JP3684093B2 - 液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ - Google Patents

液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ Download PDF

Info

Publication number
JP3684093B2
JP3684093B2 JP36806598A JP36806598A JP3684093B2 JP 3684093 B2 JP3684093 B2 JP 3684093B2 JP 36806598 A JP36806598 A JP 36806598A JP 36806598 A JP36806598 A JP 36806598A JP 3684093 B2 JP3684093 B2 JP 3684093B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
capillary force
ink
liquid
force generation
generation member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP36806598A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000015831A (ja
Inventor
英久 松本
博之 石永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP36806598A priority Critical patent/JP3684093B2/ja
Priority to DE69918368T priority patent/DE69918368T2/de
Priority to EP99108233A priority patent/EP0956958B1/en
Priority to US09/301,129 priority patent/US6460984B1/en
Publication of JP2000015831A publication Critical patent/JP2000015831A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3684093B2 publication Critical patent/JP3684093B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部へ液体を供給するために負圧を利用する液体供給システムに関し、より具体的には記録ヘッドに液体を供給して被記録媒体に印字記録する液体噴射記録装置における液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、インクジェットカートリッジおよび液体供給容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、外部へ液体を供給するために負圧を利用する液体供給方法としては、例えばインクジェット記録装置分野では、インク吐出ヘッドに対して負圧を与えるインクタンクが提案され、記録ヘッドと一体化可能にした構成(インクジェットカートリッジ)が実施されてきた。インクジェットカートリッジは、さらに分類すると、記録ヘッドとインクタンク(インク収容部)とが常時一体の構成と、記録手段とインク収納部が別体で、かつ記録装置に対して双方とも分離でき、使用時に一体にして使用する構成とに分けることができる。
【0003】
このような液体供給システムにおいて負圧を発生させるための最も容易な方法の一つとして、多孔質体の毛管力を利用する方法が挙げられる。この方法におけるインクタンクは、インクタンク内部全体にインク貯蔵を目的として収納、好ましくは圧縮収納されたスポンジ等の多孔質体と、印字中のインク供給を円滑にするためインク収納部に空気を取り入れ可能な大気連通口とを含む構成となる。
【0004】
しかし、多孔質部材をインク保持部材として使用する場合の課題として、単位体積当たりのインク収納効率が低いことが挙げられる。この課題を解決するために、本出願人は、EP0580433号公報において、負圧発生部材収納室に対して連通部を除く全体が実質密閉のインク収納室を有し負圧発生部材収納室を大気に開放した状態で使用されるインクタンクを提案している。また、EP0581531号公報において、上述のインクタンクに対して、インク収納室を交換可能にした発明を提案している。
【0005】
上述のインクタンクは、インク収納室内のインク導出に伴って気体がインク収納室内に収納される気液交換動作によってインク収納室から負圧発生部材収納室へのインク供給が行われるために、この気液交換動作中は、ほぼ一定の負圧条件下でインクを供給できるメリットがある。
【0006】
一方、本出願人は、EP0738605号公報において、略多角柱形状の筐体と、筐体の内面と同等もしくは相似形の外面を有し内部に収納される液体の導出に伴い変形可能な収納部と、を備え、収納部の厚さを、略多角柱形状の各面の中央域より角部を構成する部分を薄くすることを特徴とする液体収納容器を提案している。この液体収納容器は、液体の導出に伴い収納部が適当に収縮する(現象的には気液交換をしていない)ことで、負圧を利用しながら液体供給ができるものである。そのため、従来の袋状のインク収納部材に比べて、配置する位置に制限されることがなくなり、キャリッジ上に配置することができる。また、収納部に直接インクを保持することで、インク収納効率の向上という点からも優れた発明である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したような負圧発生部材収納室と、これに対するインク収納室とを隣接させたタイプのインクタンクは、予め定められている固定された収納空間をもつインク収納室のインクを負圧発生部材収納室へ供給する際に、インク収納室内に気体を導入する気液交換を行うものである。
【0008】
従って、インク収納室のインクを負圧発生部材収納室へ供給すると、それに連動してインク量に相当する外気の導入が行われるため、インク収納室内には外気とインクとが存在することになる。この外気がプリンタの使用される環境変化(例えば一日の温度差)により膨張することで、インク収納室内のインクが負圧発生部材収納室側へ導出されることがある。そのため、従来は、その膨張割合に対するインク移動量を種々の使用環境とともに考慮して、実用上は負圧発生部材に最大限のバッファ空間を確保し結果的にインク収納室内の内容積をあまり大きくできない場合があった。
【0009】
本発明の第1の目的は、上述の課題に対して従来技術とは異なる方法で対応することにより、種々の使用環境下であっても、インクタンク(液体収納容器)の液体収納量を大幅に増大しつつ、安定した液体供給を行うことのできる新規な液体供給システム、液体収納容器、及びインクジェットカートリッジを提供することである。
【0010】
本発明の第2の目的は、上記目的に加えて、上記インク収納室(液体収納室)のインク(液体)を使い残りのないよう消費可能な、液体供給システム、液体収納容器及びインクジェットカートリッジを提供することである。
【0011】
本発明の第3の目的は、上記第1または第2の目的に加えて、あるいは単独で、上記インク収納室(液体収納容器)が交換可能な液体供給システムにおいて、より実用性に優れた液体供給システム及び該システムに用いられる液体供給容器を提供することである。
【0012】
加えて、本発明のその他の目的は、上記液体供給システムを適用可能なヘッドカートリッジなど、関連する諸発明を提供することである。
【0013】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、負圧発生部材収納室とインク収納室とを有するタイプのインクタンクの、空気が入ったインク収納室の状況を詳細に分析することになった。その結果、インク収納室内のインクの負圧発生部材収納室への供給は気体の導入と連動して行なわれていることから、インク収納室から負圧発生部材へ移動するインク量に規制を与えればよいという知見を得た。
【0014】
そして、更なる分析の結果、インク収納室内に存在する空気の外部環境の変化による膨張を阻止することはできないが、このインク収納室内における空気の膨張をインク収納室内で許容する、という従来とは異なる逆転の発想を想起するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の諸目的を達成するための本発明の具体的な手段は以下の構成から理解できよう。
【0016】
本発明の液体供給システムは、密閉空間内に液体を収納し変形することで負圧を発生可能な液体収納部を備えた液体供給容器と、
前記液体供給容器に対して着脱可能であり、内部に液体を保持するそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納するとともに、外部に液体を供給するための液体供給部と、大気に連通する大気連通部とを備え、前記液体供給容器との連通部を介して前記液体収納部内に気体を導入して液体を導出させる気液交換を生じせしめることのできる毛管力発生部材収納容器とを有し、
前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されており、
前記連通部は前記毛管力発生部材収納容器の上面に設けられるとともに、
前記液体供給容器は前記毛管力発生部材収納容器の上方に前記連通部を介して装着され、前記液体供給容器内の液体を前記毛管力発生部材収納容器に移動させることを特徴とする。
【0017】
本発明の液体供給システムによれば、液体供給容器と毛管力発生部材収納容器との装着後に液体収納部内の液体の一部を毛管力発生部材収納容器に移動させることで、液体収納部は液体導出に伴って変形しているので、環境変化により液体収納部内の空気などが膨張したとしても液体収納部が元の形状に戻ることでその影響は緩和される。しかも、液体供給容器は毛管力発生部材収納容器の上面に装着されるので、液体供給容器から毛管力発生部材収納容器への液体の供給方向は重力に従う方向となり、安定した供給状態が維持される。
【0019】
本発明の液体収納容器は、外部に液体を供給するための液体供給部と、大気と連通する大気連通部とを備え、内部に液体を保持可能なそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納する毛管力発生部材収納室と、
前記毛管力発生部材収納室の上面に配される連通部と連通し前記毛管力発生部材収納室に対しての連通を除いて実質的な密閉空間を形成するとともに液体を収納する液体収納部を備え、前記毛管力発生部材の上方に配置された液体供給室とを有し、
前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されており、
前記液体収納部は液体の導出に伴い変形し負圧発生可能な部材により構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明は、インクジェット記録分野におけるヘッドカートリッジおよびインクジェットカートリッジにも適用可能なものである。
【0021】
本発明のヘッドカートリッジは、密閉空間内に液体を収納し変形することで負圧を発生可能な液体収納部を有する液体供給容器を着脱自在に保持するヘッドカートリッジであって、
外部に液体を吐出する記録ヘッド部と、
前記記録ヘッド部に液体を供給するための液体供給部と、大気と連通する大気連通部とを備え、内部に液体を保持するそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納する毛管力発生部材収納室と、
前記毛管力発生部材収納室の上面に設けられた、前記液体収納部と前記毛管力発生部材収納室とを連通させるための連通部と、
前記連通部によって前記液体収納部と前記毛管力発生部材収納室とが連通した状態で前記毛管力発生部材収納室上に前記液体供給容器を保持するために前記液体供給容器と係合する係合構造と、を有し、
前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明のインクジェットカートリッジは、外部に液体を吐出する記録ヘッド部と、
前記記録ヘッド部へ液体を供給するための液体供給部と、大気と連通する大気連通部とを備え、内部に液体を保持可能なそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納する毛管力発生部材収納室と、
前記毛管力発生部材収納室の上面に配される連通部と連通し前記毛管力発生部材収納室に対しての連通を除いて実質的な密閉空間を形成するとともに液体を収納する液体収納部を備え、前記毛管力発生部材の上面に配置された液体供給室とを有し、
前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されており、
前記液体収納部は液体の導出に伴い変形し負圧発生可能な部材により構成されていることを特徴とする。
【0024】
なお、本明細書中において、毛管力発生部材収納容器、液体収納容器とは、それぞれが互いに他方の容器に対して分離可能な場合に用いており、毛管力発生部材収納室、液体収納室とは、分離可能な形態の他、両者が常時一体の場合を含めて使用している。
【0025】
また、毛管力発生部材収納室の大気連通口近傍における液体の充填されていない領域とは、後述する毛管力発生部材がない空間(バッファ部)だけでなく、毛管力発生部材が存在していてもインクが充填されない場合も含む言葉として用いている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態および参考形態について図面を参照して説明する。
【0027】
なお、本発明の液体供給システムに用いられる液体として、以下の各形態ではインクを例にとって説明を行っているが、適用可能な液体としてはインクに限ることなく、例えばインクジェット記録分野にあっては記録媒体に対する処理液などを含むことはいうまでもない。
【0028】
(第1の参考形態)
図1は、本発明の第1の参考形態の、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの概略を説明するための図であり、インクタンクをヘッド付ホルダに装着する前の断面図を示す。また、図2は、図1に示したインクタンクとヘッド付ホルダとのインク通路に関する接続部の拡大図である。
【0029】
図1に示すように、インクジェットカートリッジは、内部にインクを収納する液体供給容器としてのインクタンク50と、インクタンク50を保持するタンクホルダ11、インクタンク50から供給されるインクを一時的に保持する毛管力発生部材収納室10および毛管力発生部材収納室10から供給されたインクを吐出して記録を行う記録ヘッド60が一体となったヘッド付ホルダ30とを有する。
【0030】
インクタンク50は、ヘッド付ホルダ30に対して着脱自在に設けられたもので、内部にインクを収納するインク収納部53、インク収納部53の液体を後述する毛管力発生部材収納室10へ導出するためのインク供給部52を備えている。また、インクタンク50は、室(筐体)を構成する外壁51と、外壁51の内面と同等もしくは相似形の内面を有する内壁54とにより構成される。
【0031】
インク供給部52はインクタンク50の一端側に位置しており、インクタンク50の下端面に開口している。また、外壁51のインク供給部52が位置する側の壁面には、ラッチ爪81を有するラッチレバー80が一体的に設けられている。インクタンク50をヘッド付ホルダ30に装着する前はインク供給部52はシール部材57で封止され、インク収納部53は大気に対して密閉状態となっている。
【0032】
内壁54は可撓性を有しており、インク収納部53は、内部に収納されたインクの導出に伴い変形可能である。また、内壁54は溶着部(ピンチオフ部)56を有し、この溶着部56で内壁54は外壁51に係合する形で支持されている。また、外壁51には大気連通口55が設けられており、内壁54と外壁51との間に大気を導入可能となっている。
【0033】
一方、ヘッド付ホルダ30は、上述したように、インクタンク50を保持するタンクホルダ11と、タンクホルダ11の底部に設けられた毛管力発生部材収納室10と、インク(処理液などの液体を含む)を吐出口61から吐出して被記録媒体に記録を行う記録ヘッド60とを有し、これらが一体となった構造となっている。
【0034】
毛管力発生部材収納室10は、ポリウレタンフォームなどの多孔質部材、またはポリエチレンやポリプロピレンなどからなる繊維状部材から構成される毛管力発生部材13を収納し、この毛管力発生部材13の毛管力によるインクの吸収現象を利用してインクを保持する。毛管力発生部材収納室10には、インクタンク50のインク供給部52と接続しインク収納部53と連通する連通管71が上壁に備えられるとともに、下壁には記録ヘッド60にインクを供給するための液体供給部としてのインク供給路12が開口している。インク供給路12の開口は連通管71の下方に位置している。つまり、連通管71およびインク供給路12の開口は、いずれも毛管力発生部材収納室10の一端部に設けられている。なお、インク供給路12の開口にはフィルタ70が設けられており、記録ヘッド60への異物の侵入を防止している。
【0035】
毛管力発生部材収納室10はさらに、大気導入溝17および大気連通口15を備えている。大気導入溝17は、後述する気液交換を促進するためのものであり、連通管71の近傍の上壁面内側に、毛管力発生部材収納室10の大気連通口15側に向かって水平方向に形成され、連通管71の内部と連通している。大気連通口15は、毛管力発生部材13と外気とを連通させるためのものであり、毛管力発生部材収納室10の他端壁に形成されている。毛管力発生部材収納室10の、大気連通口15の近傍は、毛管力発生部材13が存在しないバッファ部16となっている。本形態においては、連通管71は、毛管力発生部材13と当接するとともに、その端部は大気導入溝17とも連続しており、後述する液体供給動作をスムーズに実現することが可能となっている。
【0036】
なお、図1を含め以下の各断面図において、毛管力発生部材13がインクを保持している領域については斜線部で示す。また、インク収納部53や大気導入溝17、気液交換通路などのような空間内に収納されているインクを網線部で示す。
【0037】
ここで、インクタンク50のインク供給部52の近傍、およびヘッド付ホルダ30の連通管71の近傍の構造について、図2を参照して詳細に説明する。
【0038】
連通管71の内部には、インク誘導体75が挿入されている。インク誘導体75は、インクを連通管71の上端から毛管力発生部材13まで良好に導くためのものであり、例えばフェルト状のものや、繊維状体を連通管71の軸方向に沿って束ねたものなどが用いられる。連通管71の内壁には、大気導入溝17に連通するとともにインク誘導体75に接続する大気導入路72が連通管71の上端から下端にわたって形成される。さらに、連通管71には、連通管71の管壁の一部を軸方向に沿って除去したスリット73が形成される。
【0039】
毛管力発生部材収納室10の上壁には、連通管71を取り囲むベローズ74が固定されている。このベローズ74は、インクタンク50のインク供給部52に連通管71を挿入する際のインク漏れを防止するためのものであり、その高さは連通管71の高さよりも高くなっている。ベローズ74は、ゴムなどの弾性体で構成することができる。インク供給部52に連通管71を挿入した際に連通管71とベローズ74との間に漏れたインクは、スリット73を介して毛管力発生部材収納室10内に流れ込むことができる。
【0040】
一方、インクタンク50のインク供給部52に溶着されたシール部材57は中央部に開封溝87が形成され、インク供給部52を連通管71に対して押し込むことによってシール部材57が開封溝87で破られ、インク供給部52内に連通管71が挿入される構成となっている。
【0041】
再び図1に戻り、本形態のインクタンク50は、略直方体形状をなす6つの平面から構成され、円筒状のインク供給部52が曲面として付加されたものであり、この直方体形状の最大面積面は、図1上で間接的に表示されている。そして、内壁54の厚さは、直方体の各面の中央域より頂点部分(頂点部分が微小曲面形状をなす場合も含め、以下、角部と称する)を構成する部分の方が薄く、各面の中央域から前記角部それぞれに向かって徐々に減少しており、インク収納部内側に凸の形状を有している。この方向は、言い換えると面の変形方向と同じであり、後述する変形を促進させる効果を有する。
【0042】
また、内壁54の角部は3面により構成されているので、結果として内壁54の角部全体の強度は中央域の強度に比べ相対的には強くなっている。また、面の延長から見れば、中央域に比べて厚さは薄いので後述する面の移動を許容する。この内壁54の角部を構成する部分は、それぞれほぼ同等の厚さであることが望ましい。
【0043】
なお、図1は模式的概略図であるため、インクタンク50の外壁51と内壁54とは接触しているように描かれているが、実際は分離可能な状態になっていればよく、内壁54と外壁51が接触していても、微小な空間を隔てて配置されるように構成されていてもよい。ただし、インクタンク50をヘッド付ホルダ30に装着する前、すなわちインクタンク50の使用前においては、内壁54は外壁51の内面形状に沿って、少なくとも外壁51の角部に内壁54の角部がくるように成形されている(この状態を、初期状態と称する)。
【0044】
このとき、インク収納部53内については、シール部材57を開封した際にインク供給部52がわずかに負圧となるよう、インク収納部53に収納可能なインク量よりわずかに少ないインクを収納しておくと、外力、温度変化、気圧の変化からシール部材57の開封時にインクが外部に漏出することをより確実に防ぐことができる。
【0045】
また、このような環境変化に対する観点から、接続前のインク収納部53に収納される空気の量は極めて少ないことが望ましい。インク収納部53内に収納される空気量を減らすためには、例えば特開平10−175311号公報に開示されるような液体注入方法を用いればよい。
【0046】
一方、毛管力発生部材収納室10の毛管力発生部材13は、この液体供給システムの使用前を除き、通常はその一部に、毛管力発生部材13を介して大気導入溝17が大気と連通した状態でインクを保持している。
【0047】
ここで、毛管力発生部材13に収納されるインク量は、後述するインクタンク50の交換時に毛管力発生部材13に収納されていたインク量によるので、多少のばらつきがあってもよい。また、大気導入溝17及び連通管71に関しては、必ずしも液体で充填されている必要はなく、図1に示すように空気を含んでいてもよい。
【0048】
次に、本液体供給システムのインクの液体供給動作について、図3〜図8を用いて説明する。図3〜図7のそれぞれは、図1に示す液体供給システムのインクタンク50をヘッド付ホルダ30に装着し、記録ヘッド60からインクを吐出したときの変化を図3〜図7の順に示す概略説明図であり、(a)は、図1と同じ断面による断面図、(b)は、図1のA−A線断面図を示している。また、図8は、図1に示すインク供給口O(毛管力発生部材収納室10へのインク供給路12の開口部)からのインク導出量とインク供給口部の負圧の関係を示す説明図であり、横軸はインク供給口Oからの外部へのインク導出量、縦軸はインク供給口部の負圧(静負圧)である。図8では、図3〜図7に示す負圧の変化の状態を矢印で示している。
【0049】
本形態のインクタンクの場合、インク供給動作は大別して、気液交換動作を行う前、気液交換動作中、気液交換動作後、の3つに分けることができる。そこで、以下、それぞれの動作について図面を用いて詳細に説明する。
【0050】
(1)気液交換動作前
図3(a)、(b)は、インクタンク50をヘッド付ホルダ30に装着した直後の、インクタンク50内のインクが毛管力発生部材収納室10へ導出される前の状態を示している。
【0051】
インクタンク50のヘッド付ホルダ30への装着は、ヘッド付ホルダ30の上方からインクタンク50をタンクホルダ11の開口内に挿入することで行われる。これにより、インクタンク50の抜け止め爪82がタンクホルダ11の抜け止め穴84に嵌合するとともに、ラッチレバー80のラッチ爪81がタンクホルダ11の係合穴8に係合し、インクタンク50がタンクホルダ11に保持される。また、これにより図9に示すように、毛管力発生部材収納室10の連通管71が、シール部材57の開封溝87を突き破ってインク供給部52内に侵入し、インクタンク50のインク収納部53と毛管力発生部材収納室10とが連通する。この際、ベローズ74が先にシール部材57に接して連通管71の周囲を密閉した後、インクタンク50の挿入に伴ってベローズ74が圧縮されて連通管71がシール部材57を開封するので、シール部材57の開封時にインクがベローズ74の外部に流出することはない。
【0052】
インクタンク50がヘッド付ホルダ30に装着されると、インクタンク50内のインクは連通管71を通って毛管力発生部材収納室10に供給される。このとき、毛管力発生部材収納室10内では、図4(a)、(b)に示すように、毛管力発生部材収納室10とインクタンク50の圧力が等しくなるまで、図4(a)の矢印のようにインクが移動し、インク供給口12における圧力が負となる状態で平衡状態になる(この状態を、使用開始状態と称する。)。
【0053】
そこで、この平衡状態となるためのインク移動について、詳細に説明する。
【0054】
インクタンク50のインク供給部52に毛管力発生部材収納室10の連通管71を挿入すると、インク収納部53内のインクが連通管71へ流れて毛管力発生部材収納室10の毛管力発生部材13との間にインクパスが形成される。また、図3(a)で示す状態で空気が連通管71内に存在する場合、空気はインク収納部53へと移動する(なお、図4においてはこの空気は省略している。)。
【0055】
インクパスが形成されると、毛管力発生部材13の毛細管力により、インク収納部53から毛管力発生部材13へのインク移動が開始される。このとき、内壁54は、インク収納部53の体積が減少する方向に、面積最大の面の中央部から変形をはじめる。
【0056】
ここで、外壁51は内壁54の角部の変位を抑制する働きをするため、インク収納部53はインク消費による変形の作用力と初期状態(図1)の形状に戻ろうとする作用力とが働き、急激な変化をすることなく、変形の度合いに応じた負圧を発生するようになる。なお、内壁54と外壁51の空間は、大気連通口55を介して外気に連通しているので、上記変形に応じて内壁54と外壁51との間に空気が導入される。また、大気導入溝17へのインク導入については、本形態のようにインク収納部53の発生する負圧より大気導入溝17の毛管力が大きい場合はインクが充填される。
【0057】
インク移動が開始され、毛管力発生部材13にインクが充填されていくと、大気導入溝17の先端部(図示右端部)より大気連通口15側にもインクが充填されるようになり、大気導入溝17は大気とは連通しなくなる。すると、インクタンク50は毛管力発生部材収納室10を介してのみインク及び大気のやり取りを行なうようになるため、インクタンク50の気液交換通路における静負圧と、毛管力発生部材収納室10の連通管71における静負圧とが等しくなるように、さらなるインクの移動が行なわれる。
【0058】
すなわち、このときの毛管力発生部材収納室10側の負圧がインクタンク50側の負圧より大いので、両者の負圧が等しくなるまで、インクタンク50から毛管力発生部材収納室10へ更なるインク移動が行なわれ、それに伴い毛管力発生部材収納室10の毛管力発生部材13が保持するインク量が増大する。このように、インクタンク50から毛管力発生部材収納室10へのインクの移動においては、インクタンク50に毛管力発生部材13を介した気体の導入をすることなく行われる。平衡状態となった時のインクタンク50および毛管力発生部材収納室10の静負圧は、インク供給路12に接続されている記録ヘッド60からインクが漏れ出ないよう、記録ヘッド60の種類に応じて適切な値(図8のα)となるように設定すればよい。
【0059】
インクタンク50から移動可能なインク量の下限は、毛管力発生部材13の上面で大気導入溝17の先端位置(後述する気液界面)まで毛管力発生部材13をインク充填する時のインク量であり、上限は毛管力発生部材13を完全にインク充填する時のインク量となる。従って、接続前に毛管力発生部材13に保持されるインク量のばらつきを考慮したうえで、これらの上限、下限のインク量から毛管力発生部材13へ移動するインク量を決定すると、このインク量と平衡状態での負圧の値αをもとに毛管力発生部材13に対応したインク収納部53の材料、厚さを適切に選択することができる。
【0060】
また、接続前に毛管力発生部材13に保持されるインク量のばらつきが存在するため、平衡状態に達した場合でも、毛管力発生部材13の大気連通口15側にインクが充填されない領域が残っていることがある。この領域は、バッファ部16とあわせ、後述する温度や圧力の変化に対するバッファ領域として利用することができる。
【0061】
逆に、ばらつき量の影響により、平衡状態に達した時のインク供給口部の圧力が正になってしまう恐れのある時は、液体吐出記録装置本体に設けられる吸引回復手段により吸引回復を行ない、若干のインクを流出させることで対応してもよい。
【0062】
なお、接続時における連通管71内でのインクパスの形成は、接続時の衝撃を利用して行なってもよく、接続時にインク収納部53を外壁51ごと押圧するなど、インク収納部53を加圧することにより行なってもよい。また、接続前のインク収納部53をごく僅かな負圧状態にしておき、この負圧を利用して連通管71内の気体をインク収納部53へ移動させることを促進させてもよい。
【0063】
次に、図5に示すように、記録ヘッド60によりインクを吐出し、インクの消費を開始する。このとき、インク収納部53と毛管力発生部材13の双方の発生する静負圧の値が増大する方向にバランスを取りつつ、インク収納部53と毛管力発生部材13の双方に保持されたインクが消費される。(第1のインク供給状態、と称する。)
すなわち、記録ヘッド60からインクが消費されると、毛管力発生部材収納室10の毛管力発生部材13の液面位置が図示左方向すなわちインク供給口Oに向かって移動するとともに、インク収納部53がさらに変形し、インク収納部53の中央部分が内方に向かう安定した潰れかたが維持される。
【0064】
ここで、溶着部56も、内壁54の変形規制部分となり、最大面積を有する面に隣接する面について、相対的に溶着部56を有する領域より、溶着部56を有していない部分が先に変形を始め、内壁54が外壁51から離間する。なお、本形態では表面積最大の対向する面が、ほぼ同時に変形を行うため、より安定した変形を実現している。
【0065】
なお、図5に示す状態でのインク供給口Oからのインク導出量に対する静負圧の変化は、図8のAに示す領域のように、インク導出量に比例して静負圧が少しずつ増大する形となる。この第1のインク供給状態においても、インク収納部53には連通管71を経由して空気が入ることがない。
【0066】
(2)気液交換動作中
インク供給口Oからのインクの導出がさらに進むと、図6に示すように、インク収納部53に気体が導入されるようになる(以下、気液交換状態、または第2のインク供給状態と称する。)。
【0067】
このとき、毛管力発生部材13の液面位置は大気導入溝17の先端部でほぼ一定(気液界面86)であり、大気連通口15から大気導入溝17及び連通管71を経由した空気がインクタンク50に入ることで、インクタンク50からインクが連通管71のインク誘導体75を通じて毛管力発生部材収納室10の毛管力発生部材13へと移動する。
【0068】
従って、液体吐出記録手段としての記録ヘッド60によりインクが消費されてもその消費量に応じてインクが毛管力発生部材13に充填され、毛管力発生部材13は一定量のインクを保持し、また、インク収納部53も空気が導入されることで、気液交換時の形状をほぼ維持したままインクタンク50の負圧をほば一定に保つので、記録ヘッド60へのインク供給が安定する。図6に示す状態でのインク供給部からのインク導出量に対する静負圧の変化は、図8のBに示す領域のように、インク導出量に対し、ほば一定の値となる。
【0069】
以上、本形態のインクタンクの気液交換動作について説明したが、本形態の構成のような変形可能なインク収納部53の場合、気液交換中の動作は上述したものにとどまらない。
【0070】
従来のようなインク収納部が変形不可なインクタンク構成の場合は、大気のインク収納部への導入に伴い直ちにインクが毛管力発生部材に供給される。
【0071】
それに対し、本形態のようなインク収納部53が変形可能なインクタンク50の場合は、インク収納部53への大気の導入がなくても内部のインクを毛管力発生部材13に供給する場合もある。逆に、インクの消費に伴い大気がインク収納部53へ導入されてもすぐにインクが毛管力発生部材13側へ供給されない場合もある。これらはインク収納部53の変位及び毛管力発生部材収納室10との負圧バランスによるものである。
【0072】
このような動作の具体例については後述するが、本構成においては、従来のインクタンク構成とは異なる(従来の気液交換とはタイミングの異なる)気液交換動作を行う場合があり、この気液交換時におけるインク収納部53からのインク導出と、インク収納部53への気体の導入の時間的ずれによって、例えば急激なインクの消費、環境変化、振動等の外的要因に対してもバッファー効果、タイミングのずれにより安定的なインク供給に対しての信頼性が増すことができる。
【0073】
(3)気液交換動作後
さらにインク供給口Oからのインクの導出がさらに進むと、図7に示すように、インク収納部53のインクはほば完全に消費され、毛管力発生部材収納室10内に残存するインクを消費するようになる。図7に示す状態でのインク供給口Oからのインク導出量に対する負圧の変化は、図8のCに示す領域のように、インク導出量に比例して負圧が増大する形となる。このような状態になったら、インクタンク50を取り外しても、連通管71からインク漏れが生じる恐れは少ないので、インクタンク50を取り外し、新たなインクタンクと交換すればよい。
【0074】
図1に示す形態におけるインクタンクの液体供給動作は以上の通りである。
【0075】
すなわち、インクタンク50を毛管力発生部材収納室10と接続させると、毛管力発生部材収納室10とインクタンク50の圧力が等しくなるまでインクが移動して使用開始状態となり、その後、記録ヘッド60によりインクの消費が開始されると、まずはインク収納部53と毛管力発生部材13の双方の発生する静負圧の値が増大する方向にバランスを取りつつ、インク収納部53と毛管力発生部材13の双方に保持されたインクが消費される。その後、インク収納部53に気体が導入されることで毛管力発生部材13が気液界面86を保ちながらインクの導出に対しほぼ一定の負圧を保持する気液交換状態を経て、毛管力発生部材収納室10内に残存するインクを消費するようになる。
【0076】
このように、本発明では、インク収納部53へ外気を導入することなくインク収納部53のインクを使用する工程を有するため、このインク供給工程(第1のインク供給状態)においてインクタンク50の内容積の制限は、結合時においてインク収納部53に導入された空気のみを考慮すればよいことになる。すなわち、インクタンク50内の内容積の制限を緩和しても、環境変化に対応可能であるという利点がある。
【0077】
また、本発明によれば、インクタンク50内のインクをはぼ完全に消費することができるだけでなく、交換時に連通管71に空気を含んでいてもよく、毛管力発生部材13のインク保持量によらずインクタンク50の交換が可能であるので、従来技術のように残量検出機構を設けなくとも、インクタンク50を交換可能なインク供給システムを提供することができる。
【0078】
特に、インクタンク50は毛管力発生部材収納室10の上方に位置しているので、インクタンク50からインク供給口Oまでのインクの供給方向を重力に従う方向とすることができ、常に安定した供給状態を維持することができる。しかも、連通管71と接続する大気導入溝17を大気連通口15に近づく方向に水平に設けることで、上述した気液交換をスムーズに行うことができる。
【0079】
なお、図8に示すようにインク導出量に比例して負圧が増大し(Aの領域)、その後一定の値を保ち(Bの領域)、さらにその後インク導出量に比例して負圧が増大する(Cの領域)ためには、インク収納部の対向する変形面が互いに接するようになる前に、大気導入が行なわれる、すなわちAの領域からBの領域に移行することが望ましい。これは、対向する最大面積面が接触する前後で、インク収納室におけるインク導出量に対する負圧の変化の割合が異なるためである。
【0080】
さらに、この時のインク導出量に対する静負圧の変化を測定したところ、図10に示すような曲線を得た。そこで、インク収納部の内壁の材料や厚み、毛管力発生部材(負圧発生部材)の発生する毛管力を変化させることで、インク供給動作の詳細に関する以下のような知見を得た。
【0081】
ここで、図10は図8に示す負圧曲線の実際の一例を示す詳細説明図であり、図中の(1)、(2)、(3)は、前述の動作説明の(1)、(2)、(3)に対応する。また、図11は図10のB領域についての一例を示すさらに詳細な説明図、図12は図11に示すパターンの場合のインクタンクの動作を(a)〜(c)の順に示す説明図、図13は図10のB領域についての他の例を示すさらに詳細な説明図、図14は図13に示すパターンの場合のインクタンクの動作を(a)〜(c)の順に示す説明図である。図12及び図14において、添字1は図1と同じ断面による断面図、添字2は図1に示すインクタンクのA−A断面図を示している。なお各説明に使用する図はよりわかりやすくするためにインク収納部の変形等について多少極端に図示している。
【0082】
(1)図10の(1)領域の説明
本領域(気液交換動作前)を以下の3パターンにわけて説明する。それぞれのパターンは、毛管力発生部材の毛管力、インク収納室部の肉厚、材質等の条件やそれぞれのバランスによって変わるものである。
【0083】
<図10の領域(1)の第1パターン>
本パターンの場合は、一般的に毛管力発生部材に比べてインク収納部のほうが負圧制御に対して支配的である場合に起こるものである。具体的には、インク収納部の肉厚が比較的厚い場合、またインク収納部内壁の剛性が比較的高い場合に起こる場合が多い。
【0084】
初期状態からのインク導出において、はじめに毛管力発生部材からのインクの導出が行われる。これはインク収納部からインクを導出する抵抗力より毛管力発生部材からインクが導出する抵抗力のほうが小さいためである。このようにはじめに毛管力発生部材からインクが導出された後は、毛管力発生部材とインク収納部とのバランスをとりながらそれぞれからインクが導出される。インク収納部からインクが導出される場合は、内壁が内面側に変形しながら行われるものである。
【0085】
<図10の領域(1)の第2パターン>
本パターンにおいては、前例の第1パターンと逆にインク収納部に比べて毛管力発生部材のほうが負圧制御に対して支配的である場合に起こるものである。この場合は、インク収納部の内壁が比較的薄い場合や、内壁の剛性が小さい場合に起こる場合が多い。
【0086】
初期状態からのインクの導出において、はじめにインク収納部からのインクの導出が行われる。これは毛管力発生部材からインクを導出する抵抗力よりもインク収納部からインクを導出する抵抗力が小さいためである。その後、前述したように毛管力発生部材とインク収納部とのバランスを取りながらそれぞれからインクが導出される。
【0087】
<図10の領域(1)の第3パターン>
本パターンにおいては、負圧制御に対して、毛管力発生部材とインク収納部とがほぼ同等の支配力を有する場合に起こる場合が多い。
【0088】
この場合、初期状態からのインク導出において、毛管力発生部材とインク収納部とがバランスをとりながらそれぞれからインクが導出されるものである。そのままバランスを取りながら後述する気液交換状態へと移行するものである。
【0089】
(2)図10の領域(2)の説明
次に気液交換動作領域について説明する。本領域は2パターンにわけて説明する。より詳細に説明するために、図10の(2)の領域の負圧曲線をより拡大した図にて説明する。
【0090】
<図10の領域(2)の第1パターン>
本パターンにおいては、一般的に毛管力発生部材に比べてインク収納部のほうが負圧制御に対して支配的である場合に起こるものである。具体的には、インク収納部の肉厚が比較的厚い場合、またインク収納部内壁の剛性が比較的高い場合に起こる場合が多い。
【0091】
気液交換動作領域において毛管力発生部材収納室からインク収納部へ大気の導入が行われる(図11領域a)。これは前述したそれぞれの負圧のバランスを緩和するためである。このインク収納部へのインクの導入により図12aに示すようにインク収納部53の内壁54が外方に微少変形する。また大気の導入に対して、インク収納部53から毛管力発生部材収納室10へのインクの供給が行われ毛管力発生部材収納室10の気液界面86が僅かに右方向へ移動する(図12a→b)。
【0092】
さらなる記録ヘッド60からのインクの導出により、本例においてはまず毛管力発生部材13からのインクの導出が行われる。それにより図に示すように毛管力発生部材収納室10の気液界面86が左方向に変化する(図11領域b)(図12b)。
【0093】
その状態を経て、次に毛管力発生部材13とインク収納部53のバランスを取りながら、それぞれからインクの導出の行われる。それにより毛管力発生部材13の気液界面86はさらに左方向に変化し、インク収納部53の内壁54は内方に変化する(図11領域c)(図12c)。
【0094】
その状態が続いた後に大気導入溝17を介して大気がインク収納部53へ導入され、図11の領域aへと移行する。
【0095】
<図10の領域(2)の第2パターン>
本パターンにおいては、前例とは逆にインク収納部に比べて毛管力発生部材のほうが負圧制御に対して支配的である場合に起こるものである。この場合は、インク収納部の内壁が比較的薄い場合や、内壁の剛性が小さい場合に起こる場合が多い。
【0096】
前述したように、気液交換動作領域において毛管力発生部材収納室からインク収納部へと大気の導入が行われる(図13領域a’)。このインク収納部へのインクの導入により図14aに示すようにインク収納部53の内壁54が外方に微少変形する。またエアの導入に対して、インク収納部53から毛管力発生部材収納室10へのインクの供給が行われ毛管力発生部材収納室10の気液界面86が僅かに右方向へ移動する(図13a’→b’)。
【0097】
さらなる記録ヘッド60からのインクの導出により、本パターンにおいては、インク収納部53から支配的にインクの導出が行われる。この場合、インク収納部53の肉厚、剛性の特性から負圧はあまり変化せずになだらかな負圧上昇となる。このインクの導出により徐々にインク収納部53の内壁54が内方へ変形する。(図13領域b’)なおこの領域においては毛管力発生部材13からのインク導出はほとんど行われないため、毛管力発生部材13の気液界面86はほとんど変化しない。
【0098】
領域b’を経て、さらにインクの導出が行われると、毛管力発生部材13とインク収納部53とのバランスを取りながらそれぞれからインクが導出される図13領域c’へと移行する。この領域においては、前述したように毛管力発生部材13の気液界面86は左方向に変化し、インク収納部53の内壁54は内方に変化する(図13領域c’)(図14c)。
【0099】
その状態が続いた後に大気導入溝17を介して大気がインク収納部53へ導入され再び図13a’領域へと移行する。
【0100】
(3)図10の(3)領域の説明
最後に気液交換領域後の図10の領域(3)の領域について説明する。
【0101】
本領域は、インクの導出が進み気液交換が終わった後、すなわちインク収納部内のインクがほとんど導出され、主に毛管力発生部材内のインクのみが導出される場合のものである。本領域を以下の2パターンにわけて説明する。
【0102】
<図10の領域(3)の第1パターン>
本例においては、気液交換領域後、インク収納部内の圧力が略大気圧になる場合を説明する。
【0103】
前述した気液交換が終了した状態において、インク収納部内のインクはほとんど消費されている。気液交換が終了した状態では、一般的に大気連通路、毛管力発生部材収納室とインク収納部との連通路(連通管)、もしくは毛管力発生部材にメニスカスがはっている。しかし、毛管力発生部材内の気液界面が大気導入溝の先端部よりも連通管に近い位置にある場合にキャリッジ振動などの要因で上記メニスカスが破れる。それにより大気が大気連通溝を介してインク収納部と連通状態になる。それによりインク収納部内が略大気圧になる。それにより内方に変位していたインク収納部の内壁が、それ自身の弾性力によりもとの状態に戻ろうとする。しかし、一般的には初期状態には完全には戻らない。これは、インク収納部からのインクの導出時にある状態以上内方に変形するといわゆる座屈がおきる場合が多い。それによりインク収納部内が大気圧になった状態においても完全にはもとの状態には戻らないことが多い。
【0104】
このようにインク収納部内が大気圧状態になって、内壁がもとの状態に戻った後は毛管力発生部材内のインクが導出されることで、毛管力発生部材内の気液界面の位置がインク供給口に近づく。それにより負圧も略比例状態で増大する。
【0105】
<図10の領域(3)の第2パターン>
次に本パターンでは、毛管力発生部材の気液界面が大気導入溝の先端部よりも連通管に近づいた場合においてもインク収納部内が負圧状態を維持する場合について説明する。
【0106】
前述したように、大気導入溝内、連通管、毛管力発生部材内のメニスカスによりインク収納部内は大気と遮断されている。その状態のままインクが消費され、毛管力発生部材内の気液界面が連通管に向かって移動しつづける場合がある。それによりインク収納部の内壁は内方に変形状態を維持したままで毛管力発生部材内のインクが消費される。
【0107】
ただしこの場合においても、インク消費途中でキャリッジ振動、環境変化などの要因により上記メニスカスが破れ、インク収納部内が略大気圧になる場合がある。この場合は前述したようにインク収納部の内壁は略もとの状態に戻る。
【0108】
以上説明したように、本願の構成における気液交換動作の現象の特徴として、気液交換中の圧力変動(振幅γ)が従来の気液交換を行うインクタンクシステムに比べて比較的大きいことがあげられる。
【0109】
この理由として、本構成では図10領域(1)にて説明したように、気液交換を行う以前にインク収納部からのインクの導出により、内壁がタンク内方に変形した状態になっている。そのため内壁の弾性力によりインク収納部の内壁は常に外方へ向かう力が働いている。そのため気液交換時に毛管力発生部材とインク収納部との圧力差を緩和させるためにインク収納部内に入るエアの量が、所定以上に入る場合が多い。それによりインク収納部から毛管力発生部材収納室へのインクの導出も多くなる傾向にある。それに対して、従来のシステムであるインク収納部が変形しない構成の場合は、所定量のエアが入ることにより直ちに毛管力発生部材収納室へインクを導出するものである。
【0110】
また、たとえばベタモードの印字を行う場合、記録ヘッドから一度に大量のインクが吐出される。それによりインクタンクからも急激にインクの導出が行われるが本構成のインクタンクにおいては、気液交換によるインクの導出が従来に比べて比較的多いので、インク切れの心配がなく信頼性が向上する。
【0111】
また本構成によればインク収納部が内方に変形した状態でインクの導出が行われるため、キャリッジなどの振動、環境変化などによる外的要因に対してのバッファー効果が高い。
【0112】
ここで、以上説明した一連のインク消費過程における動作について、図10(b)にてさらに別の観点で説明する。
【0113】
図10(b)において、横軸に時間、縦軸にインク収容部からのインク導出量とインク収容部への空気同入量の一例を示す。また、経過時間においての記録ヘッドからのインク供給量は一定とする。
【0114】
以上の観点で、インク収容部からのインク導出量を実線▲1▼、インク収容部への空気導入量を実線▲2▼で示す。
【0115】
t=0からt=t1までは、図10(a)で示した気液交換前の領域(A領域)に相当する。本領域では、前述したように毛管力発生部材からとインク収容部からのバランスをとりながらインクが記録ヘッドから導出される。各々の導出パターンについては、前述した通りである。
【0116】
次にt=t1からt=t2までは、図10(a)の気液交換領域(B領域)に相当する。本領域では、前述したような負圧バランスに基づき、気液交換が行われる。図10(b)の実線▲1▼で示すように、インク収容部内にエアが導入される(実線▲2▼の段差で示される)ことによりインク収容部からインクが導出される。その際に、エアの導入に伴い直ちに導入されたエアに等しい量のインクがインク収容部から導出されるわけではなく、例えばエアの導入からある所定時間を経た後、最終的に導入されたエアに等しい量のインクが導出されるようになっている。この図からも明らかなように、前述したような従来のインク収容部が変形しないインクタンクの動作に比べてタイミングのずれが生じるものである。以上のように気液交換領域においてこの動作が繰り返される。ある点で、インク収容部内のエアの量とインクの量とが逆転する点を経る。
【0117】
t=t2を過ぎると、図10(a)で示す気液交換後の領域(C領域)となる。この領域では、前述したようにインク収容部が略大気圧になる。(条件によっては、大気圧状態にならない場合があることは前述した通りである。)それに伴い、インク収容部の内壁の弾性力により初期状態にもどる動作となる。ただし、前述したように、いわゆる座屈により完全には初期の状態には戻りきらない。そのためインク収容部への最終的な空気導入量Vcは、インク収納部での初期のインク量Vよりも少ない。本領域でもインク収容部からのインクはすべて使い切る状態となる。
【0118】
次に、インク消費途中の各状態において、インクタンクを交換した場合の動作について、図15を用いて説明する。
【0119】
(a)気液交換前にインクタンクを交換した場合(図15a)
この気液交換前の状態は、前述したように、毛管力発生部材、インク収納部、毛管力発生部材とインク収納部とが相互のバランスをとりながらインクを消費している。この状態において負圧は略比例状態で増大している。また毛管力発生部材内の気液界面は大気導入溝の先端よりも連通管に近い位置にある。
【0120】
この時点でインクタンクを交換した場合、一般的にインク収納部は初期において負圧は弱く、また正圧状態の場合もあるので、インクタンクを新たに装着した場合、インク収納部のインクが毛管力発生部材に供給され、毛管力発生部材収納室内のインク保持量が増え、両者のバランスがとれた点で気液界面が安定する。この場合、毛管力発生部材の連通管から最も離れた位置には前述したバッファー領域を有するため、気液界面の位置が連通管から離れる方向に移動したとしても大気連通口からのインク漏れはない。
【0121】
インクタンクの装着により負圧がさがり、また場合によっては正圧になることがあるが、タンク装着時の初期回復などを行うことで速やかに適正な負圧状態を形成することが可能である。その後は前述した消費パターンによりインクが消費される。
【0122】
なお、毛管力発生部材収納室の気液交換経路近傍の毛管力発生部材がインクで充填されていなくても、本発明の液体供給システムの場合、インク収納部から毛管力発生部材収納室へのインクパスが形成されれば、毛管力発生部材収納室の毛管力を利用してインク収納部内のインクを毛管力発生部材へと移動させることができる。従って、結合部近傍の毛管力発生部材のインクの保持状態に関わらず、装着すれば確実にインク収納部のインクを使用することができる。
【0123】
(b)気液交換中にインクタンクを交換した場合(図15b)
気液交換動作中においては、前述したように一般的に毛管力発生部材内の気液界面の位置は、大気導入溝の先端部で安定し、インク収納部の内壁は内方に変形した状態である。
【0124】
この状態でインクタンクを取り外し、新たに初期状態のインクタンクを装着すると、前述したようにインク収納部内のインクが毛管力発生部材内に供給され、毛管力発生部材が保持するインク量が増える。すなわち気液界面が大気導入溝を超えた位置へ変位する。それによりインク収納部の内壁は内方に変位し、インク収納部内は若干の負圧状態になる。
【0125】
気液界面の位置が安定した後インクを消費すると、前述したような消費パターン((1)−1〜(1)−3)によりインクが消費される。そして所定の負圧になった場合に気液交換が行われる。
【0126】
(c)気液交換後にインクタンクを交換した場合(図15c)
気液交換後の状態は、前述したように毛管力発生部材内の気液界面は大気導入溝の先端よりも連通管に近い状態で、インク収納部は略大気圧でほぼ内壁がもとの状態にもどっているか、内部が負圧状態で内方変形状態を維持した状態である。
【0127】
この状態でインクタンクを交換した場合は、やはりインク収納部内のインクは毛管力発生部材側へ供給され、毛管力発生部材が保持するインク量は増える。この場合は、気液界面は一般的には大気導入溝を超えた位置まで達するが、大気導入溝よりも連通管に近い位置で気液界面がつりあう場合もある。このインクの導出によりインク収納部の内壁は内方へ変位し略負圧状態になる。
【0128】
気液界面が大気導入溝を超えた位置へ変位した場合には、前述した消費過程を経た後気液交換動作領域に移行する。また気液界面が大気導入溝よりも連通管に近い位置でつりあっている場合は、すぐに気液交換動作を行う。
【0129】
以上説明したように、(a)〜(c)の各消費過程においてインクタンクを交換した場合においても安定した負圧を発生することができそれにより確実なインク供給動作を行うことができる。
【0130】
さらに、本発明の構成によれば、第2のインク供給状態など、インク収納部に空気を含む場合においても、従来の方法とは異なる解決方法により、環境の変化に対応することが可能な構成となっている。
【0131】
そこで、次に、図1に示すインクタンクの、環境条件を変化させた場合の安定した液体保持のメカニズムについて図16及び図17を用いて説明する。
【0132】
図16は毛管力発生部材のバッファ吸収体としての機能、及びインク収納部のバッファ作用を説明する説明図であり、図6の状態(気液交換状態)から大気圧の減圧ないしは気温の上昇などによるインク収納部内の空気の膨張した時のインク収納部の変化を(a)〜(d)の順に示している。添字1は図1と同じ断面による断面図、添字2は図1に示すA−A線断面図を示している。
【0133】
大気圧の減圧(あるいは気温の上昇)により、インク収納部53内の空気が膨張すると、図16(b1)、(b2)に示すように、インク収納部53を構成する壁面(▲1▼)及び液面(▲2▼)が押圧され、インク収納部53の内容積が増加すると共に、一部のインクは連通管71を介してインク収納部53内から毛管力発生部材収納室10側へと流出する。ここで、インク収納部53の内容積が増加するために、毛管力発生部材13へ流出するインク量(図16(c1)の▲3▼に示される毛管力発生部材13の液面の移動)はインク収納部53が変形不能な場合に比べ大幅に少ないものとなる。
【0134】
ここで、連通管71を通じて流出するインク量は、気圧変化が急激な場合、インク収納部53内の負圧を緩和しインク収納部53内の内容積を増加させるため、インク収納部53の内壁面の内方への変形を緩和することにより生じる壁面の抵抗力と、インクを移動させて毛管力発生部材13に吸収させるための抵抗力と、の影響が初期的には支配的である
特に、本構成の場合、毛管力発生部材13の流抵抗が内壁54の復元に対する抵抗より大きいので、空気の膨張にともない、まず図16(a1)、(a2)に示すようにインク収納部53の内容積が増加する。そして、この増加分の上限より空気の膨張による体積の増加が大きい場合、図16(b1)、(b2)に示すように連通管71を介してインク収納部53内から毛管力発生部材収納室10側へインクが流出するようになる。つまり、インク収納部53の壁面が環境変化に対するバッファとしての機能を果たすため、毛管力発生部材13内のインクの移動が緩やかになり、インク供給口部における負圧特性が安定する。
【0135】
なお、本形態では毛管力発生部材収納室10に流出したインクは毛管力発生部材13で保持されるようにしている。この場合、図16(c1)、(c2)に示すように毛管力発生部材収納室10のインク量が一時的に増加して気液界面が図示右方向へ移動するので、使用初期と同様にインク内圧の安定期より一時的にやや正側の内圧になるが、記録ヘッド60などの液体吐出記録手段への吐出特性への影響は小さく、実使用上の問題はない。また、大気圧が減圧前のレベルに回復(1気圧に戻る)した場合(あるいは元の温度に戻った場合)は、毛管力発生部材収納室10に漏出して毛管力発生部材13に保持されていたインクが再びインク収納部53に戻ると共にインク収納部53の体積が元の状態へと戻るようになる。
【0136】
次に、気圧変化の後の初期的な動作の後、変化した気圧のもとで図16(d1)、(d2)に示す定常状態に至ったときの原理動作を図17を用いて説明する。
【0137】
この状態で特徴的なことは、インク収納部から導出されたインク量だけでなく、インク収納部自体の体積変化による負圧の変動に対してバランスを保つように、毛管力発生部材に保持されているインクの界面が変化することである。
【0138】
ここで、本発明における、毛管力発生部材のインク吸収量とインクタンクとの関係については、前述の減圧ないしは温度変化時の大気連通口などからのインクの漏れを防止するという観点から、インクタンクからの最悪条件下でのインク流出量と、インクタンクからのインク供給時に毛管力発生部材収納室に保持させるインク量とを考慮して毛管力発生部材収納室の最大インク吸収量を決め、少なくともその分の毛管力発生部材を収納するだけの容積を毛管力発生部材収納室に持たせれば良い。
【0139】
図17に、初期の空気の体積をVA1としたとき、大気圧下からP気圧(0<P<1)の減圧環境下にインクタンクの環境を変化させた場合の、時間の経過に伴うインク収納部からのインク導出量及びインク収納部の体積変化を模式的に示す。図17において、横軸は時間(t)、縦軸はインク収納部からのインク導出量及びインク収納部体積であり、インク収納部からのインク導出量の時間変化を実線▲1▼で、インク収納部の体積の時間変化を実線▲2▼で示す。
【0140】
図17において、t=ta、t=tb、t=tc、t=tdにに応するインクタンクの状態はそれぞれ、図16の(a)、(b)、(c)、(d)となっている。
【0141】
図17に示すように、急激な環境変化に対しては、最終的に毛管力発生部材収納室とインク収納部とが負圧バランスを保つ定常状態となる前に、主としてインク収納部で空気の膨張に対応することができる。従って、急激な環境変化に対して、インク収納部から毛管力発生部材収納室へのインク導出タイミングを遅らせることができる。
【0142】
従って、種々の使用環境下であっても、気液交換により導入された外気の気体膨張に対して許容力を高めつつ、インク収納部の使用中に安定した負圧条件下でインク供給を行うことのできるインク供給システムを提供することができる。
【0143】
本発明によれば、使用する毛管力発生部材及びインク収納部の材料を適宜選択することで、毛管力発生部材収納室とインク収納室との体積割合を任意に決定することができ、1:2より大きな場合でも、実用上使用することができる。
【0144】
特に、インクタンクのバッファ効果を重視する場合には、弾性変形可能な範囲内で使用開始状態に対する気液交換状態でのインク収納部の変形量を大きくするようにすればよい。
【0145】
なお、上述のインク収納部のバッファ効果を有効に機能させるためには、インク収納部の変形が少ない状態でインク収納部内に存在する空気量が少ないこと、すなわち、接続後、気液交換状態の前にインク収納部内に存在する空気の量はなるべく少ないことが望ましい。
【0146】
以上、本発明の第1の参考形態を用いて、本発明の要部について説明を行なったが、本発明を適用可能な他の実施形態および参考形態について、以下に説明する。なお、以下の各形態、及び上述の参考形態について、組み合わせ可能な要素については任意の組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0147】
(第2の参考形態)
図18は、本発明の第2の参考実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0148】
本形態では、毛管力発生部材収納室110の底壁に、毛管力発生部材113に吸収されるインクの気液界面186の横方向位置を規制するためのインクダム185を設けている。その他の構成は第1の参考形態と同様であるので説明は省略する。
【0149】
このようにインクダム185を設けることで、インクダム185よりも図示右側では毛管力発生部材113にインクは吸収されない。つまり、インクタンク150のインク収納部153の負圧を良好に維持しつつも、連通管171に対しインクダム185よりも離れた部位での過度のインクの吸収が抑制される。その結果、毛管力発生部材113内のインクが重力の影響を大きく受けても下方に広がることがなくなるので、連通管171からインク供給路までの間に安定的にインクを保持するとともに、気液界面186の位置を安定的に大気導入溝117の大気連通部側の端部近傍に定在させることができる。
【0150】
(第3の参考形態)
図19は、本発明の第3の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0151】
本形態では、毛管力発生部材213として、細孔の分布密度が水平方向に連続的に変化した、ポリウレタンフォームなどの多孔質部材を用いている。細孔の分布密度は、連通管271と当接される側の端部が最も高く、そこから離れるにつれて低くなっている。つまり、毛管力発生部材213は、連通管271と当接する部位の近傍で最もインクを吸収しやすく、連通管271から離れるにしたがってインクを吸収しにくい構造となっている。その他の構成は第1の参考形態と同様であるので説明は省略する。
【0152】
上述のような毛管力発生部材213を用いることで、連通管271から毛管力発生部材収納室210に導入されたインクは、連通管271の近傍で優先的に毛管力発生部材213に吸収され、連通管271から離れた部位での過度のインクの吸収が抑制されるので、連通管271からインク供給路までの間に安定的にインクを保持するとともに、気液界面286の位置を安定的に大気導入溝217の大気連通部側の端部近傍に定在させることができる。
【0153】
(第の実施形態)
図20は、本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0154】
本実施形態では、毛管力発生部材収納室310に3つの毛管力発生部材313a,313b,313cを収納している。各毛管力発生部材313a,313b,313cは、毛管力発生部材収納室310の連通管371が設けられた側である一端部から他端部に沿って配置され、連通管371にはそのうちの1つの毛管力発生部材313aが接触している。また、各毛管力発生部材313a,313b,313cは多孔質部材からなり、それぞれ細孔の分布密度が異なっている。細孔の分布密度は、連通管371と接触している毛管力発生部材313aが最も高く、次いで、その毛管力発生部材313aと接している毛管力発生部材313bが高く、連通管371から最も離れた位置にある毛管力発生部材313cが最も低くなっている。
【0155】
このように、それぞれ細孔の分布密度が異なる3つの毛管力発生部材313a,313b,313cを用い、最もインクを吸収しやすい毛管力発生部材313aを連通管371に接触して配置することで、連通管371から毛管力発生部材収納室310に導入されたインクは優先的に毛管力発生部材313aに吸収され、連通管371から離れた部位での過度のインクの吸収が抑制されるので、連通管371からインク供給路までの間に安定的にインクを保持するとともに、気液界面386の位置を安定的に大気導入溝317の大気連通部側の端部近傍に定在させることができる。なお、毛管力発生部材の数は3つに限られるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0156】
(第の実施形態)
図21は、本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0157】
本実施形態も第の実施形態と同様に、毛管力発生部材収納室410にそれぞれ細孔の分布密度が異なる3つの毛管力発生部材413a,413b,413cを収納したものであるが、各毛管力発生部材413a,413b,413cの配置が第の実施形態と異なっている。すなわち、連通管471と接触する毛管力発生部材413aについては第の実施形態と同様に配置し、残りの2つの毛管力発生部材413b,413cを上下に配置している。また、各毛管力発生部材413a,413b,413cの細孔の分布密度については、最も高いのが連通管417と接触している毛管力発生部材413a、次いで、下方の毛管力発生部材413b、上方の毛管力発生部材413cの順になっている。その他の構成は第の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0158】
このように、連通管471と接触する毛管力発生部材413aを最もインクを吸収しやすいものとし、さらに、連通管471と接触していない毛管力発生部材413b,413cについては下方の毛管力発生部材413bのほうをインクを吸収しやすいものとすることで、気液界面の位置を安定的に大気導入溝417の大気連通部側の端部近傍に定在させつつ、毛管力発生部材収納室410内のインクの消費を重力に従ってスムーズに行わせることができる。
【0159】
(第の実施形態)
図22は、本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0160】
本実施形態は、上述した第3の参考形態と第の実施形態とを組み合わせたものに相当する。すなわち、毛管力発生部材収納室510には2つの毛管力発生部材513a,513bが収納され、各毛管力発生部材513a,513bは、毛管力発生部材収納室510の連通管571が設けられた側である一端部から他端部に沿って配置されている。また、各毛管力発生部材513a,513bは、それぞれ細孔の分布密度が水平方向に連続的に変化しており、いずれも連通管571に近い側の分布密度が高くなるように配置されている。
【0161】
これにより、連通管571から毛管力発生部材収納室510に導入されたインクの気液界面の位置をより安定的に大気導入溝517の大気連通部側の端部近傍に定在させることができる。
【0162】
(第4の参考施形態)
図23は、本発明の第4の参考形態である、液体収容容器を適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0163】
本形態のインクジェットカートリッジは、記録ヘッド660が取り付けられた箱状の筐体611の中に、第1の参考形態と同様の、インクを収納するインクタンク650および毛管力発生部材613を収納する毛管力発生部材収納室610が、一体となって収納されたものである。
【0164】
すなわち、インクタンク650は、外壁651と、可撓性を有する内壁654とで構成され、内壁654の内部にインクが収納される。インクタンク650の一端部の下壁にはインク供給部652が設けられており、インクタンク650は、毛管力発生部材収納室610の上壁に設けられた連通管671を介して、インクタンク650の下方に配置されている毛管力発生部材収納室610と接続されている。また、毛管力発生部材収納室610の、連通管671の近傍の上壁面内側には、連通管671の内部と連通する大気導入溝617が、毛管力発生部材収納室610の他端側に向かって延びて形成されている。
【0165】
筐体611には、筐体611の内部と外部とを連通する連通口690が形成されており、筐体611の内部はこの連通口690を介して大気と連通している。従って、インクタンク650の外壁651と内壁654との間には、連通口690および外壁651の大気連通口655を通じて大気を導入可能である。また、毛管力発生部材収納室610内には、連通口690および毛管力発生部材収納室610の大気連通口615を通じて大気を導入可能である。
【0166】
このように、インクタンク650と毛管力発生部材収納室610とを一体としたカートリッジにおいても、前述した第1の参考形態と同様に、インクタンク650内の内容積の制限を緩和しても環境変化に対応可能であり、しかも、常に安定した供給状態を維持することができる。
【0167】
なお、本形態では、毛管力発生部材収納室610は単に毛管力発生部材613を収納するものを示したが、インクの供給状態をより安定させるために、第2、第3の参考形態および第1〜第3の実施形態で述べたような、連通管671からの距離に応じ、連通管671から遠くなるほど連続的または段階的に毛管力を異ならせる構造を採用してもよい。
【0168】
(第5の参考形態)
図24は、本発明の第5の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0169】
本形態では、上述した形態に対して毛管力発生部材1013の形状が異なる。すなわち、インクタンク1050を着脱自在に保持するタンクホルダ1011と一体となった毛管力発生部材収納室1010は、使用状態において一部位が上方に立ち上がり、側方から見て略L字形状に構成され、それに伴って毛管力発生部材1013の形状及び大気導入溝1017の形状も略L字形状となっている。そして、インクタンク1050との結合部である連通管1071は、毛管力発生部材収納室の、L字形の水平部分の屈曲部近傍に設けられている。
【0170】
毛管力発生部材収納室1010の上方に延びた部分の上端部には大気連通口1015が設けられ、この大気連通口1015の近傍に毛管力発生部材収納室1010の内壁面から突出したリブにより、バッファ部1016が形成されるとともに、毛管力発生部材1013が毛管力発生部材収納室1010に圧縮保持されている。
【0171】
インクタンク1050は、上述した各形態と同様に、室を構成する筐体である外壁1051と、外壁1051と同等もしくは相似形の内面を有する変形可能な内壁1054とを有し、内壁1054の内側であるインク収納部1053にインクが収納される。また、毛管力発生部材収納室1010とインクタンク1050との結合部の構造も、上述した各形態と同様である。
【0172】
なお、図24においては毛管力発生部材収納室1010から記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給口は図示していないが、上述した各形態と同様に、毛管力発生部材収納室1010の底面の、連通管1071の近傍に設けることが好ましい。
【0173】
本形態のように毛管力発生部材1013を略L字形状とし一部位を立ち上げることで、毛管力発生部材1013の立ち上がった部位では重力方向の高さを高くすることが可能となるので、気温の変化や気圧の変化といった環境変化などによる外的要因に対してのバッファ効果をより向上させることができる。しかも、毛管力発生部材収納室1010が略L字形状であるので、上記のように外的要因に対するバッファ効果をより向上させつつも、L字形の水平部分において上面に連通管1071を設けることができ、インクタンク1050の着脱時のインクの漏れに関してもタンクホルダ1011側で受けることができる。
【0174】
また、本構成により、タンクホルダ1011とインクタンク1050の結合部の自由度が向上し、図24に示したような垂直着脱方式や、前述した形態のようなラッチレバー方式等の種々の結合方法が可能となる。さらに、前述したように、インクタンク1050の装着時における連通管1071でのエアー引き込みや、気液交換時のエアー引き込みに対してもよりスムーズな動作が可能となる。
【0175】
(第6の参考形態)
図25は、本発明の第6の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0176】
本形態も第5の参考形態と同様に略L字形状の毛管力発生部材1113を備えるものであるが、毛管力発生部材1113の水平部分すなわちインクタンク1150の下方に位置する部分の長さを第8の実施形態よりも短くし、インクタンク1150の下方では毛管力発生部材1113は連通管1171の近傍にのみ位置している。その他の構成は第5の参考形態と同様である。
【0177】
このような構成により、毛管力発生部材1113のインク残存量をより少なくすることができ、より有効にインクを使用することが可能となる。なお、本形態においても、上述したバッファ効果が損なわれることはない。
【0178】
(第7の参考形態)
図26は、本発明の第7の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0179】
本実施形態は、第6の参考形態に対して、毛管力発生部材収納室1210の内壁面に形成された大気導入溝1217の形状が異なっている。第6の参考形態では大気導入溝はL字形状であったが、本形態では大気導入溝1217は、略L字形状の毛管力発生部材収納室1210の立ち上がり部分のみに形成されている。その他の構成は第6の参考形態と同様である。
【0180】
このように大気導入溝1217を毛管力発生部材収納室1210の立ち上がり部分のみに形成した場合でも、気液交換の際には、連通管1271を介してインクタンク1250から毛管力発生部材収納室1210に導入された空気は毛管力発生部材収納室1210の水平部分の上面を伝わった後、大気導入溝1217に達する。これにより、上述した各形態と同様に気液交換を行うことができ、安定的なインク供給が可能となる。
【0181】
(第の実施形態)
図27は、本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。なお、本実施形態及び後述する第5、6の実施形態では、負圧発生部材に保持されているインクは図面上では省略している。
【0182】
本実施形態では、毛管力発生部材収納室1310の形状及び大気導入溝1317の形状は第6の参考形態と同様であるが、毛管力発生部材収納室1310に2つの毛管力発生部材1313a,1313bを収納している点が第6の参考形態と異なる。各毛管力発生部材1313a,1313bはそれぞれ多孔質部材で構成され、上下方向に配置される。また、下方の毛管力発生部材1313bの細孔の分布密度は上方の毛管力発生部材1313aの細孔の分布密度よりも高くなっている。つまり、下方の毛管力発生部材1313bは、上方の毛管力発生部材1313aよりも高い毛管力を発生する。また、2つの毛管力発生部材1313a,1313bの境界は、大気導入溝1317の上端よりも上方に位置している。
【0183】
このように、それぞれ細孔の分布密度が異なる2つの毛管力発生部材1313a,1313bを、下方に細孔の分布密度の高い毛管力発生部材1313bが位置するように上下に配置することで、毛管力発生部材収納室1310内の気液界面の位置を2つの毛管力発生部材1313a,1313bの境界部に安定的に形成することができる。その結果、毛管力発生部材1313a,1313bのインクの分布が安定し、インク切れが起こりにくくなるので、インク供給の信頼性が向上する。
【0184】
また、それぞれの毛管力発生部材1313a,1313bでは保持されるインクの界面のばらつきが存在することがあるが、2つの毛管力発生部材1313a,1313bの境界を大気導入溝1317の上端よりも上方に位置させることで、上方の毛管力発生部材1313a内のインクを十分使用した後、下方の毛管力発生部材1313bのインクを使用することができる。従って、毛管力発生部材収納室1310のバッファ領域を安定的に確保することができる。
【0185】
以上のことから、2つの毛管力発生部材1313a,1313bの境界位置は、大気導入溝1317の上端よりも上方で、できるだけ大気導入溝1317の上端に近い位置であることが好ましい。また、2つの毛管力発生部材1313a,1313bの境界部分で両者が互いに圧接するように毛管力発生部材1313a,1313bを配置すると、圧接部分での毛管力が高くなるため、上方の毛管力発生部材1313a内の領域のインクを十分使用した後、下方の毛管力発生部材1313b内のインクを使用することがより確実に行える。
【0186】
(第5の実施施形態)
図28は、本発明の第5の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0187】
本実施形態は第の実施形態を応用したものであり、それぞれ細孔の分布密度の異なる3つの毛管力発生部材1413a,1413b,1413cを毛管力発生部材収納室1410に収納している。各毛管力発生部材1413a,1413b,1413cは上下方向に配置され、細孔の分布密度は、上位位置の毛管力発生部材1413a、中間位置の毛管力発生部材1413b、下位位置の毛管力発生部材1413cの順に高くなっている。また、上位位置の毛管力発生部材1413aと中間位置の毛管力発生部材1413bとの境界は大気導入溝1417の上端よりも上方に位置し、中間位置の毛管力発生部材1413bと下位位置の毛管力発生部材1413cとの境界は、毛管力発生部材収納室1410のL字形状の角部(大気導入溝1417の下端部)よりも上方に位置する。その他の実施形態は第の実施形態と同様である。
【0188】
このように上下方向に3つの毛管力発生部材1413a,1413b,1413cを配置しているので、気液界面の位置が多少ばらついたとしても、中間位置の毛管力発生部材1413bの存在する領域をスイッチング領域としてその領域内に気液界面をとどめることができる。その結果、下位位置の毛管力発生部材1413cは常にインクを保持する領域(インクリッチ領域)にすることができ、より安定したインク供給を行うことができる。また、中間位置の毛管力発生部材1413bと下位位置の毛管力発生部材1413cとの境界を、大気導入溝1417の下端部よりも上方に位置させることで、中間位置の毛管力発生部材1413b内の領域のインクを十分使用した後、下位位置の毛管力発生部材1413c内のインクを使用することができる。従って、毛管力発生部材収納室1410内のバッファ領域をより安定的に確保することができる。
【0189】
本実施形態では中間位置の毛管力発生部材1413bの細孔の分布密度と下位位置の毛管力発生部材1413cの細孔の分布密度とが異なる場合について説明したが、両者が同等であってもよい。
【0190】
(第の実施形態)
図29は、本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0191】
本実施形態は、第の実施形態に対して毛管力発生部材収納室1510内に形成される大気導入溝1517の形状が異なる。第の実施形態では大気導入溝はL字形状であったが、本実施形態では、連結管の下方の水平部分のみに、連結管の開口部から毛管力発生部材収納室1510の立ち上がり部に向かって形成されている。その他の実施形態は第12の実施形態と同様であり、毛管力発生部材収納室1510には3つの毛管力発生部材1513a,1513b,1513cが収納されている。
【0192】
略L字形状の毛管力発生部材収納室1510内に3つの毛管力発生部材1513a,1513b,1513cを上下方向に配置し、しかも、中間位置の毛管力発生部材1513bと下位位置の毛管力発生部材1513cとの境界を毛管力発生部材収納室1510のL字形状の角部に位置させることで、本実施形態のように、大気導入溝1517を毛管力発生部材収納室1510の立ち上がり部に設けなくても、気液交換中の気液界面を、中間位置の毛管力発生部材1513bと下位位置の毛管力発生部材1513cとの境界の領域に形成することができる。それにより、安定的なインク供給が可能となる。また、気液界面をより下方に位置させることができるので、気温変化、温度変化といった環境変化時などに対してバッファ効果が高くなる。
【0193】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明を行なったが、以下に各実施形態に適用可能なその他の実施形態及び各実施形態の変形例についての説明を行なう。なお、以下の説明では、特に断りのない限りは、上述の各実施形態に適用可能である。
【0194】
<毛管力発生部材収納室の構造>
まずはじめに上述の各実施形態における毛管力発生部材収納室の構造について、補足説明を行なう。
【0195】
毛管力発生部材収納室(毛管力発生部材収納容器)に収納される毛管力発生部材としては、ポリウレタンフォームなどの多孔質部材の他、繊維をフェルト状にしたものや繊維塊を熱成形したものなどを用いることができる。
【0196】
上述の第1〜6の実施形態では毛管力発生部材としてそれぞれ細孔の分布密度の異なる多孔質部材を用いて毛管力を異ならせているが、これらの実施形態においても、毛管力発生部材として繊維状部材を用いることができる。毛管力発生部材として繊維状部材を用いる場合には、発生する毛管力をそれぞれの毛管力発生部材で異ならせるためには、多孔質部材の細孔に相当する繊維間の隙間を異ならせればよい。具体的な方法としては、使用する繊維径を異ならせる方法、繊維密度を異ならせる方法、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0197】
また、発生する毛管力が異なる複数の毛管力発生部材を用いた実施形態のうち、第4〜6の実施形態のように使用状態において上下方向に毛管力発生部材を配置した場合には、前述したとおり、毛管力発生部材収納室内のインクが上方から安定的に消費され、バッファ領域の確保の点で好ましいものであるが、この傾向は、毛管力発生部材として繊維状部材を用いると、より顕著に現れる。これは、繊維の場合は多孔質体に比べて流抵抗が少なく、他より僅かでもインクが通り易い場所があると、インクは優先的にそこから消費されるためである。
【0198】
連通管については、管状のもので説明したが、気液交換状態において気液交換を阻害するものでなければ、どのような形態のものを用いていも良い。
【0199】
また、上述の各実施形態では毛管力発生部材がない空間(バッファ部)を連通管とは反対側の端部近傍に設けているが、これを無くし、かわりに通常の状態では液体を保持していない毛管力発生部材を充填していても良い。このようにバッファ空間に液体を保持しない毛管力発生部材が存在することで、前述の環境変化の際に毛管力発生部材収納室へ移動したインクを保持することが可能となる。
【0200】
また、上述の各実施形態では筐体内面に大気連通溝を設けているが、必ずしも設ける必要はない。
【0201】
ただし、気液交換を促進する構造としての大気導入溝を設けることによって、前述した気液界面を容易に形成することができるので、より一層安定したインク供給を実現することができるという利点がある。すなわち、記録ヘッドなど外部への液体供給動作が安定するだけでなく、毛管力発生部材とインク収納部との設計には上述したように第1の供給状態、第2の供給状態など各供給状態における条件があるので、これらの条件を考慮することも気液界面が形成されることでより一層容易となる。
【0202】
<インクタンクの構造>
次に上述の各実施形態におけるインクタンクの構造について、補足説明を行なう。
【0203】
インクタンクが毛管力発生部材に対して着脱可能な場合、インクタンクの毛管力発生部材収納室との連通部には、結合時の連通部からの液体や空気の漏れを防止すると共に結合前のインク収納部内のインクの導出を防止する部材としてのシール部材が設けられる。各実施形態ではシール部材はいずれも膜状のものを使用しているが、ボール状の栓などを使用してもよい。また、連通管を中空針とし、シール部材をゴム栓としてもよい。
【0204】
また、上述の各実施形態のインクタンクは、ダイレクトブロー製造方法によって形成される。すなわち、互いに分離可能な筐体(外壁)とインク収納部(内壁)とは、略多角柱の型に対して円筒状のパリソンをエアーブローによって均一に膨張させることで形成されるものである。これにかわり、例えば可撓性の袋内に金属製のばね等を備えることで、インクの導出に伴い負圧を発生させるようにしてもよい。
【0205】
しかし、ブロー成形を用いることで、筐体内面形状と同等あるいは相似形の外面形状を有するインク収納部を容易に製造することができるだけでなく、インク収納部を構成する内壁の材料、厚みを変えることで容易に発生する負圧を設定できる利点がある。さらに、内壁、及び外壁の材料に熱可塑性樹脂を利用することで、リサイクル性に富んだインクタンクを提供することができる。
【0206】
ここで、前述した各実施形態における「外壁」の構造および「外壁」が「内壁」に対して及ぼす結果的な構造について補足説明する。
【0207】
前述した各実施形態では、インクタンクはブロー成形により製造されるため、内壁は、容器を構成する面の中央近傍領域の厚みにくらべ角部近傍の厚みの方が薄く形成されている。また外壁も同様に、容器を構成する面の中央近傍領域の厚みにくらべ角部近傍の厚みの方が薄く形成されている。さらに、外壁に対して内壁は、各面の中央部から各面の角部に向かって徐々に減少する厚み分布を有する外壁に積層されることで形成されている。
【0208】
この結果、上記内壁は外壁の内面に対して一致する外面を有することになる。この内壁の外面は、外壁の厚み分布に対して沿うため、内壁が形成するインク収納部側に向かって凸となる。そして、内壁の内面は、上述した内壁の厚み分布を有するので、より一層インク収納部に向かって凸となる。これらの構造は、最大面積部で特に前述した機能を発揮するため、本発明としては、このような凸状形状は少なくとも最大面積部で存在すれば良く、その凸状形状も内壁面として2mm以下で良く、内壁外面で1mm以下でよい。この凸状形状は、小面積部では測定誤差範囲内になることもあるが、略多角柱インクタンクの各面における変形優先順位をもたらす1つの要因となるので、本発明にとって好ましい条件の1つとなる。
【0209】
加えて、外壁の構造について補足する。前述した外壁の1つの機能として内壁の角部の変形を規制することをあげたが、この機能を発揮する構造としては、内壁の変形に対しては形状を維持でき、かつ角部の周囲を覆う構造(角部包囲部材)を有するものであればよい。従って、プラスチック、金属あるいは、厚紙等の材質で、上述した外壁または内壁を覆う構造にしてもよい。この外壁としては、全面でもよく、角部のみ面構造で、この面構造を金属等の棒で結合するようなものでも良い。さらに外壁は、メッシュ構造でも良い。
【0210】
さらに、インクタンクが交換式の場合のインクタンクの交換時など、何らかの理由で圧発生部材の気液交換経路近傍領域からインク供給口近傍領域でインク切れが起こった場合、例えば図30に示すように、弾性変形可能な外壁51を手動で内壁とともに一時的に押圧することで、インクタンク50のインクを強制的に毛管力発生部材収納室10へ移動させ、簡単に回復させることができる。このような加圧回復処理は手動ではなく自動で行ってもよく、そのための加圧回復手段を後述する記録装置に設けてもよい。なお、内壁の一部が露出している場合は内壁の露出部だけを押圧してもよい。
【0211】
なお、本発明の実施形態においては、インク収納部は略多角柱形状となっているが、この形態に限定されるものではなく、少なくともインクの導出に伴い変形可能で、この変形により負圧を発生可能であるものならば、どのような形態であっても本発明の目的を達成することが可能である。
【0212】
さらに前述したインク収納部によるバッファ効果を得るためには、インク収納部が弾性変形可能であり、内部の収容物の膨張によりインク収納部が変形前の形状に戻ることができること、すなわち弾性変形の範囲内で変形することが求められる。もし、インク導出による変形にともなう負圧の変化の割合が急激に変わる状態が存在する場合(例えば変形部分同士が当接する場合など)には、弾性変形の範囲内であっても、この急激に変わる状態になる前に第1のインク供給状態を終え、第2のインク供給状態が開始されるようになっていることが望ましい。
【0213】
また、本発明の液体収納容器に使用される材料としては、内壁と外壁とが分離可能なものであればよく、内壁又は外壁にそれぞれ複数の材料を用いて、多層により構成してもよい。また、インク収納室を単独で負圧発生型液体収納容器として使用する場合より、内壁としては弾性の高いものを使用することが可能となっている。内部に収容されるインクなどに対する影響を考慮すれば、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロビレン樹脂などが好適に適用可能である。
【0214】
<液体供給動作及びインク供給システム>
次に、液体供給動作及びインク供給システムに関する補足説明を行なう。
【0215】
上述した各実施形態のインク供給システムにおけるインク供給動作については、インクタンクと毛管力発生部材収納室とが接続されていない初期状態から、接続させた時の使用開始状態、第1及び第2のインク供給状態を経るものとなっている。
【0216】
ここで、上述した各実施形態の第1の変形例として、気液交換状態、すなわち第2のインク供給状態がないインク供給システムについても、インク収納部へ外気を導入することなくインク収納部のインクを使用する工程を有するため、液体収納容器の内容積の制限は、結合時においてインク収納部に導入された空気のみを考慮すればよいことになる。すなわち、インクタンク内の内容積の制限を緩和しても、環境変化に対応可能であるという利点があり、本発明の目的を達成し得る構成となっている。ただし、インク収納部の使用効率を考慮するならば、上述の各実施形態のように第1のインク供給状態のあとに気液交換状態を有する方が、より容易にインク収納部のインクを消費することができる。
【0217】
第2の変形例としては、記録ヘッドからインクを消費する際の消費スピードが、極めて大さい場合がある。このときは、第1の供給状態において、両者の負圧が常時バランスを取るのではなく、両者の負圧の差がある所定の値以上になるまでは毛管力発生部材収納室のインクが優先的に消費され、負圧の差が一定以上になった時、インク収納室のインクが毛管力発生部材収納室側へ移動するようになることが起こりうる。
【0218】
なお、上述した2室が常時一体のインクタンクでは、使用開始時には使用開始状態が終了した段階になっているだけで、それ以外の各供給動作についての効果は本変形例においても各実施形態の効果をそのまま適用可能である。
【0219】
<液体吐出記録装置>
最後に、図1に示した本発明の一実施例にかかるインクタンクを搭載して記録を行うインクジェット記録装置の説明を行う。図31に、本発明の一実施形態にかかるインクタンクを搭載するインクジェット記録装置の概略図を示す。
【0220】
図31において、ヘッドユニット(不図示)及びインクタンク4100は、インクジェット記録装置本体にキャリッジ4520の位置決め手段(不図示)と所定軸廻りに回動する接続板5300によって固定支持されるとともに、キャリッジ4520に対してそれぞれ着脱可能な形で装着される。
【0221】
駆動モータ5130の正逆回転は駆動伝達ギア5110、5090を介してリードスクリュー5040に伝達され、これを回転させ、またキャリッジ4520はリードスクリュー5040の螺旋溝5050に係合するピン(不図示)を有する。これによって、キャリッジ4520は装置長手方向に往復移動される。
【0222】
一方、被記録材Pは、紙送りモータ5150の駆動による搬送ローラ5000の回転によりキャリッジ4520の下方に送られる。この位置で、キャリッジ4520を装置長手方向に移動させながら記録ヘッドからインクを吐出させることで、被記録材Pに記録が行われる。
【0223】
ヘッドユニット内の各記録ヘッドの前面をキャップするキャップ5020は、不図示の吸引手段によりキャップ内開口を介して記録ヘッドの吸引回復を行うために用いられる。キャップ5020はギア5080等を介して伝達される駆動力により移動して各記録ヘッドの吐出口面を覆うことができる。キャップ5020の近傍には、不図示のクリーニングブレードが設けられ、このブレードは図の上下方向に移動可能に支持されている。ブレードは、この形態に限られず、周知のクリーニングブレードが本例に適用できることは言うまでもない。
【0224】
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジ4520がホームポジションに移動したときにリードスクリュー5050の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の動作を行うようにすれば、本例にはいずれも適応できる。
【0225】
ここで、このような往復移動をするキャリッジに本発明のインクタンクを搭載する場合の利点について説明する。
【0226】
本発明のインクタンクは、インク収納室が変形可能な部材となっているため、キャリッジの走査によるインクの揺動をインク収納室の変形により緩和することができる。このようなキャリッジの走査に対して負圧の変動を発生させないようにするためには、インク収納部の角部の一部が対応する筐体内面から離脱していないか、離脱していても近傍に位置することが望ましい。また、本実施形態のように対向する一組の最大面積面を有するインク収納部については、その対向する最大面積面を、キャリッジの走査方向に対して略直交する方向となるようにキャリッジに搭載することで、上述のインク揺動の緩和効果をより一層効果的なものとすることができる。
【0227】
また、<インク収納室の構造>の項目で説明したように、記録装置にインク収納室の外壁を介して内壁を加圧する加圧回復手段4510を搭載してもよい。この場合、インク収納室に光を透過させ、その反射の状態によりインクの有無を検知する発光手段と受光手段とを備える液体有無検知検知手段5060と、記録ヘッドの不吐出を検知する不吐出検知手段(不図示)と、制御手段(不図示)とを備えると、例えば次のようなシーケンスを採用することにより、毛管力発生部材の気液交換経路近傍領域からインク供給口近傍領域でインク切れを解消することができる。
【0228】
まず、インク収納室を交換した場合、キャップ5020を利用した通常の吸引回復処理後に、交換したインク収納室に対応するヘッドのノズルで不吐出が検知される場合、加圧回復手段4510による加圧回復動作を行うことで通常の状態に復帰することができる。また、使用途中に、液体有無検知検知手段5060で「インクあり」の状態が、不吐出検知手段によって対応するヘッドのノズルに「不吐出」の状態がそれぞれ検知され、通常の吸引回復処理で不吐出が解消されない場合にも、加圧回復手段4510による加圧回復動作を行うことで通常の状態に復帰することができる。いずれの場合も、加圧回復を行うインクタンクに対応する記録ヘッド部はキャップによりキャッピングを行ない、記録ヘッド部からの不用意なインク漏れを防止することが好ましい。
【0229】
なお、液体有無検知検知手段は上述した光学式のものだけではなく、ドットカウント方式など他の方式を適用してもよいし、いくつかの方法を組合わせてもよい。
【0230】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、液体収納部を、変形することで負圧を発生可能、あるいは変形可能な構成とし、連通部を介しての液体供給容器(液体供給室)と毛管力発生部材収納容器(毛管力発生部材収納室)との接続時に液体収納部内の液体の一部を毛管力発生部材に保持させ液体収納部を変形させることで、この変形分がバッファとなり環境変化による液体収納部内の空気の膨張による影響を緩和することができる。従って、液体の収納効率及び使用効率を向上させることができ、ひいては容器の一層の小型化及びランニングコストの削減が可能となる。
【0231】
また、液体供給容器が毛管力発生部材収納容器の上面に位置するので液体の供給をより安定させることができる。
【0233】
さらに、本発明による付随的な効果として以下に記載するようなことが挙げられる。
【0234】
液体収納部は毛管力発生部材と負圧のバランスを保つように変形するので、環境変化に伴い液体収納部内部の空気が膨張したとしても、急激な変化の場合には液体収納部が元の形状に戻ることでその影響を緩和することができ、緩やかな変化の場合には、最終的には毛管力発生部材とのバランスを維持しながら毛管力発生部材と液体収納部の双方で膨張の影響を緩和することができる。従って、種々の使用環境下であっても、毛管力発生部材収納室のバッファ空間を減少することができる。
【0235】
また、気液交換動作を利用した液体供給工程時に、液体収納部内部に空気を導入することで、液体収納部内の液体を使い残りのないよう消費可能であり、液体収納部からの液体導出の始めと終わりとの間の負圧変化を、液体収納部単独を負圧発生容器として利用する場合に比べて少なくすることができる。また、従来の負圧発生部材収納室とインク収納室とを隣接させたタイプのインクタンクに比べ、上述のように外気の気体膨張に対して許容力が高く、また、短時間に大量の液体を導出するような場合にも、液体収納部が変形可能であることで、液体収納部から毛管力発生部材収納室への液体供給がスムーズに行われる。従って、液体収納部の使用中に、安定した条件下で液体供給を行うことができる。
【0236】
さらに、液体供給システムに用いられる液体収納容器は、装着時に毛管力発生部材収納室の毛管力を利用して液体収納容器内の液体を毛管力発生部材へと移動させることができるので、連通部の近傍の毛管力発生部材の液体保持状態に拘わらず、装着すれば確実に液体収納容器の液体を使用することができる。従って、実用性に優れ、安定した液体供給を行うことのできる液体供給システムを供給することができる。
【0237】
さらに、液体収納部へ外気を導入することなく液体収納部の液体を使用する工程を有することで、環境の変化に対応し、かつ従来より優れた液体収容効率及び使用効率を実現できる気体供給システム、液体供給容器を提供することができる。従って、従来より容器を一層小型化することができるとともに、ランニングコストも削減することのできる液体供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図2】図1に示すインクタンクのインク供給部の近傍、およびヘッド付ホルダの連通管の近傍の拡大断面図である。
【図3】図1に示すインクジェットカートリッジの、インクタンクをヘッド付ホルダに装着した直後の状態を説明する説明図であり、(a)は図1と同じ断面による断面図、(b)は図1のインクタンクのA−A線断面図である。
【図4】図1に示すインクジェットカートリッジの使用開始状態を説明する説明図であり、(a)は図1と同じ断面による断面図、(b)は図1のインクタンクのA−A線断面図である。
【図5】図1に示すインクジェットカートリッジのインク導出時の状態を説明する説明図であり、(a)は図1と同じ断面による断面図、(b)は図1のインクタンクのA−A線断面図である。
【図6】図1に示すインクジェットカートリッジの気液交換状態を説明する説明図であり、(a)は図1と同じ断面による断面図、(b)は図1のインクタンクのA−A線断面図である。
【図7】図1に示すインクジェットカートリッジのインクタンク交換前の状態を説明する説明図であり、(a)は図1と同じ断面による断面図、(b)は図1のインクタンクのA−A線断面図である。
【図8】図1に示すインクジェットカートリッジのインク導出量とインク供給口部の負圧の関係を示す説明図である。
【図9】図1に示すインクジェットカートリッジの、インクタンクをヘッド付ホルダに接続した状態での、インク供給部の近傍、および連通管の近傍の拡大断面図である。
【図10】インク収納部からのインク導出量に関するグラフであり、(a)は図8に示す負圧曲線の詳細説明図、(b)は連続して液体を導出させた場合の、時間の経過に伴うインク収納部からのインク導出量及びインク収納部への空気の導入量の変化の状態を説明するための説明図である。
【図11】図10に示すB領域についての一例の詳細説明図である。
【図12】図11に示すパターンの場合のインクタンクの動作説明図である。
【図13】図10に示すB領域についての他の例の詳細説明図である。
【図14】図13に示すパターンの場合のインクタンクの動作説明図である。
【図15】インクタンクの交換時の動作を説明する図である。
【図16】図1に示すインクジェットカートリッジの環境条件を変化させた場合の安定した液体保持のメカニズムの説明図である。
【図17】図1に示すインクジェットカートリッジを減圧させた場合の、時間の経過に伴うインク収納部からのインク導出量及びインク収納部の体積の変化を説明するための説明図である。
【図18】 本発明の第2の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図19】 本発明の第3の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図20】 本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図21】 本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図22】 本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図23】 本発明の第4の参考形態である、液体収容容器を適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図24】 本発明の第5の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図25】 本発明の第6の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図26】 本発明の第7の参考形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図27】 本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図28】 本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図29】 本発明の第の実施形態である、液体供給システムを適用したインクジェットカートリッジの断面図である。
【図30】毛管力発生部材でインク切れが起こった場合の手動による加圧回復処理方法の一例を説明するための、インクタンク及び毛管力発生部材収納室の模式的斜視図である。
【図31】本発明の液体供給システムを適用可能なインクジェット記録装置の一例の概略説明図である。
【符号の説明】
10,110,210,310,410,510,610,1010,1210,1310,1410,1510 毛管力発生部材収納室
11,1011 タンクホルダ
12,612 インク供給路
13,113,213,313a〜c,413a〜c,513a,513b,613,1013,1113,1313a,1313b,1413a〜c,1513a〜c 毛管力発生部材
15,615,1015 大気連通口
16,1016 バッファ部
17,117,217,317,417,517,617,1017,1217、1317,1417,1517 大気導入溝
30 ヘッド付ホルダ
50,150,650,1050,1050,1250 インクタンク
51,651,1051 外壁
52,652 インク供給部
53,153,1053 インク収納部
54,654,1054 内壁
55,655 大気連通口
56 溶着部
57 シール部材
60,660 記録ヘッド
61 吐出口
71,171,271,371,471,571,671,1017,1117,1271 連通管
72 大気導入路
73 スリット
74 ベローズ
75 インク誘導体
80 ラッチレバー
86,186,286,386 気液界面
185 インクダム
611 筐体
690 連通口

Claims (9)

  1. 密閉空間内に液体を収納し変形することで負圧を発生可能な液体収納部を備えた液体供給容器と、
    前記液体供給容器に対して着脱可能であり、内部に液体を保持するそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納するとともに、外部に液体を供給するための液体供給部と、大気に連通する大気連通部とを備え、前記液体供給容器との連通部を介して前記液体収納部内に気体を導入して液体を導出させる気液交換を生じせしめることのできる毛管力発生部材収納容器とを有し、
    前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されており、
    前記連通部は前記毛管力発生部材収納容器の上面に設けられるとともに、
    前記液体供給容器は前記毛管力発生部材収納容器の上方に前記連通部を介して装着され、前記液体供給容器内の液体を前記毛管力発生部材収納容器に移動させることを特徴とする液体供給システム。
  2. 前記装着の際に、前記毛管力発生部材収納容器は前記気液交換を実行できる状態にある請求項1に記載の液体供給システム。
  3. 前記液体収納部を変形させて負圧を発生させるとともに該液体収納容器の体積を減少させ、前記気液交換を行うことなく前記液体収納部内の液体を前記毛管力発生部材収納容器へ移動させることで前記毛管力発生部材収納容器から外部への液体供給を行う請求項1に記載の液体供給システム。
  4. 前記液体収納部の変形は弾性変形であり、前記毛管力発生部材収納容器から外部への液体供給を行った後に、前記気液交換を行いながら前記毛管力発生部材収納容器から外部への液体供給を行う請求項3に記載の液体供給システム。
  5. 前記毛管力発生部材収納容器には、前記毛管力発生部材として、それぞれ毛管力が一端から他端に向かって小さくなっている複数の毛管力発生部材が収納され、前記各毛管力発生部材は、前記連通部に近い側の毛管力が高くなるように配置されている請求項1に記載の液体供給システム。
  6. 前記毛管力発生部材は、側方から見て略L字形状である請求項1に記載の液体供給システム。
  7. 外部に液体を供給するための液体供給部と、大気と連通する大気連通部とを備え、内部に液体を保持可能なそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納する毛管力発生部材収納室と、
    前記毛管力発生部材収納室の上面に配される連通部と連通し前記毛管力発生部材収納室に対しての連通を除いて実質的な密閉空間を形成するとともに液体を収納する液体収納部を備え、前記毛管力発生部材の上方に配置された液体供給室とを有し、
    前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されており、
    前記液体収納部は液体の導出に伴い変形し負圧発生可能な部材により構成されていることを特徴とする液体収納容器。
  8. 密閉空間内に液体を収納し変形することで負圧を発生可能な液体収納部を有する液体供給容器を着脱自在に保持するヘッドカートリッジであって、
    外部に液体を吐出する記録ヘッド部と、
    前記記録ヘッド部に液体を供給するための液体供給部と、大気と連通する大気連通部とを備え、内部に液体を保持するそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納する毛管力発生部材収納室と、
    前記毛管力発生部材収納室の上面に設けられた、前記液体収納部と前記毛管力発生部材収納室とを連通させるための連通部と、
    前記連通部によって前記液体収納部と前記毛管力発生部材収納室とが連通した状態で前記毛管力発生部材収納室上に前記液体供給容器を保持するために前記液体供給容器と係合する係合構造と、を有し、
    前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されていることを特徴とするヘッドカートリッジ。
  9. 外部に液体を吐出する記録ヘッド部と、
    前記記録ヘッド部へ液体を供給するための液体供給部と、大気と連通する大気連通部とを備え、内部に液体を保持可能なそれぞれ毛管力の異なる複数の毛管力発生部材を収納する毛管力発生部材収納室と、
    前記毛管力発生部材収納室の上面に配される連通部と連通し前記毛管力発生部材収納室に対しての連通を除いて実質的な密閉空間を形成するとともに液体を収納する液体収納部を備え、前記毛管力発生部材の上面に配置された液体供給室とを有し、
    前記毛管力発生部材収納容器は、内壁面に前記連通部から前記大気連通部に向かって水平に形成される大気導入溝を有し、前記毛管力発生部材中の気液界面を前記大気導入溝の大気連通部側の端部近傍に定在させるべく、前記複数の毛管力発生部材のうち最も毛管力の高い毛管力発生部材が前記連通部に接して配置されており、
    前記液体収納部は液体の導出に伴い変形し負圧発生可能な部材により構成されていることを特徴とするインクジェットカートリッジ。
JP36806598A 1998-04-28 1998-12-24 液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ Expired - Fee Related JP3684093B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP36806598A JP3684093B2 (ja) 1998-04-28 1998-12-24 液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ
DE69918368T DE69918368T2 (de) 1998-04-28 1999-04-27 Tintenstrahlaufzeichnungsvorrichtung
EP99108233A EP0956958B1 (en) 1998-04-28 1999-04-27 Ink jet recording apparatus
US09/301,129 US6460984B1 (en) 1998-04-28 1999-04-28 Liquid supply system, liquid container, head cartridge, ink jet cartridge, liquid supply container, method for coupling the head cartridge with the liquid supply container, communication unit used for the liquid supply system, ink jet recording apparatus provided with the ink jet cartridge opening/closing valve used for the liquid container, and liquid supply container provided with the opening/closing valve

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10-119356 1998-04-28
JP11935698 1998-04-28
JP36806598A JP3684093B2 (ja) 1998-04-28 1998-12-24 液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000015831A JP2000015831A (ja) 2000-01-18
JP3684093B2 true JP3684093B2 (ja) 2005-08-17

Family

ID=26457118

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP36806598A Expired - Fee Related JP3684093B2 (ja) 1998-04-28 1998-12-24 液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3684093B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3582592B2 (ja) 2001-04-03 2004-10-27 セイコーエプソン株式会社 インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置
JP4492144B2 (ja) * 2003-12-08 2010-06-30 ブラザー工業株式会社 インクジェット記録装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000015831A (ja) 2000-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3667127B2 (ja) 液体供給システムの液体残量検出方法
JP3880232B2 (ja) 液体供給方法、該液体供給方法を用いる液体供給システム、インクタンク
KR970007633B1 (ko) 잉크용기, 동잉크용기를 사용하는 기록헤드 및 동잉크용기를 사용하는 기록장치
JP3278410B2 (ja) 液体収納容器、該容器の製造方法、該容器のパッケージ、該容器と記録ヘッドとを一体化したインクジェットヘッドカートリッジ及び液体吐出記録装置
JP2001001546A (ja) 液体供給システム及び該システムに用いられる液体供給容器
KR100723563B1 (ko) 액체 공급 시스템, 잉크 탱크, 잉크 공급 시스템, 및 잉크젯 기록 장치
KR0145750B1 (ko) 잉크카트리지와 잉크카트리지의 제조방법
KR100234799B1 (ko) 액체 토출용 용기
JP2005161635A (ja) インクタンクおよびインク供給装置
KR0145341B1 (ko) 잉크카트리지, 잉크제트기록조립뭉치 및 잉크제트기록장치
JP3592112B2 (ja) 液体供給システム、液体収納容器、およびヘッドカートリッジ
JP3684093B2 (ja) 液体供給システム、液体収納容器、ヘッドカートリッジ、およびインクジェットカートリッジ
JP2004142447A (ja) 液体供給システム、流体連通構造、インク供給システム,流体連通構造を用いるインクジェット記録ヘッドおよび装置
US7314272B2 (en) Ink cartridge having one chamber surrounding another chamber
JP2001001541A (ja) 液体供給方法、液体供給システム、液体収納容器、インクタンク、ヘッドカートリッジ、及びインクジェット記録装置
JP3944192B2 (ja) 液体タンク
JP2005342934A (ja) 液体タンクおよび該液体タンクが搭載される液体吐出記録装置
JP3416520B2 (ja) 液体供給システム、インクジェットカートリッジ、ヘッドカートリッジ、および液体供給容器
JP3423617B2 (ja) ヘッドカートリッジ
JP3977357B2 (ja) インクカートリッジおよびインクジェット記録装置
JP2001001551A (ja) 液体収納容器、該液体収納容器の装着方法、インクジェット記録ヘッドカートリッジ、インクジェット記録装置、および負圧発生部材収納室と液体収納室との結合方法
JP2004122499A (ja) 液体タンク、液体連通構造、液体供給システムおよびインクジェット記録装置
KR0152424B1 (ko) 액체용기, 액체용기유닛, 잉크제트카트리지, 잉크제트헤드 및 프린터
KR0152492B1 (ko) 프린팅액체수납용기, 잉크제트기록조립뭉치 및 잉크제트기록장치
JP3297675B2 (ja) 液体収納容器

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040706

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040804

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041004

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050216

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050413

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050518

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050527

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090603

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090603

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100603

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees