JP3683362B2 - クラッタ抑圧レーダ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機、気象エコー等の移動目標を検出するレーダ受信装置において、特に、飛行体信号波形と、飛行体信号周波数に較べて充分低周波数のクラッタ波形と、一般の雑音信号波形と、から構成された入力信号から最小自乗近似により低周波成分を含むクラッタ波形を除去するための技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来の、最小自乗近似によるクラッタ除去技術を用いたクラッタ抑圧レーダ装置としては、本願出願人が出願中(特願平8−182781号)のクラッタ抑圧レーダ装置がある。
これは、レーダ受信回路出力のIチャネルとQチャネルのそれぞれについて各送信方位毎(即ち各スイープ毎)の出力を距離方向に細区分(例えばディジタル化のサンプリング間隔)化したレンジビン毎にメモリに格納し、その格納されたデータの中から同一距離で方位方向に連なるN個のデータ列を取り出し、横軸をデータの現れる時間軸とし、縦軸をデータ値とする直交座標上のプロットを想定し、このプロットに対する最小自乗近似関数を、受信回路出力に含まれる不要な低周波成分によるトレンド波形の近似関数として求め、この関数に各プロットの時間値を入れて計算し、この計算値を各対応するプロットのデータ値から減ずることによりトレンド波形を除去するということをIチャネルとQチャネルの両方について固定クラッタは勿論のことゆらぎのあるクラッタをも除去するというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように、クラッタスペクトルにおける不要な低周波成分のひろがりに関係なくN個という固定数のデータ列に対して1つの最小自乗近似関数を求めるだけでは、不要な低周波成分のひろがりが大きくなってきた場合には正確な近似ができなくなるという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、クラッタスペクトルにけおる周波数ゼロ(即ち完全固定クラッタスペクトル)近傍の不要な低周波成分のひろがり
(スペクトル幅)を測定する手段と受信信号レベルがノイズレベルからどの程度クリアされているかを示す概略の信号対雑音比(S/N)を測定する手段を設け、これらによって得られたスペクトル幅とS/Nの値をパラメータとして、最小自乗近似関数を求める小区間(連続するデータ数がNより小さいM)とこの小区間をN個のデータ列中を移動させるステップkを求め、これに基づいて、最小自乗近似関数を、まずデータ列順番の1からMのデータについて求め、次は小区間をkだけ移動させた1+kからM+kまでについて求め、以下同様に小区間を移動させつつ小区間毎の最小自乗近似関数をきめ細かく求めることにより、低周波成分のスペクトル幅が広くなっても従来より正確なトレンド波形を近似し、ゆらぎのある(即ち低周波成分を含む)クラッタも充分抑圧できるクラッタ抑圧レーダ装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のクラッタ抑圧レーダ装置の第1の構成は次の各手段を具備する。
(イ)受信信号と混合する局部発振信号の位相がπ/2ラジアンだけ異なる2系統(IチャネルとQチャネル)の受信出力を有するレーダ受信回路
(ロ)Iチャネルからの受信出力を距離方向に細区分化したレンジビン毎に個別にNスイープ分記憶し新たなスイープの受信出力を記憶するときは最も過去のスイープの受信信号から順次消去されていくIチャネルメモリおよびQチャネルからの受信出力をIチャネルについてと同じく距離方向に細区分化したレンジビン毎に個別にNスイープ分記憶し新たなスイープの受信出力を記憶するときは最も過去のスイープの受信信号から順次消去されていくQチャネルメモリ
(ハ)Iチャネルメモリから1スイープ中の距離方向に連なるN個の受信信号データ列Yj (j=1、2、3、……、N 以後同じ)を取り出して保持するIチャネル入力バッファ回路およびQチャネルメモリから同一スイープ中の同じ距離範囲の連なるN個の受信信号データ列Hj (j=1、2、3、……、N 以後同じ)を取り出して保持するQチャネル入力バッファ回路
(ニ)受信信号データ列Yj および同Hj から周波数スペクトル波形を計算し周波数がゼロの近傍に分布するスペクトルの幅を算出するスペクトル幅算出手段
(ホ)受信信号データ列Yj および同Hj からノイズフロアーと信号レベルのの比S/Nを算出するS/N算出手段
(ヘ)前記スペクトル幅とS/N値を入力として、それらに対して適合する最小自乗計算点数M(小区間幅)と、小区間のシフトポイント数kを出力する小区間決定手段
(ト)Iチャネル受信信号データ列Yj の列位置j=mから前記最小自乗計算点数M個の小区間データ列yi (i=0、1、2、……、M−1)=Ym、Ym+1、Ym+2、……、Ym+M-1 を格納するIチャネル小区間レジスタ
およびQチャネル受信信号データ列Hj の列位置j=mから前記最小自乗計算点数M個の小区間データ列hi (i=0、1、2、……、M−1)=Hm、Hm+1、Hm+2、……、Hm+M-1 を格納するQチャネル小区間レジスタ
および各データ列における隣り合うデータの受信時間間隔をtとしたときの時間位置データ列ti (i=0、1、2、……、M−1)=mt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tを格納する小区間位置レジスタ
但し、mはm=1+nkで、nは0、1、2、……、(N−M)/kの小数点以下切上げ値まで順次シフトする。
(チ)(ti,yi)を直交座標にプロットしてできるM個の点を最小自乗近似する1次関数y=a0 +a1 xを各mの値に対応して順次導き出すIチャネル最小自乗近似手段
および、(ti,hi)を直交座標にプロットしてできるM個の点を最小自乗近似する1次関数h=b0 +b1 xを導き出すQチャネル最小自乗近似手段
(リ)1番からN番までの記憶素子を有するIチャネルレジスタと同じく1番からN番までの記憶素子を有するQチャネルレジスタ
(ヌ)xが、mt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tの各値のときの1次関数y=a0 +a1 xの値を算出し、その算出値をIチャネルレジスタの、m、m+1、m+2、……、m+M−1の各番目の記憶素子へそれぞれ格納することを、変化していくmの値毎に行うIチャネル演算手段
および、xがmt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tの各値のときの1次関数h=b0 +b1 xの値を算出し、その算出値をQチャネルレジスタの、m、m+1、m+2、……、m+M−1の各番目の記憶素子へそれぞれ格納することを、変化していくmの値毎に行うQチャネル演算手段
(ル)前記Iチャネルレジスタに格納されたデータ列をTj (j=1、2、3、……、N)とし、Qチャネルレジスタに格納されたデータ列をLj (j=1、2、3、……、N)としたとき、受信信号データ列Yj からデータ列Tj を減算しデータ列Cj として出力するIチャネル減算器
および、受信信号データ列Hj からデータ列Lj を減算しデータ列Dj として出力するQチャネル減算器
(オ)前記データ列Cj を格納するIチャネル出力バッファ回路および前記データ列Dj を格納するQチャネル出力バッファ回路
(ワ)Iチャネル出力バッファ回路からのデータとQチャネル出力バッファ回路からのデータの2乗和又は2乗和の平方根を算出しこれをクラッタの除去された受信目標信号として出力する複素演算器
【0006】
第2の構成は、第1の構成のクラッタ抑圧レーダ装置において、1次関数
y=a0 +a1 xおよびh=b0 +b1 xに代えて2次関数y=a0 +a1 x+a2 x2 およびh=b0 +b1 x+b2 x2 としたクラッタ抑圧レーダ装置である。
【0007】
第3の構成は、第1の構成のクラッタ抑圧レーダ装置において、要件(ハ)中の「1スイープ中の距離方向に連なるN個」に代えて「距離が同じで方位方向に連なるN個」としたクラッタ抑圧レーダ装置である。
【0008】
第4の構成は、第3の構成のクラッタ抑圧レーダ装置において、1次関数
y=a0 +a1 xおよびh=b0 +b1 xに代えて2次関数y=a0 +a1 x+a2 x2 およびh=b0 +b1 x+b2 x2 としたクラッタ抑圧レーダ装置である。
【0009】
第5の構成は、第3の構成又は第4の構成のクラッタ抑圧レーダ装置に、データ列Cj とデータ列Dj を用いて受信目標のドップラー周波数を算出するドップラー周波数算出手段を付加したクラッタ抑圧レーダ装置である。
【0010】
第6の構成は、第1の構成ないし第5の構成のいずれかの構成のクラッタ抑圧レーダ装置において、小区間決定手段の出力する小区間シフトポイント数kがパラメータとして可変であることを特徴とするクラッタ抑圧レーダ装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、IチャネルおよびQチャネルの受信信号を各スイープ毎に距離方向に細区分する技術はディジタル的に行われる。即ち、アナログの受信信号を、細区分の時間長の逆数の周波数でサンプリングし、サンプリングされたアナログ値をA/D変換器で所定のビット数(例えば8〜10ビット)のディジタル信号に変換し、1サンプル毎に各チャネルのメモリへ格納して行く。
以後の処理はすべてディジタル的に行われる。
【0012】
受信信号データ列Yj およびHj から周波数スペクトルを求め周波数ゼロ近傍のスペクトル幅およびS/Nを求める技術自体は従来行われている技術により行われる。本発明の特徴は受信信号データ列Yj およびHj に対する最小自乗近似関数を求めるに当たり、これらのデータ列の中の小区間を設定しこれを移動させつつ小区間毎に最小自乗近似関数を求めるという点にあるが、この小区間の幅
(最小自乗計算データ点数M)と小区間の移動ポイント数kを前述のスペクトル幅およびS/Nに対して適合するように定めている。即ち、小区間決定手段は前記スペクトル幅およびS/N値を入力としこれに適合する最小自乗計算点数M
(小区間幅)とシフトポイント数kを出力する。
【0013】
スペクトル幅およびS/N値に適合する(即ち不要低周波成分をよく除去できる)Mおよびkは経験的或いは実験的に求めることができる。
従って、小区間決定手段は、スペクトル幅およびS/N値と適合するMおよびkの経験値のテーブルとして実現できるし、また、両者の間から実験式を見付け出してその実験式を用いて入力されたスペクトル幅およびS/N値に適合するMおよびkを算出出力する演算手段としてでも実現できる。
【0014】
従来のように、1〜Nの大区間のデータのトレンド波形(0付近の不要周波成分による波形)を1つの最小自乗近似関数で近似しようとすると、高次の関数にならざるを得ず、しかも高次にしたからと言って必ずしも正確にトレンド波形を近似する曲線が得られるわけではないが、本願発明のように、1〜Nのデータに対し小区間ずつについて最小自乗近似関数を求めこれを小区間を移動させつつつないで行くことにより1次か2次の関数で、従来よりも一層正確に近似できる。しかも、小区間の幅とその移動幅を、不要周波数のスペクトル幅とS/Nに応じて定めるようにしているので単に小区間に分けただけの場合よりも一層正確な近似が可能となる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明のクラッタ抑圧レーダ装置の実施例の構成を示すブロック図である。図示されていないレーダ受信回路からはIチャネル受信信号とQチャネル受信信号が出力され、それぞれ、図示されていないA/D変換器でディジタル信号に変換される。A/D変換器では距離方向に細区分されたレンジビンの幅時間の逆数のサンプリング周波数でサンプリングを行い、サンプリングした受信信号レベルを所定のビット数(例えば8ビット〜12ビット)のディジタル信号に変換して図1のIチャネル(Ich)メモリ1およびQチャネル(Qch)メモリ13へ送出する。
【0016】
Iチャネルメモリ1およびQチャネルメモリ13は、空中線ビームが1個の飛行体を方位方向に走査する間に、その飛行体からの反射信号が受信されるスイープ数程度以上の予め定められたNスイープ分の受信信号をレンジビン毎に格納し得る記憶容量を有する。Nスイープ分の受信信号が格納された後に更に次のスイープの受信信号を格納するときは、最も古いスイープの受信信号が消去されていく。
【0017】
第1の構成では、こうして、Nスイープ分の受信信号が格納されているIチャネルメモリ1およびQチャネルメモリ13から、1スイープ中の距離方向に連なるN個の受信データ列、即ちIチャネルではYj (j=1、2、3、……、N)、QチャネルではHj (j=1、2、3、……、N)が取り出され、それぞれ、Iチャネル(Ich)入力バッファ回路2およびQチャネル(Qch)入力バッファ回路14へ保持される。
【0018】
以下、IチャネルとQチャネルの構成および動作は同じであるのでIチャネルについて説明する。
Iチャネル入力バッファ回路2からIチャネル小区間レジスタ3へは、データ列Yj のうちの連続するM個からなる小区間のデータが読み出されレジストされる。この小区間はデータ処理の進行に応じて一定のシフトポイント数kでデータ列Yj を移動して行く。この小区間のデータ数Mとシフトポイント数kは、クラッタスペクトラム中の不要低周波数のスペクトル幅とS/Nに適合した値が設定されるようになっている。
【0019】
即ち、Iチャネル入力バッファ回路2からのデータ列Yj とQチャネル入力バッファ回路14からのデータ列Hj はスペクトル幅算出手段9とS/N算出手段10へ入力され、それぞれ、不要低周波数のスペクトル幅およびS/Nが算出される。算出されたスペクトル幅およびS/Nを示す信号は小区間決定手段11へ入力される。小区間決定手段11は、入力されたスペクトル幅およびS/Nに対して適合した最小自乗計算点数Mおよびシフトポイント数kを出力する。ここに言う適合とは、不要低周波スペクトラムに対応するトレンド波形に対し、より正確な最小自乗近似関数を導くことのできるMおよびkということである。
ここで、あるスペクトル幅およびS/Nのときに、トレンド波形に対して正確な最小自乗近似関数を求めうる最小自乗計算点数Mおよびシフトポイント数kは、経験的実験的に求めることができる。
【0020】
従って、いろいろなスペクトル幅とS/Nに対して適合するMおよびkを求めてこれをテーブルにしておくことによって小区間決定手段11を実現できる。或いはまた、スペクトル幅およびS/NとMおよびkとの間の実験式を求めておけば、小区間決定手段11は入力されたスペクトル幅とS/Nに対し適合するMおよびkを演算して出力する演算手段として構成することもできる。
【0021】
こうして、最小自乗計算点数M(小区間幅)とシフトポイント数kが定まるとIチャネル入力バッファ回路2からIチャネル小区間レジスタ3へ小区間分のデータを転送する。今、Iチャネル受信信号列Yj のj=mからM個の信号列yi (i=1、2、3、……、M)は
Ym 、Ym+1 、Ym+2 、……、Ym+M-1 となる。
また、データ列の隣り合うデータの受信時間間隔(サンプリング間隔)をtとした時の、上記データ列に対する時間位置データ列ti (i=1、2、3、……、M)は
mt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tとなる。
【0022】
これは、小区間決定手段11から情報を受けた小区間位置レジスタ12から出力される。上記mの値は、シフトポイント数をkとすれば、処理の進行に応じて1、1+k、1+2kと変化し、1+nk+M−1=nk+MがYj のデータ数Nを越えるところまでいくことになる。
こうしてIチャネル小区間レジスタ3に保持された小区間のデータ列yi はIチャネル最小自乗近似手段4へ転送される。該Iチャネル最小自乗近似手段4へは同時に小区間位置レジスタ12から時間位置データ列ti が送られている。ここでは、(ti,yi)を直交座標にプロットしてできるM個の点を最小自乗近似する1次関数y=a+a1 xを各mの値に対応して順次導き出す。最小自乗近似関数を求める手法自体は周知の手法である。
【0023】
こうして求められた関数に基づいて、Iチャネル演算手段5では関数のxに時間位置データ列ti の各値を順次代入してyの値を演算し、その演算結果をIチャネルレジスタ6へ保持する。
すべてのmについての(即ち受信信号データ列Yj に対するすべての小区間についての)最小自乗近似関数の導き出しとそれを用いた演算が終了するとIチャネルレジスタ6にはN個のデータ列Tj (j=1、2、3、……、N)が格納されることになる。これがクラッタスペクトルにおける不要の低周波数成分に対応するトレンド波形を近似したデータ列となるのである。
【0024】
なお、Mとkの値によっては、小区間Mをkだけ移動させてもデータ列が一部重なる場合があるが、この場合にはIチャネルレジスタ6へ書き込まれる際に、前に格納されていたデータは後のデータによって書き換えられることになる。
次いで、Iチャネル減算器7で、Iチャネル入力バッファ回路2からの受信信号データ列Yj からIチャネルレジスタ6に格納されているデータ列Tj を個々に減算することによって、受信信号波形からトレンド波形が除去されたことになる。減算結果は、データ列Cj としてIチャネル出力バッファ回路8へ格納される。
【0025】
以上、述べたと同じ動作がQチャネルについても行われる。ここで対応するデータ列はIチャネルのYj に対し、QチャネルはHj 、以下同様にyi に対し
hi 、Tj に対しLj 、Cj に対しDj である。
こうして、トレンド波形が除去され、Iチャネル出力バッファ回路8およびQチャネル出力バッファ回路20に格納されたデータ列はともに複素演算器26へ転送され、ここで2乗和或いは2乗和の平方根がとられて、クラッタ抑圧レーダ信号として出力される。
【0026】
以上は、最小自乗近似関数を1次関数で求める場合について述べたが、第2の構成として、1次関数に代えて2次関数を求めても本発明の効果が得られる。
3次以上の高次であっても理論的には問題はないが、それでは関数を求める方が複雑となり、本発明がデータ列を小区間に分けることによって関数が1次又は2次であってもトレンド波形を正確に近似できるという利点が薄れることになる。
【0027】
また、本実施例では、Iチャネルメモリ1およびQチャネルメモリ13のNスイープ分のデータの中からN個のデータ列を取り出すに当り1スイープ中の距離方向に連なるデータの取り出し例で説明したが、この取り出しは、距離方向に連なるものに限定されるものではなく、第3の構成として、距離が同じで方位方向に連なるN個のデータであってもよい。このときは時間位置データ列におけるtはスイープ間隔となる。この場合にも、第4の構成として、最小自乗近似関数を1次関数に代えて2次関数とすることが可能であること、距離方向に連なるデータの場合と同様である。
【0028】
第5の構成として、第3の構成又は第4の構成のいずれかに、Iチャネル出力バッファ回路8からのデータ列Cj とQチャネル出力バッファ回路20からのデータ列Dj とから飛行する目標のドップラー周波数を算出するドップラー周波数算出手段を設け、レーダ信号の映像表示と併行して目標のドップラー周波数で表示する構成も可能である。これは、第3の構成および第4の構成が、方位方向に連なるデータ列を取り出す構成であるため飛行目標からの反射が空中線の水平ビーム幅に応じて複数個得られるのでドップラー周波数の算出が可能となるためである。
【0029】
第6の構成は、小区間決定手段において小区間シフトポイント数kをパラメータとして変化させることができるようにしたものである。こうすることにより、複素演算器の出力信号を観測しつつクラッタスペクトルの広がりに適合するkの値を見出すことができるという利点がある。
【0030】
次に、N個のデータ列から、それに含まれるトレンド波形を近似する最小自乗近似関数を求めのに、小区間毎に求めた場合と、全区間で1個の高次の関数を求めた場合の不要な低周波成分の抑圧程度の違いを試算した例を示す。
図2は、入力データに含まれる不要な低周波成分の波形データとして、平均0のガウス分布をする乱数列に低周波通過フィルタをかけて得た128個のデータを使用し(従ってN=128の場合となる)、このデータ列に、S/N値が
4.9dBとなるようなシステムノイズを重畳し、更に信号として−600Hzの正弦波を重畳して全区間入力波形データを作成したN個の全区間入力データ列の電圧スペクトル波形図である。横軸は、計算ポイント表示の周波数軸としている。計算ポイント64が周波数0、計算ポイント0が周波数−1000Hz、計算ポイント127が周波数1000Hzにそれぞれ対応する。
【0031】
図3は、図2の入力受信信号の全区間の128個のデータ列を分割しないでトレンド波形データ列を計算した場合である。この場合は、10次の高次多項式を設定し、これで128個のデータ列を最小自乗近似するデータ列を計算して、これにより、不要な低周波成分を除去し、除去後の波形データの電圧スペクトル波形を示したものである。
【0032】
図4は、図2の入力受信信号の全区間の128個のデータ列を22個ずつの小区間に分割し、各区間を別々に、2次の多項式で最小自乗近似して、この入力データの不要な低周波数成分を除去し、除去後の波形データの電圧スペクトルを示した。ここでkの値は14とした。
図3と図4を比較してみれば、周波数0付近の不要低周波スペクトルが図4でよく抑圧されていることが分かる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のクラッタ抑圧レーダ装置は、従来、受信信号中の不要な低周波成分に対応するトレンド波形を近似する1つの最小自乗近似関数を求める対象としていた受信データ列について列中に小区間を設定しこれを一定間隔ずつ移動させながら小区間毎の最小自乗近似関数を求めるようにし、その小区間幅および移動ポイント数は、不要低周波成分のスペクトル幅およびS/Nに適合する値が選ばれるようにしたので、従来においては不要周波数成分のスペクトルの広がりが大きくなった場合にこれを充分抑圧し切れなかったのに対し、スペクトルが広がっても充分不要低周波成分を抑圧でき、その結果、移動する雲、海面の波、風にゆらぐ樹林等のようにゆらぎにより不要な低周波ドップラー成分を含むクラッタを従来よりもよく抑圧でき、飛行目標を鮮明に検出することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクラッタ抑圧レーダ装置の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】N=128個のデータ列の入力信号の周波数スペクトラムの一例であり、周波数0の近傍に不要な低周波成分があり−600Hzの位置に目標信号がある例である。
【図3】図2の入力信号の128個のデータ列全区間に対し、10次の最小自乗近似関数1つを導き出しこの関数で算出した128個のデータ列を減ずることにより不要な低周波成分の除去を試みた結果の周波数スペクトラムの図である。周波数0の両側にまだ不要な周波数成分が残っている。
【図4】図2の入力信号のN=128のデータ列に対し小区間幅M=22、小区間のシフトポイント数k=14として、各小区間毎に2次の最小自乗近似関数を求めて、この関数で算出したデータ列を減ずることにより不要な低周波成分の除去を試みた結果の周波数スペクトラムの図であり、図3に比較して、不要な低周波成分がより除去されていることが分かる。
【符号の説明】
1 Iチャネルメモリ
2 Iチャネル入力バッファ回路
3 Iチャネル小区間レジスタ
4 Iチャネル最小自乗近似手段
5 Iチャネル演算手段
6 Iチャネルレジスタ
7 Iチャネル減算器
8 Iチャネル出力バッファ回路
9 スペクトル幅算出手段
10 S/N算出手段
11 小区間決定手段
12 小区間位置レジスタ
13 Qチャネルメモリ
14 Qチャネル入力バッファ回路
15 Qチャネル小区間レジスタ
16 Qチャネル最小自乗近似手段
17 Qチャネル演算手段
18 Qチャネルレジスタ
19 Qチャネル減算器
20 Qチャネル出力バッファ回路
21 複素演算器
Claims (6)
- 次の各構成を有することを特徴とするクラッタ抑圧レーダ装置。
(イ)受信信号と混合する局部発振信号の位相がπ/2ラジアンだけ異なる2系統(IチャネルとQチャネル)の受信出力を有するレーダ受信回路
(ロ)Iチャネルからの受信出力を距離方向に細区分化したレンジビン毎に個別にNスイープ分記憶し新たなスイープの受信出力を記憶するときは最も過去のスイープの受信信号から順次消去されていくIチャネルメモリおよびQチャネルからの受信出力をIチャネルについてと同じく距離方向に細区分化したレンジビン毎に個別にNスイープ分記憶し新たなスイープの受信出力を記憶するときは最も過去のスイープの受信信号から順次消去されていくQチャネルメモリ
(ハ)Iチャネルメモリから1スイープ中の距離方向に連なるN個の受信信号データ列Yj (j=1、2、3、……、N 以後同じ)を取り出して保持するIチャネル入力バッファ回路およびQチャネルメモリから同一スイープ中の同じ距離範囲の連なるN個の受信信号データ列Hj (j=1、2、3、……、N 以後同じ)を取り出して保持するQチャネル入力バッファ回路
(ニ)受信信号データ列Yj および同Hj から周波数スペクトル波形を計算し周波数がゼロの近傍に分布するスペクトルの幅を算出するスペクトル幅算出手段
(ホ)受信信号データ列Yj および同Hj からノイズフロアーと信号レベルのの比S/Nを算出するS/N算出手段
(ヘ)前記スペクトル幅とS/N値を入力として、それらに対して適合する最小自乗計算点数M(小区間幅)と、小区間のシフトポイント数kを出力する小区間決定手段
(ト)Iチャネル受信信号データ列Yj の列位置j=mから前記最小自乗計算点数M個の小区間データ列yi (i=0、1、2、……、M−1)=Ym、Ym+1、Ym+2、……、Ym+M-1 を格納するIチャネル小区間レジスタ
およびQチャネル受信信号データ列Hj の列位置j=mから前記最小自乗計算点数M個の小区間データ列hi (i=0、1、2、……、M−1)=Hm、Hm+1、Hm+2、……、Hm+M-1 を格納するQチャネル小区間レジスタ
および各データ列における隣り合うデータの受信時間間隔をtとしたときの時間位置データ列ti (i=0、1、2、……、M−1)=mt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tを格納する小区間位置レジスタ
但し、mはm=1+nkで、nは0、1、2、……、(N−M)/kの小数点以下切上げ値まで順次シフトする。
(チ)(ti,yi)を直交座標にプロットしてできるM個の点を最小自乗近似する1次関数y=a0 +a1 xを各mの値に対応して順次導き出すIチャネル最小自乗近似手段
および、(ti,hi)を直交座標にプロットしてできるM個の点を最小自乗近似する1次関数h=b0 +b1 xを導き出すQチャネル最小自乗近似手段
(リ)1番からN番までの記憶素子を有するIチャネルレジスタと同じく1番からN番までの記憶素子を有するQチャネルレジスタ
(ヌ)xが、mt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tの各値のときの1次関数y=a0 +a1 xの値を算出し、その算出値をIチャネルレジスタの、m、m+1、m+2、……、m+M−1の各番目の記憶素子へそれぞれ格納することを、変化していくmの値毎に行うIチャネル演算手段
および、xがmt、(m+1)t、(m+2)t、……、(m+M−1)tの各値のときの1次関数h=b0 +b1 xの値を算出し、その算出値をQチャネルレジスタの、m、m+1、m+2、……、m+M−1の各番目の記憶素子へそれぞれ格納することを、変化していくmの値毎に行うQチャネル演算手段
(ル)前記Iチャネルレジスタに格納されたデータ列をTj (j=1、2、3、……、N)とし、Qチャネルレジスタに格納されたデータ列をLj (j=1、2、3、……、N)としたとき、受信信号データ列Yj からデータ列Tj を減算しデータ列Cj として出力するIチャネル減算器
および、受信信号データ列Hj からデータ列Lj を減算しデータ列Dj として出力するQチャネル減算器
(オ)前記データ列Cj を格納するIチャネル出力バッファ回路および前記データ列Dj を格納するQチャネル出力バッファ回路
(ワ)Iチャネル出力バッファ回路からのデータとQチャネル出力バッファ回路からのデータの2乗和又は2乗和の平方根を算出しこれをクラッタの除去された受信目標信号として出力する複素演算器 - 請求項1のクラッタ抑圧レーダ装置において、1次関数
y=a0 +a1 xおよびh=b0 +b1 xに代えて2次関数y=a0 +a1 x+a2 x2 およびh=b0 +b1 x+b2 x2 としたクラッタ抑圧レーダ装置。 - 請求項1のクラッタ抑圧レーダ装置において、要件(ハ)中の「1スイープ中の距離方向に連なるN個」に代えて「距離が同じで方位方向に連なるN個」としたクラッタ抑圧レーダ装置。
- 請求項3のクラッタ抑圧レーダ装置において、1次関数
y=a0 +a1 xおよびh=b0 +b1 xに代えて2次関数y=a0 +a1 x+a2 x2 およびh=b0 +b1 x+b2 x2 としたクラッタ抑圧レーダ装置。 - データ列Cj とデータ列Dj を用いて受信目標のドップラー周波数を算出するドップラー周波数算出手段を有する請求項3又は請求項4に記載のクラッタ抑圧レーダ装置。
- 小区間決定手段の出力する小区間シフトポイント数kがパラメータとして可変であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のクラッタ抑圧レーダ装置。
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