JP3680738B2 - 波長多重光通信モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種の通信ネットワークで使用される波長多重光通信モジュールに係わり、特に異なる波長の光の合分波や送受信を行うために使用される波長多重光通信モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
異なる波長の光の合分波や送受信を行うための波長多重光通信モジュールが各種開発されている。
【0003】
図11は、従来提案されたこのような波長多重光通信モジュールを側方から見たものである。特開平10−133069号公報に開示されたこの波長多重光通信モジュール11は、シリコン基板12の上面13に光導波路14を載置した構成となっている。この光導波路14の図で左側には光回路のポート15に一端を接続された入出力ポート光ファイバ16が配置されている。また、光導波路14の図で右側には光ファイバ17とフォトダイオード(PD)モジュール18およびレーザダイオードモジュール19(図11に示した方向から見た場合にはフォトダイオードモジュール18はレーザダイオードモジュール19に隠れている。)が配置されている。
【0004】
図12はこの提案の波長多重光通信モジュールの上面を表わしたものである。図12に示すように、入出力ポート光ファイバ16のコア21と光ファイバ17のコア22は同一の光軸の延長線上に配置されている。入出力ポート光ファイバ16からポート15には互いに異なる波長λ1とλ2の光が入射するようになっている。この入射した光は光導波路14内の光回路の合分波部24で分波され、このうちの波長λ1の光はそのまま直進して光出力ポート25に出力される。光出力ポート25には光ファイバ17の一端が光学的に結合されており、波長λ1の光は光ファイバ17のコア22を導波されていく。
【0005】
一方、合分波部24で分波された波長λ2の光は分岐部26で2方向に分岐される。分岐された一方の光はポート27に到達して受光素子18に入力され、光信号が電気信号に変換される。分岐された他方の光はポート28に到達する。ポート28にはレーザダイオード(LD)モジュール19が結合されている。レーザダイオードモジュール19は波長λ2の光を出力するようになっている。この光は分岐部26を逆向きに進行して合分波部24に到達して合波される。そして、ポート15から入出力ポート光ファイバ16に入力され、そのコア21を逆方向に導波されることになる。
【0006】
この図11および図12に示した波長多重光通信モジュール11では、光導波路14と、光信号を受信するフォトダイオードモジュール18ならびに光信号を発信するレーザダイオードモジュール19が1つのシリコン基板12の上面13に搭載される構造となっている。これにより、波長多重光通信モジュール11を低コストで作製することができる。
【0007】
しかしながらこの波長多重光通信モジュール11では、光導波路14を挟むようにしてその両側に2本の光ファイバ16、17を配置した構造となっている。このため、これらの光ファイバ16、17と他の図示しない電気部品との接触を防ぐために波長多重光通信モジュール11の両側にある程度のスペースを配置する必要がある。これにより、波長多重光通信モジュール11の高密度実装が困難であるという問題があった。
【0008】
特許2919329号および特開平5−333243号公報に開示された技術でも、同様に光導波路の互いに反対方向に位置する端面に光ファイバを接続している。したがって、これらの場合も図11および図12に示した技術と同様の問題があった。
【0009】
図13は、先の波長多重光通信モジュールの実装密度の問題を解消するものとして提案された波長多重光通信モジュールを表わしたものである。特開平8−190026号公報に開示されたこの提案の波長多重光通信モジュール31では、入力用シングルモード光ファイバ32と出力用光ファイバ33のそれぞれの一端が、ガラスブロック34を用いて光導波路35の入出力ポート36、37のうちの対応するものに結合されている。入力用シングルモード光ファイバ32からは互いに異なる波長λ1とλ2の光が入出力ポート36に入射する。これら波長λ1とλ2の光は、光導波路35の中央部分に形成された溝38に配置された誘電体多層膜39に入射する。誘電体多層膜39は、一方の波長λ1の光をそのまま透過し、分岐部41で2つの経路に分岐される。このうちの一方の経路の末端にはレーザダイオードモジュール42が光学的に接続されており、他方の経路の末端にはフォトダイオードモジュール43が光学的に接続されている。
【0010】
この提案の波長多重光通信モジュール31では、誘電体多層膜39を平面光光導波路回路の基準平面45に垂直に配置して構造を簡単にすることによって、コンパクトなモジュールを作製している。しかも図11および図12に示した先の提案では2本の光ファイバ16、17が光導波路の異なった端面に取り付けられているので、波長多重光通信モジュール11を高密度に実装することができなかったが、図13に示した波長多重光通信モジュール31では光ファイバ32、34を同一端面に接続することで、この問題を解決している。
【0011】
図14は同様に光導波路の片方の端面に2本の光ファイバを接続した波長多重光通信モジュールの他の例を示したものである。特開平10−160952号公報に開示されたこの波長多重光通信モジュール51では、光導波路基板52に段差が設けられており、その段差部分に第1および第2の光ファイバ53、54の端部がそれぞれ配置されている。第1の光ファイバ53から対応する第1のポート55には互いに異なる波長λ1とλ2の光が入射するようになっている。これらの光は、第1の光導波路56によって光導波路基板52の第1のポート55と反対側の第2のポート57に配置された波長分波素子58に入射する。
【0012】
波長分波素子58は波長λ1の光をほぼ完全に反射する。このため、波長λ1の光は第2の光導波路59を導波して第3のポート61に到達し、ここから第2の光ファイバ54に入射するようになっている。また、波長分波素子58は波長λ2の光を一部透過して波長分波素子58の背後の光出力モニタ用受光素子66で受光する。更に、波長分波素子58で反射された波長λ2の光は第1の光導波路56を逆方向に進行して第1の光ファイバ53に入射するようになっている。また、第2の光ファイバ54の近傍に配置されたレーザダイオードモジュール63から出力される波長λ2の光は、第4のポート64から第3の光導波路65に入射し、波長分波素子58を透過して光出力モニタ用受光素子66で受光されるようになっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
図13および図14に示した波長多重光通信モジュール31、51では、それぞれ2本の光ファイバ32、33、53、54が同一端面に取り付けられているので、既に説明したように高密度な実装が可能になる。しかしながら、図13に示した波長多重光通信モジュール31では、光導波路35に形成した細い溝38に誘電体多層膜39からなるフィルタ(以下、誘電体多層膜フィルタという。)を挿入するという非常に手間が掛かる作業を行う必要がある。このため、モジュールの組み立てコストの低減が困難であるという問題があった。
【0014】
また、図14に示した波長多重光通信モジュール51では、透過や反射を複雑に選択する波長分波素子58を使用する必要があり、モジュールの製造コストが上昇してしまうという問題があった。更にこのような波長多重光通信モジュール51では、ハーフミラーの片面で光が入射する側に、特定の波長の光を外部に折り返すための誘電体多層膜を形成する必要があった。この例では波長λ1の光をほぼ全反射させ、波長λ2の光を透過させるための誘電体多層膜を形成することになる。この場合、波長λ1の光と誘電体多層膜で反射され、波長λ2の光はハーフミラーで反射されるため、波長λ1の光と波長λ2の光の折り返し位置にずれが生じる。したがって、折り返し光と導波路との位置ずれによって、発光素子としてのレーザダイオードモジュール63からハーフミラーで反射された波長λ2の光の損失が大きくなり、第1の光ファイバ53に導かれる光の割合が少なくなるという問題があった。
【0015】
そこで本発明の目的は、組み立て易く製造コストが安い波長多重光通信モジュールを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明では、(イ)信号光の入出力端が一方の端面に備えられた光導波路基板と、(ロ)前記光導波路基板上に配置された発光素子と、(ハ)前記発光素子から出力される信号光を導波する第1の光導波路と、(ニ)前記光導波路基板の前記一方の端面と他方との端面とを結んで配置され、前記第1の光導波路から方向性結合器を介して前記信号光を移行させて前記一方の端面側へ導波すると共に、前記一方の端面から前記信号光と波長の異なる信号光を入力して前記他方の端面側へ導波する第2の光導波路と、(ホ)前記他方の端面に配置され、特定の波長の信号光を透過し、その他の波長の信号光を反射する波長フィルタと、(へ)前記一方の端面と前記他方の端面とを結んで配置され、前記他方の端面において、前記波長フィルタで反射された前記その他の波長の信号光を、前記第2の光導波路端から光学的に結合するように配置された第3の光導波路と、(ト)前記波長フィルタを介して前記他方の端面と対向して配置され、前記波長フィルタを透過した前記特定の波長の信号光を受光する受光素子と、(チ)前記一方の端面において前記第2の光導波路と光学的に結合する第1の光ファイバと、(リ)前記一方の端面において前記第3の光導波路と光学的に結合する第2の光ファイバとを波長多重光通信モジュールに具備させる。
【0017】
すなわちこの発明は、光導波路基板上に配置された発光素子から出力される信号光を第1の光導波路に導波し、方向性結合器によってそのパワーを第2の光導波路に移行させて、第2の光導波路から光導波路基板の前記一方の端面側へ導波できるようにしている。方向性結合器による信号光の他の光導波路に対するパワーの移行の比率は、100パーセントあるいはこれに近い比率であってもよいし、信号光を用途に応じて配分する場合には所望の比率となるように設計すればよい。第2の光導波路と第3の光導波路はそれぞれ一端を光導波路基板の一方の端面に配置しており、それぞれに第1あるいは第2の光ファイバが光学的に結合するようになっている。第2の光導波路と第3の光導波路のそれぞれの他端は、光導波路基板の他方の端面で波長フィルタと対向配置している。これにより、波長フィルタの特性に応じて、透過した光を基板外受光素子で受光したり、波長フィルタで反射された光を第2の光導波路あるいは第3の光導波路で光学的に結合して第1あるいは第2の光ファイバを用いて外部に出力することが可能になる。この発明では、波長多重光通信モジュールに光ファイバを接続する場合、光導波路基板の前記した一方の端面側のみに第1および第2の光ファイバを配置するので、他方側には各種の部品を支障なく配置することができ、各種部品の実装密度を向上させることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
【0035】
【実施例】
以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【0036】
第1の実施例
【0037】
図1は本発明の第1の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。この波長多重光通信モジュール71は、光導波路基板72の上面の図で右上の角部にレーザダイオード等からなる発光素子73を配置している。この発光素子73の出力側には第1の光導波路74の一端が光学的に接続されている。第1の光導波路74の他端は、発光素子73の配置されている光導波路基板72の端面75とは逆の位置に配置された端面76の方向に延びているが、端面76に到達する手前の位置で途切れている。端面76に配置された第1および第2のポート78、79には、それぞれ第1の光ファイバ81と第2の光ファイバ82のそれぞれの端部が光学的に接続されている。
【0038】
第1のポート78には、第1の光ファイバ81と光学的に接続された第2の光導波路83の一端が接続されている。第2の光導波路83はその他端が端面75に配置されており、その途中が第1の光導波路74の端部近傍と近接配置されている。これら第1の光導波路74と第2の光導波路83の近接した箇所では、合分波機能を有する方向性結合器84が形成されている。端面76の第2のポート79には、第3の光導波路85の一端が光学的に接続されており、他端は第2の光導波路83の他端と端面75の位置で光学的に接続されている。
【0039】
端面75には波長を選択するための波長フィルタ86が貼り付けられている。この波長フィルタ86の近傍には、キャリア87に実装されたフォトダイオード等の受信用受光素子88がフィルタ面と対向するように配置されている。受信用受光素子88は、第1の光ファイバ81から第2の光導波路83を導波してきた光を選択的に受光するようになっている。
【0040】
図2は本実施例の波長フィルタの断面構造を示したものである。波長フィルタ86はガラス基板86Aの片面(光導波路基板の端面75の側)に波長λ3の光を遮断する誘電体多層膜86Bが形成されており、その反対側の面に波長λ1の光を遮断する誘電体多層膜86Cが形成されている。このようにガラス基板86Aの両面に誘電体多層膜86B、86Cが形成されているので、フィルタ自体に反りが生じるおそれがない。
【0041】
図3は図14で示した従来の波長分波素子を比較のために示したものである。波長分波素子58は波長λ2の光を一部遮断するハーフミラー58Aの片面に波長λ1の光を完全に遮断し、波長λ2の光を透過する誘電体多層膜58Bを形成した構造となっている。したがって、既に説明したように発光素子側から波長λ2の光を入射したときに折り返し光の損失が大きくなるだけでなく、ハーフミラー58Aの片面に誘電体多層膜58Bを形成するために反りが生じることになる。
【0042】
図4は、波長フィルタと第2の光導波路および第3の光導波路の接続箇所を拡大して示したものである。第2の光導波路83と第3の光導波路85はこれらの中心軸が誘電体多層膜86B(図2参照)の表面と同一点89で接触し、かつこの点89から誘電体多層膜86Bに対して垂直に延びる線90に対してこれらの中心軸が互いに等しい角度θとなるように配置されている。これにより、第2の光導波路から波長フィルタ86に入射した波長λ3の光はこの面で反射され、第3の光導波路85に進行することになる。波長λ2の光は波長フィルタ86を透過していく。
【0043】
このような構成の波長多重光通信モジュール71で、発光素子73は波長λ1の光を出力するようになっている。この波長λ1の光は第1の光導波路74を導波して方向性結合器84に到達する。方向性結合器84は、第1の光導波路74を導波する波長λ1の光のパワーが第2の光導波路83に移行してその伝送路に導かれるように設計している。第1の光ファイバ81は波長λ1と異なり、かつ互いに異なる波長λ2とλ3の光を第1のポート78に入射するようになっているので、これら波長λ2とλ3の光が第1の光導波路74を導波する波長λ1の光と逆方向に導波する。しかしながら、この方向性結合器84では、これら波長λ2とλ3の光の場合はそのまま第2の光導波路83を導波するように設計されている。
【0044】
第2の光導波路83を導波した波長λ2とλ3の光は、波長フィルタ86に到達する。波長フィルタ86には、波長λ1および波長λ3の光を反射し、波長λ2の光を透過する波長特性を有する誘電体多層膜が形成されている。したがって、第2の光導波路83を進行してきた波長λ2とλ3の光のうちの波長λ3の光が波長フィルタ86で反射される。この反射された波長λ3の光は第3の光導波路85と結合する。したがって、波長λ3の光が第3の光導波路85を導波され、第2の光ファイバ82に入射されることになる。一方、波長フィルタ86の背後に配置された受信用受光素子88には波長λ2の光が透過して入射することになる。
【0045】
たとえば、発光素子73が波長λ1として1.3μm帯の送信信号光を出力するものとする。この波長λ1の送信信号光は第1の光導波路74に結合し、方向性結合器84によって第2の光導波路83にパワーが移行して、第1の光ファイバ81に導かれる。第1の光ファイバ81から第2の光導波路83に結合した波長λ2とλ3の光のうち、波長λ2の光はたとえば1.5μm帯の信号光であり、波長λ3は1.55μm帯の信号光である。たとえば波長λ1の1.3μm帯を上り信号とし、波長λ2の1.5μm帯を下り信号として使用し、波長λ3の1.55μm帯をビデオ信号等の他のアプリケーションに使用するシステムの信号として使用することができる。
【0046】
第1の光ファイバ81から第2の光導波路83に結合した波長λ2とλ3の光は、方向性結合器84を導波してそのまま第2の光導波路83に導かれる。このうち波長λ2の信号光は波長フィルタ86を通過して受信用受光素子88で受光される。波長λ3のビデオ信号等の他の信号光は波長フィルタ86の箇所で反射される。反射光は第3の光導波路85と結合し、モジュール外部としての第2の光ファイバ82に導かれる。
【0047】
ところで波長フィルタ86は波長λ3の信号光だけでなく波長λ1の送信信号光も反射する。このため、発光素子73で発光した波長λ1の光の漏れ光が波長フィルタ86の方向に入射してきても、これが波長フィルタ86を透過して受信用受光素子88で受光されるおそれはない。
【0048】
このように本実施例の波長多重光通信モジュール71では、波長λ1の送信信号光を外部に送信し、波長λ2の信号光を外部から受信すると共に、波長λ3の信号光をそのままモジュール外部に導く機能を実現することができる。すなわち、波長多重光通信モジュール71は1.3μm帯の信号光を送信し、1.5μm帯の信号光を受信する機能だけでなく、1.55μm帯の信号光を分波してモジュール外部に導く機能を有しているので、高価な外付けのWDM(wavelength division multiplex:波長分割多重伝送方式)を使用して同様の機能を実現する場合と比べると、通信システムに必要な機能を非常に低コストで実現することができる。
【0049】
第2の実施例
【0050】
図5は本発明の第2の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。本実施例の波長多重光通信モジュール91で先の実施例の波長多重光通信モジュール71と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。本実施例の波長多重光通信モジュール91はモジュールを構成する各部の構造に特に変更はなく、ただ、第1の光ファイバ81から第1のポート78に波長λ2の信号光が入力され、第2の光ファイバ82から第2のポート79に波長λ3の信号光が入力される点が異なる。
【0051】
この第2の実施例の波長多重光通信モジュール91でも、発光素子73は波長λ1の光を出力する。この波長λ1の光は第1の光導波路74を導波して、方向性結合器84によって第1のポート78から第1の光ファイバ81に導かれる。
【0052】
一方、第1の光ファイバ81から第1のポート78に入射した波長λ2の信号光は、第1の光導波路74を導波して波長フィルタ86に到達し、これを透過して受信用受光素子88によって受光される。第2の光ファイバ82から第2のポート79に入射した波長λ3の信号光は、波長フィルタ86によって反射されて、第2の光導波路83に結合し、第1のポート78から第1の光ファイバ81に導かれることになる。この第2の実施例でも波長フィルタ86の存在によって、発光素子73から漏れ出した波長λ1の光が波長フィルタ86に到達してもこれを透過しない。したがって、この波長λ1の光が受信用受光素子88に入射することが防止される。
【0053】
第3の実施例
【0054】
図6は本発明の第3の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。この図6で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第3の実施例の波長多重光通信モジュール101の場合では、先の第1および第2の実施例の発光素子73の配置された位置にこの代わりとしてフォトダイオード等の受光素子102を配置している。
【0055】
第1のポート78には第1の光ファイバ81から先の実施例で説明した3つの互いに異なった波長λ1、λ2、λ3の信号光が入力される。このうち波長λ1の信号光は方向性結合器84によってそのパワーが第1の光導波路74に移行され、受光素子102で受光される。残りの波長λ2および波長λ3の信号光は、第2の光導波路83を導波して波長フィルタ86に到達する。波長フィルタ86には、波長λ1および波長λ3の光を反射し、波長λ2の光を透過する波長特性を有する誘電体多層膜が形成されている。このため、波長λ2の信号光は波長フィルタ86を透過して受信用受光素子88がこれを検出する。
【0056】
一方、波長λ3の信号光は波長フィルタ86で反射される。したがって、波長λ3の信号光は第3の光導波路85と結合し、第2の光ファイバ82に導かれることになる。
【0057】
第4の実施例
【0058】
図7は本発明の第4の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。この図7で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第4の実施例の波長多重光通信モジュール111は、第1の実施例の波長多重光通信モジュール71とその構成が実質的に同一であるが、第1の実施例における方向性結合器84と波長フィルタ86の設計を変更している。第4の実施例の方向性結合器84Aでは、先の実施例の波長λ1の信号光のパワーの半分が第1の光導波路74から第2の光導波路83に、あるいはその逆方向に移行するようになっている。また、波長フィルタ86aは波長λ2の光を反射し波長λ1の光を透過するような波長特性の誘電体多層膜が形成されている。この波長フィルタ86aも端面75に貼り付けられている。
【0059】
このような本実施例の波長多重光通信モジュール111では、発光素子73から出力された波長λ1の送信信号光が第1の光導波路74に結合し、方向性結合器84Aによってその半分のパワーが第2の光導波路83に移行することで第1の光ファイバ81に導かれる。第1の光ファイバ81から第1のポート78には波長λ1と波長λ2の信号光が入力されている。波長λ2の信号光は方向性結合器84Aを導波し、そのまま第2の光導波路83に導かれる。そして、波長フィルタ86aで反射され、第3の光導波路85に結合することで第2の光ファイバ82に導かれる。波長λ1の信号光の方は、方向性結合器84Aによってその半分のパワーが第1の光導波路74に移行し、残りは第2の光導波路83に導かれる。この波長λ1の信号光は波長フィルタ86aを透過して受信用受光素子88で受光される。
【0060】
このように第4の実施例の波長多重光通信モジュール111では、波長λ1の送信信号光を送受信することができ、波長λ2の信号光をそのまま外部に導く機能を有するモジュールを実現している。本実施例では方向性結合器84Aの分岐比を1対1に設定したが、これをこれ以外の比に設定することも自由である。分岐比を変更することで、送信と受信の光パワーの比率を最適化することが可能になる。
【0061】
第5の実施例
【0062】
図8は本発明の第5の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。この図8で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第5の実施例の波長多重光通信モジュール121では、発光素子73の後方にフォトダイオード等からなるモニタ用受光素子122を配置した構造となっている。モニタ用受光素子122は、発光素子73から後方に出力される光を受光して、送信信号光の光出力を監視するようになっている。したがって、モニタ用受光素子122の監視によって、波長λ1の送信信号光のパワーが安定して制御されることになる。
【0063】
図5に示した第2の実施例の波長多重光通信モジュール91および図7に示した第4の実施例の波長多重光通信モジュール111についてもモニタ用受光素子122を配置することで、同様の効果を得ることができる。
【0064】
第6の実施例
【0065】
図9は本発明の第6の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。この図9で図1あるいは図8と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第6の実施例の波長多重光通信モジュール131では、キャリア87Aに受信用受光素子88とモニタ用受光素子122がそれぞれ光導波路基板72の端面75と対向する位置に配置されている。ただし、波長フィルタ86bは、受信用受光素子88の後方の所定の領域を避ける形で端面75に貼り付けられている。これにより、受信用受光素子88とこれに対向する端面75の間には波長選択用の波長フィルタ86bが介在しているが、モニタ用受光素子122とこれに対向する端面75の間にはこの波長フィルタ86bは存在していない。なお、波長フィルタ86bは第1の実施例の波長フィルタ86とサイズ自体が異なるだけで、波長に対する特性はこれと全く同一である。
【0066】
第6の実施例の波長多重光通信モジュール131はこのような配置構造となっているので、光導波路基板72上に配置された発光素子73から後方に出力される光が波長フィルタ86bによって遮光されることなくモニタ用受光素子122で受光されることになる。このモニタ用受光素子122で監視制御される発光素子73から出力される波長λ1の送信信号光は、そのパワーが第2の光導波路83に移行して第1の光ファイバ81に導かれる。
【0067】
一方、第1の光ファイバ81から第1のポート78に入射した波長λ2とλ3の信号光は波長フィルタ86bに到達し、波長λ2の信号光のみがこれを透過して受信用受光素子88で受光される。波長λ3の信号光は、波長フィルタ86bで反射される。反射光は第3の光導波路85と結合し、モジュール外部としての第2の光ファイバ82に導かれることになる。これにより、光導波路基板72上の部品点数を特に増加させることなく発光素子73の出力制御が可能になる。
【0068】
第7の実施例
【0069】
図10は本発明の第7の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わしたものである。この図10で図1および図6と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。この第7の実施例の波長多重光通信モジュール141では、光導波路基板72上における発光素子73と対角線上の他端に対応する位置に受光素子102を配置している。受光素子102には一端を波長フィルタ86に接続した第3の光導波路85の他端が接続されている。この波長多重光通信モジュール141の場合には光導波路基板72に第1の光ファイバ81のみが接続されており、図1等に示した第2の光ファイバ82は接続されていない。
【0070】
このような第7の実施例の波長多重光通信モジュール141では、波長λ1の送信信号光をモジュール外部に第1の光ファイバ81で送信し、この第1の光ファイバ81から受信した波長λ2の信号光を受信用受光素子88で受光し、同じく第1の光ファイバ81から受信した波長λ3の信号光を受光素子102で受光することになる。
【0071】
なお、実施例では波長フィルタを光導波路基板の端面に貼り付けたが、各種の波長特性の波長フィルタを用意しておき、これらを選択的に貼り付けることで色々な種類の波長多重光通信モジュールを簡単に作製することができ、部品やパッケージの共通化を図ることができる。光導波路基板に実装する光学素子を変更することによっても同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、実施例では波長多重光通信モジュールを光導波路基板72に第1の光ファイバ81と第2の光ファイバ82の双方あるいは一方を取り付けたものとして説明したが、これらの光ファイバを除いた形で波長多重光通信モジュールを構成してもよいことは当然である。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、波長多重光通信モジュールに光ファイバを接続する場合、光導波路基板の前記した一方の端面側のみに第1および第2の光ファイバを配置するので、他方側には各種の部品を支障なく配置することができ、各種部品の実装密度を向上させることができる。すなわち、モジュールを配線基板に実装する際に、ファイバと他の電気部品との接触を防ぐためのスペースをモジュールの両側に設ける必要がない。このため、配線基板上への高密度実装が可能になる。
【0074】
また、この発明によれば、方向性結合器と波長フィルタを組み合わせて波長多重光通信モジュールを構成したので、モジュール全体をコンパクトな構造とすることができる。すなわち、従来と比べて2つまたは3つの波長の分岐や送受信を簡単な構造で実現することができる。また、本発明では光導波路基板に形成した溝に波長フィルタを挿入する必要がなく、基板の端面に波長フィルタを貼り付ける等の取り付けで済むので、モジュールの組立作業が容易であり、組立の自動化や量産化が可能になる。
【0076】
更に、この発明によれば、波長フィルタを光導波路基板の端面に貼り付けることで、各種の波長フィルタを選択的に使用していろいろな波長多重光通信モジュールを簡単に作製することができ、部品やパッケージの共通化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図2】本発明の第1の実施例における波長フィルタの断面図である。
【図3】図14に示した従来の波長分波素子を比較のために示した断面図である。
【図4】本実施例における波長フィルタと第2の光導波路および第3の光導波路の接続箇所を拡大して示した説明図である。
【図5】本発明の第2の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図6】本発明の第3の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図7】本発明の第4の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図8】本発明の第5の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図9】本発明の第6の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図10】本発明の第7の実施例における波長多重光通信モジュールの構成を表わした平面図である。
【図11】従来提案された波長多重光通信モジュールを表わした側面図である。
【図12】図11に示した波長多重光通信モジュールを表わした上面図である。
【図13】従来提案された他の波長多重光通信モジュールを表わした平面図である。
【図14】従来提案された更に他の波長多重光通信モジュールを表わした斜視図である。
【符号の説明】
71、91、101、111、121、131、141 波長多重光通信モジュール
72 光導波路基板
73 発光素子
74 第1の光導波路
83 第2の光導波路
84 方向性結合器
85 第3の光導波路
86、86a、86b 波長フィルタ
88 受信用受光素子
102 受光素子
122 モニタ用受光素子
Claims (8)
- 信号光の入出力端が一方の端面に備えられた光導波路基板と、
前記光導波路基板上に配置された発光素子と、
前記発光素子から出力される信号光を導波する第1の光導波路と、
前記光導波路基板の前記一方の端面と他方との端面とを結んで配置され、前記第1の光導波路から方向性結合器を介して前記信号光を移行させて前記一方の端面側へ導波すると共に、前記一方の端面から前記信号光と波長の異なる信号光を入力して前記他方の端面側へ導波する第2の光導波路と、
前記他方の端面に配置され、特定の波長の信号光を透過し、その他の波長の信号光を反射する波長フィルタと、
前記一方の端面と前記他方の端面とを結んで配置され、前記他方の端面において、前記波長フィルタで反射された前記その他の波長の信号光を、前記第2の光導波路端から光学的に結合するように配置された第3の光導波路と、
前記波長フィルタを介して前記他方の端面と対向して配置され、前記波長フィルタを透過した前記特定の波長の信号光を受光する受光素子と、
前記一方の端面において前記第2の光導波路と光学的に結合する第1の光ファイバと、
前記一方の端面において前記第3の光導波路と光学的に結合する第2の光ファイバと
を備えていることを特徴とする波長多重光通信モジュール。 - 前記波長フィルタは、光導波路基板の端面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1記載の波長多重光通信モジュール。
- 前記波長フィルタは、ガラス基板に誘電体多層膜が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の波長多重光通信モジュール。
- 前記発光素子から出力される信号光は、第1の波長の信号光であり、前記特定の波長の信号光は、第2の波長の信号光であり、前記その他の波長の信号光は、第3の波長の信号光であり、これらの信号光が互いに異なる波長であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の波長多重光通信モジュール。
- 前記発光素子から出力される信号光および前記特定の波長の信号光は、共に第1の波長の信号光であり、前記その他の波長の信号光は、第2の波長の信号光であり、これらの信号光が互いに異なる波長であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の波長多重光通信モジュール。
- 前記発光素子から前記第1の光導波路以外の方向に出力される光を受光するモニタ用受光素子を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の波長多重光通信モジュール。
- 前記モニタ用受光素子が前記光導波路基板上に配置されていることを特徴とする請求項6記載の波長多重光通信モジュール。
- 前記モニタ用受光素子は前記光導波路基板の前記他方の端面と間隔を置いて、前記光導波路基板上に配置されている前記発光素子と対向して配置されており、前記波長フィルタは、前記光導波路基板の前記他方の端面における前記発光素子と前記モニタ用受光素子の対向する位置を除いた位置に貼り付けられており、前記発光素子から前記第1の光導波路以外に出力される光が前記波長フィルタを介さず前記モニタ用受光素子で受光されることを特徴とする請求項6記載の波長多重光通信モジュール。
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