用いる場合、特開平8−90678号公報に提案されているように導電性弾性体の抵抗値を1×102〜1×1010Ωとなるような半導電領域にすることにより、適切な接触転写を実現することが可能となるとしている。また、環境変化によって転写効率が低下するのを防止する手段として、特開平2−300774号公報及び特開平4−190381号公報など、さらに記録材種類に応じて転写電圧を制御する手段として、特開平6−266243号公報に提案されている。
【0004】
しかし、前記のように導電性弾性体の抵抗値を1×102〜1×1010Ωの半導電領域にしても、適切な接触転写を実現するために必要な転写電流を得るためには、比較的抵抗が低い場合(1×1040 Ω以下)、導電性弾性体に含有される導電性充填剤間の通電のためのしきい値を容易に越えてしまい、放電等が容易に生じ、供給電源操作が非常に困難になる。また、比較的抵抗が高い場合(1×109Ω以上)、導電性弾性体に含有される導電性充填剤間の通電のためのしきい値を越えるような電荷量を供給することは困難となり、明らかに転写電流不足のため良好な画像を得ることはできない。良好な画像を得るために十分な電荷量を供給すると、当接部材の耐電圧特性が問題となるだけでなく、環境面からもエネルギーのロスは大きい。
また、記録材の抵抗値を検知して接触転写部材に印加する転写電圧値を制御しても、多種類の記録材には全て対応できず、記録材種類に応じて転写電圧を制御しても、接触転写部材に用いる導電性弾性体の抵抗値にも基因して、高い転写効率だけでなく、高画質を維持することはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の課題及び要望に応えるためになされたものであり、転写後における記録材上のトナー像のむらがなく、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じることなく、転写効率の高い良好な画像を得ることができる転写電流設定方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、次の構成を有するものである。
(1)像担持体に当接させた接触転写部材を有し、前記像担持体と前記接触転写部材とで形成される転写ニップ部において記録材を挟持搬送させながら、前記像担持体上のトナー像を記録材上に転写する転写手段を具備する画像形成装置に、前記接触転写部材に電流を徐々に上昇させて流した際の印加電圧と電流との関係で、5μA当たりの電圧変化量をΔVnとし、ΔVn≦110Vの関係が成立しうる最小の印加電圧で示される屈曲点に対応する屈曲点電流に対して±10%の範囲内の電流値を転写電流として設定することを特徴とする転写電流設定方法。
【0011】
本発明によれば、前記接触転写部材に電流を徐々に大きく流した際に電圧が急激に変化する屈曲点に応じた転写電流を前記接触転写部材に供給することにより、前記接触転写部材中に含有される導電性充填剤間の通電のためのしきい値を越え、通電経路が多くなり、像担持体上のトナー像を記録材上に転写するために十分な転写電流を確保することができる。このため、供給電荷量不足による転写後における記録材上のトナー像のむらや、供給電荷量過多による異常放電やプレイクダウン等を生じることがない。従って、転写効率が高く良好な画像を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明の一実施形態を示す画像形成装置の概略図である。図2は図1に示された接触転写部材の拡大断面図である。図3は図1及び図2で示される接触転写部材(導電性弾性体)の異なる環境での電流供給に対する電圧値の変動を示す特性線図である。図4は図1及び図2で示される接触転写部材(導電性弾性体)の各環境における体積固有抵抗率の変動線図である。図5は図1及び図2で示される接触転写部材(導電性弾性体)の異なる材質での電流供給に対する各電圧値の変動を示す特性線図である。
【0013】
本発明に使用する画像形成装置は、像担持体、例えば、感光体等に当接する接触転写部材を有し、その接触転写部材が導電性弾性体からなるものであれば、通常の形成装置と異なった適用形体、名称、総称等であって良く、その名称等に限定されない。
前記画像形成装置において、被画像形成体に画像を記録する為に必要な像担持体(感光体等)への画像形成はカールソンプロセスや背面露光方式や、その他の種々の作像原理を使用することが可能であって特に限定されるものではない。本実施の形態ではカールソンプロセスによる画像形成装置を例にとって説明する。
【0014】
図1は画像形成装置の概略断面図である。前記画像形成装置は、コンピューターの出力装置として使用されるものであるが、これ以外にワードプロセッサやファクシミリの印字部、デジタル複写機の印字部としても使用可能である。画像形成装置9は、主に、画像を形成する画像形成部10と画像形成部10に記録材Pを供給する給紙装置30と定着装置17とから構成されている。画像形成部10は、アルミ素管に感光層を配置した像担持体としての感光体ドラム11と感光体ドラム11の周囲にこの順序で配置される帯電装置12、露光装置(レーザーユニット)13、現像装置14、転写装置15、及び除電装置(除電ランプ)16とを備えている。
【0015】
前記帯電装置12は、感光体ドラム11の表面に均一な電荷を付与するための帯電部材(帯電手段)18と、該帯電部材18に電位を供給するための帯電電源19とを備えている。
前記レーザーユニット13は、帯電された感光体ドラム11の表面に画像データに応じてレーザーを照射し、感光体ドラム11上に電荷パターンからなる静電潜像を形成する。
前記現像装置14は、レーザーユニット13の露光によって形成された静電潜像に対して現像剤であるトナー50を供給してトナー像を形成する現像部材(現像手段)21と、現像部材21に現像電圧を供給する現像電源22とを備えている。
【0016】
前記除電ランプ16は複数のLEDからなり、感光体ドラム11の表面に光を照射して感光体ドラム11の表面に残留した電荷を中和して除電する。
前記給紙装置30は記録材Pを収容するカセット31、カセット31から記録材Pを送り出すピックアップローラ32、供給された記録材Pをガイドする給紙ガイド33、給紙された記録材Pを所定の速度で搬送する一対のレジストローラ34からなる。
また、給紙装置30は、記録材Pが供給されたことを検出する給紙センサー(図示せず)を備えている。
前記のピックアップローラ32、帯電部材18、現像部材21、接触転写部材23、及び感光体ドラム11は図示しない駆動装置によって回転駆動される。これらの回転駆動は不図示のプロセスコントロールユニットによって所定のタイミングで適宜制御される。また、画像形成部10の記録材Pの出紙側には、記録材Pを装置外に排出する排紙ローラ41と排紙された記録材Pを保持する排紙トレイ42を配している。
【0017】
本発明において、前記転写装置15は、記録材Pを感光体ドラム11に圧接して感光体ドラム11に形成されたトナー像を記録材Pに転写する接触転写部材23と、転写時に接触転写部材23に一定の転写電流を供給する転写電源24とを備えている。後述するように、接触転写部材23は導電性弾性体からなり、転写電源24は図示しない定電流制御手段によって制御されて接触転写部材23に一定の転写電流を供給している。
即ち、本発明において、前記転写電源24は、前記接触転写部材23に電流を徐々に上昇させて流した際の電圧が急激に変化する屈曲点に応じた転写電流を供給する定電流装置となっている。
【0018】
前記の関係が成立する最大の供給電流が示す屈曲点にて転写することにより、接触転写部材23中に含有される導電性充填剤間の通電のためのしきい値を越え、通電経路が多くなる。このため、感光体11上のトナー像を記録材P上に転写するために十分な転写電流を確保することができる。
また、電流を徐々に大きく流した際の電圧についての電流−電圧特性線図を図3に示す。各環境下(温度、湿度を異ならせた環境。)、電圧変化量が急激に弱まる屈曲点が存在することが分かる。これは導電性弾性体に含有される導電性充填剤間の通電において、最近接の導電性充填剤間だけでなく、近傍の導電性充壊剤間に通電するためのしきい値を越え、供給電荷量過多による異常放電を起こさない程度で、且つ通電経路が十分に達成されるポイントである。
【0019】
従って、本発明において、この転写の際に、前記接触転写部材23は後述する導電性充填剤を含む導電性弾性体からなり、感光体ドラム11に最も近接する導電性充填剤だけでなく、その近傍の導電性充填剤にも通電可能に電荷量が供給されていることが好ましい。
前記接触転写部材23に含有される導電性充填剤が最も近い導電性充填剤だけでなく、近傍の導電性充填剤に通電する電荷量を供給し転写することにより、接触転写部材23中に含有される導電性充填剤間の通電のためのしきい値を越え、通電経路が多くなり、感光体ドラム11上のトナー像を記録材P上に転写するために十分な転写電流を確保することができ、供給電荷量不足による転写後における記録材P上のトナー像のむらや、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じることがない。
【0020】
本発明において、前記接触転写部材23の5μA当りの電圧変化量をΔVn(nは供給電流で、単位は5μAである。)とすると、ΔVn≦110Vの関係が成立する最小の電圧で示される前記屈曲点での屈曲点電流に対して、±10%の範囲内で前記転写電流値が選択されることが望ましい。
具体的に、前記屈曲点は所定の電圧値の上昇幅が110Vを切り、そのときの最小の電圧値で示される、それに相当する電圧値、電流値を屈曲点とすることができる。
即ち、適正な抵抗を有する導電性弾性体23では、供給電流を徐々に増加させた時の5μA当たりの電圧値の上昇幅が110Vを最初に示す領域が屈曲点となった。この屈曲点に応じた前記範囲より少ない電流値では導電性弾性体に含有される最も近い導電性充填剤間でのみ通電するので、導電性弾性体表面での抵抗むらが転写後における記録材上のトナー像の濃度むら等を生じさせる。また、屈曲点に応じた前記範囲より多い電流値では導電性弾性体に含有される導電性充填剤は最も近い導電性充填剤だけでなく、近傍から更に拡大して導電性充填剤に通電することになるので、転写後における記録材P上にトナー像のむらを生じることはないが、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じ良好な画像を得ることができない。
これに対し、屈曲点を示す電流値にて転写することにより、後述の表2に示すように供給電荷量不足による転写後における記録材上のトナー像の濃度むらや、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じることがない。
【0021】
本発明の画像形成装置において、前記転写電流値は定電流制御手段の制御によって決定され、前記屈曲点に応じた電流によって制御を受ける定電流装置によって供給されることが好ましい。
転写電源24は上述したように定電流制御手段によってその転写電流値が決定される。かかる定電流制御手段は転写電源と一体に設けられてもよく、別体に設けられてよい。転写電源24は制御された定電流装置である。
前記屈曲点を示す供給電流を用いて、その定電流制御し転写することにより、記録材Pの幅サイズが接触転写部材23の幅サイズよりも小さい場合においても、コントロールがなされ転写電流供給不足を生じることなく、転写効率が高く良好な画像を得ることができる。
【0022】
次に、接触転写部材23について詳述する。
上述したように接触転写部材23は導電性弾性体からなり、本発明による一例であるローラ形状を有する導電性弾性体は、図2に示すような構造を有している。
即ち、基体1は鉄、アルミニウム、SUS、真鍮などで構成された、いわゆる「芯金」のほか、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる芯体及びその表面にメッキを施したもの、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂に導電性付与剤としての導電性カーボンブラック、金属粉末などを配合した導電性樹脂成形品で形成した芯体、またはこれらの組み合わせからなる芯体など、プラスチック、金属、セラミックから選ばれた任意の材料からなる基体1であり、その基体1に被覆された1層以上の弾性体2を有している。その弾性体2の内部を通電する手段として、弾性体2の内部に導電性充填剤3を混入し、電圧を印加した場合にはこの分散した導電性充填剤3間の通電により、導電性弾性体の通電を可能としている。これらの導電性或いは通電性はその画像形成装置の用途、目的によって異なる。従って、通電特性も適宜に異ならせることができる。
【0023】
また、形状は、基体1及び弾性体2が平板状の形状であるブレード形状、特に基体1を必要としないベルト形状など、ローラ形状に限らない。
前記弾性体2としては、ニトリルブタジェンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンゴムなどの有極性エラストマーや、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジェン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、およびこれらの共重合体や混合物などの無極性樹脂、クロロポリスチレン、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体およびスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単量合体または共重合体)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、フツ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド樹脂、リビニルブチラール樹脂およびこれらの共重合体や混合物などの有極性樹脂も可能である。特に、環境変化に伴う体積抵抗率変動の抑制効果及び低硬度化から、エチレン−プロピレンジェン重合体(EPDM)、ブタジェンゴム、スチレン−ブタジェンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム、イソプレンゴム、プチルゴム、シリコンゴム、天然ゴム(NR)などの無極性エラストマーが最も好ましい。
【0024】
前記導電性充填剤3としては電子導電性充填剤が望ましく、例えば、4級アンモニウム塩含有ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジアセチレンおよびポリエチレンイミンなどの導電性樹脂、カーボン、アルミニウム、ニッケルなどの導電性粒子をウレタン、ポリエステル、酢酸ビニル−ビニル共重合体およびポリメタクリル酸メチルなどの樹脂中に分散した導電性粒子分散樹脂、アルミニウム、ニッケル及びステンレスなどの金属紛未、酸化チタン、酸化スズ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの導電性無機粒子、またそれらのウイスカー及びマイカーに必要に応じて酸化スズ、酸化アンチモン、カーボン等で表面処理を行ったもの、またはカーボンブラック(チャンネルブラック、フアーネスブラック、アセチレンブラック)が挙げられ、これらの形状も球状、繊維状、板状、不定型などどのような形状でもよい。
導電性充填剤3としてこのような電子導電性充填剤を使用すると、電子導電性充填剤間の放電により導電するので、長時間、弾性体2に電圧を印加しても履歴を残すことがなく使用することが可能となる。
【0025】
前記導電性充填剤以外の添加剤としては、他に加硫剤、加流促進剤、発泡剤、老化防止剤、補強剤、充填剤を必要に応じて配合することができる。
前記加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物の他、有機過酸化物なども使用可能である。有機含硫黄化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。また、有機過酸化物としては、べンゾイルペルオキシド等を挙げることができる。なお、これらのうち、加硫とともに発泡を行う場合に加硫速度と発泡速度のバランスが良くなる点から硫黄を用いるのが好ましい。前記加硫促進剤としては、例えば、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、以下に記す有機促進剤を使用することができる。有機促進剤としては、例えば、2−メルカプトべンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェン等のチアゾール系加硫促進剤や、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、プロピルアミン等の脂肪族第1アミンと2−メルカプトベンゾチアゾールとの酸化縮合物、ジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン等の脂肪族第2アミンと2−メルカプトベンゾチアゾールとの酸化縮合物、脂環式第1アミンと2−メルカプトベンゾチアゾールとの酸化縮合物、モリフォリン系化合物と2−メルカプトベンゾチアゾールとの酸化縮合物等のスルフェンアミド系加硫促進剤や、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジモノスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジモノスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)等のチウラム系加硫促進剤や、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジェチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジ−n−ブチルカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを使用することができる。また、加硫促進助剤を配合することもでき、例えば、亜鉛華などの金属化合物やステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸を用いることができる。
【0026】
前記発泡剤としては、例えば、水、A.I.B.N.(アゾビスイソブチロニトリル)系、A.D.C.A.(アゾジカルボンアミド)系、D.P.T.(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)系、T.S.H.(P−トルエンサルフオニルヒドラジド)系、O.B.S.H.(4,4'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド)などの有機系発泡剤が用いられる。発泡剤の配合量は組成物のゴム成分100重量部に対して5〜11重量部程度とする。これは5重量部未満では発泡が不十分になり、11重量部よりも多くなると発泡剤が加硫を阻害して、加硫が不十分になるためである。組成物を発泡体とした場合、柔軟性が向上する。これを転写手段として使用したときに、感光体と転写手段のニップが十分に確保でき、良好な画質を得ることができる。
【0027】
前記老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、フェニル−α−ナフチルアミン,N,N′−ジ−β−ナフチル−P−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−P−フェニレンジアミンなどのアミン類、ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、スチレン化フェノールなどのフェノール類などが挙げられる。前記充填剤としては、例えば、シリカ、グレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナ等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合するとゴム組成物の強度が向上する。
【0028】
また、本発明による導電性弾性体の製法であるが、まず、1種類または2種類以上を組み合わせた前記2種もしくは3種以上の化合物からなる電子導電性充填剤と前記発泡剤(目的の導電性弾性体が発泡層を有する場合)、過酸化物または白金触媒存在下でのハイドロジェンポリシロキサンや硫黄などの加硫剤を所望の割合で一様に分散させた未加硫・未発泡のゴム材料をオープンロール、バンパリーミキサー等の公知のゴム混練装置を用いて混練する。この時、必要に応じて加硫促進剤、軟化剤、可塑剤、補強剤、老化防止剤、帯電防止剤などの添加剤を適宜配合することもできる。前記未加硫・(未発泡)のゴム材料を、例えばプレス成形、押出成形、射出成形などの方法により形成する。次に加熱処理による加硫、硬化、(発泡)を行って、(未発泡)弾性体と基体1を一体化させ、金型の内周面に沿った形状を有する目的の弾性体2を得ることができる。基体1は弾性体2の硬度を高くせずとも基体1でささえることができ、時間的なへたりなどによる圧力抜けを生じ耐久寿命が短くなることを防止することが可能となる。基体1には、その外周に耐熱温度が220℃の接着剤が塗布されている。この弾性体2の表面に作製させたスキン層を研磨及び研削する。これにより、弾性体2の硬度を低下させることが可能となるので、圧接部材との磨耗を防止することが可能となる.また、疲労によるスキン層のひび割れを事前に防止することが可能となる。以上の工程から基体1と弾性体2のみから構成される導電性弾性体を得る事が可能となる。
【0029】
本発明においては、前記接触転写部材23を形成する導電性弾性体の基質が無極性基質であり、導電性を付与する導電性充填剤が電子導電性充填剤であることが望ましい。
上述したように前記弾性体2の基質は、特に、環境変化に伴う体積抵抗率変動の抑制効果及び低硬度化から、エチレン−プロピレンジェン重合体(EPDM)、ブタジェンゴム、スチレン−ブタジェンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム、イソプレンゴム、プチルゴム、シリコンゴム、天然ゴム(NR)などの無極性エラストマーが最も好ましい。
【0030】
前記接触転写部材23を形成する基質が無極性、かつ接触転写部材23に導電性を付加するための導電性充填剤が電子導電性充填剤であることにより、図4に示すごとく接触転写部材23を形成する基質自身が環境変化に伴う体積抵抗率変動を生じることがない。図4からLL環境(温度5℃、湿度20%)からHH環境(温度35℃、湿度80%)の環境下で1桁オーダーの変動も見られないことがわかる。環境変化に伴う抵抗率変動がなければ、各環境条件を検知し、検知した環境に従い転写電圧を変化させるといった制御操作が不要となる。また、導電経路が電子導電性充填剤間の通電のみに限定されるので、図5に示すごとく前記屈曲点が明確に生じやすい。
【0031】
本発明において、前記接触転写部材23を形成する導電性弾性体の弾性層はアスカーC硬度が25〜70°であることが好ましい。
前記接触転写部材23のアスカーC硬度が、25〜70°の弾性層を有することにより、当接部材との摩擦による磨耗を抑制でき、また、接触転写部材23を感光体11に当接した際に形成されるニップ幅が十分に確保できる。また弾性層に含有される電子導電性充填剤間の距離が均一に保持され、屈曲点探索式を正確に維持することができ、安定した画質が得られ、安定した記録材Pの搬送が可能となる。
導電性弾性体の硬度について、後述の表2に示すように、その硬度が20°未満の場合、感光体11などの対向部材と当接及び圧接させたときに十分な復元力を有することができずC−Set(Compression-Set:瞬時に弾性を示さない状態)を生じてしまうだけでなく、弾性体中の電子導電性充填剤間の距離が圧縮のため短くなり、屈曲点の検知式が成立しなくなってしまう。逆に、70°以上であると必要十分なニップ幅を得るために圧力を上昇させた結果、感光体11などの対向部材の磨耗劣化を生じやすい。
【0032】
本発明において、前記接触転写部材23を形成する導電性弾性体の弾性層は連泡を有することが好ましい。
上述したように、発泡層からなる弾性体中の発泡は連泡であることが好ましい。前記接触転写部材23の弾性層が連泡を有することにより、アスカーC硬度が25〜70°である接触転写部材を得ることを容易にすると共に、環境変化における前記接触転写部材23の体積膨張を最小限に抑えることができる。また、弾性層に含有される電子導電性充填剤間の距離が均一に保持され、屈曲点探索式を正確に維持することができる。
一方、単泡から構成される弾性層では環境変化による体積膨張が大きいため、電子導電性充填剤間の距離が変化し、屈曲点探索式の成立が困難であった。
【0033】
本発明において、前記接触転写部材23を形成する導電性弾性体の弾性層はソリッドゴムを有することが好ましい。
前記接触転写部材の弾性層がソリッドゴムを有することにより、環境変化における前記接触転写部材23の体積膨張を最小限に抑えることができ、弾性層に含有される電子導電性充填剤間の距離が均一に保持され、屈曲点探索式を正確に維持することが可能となる。また、接触転写部材23がローラ形状である場合はより精密な真円度、円筒度を、プレード形状である場合はより精密な真直度、平面度を出すことができる。
【0034】
本発明において、前記接触転写部材が無端状のローラ及びベルト形状からなることが好ましい。
前記接触転写部材23が無端状のローラ及びベルト形状であることにより、同一部分のみ通電して接触転写部材を形成する基質及び電子導電性充填剤を帯電してしまうことを防止できる。このため、屈曲点探索式を正確に維持することができる。また、感光体11との圧接を容易にして、転写に十分なニップ幅を得ることができる。記録材Pの適切な搬送も実現することができる。
印加定電圧をステップごとに増加させ変曲点を求め動作点とする方式では環境で大幅に特性が変化するので電圧増加では小刻みの電流増加しか得られず変曲点を求めるのに多数ステップを要する。
一方、本発明においては定電流駆動であるため、ステップごとの増加に際し電流値が小さい時は電圧変化が大きくなり、少ないステップ数で速やかに変曲点が求まり即応性に富んだ制御が可能になる。このため、紙間あるいは用紙先頭など即応性が要求される条件での動作で特に効果を発揮するものである。
また、定電圧を用いて紙間で変曲点を求める場合、定電圧制御では求めた電圧を紙の影響を考慮するため補正する必要があり不安定要因となる。
本発明における定電流方式では、紙の有無に影響されず変曲点が求まり得られた定電流動作点を補正することなく通紙状態での転写条件とするので、安定した転写が可能となり高信頼な転写ができる。
【0035】
従って、前記導電性弾性体を接触転写部材23として、OPC等の感光体11に当接または圧接し、供給電源として定電流装置を用い、供給電流を、その装置に一体或いは別体として設けた定電流制御手段で定電流制御することにより転写する。このような定電流制御を行うことは、
転写材幅サイズが接触転写部材の幅サイズよりも小さい場合においても転写電流供給不足を生じることがなく、転写効率が高く良好な画像を得ることができる。
【0036】
【実施例】
本発明の画像形成装置を以下の実施例に基づいて詳しく説明する。
先ず、図1に示す画像形成装置9の接触転写部材23である前記導電性弾性体は、具体的には以下の方法で作製する。すなわち、所望のカーボンブラック等の電子導電性充填剤を適宜配合したEPDMゴム組成部の構成材料を混練機にて60〜120℃で、5〜30分間混練して、押出成形機にてチューブ状に成形し、その内径部に基体1を嵌入する。そして120〜200℃で5〜30分間加硫し、2次加硫を150〜180℃で1〜4時間行う。この時、加流と同時に前述したアゾジカルボンアミドなどの発泡剤を入れ、平均気泡径が250μm以下で、且つアスカーC硬度が25〜70°の範囲内にある発泡弾性体を得ることができる。尚、発泡体ではなくソリッドゴムを作製する場合は発泡剤を混入する必要はない。
【0037】
加硫終了後、取り出した導電性弾性体は、所望の径となるよう必要に応じて表面研磨を施す仕上げを行うことにより、スキン層を除去し、ローラ形状である場合は外径、真円性、円筒度を、ブレード及びベルト形状である場合は真直度、平面度を出す。このようにして得られた導電性弾性体を接触転写部材23として、図1に示す画像形成装置に組み込み、OPC等の感光体11に当接または圧接し、供給する定電流値の決定は、電流を徐々に大きく流した際に電圧が急激に変化する屈曲点を示した電流値とした。その結果を以下に記す。
先ず、一般的な記録材において、3段階(LL:10℃及び30%以下の低温、低湿度環境、NN:10℃及び30%上回りかつ30℃及び70%未満の常温、常湿環境、HH:30℃及び70%以上の高温、多湿環境)に分類した。それぞれのLL、NN、HH環境に応じて、電源電流を徐々に大きくした際に電圧が急激に変化する電流−電圧の特性線から、それぞれの屈曲点を検出することができた(図3)。これは導電性弾性体に含有される導電性充填剤間の通電において、最近接の導電性充填剤間だけでなく、周囲近傍の導電性充填剤間に通電するためのしきい値を越え、供給電荷量過多による異常放電を起こさない程度で、通電経路が多くなるポイントである。
【0038】
適正な抵抗を有する導電性弾性体では、供給電流を徐々に増加させた時の5μA当たりの電圧値の上昇幅が110Vを最初に示す領域が屈曲点となった。表1に示すようにNN環境での屈曲点電流値は20μAであり、この屈曲点を示す電流値より小さい電流では導電性弾性体に含有される最も近い導電性充填剤間でのみ通電するので、導電性弾性体表面での抵抗むらが転写後における記録材上のトナー像の濃度むら等を生じさせた。また、屈曲点を示す電流値より大きい電流では導電性弾性体に含有される導電性充填剤は最も近い導電性充填剤だけでなく、近傍の導電性充填剤に通電することになるので、転写後の記録材上のトナー像にむらを生じることはないが、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じ良好な画像を得る事はできなかった。
これに対し、屈曲点を示す電流値にて転写すると、供給電荷量不足による転写後における記録材上のトナー像の濃度むらや、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じることなく、転写効率が高く良好な画像を得る事が可能となった。
また、このような定電流制御を行うことによって、転写材幅サイズが導電性弾性体の幅サイズよりも小さい場合においても転写電流供給不足を生じることなく、転写効率が高く良好な画像を得ることが可能となった。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、接触転写部材23としての導電性弾性体を構成する材質について測定した。
導電性弾性体の基材弾性体及びその抵抗調整のために添加する導電性充填剤に、無極性高分子と電子導電性充填剤としてEPDMとカーボンブラックを採用することにより、環境変化による体積抵抗率変動をほとんど生じさせない導電性弾性体が得られた。即ち、図4に示すように、LL環境(5℃、20%)からHH環境(35℃、80%)下で、体積抵抗率が1桁オーダーも変動していない導電性弾性体が得られた。この環境変下で体積抵抗率変動をほとんど起こさない導電性弾性体及びその材料を採用することで、画像形成装置内に転写条件確認のための温度、湿度センサー及び印加電圧を制御する制御システムが不要となる。このような構成からなる導電性弾性体はその導電経路が電子導電性充填剤間の通電にのみ限定されるので、図5に示す如く、前記の屈曲点が明確に生じやすく、適正な転写電流を検知しやすくなる。
【0041】
次に、導電性弾性体のアスカーC硬度について測定を行った。
表2に示すように、アスカーC硬度が20°以下の場合、感光体11などの対向部材と当接及び圧接させたときに十分な復元力を有することができずC−Setを生じてしまうだけでなく、弾性体中の電子導電性充填剤間の距離が圧縮のため短くなり、屈曲点の検知式が成立しなくなってしまう。一方、硬度が70°以上であると、必要十分なニップ幅を得るために圧力を上昇させた結果、感光体11などの対向部材の磨耗劣化を生じてしまう。
転写手段として使用した際、十分なニップ幅を得る事ができたのはその硬度が25〜70°の範囲であった。尚、表2においての評価は、○が良好、△が普通、×が不良である。
【0042】
【表2】
【0043】
接触転写部材23の形状は実施例ではローラで行ったが、無端状ベルトにおいて得られた結果は同じであり、また、その導電性弾性体はその構成に発泡層を含有する弾性層であっても、ソリッドゴムであっても同様であった。しかし、単泡から構成される弾性層では環境変化による体積膨張が大きいため、電子導電性充填剤間の距離が変化し、屈曲点の検知式は不成立におわった。従って、発泡層からなる弾性体中の発泡は連泡である方が好ましい。
また、ローラの場合は記録材の安定した搬送と、装置の小型化が可能であり、ベルトの場合はカラー画像形成装置においてタンデム方式を利用でき、スピードアップ及び記録材の安定した搬送などが良好である。尚、これらを実施した場合も、基本的に温度、湿度センサー及び印加電圧を制御する制御システムが不要となるので、装置の小型化及びコストダウンが可能となる。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明した通り、本発明の転写電流設定方法は、前記接触転写部材に電流を徐々に上昇させて流した際の電圧が急激に変化する屈曲点に応じた転写電流を前記接触転写部材に供給するので、転写後における記録材上のトナー像のむらがなく、供給電荷量過多による異常放電やブレイクダウンを生じることなく、転写効率の高い良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態を示す画像形成装置の概略図である。
【図2】図2は図1に示された接触転写部材の拡大断面図である。
【図3】図3は図1及び図2で示される接触転写部材(導電性弾性体)の異なる環境での電流供給に対する電圧値の変動を示す特性線図である。
【図4】図4は図1及び図2で示される接触転写部材(導電性弾性体)の各環境における体積固有抵抗率の変動線図である。
【図5】図5は図1及び図2で示される接触転写部材(導電性弾性体)の異なる材質での電流供給に対する各電圧値の変動を示す特性線図である。
【符号の説明】
1 ・・・ 基体
2 ・・・ 弾性体
3 ・・・ 導電性充填剤
9 ・・・ 画像形成装置
10・・・ 画像形成部
11・・・ 感光体
13・・・ 露光装置
15・・・ 転写装置
16・・・ 除電装置
17・・・ 定着装置
23・・・ 接触転写部材
24・・・ 定電流装置
Claims (1)
- 像担持体に当接させた接触転写部材を有し、前記像担持体と前記接触転写部材とで形成される転写ニップ部において記録材を挟持搬送させながら、前記像担持体上のトナー像を記録材上に転写する転写手段を具備する画像形成装置に、前記接触転写部材に電流を徐々に上昇させて流した際の印加電圧と電流との関係で、5μA当たりの電圧変化量をΔVnとし、ΔVn≦110Vの関係が成立しうる最小の印加電圧で示される屈曲点に対応する屈曲点電流に対して±10%の範囲内の電流値を転写電流として設定することを特徴とする転写電流設定方法。
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