本発明は、広くは、ヒト及び動物の第VIII因子アミノ酸配列を有するハイブリッド第VIII因子又はヒト第VIII因子及び非第VIII因子アミノ酸配列を有するハイブリッド第VIII因子並びにその調製の方法及び使用に関する。
血液凝固は、血小板が傷害部位において損傷した血管の切断壁に接着する時に始まる。次に、酵素により制御された反応のカスケードにおいて、可溶性のフィブリノーゲン分子が酵素トロンビンにより、血栓内で一緒に血小板を保持するフィブリンの不溶性の鎖に転化される。そのカスケードの各々のステップにおいて、タンパク質は、一連の次のタンパク質前駆体を開裂するプロテアーゼに転化される。そのステップのほとんどにおいて補因子が要求される。
第VIII因子はvon Willebrand因子にしっかりと又は非共有結合で結合した血液中の不活性前駆体として循環する。第VIII因子は、それをvon Willebrand因子から解離し、そのカスケードにおいてその凝血促進機能を活性化するトロンビン又は第Xa因子によりタンパク質分解により活性化される。その活性形態において、タンパク質第VIIIa因子は、数オーダーの倍率で第X因子活性化に対する第IXa因子の触媒効率を増加させる補因子である。
第VIII因子で治療されていない第VIII因子又は第VIII因子に対する抗体を欠損する人々は、関節における炎症反応から早期の死までの範囲の深刻な症状を引きおこし得る調節不能な内出血を患う。合衆国において約10,000人にのぼる激しい出血性素因者は、十分な頻度及び濃度で投与したなら血液の正常な凝固能力を復帰させるであろうヒト第VIII因子の注入で治療することができる。第VIII因子の伝統的な定義は、実際、凝固を正常にする正常な血漿中に存在する物質が血友病Aの個体由来の血漿中で欠損していることである。
第VIII因子の活性を阻害する抗体(“インヒビター”又は“阻害抗体”)の発達は、血友病の患者の管理において深刻な合併症である。第VIII因子の治療的注入に応じて血友病Aの患者の約20%に自己抗体が発達する。インヒビターを発達させる血友病の以前に治療していない患者において、そのインヒビターは、通常、1年以内の治療で発達する。更に、第VIII因子を不活性化する自己抗体は、以前には正常な第VIII因子レベルの個体において時折発達する。インヒビタータイターが十分に低いなら、患者は、第VIII因子の投与量を増加させることにより管理することができる。
しかしながら、しばしばインヒビタータイターは高すぎて第VIII因子により圧倒することができない。他のストラテジーは、第IX因子複合体調製物(例えば、KONYNE(商標),Proplex(商標))又は組換えヒト、第VIIIa因子を用いて正常な止血の間、第VIII因子についての必要性を迂回することである。更に、ブタ第VIII因子は、通常、ヒト第VIII因子よりインヒビターとの反応性が実質的に低いので、部分的に精製された第VIII因子調製物(HYATE:C(商標))が用いられる。しかしながら、インヒビターは、1又は複数の注入の後、ブタ第VIII因子に対して発達する。
種々の純度のヒト血漿由来第VIII因子のいくつかの調製物が血友病Aの治療のために市販されている。これらに、ウイルスのために熱及び界面活性剤処理されるが、かなりのレベルの抗原性タンパク質を含む多くのドナーのプールされた血液由来の部分的に精製された第VIII因子;より低レベルの抗原性不純物及びウイルス汚染物を有するモノクローナル抗体で精製された第VIII因子;並びに臨床試験が進行中である組換えヒト第VIII因子を含む。不幸なこと、ヒト第VIII因子は生理的濃度及びpHで不安定であり、極めて低濃度(0.2μg/ml血漿)で血水に存在し、そして低い特異的凝固活性を有する。
血友病者は、出血及びその結果生ずる変形性血友病関節症を防ぐために第VIII因子の毎日の置換を必要とする。しかしながら、供給者は、単離及び精製の困難さ、免疫原性、並びにAIDS及び肝炎の感染の危険性を除く必要性のために発生する治療に用いることにおける不適切であり及び問題となっている。組換えヒト第VIII因子又は部分的に精製された第VIII因子の使用は全ての問題を解決しないであろう。
一般に用いられ、市販される血漿由来第VIII因子に関する問題は、より優れた第VIII因子製品の開発に大きな関心をいだかせる。より多くのユニットの凝固活性が分子当りに得ることができるようなより能力のある第VIII因子;所定のpH及び生理濃度において安定である第VIII因子;阻害性抗体の生産をより引きおこしにくい第VIII因子分子;並びにヒト第VIII因子に対する既に獲得した抗体を有する患者において免疫欠損をのがれる第VIII因子分子についての必要性がある。
それゆえ、本発明の目的は、第VIII因子を欠損した又は第VIII因子に対する抗体を有する患者において血友病を癒す第VIII因子を供することである。
本発明の更なる目的は、血友病の治療のための方法を供することである。
本発明の更に他の目的は、所定のpH及び生理濃度において安定である第VIII因子を供することである。
本発明のなお他の目的は、ヒト第VIII因子により大きい凝固活性を有する第VIII因子を供することである。
本発明の更なる目的は、より少い抗体がそれに対して生産される第VIII因子を供することである。
本発明に、ヒト及びブタ又は他の非ヒト哺乳動物(以後、一緒に“動物”と呼ぶ)由来の第VIII因子アミノ酸配列を有するハイブリッド第VIII因子を含む凝固活性を有する単離され、精製されたハイブリッド第VIII因子分子及びそのフラグメントを供し;又は第2の実施形態において、ヒトもしくは動物又は両方由来の第VIIIアミノ酸配列、及び第VIII因子の抗原性及び/又は免疫原性領域において好ましくは置換された。第VIII因子と周知の配列同一性のよいアミノ酸配列(“非第VIII因子アミノ酸配列)を有するハイブリッドの等価な第VIII因子を含むものが記載される。
当業者は、多数のハイブリッド第VIII因子構成物、例えばこれらに限られないが、ヒト第VIII因子より大きい凝固活性(“より優れた凝固活性”)を有するヒト/動物第VIII因子;非免疫原性ヒト/等価第VIII因子;非抗原性ヒト/等価又はヒト/動物第VIII因子;より優れた凝固活性を有する非免疫原性ヒト/動物又はヒト/等価第VIII因子;より優れた凝固活性を有する非抗原性ヒト/動物又はヒト/動物/等価第VIII因子;非免疫原性非抗原性ヒト/等価又はヒト/等価/動物第VIII因子;並びにより優れた凝固活性を有する非免疫原性非抗原性ヒト/動物/等価第VIII因子を調製することができる。
ハイブリッド第VIII因子分子は、ヒト及び動物第VIII因子サブユニット又はドメインの単離及び組換えにより;又はヒト及び動物第VIII因子遺伝子の遺伝子操作により生産される。
好ましい実施形態において、ヒト第VIII因子の対応する要素に、動物第VIII因子の要素を置換してハイブリッドヒト/動物第VIII因子分子を作り出すために組換えDNA 法が用いられる。第2の好ましい実施形態において、ヒトもしくは動物第VIII因子又はハイブリッドヒト/動物第VIII因子中の1又は複数のアミノ酸を、第VIII因子への周知の配列同一性を有さないアミノ酸、好ましくは、ヒト第VIII因子と比べて、第VIII因子に対する天然の阻害抗体との免疫反応性の少い(“非抗原性アミノ酸配列”)、及び/又は第VIII因子に対する抗体の生産を誘発する傾向の少い(“非免疫原性アミノ酸配列”)アミノ酸の配列に置換するのに用いられる。免疫原性又は抗原性配列を置換するのに用いることができるアミノ酸配列の例は、アラニン残基の配列である。
他の実施形態において、第VIII因子のサブユニットはヒト又は動物血漿から単離及び精製され、そしてハイブリッドヒト/動物第VIII因子は、ヒト軽鎖サブユニットに動物重鎖サブユニットを混合し、又は動物軽鎖サブユニットにヒト重鎖サブユニットを混合し、それによりヒト軽鎖/動物重鎖及びヒト重鎖/動物軽鎖ハイブリッド分子を作り出すことにより生産される。これらのハイブリッド分子は、イオン交換クロマトグラフィーにより単離される。
あるいは、第VIII因子の1又は複数のドメイン又は部分的ドメインは、ヒト及び動物血漿から単離及び精製され、そしてハイブリッドヒト/動物第VIII因子は、第1の種からのドメイン又は部分的ドメインの、第2の種のドメイン又は部分的ドメインとの混合により生産される。ハイブリッド分子は、イオン交換クロマトグラフィーにより単離することができる。
高純度のハイブリッド第VIII因子を調製するための方法であって、(a)血漿由来ヒト第VIII因子のサブユニット及び血漿由来動物第VIII因子を単離し、次にヒト及び動物サブユニットの混合により凝固活性を再構成し、次にイオン交換クロマトグラフィーによりハイブリッドヒト/動物第VIII因子を単離するステップ;(b)血漿由来ヒト第VIII因子のドメイン又は部分的ドメイン及び血漿由来動物第VIII因子のドメイン又は部分的ドメインを単離し、次にヒト及び動物ドメインの混合により凝固活性を再構成し、次にイオン交換クロマトグラフィーによりハイブリッドヒト/動物第VIII因子を単離するステップ;
(c)組換えDNA 技術による動物第VIII因子のドメイン又は部分的ドメインの作製、並びに動物及びヒト第VIII因子のドメインの組換え交換により凝固活性を有するハイブリッドヒト/動物第VIII因子を作り出すステップ;(d)1つの種の第VIII因子の特定のアミノ酸残基の、他種の第VIII因子の対応する特有のアミノ酸残基での置換により、ハイブリッドヒト/動物第VIII因子を作製するステップ;又は(e)ヒトもしくは動物アミノ酸又は両方を有するハイブリッドの等価な第VIII因子であって、該第VIII因子の特定のアミノ酸残基が部位特異的変換誘発により第VIII因子との周知の配列同一性を有さないアミノ酸残基で置換されているハイブリッドの等価な第VIII因子を作製するステップを含む方法が開示される。
ハイブリッドの又はハイブリッドの等価な第VIII因子の特定の実施形態は、ヒト第VIII因子のそれより大きく、かつブタ第VIII因子のそれと等しい又はそれより大きい比活性を有する。ハイブリッドの又はハイブリッドの等価な第VIII因子の特定の実施形態は、ヒト又はブタ第VIII因子と比べて、第VIII因子に対する阻害抗体に等しいもしくはより低い免疫反応性及び/又はヒトもしくは動物においてより少い免疫原性を有する。
また、前記ハイブリッドの又はハイブリッドの等価を第VIII因子を投与することを含む第VIII因子欠損を有する患者を治療するための医薬組成物及び方法も供する。
他に特定し又は示さなければ、本明細書に用いる場合、“第VIII因子”とは、いずれかの動物由来のいずれかの機能的第VIII因子タンパク質分子、いずれかのハイブリッド第VIII因子又は改変された第VIII因子をいい、“ハイブリッド第VIII因子”又は“ハイブリッドタンパク質”とは、ヒト、ブタ、及び/又は非ヒト、非ブタ哺乳動物種からの第VIII因子アミノ酸配列を含む、いずれかの機能的な第VIII因子タンパク質分子又はそのフラグメントをいう。
これらの組合せは、これらに限られないが、次のハイブリッド第VIII因子分子又はそのフラグメント;(1)ヒト/ブタ;(2)ヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物、例えばヒト/マウス;(3)ブタ/非ヒト非ブタ哺乳動物、例えばマウス/イヌのいずれか又は全てを含む。これらの組合せは、第VIII因子と周知の配列同一性のないアミノ酸配列が置換されているハイブリッド、ヒト、ブタ、又は非ヒト、非ブタ哺乳動物源の第VIII因子アミノ酸配列を含む、以下に更に規定される、ハイブリッド第VIII因子に等価な分子又はそのフラグメントも含む。
これらのハイブリッドの組合せは、第VIII因子と周知の配列同一性のないアミノ酸配列が置換されている、ヒト/ブタ/マウスのような2を超える種由来の又は2もしくはそれ超の種由来のハイブリッド第VIII因子アミノ酸配列も含む。他に示さなければ、“ハイブリッド第VIII因子”は、調鎖目的のためのプローブとして又は診断試薬として1つの典型的な実施形態において以下に記載されるように用いることができるハイブリッド第VIII因子のフラグメントを含む。
本明細書に用いる場合“哺乳動物第VIII因子”は、他に特定しなければ、いずれかの非ヒト哺乳動物由来のアミノ酸配列を有する第VIII因子を含む。“動物”とは、本明細書に用いる場合、ブタ及び他の非ヒト哺乳動物をいう。
“融合タンパク質”又は“融合第VIII因子又はそのフラグメント”とは、本明細書に用いる場合、1つのタンパク質についてのコーディング配列が、例えばその一部を異なる遺伝子からの第2のタンパク質のためのコーディング配列に融合して融合タンパク質をコードするハイブリッド遺伝子を作り出すことにより、更に変えられているハイブリッド遺伝子の産物である。本明細書に用いる場合、融合タンパク質は、本願に記載されるハイブリッド第VIII因子タンパク質のサブセットである。
“対応する”核酸もしくはアミノ酸又はいずれかの配列とは、本明細書に用いる場合、他の種の第VIII因子分子中の部位と同じ構造を有し及び/又はその部位として機能する第VIII因子もしくはハイブリッド第VIII因子分子又はそれらのフラグメント中の部位に存在するものである。但し、その核酸又はアミノ酸の数は同一でなくともよい。他の第VIII因子配列に“相当する(対応する)”配列は、実質的にこれらの配列に相当し、そしてストリンジェント条件下で配列番号の配列とハイブリダイズする。他の第VIII因子配列に“相当する”配列は、第VIII因子もしくはクレームされる凝血促進性のハイブリッド第VIII因子又はそれらのフラグメントの発現を引きおこし、遺伝子コードの重複もあるが配列番号にハイブリダイズするであろう配列を含む。
“特有の”アミノ酸残基又は配列は、本明細書に用いる場合、他の種の第VIII因子分子における相同な残基又は配列と異なる1つの種の第VIII因子におけるアミノ酸配列又は残基をいう。
“比活性”とは、本明細書に用いる場合、ヒト第VIII因子欠損の血漿の凝固欠損を癒すであろう活性をいう。比活性は、ヒト第VIII因子欠損血漿の凝固時間を正常のヒト血漿のそれと比較する標準アッセイにおいて、全てのヒト第VIII因子タンパク質1ミリグラム当りの凝固活性のユニットで測定される。第VIII因子活性化の1ユニットは、正常なヒト血漿1ミリリッター中に存在する活性である。そのアッセイにおいて、凝固形成のための時間が短くなると、アッセイされる第VIII因子の活性は大きくなる。ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子は、ヒト第VIII因子アッセイにおいて凝固活性を有する。この活性、並びに他のハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子分子又はそれらのフラグメントのそれは、血漿由来又は組換えヒト第VIII因子のいずれのそれより低く、等しく、又は大きくあり得る。
ヒト第VIII因子cDNAヌクレオチド及び予測されるアミノ酸配列を各々配列番号:1及び2に示す。第VIII因子は、“ドメイン”配列 NH2-A1-A2-B-A3-C1-C2-COOHを測定する内部配列相同性を有する約300kDaの一本鎖タンパク質として合成される。第VIII因子分子において、ドメインとは、本明細書に用いる場合、内部アミノ酸配列同一性及びトロンビンによるタンパク質分解開裂の部位により規定されるアミノ酸の連続配列である。他に特定しなければ、第VIII因子ドメインに、配列をヒトアミノ酸配列(配列番号:2)でアラインした時、次のアミノ酸残基:A1、残基Ala 1〜Arg 372 ;A2、残基Ser 373 〜Arg 740 ;B、残基 741〜Arg 1648;A3、残基Ser 1690〜Ile 2032;C1、残基Arg 2033〜Asn 2172;C2、残基Ser 2173〜Tyr 2332を含む。
A3-C1-C2配列は、残基Ser 1690〜Tyr 2332を含む。残りの配列、残基Glu 1649〜Arg 1689は、通常、第VIII因子軽鎖活性化ペプチドと呼ばれる。第VIII因子は、凝血促進機能を有する第VIIIa因子を形成するvon Willebrand因子からそれを解離するトロンビン又は第Xa因子によりタンパク質分解により活性化される。第VIIIa因子の生物学的機能は、数オーダーの倍率で第X因子活性化に対する第IXa因子の触媒効率を増加させることである。トロンビンで活性化された第VIIIa因子は、血小板又は単球の表面上で第IXa因子又は第X因子と複合体を形成する160kDaのA1/A2/A3-C1-C2ヘテロトリマーである。“部分的ドメイン”とは、本明細書に用いる場合、ドメインの一部を形成するアミノ酸の連続配列である。
ヒト又は動物第VIII因子の“サブユニット”とは、本明細書に用いる場合、そのタンパク質の重鎖及び軽鎖である。第VIII因子の重鎖は3つのドメインA1,A2及び及びBを含む。第VIII因子の軽鎖も3つのドメインA3,C1、及びC2を含む。
ハイブリッド第VIII因子又はそのフラグメントは、(1)単離された血漿由来動物サブユニット又はヒトサブユニット(重鎖又は軽鎖)を対応するヒトサブユニット又は動物サブユニットに置換することにより;(2)ヒトドメイン又は動物ドメイン(A1,A2,A3,B,C1、及びC2)を対応する動物ドメイン又はヒトドメインに置換することにより;(3)ヒトドメイン又は動物ドメインの部分を動物ドメイン又はヒトドメインに置換することにより;(4)1又は複数の特有のヒト又は動物アミノ酸を含む少くとも1の特定の配列を対応する動物又はヒトアミノ酸に置換することにより;又は(5)第VIII因子と周知の配列同一性のないアミノ酸配列をヒト、動物、又はハイブリッド第VIII因子又はそのフラグメント中に1又は複数の特定のアミノ酸残基を含む少くとも1の配列に置換することにより、作ることができる。“B−ドメインのない”ハイブリッド第VIII因子、ハイブリッド等価第VIII因子又はそれらのフラクタントは、本明細書に用いる場合、Bドメインを欠く本明細書に記載されるハイブリッド第VIII因子構成物のいずれか1つをいう。
用語“エピトープ”、“抗原部位”、及び“抗原決定基”とは、本明細書に用いる場合、同義に用いられ、抗体により特異的に認識されるヒト、動物、ハイブリッド、もしくはハイブリッド等価第VIII因子又はそのフラグメントの一部として定義される。それは、いずれかの数のアミノ酸残基からなり得、そしてそれはタンパク質の一次、二次、又は三次構造に依存し得る。本開示によれば、少くとも1のエピトープを含むハイブリッド第VIII因子、ハイブリッド第VIII因子等価物、又はそれらのフラグメントは、以下に記載される診断アッセイにおける試薬として用いることができる。いくつかの実施形態において、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価物第VIII因子又はそれらのフラグメントは、ヒト又はブタ第VIII因子より、全ての天然の阻害第VIII因子抗体と交差反応性がなく又はより交差反応性が小さい。
用語“免疫原部位”とは、本明細書に用いる場合、慣用的なプロトコル、例えばイムノアッセイ、例えばELISA 、又は本明細書に記載されるBethesdaアッセイにより測定して、ヒト又は動物において、第VIII因子、ハイブリッド、ハイブリッド等価物、又はフラグメントに対する抗体の生産を特異的に誘発するヒト又は動物の第VIII因子、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子、又はそのフラグメントの領域として定義される。それは、いずれかの数のアミノ酸残基からなり得、そしてそれは、タンパク質の一次、二次、又は三次構造に依存し得る。特定の実施形態において、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子もしくはそのフラグメントは、ヒト又はブタ第VIII因子より動物又はヒトにおいて非免疫原性又はより少い免疫原性である。
本明細書に用いる場合、“ハイブリッド第VIII因子等価分子又はそのフラグメント”又は“ハイブリッド等価第VIII因子又はそのフラグメント”は、ヒト、動物、もしくはハイブリッド第VIII因子又はそのフラグメント中に1又は複数の特定のアミノ酸残基を含む少くとも1の配列について置換されたヒト又は動物第VIII因子配列と周知の同一性のない1又は複数のアミノ酸残基を含む少くとも1の配列を含む、活性な第VIII因子もしくはハイブリッド第VIII因子分子又はそのフラグメントである。ヒト又は動物の第VIII因子配列と周知の同一性を有さない1又は複数のアミノ酸残基の配列は、本明細書において、“非第VIII因子アミノ酸配列”とも呼ばれる。好ましい実施形態において、第VIII因子と周知の配列同一性のないアミノ酸はアラニン残基である。
他の好ましい実施形態において、第VIII因子配列と周知の配列同一性を有さないアミノ酸が置換されている特定の第VIII因子配列は、天然の第VIII因子阻害抗体と免疫反応性のある抗原部位を含み、ここでその結果生じたハイブリッド第VIII因子等価分子又はそのフラグメントは第VIII因子阻害抗体とより小さい免疫反応性であるか、又は免疫反応性がない。更に他の好ましい実施形態において、第VIII因子配列と周知の配列同一性のないアミノ酸が置換されている特定のハイブリッド第VIII因子配列は、動物又はヒトにおいて第VIII因子阻害抗体の形成を誘発する免疫原部位を含み、ここでその結果生じたハイブリッド第VIII因子等価分子又はそのフラグメントはより免疫原性が小さい。
“第VIII因子欠損”とは、本明細書に用いる場合、第VIII因子の不適切な生産もしくはその生産がないことにより、又はインヒビターによる第VIII因子の部分的もしくは全体的な阻害により、欠損のある第VIII因子の生産により引きおこされる凝固活性における欠損を含む。血友病Aは、X関連遺伝子の欠損及びそれがコードする第VIII因子タンパク質の欠如もしくは欠損により生ずる第VIII因子欠損の型である。
本明細書に用いる場合、“診断アッセイ”は、特定の様式で、医療的治療の選択を補助するためにテストサンプル中に存在する特定の抗体の量を検出し及び/又は定量するために抗原−抗体相互作用を利用するアッセイを含む。これらのアッセイの多くは当業者に周知である。しかしながら、本明細書に用いる場合、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子DNA 又はそのフラグメント及びそれから発現されるタンパク質は、全体又は一部において、他の周知のアッセイにおいて対応する試薬について置換することができる。ここで第VIII因子に対する抗体を検出及び/又は定量するのに改良したアッセイを用いることができる。
これらの試薬、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子DNA 又はそのフラグメント又はそれから発現されたタンパク質の使用は、ヒトもしくは動物第VIII因子又はハイブリッドヒト/動物第VIII因子に対する抗体の検出のための周知のアッセイの改良を許容する。これらのアッセイは、これらに限られないが、免疫拡散アッセイ、及びイムノブロットである。これらのアッセイのいずれかを実施するための適切な方法は当業者に周知である。本明細書に用いる場合、そのタンパク質の少くとも1のエピトープを含むハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子又はそのフラグメントは、診断試薬として用いることができる。ハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子又はそのフラグメントを用いることができる他のアッセイの例は、Bethesdaアッセイ及び抗凝固アッセイを含む。
方法の一般的記載
米国出願07/864,004号は、凝固活性を有するハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子の発見を記載する。ここでは、ヒト又はブタの第VIII因子分子の要素は、他の種の第VIII因子の対応する要素で置換される。米国出願08/212,133号及びPCT/US94/13200号は、凝血促進ハイブリッドヒト/動物及びハイブリッド等価第VIII因子分子を記載する。ここでは、1つの種の第VIII因子分子の要素に、他の種の第VIII因子分子の対応する要素に置換される。
本発明は、ハイブリッドヒト/動物、動物/動物、及び等価な第VIII因子分子及びそのフラグメント、並びにこれらハイブリッドをコードする核酸配列を供する。ここでそれらのいくつかは、高純度のヒト第VIII因子と比べて普通の凝固アッセイにおいてより大きな凝固活性を有し;及び/又はヒトもしくはブタ第VIII因子より少い、ヒトもしくはブタ第VIII因子に対する阻害抗体への免疫反応性を有し;及び/又はヒトもしくはブタ第VIII因子より少いヒトもしくは動物における免疫原性を有する。これらのハイブリッド第VIII因子分子は以下の通り作製することができる。
少くとも5つの型の活性なハイブリッドヒト/ブタもしくはハイブリッド等価第VIII因子分子又はそのフラグメント、これらのハイブリッド第VIII因子分子をコードする核酸配列、並びにそれらを調製するための方法が本明細書に開示され;これらは、(1)ヒト又はブタサブユニット(即ち重鎖又は軽鎖)を対応するブタ又はヒトサブユニットに置換することにより;(2)1又は複数のヒト又はブタドメイン(即ちA1,A2,A3,B,C1、及びC2)を対応するブタ又はヒトドメインに置換することにより;(3)1又は複数のヒト又はブタドメインの連続部分を1又は複数のブタ又はヒトドメインの対応する部分に置換することにより;(4)ヒト又はブタ第VIII因子中の1又は複数の特有のアミノ酸残基を含む少くとも1の特定の配列を対応するブタ又はヒト配列に置換することにより;並びに第VIII因子と周知の同一性のない1又は複数のアミノ酸残基を含む少くとも1の配列(“非第VIII因子アミノ酸配列”)をヒト、ブタ、又はハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子中の1又は複数のアミノ酸の少くとも1の特定の配列に置換することにより得られる。
少くとも5つの型の活性なハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物もしくはハイブリッド等価第VIII因子分子又はそのフラグメント、及びそれらをコードする核酸配列も同じ方法で調製することができ:これは、(1)ヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物サブユニット(即ち重鎖又は軽鎖)を対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトサブユニットに置換することにより;(2)1又は複数のヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物ドメイン(即ちA1,A2,A3,B,C1、及びC2)を対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトドメインに置換することにより;(3)1又は複数のヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物ドメインの連続部分を1又は複数の非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトドメインの対応する部分に置換することにより;
(4)ヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物第VIII因子中の1又は複数の特有のアミノ酸残基を含む少くとも1の特定の配列を対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒト配列に置換することにより;並びに第VIII因子と周知の同一性のない1又は複数のアミノ酸残基を含む少くとも1の配列(“非第VIII因子アミノ酸”配列)をヒト、非ヒト、非ブタ哺乳動物、又はハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物第VIII因子中の1又は複数のアミノ酸の少くとも1の特定の配列に置換することにより得られる。
更に、当業者は、ブタ/マウスのような2又はそれ超の非ヒト動物由来の第VIII因子アミノ酸配列を含み、更に非第VIII因子アミノ酸配列を含む、先の2つの段落における(1)〜(5)の型に相当する、少くとも5つの型の活性なハイブリッド第VIII因子分子又はそのフラグメントを調製するために同じ方法を用いることができることを当業者は直ちに認めるであろう。
グループ(1)〜(3)下に先に列記されるハイブリッドヒト/動物、動物/動物、及び等価な第VIII因子タンパク質又はそのフラグメントは、血漿由来第VIII因子のサブユニット、ドメイン、又は連続部分の単離、次の再構成及び精製により作られる。先のグループ(3)〜(5)下に記載されるハイブリッドヒト/動物、動物/動物、及び等価な第VIII因子タンパク質又はそのフラグメントは組換えDNA 法により作られる。そのハイブリッド分子は、以下により詳細に記載されるように、種々の領域の源により、動物配列よりヒト配列のより多くの又はより小さい割合を含み得る。
現在の情報は、Bドメインは阻害エピトープを有さず、第VIII因子機能への周知の効果がないことを示し、いくつかの実施形態において、Bドメインは、本明細書に記載されるいずれかの方法により調製された活性なハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子分子又はそのフラグメント(“B(−)第VIII因子”)において削除される。
ブタ重鎖及びヒト軽鎖を含み、先に列記されるハイブリッドの1番目の型に相当するハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子は、ヒト第VIII因子と比べて、標準的凝固アッセイにおいてより大きな特異的凝固活性を有する。凝固活性を有するハイブリッドヒト/動物又は等価第VIII因子は、その活性がヒト第VIII因子のそれより高い、等しい、又は低いにかかわらず、インヒビターで患者を治療するのに役立ち得る。なぜならこれらのインヒビターは、ヒト又はブタ第VIII因子のいずれよりもハイブリッドヒト/動物又は等価な第VIII因子と少い反応性を有し得るからである。
再構成による単離されたヒト及び動物第VIII因子サブユニットからのハイブリッド第VIII因子分子の調製
本発明は、サブユニット置換を伴うハイブリッドヒト/動物第VIII因子分子又はそのフラグメント、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製及び単離するための方法、並びにそれらの凝血促進活性をキャラクタライズするための方法を供する。Fay, P. J.ら(265 J. Biol. Chem. 6197 (1990));及びLollar, J. S. ら(263 J. Biol. Chem. 10451 (1988))により報告される手順から改良された1つの方法は、ヒト及び動物の第VIII因子のサブユニット(重及び軽鎖)の単離、次のヒト重鎖及び動物軽鎖の組換え又はヒト軽鎖及び動物重鎖の組換えに関する。
ヒト及び動物の両方の個々のサブユニットの単離は、軽鎖/重鎖ダイマーの解離に関する。これは、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)のキレート化、次のmonoSTM HPLC (Pharmacia - LKB, Piscataway, NJ) により行われる。ハイブリッドヒト/動物第VIII因子分子は、カルシウムの存在下で単離されたサブユニットから再構成される。ハイブリッドヒト軽鎖/動物重鎖又は動物軽鎖/ヒト重鎖第VIII因子は、Lollar, J. S. ら(71 Blood 137-143 (1988))により記載されるように、ブタ第VIII因子の単離のための手順によりmonoSTM HPLC により未反応の重鎖から単離される。
以下の実施例に詳細に記載される活性なハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を調製するための一実施形態に用いられるこれらの方法は、ヒト第VIII因子の凝血促進活性より6倍超、大きいハイブリッドヒト軽鎖/ブタ重鎖分子を生ずる。
他のハイブリッドヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物第VIII因子分子は、同じ方法によって調製し、単離し、及びキャラクタライズすることができる。当業者は、これらの方法を用いて、調製し、単離し、そして活性についてキャラクタライズすることができ、軽鎖もしくは重鎖又は1つの種を含むハイブリッド動物/動物第VIII因子、例えばブタ/マウスが、他の種の重鎖又は軽鎖と組み合わせられることを直ちに認めるであろう。
再構成による単離されたヒト及び動物第VIII因子ドメインからのハイブリッド第VIII因子の調製
本発明は、ドメイン置換を伴うハイブリッドヒト/動物第VIII因子分子又はそのフラグメント、それらをコードする核酸配列、それらを調製及び単離するための方法、並びにそれらの凝血促進活性をキャラクタライズするための方法を供する。1つの方法は、ヒトの第VIII因子の1又は複数のドメイン及び動物の第VIII因子の1又は複数のドメインの単離、次のヒト及び動物ドメインの組換えにより、ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子についてLollar, P.ら(267 (33) J. Biol. Chem. 23652-23657 (Nov. 25, 1992) により記載されるように、凝固活性を有するハイブリッドヒト/動物第VIII因子を形成することに関する。
特に、ブタA2ドメインをヒトA2ドメインに置換したハイブリッド/ブタ第VIII因子が供され、その実施形態は、ドメイン置換されたハイブリッドヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物第VIII因子を作製することができる方法を示す。血漿由来の非ヒト非ブタ哺乳動物及びヒトA1/A3-C1-C2ダイマーは、第VIIIa因子からのA2ドメインの解離により単離される。これは、例えば、NaOHの存在下で行われその後、その混合物は希釈され、そのダイマーはmonoSTM HPLC(Pharmacia - LKB, Piscataway, NJ)を用いて溶出される。A2ドメインは、monoSTM HPLC における少量成分として第VIIIa因子から単離される。ハイブリッドヒト/動物第VIII因子分子は、等量の1種のA2ドメイン及び他種のA1/A3-C1-C2ダイマーを混合することにより再構成される。
1又は複数のドメインを有するハイブリッドヒト/動物第VIII因子因子又はそのフラグメントは、Lollar J. S.ら(71 Blood 137-143 (1988))により記載されるように、ブタ第VIII因子の単離のための手順によりmonoSTM HPLC により未反応のダイマー及びA2の混合物から単離される。それらの1又はそれ超を他種の第VIII因子における対応するドメインと置換することができる、一種の第VIII因子のA1,A3,C1,C2、及びBドメインを調製し、単離するためにも慣用的な方法を用いることができる。当業者は、活性ドメイン置換されたハイブリッド動物/動物第VIII因子、例えばブタ/マウスを調製し、単離し、そしてキャラクタライズするのにもこれらの方法を用いることができることを直ちに認めるであろう。
以下の実施例に詳細に記載されるこれらの方法は、凝血促進活性を有するハイブリッド第VIII因子を作り出す。
ヒト、動物、及びハイブリッド第VIII因子サブユニット、ドメイン、又はドメインの一部をコードする配列の組換え操作によるハイブリッド第VIII因子分子の調製
サブユニット、ドメイン、ドメインの連続部分の置換:
本発明は、サブユニット、ドメイン、及びアミノ酸配列置換を伴う、活性な組換えハイブリッドヒト/動物及びハイブリッド等価第VIII因子分子並びにそのフラグメント、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製及び単離するための方法、並びにそれらの凝固、免疫反応及び免疫原特性をキャラクタライズするための方法を供する。
ヒト第VIII因子遺伝子は、Toole, J. J., ら、312 Nature 342-347 (1984) (Genetics Institute) ; Gitschier, J., ら、312 Nature 326-330 (1984) (Genentech) ; Wood, W. I.,ら、312 Nature 330-337 (1984) (Genentech) ; Vehar, G. A., ら、312 Nature 337-342 (1984) (Genentech) ; WO 87/04187 ; WO 88/08035 ; WO 88/03558 ; 米国特許第 4,757,006号に報告されるように哺乳動物において単離され、発現され、そしてそのアミノ酸配列はcDNA由来である。Capon らの米国特許第 4,965,199号は、哺乳動物宿主細胞中で第VIII因子を生産し、そしてヒト第VIII因子を精製するための組換えDNA法を開示する。
CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞及びBHKC(ベイビーハムスター腎細胞)でのヒト第VIII因子発現が報告されている。ヒト第VIII因子は、Bドメインの一部又は全部を削除するように改変され(米国特許第 4,868,112号)、そしてヒト第VIII因子Bドメインのヒト第VIII因子Bドメインでの置換が試みられている(米国特許第 5,004,863号)。ヒト第VIII因子をコードするcDNA及び予測されるアミノ酸配列を各々配列番号:1及び2に示す。
ブタ第VIII因子は血漿から単離・精製される(Fass, D. N. ら、59 Blood 594 (1982))。セルロプラスミン及び凝血第V因子と相同性を有し、かなり誤って位置したN末端軽鎖配列の部分に相当するブタ第VIII因子の部分的アミノ酸配列は、Churchら(81 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 6934 (1984) に記載される。Toole, J. J.ら(312 Nature 342-347 (1984) は、ブタ第VIII因子の4つのアミノ酸フラグメントのN末端の部分的配列決定を記載するが、第VIII因子分子内のそれらの位置に関してそのフラグメントをキャラクタライズしなかった。ブタ第VIII因子のA2ドメインのB及び一部のアミノ酸配列が、Toole, J. J.ら(83 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 5939-5942 (1986) により報告された。
ブタ第VIII因子の完全なA2ドメインをコードするcDNA配列及び予測されるアミノ酸配列並びに全てのドメイン、全てのサブユニット、及び特定のアミノ酸配列の置換を有するハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子は、米国特許第 5,364,771号として1994年11月15日に特許され、WO 93/20093 における、John S. Lollar及びMarschcll S. Rungeによる1992年4月7日に出願された“ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子”との名称の米国出願07/864,004に開示される。配列番号:1に示されるような成熟ヒト第VIII因子内の残基 373−740 と配列同一性を有するブタ第VIII因子のA2ドメインをコードするcDNA配列、並びに予想されるアミノ酸配列を配列番号:3及び4に各々示す。最近、ブタ第VIII因子のA1及びA2ドメイン並びに対応するヒトドメインで置換されたブタA1及び/又はA2ドメインを有するキメラ第VIII因子のヌクレオチド及び対応するアミノ酸配列がWO 94/11503 に報告された。
ブタ及びヒト第VIII因子の両方が2つのサブユニットタンパク質として血漿から単離されている。重鎖及び軽鎖として知られるサブユニットは、カルシウム及び他の二価金属イオンを要求する非共有結合により一緒に維持される。第VIII因子の重鎖は、共有結合した3つのドメイン、A1,A2、及びBを含む。第VIII因子の軽鎖も3つのドメインA3,C1及びC2を含む。Bドメインは未知の生物学的機能を有し、第VIII因子のいずれの測定可能なプラメータの大きな変化もなくタンパク質分解で、又は組換えDNA 技術の方法により除去することができる。ヒト組換え第VIII因子は、哺乳動物細胞内で発現されないならグリコシル化されないが、血漿由来第VIII因子と同様の構造及び機能を有する。
ヒト及びブタ活性化第VIII因子(“第VIIIa因子”)は、A1及びA2ドメイン間の重鎖の開裂により3つのサブユニットを有する。この構造は、A1/A2/A3-C1-C2で示される。ヒト第VIIIa因子は、ブタ第VIIIa因子を安定化する条件下で安定でない。それはおそらく、ヒト第VIIIa因子のA2サブユニットのより弱い会合のためである。ヒト及びブタ第VIIIa因子のA2サブユニットの解離は、第VIIIa因子分子における活性の損失に関連する。
ブタ第VIIIa因子分子の部分の周知の配列をプロープとして用いて、今日まで配列決定されていないブタ第VIIIa因子分子のドメインは、標準的な独立されたクローニング技術、例えば Weis, J. H. (“Construction of recombinant DNA libraries,”in Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら、eds. (1991));及びSambrook, J., ら(Molecular Cloning, A Laboratory, Manual)に記載されるものにより配列決定することができ、全長のハイブリッドを作製することができる。
典型的及び好ましい実施形態において、置換されたA2ドメインを有する活性な組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子、それをコードする核酸、並びにその活性を調製し、単離し、及びキャラクタライズするための方法が特に供される。このハイブリッド構成物を調製する方法は、サブユニット、ドメインの連続部分、又はA2以外のドメインの置換を有する活性な組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子又はそのフラグメントを調製するのにも用いることができる。当業者は、これらの方法が、サブユニット、ドメイン、又はドメインの連続部分が置換されている他の組換えハイブリッドヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物又は動物/動物ハイブリッド第VIII因子分子又はそのフラグメントをいかに調製することができるかも示す。
組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子は、第VIII因子配列をコードするヒトcDNA(Biogen, Inc.) で始めて調製することができる。好ましい実施形態において、cDNAによりコードされる第VIII因子は、Bドメイン全体を欠くドメインA1-A2-A3-C1-C2を含み、Woodら(312 Nature 330-337 (1984))のナンバリングシステムに従って、一本鎖ヒト第VIII因子のアミノ酸残基1−740 及び1649−2332(配列番号:2を参照のこと)。
ブタ又はヒト第VIII因子cDNAの個々のサブユニット、ドメイン、又はドメインの連続部分をクローニングし、確立された変異誘発技術により、対応するヒトもしくはブタサブユニット、ドメイン、又はドメインの部分に置換することができる。Lubin, I. M.ら(269 (12) J. Biol. Chem. 8639-8641 (1994年3月))は、慣用的な制限部位を用いてブタA2ドメインをヒトドメインに置換するための技術を開示する。1つの種の第VIII因子cDNAのいずれかの任意領域を他の種の第VIII因子cDNAに置換するための他の方法は、Horton, R. M.ら(217 Meth. Enzymol. 270-279 (1993))に記載されるオーバーラップ伸長(“SOE ”)によるスプライシングを含む。
サブユニット、ドメイン、又はドメインの一部をコードするハイブリッド第VIII因子cDNA又は全体のハイブリッドcDNA分子は、Selden, R. F. (“Introduction of DNA into mammalian cells”,Current Protocols in Mdecular Biology, F. M. Ausubelら、eds (1991))により記載されるように、確立された技術により培養された細胞内での活性なハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子タンパク質の最終的な発現のための発現ベクター内にクローン化される。
好ましい実施形態において、そのブタ配列がドメイン又は部分ドメイン、例えばA2ドメイン又は部分ドメインをコードする第VIII因子をコードするハイブリッドヒト/ブタcDNAは、哺乳動物発現ベクター、例えばReNeo 内に挿入されてハイブリッド第VIII因子構成物を形成する。ハイブリッド第VIII因子の予備的キャラクタリゼーションは、ハイブリッドcDNAのReNeo 哺乳動物発現ベクターへの挿入及び COS−7細胞におけるそのハイブリッドタンパク質の発現により行われる。その発現ベクター構成物は、当該技術で慣用的な方法、例えばリポソーム媒介トランスフェクション(LipofectinTM, Life Technologies, Inc.)を用いて培養中の細胞、例えばベイビーハムスター腎細胞に安定に移入するのに更に用いられる。
組換えハイブリッド第VIII因子タンパク質の発現は、例えば、配列決定、ノーザン及びウエスタンブロッティング、又はポリメラーゼ鎖反応(PCR) により、確認することができる。タンパク質を安定に発現するその移入された細胞が維持される培養培地中のハイブリッド第VIII因子タンパク質は、沈殿させ、ペレット化し、洗浄し、そして適切な緩衝液中に再度懸濁することかでき、そして組換えハイブリッド第VIII因子タンパク質は、例えばモノクローナル抗A2−SepharoseTMを用いて標準的技術、例えばイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
更なる実施形態において、サブユニット、ドメイン、又はアミノ酸配列置換を含むハイブリッド第VIII因子は、例えば安定性、分泌、検出、単離等を増強するタンパク質又はペプチドをコードする配列が、第VIII因子コーティング配列に隣接する位置に挿入されている組換え分子から融合タンパク質として発現される。融合タンパク質の調製における同種又は異種の種の発現制御配列、例えばプロモーター、オペレーター、及びレギュレーターの使用のための確立されたプロトコルは周知であり、当該技術で慣用的に用いられている。Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel, F. M., ら、eds), Wiley Interscience, N. Y. を参照のこと。
精製されたハイブリッド第VIII因子又はそのフラグメントは、標準的アッセイ、例えば無血漿第VIII因子アッセイ、一段階凝固アッセイ、及び酵素連続イムノソルベントアッセイにより、標準として精製された組換えヒト第VIII因子を用いて免疫反応性及び凝固活性についてアッセイすることができる。
プラスミド及び真核生物ウイルスベクターを含む他のベクターは、その技術の実施者の好み及び判断により、真核細胞内で組換え遺伝子構成物を発現するのに用いることができる(例えば、Sambrookら、Chapter 16を参照のこと)。バクテリア、イースト、及び昆虫細胞系を含む他のベクター及び発現系を用いることができるが、グリコシル化の差又はその欠如のため好まれない。
組換えハイブリッド第VIII因子タンパク質は、培養及び組換え哺乳類タンパク質発現のために一般に用いられる種々の細胞において発現され得る。American Type Culture Collection (Rockville, MD)から利用できる好ましい細胞系は、慣用的手順及び培地を用いて培養されるベイビーハムスター腎細胞である。
サブユニット、ドメイン、又はアミノ酸配列置換を有するハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を調製するための用いられる同じ方法を、他の組換えハイブリッド第VIII因子タンパク質及びそのフラグメント並びにこれらのハイブリッドをコードする核酸配列、例えばヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物又は動物/動物をコードする核酸配列を調製するのに用いることができる。周知のヒトDNA 配列からのプライマーで始めて、ネズミ及びブタ第VIII因子cDNAの部分がクローニングされた。ハイブリッドヒト/動物又は動物/動物第VIII因子分子を調製するのに用いるための他の種の第VIII因子配列は、出発点として周知のヒト及びブタDNA 配列を用いて得ることができる。動物組織DNA と共にPCR 増幅法を含む用いることができる他の技術及び第VIII因子配列をクローン化するための動物からのcDNAライブラリーの使用。
典型的な実施形態として、ハイブリッドヒト/マウス第VIII因子タンパク質は次のように作ることができる。ヒト第VIII因子遺伝子のマウス相同体に相当するDNA クローンは単離され、配列決定され、そしてマウス、ヒト、ブタ第VIII因子分子の部分の予測されるアミノ酸配列の比較も含む、マウス第VIII因子タンパク質のアミノ酸配列が、Elder, G. ら(16 (2) Genomics 374-379 (1993年3月)に記載されるように予測されている。マウス第VIII因子cDNA配列及び予測されるアミノ酸配列は、各々配列番号:5及び配列番号:8に示される。好ましい実施形態において、Sarkar, G.及びS. S. Sommer, 244Science 331-334 (1989)に記載される転写物配列決定(RAWTS) 法を伴うRNA 増幅を用いることができる。
要約すると、そのステップは、(1)オリゴ(dT)又はmRNA特異的オリゴヌクレオチドプライマー;(2)1方又は両方のオリゴヌクレオチドが増幅されるべき領域に相補的な配列に結合されたファージプライマーを含んでいるポリメラーゼ鎖反応;(3)ファージプロモーターでの転写;及び(4)ネスティド(nested) (内部)オリゴヌクレオチドでプライムされた転写物の逆転写酵素媒介ジデオキシ配列決定である。配列情報を示すことに加えて、この方法は、翻訳開始シグナルを適切なPCR プライマーに組み込むことにより試験管内翻訳産物を作り出すことができ、そして他の種からの新しいmRNA配列情報を得るのに用いることができる。
アミノ酸の置換:
本発明は、他の種の対応するアミノ酸配列又はそのフラグメントで置換された1つの種の1又は複数の特有のアミノ酸を含む少くとも1の配列を含む活性な組換えハイブリッドヒト/動物及び動物/動物第VIII因子分子、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製及び単離するための方法、並びにそれらの凝固、免疫原及び免疫反応特性をキャラクタライズするための方法を供する。
A2ドメインは、第VIII因子分子の凝血促進活性のために必要である。研究は、ブタ第VIII因子がヒト第VIII因子より6倍大きい凝血促進活性を有する(Lollar, P., 及びE. T. Parker 266 J. Biol. Chem. 12481-12486 (1991)こと及びヒトとブタとの第VIII因子の間の凝固活性の差がヒト及びブタA2ドメインにおける1又は複数の残基間のアミノ酸配列の差に基づくようである(Lollar, P.ら 267 J. Biol. Chem. 23652-23657 (1992))。更に、ヒト第VIII因子分子内のA2及びC2ドメイン並びにおそらく第3の軽鎖領域は、全てでないならほとんどがHoyer, L. W.及びD. Scandella, 31 Semin, Hematol. 1〜5 (1994)に従って、阻害抗体が反応するエピトープを有すると考えられる。
組換えハイブリッドヒト/動物、動物/動物、又は等価第VIII因子分子又はそのフラグメントは、1つの種の第VIII因子のA2,C2、及び/又は他のドメインからの1又は複数の特有のアミノ酸を含む少くとも1の特定の配列の、他の種の対応する配列への置換により作ることができ、ここでそのアミノ酸配列は、2つの種の分子間で以下により詳細に示すように異なる。本明細書に記載される典型的な好ましい実施形態において、本発明は、エピトープを含む対応するヒトアミノ酸配列に置換されたブタアミノ酸配列を含む活性な組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を供し、ここでそのハイブリッド第VIII因子は、第VIII因子に対する阻害抗体を減少させ、又はそれとの免疫反応性がない。
更なる実施形態において、活性な組換えハイブリッド第VIII因子分子は、第3の種における対応する配列に置換された1超の種からのアミノ酸配列を含んでも作ることができる。組換えハイブリッド等価分子は、以下に更に詳述されるように、第VIII因子と周知の同一性のない1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1の配列を含むヒト、動物、又はハイブリッド第VIII因子を含んでも作ることができる。
記載される特定のアミノ酸置換を有するいずれのハイブリッド第VIII因子構成物も、凝固活性について及び凝固活性が増加された及び/又は抗体免疫反応性が減少したハイブリッド第VIII因子分子の同定のための第VIII因子に対する阻害抗体との反応性についての標準的手順によりアッセイすることができる。ヒト又はブタ第VIII因子と比べて凝固活性が減少し、抗体反応性も減少したハイブリッド分子も同定することができる。
当業者は、ヒト又はブタ第VIII因子と比べて低い、等しい又は高い凝固活性を有するハイブリッド第VIII因子分子又はそのフラグメントが、第VIII因子欠損を有する患者を治療するのに役立つことを認めるであろう。特定のアミノ酸の置換を伴う活性な組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を調製するための本明細書に記載される方法は、活性な組換えハイブリッドヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物第VIII因子タンパク質、ハイブリッド動物−1/動物−2第VIII因子、及びハイブリッド等価第VIII因子又はそのフラグメントを調製するのに用いることができる。
凝固活性を変えたハイブリッド第VIII因子分子
本発明は、本明細書に記載される確立された部位特異的変異誘発技術を用いて、他の種の第VIII因子の対応するアミノ酸配列に置換された1つの種の第VIII因子において凝血促進活性を有する1又は複数の特有のアミノ酸を含む少くとも1の特定の配列を含む凝血促進組換えハイブリッドヒト/ヒト、動物/動物、又は等価第VIII因子を供する。置換に用いる特定の配列が選択され、そしてそのハイブリッド構成物は、次の通り、調製され、凝固活性についてアッセイされる。好ましくかつ典型的な実施形態として、特に、A2ドメイン内にアミノ酸置換を含むハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を供する。
当業者は、これらの方法を、変化した凝固活性、好ましくはヒト第VIII因子と比べて増加した凝固活性を有する、他のハイブリッドヒト/動物、動物/動物、及び等価第VIII因子分子又はそのフラグメントを調製するのに用いることができることが理解される。ブタ第VIII因子におけるより大きな凝固活性についての基礎は、Lollar, P., 及びC. G. Parker, 265 J. Biol. Chem. 1688-1692 (1990) ; Lollar, P., ら267 J. Biol. Chem. 23652-23657 (1992) ; Fay, P. J.,及びT. M. Smudzin, 267, J. Biol. Chem. 13246-13250 (1992) に従って、活性の喪失を導くブタ第VIIIa因子より迅速なヒト第VIIIa因子のA2サブユニットの自発的な解離であるようである。
ヒト及びブタ第VIII因子A2ドメイン(残基番号は、ヒト第VIII因子の全長のアミノ酸配列/配列番号:2に関して、位置373 で始まる。)のアミノ酸配列のアラインメントの比較を図1Cに示す。凝固活性を変えたハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子の調製のため、ヒトA2ドメイン内のヒト及びブタA2アミノ酸配列(各々配列番号:2及び6)の比較に基づき示される変異誘発のための最初の標的候補を表1に示す。
表1並びに図1及び図2のボールド文字は、A2ドメインの17%のみを構成するが、ヒト及びブタA2ドメイン間の配列の差の70%を含むヒト及びブタA2ドメインアミノ酸配列(各々配列番号:2及び6)における7つの配列を示す。
ヒト第VIII因子のA2ドメイン(Ser 373 −Arg 740)中のアミノ酸Ser 373 −Glu 604 が相同なブタ配列で置換されている組換えハイブリッドヒト/ブタ構成物が記載される。この構成物は、A2インヒビターと反応せず、ヒトB(−)第VIII因子と同じ凝固活性を有する。ヒト第VIII因子と比べて増加した凝固活性を有するヒト第VIII因子内に完全なブタA2ドメイン置換を含む血漿由来ハイブリッド分子が記載される。これらの構成物の比較配列、残基Asp 605 及びArg740 の間の領域がヒト及びブタ第VIII因子間の活性の差の原因であることを示す。
この領域は、確立された部位特異的変異誘発技術、例えばA2のNH2 末端領域によりブタ置換を含むハイブリッド第VIII因子分子を作るために排他的に用いられている“Splicing by overlap extension ”(SOE) を用いることにより、Asp 605 とArg 740 との間の領域内にブタ置換を有する組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子を系統的に作ることにより、より特異的に規定することができる。これらの分子は、上述のように、 COS−7細胞及びベイビーハムスター腎細胞内で発現させることができる。それらは、ヘパリン− SepharoseTM及びイムノアフィニティークロマトグラフィーのような、当該技術において周知の方法を用いて、均一によるまで精製することができる。
タンパク質濃度はA280 における紫外線の吸収により評価することができ、そしてその構成物の比活性は、(一段階凝血アッセイによりml当りのユニットへ測定される)凝固活性をA280 で割ることにより決定することができる。ヒト第VIII因子は約3000−4000U/A280 の比活性を有し、ブタ第VIII因子は約20,000U/A280 の比活性を有する。好ましい実施形態において、凝血促進組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子は、20,000U/A280 の比活性を有し、そしてA2ドメイン内に少量のブタ置換を含む。
本明細書に記載されるように、部位特異的変異誘発技術は、ヒト第VIII因子と比べて増強され、等しく、又は減少され得る、好ましくは増強された凝固活性を有するハイブリッドタンパク質を同定するのに用いられる。ハイブリッドヒト/ブタの実施形態において、特定のヒトの配列は、好ましくはHO, S. N. ら(77 Gene 51-59 (1994)及び実施例7及び8に記載されるようなオーバーラップエクステンション法(SOE) によるスプライシングを用いて、ブタ配列で置換される。オリゴヌクレオチド誘導変異誘発を、ヒトA2ドメインの部分についてのアミノ酸配列をループアウトするのに行われるように用いることができる(実施例7を参照のこと)。ハイブリッドの機能的分析は凝固活性を示すので、その配列を更に、標準的点変異分析技術により凝血促進配列のために切り裂いてマッピングすることができる。
本発明は、ハイブリッド第VIII因子cDNA及びタンパク質は、DNA 配列決定、凝固活性アッセイ、ELISA 及び精製されたハイブリッド第VIII因子の 280nmにおけるUV吸光度によるマス、特異的凝固活性(U/mg)、精製されたハイブリッド第VIII因子の SDS−PAGE等のような確立され慣用されている方法によりキャラクタライズすることができる臨床的効能についてテストする他の周知の方法、例えばアミノ酸、炭水化物、硫黄、又は金属イオン分析が要求され得る。
ヒト第VIII因子と比べて優れた凝固活性を有する組換えハイブリッド第VIII因子は、血漿由来第VIII因子より安価に作ることができ、第VIII因子欠損の有効な治療のために要求される第VIII因子の量を減少させることができる。
免疫反応性の減少したハイブリッド第VIII因子分子
第VIII因子の凝固活性を阻害する抗体(“インヒビター”又は“阻害抗体”)と免疫反応性のあるエピトープは、第VIII因子における周知の構造−機能関係に基づいてキャラクタライズされている。おそらく、インヒビターは、第VIII因子のドメイン構造と会合する高分子相互作用のいずれか、又はそのvon Willebrand因子、トロンビン、第Xa因子、第IXa因子、又は第X因子との会合を破壊することにより機能し得る。
しかしながら、ヒト第VIII因子に対する阻害抗体の90%超は、Fulcher ら、82 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 7728-7732 (1985), and Scandella ら、85 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 6152-6156 (1988)に記載されるように、第VIII因子の40kDa A2ドメイン又は20kDa C2ドメインに位置したエピトープに結合し、これらのドメインと会合する特定の機能を破壊することにより機能する。A2及びC2エピトープに加えて、Scandella ら(82 Blood 1767-1775 (1993))に従って、第VIII因子の軽鎖のA3又はC1ドメインに第3のエピトープが存在し得る。この予測される第3のエピトープの重大さは未知であるが、それに第VIII因子におけるエピトープ反応性のより少い画分を説明するようである。
抗A2抗体は、Lollarら(93 J. Clin. Invest. 2497-2504 (1994))により示されるように、第X因子活性化をブロックする。Wareら(3 Blood Coaqul. Fibrinolysis 703-716 (1992))により記載される欠失変異誘発による以前のマッピング研究は、A2エピトープを、40kDa A2ドメインのNH2 末端の20kDa 領域内に位置させた。競合イムノ放射能測定アッセイは、A2インヒビターが、Scandella ら(67 Thronb. Haemostas. 665-671 (1992)により記載されるように、及び実施例8に示されるように、共通のエピトープ又はせまくクラスター化したエピトープのいずれかを認識することを示した。
本発明は、活性な組換えハイブリッド及びハイブリッド等価第VIII因子分子又はそのフラグメント、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製及び単離する方法、並びにそれらにキャラクタライズするための方法を供する。これらのハイブリッドは、他の種の第VIII因子の対応するアミノ酸配列に置換された1つの種の第VIII因子の1又は複数の特有のアミノ酸を含む少くとも1の特定のアミノ酸配列を更に含む、ヒト/動物、動物/動物、又は等価ハイブリッド第VIII因子分子を含み;又はヒト、動物、又はハイブリッド第VIII因子において特定のアミノ酸配列に置換された第VIII因子と周知の配列同一性のない1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1のアミノ酸を含む。生じたハイブリッド第VIII因子は、ヒト又はブタ第VIII因子と比べて、第VIII因子阻害抗体に対する免疫反応性が減少し、又は全くない。
第VIII因子分子におけるアミノ酸の置換について先のセクションに記載される試みを用いて、変異分析は、他の種、好ましくはヒトの第VIII因子における1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1のアミノ酸に、又はA2,C2、又は阻害抗体が結合する他のドメイン内の1又は複数の重要な領域を含む、ハイブリッド等価第VIII因子分子のアミノ酸配列に置換された1つの種、好ましくはブタの対応する第VIII因子アミノ酸配列を選択するのに用いられる。
その方法は、以下により詳細に記載される。生じた凝血促進組換えハイブリッド構成物は、標準的アッセイを用いて、ヒト第VIII因子と比べて、阻害抗体に対して減少した免疫反応性を有し、又は全く免疫反応性がない。以下に記載されるような、より小さなアミノ酸の系統的置換及び次の免疫反応性についてのハイブリッド構成物のアッセイを通して、第VIII因子分子のいずれかのドメインにおけるエピトープがマッピングされ、より少い免疫反応性もしくは免疫反応性のないアミノ酸配列により置換され、そしてハイブリッド第VIII因子が調製される。
当業者は、エピトープマッピング、ハイブリッド第VIII因子分子の作製、並びに阻害抗体が結合するA2,C2、及び/又は他のドメイン内のエピトープを含む1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1の配列を同定及び置換するため、及びヒト又はブタ第VIII因子と比べて免疫反応性の少いもしくは全くない凝血促進組換えハイブリッドヒト/動物、動物/動物、又は等価第VIII因子又はそのフラグメントを作製するための構成物の変異分析を組み合わせるアプローチを用いることができることが理解される。このアプローチは、ヒトA2ドメイン内にブタアミノ酸置換を有し、抗第VIII因子抗体に対する抗原性を有さないハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を典型的な実施形態として調製するために、実施例8に記載されるように用いられる。
通常、ブタ第VIII因子はヒト第VIII因子に対する阻害抗体と限られた反応性を有し又は反応性を有さない。A2ドメイン内のアミノ酸置換に基づき阻害抗体との反応性が少い又は全くない組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子は、ハイブリッド第VIII因子が次の通り、他の種の第VIII因子及びA2以外のドメイン内の置換を用いていかに調製することができるかの例として調製される。ブタA2ドメインは、実施例6,7、及び8に及び上述に記載されるもののような、標準的クローニング技術によりクローン化され、そして次に例えばcDNAを切断するための制限部位又はオーバーラップエクステンション(SOE) によるスプライシングを用いて、慣用的な手順を用いてA2ドメイン内で切断されてスプライシングされる。
生じたブタアミノ酸配列はヒトA2ドメイン内に置換されてハイブリッド第VIII因子が形成され、それは、哺乳動物発現ベクター、好ましくはReNeo内に挿入され、培養された細胞、好ましくはベイビーハムスター腎細胞内に安定に移入され、そして上述の通り発現される。ハイブリッド第VIII因子は、例えば慣用的なBethesd アッセイにより又は無血漿色原基質アッセイにより抗A2抗体で、免疫反応性についてアッセイされる。Bethesdaユニット(BV)は、インヒビタータイターを測定するための標準的な方法である。
Bethesdaタイターがハイブリッド内で測定不能なら(<0.7 BU/mg IgG) 、ヒトA2エピトープは置換された対応するブタ配列の領域内で削除される。そのエピトープは次第にせばまり、そしてこれにより特定のA2エピトープは可能な限り小さなブタ配列のハイブリッドヒト/ブタ分子を作るように決定され得る。本明細書に記載されるように、阻害免疫反応性について重大であるアミノ酸Arg 484 −Ile 508 に相当する25残基の配列が同定され、そしてヒトA2ドメイン内で置換される。この配列内にはヒト及びブタ第VIII因子間で9つの差しかない。この領域は更に分析され、置換される。
A2ドメイン内に置換を有する又は有さないC1,C2又は他のドメイン内のアミノ酸配列の置換に基づく阻害抗体との反応性の小さい又は全くないハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子も調製することができる。C2エピトープは、例えば、部位特異的変異誘発と組み合わせた相同体スキャンアプローチを用いてマッピングされ得る。より詳しくは、その手順は、A2ドメイン内のアミノ酸置換について本明細書に記載されるものと同じ又は似たものであり得、例えばRT−PCR により又はヒトC2もしくは他のドメインDNA でのブタ肝臓cDNAライブラリーのプロービングにより、ブタC2又は他のドメインをクローン化すること;マッピング及び同時にC2又は他のドメイン内のエピトープを置換するための制限部位技術及び/又は連続的SOE ; B(−)第VIII因子内のヒトC2又は他のドメインへの置換;発現ベクター、例えばpBluescript 内への挿入;培養された細胞内での発現;及び免疫反応のための慣用的アッセイを含む。C2ハイブリッド第VIII因子の、C2−特異的インヒビター、MR (Scandella, Dら、Thromb Haemostasis 67 : 665-671 (1992)及びLubin ら(1994))及び/又はアフィニティークロマトグラフィーにより調製された他のC2特異的抗体との反応を行うことができる。
C2ドメインは、アミノ酸残基2173−2332(配列番号:2)からなる。この154 アミノ酸領域内で、インヒビター活性は、Shima, Mら(69, Thromb Haemostas. 240-246 (1993))に従って、残基2648及び2312の間の65アミノ酸に対するものであるようである。ヒト及びブタ第VIII因子のC2配列がこの領域内に約85%の同一性であるなら、それは第VIII因子の機能的な活性領域内の他所にあるので、置換されたC2配列とのハイブリッドを作製するために最初の標的として用いられ得るヒト及びブタ第VIII因子C2アミノ酸配列の間に約10の差があるであろう。
臨床的に重要な第VIII因子エピトープはA2及びC2ドメインに限られるようである。しかしながら、第VIII因子の他の領域(A1,A3,B、又はC1ドメイン)に対する抗体が同定されるなら、そのエピトープは、非抗原性ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子について本明細書に記載されるアプローチを用いることによりマッピングされ、除去され得る。
より詳しくは、いずれかの他の動物又はヒト第VIII因子ドメイン内の予測される第2の軽鎖エピトープ及び/又はいずれかの他のエピトープのマッピングも達成され得る。最初に、A3又はC1ドメイン内の第3のインヒビターの存在の決定は以下の通り行われ得る。ヒト(“H”)及びブタ(“P”)第VIII因子アミノ酸配列をモデルとして用いて、A1P-A2P-A3P-C1H-C2P 及びA1P-A2P-A3H-C1P-C2P のBドメインのないハイブリッドが作製されよう。
ブタ第VIII因子に対する低い又は検出できないタイターを有する(Dr. Dorothea Scandella, American Red Crossからの)約20人の患者の血漿からのインヒビターIgG はハイブリッドに対してテストされよう。A3ドメイン内に第3のエピトープがあるなら、阻害性IgG はA1P-A2P-A3H-C1P-C2P と反応するがA1P-A2P-A3P-C1H-C2P とは反応しないと予測される。逆に、第3のエピトープがC1ドメイン内にあるなら、阻害性IgG はA1P-A2P-A3P-C1H-C2P と反応するがA1P-A2P-A3H-C1P-C2P と反応しないと予測される。第3のエピトープが同定されるなら、それは、A2及びC2エピトープについて本明細書に記載される手順によりキャラクタライズされよう。
例えば、C1又はA3ドメインエピトープに特異的な抗体は、A1P-A2P-A3H-C1P-C2P 及びA1P-A2P-A3P-C1H-C2H ハイブリッドを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、及び組換え第VIII因子C2−SepharoseTMに通過させることによるC2特異的抗体の除去により全体の患者から単離され得る。予測される第3のエピトープは、SOE 構成物により同定されよう。ここで好ましい実施形態において、ヒト第VIII因子A3又はC1ドメインの部分はブタ配列で系統的に置換される。
免疫原性の小さいハイブリッド第VIII因子分子
分子は、それがヒト又は動物内で抗体を誘導し得る場合、免疫原性である。本発明は、ヒト又は動物において野性型ヒトブタ第VIII因子より免疫原性の少い凝血促進組換えハイブリッドヒト/動物又は動物/動物第VIII因子分子、ハイブリッド第VIII因子等価分子、又はいずれかのフラグメントであって、他の種の第VIII因子の免疫原活性を有する対応するアミノ酸配列で置換された1つの種類の第VIII因子の1又は複数の特有のアミノ酸を含む少くとも1の特定のアミノ酸配列;又はヒト、動物、又はハイブリッド因子のアミノ酸配列に置換された第VIII因子と周知の同一性のない1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1のアミノ酸配列を含むものを供する。
このハイブリッドは、動物又はヒトにおいてインヒビターの発達を低下させるため、及び第VIII因子欠損を治療するのに用いることができ、血友病の以前に治療していない患者を治療することにおいて好ましいであろう。好ましい実施形態においてハイブリッド第VIII因子は、免疫原活性を有するヒトアミノ酸に置換された1又は複数のアラニン残基を更に含み、ヒト又は動物において免疫原性の少い又は全くない凝血促進組換えハイブリッド等価分子又はそのフラグメントを生ずるヒト第VIII因子アミノ酸配列を含む。
ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を用いて第VIII因子分子における非抗原性アミノ酸配列の置換と組み合わせたエピトープマッピング及び変異分析の本明細書に記載される方法は低抗原性のハイブリッド分子を作り出す。このモデル及び関連する方法を用いたいずれかの本明細書に記載されるハイブリッド構成物は、ハイブリッド第VIII因子を認識する免疫系の能力を最小化してその免疫原性を減らすために出来るだけ多くの機能的エピトープを除去するための部位特異的変異誘発技術により変えられ得る。
免疫原性を更に減少させるため及びより小さな免疫原性ハイブリッド第VIII因子を作製するために用いることができる1つの方法は、ヒト、動物、又はハイブリッド等価第VIII因子中の所定の特定のアミノ酸配列の、Cwnningham, B. C. 及びJ. A. Wells (244 Science 1081-1085 (1989))に記載されるアラニンスキャニング変異誘発である。アラニンスキャニング変異誘発において、エピトープに関連すると予測されるアミノ酸側鎖は、部位特異的変異誘発を用いることにより、アラニン残基により置換される。アラニン変異体に結合する抗体を野性型タンパク質と比較することにより、結合相互作用への個々の側鎖の相対的寄与を決定することができる。アラニン置換は、抗体結合への側鎖寄与がβ炭素を超えて除去されるが、グリシン置換と異なり、主鎖コンホメーションは通常変わらないので、特に役立つようである。アラニン置換は、タンパク質−タンパク質相互作用を支配する主な立体的、疎水性又は静電効果に負荷をかけない。
タンパク質抗原−抗体相互作用において、通常、抗体と接触する約15〜20の抗原側鎖がある。主鎖相互作用に対して側鎖相互作用は、タンパク質間相互作用を支配する。現在の研究は、これらの側鎖相互作用のいくつか(約3〜5)のみが結合エネルギーのほとんどに寄与することを示唆する。Clackson, T., 及びJ. A. Wells, 267 Science 383-386 (1995) を参照のこと。いくつかのネズミモノクローナル抗体についての成長ホルモンエピトープの更なる分析は、結合エネルギーへの側鎖寄与についての以下のヒエラルキー:Arg>Pro >Glu −Asp −Phe −Ile (Trp, Ala, Gly及びCys は未測定)を示した(Jin, L.,ら、226 J. Mol. Biol. 851 〜865 (1992))。本明細書に記載されるA2エピトープでの結果はこれと一致する。なぜなら 484〜508 A2セグメント中の25残基のうち20がこれらの側鎖を含む(表1)からである。
特定のアミノ酸残基が抗体により特に十分に認識されるという発見は、周知のエピトープからのこれらの残基の除去が、免疫系がこれらのエピトープを認識する能力を減少させることができること、即ち免疫原性の少い分子を作ることができることを示す。A2エピトープの場合、免疫原性残基は、第VIII因子凝固活性の損失なく置換され得る。例えば、HP9において、Arg 484 はSer により置換され、Pro 485 はAla により置換され、Arg 489 はGly により置換され、Pro 492 はLeu により置換され、そしてPhe 501 はMet により置換される。
更に、実施例8に記載されるハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子構成物において免疫反応性をテストするのに用いられる患者血漿からの結果は、異なる患者からの抗体がA2ドメインの同じ又は極めて類似した構造領域を認識すること、及びA2インヒビターに結合するのに関与するA2ドメイン内の残基が少ししかバリエーションを示さないようであることを示す。これにより、ヒト第VIII因子残基 484〜508 内に含まれるA2エピトープは、それが第VIII因子の他の構造領域より優れたヒト免疫系により認識される点で免疫支配エピトープである。この構造を他の種からの非抗原性第VIII因子配列により又は非第VIII因子アミノ酸配列により置換しながら十分な凝血促進活性を保持することは、免疫系によるハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子の認識を変えると予想される。
小さな中性の側鎖(例えばアラニン)のエピトープを支配する傾向のあるかさ高い及び/又は荷電した残基を置換するための部位特異的変異誘発がより少い免疫原性領域を作り出し得ることが認められる。各々の重大なインヒビターエピトープにおいていくつかのこれらの置換基を含む分子は、抗原−抗体相互作用の典型であるロック・アンド・キーメカニズムにより免疫系が適合するのが困難であろうと予想される。その低い抗原性のため、これらのハイブリッド分子は、第VIII因子欠損患者をインヒビターで治療するのに役立ち得、そしてその低い免疫原性のため、それは以前に治療していない患者を血友病Aで治療することに役立ち得る。
一般的な結果は、いくつかの重要な残基のうちの1つの変異は、数オーダーの倍率だけ、所定のタンパク質間相互作用についての結合定数を減少させるのに十分である。これにより、全ての第VIII因子エピトープはインヒビター発達のために重大である限られた数のアミノ酸を含むようである。第VIII因子内の各々のエピトープのために、免疫原活性を有する1又は複数の特定のアミノ酸を含む少くとも1の配列についてのアラニン置換は、野性型第VIII因子より少い免疫原性である活性分子を作り出すことができる。好ましい実施形態において、ハイブリッド第VIII因子分子はBドメインのないものである。
免疫原活性を有する第VIII因子におけるアミノ酸配列の免疫原活性の少い又は全くないアミノ酸への置換を有する活性な組換えハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子を調製するための方法は、典型的な実施形態としてA2ドメイン内のアミノ酸置換を有するハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を用いて以下の通りである。ヒト第VIII因子領域 484〜508 には25の残基がある。これらの残基のいずれかが全部で475 の変異体について、他の19のアミノ酸のいずれかにより置換される1つの変異体を作るために部位特異的変異誘発を用いることができる。更に、1を超える変異を有するハイブリッド分子を作製することができる。
ハイブリッド構成物は、Friguet, B. ら(77 J. Immunol. Methods 305-319 (1985))により記載されるように、インヒビター抗体についての結合定数を測定することにより抗原性についてアッセイすることができる。好ましい実施形態において、結合定数は、少くとも3オーダーの倍率だけ減少され、それは臨床的に重大でないレベルまでBethesdaタイターを低くするであろう。例えば、A2抗体による阻害のIC50(結合定数の粗い測定)は、実施例8に記載されるハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子構成物HP2,HP4,HP5,HP7及びHP9において削減され、そしてこれは、Bethesdaタイターにおける測定不能なレベルまでの削減に関連していた。
例えば、ヒト第VIII因子の二重又は三重アラニン変異体(例えば、ヒト第VIII因子Arg484 →Ala, Arg 489→Ala, Phe 501→Ala 三重変異体)は治療目的のために十分に低い抗原性の分子を作り出すであろうことが認められる。C2エピトープ及び予想される第3のエピトープにおいて同様の変異を行うことができる。好ましい実施形態は、2又は3の第VIII因子エピトープへの2又は3のアラニン置換を含む。これらの領域への他の置換も行うことができる。
好ましい実施形態において、ハイブリッド等価第VIII因子分子は、ヒト又はブタ第VIII因子のいずれよりもヒト及び動物において低い抗原性及び/又は免疫原性であるものが同定されるであろう。このようなハイブリッド等価構成物は、それらの減少した抗原性及び/又は免疫原性について動物においてテストすることができる。例えば、対照及び第VIII因子欠損ウサギ、ブタ、イヌ、マウス、霊長類、及び他の哺乳動物を動物モデルとして用いることができる。
1つの実験プロトコルにおいて、ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、全身的に、6ヶ月〜1年の期間にわたって、動物に、好ましくは静脈内注入により、体重1kg当り5〜50Unit、好ましくは10〜50Unit、そして最も好ましくは40Unitの投与量で投与することができる。抗体は、イムノアッセイ及びBethesdaアッセイを含む慣用的な方法により、テスト期間にわたる注入の後、間隔をあけて採取した血漿サンプルにおいて測定することができる。凝固活性は、1段階凝固アッセイを含む慣用的な手順でサンプルにおいても測定することができる。
ハイブリッド等価第VIII因子分子は、少くとも2つの型の臨床試験においてそれらの減少した抗原性及び/又は免疫原性についてヒトにおいてテストすることができる。ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子が阻害抗体と免疫反応性を有する否かを決定するようデザインされる1つの型の試験において、ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、好ましくは静脈内注入により、治療するヒト又はブタ第VIII因子の凝固活性を阻害する第VIII因子に対する抗体を有する第VIII因子欠損の約25の患者に投与される。ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子の投与量は、体重1kg当り5〜50Unit、好ましくは10〜50Unit、そして最も好ましくは40Unitの範囲である。
各々の投与後約1時間の、血液サンプルからの第VIII因子の回収は、1段階凝固アッセイにおいて測定される。注入後約5時間に、再びサンプルが採取され、回収物が測定される。全部の回収及びサンプルからの第VIII因子の消滅の比率は抗体タイター及び阻害活性の前兆である。抗体タイターが高いなら、第VIII因子回収率は通常、測定することができない。回収の結果は、血漿由来ヒト第VIII因子、組換えヒト第VIII因子、ブタ第VIII因子、及び他の一般に用いられる治療形態の第VIII因子又は第VIII因子置換体で治療された患者における回収の結果の回収と比べられる。
ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子が免疫原性であるか否か、即ち患者が阻害抗体を発達させるであろうか否かを決定するようデザインされる第2の型の臨床試験において、ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、先の段落に記載されるように、第VIII因子に対する抗体を発達させなかった約100 の以前に治療していない血友病患者に投与される。治療は、6ヶ月〜1年の期間にわたって約2週間毎に与えられる。この期間の間、1〜3ヶ月の間隔で、血液サンプルが採取され、阻害抗体の存在を決定するためにBethesdaアッセイ又は他の抗体アッセイが行われる。回収アッセイも、各々の注入後に、上述のように行われ得る。結果は、血漿由来ヒト第VIII因子、組換えヒト第VIII因子、ブタ第VIII因子、又は他の一般に用いられる治療形態の第VIII因子もしくは第VIII因子置換体を受容する血友病の患者と比較される。
ヒト及び非ブタ非ヒト哺乳動物第VIII因子アミノ酸配列を用いるハイブリッド第VIII因子分子の調製
特定のアミノ酸の置換を伴うハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子を調製するために用いられる方法は、A2,C2、及び/又は他のドメイン内に1又は複数のアミノ酸の置換に基づき、ヒト又はブタ第VIII因子と比べて、変化したもしくは同じ凝固活性及び/又は等しいもしくは減少した免疫反応性を有する組換えハイブリッドヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物又は動物/動物第VIII因子タンパク質を調製するのに用いることができる。
アミノ酸配列同一性の同様の比較は、凝血促進活性、抗A2及び抗C2免疫反応性、及び/又は免疫原性、又は他のドメイン残基における免疫反応性及び/又は免疫原性におけるアミノ酸配列を決定するために、ヒト及び非ヒト非ブタ哺乳動物第VIII因子タンパク質間で行うことができる。次にハイブリッドヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物第VIII因子分子を調製するために同様の方法を用いることができる。上述の通り、各々のハイブリッドの機能的分析は、阻害抗体に対する反応性の減少した、及び/又は免疫原性が減少した、及び/又は凝固活性の増加したものを示すであろう。そしてその配列は、点変異分析により更に詳細に分析することができる。
例えば、ハイブリッドヒト/マウス第VIII因子分子は上述の通り調製することができる。ヒト(配列番号:2)及びマウス(配列番号:6)のA2ドメインのアミノ酸配列アラインメントを図3に示す。Elder らにより報告されるように、マウスcDNA(配列番号:5)によりコードされる第VIII因子タンパク質はヒト配列(配列番号:2)と全体で74%の配列同一性を有する(比較からBドメインを除くと87%の同一性)2319アミノ酸を有し、ヒト第VIII因子より32アミノ酸短い。
マウスA及びCドメインのアミノ酸配列(配列番号:6)は、ヒト配列(配列番号:2)と84〜93%の配列同一性で高度に保存されており、一方B及び2つの短い酸性ドメインは42〜70%の配列同一性を有する。特に、A1,A2、及びA3マウスアミノ酸配列(配列番号:6)は、対応するヒトアミノ酸配列(配列番号:2)、C85,85、及び90%の同一性である。C1及びC2マウスアミノ酸配列は対応するヒトアミノ酸配列と93及び84%の同一性である。予想されるマウス第VIII因子アミノ酸配列(配列番号:6)においてA1,A2、及びA3ドメインは、ナンバリング目的のためのアミノ酸配列同一性を用いて、各々ヒト第VIII因子アミノ酸1〜372, 373〜740 、及び1690〜2032と相同である。
トロンビン/第Xa因子及び1つの活性化プロテインC開裂部位を除く全てはマウス第VIII因子において保存される。von Willebrand因子結合のためのチロシン残基も保存される。
Elder らによれば、マウス第VIII因子のヌクレオチド配列(配列番号:5)は7519塩基を含み、ヒトヌクレオチド配列(配列番号:1)と67%の全体の同一性を有する。ネズミコーティング配列の6957塩基対はヒト第VIII因子におけるコーティング配列の7053塩基対と82%の同一性を有する。Bドメインを比較に含めなければ、88%のヌクレオチド配列同一性がある。
Elder らは、ヒト及びマウス第VIII因子分子は全体で74%の同一性であること、及び変えられた時に血友病を導くヒト残基の95%がマウスにおけるものと同一である。これらのデータは、同様のアミノ酸配列を同定しハイブリッド分子を調製するための、凝固活性及び/又はブタ第VIII因子分子における抗体に対する免疫反応性を有するアミノ酸配列を同定するのに用いられる同じ技術のマウス又は他の動物第VIII因子への適用を支持する。
ヒト及び非ヒト非ブタ哺乳動物第VIII因子アミノ酸配列並びに非第VIII因子アミノ酸配列を用いる、交差反応性の減少したハイブリッド第VIII因子分子の調製
ブタ第VIII因子は、ヒト第VIII因子に対する阻害抗体を有する第VIII因子欠損患者を臨床的に治療するのに用いられる。ヒト血漿がブタ第VIII因子と反応する交差反応は、ハイブリッドブタ/非ヒト非ブタ哺乳動物又はハイブリッド等価第VIII因子の調製により削減され得る。好ましい実施形態において、ヒトA2,C2、又は他のドメイン特異的インヒビターが非ヒト非ブタ哺乳動物(“他の哺乳動物”)第VIII因子と反応するか否かの決定は、慣用的なBethesdaアッセイ及び標準として特定の他の哺乳動物血漿を用いて行われる。
インヒビタータイターは通常、血漿中で測定されるので、精製された他の哺乳動物第VIII因子は必要ない。インヒビターがその配列が周知である他の哺乳動物第VIII因子、例えばネズミ第VIII因子と反応しないなら、対応する他の哺乳動物配列は、ヒト/ブタハイブリッドを用いることにより同定されるように、ブタエピトープ領域内に置換され得る。動物配列が周知であるなら、部位特異的変異誘発、例えばKunkel.T. A. 51204 Meth. Enzymal. 125-139 (1991))により記載されるオリゴヌクレオチド媒介変異誘発は、ハイブリッドブタ/動物第VIII因子分子を調製するのに用いることができる。
他の動物血漿がネズミ又はブタ第VIII因子より少いA2,C2、又は他の第VIII因子インヒビターとの反応性であるなら、ブタエピトープに対応する動物配列は、慣用的な手順、例えばP.T. PCRにより決定することができ、そしてハイブリッドヒト/動物又はブタ/動物第VIII因子は部位特異的変異誘発により作製される。また、ブタ第VIII因子と比較してヒト血漿しての交差反応性の小さいハイブリッドヒト/動物又はブタ/非ブタ哺乳動物第VIII因子は、1又は複数の他の動物からの対応するアミノ酸配列置換を有するものとして調製され得る。更なる実施形態において、交差反応は、ブタエピトープ配列の、第VIII因子アミノ酸配列と周知の同一性のないアミノ酸配列、好ましくはアラニンスキャニング変異誘発技術を用いてアラニン残基への置換により削減され得る。
臨床的に重要なエピトープの同定後、インヒビター血漿の広範囲の検査に対して試験管内でテストした時にブタ第VIII因子と比較して少い又は等しい交差反応性を有する組換えハイブリッド第VIII因子分子が発現されるであろう。好ましくは、これらの分子は、これらのドメイン内の免疫反応性アミノ酸配列が他の哺乳動物配列により置換されている組み合わせたAC2/C2ハイブリッドにあるであろう。これらの領域内の更なる変異誘発が交差反応性を減少させるために行われ得る。
交差反応性の削減は、要求されるが、汚染ブタタンパク質による副作用を作り出し、ブタ第VIII因子配列の免疫原性により都合の悪い効果を作り出し得る現在のブタ第VIII因子濃縮物より優れた利点を有し得る産物を作り出すために必要でない。ハイブリッドヒト/他の哺乳動物又はブタ/他の哺乳動物第VIII因子分子は、外来ブタタンパク質を含むであろう。更に、ブタA2ドメインにおいて行われるエスクテンシブエピトープマッピングは、治療用ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子配列の95%超がヒトであることを示す。
ハイブリッド第VIII因子等価物の調製
上述の及び実施例の第VIII因子分子におけるアミノ酸置換のための方法は、ヒト、動物、又はハイブリッド第VIII因子内の抗原性及び/又は免疫原性部位を含む少くとも1の特定のアミノ酸配列が置換された第VIII因子と周知のアミノ酸配列同一性のない1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1のアミノ酸配列(“非第VIII因子配列”)を含む凝血促進組換えハイブリッド第VIII因子等価物分子を調製するのにも用いることができる。生じた活性なハイブリッド第VIII因子分子は、置換していないヒト、動物、又はハイブリッド第VIII因子より、第VIII因子阻害抗体と等しい又は少い反応性及び/又はヒト及び動物において少い免疫原性を有する。
ハイブリッド等価第VIII因子分子を調製するためのヒト又は動物第VIII因子又はハイブリッドヒト/動物第VIII因子における凝固及び/又は抗原及び/又は免疫原活性に重大なアミノ酸のこれらの配列が置換され得る適切なアミノ酸残基は、凝固、抗原、又は免疫原活性を有する動物又はヒト第VIII因子アミノ酸配列と周知の同一性のないいずれかのアミノ酸を含む。好ましい実施形態において、置換され得るアミノ酸は、アラニンスキャニング変異誘発技術を用いるアラニン残基を含む。
本明細書に記載されるハイブリッド第VIII因子等価分子は、動物の第VIII因子配列に周知の同一性のないアミノ酸配列が凝固、抗原、又は免疫原活性に重大でないアミノ酸残基のかわりに置換されているこれらの分子も含む。
上述のように、ハイブリッド第VIII因子等価分子の一実施形態において、その分子はインヒビター血漿と減少した交差反応性を有する。交差反応性第VIII因子内の1又は複数のエピトープは上述のように同定され、そして次に非第VIII因子アミノ酸配列により、好ましくはアラニン残基により、例えばアラニンスキャニング変異誘発法を用いて置換される。
好ましい実施形態において、エピトープを含む1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1の配列が、及び/又は好ましくはヒト第VIII因子内に、免疫原性部位を含む1又は複数のアミノ酸を含む少くとも1の配列が置換された第VIII因子と周知の配列同一性のない1又は複数のアミノ酸、好ましくはアラニン残基を含む少くとも1の配列を含む凝血促進組換えハイブリッド第VIII因子等価分子が調製される。
生じたハイブリッド等価第VIII因子分子又はそのフラグメントは、第VIII因子に対する阻害抗体との免疫反応性の少いもしくは全くない及び/又はヒトもしくは動物において免疫原性の少いもしくは全くない。非抗原性ブタ特有アミノ酸配列による置換のためのヒト第VIII因子のA2ドメイン内の特定の抗原性アミノ酸配列を同定するための方法が実施例7及び8に記載され、ヒト及び動物第VIII因子のA2及び他のドメイン内の抗原性配列を同定するため並びに非第VIII因子アミノ酸配列に置換するためにアラニンスキャニング変異誘発のような部位特異的変異誘発法を用いるための典型例である。
ヒトA2エピトープは実施例8に記載されるように、25又は数アミノ酸にせばめられるので、アラニンスキャニング変異誘発は、A2アミノ酸置換に基づく凝固促進、非免疫反応及び/又は非免疫原性ハイブリッド第VIII因子構成物であることを決定するためにヒトアミノ酸配列を有するハイブリッド第VIII因子構成物の限られた数で行うことができる。A2ドメインにおいて、ハイブリッド構成物における抗原性の及び免疫原性の削減の両方を達成するためのアラニン置換のための最も可能性ある候補は、Arg 484, Pro 485, Tyr 487, Ser 488, Arg 489, Pro 492, Val 495, Phe 501、及びIle 508 である。mAb413のためのこれらの変異体の各々を含むハイブリッド構成物の結合アフィニティー及びA2特異的患者IgG のパネルはELISA により限定されよう。
活性であり、2超のオーダーの倍率だけ削減されたA2インヒビターについての結合アフィニティーを有するいずれの変異体もA2置換化第VIII因子分子のための候補である。1超の変異体が、より多くのエピトープが変えられるとその抗原性が小さくなるであろうとの仮定に基づいて選択されよう。ヒト及びブタ第VIII因子の両方に共通であるエピトープについて重要な残基があり得るので、Arg 484 −Ile 508 の間の領域内に他の候補の残基が存在することが可能である。例えば、荷電した残基はタンパク質間相互作用に頻繁に関連するので、Lys 493 のアラニン置換は可能性ある候補である。
この手順は、C2エピトープ、及びA3又はC1ドメイン内にあると考えられる予想される第3のエピトープ、並びに第VIII因子内で同定されるいずれかの他のエピトープにおいて、ハイブリッド等価第VIII因子構成物を調製するために行われるだろう。
診断アッセイ
全体又は部分における、ハイブリッドヒト/動物、動物/動物、又は等価第VIII因子cDNA及び/又はそれらから発現されるタンパク質は、例えば第VIII因子欠損のヒト患者の血清及び体液のサンプルを含む、基質中のヒトもしくは動物第VIII因子に、又はハイブリッドヒト/動物第VIII因子もしくは等価第VIII因子に対する阻害抗体の検出のための診断試薬としてアッセイにおいて用いることができる。これらの抗体は、ELISA アッセイ、イムノブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫拡散アッセイ及び第VIII因子生物学的活性のアッセイ(例えば凝固アッセイによるもの)のようなアッセイを含む。
これらの試薬を調製するための技術及びその使用のための方法は当業者に周知である。例えば、患者血清サンプルにおける阻害抗体の検出のためのイムノアッセイは、テストサンプルを、少くとも1の抗原部位を含むハイブリッドヒト/動物第VIII因子の十分な量と反応させることを含み得、ここでその量はサンプル中の阻害抗体との検出可能な複合体を形成するために十分である。
核酸及びアミノ酸プローブは、ハイブリッドヒト/ブタ、ヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物、動物/動物、又は等価第VIII因子cDNA又はタンパク質分子又はそのフラグメントの配列に基づいて調製することができる。特定の実施形態において、これらは、市販される染料又は酵素、蛍光、化学発光、もしくは放射能標識を用いて標識することができる。そのアミノ酸プローブは、例えば、ヒト、動物、又はハイブリッドヒト/動物第VIII因子の存在が予測される血清又は他の体液をスクリーニングするのに用いることができる。インヒビターのレベルは、患者において定量することができ、対照と比較することができ、そして、例えば第VIII因子欠損の患者がハイブリッドヒト/動物又はハイブリッド等価第VIII因子で治療することができるか否かを決定するために、用いることができる。cDNAプローブは、例えばDNA ライブラリーをスクリーニングすることにおいて調査目的のために、用いることができる。
医薬組成物
ハイブリッドヒト/動物、ブタ/非ヒト、非ブタ哺乳動物、動物−1/動物−2、又は等価第VIII因子を単独で又は適切な医薬安定化化合物、デリバリービヒクル、及び/又は担体ビヒクルと組み合わせて含む医薬組成物は、E. W. MartinによりRemington's Pharmaceutical Sciences に記載されるように、周知の方法に従って調製される。
1つの好ましい実施形態において、静脈内注入のための好ましい担体又はデリバリービヒクルは、生理食塩水又はリン酸緩衝塩類溶液である。
他の好ましい実施形態において、適切な安定化化合物、デリバリービヒクル、及び担体ビヒクルは、これらに限られないか、他のヒト又は動物タンパク質、例えばアルブミンを含む。
リン脂質ビヒクル又はリポソーム懸濁液も医薬として許容される担体又はデリバリービヒクルとして好ましい。これらは、当業者に周知の方法に従って、調製することができ、例えばホスファチジルセリン1−ホスファチジルコリン又は表面に負電荷を一緒に与えるリン脂質又は界面活性剤の他の組成物を含み得る。なぜなら第VIII因子は負電荷のリン脂質膜に結合するからである。
リポソームは、適切な脂質(例えばステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリン、及びコレステロール)を無機溶媒に溶かし、次にそれをエバポレートし、容器の表面上の乾燥した液体の薄いフイルムの後ろに残すことにより調製することができる。次に、ハイブリッド第VIII因子の水溶液を容器内に導入する。次にその容器を、容器の側面から液体材料をはなし、及び液体凝集物を分散させるために手でかきまわすことによりリポソーム懸濁液を形成する。
ハイブリッド因子又はハイブリッド等価第VIII因子は、ビタミンK依存性凝血因子、組織因子、及びvon Willebrand因子(vWf) 又は第VIII因子結合部位を含むvWf のフラグメント、及びポリサッカライド、例えばスクロースを含む、他の適切な安定化化合物、デリバリービヒクル、及び/又は担体ビヒクルと組み合わせることができる。
ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、デリバリー手段、例えばレトロウイルスベクターを用いて、ヒト第VIII因子がデリバリーされ得るのと同じ方法で遺伝子療法になってもデリバリーされ得る。この方法は、第VIII因子欠損患者内に直接移植され、又は第VIII因子分子に対して透過性であるが、細胞に対して不透過性である移植可能装置内に入れられ、次に移植されるヒト細胞内への第VIII因子cDNAの組込みからなる。好ましい方法は、レトロウイルス媒介遺伝子転移であろう。
この方法において、外来性遺伝子(例えば第VIII因子cDNA)は、改変されたレトロウイルスのゲノム内に挿入される。その遺伝子は、細胞により発現されるであろうウイルスの機構により宿主細胞のゲノム内に挿入される。レトロウイルスベクターは、それがウイルスを生産せず、宿主のウイルス感染を防ぐように改変される。この型の治療のための一般的な原理は当業者に周知であり、文献(例えばKohn, D. B.,及びP. W. Kantoff, 29 Transtusion812-820, 1989)において報告されている。
ハイブリッド第VIII因子は、そのハイブリッド分子の半減期及び貯蔵寿命を増加させるためにvWf と結合して保存することができる。更に、第VIII因子の凍結乾燥は、vWf の存在下で活性な分子の収率を改善し得る。商業的供給元により用いられるヒト及び動物第VIII因子の保存のための現在の方法は、ハイブリッド第VIII因子の保存のために用いることができる。これらの方法は、(1)(更なる精製なしに注入される第VIII因子“濃縮物”としての)部分的に精製された状態における第VIII因子の凍結乾燥;(2)Zimmerman 法による第VIII因子のイムノアフィニティー精製及び第VIII因子を安定化させるアルブミンの存在下での凍結乾燥;(3)アルブミンの存在下での組換え第VIII因子の凍結乾燥を含む。
更に、ハイブリッド第VIII因子は、pH6.0 の 0.6M NaCl, 20mM MES 、及び5mM CaCl2中で4℃で無期限に安定であり、また、活性の損失を最小にして、これらの緩衝液中で凍結して解凍することもできる。
治療の方法
ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、阻害抗体のある及びない血友病者において、及び阻害抗体の発達による後天性第VIII因子欠損の患者において、第VIII因子欠損による制御できない出血を治療するのに用いられる。その活性な材料は好ましい静脈内に投与される。
更に、ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、上述のように、ハイブリッドを作るために遺伝子操作された細胞の移植により、又はこれらの細胞を含む装置の移植により投与することができる。
好ましい実施形態において、単独の、又は安定化剤、デリバリービヒクル、及び/又は担体と組み合わせたハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子の医薬組成物は、ヒト又は動物第VIII因子の注入のために用いられるのと同じ手順に従って、静脈内に患者に注入される。
治療の必要な患者に投与されなければならないハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子組成物の治療投与量は、第VIII因子欠損の激しさにより種々であろう。一般に、投与量レベルは、激しさの保持、及び各々の患者の出血状況の持続時間において、頻度、持続時間、及びユニットにおいて調節される。従って、ハイブリッド第VIII因子は標準的凝血アッセイにより測定して、出血を停止させるために治療に有効な量のハイブリッドを患者にデリバリーするのに十分な量で、医薬として許容される担体、デリバリービヒクル、又は安定化剤内に含まれる。
第VIII因子は、伝統的に、血友病Aの個体由来の血漿中の凝血欠損を正す正常な血漿中に存在する物質として規定される。精製され及び部分的に精製された形態の第VIII因子の試験管内凝血活性は、ヒト患者における注入のための第VIII因子の投与量を計算するのに用いられ、患者血漿から回収された活性の及び生体内出血欠損の補正の信頼できるインジケーターである。Lusher, J. M.,ら、328 New. Engl. J. Med. 453-459 (1993) ; Pittman, D. D., ら、79 Blood 389-397 (1992) ; 及びBrinkhous ら、82 Proc. Natl. Acad. Sci. 8752-8755 (1985)に従うと、試験管内の新規第VIII因子分子の標準アッセイとイヌ注入モデル又はヒト患者におけるそれらのふるまいとの間の矛盾は報告されていない。
通常、ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子の投与を通して患者において達成されるべき要求される血漿第VIII因子レベルは、正常の30〜100 %の範囲である。ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子の投与の好ましい態様において、その組成物は、体重1kg当り好ましくは約5〜50units の範囲、より好ましくは10〜50units の範囲、そして最も好ましくは20〜40units の範囲の投量で静脈内に与えられる。その間隔は、好ましくは(激しい血友病者において)約8〜24時間の範囲であり;治療の日数は、1〜10日、又は出血状態がなおるまでである。
例えば、Roberts, H. R., 及びM. R. Jones,“Hemophilia and Related Conditions - Congenital Deficiencies of Prothrombin (Factor II, Factor V, and Factors VII to XII), ”Ch. 153, 1453-1474, 1460, in Hematology, Williams, W. J., ら、ed. (1990)を参照のこと。インヒビターを有する患者は、より多くのハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子を必要とし得、又は患者は、ヒト第VIII因子より高い比活性又は減少した抗体反応性もしくは免疫原性のため、より少いハイブリッドもしくはハイブリッド等価第VIII因子を必要とし得る。
ヒト又はブタ第VIII因子での治療において、注入されるハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子の量は、一段階第VIII因子凝固アッセイにより規定され、そして所定の例において、生体内回復は注入後に患者の血漿中の第VIII因子を測定することにより決定される。いずれの特定の患者についても、特定の投与管理は、必要とする個体及び組成物の投与を行い又は監督する人の専門的判断に従った時間にわたって調節されるべきであり、本明細書に記載される濃度範囲は一例であり、クレームされる組成物の範囲及び実施を限定するつもりはないことが理解されるはずである。
治療は、必要に応じて、組成物の単一の静脈内投与、又は更なる期間にわたる周期的もしくは連続的投与の形態をとり得る。あるいは、ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、種々の間隔で、1又は数回の投与量にリポソームで皮下に又は経口的に投与することができる。
ハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子は、ヒト第VIII因子に対する抗体を発達させた血友病者における第VIII因子欠損による制御できない出血を治療するのにも用いることができる。この場合、ヒト又は動物第VIII因子単独の活性より優れた凝固活性は必要ない、ヒト第VIII因子の活性に劣る凝固活性(即ち3,000units/mg未満)は、その活性が患者の血漿中の抗体により中和されないなら役立つであろう。
全般的に先に記載されるハイブリッド又はハイブリッド等価第VIII因子分子及びそれを単離、キャラクタリゼーション、作製及び使用するための方法は、以下の非限定的例を引用して更に理解されよう。
実施例1.ブタ第VIII因子及びハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子のアッセイ
分子の比活性に基づき、ブタ第VIII因子はヒト第VIII因子より高い凝固活性を有する。これらの結果は、実施例4の表3に示す。この結論は、ヒトブタ第VIII因子がかなり比較されるのを許容する適切な標準曲線の使用に基づく。凝固アッセイは、第VIII因子が血友病Aの患者由来の血漿の凝血時間を短くする能力に基づく。2つの型のアッセイ:1段階及び2段階アッセイを用いた。
一段階アッセイにおいて、0.1ml の血友病Aの血漿(George King Biomedical, Inc.) を、水浴中で37℃で5分、0.1ml の活性化部分的トロンボプラスチン試薬(APIT)(Organon Teknika) 並びに希釈したクエン酸を加えた正常なヒト血漿からなる0.01mlのサンプル又は標準とインキュベートした。インキュベーションの後、0.1mlの20mM CaCl2を加え、そしてフィブリン凝固の発達の間の時間を目での検査により決定した。
第VIII因子のユニットをクエン酸を加えた正常なヒト血漿1ml中に存在する量として定義する。標準としてヒト血漿を用いて、ブタ及びヒト第VIII因子活性を直接比較した。血漿標準又は精製したタンパク質の希釈物を0.15M NaCl, 0.02M HEPES, pH7.4 に作った。標準曲線を、血漿の3又は4の希釈に基づいて作製した。ここで最も高い希釈は1/50であり、log10 凝血時間をlog10 血漿濃度に対してプロットして、直線状のプロットを得た。未知のサンプル中の第VIII因子のユニットを、標準曲線からの外挿により決定した。
一段階アッセイは、血友病A血漿内に形成されたアクティベーターによる第VIII因子の内因性の活性化に依存し、他方二段階アッセイは、予め活性化された第VIII因子の凝血促進活性を基準にする。二段階アッセイにおいて、トロンビンと反応した第VIII因子を含むサンプルを、予め37℃で5分、インキュベートした活性化した部分的トロンボプラスチン及びヒト血友病A血漿の混合物に加えた。次に、生じた凝血時間を、上述の同じヒト標準曲線に基づいて、ユニット/mlに変換した。二段階アッセイにおける相対的活性は、第VIII因子が予め活性化されているので、一段階アッセイにおける活性より高かった。
実施例2.ヒト及びブタ第VIII因子間の機能的差のキャラクタリゼーション
ブタ及びヒト血漿由来第VIII因子並びにヒト組換え第VIII因子の単離は、Fulcher, C. A., 及びT. S. Zimmerman, 79 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1648-4652 (1982) ; Toole, J. J.,ら、312 Nature 342-347 (1984) (Genetics Institute) ; Gitschier, J., ら、312 Nature 326-330 (1984) (Genentech) ; Wood, W. I.,ら、312 Nature 330-337 (1984) (Genentech) ; Vehar, G. A., ら、312 Nature 337-342 (1984) (Genentech) ; Fass, D. N.,ら、59 Blood 594 (1982) ; Toole, J. J., ら、83 Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. 5939-5942 (1986)に記載されている。これは、いくつかの方法において達成され得る。これらの調製物は全て、ヒト及びブタ第VIII因子間の安定性の機能的な差があるが、サブユニット組成において類似している。
ヒト組換え及びブタ第VIII因子の比較のため、高純度のヒト組換え第VIII因子(Cutter Laboratories, Berkeley, CA)及びブタ第VIII因子(Fass, D. N. ら、59 Blood 594 (1982) に記載されるように免疫精製)の調製物を、MONOQTM(Pharnacia - LKB, Piscataway, NJ)アニオン交換カラム(Pharmacia, Inc.)での高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけた。MonoQTM HPLC ステップの目的は、比較目的のための共通の緩衝液へのヒト及びブタ第VIII因子の交換の少量の不純物の除去である。1000〜2000ユニットの第VIII因子を含む容器を5mlのH2O で再構成した。次にHepes (pH7.4で2M)を最終濃度0.02Mまで加えた。第VIII因子を、pH7.4 の0.15M NaCl, 0.02M Hepes, 5mM CaCl2 (緩衝液A+0.15M NaCl)で平衡化したMonoQTM HR 5/5カラムに適用し;10mlの緩衝液・A+0.15M NaCl で洗い;そして1ml/分の流速で緩衝液・A中0.15M〜0.90Mの20mlの直線勾配で溶出した。
(MonoQTM HPLC により精製した)ヒト血漿由来第VIII因子及びブタ第VIII因子の比較のため、イムノアフィニティー精製した血漿由来のブタ第VIII因子をpH7.4 の0.04M Hepes, 5mM CaCl2, 0.01% Tween−80で1:4に希釈し、そしてヒト第VIII因子についての先の段落に記載されるのと同じ条件下でMonoQTM HPLC にかけた。ヒト及びブタ第VIII因子の単離のためのこれらの手順は当業者にとって標準である。
カラム画分を、一段階凝固アッセイにより第VIII因子活性についてアッセイした。材料のA280 当りの活性のユニットにおける発現されたアッセイの平均の結果を表2に示し、これはブタ第VIII因子が一段階アッセイを用いた時、ヒト第VIII因子より少くとも6倍大きい活性を有することを示す。
実施例3.ヒト及びブタ第VIII因子の安定性の比較
第VIII因子についての一段階アッセイの結果は、サンプル中の第VIII因子の第VIIIa因子への活性化及びおそらく形成された第VIIIa因子活性の損失を反映する。ヒト及びブタ第VIII因子の安定性の直接の比較を行った。MonoQTM HPLC (Pharmacia, Inc., Piscataway, N. J.)からのサンプルを同じ濃度及び緩衝液組成に希釈し、トロンビンと反応させた。種々の時間において、二段階凝血アッセイのためにサンプルを除去した。典型的には、ピークの活性(2分)は、ヒト第VIIIa因子よりブタにおいて10倍大きく、そしてブタ及びヒト第VIIIa因子の活性は次に減少し、ここでヒト第VIIIa因子活性はより迅速に減少した。
一般に、安定なヒト第VIIIa因子を単離するための試みは、安定なブタ第VIIIa因子を作る条件を用いる場合でさえ成功しない。これを証明するために、MonoQTM HPLC 精製したヒト第VIII因子をトロンビンで活性化し、Lollar, J. S. 及びC. G. Parker, 28 Biochemistry 666 (1989)により記載されるように、安定なブタ第VIIIa因子を作り出す条件下でMonoSTMカチオン交換(Pharmacia, Inc.)にかけた。
全量10mlの、pH7.4 の 0.2M NaCl, 0.01M Hepes, 2.5mM CaCl2 中のヒト第VIII因子、43μg/ml(0.2μM)を10分、トロンビン(0.030μM)と反応させ、この時、 FPR−CH2Cl D−フェニル−プロリル−アルギニル−クロロメチルケトンをトロンビンの不可逆的不活性化のために 0.2μMの濃度まで加えた。次にその混合物を40mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES) 、5mMのCaCl2, pH6.0で1:1に希釈して、2ml/分で、pH6.0 の5mM MES, 5mM CaCl2 (緩衝液B)+ 0.1M NaCl で平衡化したMonoSTM HR 5/5 HPLC カラム(Pharmacia, Inc.)に充填した。第VIIIa因子をカラムを洗うことなく、1ml/分で、 0.1M NaCl 〜 0.9M NaCl の20ml勾配で溶出した。
二段階アッセイにおいて凝血活性を有する画分は、これらの条件下で単一ピークとして溶出された。ピーク画分の比活性は約 7,500U/A280 であった。MonoSTM第VIIIa因子ピークのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、次のそのタンパク質の銀染色は、第VIII因子のヘテロダイマー(A3-C1-C2/A1)誘導体に相当する2つのバンドを示した。その低い濃度のため、これらの条件下での銀染色によりA2フラグメントは同定されなかったが、それは 125I−標識化により微量成分として同定された。
ヒト第VIII因子での結果と対照的に、同じ条件下でMonoSTM HPLCにより単離されたブタ第VIIIa因子は 1.6×106 U/A280 の比活性を有した。 SDS−PAGEによるブタ第VIIIa因子の分析は、A1,A2、及びA3-C1-C2サブユニットに相当する3つのフラグメントを示し、このことはブタ第VIIIa因子が3つのサブユニットを有することを示す。
pH6.0 におけるヒトトロンビン活性化第VIII因子調製物のMonoSTM HPLC の結果は、ヒト第VIIIa因子が安定なブタ第VIIIa因子を作り出す条件下で不安定であることを示す。しかしながら、微量のA2フラグメントがピーク画分内で同定されたが、凝血活性が低比活性を有する少量のヘテロトリマー第VIIIa因子から又はヘテロダイマー第VIIIa因子から生じたか否かの決定はこの方法のみでは不可能であった。
それがそのA2サブユニットを失う前にヒト第VIIIa因子を単離する方法が、この問題を解決するのに必要とされる。これにより、単離を、MonoSTM緩衝液のpHのpH5への減少を含む手順において行った。MonoQTMで精製したヒト第VIII因子(0.5mg) をH2O で希釈して0.25M NaCl, 0.01M Hepes, 2.5mM CaCl2, 0.005% Tween-80, pH7.4(全量 7.0ml) 中0.25mg/ml(1μm)の第VIII因子の最終組成物を供した。トロンビンを 0.072μmの最終濃度まで加えて3分、反応させた。次にトロンビンを、 FPR−CH2Cl (0.2μm)で不活性化した。
次にその混合物を40mM酢酸ナトリウム、5mM CaCl2, 0.01% Tween-80, pH8.0で1:1に希釈し、2ml/分で、0.01μ酢酸ナトリウム、5mM CaCl2, 0.01% Tween-80, pH5.0+ 0.1M NaCl で平衡化したMonoSTM HR 5/5 HPLC カラムに充填した。第VIIIa因子をカラム洗浄なしに、1ml/分で、同緩衝液は 0.1M NaCl 〜 1.0M NaCl の20ml勾配で溶出した。これは、 SDS−PAGE及び銀染色により示される検出可能な量のA2フラグメントを含むピークにおいて凝血活性を回収した。
ピーク画分の比活性は、pH6.0 で回収したものより10倍大きかったC75,000U/A280 対 7,500U/A280 )。しかしながら、4℃で無限に安定であるpH6.0 で単離されたブタ第VIIIa因子と対照的に、ヒト第VIIIa因子活性は、MonoSTMからの溶出後、数時間にわたって着実に減少した。更に、pH5.0 で精製し、直ちにアッセイした第VIIIa因子の比活性はブタ第VIIIa因子のそれの5%だけであり、このことはアッセイの前におこる実質的な解離を示す。
これらの結果は、ヒト及びブタ第VIIIa因子の両方が3つのサブユニット(A1,A2、及びA3-C1-C2)から構成されることを示す。特定の条件下、例えば生理的イオン強度、pH及び濃度下で、A2サブユニットの解離はヒト及びブタ第VIIIa因子の両方の活性の損失の原因である。特定の条件下でのブタ第VIIIa因子の相対的安定性はA2サブユニットのより強力な解離のためである。
実施例4.サブユニットの再構成によるハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子の調製
ブタ第VIII因子軽鎖及び第VIII因子重鎖を以下の通り単離した。pH7.4 のEDTAの 0.5M溶液を、MonoQTM−精製ブタ第VIII因子に、最終濃度0.05Mまで加え、18〜24時間、室温で放置した。等量の10mMヒスチジン−Cl, 10mM EDAT, 0.2% v/v Tween 80, pH6.0(緩衝液B)を加え、その溶液を1ml/分で、緩衝液A+0.25M NaCl で先に平衡化したMonoSTM HR 5/5カラムに適用した。第VIII因子重鎖は SDS−PAGEで判断して、樹脂に結合しなかった。
第VIII因子軽鎖は、1ml/分で、緩衝液A中の直線状の20mlの 0.1〜 0.7M NaCl 勾配で溶出され、 SDS−PAGEにより均一であることが示された。第VIII因子重鎖を以下の方法において、monoQTM HPLC (Pharmacia, Inc., Piscataway, N. J.)により単離した。第VIII因子重鎖は第VIII因子軽鎖の精製の間、monoSTMに吸着しない。第VIII因子重鎖を含む素通りした材料を、 0.5M Hepes緩衝液pH7.4 を加えてpH7.2 に調節し、 0.1M NsCl, 0.02M Hepes, 0.01% Tween-80, pH7.4で平衡化したmonoQTM HR 5/5 HPLC カラム(Pharmacia, Inc.)に適用した。そのカラムをこの緩衝液で洗い、第VIII因子重鎖をこの緩衝液中20mlの 0.1〜 1.0M NaCl 勾配で溶出した。ヒト軽鎖及び重鎖を同様に単離した。
ヒト及びブタ軽鎖及び重鎖を、以下のステップに従って、再構成した。10μlのヒト又はブタ第VIII因子軽鎖、 100μg/mlを1M NaCl, 0.02M Hepes, 5mM CaCl2, 0.01% Tween-80, pH7.4中で、(1)同じ緩衝液中25mlの異種重鎖60μg/ml;(2)10mlの0.02M Hepes, 0.01% Tween-80, pH7.4 ;(3)5μlの 0.6M CaCl2と、室温で14時間、混合した。その混合物を0.02M MES, 0.01% Tween-80,5mM CaCl2, pH6で1/4に希釈し、 0.1M NaCl, 0.02M MES, 0.01% Tween-80,5mM CaCl2, pH6.0 で平衡化したMonoSTM HR 5/5に適用した。1ml/分で、同じ緩衝液中 0.1〜 1.0M NaCl で20ml勾配を行い、0.5ml 画分を収集した。
画分の 280nmにおいて吸光度を読み、画分を、一段階凝血アッセイにより第VIII因子活性についての吸光度でアッセイした。(重鎖と会合しない)遊離した軽鎖はMonoSTMに結合するので、重鎖が過剰に存在しており;過剰な重鎖は、遊離した軽鎖がその調製物の一部でないことを確実にする。再構成実験、次のMonoSTM HPLC 精製を、全部で4つの可能な鎖の組合せで行った:ヒト軽鎖/ヒト重鎖、ヒト軽鎖/ブタ重鎖、ブタ軽鎖/ヒト重鎖、ブタ軽鎖/ヒト重鎖である。表3は、ヒト軽鎖/ブタ重鎖第VIII因子は、ネイティブブタ第VIII因子に相当する活性を有することを示し、このことは、ブタ重鎖内の構造要素がヒト第VIII因子と比べて増加したブタ第VIII因子の凝血活性の原因であることを示す。
実施例5.ドメインの再構成による活性なハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子の調製
ブタA1/A3-C1-C2ダイマー、ブタA2ドメイン、ヒトA1/A3-C1-C2ダイマー、及びヒトA2ドメインを、各々ブタ又はヒト血液から、Lollar. P.ら(267 (33) J. Biol. Chem. 23652-23657 (1992年11月25日))に記載される方法に従って単離した。例えば、ブタA1/A3-C1-C2ダイマーを単離するために、pH6.0 のブタ第VIIIa因子(140μg)を、30分、5NのNaOHを加えることによりpH8.0 に上げ、A2ドメインの解離を行い、凝血アッセイにより95%不活性化させた。
その混合物を緩衝液B(20mM HEPES, 5mM CaCl2,0.01% Tween-80, pH7.4) で1:8に希釈し、緩衝液Bで平衡化したmonoSカラムに適用した。A1/A3-C1-C2ダイマーは、緩衝液B中 0.1〜 1.0M NaCl 勾配を用いることにより、約 0.4M NaCl における単一の鋭いピークとして溶出した。ブタA2ドメインを単離するために、0.64mgの第VIII因子で始めて、Lollar, P.及びC. G. Parker, 28 Biochem 666-674 (1989) の方法に従ってブタ第VIIIa因子を作った。遊離したブタA2ドメインを、MonoSTMクロマトグラムにおいて 0.3M NaCl で少量成分(50μg)として単離した。
ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子分子を、以下の通り、ダイマー及びドメインから再構成した。精製された成分についての濃度及び緩衝液条件は次の通り:ブタA2,0.63μM(緩衝液A(5mM MES;5mM CaCl2,0.01% Tween 80, pH6.0) + 0.3M NaCl);ブタA1/A3-C1-C2,0.27μM(緩衝液B+ 0.4M NaCl, pH7.4) ;ヒトA2,1μM(0.3M NaCl, 10mM ヒスチジン−HCl ,5mM CaCl2, 0.01% Tween 20, pH6.0) ;ヒトA1/A3-C1-C2,0.18μM(0.5M NaCl, 10mM ヒスチジン−Cl,2.5mM CaCl2, 0.01% Tween-20, pH6.0) であった。等量のA2ドメイン及びA1/A3-C1-C2ダイマーを混合することにより再構成実験を行った。ブタA1/A3-C1-C2ダイマーでの混合実験においてそのpHを、70mMまでの 0.5M MES, pH6.0 を加えて6.0 に下げた。
全部で4つの可能なハイブリッド第VIIIa因子分子−〔pA2/(hA1/A3-C1-C2)〕、〔hA2/(hA1/A3-C1-C2)〕、〔pA2/(pA1/pA3-C1-C2)〕、及び〔hA2/(hA1/A3-C1-C2)〕の凝血活性を、種々の時間において二段階凝血アッセイにより得た。
A2ドメイン及びA1/A3-C1-C2ダイマーの混合の後の活性の形成は、37℃で、1時間までほぼ完全であり、少くとも24時間、安定であった。表4は、1時間にアッセイした時の再構成されたハイブリッド第VIIIa因子分子の活性を示す。第VIIIa因子分子の比活性を得た2段階アッセイは、一段階アッセイと異なり、その値は一段階アッセイで得られた第VIII因子分子の活性値と比較することはできない。
表4は、最も大きな活性がブタA2ドメイン/ヒトA1/A3-C1-C2ダイマーにより示され、次にブタA2ドメイン/ブタA1/A3-C1-C2ダイマーであることを示す。
これにより、ブタ第VIIIa因子のA2ドメインをヒト第VIIIa因子のA1/A3-C1-C2ダイマーと混合した時、凝血活性が得られた。更に、ヒト第VIIIa因子のA2ドメインをブタ第VIIIa因子のA1/A3-C1-C2ダイマーと混合した時、凝血活性が得られた。それら自体、A2,A1、及びA3-C1-C2領域は凝血活性を有さない。
実施例6.ブタ第VIII因子のA2ドメインの単離及び配列決定
ブタ第VIII因子のBドメイン、及びA2ドメインの一部をコードするヌクレオチド配列のみが以前に配列決定されている(Toole, J. J.ら83, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 5939-5942 (1986))。全体のブタ第VIII因子A2ドメインについてのcDNA及び予測されるアミノ酸配列(各々配列番号:3及び4)は本明細書に開示される。
ブタ第VIII因子A2ドメインを、ブタ脾臓の全RNA の逆転写及びPCR 増幅によりクローン化し;ここで周知のヒト第VIII因子cDNA配列に基づく縮重プライマー及びブタ第VIII因子配列の一部に基づく正確なブタプライマーを用いた。1kb PCR産物を単離し、BluescriptTM(Stratagene) ファージミドベクター内への挿入により増幅した。
ブタA2ドメインを、ジデオキシ配列決定により完全に配列決定した。cDNA及び予想されるアミノ酸配列を各々配列番号:3及び4に示す。
組換えハイブリッドヒト/動物第VIII因子の調製
ヒト第VIII因子のヌクレオチド及び予想されるアミノ酸配列(各々配列番号:1及び2)は文献に記載される(Toole, J. J., ら、312 Nature 342-347 (1984) (Genetics Institute);Gitschier, J.,ら 312 Nature 326-330 (1984) (Genetech) ; Wood, W. I.,ら、312 330-337 (1984) (Genetech) ; Vehar, G. A., ら、312 Nature 337-342 (1984) (Genentech))。
ハイブリッドヒト/動物第VIII因子の作製は、ヒト第VIII因子cDNA(Biogen Corp.) の領域が除去され、配列同一性を有する動物cDNA配列が挿入されることを要求する。次に、ハイブリッドcDNAは適切な発現系内で発現される。例として、ブタA2ドメインのいくつか又は全部が対応するヒトA2配列のかわりに置換されたハイブリッド第VIII因子cDNAをクローン化した。最初に、ヒト第VIII因子のA2ドメイン及び次にそのA2ドメインのより小さな部分に相当する全体のcDNA配列を、当業者に一般に周知の方法であるオリゴヌクレオチド媒介変異誘発によりループアウトした(例えば、Sambrook, J., E. F. Fritsch 、及びT. Maniatis, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Chapter 15, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, 1989) 。そのステップは次の通りであった。
材 料
メトキシカルボニル−D−シクロヘキシルグリシル−グリシル−アルギニン−p−ニトロアニリド(SpectrozymeTMXa)及び抗VIII因子モノクローナル抗体 ESH4及び ESH8をAmerican Diagnostica (Greenwith, CT)から購入した。ユニラメラホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン(75/25,w/w)ベシクルを、Barenholtz Yら(16 Biochemistry 2806-2810 (1979)) の方法に従って調製した。組換えデスルファトヒルジンをDr. R. B. Wallis (Ciba-Geigy Pharmaceuticals (Cerritos, CA) から得た。ブタ第IXa,X,Xa因子、及びトロンビンを、Lollar, P.ら(63 Blood 1303-1306 (1984))及びDuffy, E. J., 及びP. Lollar (207 J. Biol. Chem.7621-7821 (1992))の方法に従って単離した。アルブシンのない純粋な組換えヒト第VIII因子をBaxter-Biotech (Deerfield, IC)から得た。
ブタ第VIII因子A2ドメインのクローニング
ブタA2ドメインをコードするcDNAを、Chomczyneki, P.,及びSacohi, N (162 Anal. Biochem. 156-159 (1987))により記載されるように単離した逆転写されたブタ脾臓mRNAのPCR の後に得た。cDNAを、プライマーとしてランダムヘキサマーと共に一本鎖cDNA合成キット(Pharmacia, Piscataway, N. J.) を用いて調製した。周知の限られたブタA2アミノ酸配列に基づく5’末端縮重プライマー 5' AARCAYCCNAARACNTGGG 3'(配列番号:11)及びブタA2ドメインの3’近くの周知のブタDNA 配列に基づく3’末端精密プライマー 5' GCTCGCACTAGGGGGTCTTGAATTC 3'(配列番号:12)を用いてPCRを行った。
これらのオリゴヌクレオチドはヒト配列(配列番号:1)におけるヌクレオチド1186−1203及び2289−2313に相当する。Taq DNA ポリメラーゼ(Promega Corp., Madison, WI) を用いて、35サイクル(94℃で1分、50℃で2分、72℃で2分)。増幅を行った。 1.1キロベースの増幅したフラグメントを、Murchuk, D. ら(19 Nucl. Acids Res. 1154 (1991))により記載されるように、T−ベクター手順を用いてEcoRV部位において pBluescriptIIKS−(Stratagene) にクローン化した。
大腸菌XL1−Blue−コンビテント細胞を形質転換し、そしてDNA を単離した。SequennaseTM version 2.0 (U. S. Biochemical Corp., a Division of Amersham Life Science, Inc., Arlington Hts. IL)を用いて両方向で配列決定を行った。この配列を、同じブタからの脾臓RNA の独立の逆転写からのPCR 産物の直接の配列決定により得た同一の配列により確認した(CircumventTM,New England Biolabs, Beverly, MA) 。自己抗体RLのためのエピトープを含む領域を、ヒト第VIII因子(配列番号:2)における 373−536 として同定した。
ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子cDNAの作製及び発現
アミノ酸残基 741−1648(配列番号:2)をコードする配列を欠くBドメインのないヒト第VIII因子(HB−,Biogen, Inc. Cambridge, MA) をハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子の作製のための出発材料として用いた。HB−を発現ベクターReNeo にクローン化した。操作を容易にするために、第VIII因子のためのcDNAをReNeo から XhoI/ HpaIフラグメントとして単離し、 XhoI/EcoRVで消化した pBluescriptIIKS−にクローン化した。
オリゴヌクレオチド 5' CCTTCCTTTATCCAAATACGTAGATCAAGAGGAAATTGAC 3' (配列番号:7)を、ヒトA2配列(配列番号:1のヌクレオチド1169−2304)をループアウトし、同時にSnaBI制限部位を導入するために、Kunkel, T. A.ら(204 Meth. Enzymol 125-139 (1991)) により記載されるように、ウラシル含有ファージDNA を用いて部位特異的変異誘発反応に用いた。プラスミドを含むA2ドメインのないヒト第VIII因子をSnaBIで消化し、次に ClaIリンカーを加えた。次にブタA2ドメインを、各々リン酸化5’プライマー 5' GTAGCGTTGCCAAGAAGCACCCTAAGACG 3'(配列番号:8)及びプライマー 5' GAAGAGTAGTACGAGTTATTTCTCTGGGTTCAATGAC 3'(配列番号:9)を用いてPCR により増幅した。
ClaIリンカーをPCR 産物に加え、次にヒト第VIII因子含有ベクターに連結した。A1/A2及びA2/A3接合点を、正確なトロンビン開裂及び隣接配列を、各々5’−及び3’−末端接合点を正すための配列番号:8に示されるオリゴヌクレオチド及びヌクレオチド1−22(配列番号:9の 5' GAA … TTC) を用いて部位特異的変異誘発により復元するよう補正した。HP1で示される生じた構成物において、ヒトA2ドメインはブタA2ドメインで正確に置換された。予備的産物は、ブタA2ドメインのPCR 増幅の結果としてA1−A2接合点において不要なチミンを含んでいた。この1つの塩基は、変異誘発性オリゴヌクレオチド 5' CCTTTATCCAAATACGTAGCGTTTGCCAAGAAG 3'(配列番号:10)の使用によりループアウトすることができる。
予想されるA2エピトープを含むブタNH2 末端A2ドメインの63%を含む領域を、ヒト第VIII因子を含む pBluescriptプラスミド及びヒト/ブタA2第VIII因子cDNAの間の SpeI/BamHIフラグメントを交換することにより、BドメインのないcDNAの相同なヒト配列のかわりに置換した。その配列を、A2ドメイン及びスプライス部位を配列決定することにより確認した。最後に、全体のA2配列を含む SpeI/ ApaIフラグメントをHB−内の対応する配列のかわりに置換し、HP2構成物を作り出した。
COS−7細胞におけるHB−及びHP2の予備的発現を、Seldon, R. F. (Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel, F. M.ら、eds)、pp 9.21-9.26, Wiley Interscience, N. Y.)により記載されるように、DEAE−デキストラン媒介DNA 移入の後にテストした。活性な第VIII因子発現を確認し、予備的抗体阻害研究を行った後、HB−及びHP2DNA をリポソーム媒介移入(Liptectin(商標)Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD) を用いてベイビーハムスター腎細胞に安定に移入した。
プラスミド含有クローンを、 400μg/mlのG418 を含むDulbecco's modified Eagle's 培地−F12,10%胎児ウシ血清(DMEM−F12/10%胎児ウシ血清)、次の 100μg/mlのG418 を含むDMEM−F12/10%胎児ウシ血清における維持について選択した。HB−及びHP2第VIII因子活性の最大発現を示すコロニーを、リングクローニングにより選択し、更なるキャラクタリゼーションのために拡大した。
HB−及びHP2第VIII因子発現を、標準として精製した組換えヒト第VIII因子を用いて、無血漿第VIII因子アッセイ、一段階凝血アッセイ、及び酵素連結イムノソルベントアッセイにより比較した。2600及び2580ユニット/mgの特異的凝血活性を、各々HB−及びHP2について得た。HB−及びHP2は、各々 1.2及び 1.4ユニット/ml/48時間/107 細胞を作り出した。これは、野生型構成物のもの(2,600±200ユニット/mg)と同一である。HB−及びHP2の比活性は無血漿第VIII因子アッセイにおいて区別できなかった。
ハイブリッドヒト非ヒト、非ブタ哺乳動物及びハイブリッド等価第VIII因子の作製及び発現
他の動物A1,A3,C1、及びC2ドメイン並びに部分ドメインのクローニングは、ブタA2ドメインをクローン化するために用いたのと同じストラテジーで行うことができる。これらのドメインのフラグメントは、変異誘発技術をループアウトすることによりクローン化することができる。一つのアミノ酸の除去を含む、ヒト第VIII因子及びそのいずれかのフラグメント中の対応するドメインの切り出しは、上述の変異誘発をループアウトすることにより行うことができる。全ての可能性あるドメイン置換、ドメイン置換フラグメント、又は単一アミノ酸残基置換が、部位特異的変異誘発技術、例えばオーバーラップエンステンション及びアラニンスキャニング変異誘発によるスプライシングと組み合わせたこのアプローチにより可能である。
A1,A2,A3,C1、及び/又はC2ドメイン置換を伴う組換えハイブリッドヒト/動物及び等価第VIII因子の生物活性は、COS細胞哺乳動物過渡的発現の使用により最初に評価することができる。ハイブリッドヒト/動物及び等価cDNAはCOS 細胞に移入することができ、上清を、上述の一段階及び二段階凝血アッセイの使用により第VIII因子活性について分析することができる。更に、第VIII因子活性は、よりセンシティブで多数のサンプルの分析を許容する色原基質アッセイの使用により測定することができる。
似たアッセイは第VIII因子活性のアッセイにおいて標準的である(Wood, W. I.,ら、312 Nature 330-337, 1984 ; Toole, J. J. ら312 Nature 342-347 (1984))。COS 細胞における組換え第VIII因子の発現も標準的手順である(Toole, J. J ら、312 Nature 342-347, 1984 ; Pittman, D. D.,及びR. J. Kaufman, 85 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2429-2433, 1988)。本明細書に記載される組換え分子のための出発材料として用いられるヒト第VIII因子cDNAは、生物活性を有する産物を作り出すCOS 細胞内で発現される。
上述されるこの材料は、ハイブリッドヒト/動物第VIII因子分子を比較するための標準として用いることができる。そのアッセイにおける活性は、ハイブリッド分子の正確な比較のための比活性に変換される。このため、細胞により生産される第VIII因子の量の測定が必要であり、標準としての精製されたヒト及び/又は動物第VIII因子でのイムノアッセイにより行うことができる。第VIII因子のためのイムノアッセイは、当業者にとって慣用的である(例えば、Lollar, P ら、71 Blood 137-143, 1988を参照のこと)。
実施例8.ハイブリッドヒト/動物及び等価第VIII因子における阻害活性の決定
エピトープとして(即ち第VIII因子と反応する阻害抗体のための認識部位として)関連する可能性のあるヒト及び動物第VIII因子の配列は、例えば以下に示すオーバーラップエクステンション法によるスプライシング(SOE) のような部位特異的変異誘発と組み合わせた第VIII因子に対する抗体でのアッセイの使用により、慣用的手順を用いて決定することができる。対応する抗原性ヒト配列と比べて抗原性のない動物第VIII因子の配列を同定することができ、そして標準的組換えDNA 法に従って動物配列を挿入しヒト配列を削除するために置換を行うことができる。
第VIII因子と周知の配列同一性のないアミノ酸、例えばアラニンの配列も、標準的組換えDNA 法又はアラニンスキャニング変異誘発により置換することができる。ブタ第VIII因子は特定の阻害抗体と、ヒト第VIII因子ほど反応しない。これは、インヒビターを有する患者のための現在の治療のための基礎を供する。組換えハイブリッドを作った後、それらを、Bethesdaインヒビターアッセイを含む慣用的アッセイで反応性について試験管内でテストすることができる。ネイティブヒト第VIII因子及びネイティブ動物第VIII因子より反応性の少いこれらの構成物は置換療法のための候補である。
ヒト第VIII因子と反応性のある全てでないならほとんどの阻害抗体が結合するエピトープは2332アミノ酸ヒト第VIII因子内の2つの領域、A2ドメイン(アミノ酸残基 373−740)及びC2ドメイン(アミノ酸残基2173−2332、両方とも配列番号:2に示す配列)内にあると考えられる。A2エピトープは、ヒトA2ドメインの部分が、その置換されたヒトアミノ酸配列と配列同一性を有するブタ配列により置換されている組換えハイブリッド−ブタ第VIII因子分子を作ることにより除去されている。これは、実施例7に記載されるように、標準的分子生物学技術によりブタA2ドメインをクローン化し、そして次に制限部位を用いてA2ドメイン内を切断及びスプライシングすることにより達成された。HP2で示される生じた構成物において、ブタ第VIII因子の残基 373−604 (配列番号:4)を、以下の方法を用いて抗ヒト第VIII因子抗体との免疫反応性についてアッセイした。
第VIII因子酵素関連イムノソルベントアッセイ
マイクロタイタープレートウェルを0.15mlの6μg/ml ESH4、ヒト第VIII因子軽鎖抗体でコートし、一晩、インキュベートした。プレートをH2O で3回、洗った後、そのウェルを1時間、0.15M NaCl, 10mM リン酸ナトリウム、0.05% Tween 20, 0.05%脱脂粉乳、0.05%ナトリウムアジド、pH7.4 でブロックした。センシティビティーを増加させるために、第VIII因子を含むサンプルを15分、30mMトロンビンで活性化した。次に組換えデスルファトヒルジンを、トロンビンを阻害するために 100nMまで加えた。そのプレートを再び洗い、サンプル 0.1ml又は標準として用いる純粋な組換えヒト第VIII因子(10〜600 mg/ml)を加えた。
2時間のインキュベーションの後、そのプレートを洗い、他の第VIII因子軽鎖抗体であるビオチニル化 ESH8の 0.1mlを各々のウェルに加えた。 ESH8をPierceスルホスクシニミジル−6−(ビオチンアミド)ヘキサノエートビオチニル化キットを用いてビオチニル化した。1時間のインキュベーションの後、そのプレートを洗い、 0.1mlのストレプトアビジンアルカリホスファターゼを各々のウェルに加えた。そのプレートをBio-Radアルカリホスファターゼ基質試薬キットを用いて展開し、その生じた各々のウェルについての 405nmの吸光度をVmax マイクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices, Inc., Sunnyville, CA)を用いることにより測定した。未知の第VIII因子濃度は、第VIII因子標準曲線の直線部分から決定した。
第VIII因子アッセイ
HB−及びHB2第VIII因子を、上述の通り行った一段階凝血アッセイ(Bowie, E. J. W.,及びC. A. Owen, Disorders of Hemostasis (Ratnoff and Forbes, eds) pp. 43-72, Grunn & Stratton, Inc., Orlando, FL (1984))において、又は以下の通りの無血漿アッセイにより測定した。HB−又はHP2第VIII因子を、10mMの第IXa因子、425mM の第X因子及び50μMのユニラメラホスファチジルセリン/ホスファチジルコリン(25/75,w/w)ベシクルの存在下で、0.15M NaCl, 20mM HEPES, 5mM CaCl2, 0.01% Tween 80, pH7.4中40mMのトロンビンにより活性化した。
5分後、その反応を0.05M EDTA及び 100nM組換えデスルファトヒルジンで停止し、その生じた第Xa因子を、Hill-Eubanks, D. C. 及びP. Lollar, 265 J. Biol. Chem 17854-17858 (1990) の方法に従って色原基質アッセイにより測定した。これらの条件下で、形成された第Xa因子の量は、標準として精製された組換えヒト第VIII因子(Baxter. Bsotech, Deerfield, IL) を用いることにより判断して出発第VIII因子濃度に比例した。
凝血アッセイの前に、HB−及びHP2第VIII因子をヘパリン− SepharoseTMクロマトグラフィーにより、48時間のならし培地から10〜15ユニット/mlに濃縮した。HB−又はHP2第VIII因子を血友病A血漿(George King Biomedical) に、1ユニット/mlの最終濃度で加えた。RL又はMR血漿又はmAb 413 IgG の保存液(4μM)中のインヒビタータイターを、Kasper, C. K. ら(34 Thromb. Diath. Haemopvh869-872 (1975))により記載されるようにBethesdaアッセイにより測定した。インヒビターIgG を、Leyte. A. ら(266 J. Biol. Chem 740-746 (1991))により記載されるように調製した。
HP2は抗A2抗体と反応しない。それゆえ、残基 373−603 は抗A2抗体のためのエピトープを含む。
ハイブリッドヒト−ブタ第VIII因子の調製及びオーバーラップエクステンションによるスプライシング(SOE) によるアッセイ
ヒトA2領域内にブタアミノ酸置換を伴ういくつかのより凝血促進性のある組換えハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子のBドメインのない分子を、更にA2エピトープをせばめるために調製した。制限部位技術の他に、Ho, S. N. ら(77 Gene 51〜59 (1989))により記載される“splicing by overlab extension ”法(SOE) を用いてブタ第VIII因子cDNAのいずれかの任意の領域を置換した。SOE において、スプライス部位は、PCR により要求されるcDNAを作り出すために増幅され得るオリゴヌクレオチドをオーバーラップされることにより規定される。
HP4〜HP13で示す10のcDNA構成物を作った。それらを、ReNeo 発現ベクター内に挿入し、ベイビーハムスター腎細胞内に安定に移入し、そして実施例7に記載されるように高レベル〔 0.5〜1μg(約3〜6ユニット)/107 細胞/24時間)まで発現させた。第VIII因子凝血活性を、A2ドメインに特異的なモデルネズミモノクローナル阻害抗体mAb 413 の存在及び欠如下で測定した。インヒビターの欠如下で、全ての構成物はB(−)ヒト第VIII因子から区別できない特異的凝血活性を有した。
ハイブリッドヒト/ブタ第VIII因子構成物を、Bethesdaアッセイ(Kasper, C. K. ら34 Thromb. Diath. Haenorrh. 869-872 (1975))を用いて抗A2インヒビターmAb 413 との反応性についてアッセイした。Bethesdaユニット(BU)は、インヒビタータイターを測定するための標準物な方法である。結果を表5に示し、組換えヒト第VIII因子と比較する。
ブタ置換の境界は、挿入のNH2 末端及びC末端においてヒト及びブタ第VIII因子間で異なる最初のアミノ酸により規定される。表5に示すように、Bethesdaタイターが測定できないなら(<0.7 BU/mg IgG) 、A2エピトープは置換化ブタ配列の領域内にある。エピトープは、HP9とのmAb 413 の非反応性により例示される25残基のみからなる残基 484−509 (配列番号:2)に次第にせばめられている。HP4〜HP11の構成物のうち、HP9は、インヒビターと反応しなかった最も“ヒトに適合した”構成物であった。これは、A2エピトープ内の重要な領域が配列 Arg 484−Ile 508 内に位置することを示す。
この重要な領域内のアミノ酸配列のヒト及びブタ第VIII因子間の比較に基づいて、対応するブタアミノ酸配列をヒトアミノ酸 489−508 及び 484−488 のかわりに各々置換した更に2つの構成物HP12及びHP13を作った。いずれもmAb 413 と反応しなかった。これは、 Arg 488−Ser 489 結合の各々の側上の残基がA2インヒビターとの反応のために重要であることを示す。HP12においては、5残基のみが非ヒトで、HP13においては4残基のみが非ヒトである。 484−508, 484−488 、及び 489−508 ブタ置換化ハイブリッドは、4人の患者血漿からのA2インヒビターによる阻害の減少を示し、このことは、インヒビター集団応答に従ってA2エピトープの構造にほとんどバリエーションがないことを示唆する。
インヒビター血漿から置換された2つの抗A2 IgG5調製物との、最もヒト適合した構成物、HP9,HP12、及びHP13の反応性を測定した。mAb 413 と異なり、これらの抗体はHP9,HP12、及びHP13と反応しなかったが、対照構成物HP(−)及びHP8と反応しなかった。
484−508 の間の領域は、同じ手順を用いて、重大なA2エピトープの最終的な同定のために更に分析することができる。
実施例7及び8に記載される方法は、ヒトA2もしくは他のドメイン内にアミノ酸置換を伴う他のハイブリッドヒト/非ブタ哺乳動物第VIII因子、いずれかのドメインにアミノ酸置換を有するハイブリッドヒト/動物又は動物/動物第VIII因子、又はハイブリッド第VIII因子等価物もしくはこれらのいずれかのフラグメントを調製するのに用いることができる。ここで、これらのハイブリッド第VIII因子は抗VIII因子抗体との免疫反応性が減少しており又は全くない。
実施例9.部位特異的変異誘発によるヒト第VIII因子A2インヒビター反応性の除去
実施例8は、残基484 及び508 によりヒト第VIII因子A2ドメインに結合したブタ配列の置換が、A2特異的第VIII因子インヒビターのパネルとの反応性が著しく減少した分子を作り出すことを示した(HealeyらJ. Biol. Chem. 270 : 14505-14509, 1995も参照のこと)。この領域において、ヒト及びブタ第VIII因子間に9アミノ酸の差がある。ヒトのBドメインのない第VIII因子、R484 ,P485 ,Y487,P488 ,R489 ,P492 ,V495 ;F501 、及びI508 (一文字アミノコード)におけるそれらの9つの残基を、部位特異的変異誘発により個々にアラニンに変えた。
更に、Mlu1及びSac2制限部位を、クローニングを容易にするために、これらの部位に対応するアミノ酸を変えずに、A2エピトープに対して5’及び3’の部位において第VIII因子cDNAのかわりにおいた。その9つの変異体をベイビーハムスター腎細胞に安定に移入し、高レベルで発現させた。9つ全てが生物学的に活性な第VIII因子を作り出した。それらを部分的に精製し、Healeyらにより記載されるように、ヘパリン−Sepharose クロマトグラフィーにより濃縮した。
その変異体を、実施例7のように、ネズミモノクローナルインヒビターmAb 413 との反応性によりキャラクタライズした。このインヒビターは、今日までに研究された全てのインヒビターと同じ又は極めて近いクラスターのA2ドメイン内のエピトープを認識する。インヒビター反応性を、Bethesdaアッセイを用いて測定した。要約すると、インヒビターのBethesdaタイターは、標準的一段階第VIII因子凝血アッセイにおいて50%だけ第VIII因子を阻害するインヒビターの希釈率である。例えば、抗体の溶液を1/420 に希釈し、それが50%だけ組換え第VIII因子テストサンプルを阻害するなら、Bethesdaタイターは 420Uである。MAb 413 のような純粋なモノクローナルの場合、抗体の量は知られているので、結果はMAb 413 のmg当りのBethesdaユニット(BU)において表される。50%阻害点を見つけるために、MAb 413 の所定範囲の希釈を行い、曲線適合手順により50%を見い出した。結果を以下に示す。
これらの結果は、位置484, 487, 489 、及び492 においてアラニン置換を行うことにより、10倍だけ、モデルA2インヒビターに対する第VIII因子の抗原性を減少させることが可能であることを示す。R489 →Aの反応性は、ほぼ4オーダーの倍率で削減される。これらのアラニン置換のいずれも、第VIII因子の抗原性及び免疫原性を減少させるために治療に役立ち得る。
その結果は、アラニンスキャニング変異誘発の効能を確認し、生物活性が、アミノ酸配列が阻害抗体に対して反応性のあるエピトープ内で変えられている場合でさえ保持される。ヒト及びブタ配列が異なる9つの部位のうちの5つはヒト及びネズミ配列が異なる部位でもある。これらの位置にアラニン置換を有する第VIII因子は、それゆえ、いずれかの現在知られている哺乳動物第VIII因子との周知の配列同一性もないハイブリッド第VIII因子等価分子の例である。
例えば2つのアラニン置換を組み合わせることによる更なる改変は、より広範囲の患者についてのかなり削減された抗原性も供する。なぜなら患者間で異なるポリクローナル変異抗体は、第VIII因子A2エピトープの変異体と反応することができるからである。更に、免疫原性(抗体を導く能力)は、1超のアミノ酸置換の組込みにより更に削減され得る。これらの置換は、アラニン、ブタ特異的アミノ酸、又は低免疫原能力を有することが知られた他のアミノ酸を含む。位置495 及び501 における置換は、免疫源性を減少させるのに役立つ可能性がある。更に、これらの置換は、特定の患者抗体に対する反応性を減少させる可能性がある。
他の有効な抗原性を削減するアミノ酸置換は、アラニンの他、抗原−抗体結合エネルギーへの主な寄与因子として先に注記されるもの、又はかさ高いもしくは荷電した側鎖を有するものを避けることに注意を払う限り行うことができる。そのエピトープ内での置換がその抗原反応性を減少させるアミノ酸は、本明細書において“免疫反応性減少性”アミノ酸と呼ぶ。アラニンの他、他の免疫反応性減少性アミノ酸は、これらに限られないが、メチオニン、ロイシン、セリン及びグリシンを含む。所定のアミノ酸により達成することができる免疫反応性の減少は、置換を有し得るいずれかの効果に基づいて、タンパク質コンホメーション、エピトープアクセサビリティー等に依存するであろう。
クレノウフラグメント、リン酸化 ClaIリンカー、 NotIリンカー、T4リガーゼ、及びTaq DNA ポリメラーゼはPromega (Madison, Wisconsin)から購入した。ポリヌクレオチドキナーゼはLife Technologies, Inc., Gaithersburg, Maryland から購入した。γ32P−ATP (Redivue, >5000Ci/mmol)は、Amershamから購入した。 pBluescriptIIKS−及び大腸菌Epicurean XL1−Blue細胞はStratagene (La Jolla, CaliPornia) から購入した。合成オリゴヌクレオチドはLite Technologies, Inc. 又はCruachem, Inc から購入した。PCR 産物をクローニング目的のために作った時に、5’リン酸化プライマーを用いた。ブタfVIIIcDNA又はゲノムDNA のポリメラーゼ鎖反応(PCR) 増幅のためのプライマーとして用いたオリゴヌクレオチドのヌクレオチド(nt)ナンバリングは、引用としてヒトfVIIIcDNAを用いる(Woodら(1989)前掲)。
ブタ脾臓の全RNA は、酸グアニジウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出(Chomczynski, P及びN. Sacchi (1987) Anal. Biochem. 162 : 156-159)により単離した。ブタcDNAは、他に示さなければ、モロニーネズミ白血病ウイルス逆転写酵素(RT)及び反応を好めるためのランダムヘキサマー(First-Strand cDNA Synthesis Kit, Pharmacia Biotech) を用いて全体の脾臓RNA から調製した。RT反応は、45mM Tris-Cl, pH8.3, 68mM KCl, 15mM DTT, 9mM MgCl2, 0.08mg/mlウシ血清アルブミン及び 1.8mMデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP) を含む。ブタゲノムDNA は、標準的手順(Straus. s, W. M. (1995) In Current Proticols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら、editors, John Wiley & Sons,pp. 2.2.1−2.2.3)を用いて脾臓から単離した。アガロースゲルからのDNA の単離は、Geneclean II(Bio 101)又は QuiexII Gel Extraction Kit (Qiagen)を用いて行った。
PCR 反応は、Hybaid OmniGene サーモサイクラーを用いた行った。Taq DNA ポリメラーゼを用いるPCR 反応のために、反応は0.6mMMgCl2, 0.2mM dNTP, 0.5μMオリゴヌクレオチドプライマー、50U/mlポリメラーゼ及び 0.1容量の一本鎖cDNA反応混合物を含んでいた。他に示す場合を除き、PCR 産物をゲル精製し、クレノウフラグメントで平滑断端にし、エタノールで沈殿させ、そして脱リン酸化 pBluescriptIIKS−に連結するか、又はT4リパーゼを用いてリン酸化 ClaIリンカーに連結し ClaIで消化しSephacryl S400クロマトグラフィーにより精製しそして ClaI切断した脱リン酸化 pBluescriptIIKS−に連結した。他に示す場合を除き、T4 DNAリガーゼを用いて連結を行った(Rapid DNA 連結キット、Boehringec Mannheim)。挿入物含有 pBluescriptIIKS−プラスミドを用いて大腸菌Epicurean XL1−Blue細胞を形質転換した。
プラスミドDNA の配列決定は、Applled Biosystems 373a自動化DNA シーケンサー及びPRISM 染色ターミネーターキットを用いて、又はSequenase V. 2.0配列決定キット(Amersham Corporation) を用いて手で行った。オリゴヌクレオチドの32P−端標識化を含む、PCR 産物の直接的配列決定は、サイクルシーケンシングプロトコル(dsDNA Cycle Sequencing System, Life Technologies) を用いて行った。
5' UTR配列、シグナルペプチド及びA1ドメインコドンの単離
A2ドメインの5’のブタfVIIIcDNAを、cDNA端(5'-RACE)プロトコルの5’迅速増幅(Maratho cDNA Amplitication, Clontech, Version PR55453)を用いて、雌ブタの脾臓の全RNA のネスティド(nested) RT−PCR により増幅した。これは、ロック−ドッキングオリゴ(dT)プライマー(Borson, N. D. ら(1992)PCR Methods Appl. 2 : 144-148)を用いる第1鎖cDNA合成、大腸菌DNA ポリメラーゼIを用いる第2鎖cDNA合成、並びに、その短い鎖が非特異的PCR プライミングを削減するためにアミノ基で3’端をブロックされ、その3’端において8ヌクレオチド相補的である配列番号:13:5'-CTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG CTC GAG CGG CCG CCC GGG CAG GT-33'-H2N-CCCGTCCA-PO4-5'の5’が伸長した二本鎖アダプターとの連結を含む。
最初のPCR は、センスプライマーとしてのアダプター特異的オリゴヌクレオチド:配列番号:14:5'-CCA TCC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGC-3' (AP1)、及びアンチセンスプライマーとしてのブタfVIII A2ドメイン特異的オリゴヌクレオチド:配列番号:15:5'-CCA TTG ACA TGA AGA CCG TTT CTC-3' (nt 2081-2104)を用いて行った。2回目のPCR は、センスプライマーとしてのネスティドアダプター特異的オリゴヌクレオチド配列番号:16:5'-ACT CAC TAT AGG GCT CGA GCG GC-3' (AP2)、及びアンチセンスプライマーとしてのネスティドブタA2ドメイン特異的オリゴヌクレオチド配列番号:17:5'-GGG TGC AAA GCG CTG ACA TCA GTG-3' (nt 1497-1520) を用いて行った。
抗体媒介ホットスタートプロトコル(Kellogg D. E. ら(1994)BioTechniques 16 : 1134-1137) を用いる市販のキット(Advantage cDNA PCRコアキット)を用いてPCR を行った。PCR 条件は、チューブ温度コントロールを用いる、60秒の94℃での変性、次の94℃で30秒の変性、60℃で30秒のアニーリング及び68℃で4分の伸長の30サイクル(最初のPCR)又は25サイクル(2回目のPCR)を含む。この手順は、5' UTRに約 150bp拡がるフラグメントの増幅と一致する顕著な 1.6kb産物を作り出した。そのPCR 産物を ClaIリンカーを用いて pBluescriptにクローン化した。4つのクローンの挿入物を、両方向で配列決定した。
これらのクローンの配列は、5' UTRの 137bpに相当する領域、A1ドメイン及びA2ドメインの一部を含んでいた。共通なのは4つの部位のうちの少くとも3つに達した。しかしながら、このクローンは、おそらくクローン可能な産物を作り出すのに必要とされるPCR の多重の回数のため、平均で4つの見掛けPCR 生成変異を含んだ。それゆえ、我々は、その配列を確認するための他のPCR 産物の合成のため、及び発現ベクター内へのクローン化のため、RENEOPIGSPで示す配列番号:18:5'-CCT CTC GAG CCA CCA TGT CGA GCC ACC CAG CTA GAG CTC TCC ACC TG-3'のセンス鎖リン酸化PCR プライマーをデザインするためにシグナルペプチド領域から得た配列を用いた。ボールドの配列は、開始コドンを示す。
これの5’の配列は、fVIIIの発現のために用いられる哺乳動物発現ベクターReNeo 内への挿入部位の5’のものと同一の配列を示す(Lwbin ら(1994)前掲)。この部位は、 XhoI開裂部位(下線)を含む。RENEOPIGSP及びnt 1497-1520オリゴヌクレオチドを、テンプレートとして雌ブタ脾臓cDNAを用いるTaq DNA ポリメラーゼ媒介PCR 反応を始めるために用いた。PCR 条件は、4分の94℃での変性、次の94℃で1分の変性、55℃で2分のアニーリング、及び72℃で2分の伸長の35サイクル、次の72℃で5分の最後の伸長ステップを含む。そのPCR 産物を ClaIリンカーを用いて pBluescript内にクローン化した。これらのクローンのうちの2つの挿入物を、両方の方向で配列決定し、共通配列と適合した。
A3,C1及びC2ドメインコドンの半分を含むブタfVIIIcDNAクローンの単離
最初に、B-A3ドメインフラグメント(nt 4519-5571) 及びC1-C2ドメインフラグメント(nt 6405-6990) に対応する2つのブタ脾臓RT−PCR 産物をクローン化した。得られたC2ドメインの3’端を、fVIII内の末端のエキソンであるエキソン26領域に広げた。B-A3産物をブタ特異的Bドメインプライマー、配列番号:19:5' CGC GCG GCC GCG CAT CTG GCA AAG CTG AGT T 3' を用いて作った。ここで下線の領域は、ヒトfVIII内のnt 4519-4530とアラインされたブタfVIII内の領域に相当する。オリゴヌクレオチドの5’領域は、もしくはクローニング目的のための NotI部位を含む。
B-A3産物を作るために用いたアンチセンスプライマー配列番号:20:5'-GAA ATA AGC CCA GGC TTT GCA GTC RAA-3' は、nt 5545-5571におけるヒトfVIIIcDNA配列の逆相補鎖に基づく。そのPCR 反応は、50mM KCl, 10mM Tris-Cl, pH9.0, 0.1% Triton X-100, 1.5mM MgCl2, 2.5mM dNTP, 20μMプライマー、25unit/mlのTaq DNA ポリメラーゼ及び1/20容量のRT反応混合物を含んだ。PCR 条件は、3分の94℃での変性、次の94℃で1分の変性、50℃で2分のアニーリング及び72℃で2分の伸長の30サイクルを含む。そのPCR 産物をT4 DNAキナーゼを用いてリン酸化し、 NotIリンカーを加えた。 NotIで切断した後、PCR フラグメントをBluescriptIIKS−の NotI部位にクローン化し、XL1−Blue細胞内に形質転換した。
C1-C2産物を、各々センス及びアンチセンスプライマー、配列番号:21:5'-AGG AAA TTC CAC TGG AAC CTT N-3' (nt 6405-6426) 及び配列番号:22:5'-CTG GGG GTG AAT TCG AAG GTA GCG N-3' (nt 6966-6990の逆相補鎖)を合成するために周知のヒトcDNA配列を用いて作った。PCR 条件にB-A2産物を作るのに用いたものと同じである。生じたフラグメントをPrime PCR Cloner Cloning System (5 Prime-3 Prime, Inc., Boulder, Colorado)を用いてpNOTクローニングベクターに連結し、JM109 細胞内で増殖させた。
B-A3及びC1-C2プラスミドを、各々ブタ特異的センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチド配列番号:23:5'-GAG TTC ATC GGG AAG ACC TGT TG-3'(nt 4551-4573) 及び配列番号:24:5'-ACA GCC CAT CAA CTC CAT GCG AAG-3' (nt 6541-6564) を作るために部分的に配列決定した。これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。Clontech Advantage cDNA PCR キットを用いて 2013bp RT−PCR 産物を作った。ヒトnt 4551-6564に相当するこの産物は、軽鎖活性化ペプチドに相当する領域(nt 5002-5124) 、A3ドメイン(nt 5125-6114) 及びC1ドメインのほとんど(nt 6115-6573) を含む。C1-C2クローンの配列は、nt 6565 からC1ドメインの3’端までのヒト及びブタcDNAが同一であることで確立されている。PCR 産物を、 pBluescriptIIKS−のEcoRV部位にクローン化した。4つのクローンを、両方の方向において完全に配列決定した。共通なのは4つの部位のうち3つに達した。
C2ドメインコドンの3’半分を含むブタfVIIIcDNAクローンの単離
ヒトfVIIIのC2ドメイン(ヌクレオチド6574−7053)はエキソン24−26内に含まれる(Gitschier, Jら(1984) Nature 312 : 326-330) 。ヒトエキソン26は、ヌクレオチド6901−8858に相当する1985bpを含む。それは、3’非翻訳配列の1478bpを含む。3' RACE (Siebertら(1995)前掲)、逆PCR (Ochman, Hら(1990) Biotechnology (N. Y.). 8 : 759-760) 、制限部位PCR (Sarkar, Gら(1993) PCR Meth. Appl. 2 : 318-322)、“unpredictably primed”PCR (Dominguez, O.及びC. Lopez-Larrea (1994) Nudeic. Acids Res. 22 : 3247-3248) による、及びブタ肝臓cDNAライブラリーによるC2ドメインの3’端及び3' VTRに相当するエキソン26cDNAをクローン化するための試みは失敗した。ブタfVIIIcDNAの5’端をクローン化するのに上手く用いられたのと同じアダプター連結二本鎖cDNAライブラリーを用いて3' RACE を試みた。これにより、この方法の失敗は、エキソン26に相当するcDNAの欠損のためではなかった。
標的遺伝子歩行PCR 手順(Parker, J. D. ら (1991) Nucleic Acids. Res. 19 : 3055-3060) を、C2ドメインの3’半分をクローン化するのに用いた。ブタ特異的センスプライマー、配列番号25 : 5'-TCAGGGCAATCAGGACTCC-3'(nt 6904-6924)を、最初のC2ドメイン配列に基づき合成し、研究室において利用できるオリゴヌクレオチドから選択された非特異的“歩行”プライマーとのPCR 反応に用いた。次にそのPCR 産物を32P−端標識化ブタ特異的内部プライマー配列番号26 : 5'-CCGTGGTGAACGCTCTGGACC-3' (nt 6932-6952)を用いて、プライマーエクステンション分析(Parker, J. D. 及びG. C.Burmer (1991) BioTechniques 10 : 94-101) により標的化した。
興味あることに、テストした40の非特異的プライマーのうち2つだけがプライマーエクステンション分析に基づき陽性産物を作り出し、これら2つはC2ドメインの3’端における正確な及び縮重したヒト配列に配列番号:27 : 5'-GTAGAGGTCCTGTGCCTCGCAGCC-3'(nt 7030-7503)及び配列番号 : 28 : 5'-GTAGAGSTSCTGKGCCTCRCAKCCYAG-3' (nt 7027-7053)に対応した。これらのプライマーは、最初、慣用的なPCR により産物を作るようにデザインしたが、エチジウムブロミド染料結合により視覚化することができる十分な産物を作り出すのに失敗した。しかしながら、PCR 産物は、よりセンシティブなプライマーエンステンション法により同定することができた。この産物をゲル精製し、直接配列決定した。これは、ブタfVIII3’の配列をnt 7026 に拡げた。
上述の5'-RACE プロトコルに用いたアダプター連結二本鎖cDNAライブラリーを用いて作り出されたネスティドPCR 産物のプライマーエンステンション分析により更なる配列を得た。第1回目の反応は、ブタの正確なプライマー配列番号:29:5'-CTTCGCATGGAGTTGATGGGCTGT-3' (nt 6541-6554) 及びAP1プライマーを用いた。2回目の反応は、配列番号:30:5'-AATCAGGACTCCTCCACCCCCG-3' (nt 6913-6934) 及びAP2プライマーを用いた。直接的PCR 配列決定を、C2ドメインの端の3’の配列に拡げた(nt 7053)。C2ドメイン配列は、C2ドメインの3’端近くnt 7045 を除きユニークであった。反復のPCR 反応の分析により、この部位において、A. Gのいずれか又はA/Gの二重の読みが得られた。
配列決定を、2つの更なるプライマー、配列番号:31 5'-GGA TCC ACC CCA CGA GCT GG-3' (nt 6977-6996)及び配列番号:32 5'-CGC CCT GAG GCT CGA GGT TCT AGG-3' (nt 7008-7031) を用いて 3'UTR に拡げた。約15bpの3' UTR配列を得た。但し、その配列はいくつかの部位において不明確であった。次に、いくつかのアンチセンスプライマーを、3’非翻訳配列の最も優れた評価に基づいて合成した。これらのプライマーは、それらの3’末端におけるTGA 停止コドンの逆相補鎖を含んだ。
PCR 産物をブタ脾臓ゲノムDNA 及びブタ脾臓cDNAの両方から得て、それを特異的センスプライマー配列番号:33:5'-AAT CAG GAC TCC TCC ACC CCC G-3' (nt 6913-6934)及び3' UTRアンチセンスプライマー、配列番号:34:5'-CCTTGCAGGAATTCGATTCA-3'を用いて、アガロースゲル電気泳動及びエチジウムブロミド染色により視覚化した。クローニング目的のための十分な量の材料を得るために、2回目のPCR を、配列番号:35:5'-CCGTGGTGAACGCTCTGGACC-3' (nt 6932-6952)及び同じアンチセンスプライマーを用いて作った。141bp PCR 産物を、ゲノムDNA 由来の3つのクローンの EcoRV−切断 pBluescriptIIKS−Sequenceにクローン化し、cDNA由来の3つのクローンを両方向において得た。その配列は、nt 7045 を除き明白であった。ここでゲノムDNA は常にAであり、cDNAは常にGであった。
ヒト、ブタ、及びマウスfVIIIの多重DNA 配列アラインメント(図1〜図8)
シグナルペプチドA1,A2,A3,C1、及びC2領域のアラインメントを、CLUSTALWプログラム(Thompson, J. D. ら (1994)Nucleic. Acids. Res. 22 : 4673-4680)を用いて行った。ギャップオープン及びギャップエクステンションペナルティーは各々16及び0.05であった。ヒト、マウス、及びブタBドメインのアラインメントは以前に記載されている(Elder ら (1993) 前掲)。ヒトA2配列は配列番号:2のアミノ酸 373−740 に対応する。ブタA2アミノ酸配列を配列番号:4に示し、そしてマウスA2ドメインアミノ酸配列を配列番号:6、アミノ酸 392−759 に示す。
結果及び議論
我々は、5' UTRの 137bpに相当するブタfVIIIのcDNA配列、シグナルペプチドコーディング領域(57bp)、並びにA1(1119bp),A3 (990bp),C1 (456bp)及びC2 (483bp)ドメインのcDNA配列を決定した。Bドメイン及び軽鎖活性化ペプチド領域(Toole ら (1986)前掲)及びA2ドメイン(Lwbin ら (1984)前掲)の以前に公開された配列と共に、本明細書に報告される配列は、翻訳された産物に対応するブタfVIIIcDNAの決定を完了する、5' UTR領域、シグナルペプチド、及びA1ドメインcDNAを含むフラグメントを5'-RACERT−PCR プロトコルを用いてクローン化した。
ヒトC2配列に基づくプライマーはA3,C1、及びC2ドメインの5’半分のクローニングを導くRT−PCR 産物を作り出すのに成功した。C2ドメインの3’半分に対応するcDNA及び3' UTR cDNA はクローン化するのが困難であることが判明した。C2ドメインの残りを、最後に、標的化遺伝子歩行PCR 手順(Parkerら (1991) 前掲)によりクローン化した。
本明細書に報告される配列に配列番号:36は、上述の通りA又はGのいずれかであるC2ドメインの3’端近くのnt 7945 以外は明確であった。対応するコドンはGAC (Asp) 又は AAC (Asn)である。ヒト及びマウスコドンは各々GAC 及びCAG (Gln) であった。これが多形性を示すか再生産性PCR 人工物であるか未知である。GAC 及びAAC コドンの両方に対応するブタC2ドメイン置換を含む組換えハイブリッドヒト/ブタのBドメインのないfVIIIcDNAは、凝血促進活性において検出できない差で安定に発現された。これは、これら2つのC2ドメイン変異体間の機能的な差はないことを示す。
公開されたヒト(Woodら (1984) 前掲)及びネズミ(Elder ら (1993) 前掲)配列との全長のブタfVIII配列番号:37の予想されるアミノ酸配列のアラインメントを、翻訳後改変、タンパク質分解開裂、及び他の高分子による認識のための部位と共に、図1−8に示す。アラインした配列の同一性の程度を表VII に示す。先に示す通り、これらの種、Bドメインは、A又はCドメインより分枝性がある。これは、その大きなサイズにかかわらず、Bドメインは周知の機能を有さないという観察結果と一致する(Elder ら(1993)前掲;Toole ら (1986) 前掲)。
A1ドメイン APC/第IXa因子開裂ペプチド(残基 337−372)及び軽鎖活性化ペプチド(表7)に相当する配列により多様性がある。 337−372 ペプチドを作り出すための位置336 におけるトロンビン開裂部位は、この残基がアルギニンのかわりにグルタミンであるので、マウスにおいて明らかに失われる(Elder ら (1993) 前掲)。トロンビン開裂ペプチド(又はマウスfVIIIにおいておそらく退化した 337−372 活性化ペプチド)の比較的迅速な分枝性はフィブリノペプチドについて以前に示されている(Creighton. T. E. (1993) In Proteins : Structures and Molecular Properties, W. H. Freeman, New York, pp. 105-138)。
いったん開裂されたこれらのペプチドの生物機能の欠如は、その迅速分枝性(divergence)についての可能性ある理由として言及されている。ヒトfVIIIにおけるArg 562 はfVIII及びfVIIIaの不活性化の間、活性化プロテインCのためのより重要な開裂部位であると提唱されている(Fay, P. J ら (1991) J. Biol. Chem. 266 : 20139-20145)。この部位はヒト、ブタ及びマウスfVIIIにおいて保存されている。
潜在的なN−連結グリコシル化部位も図1−8においてボールドで示す。8つの保存されたN−連結グリコシル化部位:A1ドメインにもつ、A2ドメインに1つ、Bドメインに4つ、A3ドメインに1つ、及びC1ドメインに1つがある。19のA及びCドメインシステインが保存されているが、Bドメインシステインの分枝性がある。
fVIII内の7つのジスルフィド連結のうち6つが第V因子及びセルロプラスミン内の相同部位において見い出されており、両方のCドメインジスルフィド結合が第V因子内に見い出される(McMullen, B. A. ら (1995) Protein Sci 4 : 740-746)。ヒトfVIIIは位置346, 718, 719, 723, 1664、及び1680において硫酸化チロシンを含む (Pittman, D. D.ら (1992) Biochemistry 31 : 3315-3325 ;Michnick, D. A. ら (1994) J. Biol. Chem. 269 : 20095-20102)。これらの残基はマウス、fVIII及びブタfVIIIにおいて保存されている(図1〜図8)。但し、CLUSTALWプログラムはヒトfVIIIにおいてTyr 346 に対応するマウスチロシンをアラインするのに失敗した。
マウス及びブタ血漿は、ヒト血友病A血漿における凝血欠損を癒すことができ、これは、これらの種のA及びCドメイン内の残基の保存のレベルと一致している。ブタfVIIIの凝血促進活性はヒトfVIIIのそれに優る(Lollar, P ら (1992) J. Biol. Chem. 267 : 23652-23657) 。これは、活性なA1/A2/A3-C1-C2 fVIIIaヘテロトリマーからのA2サブユニットの自発的な解離速度の減少のためであり得る。凝血促進活性におけるこの差が種適合の例として機能における進化的変化を反映するか否か(Perutz, M. F. (1996) Adv. Protein Chem. 36 : 213-244) は未知である。翻訳された産物に対応するブタfVIIIcDNA配列が完全なら、相同体スキャニング変異誘発 (Canningham, B. C. ら (1989) Science 243 : 1330-1336)は、ブタfVIIIの優れた活性の原因であるヒト及びブタfVIIIの間の構造的な差を同定するための方法を供し得る。
ブタfVIIIは、fVIIIが輸送された血友病者において生ずる、又は一般的集団において自己抗体として生ずる阻害抗体と、典型的に反応性が小さい。これは、阻害抗体を有する患者の管理においてブタfVIII濃縮物を用いるための基礎である (Hay 及び Lozier (1995)前掲)。ほとんどのインヒビターはA2ドメイン又はC2ドメイン内に位置したエピトープに対して生ずる(Fulcher, C. A.ら (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 : 7728-7732 ; Scandella, D. ら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 : 6152-6156 ; Scandella, D. ら (1989) Blood 74 : 1618-1626) 。
更に、A3又はC1ドメインのいずれの中にもある知られていない重要なエピトープが同定されている(Scandella ら(1989) 前掲;Scandella, D. ら(1993) Blood 82 : 1767-1775 ; Nakai Hら(1994) Blood 84 : 224a)。A2エピトープは、相同体スキャニング変異誘発(Healeyら(1995)前掲)により、残基 484−508 にマッピングされている。この25残基セグメントにおいて、比較的低い割合の同一な配列がある(16/25又は64%)。それに対する抗体が阻害性であるという事実に基づき機能的に重要であると思われるこの領域が、比較的より迅速な遺伝子ドリフトにかけられているようであることは興味深い。ブタA2ドメイン及びA3ドメインのアラインメントは、A2エピトープが、A3ドメイン内の対応する領域との検出可能な相同性を有さないことを示す。
C2インヒビターエピトープは、欠失マッピングにより残基2248−2312内に位置すると提唱されている(Scandella, Dら(1995) Blood 86 : 1811-1819) 。ヒト及びブタfVIIIはこの65残基セグメントにおいて83%の同一性である。しかしながら、C2エピトープをキャラクタライズするためのこの領域の相同体スキャニング変異誘発は、C2エピトープの主要な決定基が予期せぬことに、アミノ酸2181−2243の領域(配列番号:2)及び図8の領域に位置することを示した。
ヒト第VIII因子のC2ドメインの種々の部分を本明細書に記載されるストラテジーを用いて、ブタ第VIII因子の対応する部分で置換したヒト−ブタハイブリッド第VIII因子タンパク質を作った(実施例8)。種々のC2−ハイブリッド第VIII因子の合成は、配列番号:37に示されるブタC2領域をコードするヌクレオチド配列を用いて、ハイブリッドコーディングDNA を作製することにより行った。各々のハイブリッドDNA を、ハイブリッド第VIIIsが成長培地から部分精製され得るように、トランスフェクトされた細胞内で発現させた。いずれのインヒビターもない中での活性を、一段階凝血アッセイにより測定した。
各々のハイブリッド第VIII因子をテストするために、一群の5つのヒトインヒビターを用いた。抗第VIII因子抗体を含むインヒビター血漿は、以前に、阻害を中和するために組換えヒトC2ドメインの能力に基づいて、ヒトC2ドメインに対して生じることが示されている。全てのテスト血漿において、インヒビタータイターは、C2ドメイン又は軽鎖により79%超、中和されたが、組換えヒトA2ドメインにより10%未満しか中和されなかった。更に、C2−ハイブリッド第VIIIs因子を、C2ドメインに結合するネズミモノクローナル抗体に対してテストしたところ、ヒトC2インヒビター抗体のように、それはリン脂質へ及びvon Willebrand因子への第VIII因子の結合を阻害した。
抗体インヒビタータイターをC2−ハイブリッド第VIIIs因子に対して比較することにより、ヒトC2インヒビターエピトープの主要な決定を残基2181−2243(配列番号:2、図8)の領域に対して示した。領域COOH−末端から残基2253までに対する抗−C2抗体は、5人の患者血清のうち4人において同定されなかった。2181−2199及び2207−2243からのブタ配列を有するハイブリッドを比較することにおいて、両方の領域が抗体結合に寄与することが明らかであった。
図8を見ると、領域2181−2243において、ヒト及びブタ配列間に16アミノ酸の差があることを見ることができる。その差は、残基2181, 2182, 2188, 2195−2197, 2197, 2207, 2216, 2222, 2224−2227,2234, 2238及び2243において見い出される。ヒト抗C2インヒビター抗体に反応しない改変されたヒト第VIII因子を作るために、これらの番号の残基の1又は複数のアミノ酸置換を行った。アラニンスキャニング変異誘発は、上述のような、天然の残基のアラニン置換を作り出すための慣用的な方法を供する。アラニン以外のアミノ酸が、本明細書に記載されるように、十分に置換することができる。個々のアミノ酸、特にヒト/ブタ又はヒト/マウス間で同一でないか、又は抗体結合に最も寄与する可能性のあるもののアラニン置換は、阻害抗体への反応性の小さい改良された第VIII因子を作り出すことができる。
更に、残基2181−2243の規定された領域内に免疫原性の可能性の低いアミノ酸を挿入するストラテジーは、免疫原性の減少した改良された第VIIIs因子を作り出す。免疫原性の削減された第VIII因子は、天然の配列の第VIII因子に優る、血友病A患者の治療のための第VIII因子補給物として役立つ。免疫原性が削減された第VIII因子で治療された患者は、阻害抗体を発達させる可能性が少なく、それゆえ、彼らの一生にわたって有効な治療がない可能性を少なくする。
図1〜8:ヒト、ブタ、及びマウスfVIII因子の予測されるアミノ酸のアラインメント
添付の図1〜図8は、ヒト、ブタ及びマウス第VIII因子アミノ酸配列のアラインした配列比較を供する。図1は、シグナルペプチド領域を比較する(ヒト、配列番号:40;ブタ、配列番号:37、アミノ酸1−19;ネズミ、配列番号:6、アミノ酸1−19)。
図2は、ヒト(配列番号:2、アミノ酸1−372)、ブタ(配列番号:37、アミノ酸20−391)、及びネズミ(配列番号:6、アミノ酸20−391)のA1ドメインについてのアミノ酸配列を供する。
図3は、ヒト(配列番号:2、アミノ酸 373−740)、ブタ(配列番号:37、アミノ酸 392−759)及びマウス(配列番号:6、アミノ酸 392−759)からの第VIII因子A2ドメインについてのアミノ酸配列を供する。
図4は、ヒト第VIII因子(配列番号:2、アミノ酸 741−1648)、ブタ(配列番号:37、アミノ酸 760−1449) 及びマウス(配列番号:6、アミノ酸 760−1640) のBドメインのアミノ酸配列を供する。
図5は、ヒト、ブタ及びマウスの第VIII因子軽鎖活性化ペプチドのアミノ酸配列を比較する(各々配列番号:2、アミノ酸1649−1689;配列番号:37、アミノ酸1450−14909 ;及び配列番号:6、アミノ酸1641−1678) 。
図6は、ヒト、ブタ及びマウス第VIII因子A3ドメインについての配列比較を供する(各々配列番号:2、アミノ酸1690−2019;配列番号:37、アミノ酸1491−1820;及び配列番号:6、アミノ酸1679−2006)。
図7は、ヒト、ブタ及びマウスの第VIII因子C1ドメインのアミノ酸配列を供する(各々配列番号:2、アミノ酸2020−2172;配列番号:37、アミノ酸1821−1973;及び配列番号:6、アミノ酸2007−2159)。
図8は、ヒト、ブタ及びマウスの第VIII因子C2ドメインのC2ドメインについての配列データを供する(各々配列番号:2、アミノ酸2173−2332;配列番号:37、アミノ酸1974−2133;及び配列番号:6、アミノ酸2160−2319)。
ダイヤモンドは硫酸化部位を示し、潜在的なグリコシル化部位はボールドで示し、提唱される第IXa因子、リン脂質及びプロテインCについての結合部位は二本下線で示し、そして抗A2及び抗C2阻害抗体に関する領域をイタリックで示す。アスタリスクは、保存されたアミノ酸配列を示す。配列番号:36(ブタ第VIII因子cDNA)及び配列番号:37(ブタ第VIII因子の予測アミノ酸配列)も参照のこと。ヒトナンバリングシステムを引用して用いる(Woodら(1984)前掲)。A1,A2、及びBドメインは残基1−372, 373−740 、及び 741−1648として、位置372 及び740 におけるトロンビン開裂部位並びに1648における未知のプロテアーゼ開裂部位により規定される(Eaton, D. L ら(1986) Biochemistry, 25 : 8343-8347) 。
A3,C1、及びC2ドメインは、各々残基1690−2019,2020−2172、及び2173−2332として規定される(Vehar ら、(1984)前掲)。トロンビン(第IIa因子)、第IXa因子、第Xa因子及びAPC のための開裂部位(Fay ら(1991)前掲;Ewton, D. ら(1986) Biochemistry 25 : 505-512 ; Lampheul, B. J. 及びP. J. Fay (1992) Blood 80 : 3120-3128)は、その酵素名をその反応性アルギニンの上におくことにより示す。酸性ペプチドは、位置1689におけるトロンビン又は第Xa因子によるfVIII軽鎖から開裂される。
第IXa因子(Fay, P. J.ら(1994) J. Biol. Chem. 269 : 20522-20527 ; Lenting, P. J. ら(1994) J. Biol. Chem. 267 : 7150-7155) 、リン脂質(Foster, P. A. ら(1990) Blood 75 : 1999-2004) 及びプロテインC(Walkev, F. Jら(1990) J. Biol. Chem. 265 : 1484-1489) のための提唱される結合部位を二重下線で示す。抗A2との結合に関係する(Lwbin ら(1994) 前掲;Healy ら(1995) 前掲)及び抗C2阻害抗体について以前に提唱された領域をイタリックで示す。本明細書に記載されるように同定される抗C2エピトープを図8で一本下線で示す。チロシン硫酸化部位(Pittman ら(1992)前掲;Michnickら(1994)前掲)は◆で示す。潜在的なN−連結グリコシル化のための認識配列(NXSIT 、ここでXはプロリンでない)をボールドで示す。
Bドメインを欠く第VIII因子タンパク質をコードするヌクレオチド配列を配列番号:38に示し、そして対応する予測されるアミノ酸配列を配列番号:39に示す。