JP3681824B2 - セラミックスの接合体およびセラミックスの接合方法 - Google Patents

セラミックスの接合体およびセラミックスの接合方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、アルミニウムの化合物からなるセラミックスと、金属やセラミックスからなる他部材との接合体に関するものであり、またこの接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セラミックス部材と金属部材とをろう材により接合したセラミックスの接合方法は、種々の構成のものが様々な用途に使用されている。特に、アルミナや窒化アルミニウムを他の部材に対して接合する方法として、次のものが知られている。
(1)活性金属ろう材によって接合する。
(2)窒化アルミニウムの表面にモリブデン−マンガンペーストを塗布し、これを焼き付けてペースト焼き付け層を形成し、この上にニッケルメッキを施し、ニッケルメッキの上にろう材を介在させてろう付けを行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(1)、(2)の方法では、チタン、モリブデン等の活性金属が接合部分に残留している。このため、特にハロゲン系腐食性ガスのプラズマが存在している場合には、この接合部分に存在している活性金属(Ti、Zn等)、またはMn、Mo、ガラス等が腐食を受けやすい。また、(1)の方法では、活性金属ろうを直接セラミックス部材の表面に対して接触させ、このろうを溶融させるが、アルミナや窒化アルミニウムの濡れ性が悪いことが多く、安定して高い強度を得るために改善の余地があった。
【0004】
(2)の方法は、このセラミックスに対する濡れ性の問題を解決するためのものであって、モリブデンとマンガンとガラスとの各粉末を含有するペーストをセラミックス部材の表面に塗布し、このペーストを焼き付ける。この際、ガラス成分がセラミックスの表面の方で固形化してガラス層を生成し、このガラス層上にモリブデン─マンガン層が生成する。ここで、セラミックス部材とガラス層との接合強度は比較的に高く、またモリブデン─マンガン層と金属ろう材とは強固に結合する。このように、セラミックス部材の表面に対して金属ろうを直接強固に結合させることは困難なので、これらの間にガラス層およびモリブデン─マンガン層を介在させることによって接合強度を向上させようとしている。しかし、セラミックス部材と他部材との間に介在する層の数が多く、接合部分の強度は必ずしも安定しなかった。また、このようなガラス含有ペーストをセラミックス部材の表面に対して焼き付けるためには、通常800℃以上の高温が必要であるため、セラミックス部材と金属部材との間での熱膨張差に起因する残留応力が大きく、破壊の原因となり易い。
【0005】
本発明の課題は、アルミニウムを含有するセラミックスを、金属やセラミックスからなる他の部材に対して接合するための新たな方法を提供することである。また、本発明の課題は、この接合強度を向上させることである。また、本発明の課題は、接合界面における強度が高い接合体の微構造を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウム化合物からなるセラミックス製の第一の部材と、セラミックスまたはニッケル、銅、モリブデン及びコバールからなる群より選ばれた金属からなる第二の部材との接合体であって、第一の部材と第二の部材との間に金属接合材および前記金属接合材とニッケルとの金属間化合物からなる接合層が形成されており、この接合層が、前記金属接合材からなる連続相と、この連続相の間に生成している前記金属間化合物からなる分散相とを備えていることを特徴とする、セラミックスの接合体に係るものである。
【0007】
また、本発明は、アルミニウム化合物からなるセラミックス製の第一の部材と、セラミックスまたはニッケル、銅、モリブデン及びコバールからなる群より選ばれた金属からなる第二の部材とを接合する方法であって、第一の部材の接合面に対してニッケルからなる金属膜が直接に接触するように金属膜を形成し、この金属膜と第二の部材との間に金属膜とは異なる材質からなる金属接合材を介在させた状態で少なくとも金属接合材および金属膜を加熱することによって第一の部材と第二の部材とを接合することを特徴とする、セラミックスの接合方法に係るものである。
【0008】
本発明者は、窒化アルミニウム等のセラミックス部材を他の部材に対して、できるだけ低温で強固に接合する方法を開発するべく、研究を進めていた。この過程で、セラミックス部材の表面にニッケルの蒸着層またはメッキ層を形成してみた。この段階では、ニッケルの蒸着層やメッキ層とセラミックス部材との接合力は弱く、簡単に剥離した。しかし、このニッケルの蒸着層またはメッキ層の表面に直接ろう材を設置し、ろう材と、他の金属またはセラミックス部材を接触させ、熱処理してみると、セラミックス部材と他部材とが予想外に強固に接合することを見いだした。
【0009】
そして、得られた接合体の接合界面の状態を解析してみると、ニッケルの蒸着層やメッキ層が消滅し、ニッケルがろう材と反応して金属間化合物からなる分散を形成していることを確認した。このことから、接合の機構を以下のように推定した。ろう材を加熱する過程で、まずアルミニウムろうがニッケルに濡れ、ニッケルがろう材に溶解し、ニッケルとアルミニウムとの金属間化合物が生成したと考えられる。このようにニッケルとアルミニウムとの金属間化合物を生成する反応は、発熱反応であるため、この反応熱によって局部的な温度の上昇が発生し、このためにアルミニウムと窒化アルミニウムとが濡れ、接合がなされたものと考えられる。
【0010】
この点について更に説明する。ニッケルからなる金属膜とアルミニウムを主成分とする金属接合材とを使用した場合、通常は600℃に加熱する。このとき、アルミニウム−ニッケルの金属間化合物が生成し、この生成反応が発熱反応であるため、局所的に温度が上昇することが予想される。一般にセラミックスと金属とは、高温下で濡れ性が良くなるので、この場合も、発熱反応による温度上昇により、アルミニウムとセラミックスの濡れ性が向上し、両者が強固に接合したものと考えられる。
【0011】
このようにして得られた本発明の接合体は、金属接合材からなる連続と、この連続の中に分散された状態の金属間化合物からなる分散とを含んでいる。金属間化合物の熱膨張係数は、通常、金属接合材の主成分の熱膨張係数よりも小さく、セラミックス、特に窒化物セラミックスの熱膨張係数に近い。こうした分散が金属接合材の連続中に分散されている構造を採用することによって、特に接合後の残留応力が著しく緩和された。
【0012】
また、特に本発明の接合体を、NF、CF等のハロゲン系腐食性ガスに対して暴露される用途に使用する場合には、このハロゲン系腐食性ガスの接合層の内部への浸透が、前記金属間化合物からなる分散の場所でくい止められ、腐食の浸透が抑制されることがわかった。従って、本発明はこの用途に最も適している。
【0013】
上記の接合は、窒化アルミニウム部材を他部材に対して接合する際にもっとも有用であったが、アルミナ部材の場合にも適用できることを確認した。
【0014】
また、金属接合材の材質としては、金属ろう材を使用することができる。接合材の形態としては、シート、粉末、および粉末とバインダーとを混合したペーストのいずれでも良い。また、上記において、「第一の部材の接合面に対して金属膜が直接に接触するように金属膜を形成する」とは、金属膜と第一の部材との間に他の材質が介在しないように接合することを意味している。金属膜と第一の部材との間に他の材質が介在していると、金属接合材の第一の部材に対する接合力を向上させることはできない。
【0015】
具体的には、第一の部材の表面に対して金属膜を気相法(化学的気相成長法、スパッタリング法)、液相法(電解メッキ法、無電解メッキ法等)によって形成することができる。特に、無電界メッキ法によれば、セラミックスの表面を容易に被覆することができる。金属膜の厚さは、0.1〜20μmとすることが好ましい。
【0016】
また、第一の部材の表面に対して、ニッケル等の粉末を有機バインダーに分散させて得たペーストを塗布し、この塗布層を乾燥させ、有機バインダーを飛散させることによって、金属膜を形成できる。また、金属箔を第一の部材の表面に対して接触させることによって、金属膜を形成できる。
【0017】
これらの各方法のうち、気相法、液相法、およびペーストを乾燥する方法によって金属膜を設けた場合には、特に接合強度および残留応力の点で良好であった。
【0018】
次いで、金属膜と第二の部材との間に金属接合材を介在させた状態で、少なくとも金属接合材および金属膜を加熱する。この加熱の際には、金属接合材を溶融させてろう付けすることが好ましい。しかし、必ずしも金属接合材の全体を溶融させることは必要ではなく、金属接合材の金属膜との少なくとも界面付近を部分的に溶融させることができれば良い。また、「少なくとも金属接合材および金属膜を加熱する」とは、これらを含んで第一の部材および第二の部材をすべて加熱処理する場合の他、金属膜および金属接合材の存在する領域のみを高周波やレーザー光等の局所的加熱手段によって加熱する場合を含む。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1(a)〜(c)は、第一の部材50と第二の部材51とを接合する過程を示す断面図である。これらの各部材50、51の全体の形状には特に制限はない。第一の部材50はアルミニウム化合物のセラミックスからなり、第二の部材51は、これ以外のセラミックスまたはニッケル、銅、モリブデン及びコバールからなる群より選ばれた金属からなる。このセラミックスとしては、窒化アルミニウムを例示できる。図1(a)に示すように、第一の部材50の接合面50aに金属膜52を形成する。次いで、図1(b)に示すように、第一の部材50と第二の部材51とを対向させ、金属膜52と第二の部材51の接合面51aとの間に金属接合材53を介在させる。次いで、第一の部材および第二の部材を加熱処理すると、図1(c)に示すように部材50と51とが接合され、これらの各部材の間に接合層54が生成する。
【0021】
図2(a)〜(c)は、第一の部材50Aと第二の部材50Bとを接合する過程を示す断面図である。第一の部材50Aおよび第二の部材50Bは、それぞれアルミニウム化合物のセラミックスからなる。このため、図2(a)に示すように、第一の部材50Aの接合面50aに金属膜52Aを形成するのと共に、第二の部材50Bの表面にも同様に金属膜52Bを形成する。次いで、図2(b)に示すように、第一の部材50Aと第二の部材50Bとを対向させ、金属膜52Aと52Bとの間に金属接合材53を介在させる。次いで、第一の部材および第二の部材を加熱処理すると、図2(c)に示すように部材50Aと50Bとが接合され、これらの各部材の間に接合層55が生成する。
【0022】
図1(a)〜(c)を参照しつつ説明したように、第一の部材に対して、アルミニウム化合物からなるセラミックス以外のセラミックスまたはニッケル、銅、モリブデン及びコバールからなる群より選ばれた金属からなる第二の部材を接合したときには、図3(a)の模式的断面図に示すように、接合層54が生成する。この接合層54においては、金属膜52(図1(a)参照)は消滅し、金属接合材からなる連続56の中に、金属間化合物からなる粒子ないし分散57が分散していた。即ち、金属膜の材質と金属接合材との反応の進行に伴って、金属膜の成分が金属接合材の中に移動していた。また、特に金属からなる第二の部材51の表面には、金属間化合物からなる連続相60が生成することがあった。特に、金属部材がニッケルである場合にはこの連続相60が生成し易かった。この連続相60は、組成が相異なる金属間化合物からなる複数の相によって構成されることもあるが、単一組成の金属間化合物からなることもある。
【0023】
一方、図2(a)〜(c)を参照しつつ説明したように、共にアルミニウム化合物からなる部材50Aと50Bとを接合したときには、図3(b)の模式的断面図に示すように、接合層55が生成する。即ち、この接合層55においては、金属膜52A、52B(図2(a)参照)は消滅し、この代わりに各部材の表面50aに沿って、金属間化合物からなる粒子59A、59Bが生成していた。これは、各表面50aに近い位置から凝固が開始されるからと思われる。これら各粒子59A、59Bは、それぞれ界面に沿って連続し、金属間化合物が豊富な領域が生成していた。
【0024】
次いで、本発明で使用できる好ましい金属接合材について説明する。この金属接合材は、金属膜の材質と金属間化合物を生成しうるものであれば特に制限はなく、銅、ニッケル、銀、アルミニウムの各金属を主成分とする合金、またはこれらの純金属を使用できる。ただし、第一の部材と第二の部材との間の残留応力を最大限減少させるためには、低温で接合可能な、アルミニウムを主成分とするろう材が好ましい。また、本発明においては、特に金属接合材の中に活性金属を含有させることなく、強固な接合を形成することができた。これは、セラミックス部材中への活性金属成分の拡散は特に不要であることを意味している。
【0025】
従って、アルミニウムろう中に活性金属を含有させる必要はないが、Mgを0.3〜20重量%含有させることができる。また、更に50重量%以下の第3成分を含有させることができる。この第三成分としては、SiおよびCuからなる群より選ばれた一種以上の成分を使用することができる。
【0026】
また、ハロゲン系腐食性ガスに対する耐久性という点で、ニッケル、銅およびアルミニウムのいずれかを主成分とする金属接合材が好ましい。また、合金成分として、Siの場合はハロゲン系腐食性ガスによって腐食を受けやすいために、20wt.%以下が望ましい。
【0027】
以下、第一の部材および第二の部材の形態を種々変更した実施形態の好適例について順次説明する。図4(a)は、高周波電極を有するサセプターの構造の一例を示す図であり、図4(b)は図4(a)のサセプターを示すIVb−IVb線断面図である。アルミニウム化合物のセラミックスからなる円盤状基材1の中に高周波電極12が埋設されている。この高周波電極12は、本実施例では網状のバルク材である。2は、基材1を取り付けるためのアルミナ製フランジであり、4は電力供給部材の接合部であり、5は熱電対の接合部であり、6はサセプターの基材1とアルミナフランジ2との支持部である。このうち電力供給部材の接合部4と熱電対の接合部5との構造の詳細を、図4(b)に示す。
【0028】
フランジ2が窒化アルミニウム製のハブ11に対して接合されており、ハブ11が基材1の背面1bに対して接合されている。基材1の表面1aの近傍の内部に、高周波電極12が埋設されている。この材質は、モリブデン、タングステン等の高融点金属とすることが好ましい。基材1には、背面1b側に開口した孔13が形成されており、この孔13の底部に網状電極12が露出している。フランジ2の内側空間に細長い電力供給部材14が収容されており、この部材14の先端部14aが孔13の底部13aに、接合層15および残留応力緩和用のインサート材16を介して接合されている。これらによって接合部4が構成されている。
【0029】
電極接合部4では、図5にその一例を示すように、基材1の孔13の底部13aに対して接合層15が接触しており、この底部13aに網状電極12が露出している。そして、接合層15と、金属露出部である網状電極12とが接合しており、かつ接合層15と基材1とが接合している。特に、金属露出部として網状電極12を使用すると、接合層15と網状電極12との接合部は網状に存在しており、この編み目において、接合層15と基材1との接合部とが生成する。このように、網状電極とろう材との接合部と、基材とろう材との接合部とが交互に存在しているので、きわめて強固な接合を達成できる。
【0030】
また、基材1には孔17が形成されており、この孔17が、基材1の背面1bに開口しており、孔17は孔13よりは浅く、この孔17の底部には基材のセラミックスが露出している。また、フランジ2内には、熱電対を収容した中空シース18が収容されており、この中空シース18の先端部18aの周囲には、熱電対保護用の高融点金属製のキャップ19がかぶせられている。キャップ19の外径は、孔17の内径よりも若干小さくなっている。そして、キャップ19を、孔部17の底部17aに、接合層20およびインサート材21を介して接合することによって、熱電対の接合部5を構成している。
【0031】
ここで、アルミナ製のフランジ2と窒化アルミニウム製のハブ11との接合、ハブ11と窒化アルミニウム製の基材1の接合に対して、本発明を適用することができる。この場合には、いずれか一方を第一の部材とし、他方を第二の部材とすることができる。また、インサート材16と基材1との接合部分に対して、本発明を適用することができる。この場合には、孔13に露出している基材1を第一の部材とし、インサート材16を第二の部材とする。
【0032】
図6(A)、図6(B)、図6(C)、図7(A)、図7(B)、図8(A)、図8(B)は、それぞれ図4(a)、(b)に示した例と同様のプラズマ発生用電極装置における電力供給部材の接合部の周辺を示す断面図である。これらの図面において、図4に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0033】
図6(A)に示す例では、中心に貫通孔41aが形成されているチューブ形状の端子41を孔13内に収容した。この端子41は、Ni製またはAl製である。端子41の下側の端面が接合層15aによって底部13aに対して接合されており、端子41の側周面の下側が接合層15bによって孔13の周面に対して接合されている。この接合層15bは、網状電極12に対して半導体製造装置内の腐食性ガスが直接に接触しないように作用する。
【0034】
図6(B)に示す例では、孔57をテーパー加工し、同じくテーパー付きのNiまたはAl製の端子44を孔57内に収容する。そして、端子44の底面と孔57の底部57aとを接合層22aを介して接合し、端子44の側周面と孔57の側周面57bとを接合層22bを介して接合している。この後、NiまたはAl製の電力供給部材45を端子44に溶接している。
【0035】
図6(B)に示す例においては、更に、孔57をテーパー形状とし、この側周面57bと端子44と間も本発明に従って接合することで、接合面積を大きくとれるとともに、底部57aに対する気密性が一層高い構造となる。また、端子44を孔57内に挿入することで、先端部44のテーパー面に沿って孔57の側周面を加圧しながら、金属接合材の加熱を行うことができる。
【0036】
図6(C)の接合構造は、図6(A)の接合構造において、更に、貫通孔41aの中に窒化アルミニウム製の応力緩和材24が収容されており、この応力緩和材24の底面と孔13の底面13aとの間も、本発明に従って接合されている。即ち、この接合部分とその周辺とは、温度の上昇と加工とに対してさらされるが、この場合にセラミックスと金属との間の熱膨張差によって、特に接合層15a、15bとセラミックスの接合界面に対して熱応力が加わる。しかし、このセラミックス製の応力緩和材24によって端子41を挟んだ構造を採用することによって、この端子41から接合層に対して加わる応力が分散され、緩和される。特に、接合層15aとセラミックスの接合界面における応力の緩和に効果が大きい。なお、図6(A)、図6(B)、図6(C)においては、孔13に露出する基材1を第一の部材とし、これと接合される耐腐食性金属製の端子41、44を第二の部材とする。
【0037】
図7(A)に示す例では、テーパー付きのブッシュ58の中心部に貫通孔46が設けられている。電力供給部材45の最先端には凸形状の押圧部45aが設けられている。そして、貫通孔46の中に部材45を挿入し、押圧部45aによって金属接合材を底部57aの方向へと向かって押しつけながら加熱する。また、ブッシュ58によって金属接合材を側周面57bの方へと向かって加圧しながら加熱する。
【0038】
この例においては、更に、孔57の底部57aに対して接合を行うときに、押圧部45aによって圧力を加えることができるので、この底部57aに沿って接合部分の接合強度を一層向上させることができる。この実施形態では、基材1を第一の部材とし、これと接合される耐腐食性金属製のブッシュ58および押圧部45aを第二の部材とする。
【0039】
図7(B)に示す例では、孔13の内径および形状とほぼ同じ内径および形状を有する、NiまたはAl製の薄い円板47を、孔13の底部13aに対して、本発明に従って接合層15を介して接合する。次いで、NiまたはAl製の電力供給部材45を円板47と溶接等することによって一体化する。本実施例では、円板47を使用することで、製造時および使用時の熱応力を一層低減することができる。この実施形態では、基材1を第一の部材とし、これと接合される円盤47を第二の部材とする。
【0040】
図8(A)に示す例では、孔13内において、窒化アルミニウム製のリング状中間部材48と、NiまたはAl製の電力供給部材45との各端面を、接合層15を介して底部13aに対して接合している。この実施形態では、実際に電力を供給する部材45と同時に、窒化アルミニウム製の中間部材48をも底部13aに対して接合しているので、一層熱応力を低減することができる。この実施形態においては、基材1を第一の部材とし、電力供給部材45および中間部材48を第二の部材とする。
【0041】
図8(B)に示す実施形態では、網状電極12の一部を切断し、この切断した残りの部分を基材1の背面の方向へと向かって伸ばした状態で基材1を一体焼結させた。これによって、網状電極12から切断部分58を背面の方向へと伸ばし、この切断部分を構成する細線58の端面を背面1bに露出させている。基材1の背面1bに対して電力供給部材45を、接合層15を介して接合しており、かつ電力供給部材45を細線58に対して接続している。この実施形態においては、基材1を第一の部材とし、電力供給部材45を第二の部材とする。図8(B)に示す各実施形態においては、加工の難しいメッシュ12の部分については孔13、57を形成する加工を行う必要がない。
【0042】
図9は、半導体製造装置の金属フランジ60と、セラミックスヒーター62との接合構造を概略的に示す断面図である。このフランジ60は、半導体製造装置のチャンバーに取り付けるための取り付け部60aと、装置の内部へと延びる延設部60bとを備えている。延設部60bの内側に、装置の内部の雰囲気とは隔離された空間61が形成されている。延設部60bの端面60cに、セラミックスヒーター62のセラミックス基材66の背面66bが、本発明の方法に従って接合層70を介して接合されている。この基材66の内部には抵抗発熱体63が埋設されており、抵抗発熱体63の端部が端子64に対して接続されている。各端子64は背面66bに露出しており、各端子に対して電力供給用の棒状部材67が接合されている。また、基体66の背面66b側に凹部65が形成されており、この凹部65の中に熱電対68の末端の熱接点が収容されている。
【0043】
熱電対68によって基体の温度を観測しつつ、抵抗発熱体63への供給電力を調整し、ウエハー加熱面66aの温度を調整する。むろん、温度の測定方法や抵抗発熱体の構成や端子の接続構造などは、特に限定されない。このような構成によって、セラミックスヒーターの端子や熱電対などの腐食を受けやすい部分が半導体製造装置内に露出しないような加熱装置を提供することができる。
【0044】
図9において、フランジ60を接合すべき基体の内部には、静電チャック電極や高周波電極などの機能性部材を埋設することができ、この際に各機能性部材およびこれに電力を供給するための端子が、空間61に対して露出し、半導体製造装置内に露出しないようにすることができる。
【0045】
また、図4〜図8の各実施形態において、高周波電極である網状電極をパンチングメタルや不織布とすることができる。また、基材の内部に、高周波電極の代わりに、静電チャック電極や抵抗発熱体(図9におけるように)を埋設することができる。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
図2に示す方法に従って接合体を製造した。第一の部材および第二の部材として、それぞれ窒化アルミニウムセラミックスからなる平板形状の部材を作成した。各部材の寸法は、8mm×40mm×20mmとした。表1における実施例1−1〜1−4においては、各部材の表面50aをニッケルメッキ液に対して所定時間接触させることによってメッキを行った。そして、両部材の間に、表1に示す各成分比率を有するろう材のシート53を挟んで被処理体を製造し、この被処理体を電気炉中に収容し、これを真空中で各ろう材の融点以上の温度にまで加熱し、ついで室温まで温度を降下させて各接合体を製造した。前記シートの寸法は、8mm×40mm×0.12mmとした。加熱の際には、このシートに対して垂直の方向に、70g/cm2 の圧力を加えた。また、比較例1−1、1−2においては、各部材の表面処理を行わなかった。
【0047】
各接合体について、JIS Z2204に準拠して4点曲げ試験片を切り出し、四点曲げ強度を測定した。また、各接合体をCF4 プラズマ中に400℃で192時間暴露した。この暴露後の接合体について、上記のようにして四点曲げ強度を測定した。また、接合体の接合界面の変色を調査し、この変色部分を浸食部分と考え、この浸食部分の表面からの長さを測定し、浸食距離として表示した。
【0048】
【表1】
Figure 0003681824
【0049】
表1に示すように、本発明によって、四点曲げ強度が高く、ハロゲン系腐食性ガスプラズマ等の腐食性ガスに対して高い耐腐食性を有する接合体を提供することができるし、この接合を、種々のアルミニウム合金からなるろう材や純アルミニウムからなるろう材によって、簡単に行うことができる。
【0050】
これに対して、比較例1−1においては、接合強度が相対的に見て低く、また耐腐食性も劣っていた。これは、窒化アルミニウムに対するろう材の濡れ性が低いためであろうと思われる。また、比較例1−2においては、ろう材中の活性金属の割合を顕著に増大させることによって、ろう材の窒化アルミニウムに対する濡れ性を向上させる手法をとった。このため、初期の強度は大きいが、しかし腐食性ガスに接合体をさらすと接合部分の腐食が極度に進行した。
【0051】
また、実施例1−1の接合体の接合界面を走査型電子顕微鏡によって撮影し、図10に示した。図10に示すように、ろう材からなる接合層の両側界面に沿って、別の物質の粒子が列状に生成していた。この接合層の各部分の元素をEDAXによって測定したところ、主としてろう材からなる層の両側に、アルミニウム−ニッケルの金属間化合物の分散がリッチな領域が残留していることが判明した。この分散を構成する金属間化合物の組成は、AlNiであった。
【0052】
(実施例2)
図1に示す方法に従って接合体を製造した。即ち、窒化アルミニウムからなる第一の部材を2枚準備し、金属製の第二の部材を1枚準備し、2枚の第一の部材の間に1枚の第一の部材を挟んで接合した。ここで、第二の部材の材質は、表2に示すように変更した。第一の部材の寸法は8mm×40mm×20mmとし、第二の部材の寸法は8mm×40mm×2mmとした。
【0053】
表2における実施例2−1〜2−7においては、第一の部材50の表面50aをニッケルメッキ液に対して所定時間接触させることによってメッキを行った。そして、第一の部材50と第二の部材51との間に、表2に示す各成分比率を有するろう材のシート53を挟んで被処理体を製造し、この被処理体を電気炉中に収容し、これを真空中で各ろう材の融点以上の温度にまで加熱し、ついで室温まで温度を降下させて各接合体を製造した。前記シートの寸法は、8mm×40mm×0.12mmとした。加熱の際には、このシートに対して垂直の方向に、70g/cm2 の圧力を加えた。また、比較例2−1〜2−4においては、各部材の表面処理を行わなかった。
【0054】
各接合体について、JIS Z2204に準拠して4点曲げ試験片を切り出し、四点曲げ強度を測定した。
【0055】
【表2】
Figure 0003681824
【0056】
表2に示すように、本発明によって、四点曲げ強度が高い接合体を提供することができるし、この接合を、種々のアルミニウム合金からなるろう材や純アルミニウムからなるろう材によって、簡単に行うことができる。また、第二の部材の材質としてニッケル、モリブデン、銅、コバールのいずれを使用したときにも、高い強度が得られた。
【0057】
これに対して、比較例2−1、2−2においては、接合強度が相対的に見て低かった。これは、窒化アルミニウムに対するろう材の濡れ性が低いためであろうと思われる。また、比較例2−3においては、ろう材中の活性金属の割合を顕著に増大させることによって、ろう材の窒化アルミニウムに対する濡れ性を向上させる手法をとった。しかし、この場合、接合温度は、Al系ろう材が600℃〜670℃であるのに対し、比較例2−3は850℃であり、比較例2−4は1050℃であるため、金属である第二部材とセラミックスである第一部材との間の熱膨張差に起因する熱応力が顕著となるため、強度が低くなっている。
【0058】
また、実施例2−1の接合体の接合界面を走査型電子顕微鏡によって撮影し、図11に示した。図11からわかるように、ろう材からなる接合層の中に、別の物質からなる粒子が随所に存在していた。このため、この接合層の各部分の元素をEDAXによって測定したところ、ろう材からなる連続の中に、アルミニウム−ニッケルの金属間化合物からなる粒子が多数生成していることが判明した。この金属間化合物の組成はAlNiであった。
【0059】
なお、図11の写真において接合層のニッケル部材との界面に沿って、ニッケル−アルミニウム金属間化合物からなる連続相が層状に延びていることがわかった。この連続相のうち、ニッケル部材から遠い領域には主としてAl3 Niが生成しており、ニッケル部材に近い領域には主としてAl3 Ni2 が生成していた。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、アルミニウムを含有するセラミックスを、金属やセラミックスからなる他の部材に対して接合するための新たな方法を提供することができ、これによって前記セラミックスの接合を容易にでき、かつ接合強度を向上させることができる。従って、本発明の接合体は、セラミックスヒーター、静電チャック、高周波電極付きのサセプターの他、各種の半導体製造装置および半導体デバイスに対して好適に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、第一の部材50の表面50aに金属膜52を形成した状態を示す断面図であり、(b)は、第一の部材50と第二の部材51とを対向させて積層した状態を示す断面図であり、(c)は、第一の部材と第二の部材とを接合して得た接合体を示す断面図である。
【図2】(a)は、第一の部材50Aおよび第二の部材50Bの各表面に金属膜を形成した状態を示す断面図であり、(b)は、部材50Aと50Bとを対向させて積層した状態を示す断面図であり、(c)は、第一の部材と第二の部材とを接合して得た接合体を示す断面図である。
【図3】(a)は、第一の部材50と第二の部材51との接合界面を拡大して模式的に示す断面図であり、(b)は、部材50Aと部材50Bとの接合界面を拡大して模式的に示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明のセラミックスの接合構造が使用されている一例として、高周波電極を内蔵するプラズマ発生電極装置の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)に示すプラズマ発生電極装置における電力供給部材の接合部の状態を示す断面図である。
【図5】図4(b)における網状電極12と接合層15との界面の周辺を拡大して模式的に示す断面図である。
【図6】(A)、(B)、(C)は、それぞれ本発明の接合方法および接合体をプラズマ発生電極装置の電力供給部材と網状電極との接合部分に対して適用した実施形態を示す断面図である。
【図7】(A)、(B)は、それぞれ本発明の接合方法および接合体をプラズマ発生電極装置の電力供給部材と網状電極との接合部分に対して適用した実施形態を示す断面図である。
【図8】(A)、(B)は、それぞれ本発明の接合方法および接合体をプラズマ発生電極装置の電力供給部材と網状電極との接合部分に対して適用した実施形態を示す断面図である。
【図9】半導体製造装置のフランジ部60に対してセラミックスヒーター62を接合して一体化した状態を模式的に示す断面図である。
【図10】図3(b)に対応する、接合体の接合界面のセラミックス組織を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】図3(a)に対応する、接合体の接合界面のセラミックス組織を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 基材 11 ハブ 12 網状電極 14 電力供給部材 15、20 接合層 16、21 インサート材 19 キャップ
44 電力供給部材の端子 45 電力供給部材 50、50A アルミニウム化合物のセラミックスからなる第一の部材 50a 第一の部材の表面 50B、51 第二の部材 52、52A、52B 金属膜 53金属接合材 54、55 接合層 56、58 金属接合材 57、59A、59B 金属間化合物からなる分散相 60 金属間化合物からなる連続相 71─72 金属間化合物が豊富な領域

Claims (7)

  1. アルミニウム化合物からなるセラミックス製の第一の部材と、セラミックスまたはニッケル、銅、モリブデン及びコバールからなる群より選ばれた金属からなる第二の部材との接合体であって、前記第一の部材と前記第二の部材との間に金属接合材および前記金属接合材とニッケルとの金属間化合物からなる接合層が形成されており、この接合層が、前記金属接合材からなる連続相と、この連続相の間に生成している前記金属間化合物からなる分散相とを備えていることを特徴とする、セラミックスの接合体。
  2. 前記接合層の前記第一の部材との界面に沿って、前記分散相が豊富な層状の領域が形成されていることを特徴とする、請求項1記載のセラミックスの接合体。
  3. 前記第二の部材がセラミックスであり、前記接合層の前記第二の部材との界面に沿って、前記分散相が豊富な層状の領域が形成されていることを特徴とする、請求項2記載のセラミックスの接合体。
  4. 前記第二の部材が金属であり、前記接合層の前記第二の部材との界面に沿って、金属間化合物の連続からなる界面層が形成されており、この界面層と前記第一の部材との間で前記接合層中に前記分散が生成していることを特徴とする、請求項1記載のセラミックスの接合体。
  5. アルミニウム化合物からなるセラミックス製の第一の部材と、セラミックスまたはニッケル、銅、モリブデン及びコバールからなる群より選ばれた金属からなる第二の部材とを接合する方法であって、前記第一の部材の接合面に対してニッケルからなる金属膜が直接に接触するように前記金属膜を形成し、この金属膜と前記第二の部材との間に前記金属膜とは異なる材質からなる金属接合材を介在させた状態で少なくとも前記金属接合材および前記金属膜を加熱することによって前記第一の部材と前記第二の部材とを接合することを特徴とする、セラミックスの接合方法。
  6. 前記金属接合材がアルミニウム純金属およびアルミニウム系合金からなる群より選ばれた金属からなることを特徴とする、請求項記載のセラミックスの接合方法。
  7. 前記第一の部材を構成する前記セラミックスが、窒化アルミニウムおよびアルミナからなる群より選ばれたセラミックスであることを特徴とする、請求項5または6記載のセラミックスの接合方法。
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