JP3680310B2 - 車両用前部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用前部構造に係り、特に、歩行者が衝突した場合に衝突エネルギを吸収する車両用前部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な車両用前部構造は、垂直方向に延びる縦壁部と、この縦壁部の上端から車体外側に連続して延びる外壁部とからなるフロントフェンダを備えている。
このような構造の車両に対して、歩行者が走行中の車両に衝突した場合、歩行者は、腰部を中心にして車両後方に回転し、その頭部がフロントフェンダの外壁部の上部に衝突した場合には、フロントフロントフェンダの縦壁部が潰れて衝突エネルギが吸収され、それにより歩行者の頭部の保護が行われていた。このとき、縦壁部により頭部保護のために必要な衝突時のエネルギ吸収量を確保するためには、縦壁部が或る程度の長さを有することが必要である。
【0003】
一方、近年、空力特性向上等の理由から車両前部の高さを低くすることが望まれている。このためには、フロントフェンダの縦壁部を短くする必要があるが、上述したように、フロントフェンダの縦壁部により一定量の衝突エネルギを吸収しなければならないため、単純に縦壁部を短くすることはできない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、従来は、この問題を解決するため、例えば、実開昭61-158571 号公報、特開平6-321136号公報等に種々の提案がなされている。以下、具体的に説明する。図1は、実開昭61-158571 号公報に示された車両用前部構造の正面から見た部分断面図である。この図1において、1は、車両用前部構造におけるフロントフェンダであり、このフロントフェンダ1は、垂直方向に延びる縦壁部2と、この縦壁部2の上端から車体外側に連続して延びる外壁部3を備えている。この縦壁部2の下端には、車幅方向内側に折り曲げて形成された取付部4が設けられ、この取付部4は、フードリッジレインフォース5に固定され、さらに、このフードリッジレインフォース5は、その車幅方向内側に設けられたフードリッジ6に取り付けられている。さらに、縦壁部2には第1屈曲部7とその下方の第2屈曲部8が車体前後方向に延びるように設けられている。
【0005】
このような車両用前部構造の外壁部3の上部に衝突した歩行者の頭部が当たった場合、縦壁部2は、第1屈曲部7と第2屈曲部8が存在することにより、鎖線9により示すようにS字状に変形し、縦壁部2が安定した状態で潰れ、それにより、頭部保護のために必要な衝突エネルギを吸収するようにしている。
この図1に示されたものにおいては、第1屈曲部7及び第2屈曲部8が脆弱部となるためフロントフェンダの剛性が過度に低下することになり、その結果、フロントフェンダがいたずら等により変形する可能性があり問題である。
【0006】
また、図2は、特開平7-285461号公報に示された車両用前部構造の正面から見た部分断面図である。この図2に示された車両用前部構造においては、フロントフェンダ10の一般面10Aにフード11との見切り部分(フロントフェンダの稜線部)10Bの近傍に見切り部分10Bよりも高い突出部12を設け、この突出部12に歩行者の頭部13が当たることにより、突出部12に作用する衝撃により、フロントフェンダ10の一般面10Aが図中鎖線により示されているように潰され、これにより衝突エネルギを吸収するようにしている。
この図2に示すものにおいても、突出部12がフロントフェンダ10の見切り部10B近傍の一般面10Aにのみ設けられているため、万一、歩行者の頭部13が他の剛性の大きな部分、例えば、見切り部又はフードのヒンジ部等に当たった場合、必要な衝突エネルギを吸収することが出来ず問題である。
【0007】
そこで、本発明は、従来の技術の問題点を解決するためになされたものであり、車両に歩行者が衝突した場合であっても適切に保護することが出来ると共にいたずら等により外力が作用しても変形することがない車両用前部構造を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、フードがこのフード後方のサイドエッジ部においてヒンジ部を介して開閉自在となっている車両用前部構造であって、フードのサイドエッジ部に下方に折れ曲がった端部が形成され、この端部の表面上に弾性体により形成されそれ自体により衝突エネルギを吸収する第1衝撃吸収部が取り付けられると共に端部の裏面にヒンジ部が取り付けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、歩行者が走行中の車両のフードのサイドエッジ部に衝突したとき、サイドエッジ部の端部の表面上に弾性体により形成された第1衝撃吸収部が取り付けられているので、この端部の裏面にヒンジ部が取り付けられていても、第1衝撃吸収部自体により必要な衝突エネルギを吸収することができ、歩行者を保護することができる。
【0009】
本発明においては、好ましくは、弾性体により形成された第1衝撃吸収部の表面が、この第1衝撃吸収部が取り付けられたフードのサイドエッジ部の端部以外の他の表面と面一に形成されている。
【0010】
本発明は、好ましくは、さらに、フロントフェンダに弾性体により形成された第2衝撃吸収部を設け、この第2衝撃吸収部がフロントフェンダの稜線部を構成し、第1衝撃吸収部と第2衝撃吸収部は隣接して設けられており、第1衝撃吸収部と第2衝撃吸収部の厚みがほぼ同一である。
このように構成された本発明によれば、歩行者が走行中にフロントフェンダの稜線部、フードのサイドエッジ部に衝突したとき、隣接してそれらに設けられた弾性体の第1及び第2の衝撃吸収部により必要な衝突エネルギが吸収されるので、歩行者を保護することができる。さらに、フロントフェンダ及びフードにそれぞれ設けられた第1及び第2の衝撃吸収部の弾性体の厚みがほぼ同一であるため、フロントフェンダ及びフードにおける衝撃吸収特性がほぼ同一となる。このため、歩行者がフロントフェンダとフードの境界付近に当たったときには、フロントフェンダ又はフードの何れかに当たることになるが、どちらに当たっても同様の衝撃吸収特性となり、保護の均一化が図ることが出来る。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
先ず、図3及び図4により本発明の第1実施形態を説明する。この実施形態において、20は、車両用前部構造であり、この車両用前部構造20は、車両前部の両側に設けられたフロントフェンダ22と、エンジンルームの上方を覆い開閉自在にも設けられたフード24とを備えている。図4に示すように、フロントフェンダ22は、水平方向に延びる水平壁部26と、この水平壁部26の外側端から車体下方に連続して延びる外壁部28を備えている。水平壁部26の内側端には、取付部30が設けられ、この取付部30は、フードリッジレインフォース32に固定され、さらに、このフードリッジレインフォース32は、その車幅方向内側に設けられたフードリッジ34に取り付けられている。
【0013】
本実施形態においては、さらに、フロントフェンダ22の水平壁部26の上面に車体前後方向にわたって延びるゴム又は樹脂等により作られた弾性体36が固定して取り付けられており、弾性体36がフロントフェンダ22の稜線部を構成するようになっている。この弾性体36は、歩行者が走行中の車両に衝突してその頭部がフロントフェンダ22に当たった場合、歩行者の頭部保護に必要な衝突エネルギを充分に吸収できるように形成されている。
また、弾性体36の内側端部36aとフード24の外側端部24aとは、上方から見たとき一部がオーバラップするように配置されている。
【0014】
次に第1実施形態の作用を説明する。先ず、歩行者が、走行中の車両に衝突してその頭部がフロントフロントフェンダ22の上部に当たった場合には、この弾性体36により頭部保護に必要な衝突エネルギが吸収され、歩行者の保護が達成される。また、歩行者の頭部がフード24に当たった場合には、フード24の外側端部24aが弾性体36の内側端部36aとオーバラップするように配置されているため、衝突による外力は、フード24から弾性体36に伝わり、これにより、弾性体36により頭部保護に必要な衝突エネルギが吸収され、歩行者の保護が達成される。
また、フロントフェンダ22の稜線部を弾性体36として、この弾性体36を水平壁部26の上面に固定するようにしているので、取り付け作業が簡易となる。
更に、第1実施形態においては、衝突時のエネルギ吸収を弾性体36で行っているため、水平壁部26と外壁部28によりフロントフェンダ22に必要な剛性を確保することができ、剛性低下を防止することができる。この結果、いたずら等により外力が作用してもフロントフェンダ22が変形することはない。
【0015】
次に、図5乃至図7により本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態において、40は、車両用前部構造であり、この車両用前部構造40は、車両前部の両側に設けられたフロントフェンダ42と、エンジンルームの上方を覆いフードヒンジ44を介して開閉自在にも設けられたフード46とを備えている。
図6に示すように、フロントフェンダ42は、水平方向に延びる水平壁部48と、この水平壁部48の外側端から車体下方に連続して延びる外壁部50と、水平壁部48の内側端から車体下方に垂直に延びる内壁部52を備えている。内壁部52の一部はフードリッジ54に固定され、さらに、内壁部52のフードリッジ54との固定個所より下方にはV字状の脆弱部56が形成されている。さらに、フロントフェンダ42の水平壁部48の上面に車体前後方向にわたって延びるゴム又は樹脂等により作られた弾性体58が固定して取り付けられており、弾性体58がフロントフェンダ42の稜線部を構成するようになっている。この弾性体58は、歩行者が走行中の車両に衝突してその頭部がフロントフェンダ42に当たった場合、歩行者の頭部保護に必要な衝突エネルギを充分に吸収できるように形成されている。
【0016】
フード46は、図示されているように、後方のサイドエッジ部46aにおいて、フードヒンジ44を介して開閉自在となっている。フード46のサイドエッジ部46aには、フードヒンジ44の上方に位置するように弾性体60が取り付けられている。この弾性体60は、歩行者が走行中の車両に衝突してその頭部が当たった場合、歩行者の頭部保護に必要な衝突エネルギを充分に吸収できるように形成されている。このため、弾性体60は、フロントフェンダ42に取り付けられた弾性体58とほぼ同じ厚みを有し、さらに、両弾性体58,60 の上方の表面がほぼ面一となるように配置されている。ここで、図6及び図7に示すように、フード46は、弾性体60を取り付けるために、その端部40bが下方に折れ曲がって形成されている。フード46の端部40bにはフードヒンジ44の回動メンバ44aが取り付けられ、上述したフードリッジ54にはフードヒンジ44の固定メンバ44bが取り付けられ、これらの回動メンバ44a及び固定メンバ44bは共に軸部44cに取り付けられている。このようにして、フード46がフードヒンジ44の軸部44cを中心として開閉できるようになっている。
【0017】
次に第2実施形態の作用を説明する。先ず、第1実施形態と同様に、歩行者が、走行中の車両のフロントフロントフェンダ42の上部に衝突した場合、歩行者の頭部がフロントフェンダ42の弾性体58に当たるが、この弾性体58により頭部保護に必要な衝突エネルギが吸収され、歩行者の保護が達成される。また、フロントフェンダ42の稜線部を弾性体58として、この弾性体58を水平壁部48の上面に固定するようにしているので、取り付け作業が簡易となる。更に、衝突時のエネルギ吸収を弾性体58で行っているため、水平壁部48と外壁部50によりフロントフェンダ42に必要な剛性を確保することができ、剛性低下を防止することができる。この結果、いたずら等により外力が作用してもフロントフェンダ42が変形することはない。
【0018】
更に、第2実施形態においては、歩行者が、走行中の車両のフード46のエッジ部46a即ちフードヒンジ44が下方に位置する部分に衝突した場合には、従来技術であれば、フード46のフードヒンジ44が下方に位置する部分は、本来的に剛性が大であるため、必要な衝突エネルギを吸収することはできなかったが、本実施形態によれば、その部分に弾性体60が配置されているため、この弾性体60により頭部保護に必要な衝突エネルギが吸収され、歩行者の保護が達成される。
更に、フロントフェンダ42には、その内壁部52のフードリッジ54との固定個所より下方にはV字状の脆弱部56が形成されているため、フード46に歩行者の頭部が衝突して下方に変形した場合、衝突荷重がフード46からフードヒンジ44及びフードリッジ54を介して脆弱部56に伝達され、脆弱部56が潰れることにより、充分な衝突エネルギを吸収することができる。
【0019】
この第2実施形態においては、フロントフェンダ42とフード46の両方に弾性体58,60 を設けるようにしているが、フード46のみに弾性体60を設けるようにしてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両用前部構造によれば、車両に歩行者が衝突した場合であっても適切に保護することが出来ると共にいたずら等により外力が作用しても変形することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の車両用前部構造を示す車両前方から見た部分断面図
【図2】 他の従来の車両用前部構造を示す車両前方から見た部分断面図
【図3】 本発明の車両用前部構造の第1実施形態を示す斜視図
【図4】 図3のIV−IV線に沿って見た部分断面図
【図5】 本発明の車両用前部構造の第2実施形態を示す斜視図
【図6】 図5のVI−VI線に沿って見た部分断面図
【図7】 図5のVII −VII 線に沿って見た部分断面図
【符号の説明】
20,40 車両用前部構造
22,42 フロントフェンダ
24,46 フード
26,48 水平壁部
28,50 外壁部
36,58,60 弾性体
44 フードヒンジ
52 内壁部
56 脆弱部
Claims (3)
- フードがこのフード後方のサイドエッジ部においてヒンジ部を介して開閉自在となっている車両用前部構造であって、上記フードのサイドエッジ部に下方に折れ曲がった端部が形成され、この端部の表面上に弾性体により形成されそれ自体により衝突エネルギを吸収する第1衝撃吸収部が取り付けられると共に上記端部の裏面に上記ヒンジ部が取り付けられていることを特徴とする車両用前部構造。
- 上記弾性体により形成された第1衝撃吸収部の表面が、この第1衝撃吸収部が取り付けられた上記フードのサイドエッジ部の端部以外の他の表面と面一に形成されている請求項1又は請求項2記載の車両用前部構造。
- さらに、フロントフェンダに弾性体により形成された第2衝撃吸収部を設け、この第2衝撃吸収部が上記フロントフェンダの稜線部を構成し、上記第1衝撃吸収部と第2衝撃吸収部は隣接して設けられており、上記第1衝撃吸収部と上記第2衝撃吸収部の厚みがほぼ同一である請求項1又は請求項2に記載の車両用前部構造。
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