JP3683647B2 - 高温用摺動シート材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車の排気管路の連結構造のうち、外管と内管との間に介装される高温用摺動シート材に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のエンジンの排気管路は、排気ガスによって高温に加熱され、また、エンジンの振動が伝播する。このため、エンジン側の一の排気管の端部に、他の排気管の端部を直列に連結する連結部位には、両排気管の連結部に摺動部材を介装して振動を緩衝することが従来から行われている。
【0003】
特開昭63ー12814号公報に開示された発明は、一方の排気管(外管)内に内管を嵌め入れて連結するもので、他方の排気管(内管)の外周に排気ガスの温度で膨張するシール材を巻き付けた構造が開示されている。このシール材は、セラミックファイバを基材として、排気ガス温度で膨張する膨張黒鉛、ひる石又は膨張性雲母を10〜30重量%を含有し、これに適量の結合剤を添加したものをシート材としている。そしてこのシート材を内管の外周に巻着して外管に嵌め入れてセットしておけば、自動車の排気ガスによって加熱されるとシート材が膨張して外管と内管の間をシールするとともに、断熱及び遮音の効果が得られるとしている。
【0004】
また、特開平1ー307591号公報に開示された発明は、二本の排気管がリング形のパッキンを介して当接して連結される構造が示されている。このパッキンは、球凹面に成形された排気管(外管)の端部に受け入れるように、球面に成形されている。またパッキンの他面側は、他方の排気管(内管)の端部は、パッキンのリング状孔内に挿入した状態で、それぞれ設けたフランジ間をばね付きボルトとナットによって締め付けて連結するものである。そして、このパッキンはエキスパンドメタルとシート状膨張黒鉛を重ね合わせてロール状に巻き付けて、これを圧縮成形したものである。これにより製造が容易でかつ破損することの少ないパッキンとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭63ー12814号公報に開示された構造のシール材では、シール材の弾性によってエンジンの振動を吸収するとともに断熱するものであるが、内管と外管とが剥離したり、膨張した膨張黒鉛、ひる石又は膨張性雲母などが飛散するなどの耐久性に課題があった。
【0006】
特開平1ー307591号公報に開示されたパッキンでは、パッキンによって内管と外管をシールして連結するとともにエンジンの振動を吸収するものであるが、パッキンのみでは振動を十分に吸収することができないばかりか、振動によってパッキンの破損に対する信頼性が十分でないという課題があった。
【0007】
また、一般に摺接する部材間に介装する摺動シート材として膨張黒鉛を使用すると、衝撃強度、耐熱性や相手材とのなじみ性などにすぐれた特性を示すが、摩擦係数は普通の黒鉛と比較してやや高い性質を有している。このため、部材間の摺擦に伴って、スティクスリップと称する断続的スリップ現象を生じやすく、このスティクスリップに伴う鳴き(異常音)が発生するという課題があった。
【0008】
そこで、この発明では、エンジンの排気管路の外管と内管との間に介装する高温用摺動シート材として、膨張黒鉛の衝撃強度、耐熱性などの優れた特徴を生かしつつ、異常音を発生しない自動車排気管路の高温用摺動シート材を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の自動車排気管路の高温用摺動シート材では、外管の端部内に内管を挿入して直列に連結する自動車の排気管路の連結構造のうち、前記外管と内管との間に介装される高温用摺動シート材において、
エキスパンドメタル又は経糸と緯糸との交差点が結合された平織金網からなる金網に、CaF 2 、BaF 2 、NaF、LiF、MoO 3 から選択された1種又は2種以上の成分からなる固体潤滑剤を1〜30重量%、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂から選択された1種又は2種以上の成分からなるバインダを1〜15重量%含有する膨張黒鉛が被覆されている。
金網は膨張黒鉛の保持性や機械的強度を高める。特に金網として、エキスパンドメタルや経糸と緯糸との交差点が結合された平織金網を用いているので、シート材に加わるせん断力によって、交差点の経糸と緯糸にずれを生じないため、膨張黒鉛の保持性が高くなる。特にエキスパンドメタルは、千鳥状のスリットを入れて引き伸ばされているためにエッジが鋭く、膨張黒鉛の保持性が高い。
また、バインダは膨張黒鉛の保持性を向上させるため、1〜15重量%添加する。バインダとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂から選択された一種又は二種以上を用いる。
【0010】
膨張黒鉛は、耐熱性が高いとともに、そのクッション性から排気管路の外管および内管とのなじみ性、耐衝撃性に優れている。また、膨張黒鉛には固体潤滑剤が混合されているので、異常音を生じるおそれがない。膨張黒鉛に混合される固体潤滑剤は、CaF2、BaF2、NaF、LiF、MoO3などが使用できる。混合する固体潤滑剤は、1重量%未満では十分に異常音の発生を防止できない。一方30重量%を越えると、成形性が低下するため、1〜30重量%とする。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明では、金網に、固体潤滑剤を1〜30重量%含有した膨張黒鉛が被覆されていることにより、摺動特性に優れて鳴きの発生しない高温用摺動シート材とすることができる。
【0013】
特に、金網をエキスパンドメタルまたは経糸と緯糸との交差点が結合された平織金網により構成しているために、保持性の高い高温用摺動シート材とすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を詳細に説明する。
図1に示すシート材aは、厚さ0.4mmステンレス鋼板からなるエキスパンドメタルbにシート状の膨張黒鉛cを重ね合わせ、これをロール圧着して厚さ0.5mmとしたものである。エキスパンドメタルbは、編み断面が方形の薄板が組み合わされているため、膨張黒鉛cの保持力を大きくすることができる。
【0016】
この実施例においては、膨張黒鉛cのバインダとしてフェノール樹脂を10重量%、固体潤滑剤としてBN、CaF2を7重量%それぞれ含有する膨張黒鉛シートを圧延機でエキスパンドメタルbに圧着して一体化し、厚さ0.5mmのシート材aを得ている。また、比較例は、固体潤滑剤を含有しない膨張黒鉛シートを実施例と同様のエキスパンドメタルにロール圧着して得た。
【0017】
これらの実施例と比較例のシート材aを以下に説明する図3に示す連結部に取付けるようにそれぞれ湾曲して成形し、図2に示す摺接管4を得た。
【0018】
図3は、摺接管4を介装した自動車の排気管路の連結部を示し、エンジン側の排気管(外管)1の端部には、フランジ11が設けられていて、このフランジ11からさらに半球状に膨らむ外球面部12が形成されている。他方の排気側の排気管(内管)2の端部には、フランジ21が設けられるとともに、このフランジ21からさらに外球面部12の内面に接するように半球状の内球面部22が形成されている。なお、内球面部22は図示しないが複数のスリットにより分割されて、バネ性が付与されている。そして、外球面部12内に摺接管4を挟んで内球面部22を挿入し、各フランジ11,21の間をボルト31とナット32により直列に連結している。なお、フランジ11側には、このフランジ11とボルト31の頭31aとの間に圧縮バネ33が介装されていて、外管1と内管2との間を弾力的に押圧連結している。
【0019】
このように構成された排気管路に前述した実施例又は比較例の摺接管4をそれぞれ取り付けて試験を行った。
図示しないエンジンが駆動されると、エンジン側の外管1内を進出してくる高温の排気ガスは、内管2を経由して外部に排気される。この高温の排気ガスによって外管1及び内管2は高温に加熱される。この際、エンジンの駆動に伴う外管1の振動は、圧縮バネ33の弾性と内球面部22のバネ性によって、内管2の振動を大きく緩和するが、内球面部22と外球面部12との間で、摺接管4を介して微少な繰り返し摺動している。
【0020】
そして、実施例及び比較例のいずれの摺接管4を使用した場合にも、外管1の振動は内管2の振動が大幅に緩和されていて、膨張黒鉛が剥離するなどの外形状の変化は見られなかった。
しかし、比較例の摺接管4を使用した場合では、膨張黒鉛特有のスティクスリップによる鳴きを生じたが、実施例の摺接管4を使用した場合には、静かであって、鳴きを生じなかった。
【0021】
本実施例では、自動車の排気管路の連結部に使用するために、管状に成形した摺接管4とした例を示したが、必ずしもこの実施例に限定されることなく、摺擦する部材間に介装する例えば、シール材やガスケット等に成形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シート材の断面斜視図
【図2】摺動管の斜視図
【図3】排気管路の一部切欠断面図
【符号の説明】
1…外管
2…内管
4…摺接管
12…外球面部
22…内球面部
31…ボルト
33…圧縮バネ
Claims (1)
- 外管の端部内に内管を挿入して直列に連結する自動車の排気管路の連結構造のうち、前記外管と内管との間に介装される高温用摺動シート材において、
エキスパンドメタル又は経糸と緯糸との交差点が結合された平織金網からなる金網に、CaF 2 、BaF 2 、NaF、LiF、MoO 3 から選択された1種又は2種以上の成分からなる固体潤滑剤を1〜30重量%、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂から選択された1種又は2種以上の成分からなるバインダを1〜15重量%含有する膨張黒鉛が被覆されていることを特徴とする自動車排気管路の高温用摺動シート材。
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JP15885596A JP3683647B2 (ja) | 1996-05-29 | 1996-05-29 | 高温用摺動シート材 |
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JP15885596A JP3683647B2 (ja) | 1996-05-29 | 1996-05-29 | 高温用摺動シート材 |
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