JP3679861B2 - X線透視診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステレオ方式により被写体のX線画像を立体視するX線透視診断装置に係わり、特に、X線透視画像の輝度を自動的に調節する手段(輝度自動調整(Automatic Brightness Control)手段)を備えたX線透視診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人は、両眼で見たときの視差(両眼視差)によって物体を立体視することができる。そこで、左右それぞれの眼で2方向からの画像を見れば、立体に見えることはよく知られており、近年では、このような技術を用いた撮影方式(両眼立体視方式、ステレオ方式)で撮影されたステレオ写真集等も発売され、話題を集めている。
【0003】
医用画像でも上述したステレオ方式を用いることにより、被写体(被検体)の立体視を行なうことができる。特に、X線透視診断装置においては、左右2個のX線焦点からそれぞれX線を曝射して2枚のX線透視画像を撮影することにより、ステレオ画像を得ている。
【0004】
図32は、ステレオ方式により被写体のステレオ画像を撮影するX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図である。図32によれば、X線制御器100、高圧発生器101の制御に応じてX線管102の左右2個のX線焦点102L,102R(観察者側から見て当該観察者の左眼に対応する焦点を左側焦点、右眼に対応する焦点を右側焦点とする)から被写体に向けて交互にX線が曝射され被写体を透過したX線(左側(L側)X線、右側(R側)X線)は、それぞれイメージインテンシファイヤ(I.I.)103及びTVカメラ104によりX線透視画像(L側画像、R側画像)として収集される。
【0005】
収集されたL側画像及びR側画像は、カメラコントロールユニット(CCU)105を介して所要の画像処理が施された後、プロセッサ106の制御の下で一つのモニタ107に交互に表示される。
【0006】
このとき、観察者(オペレータ)Sは、液晶シャッタ眼鏡108等を通じてモニタ画面を見ており、プロセッサ106の制御の下、左眼にはL側画像が、右眼にはR側画像だけが見えるようにシャッタを切り換えることにより、観察者は、L側画像及びR側画像を1つの立体像に融合して認識することができる。
【0007】
一方、一般のX線透視診断装置においては、X線透視画像の輝度を一定に保つために、フィードバック制御により自動的にX線管の管電圧、管電流等の条件を調整する方法(Automatic Brightness Control、以下ABCという)を用いている。ABCを行なう方式としては、大別して光学系のフォトピックアップからの信号によるABCと、TVカメラのビデオ信号によるABCとがあるが、いずれの方式でも、予めX線透視画像内の所定位置にある領域(採光野という)を定めており、採光野の画像の平均輝度が一定となるように、X線条件をフィードバック制御するようになっている。この採光野の設定位置は、被写体を透過せずにスルーしてくるX線の影響を低減するためにある程度限定され、通常は、図33に示すように、透視画像の略中心に固定されている。
【0008】
図34(A)は、光学系のフォトピックアップからの信号によるABCを用いたX線透視診断装置の一例を示すブロック図である。図34(A)によれば、X線管のX線管球110から順次曝射され、被検体を透過したX線は、I.I.111及び光学系112を介して光信号に変換された後、TVカメラ113、カメラコントロール(CCU)114を介して所要の画像処理が施されてTVモニタ115に表示される。また、I.I.111及び光学系112を介して変換された光信号の内、採光野に対応する光信号は、光学系112内部に設けられた図示しないハーフミラー等のフォトピックアップにより取り出され、図示しない光電変換部等を介して電気信号として取り出されてABC制御回路116に送られる。ABC制御回路116では、このようにして曝射毎に順次送られる電気信号の大きさが常に一定になるように、X線曝射制御装置117を介して高圧発生器118からX線管球110に送られる管電圧(kV)、管電流(mA)の値を制御して、X線透視画像の輝度を自動調整している。
【0009】
また、図34(B)は、TVカメラのビデオ信号によるABCを用いたX線透視診断装置の一例を示すブロック図である。図34(B)では、光学系112から信号を取り出すのではなく、TVカメラ113からカメラコントロール114Aに送られる透視画像信号(ビデオ信号)の内、採光野に対応するビデオ信号を取り出してABC制御回路116Aに送るように構成されており、それ以外の構成・作用は、光学系のフォトピックアップからの信号によるABC方式と略同様である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、X線透視診断装置において被写体のステレオ画像を撮影するときにABCを行なう場合(図35参照)、図36に示すように、採光野は透視画像の略中央に固定されている一方、被写体における注目する(立体視したい)部位(診断対象部位)の厚さや位置は、左右の画像(L側画像、R側画像)で異なり、しかも採光野と一致していないため、対象部位の輝度がL側画像、R側画像で異なってしまい、立体視しづらいという問題が生じていた。
【0011】
さらに、通常のX線透視におけるABCでは、被写体を透過せずにスルーしてくるX線(直接X線)の影響を低減するため、上述したように採光野は画像中心に固定されているが、ステレオ方式によるX線透視では、左右2個の焦点からX線透視が行なわれるため、図37に示すように、採光野に直接X線が入射される場合が多くなる。すなわち、通常のX線透視では、X線焦点と被写体の中心とI.I.の検出面の中心とは同一軸上にあるため、当該I.I.の検出面の中心部分に位置する採光野に入射するX線の大部分は被写体を透過したX線であるが、ステレオ方式によるX線透視では、左右のX線焦点はそれぞれ、被写体の中心とI.I.の検出面の中心とを結ぶ軸上からずれているため、当該採光野に直接入射するX線の割合が多くなる。ABCでは、採光野に入射するX線に基づく電気信号(又はビデオ信号)に応じて曝射X線に対するフィードバック制御が施されることから、上述した直接X線量が増加してしまうと、正確なフィードバック制御、すなわち輝度調整が行なわれず、ステレオ画像の画質が悪化するという問題が生じていた。
【0012】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ステレオ透視を行なう際においても正確な輝度調整を可能にし、画質が良く、観察者が視認しやすいステレオ透視画像を作成、表示するX線透視診断装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明では、従来、予め画像中央に定められた輝度調整用の採光野領域(信号採取領域)を、観察者の左眼用の画像(L側画像)及び観察者の右眼用の画像(R側画像)においてそれぞれ個別に例えば両画像の対応する領域に設定し、この新たに設定された採光野領域の画像信号に基づいて、X線曝射条件の制御又は階調変換特性カーブの変化により、当該L側画像及びR側画像の輝度調整を行うようにした。このように構成すれば、L側画像及びR側画像において予め設定された採光野領域における画像が異なる場合でも、両画像における互いに対応する画像領域に新たに設定された採光野領域の画像信号に基づいて輝度調整が行われるため、L側画像及びR側画像において略等しい輝度調整が施される。
【0014】
また、採光野を個別に設定した上で、例えば当該採光野領域を、L側画像及びR側画像において所定の閾値を越えない(すなわち、それだけX線入射量が少ない)画素値を有する画素領域に設定した。このように構成すれば、直接X線の入射が他の領域より少ない画素領域に新たに採光野を設定することができるため、直接X線の影響を最小限にして輝度調整を行なうことができる。
【0015】
すなわち、本発明のX線透視診断装置によれば、2つの異なるX線焦点から被写体に対してX線を曝射して観察者の左眼用の画像及び右眼用の画像を撮影する画像撮影手段と、前記左眼用画像の輝度及び前記右眼用画像の輝度を調整する輝度調整手段とを備え、輝度調整された左眼用画像及び右眼用画像に基づいて前記被写体の診断対象部位を立体的に表示するX線透視診断装置において、前記輝度調整手段は、前記被写体の左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を前記輝度調整用の信号採取領域としてそれぞれ個別に設定する設定手段と、設定された左眼用画像の信号採取領域及び右眼用画像の信号採取領域の内の少なくとも一方の領域内の画像信号に応じて前記2つのX線焦点から曝射されるX線の曝射条件を制御する曝射条件制御手段とを備えている。
【0016】
特に、前記曝射条件制御手段は、前記信号採取領域内の全ての画素の画素値の積算値を計算する積算値計算手段と、計算された積算値と予め定められた基準値とを比較して前記X線の曝射条件を制御する制御手段とを備えている。
【0018】
また、本発明の好適な実施形態として、前記画像撮影手段は、前記2つのX線焦点を有するX線管と、このX線管の当該2つのX線焦点からそれぞれ曝射され前記被写体を透過したX線をそれぞれ検出する検出器とを有し、この検出器により検出された信号に基づいて前記左眼用画像及び前記右眼用画像を作成する手段であり、前記設定手段は、前記被写体,前記X線管の各X線焦点,及び前記検出器間相互の位置関係に基づいて前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有している。
【0019】
さらに、本発明の好適な実施形態として、前記設定手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像間の特徴量により前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有している。
【0020】
一方、本発明のX線透視診断装置によれば、2つの異なるX線焦点から被写体に対してX線を曝射して観察者の左眼用の画像及び右眼用の画像を撮影する画像撮影手段と、前記左眼用画像の輝度及び前記右眼用画像の輝度を調整する輝度調整手段とを備え、輝度調整された左眼用画像及び右眼用画像に基づいて前記被写体の診断対象部位を立体的に表示するX線透視診断装置において、前記輝度調整手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像の内の少なくとも一方の画像内に予め定められた前記輝度調整用の第1の信号採取領域の画像信号に応じて前記2つのX線焦点から曝射されるX線の曝射条件を制御する曝射制御手段と、前記被写体の左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を前記輝度調整用の第2の信号採取領域としてそれぞれ個別に設定する設定手段と、設定された左眼用画像の第2の信号採取領域及び右眼用画像の第2の信号採取領域の画像信号の輝度を画像処理により略等しく設定する画像処理手段とを備えている。
【0021】
特に、前記画像処理手段は、前記左眼用画像における第2の信号採取領域内及び前記右眼用画像における第2の画像信号採取領域内の全ての画素の画素値の積算値をそれぞれ計算する積算値計算手段と、計算された左眼用画像における第2の信号採取領域内の積算値と右眼用画像における第2の信号採取領域内の積算値との比を計算する計算手段と、この計算手段により計算された比の値に応じて前記左眼用画像及び右眼用画像の内の少なくとも一方に対して施す階調変換特性を変化させる手段とを備えている。
【0023】
本発明の好適な実施形態として、前記画像撮影手段は、前記2つのX線焦点を有するX線管と、このX線管の当該2つのX線焦点からそれぞれ曝射され前記被写体を透過したX線をそれぞれ検出する検出器とを有し、この検出器により検出された信号に基づいて前記左眼用画像及び前記右眼用画像を作成する手段であり、前記設定手段は、前記被写体,前記X線管の各X線焦点,及び前記検出器間相互の位置関係に基づいて前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有している。
【0024】
また、本発明の好適な実施形態として、前記設定手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像間の特徴量により前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有している。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明のX線透視診断装置に係わる実施形態を図面を参照して説明する。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態におけるX線透視診断装置の概略構成を図1に示す。図1によれば、X線透視診断装置1は、寝台Bに載置された被写体である患者Pに対して異なる2方向からX線を曝射して当該患者PのX線透視画像を撮影するX線透視画像撮影部2と、X線透視画像撮影部2により撮影された異なる2方向からのペアのX線透視画像に基づいて観察者Sに対してステレオ画像を見せるステレオ画像表示部3と、X線透視画像撮影部2により撮影されたX線透視画像信号(ビデオ信号)に基づいて曝射X線を制御するABC制御回路4とを備えている。
【0027】
X線透視画像撮影部2は、異なる位置に設けられた2個のX線焦点を有し当該2個のX線焦点から交互にX線を曝射するX線管10と、このX線管10から曝射され、患者Pを透過したX線をX線検出面により検出して光学像に変換するイメージインテンシファイヤ(I.I.)11とを備えている。
【0028】
異なる位置の2個のX線焦点は、観察者Sの視線方向前方に位置するTVモニタの表示画面を注視点とした際の当該観察者Sの輻輳角(両眼視線の交角)に対応するように、互いのX線焦点を結ぶ直線がI.I.11の中心線とX線管10の中心とを結ぶ軸(中心軸E)と直交し、且つ当該中心軸Eから等距離に配置されている。また、2つのX線焦点間の距離は、立体像を再現する位置に応じて定められる。
【0029】
なお、観察者Sの左眼用の画像(L側X線透視画像)を撮影するためのX線焦点(観察者Sの左眼に対応するX線焦点)を左側X線焦点10Lとし、当該観察者Sの右眼用の画像(R側X線透視画像)を撮影するためのX線焦点(観察者Sの右眼に対応するX線焦点)を右側X線焦点10Rとする。また、図1に示すように、I.I.検出面から見て中心軸Eに対して左側X線焦点10Lに向かう水平方向を左方向、中心軸Eに対して右側X線焦点10Rに向かう水平方向を右方向とする。
【0030】
X線管10には、当該X線管10に管電圧、管電流を供給してX線を曝射制御する高電圧発生部15と、この高電圧発生部15が供給する管電圧及び管電流の値を制御するX線制御部16が接続されている。
【0031】
X線管10とI.I.11とは、図示しない支持アームによりその相対位置を保ったまま支持され、患者Pを挟んで対向配置されている。
【0032】
そして、X線透視撮影部2は、I.I.11により得られた光学像を所定の大きさの光学像に変換する光学系20と、光学系20により変換された所定の大きさの光学像をアナログ画像信号に変換するTVカメラ21と、TVカメラ21により得られたアナログ画像信号に対し、例えばシェーディング補正等の各種補正を行なうCCU(カメラコントロールユニット)22とを備えている。
【0033】
ステレオ画像表示部3は、CCU22により補正されたアナログ画像信号をディジタル画像信号に変換するA/D変換器25と、このA/D変換器25により変換されたディジタル画像信号の内、左側のX線焦点10Lから曝射されたX線に基づいて得られたディジタル画像信号(L)を保持する画像メモリ(L)26aと、右側のX線焦点10Rから曝射されたX線に基づいて得られたディジタル画像信号(R)を保持する画像メモリ(R)26bと、モニタの特性や診断部位等に応じて予め定められた階調変換データ(γ曲線データ)をルックアップテーブル等に階調変換テーブル(L)として保持し、この階調変換テーブル(L)を参照して画像メモリ(L)26aに保持されたディジタル画像信号(L)に対して階調変換処理を施す階調変換部(L)27aと、モニタの特性や診断部位等に応じて予め定められた階調変換データ(γ曲線データ)をルックアップテーブル等に階調変換テーブル(R)として保持し、この階調変換テーブル(R)を参照して画像メモリ(R)26bに保持されたディジタル画像信号(R)に対して階調変換処理を施す階調変換部(R)27bとを有している。
【0034】
そして、ステレオ画像表示部3は、画像出力切換用の切換部28,D/A変換器29,透視画像表示用のTVモニタ30,このTVモニタ30の表示画面前面に置かれた例えば液晶の偏光フィルタ31,切換部28の切換及び偏光フィルタ31の切換を制御する切換制御部32,及び例えば観察者Sが掛けて用いる偏光メガネ33を有している。
【0035】
切換部28は、切換制御部32の制御に応じて、階調変換部(L)27aにより階調変換されたディジタル画像信号(L)及び階調変換部(R)27bにより階調変換されたディジタル画像信号(R)を交互に切換ながらD/A変換器29に送るようになっている。D/A変換器29は、交互に送られるディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)をそれぞれアナログ画像信号(L)及びアナログ画像信号(R)に変換してTVモニタ30に送るようになっている。したがって、TVモニタ30には、L側X線透視画像(L側画像)及びR側X線透視画像(R側画像)が交互に表示される。
【0036】
このとき、切換制御部32は、切換部28の画像出力切換に応じて(同期させて)偏光フィルタ31を切り換えているため、TVモニタ30の画面を偏光メガネ33を通じて見ている観察者Sには、その左眼にはL側画像が、右眼にはR側画像だけが見えることになり、その結果立体視ができる。なお、通常のTVモニタ30の表示スピードは「30フレーム/秒」であり、この表示スピードをそのまま適用すると上述した切り換え表示方式では片眼あたり「15フレーム/秒」となり、ちらつき(フリッカ)が現れる恐れがあるが、本実施形態の場合では、フリッカを防止するため表示スピードを60フレーム/秒(片眼あたり30フレーム/秒)としている。したがって、切換部28及び偏光フィルタ31の切換も60フレーム/秒の高速で行なわれている。
【0037】
一方、ABC制御回路4は、図1にブロック構成で示した機能を行なうようになっており、これらの機能は、制御用ソフトウエアやデータ保持用のメモリ、画像データ記憶用の画像メモリ、CPU等を備えたコンピュータ回路で具体化される。
【0038】
以下、ABC制御回路4の各機能ブロックについて、図1を参照して説明する。
【0039】
左右画像ズレ量計算部35は、各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係からL側画像及びR側画像間のズレ量dを計算するものであり、採光野設定部(L)36aは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及び左右画像ズレ量計算部35から送られたズレ量dに基づいて採光野として予め定められたアドレス領域(当該ディジタル画像信号(L)の略中央の矩形領域)を移動させて新たな採光野を設定するものであり、同様に採光野設定部(R)36bは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(R)及び左右画像ズレ量計算部35から送られたズレ量dに基づいて採光野として予め定められたアドレス領域(当該ディジタル画像信号(R)の略中央の矩形領域)を移動させて新たな採光野を設定するものである。
【0040】
そして、採光野積分部(L)37aは、採光野設定部(L)36aで設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値(平均値でもよい)を演算してX線制御部16に送るものであり、採光野積分部(R)37bは、採光野設定部(R)36bで設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値(平均値でもよい)を演算してX線制御部16に送るものである。
【0041】
そして、X線制御部16は、ABC制御回路4の採光野積分部(L)37a及び採光野積分部(R)37bにより送られた積分値が設定値に近付くように、高電圧発生部15が供給する管電圧及び管電流の値を制御するようになっている。次に本構成のX線透視診断装置1の全体動作について、特にABC制御回路4の処理を中心に説明する。
【0042】
患者Pが載置された寝台Bを移動させて、患者Pの診断対象部位(観察領域)をI.I.11検出面の中心軸上に位置させる。そして、X線制御部16の制御の下で高電圧発生部15を介して供給された管電圧、管電流に応じてX線管10の左右2個のX線焦点10L,10Rから交互にX線が曝射される。曝射されたX線は、患者Pの診断対象部位を含む領域を透過し、この透過X線は、I.I.11、光学系20、TVカメラ21、及びCCU22を介して各種補正が施されたアナログ画像信号に変換され、さらにA/D変換器25によりディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に変換される。
【0043】
変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)は、上述したステレオ画像表示部3の各処理により、L側画像及びR側画像としてTVモニタ30に交互に表示され、その結果、観察者Sは、診断対象部位を含む画像を立体視することができる。
【0044】
一方、ABC制御回路4を構成するコンピュータ回路は、図2に示す処理を行なっている。すなわち、ABC制御回路4は、図3に示す各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係データ(X線焦点10L,10Rから患者P(寝台B)までの距離(a)、患者P(寝台B)からI.I.11(その検出面)までの距離(b)、左右X線焦点10L,10R間の距離(c)に基づいて、次式に示す比例演算により、L側画像における診断対象部位の画像及びR側画像における診断対象部位の画像間のズレ量(以下、簡単にL側画像及びR側画像間のズレ量という)dを計算する(ステップS1)。
【0045】
【数1】
a:c=b:d ……(1)
∴d=bc/a ……(2)
【0046】
続いて、ABC制御回路4は、ステップS1の処理により求められたL側画像及びR側画像間のズレ量dをメモリに保持し、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)を画像メモリに保持する(ステップS2)。そして、ABC制御回路4は、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に採光野として予め定められた画像中央の矩形アドレス領域を、ディジタル画像信号(L)の場合は、画像中心に対して右方向へd/2に対応する画素分、ディジタル画像信号(R)の場合は画像中心に対して左方向へd/2に対応する画素分だけそれぞれ移動させて、採光野として新たな矩形アドレス領域を設定する(ステップS3)。すなわち、図4に示すように、L側画像及びR側画像間のズレ量がdであれば、各L側画像及びR側画像のズレ量はそれぞれd/2であるから、各画像において画像中央(I.I.11の中央)に位置させた診断対象部位はd/2だけ互いに反対の方向(L側→右方向,R側→左方向)へ移動している。したがって、その移動量及び移動方向に合わせて採光野を移動させることにより、L側画像及びR側画像において、当該採光野を診断対象部位が表示された画像位置に対応させることができる。
【0047】
そして、ABC制御回路4は、ディジタル画像信号(L)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を演算し、且つディジタル画像信号(R)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を計算する(ステップS4)。次いで、それぞれの計算結果(L側採光野積分値,R側採光野積分値)をX線制御部16に送り(ステップS5)、処理を終了する。
【0048】
X線制御部16では、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整され、且つ送られたR側画像の積分値が設定値に近付くように、R側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整される。
【0049】
ここで、ABC制御回路4のL側採光野積分値,R側採光野積分値及びX線制御タイミング,A/D変換器25により変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の出力タイミング(画像収集タイミング),及びL側画像とR側画像の表示タイミングを表すタイムチャートを図5に示す。図5に示すように、L側採光野積分値に応じてL側X線が制御され、R側採光野積分値に応じてR側X線が制御されてL側画像及びR側画像が得られている。
【0050】
このとき、L側画像及びR側画像における採光野領域は、被写体の診断対象部位に対応する領域となっているため、L側画像及びR側画像共に同一の輝度調整が施され、得られたステレオ画像も、観察者Sにとって非常に視認しやすいものとなる。
【0051】
しかも、対象部位を含む新たな採光野を設定するための画像間のズレ量dは、難解な処理等を必要とせず、各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係に基づく(1)及び(2)式による比例演算により非常に容易に求めることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係データから計算されたL側画像及びR側画像間のズレ量dに基づいて、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)毎に新たな採光野を設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばL側画像及びR側画像間のズレ量dに基づいてどちらか一方の画像信号(例えばディジタル画像信号(L))に新たな採光野を設定し、このディジタル画像信号(L)における採光野領域の画像信号の積分値のみを用いてL側X線及びR側X線両方の曝射制御を行ってもよい。
【0053】
上述した変形例の構成を図6に示す。図6に示すX線透視診断装置1Aでは、ABC制御回路4Aの機能ブロックが図1と異なり(採光野設定部及び採光野積分部はL側のみ(採光野設定部36a及び採光野積分部37a)となっている)、X線制御部16A及び高電圧発生部15Aの処理も図1と異なっている。
【0054】
すなわち、X線制御部16Aでは、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15Aを介して調整されるとともに、R側X線の管電圧及び管電流の値は、L側X線の管電圧及び管電流と同一となるように高電圧発生部15Aを介して調整される。
【0055】
以上述べたように、本変形例では、L側及びR側のどちらか一方の画像信号において新たに設定された採光野の積分値を用いてL側R側両方のX線曝射制御を行っているが、実際に採光野を設定されていない側の曝射制御による輝度調整も、L側及びR側X線の両方で個別に曝射制御を行った場合と比べて遜色ない効果を維持でき、しかも第1実施形態と比べてABC制御回路で行う処理が簡素化されるという新たな効果が得られる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態におけるX線透視診断装置の概略構成を図7に示す。図7に示すX線透視診断装置1Bによれば、ABC制御回路4Bの左右画像ズレ量計算部40は、当該左右画像のズレ量を、A/D変換器25によりA/D変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に基づいて、当該画像信号の特徴量、例えば相関関数により求めるものである。なお、その他のABC制御回路4Bの残りの機能及び透視診断装置1Bのその他の構成要素は第1実施形態(図1)と略同等であり、その説明は省略する。
【0057】
図8は、左右画像ズレ量計算部40で行われる処理を概念的に説明する図である。図8(a)は、L側画像及びR側画像に対して共通の例えば水平方向のラインH1 を設定した状態を示す図であり、図8(b)は、ラインH1 上の各画素(画像中心をh0 とし、ラインH1 における画素範囲を−h1 〜+h1 とする)の濃度値のプロファイルをL側画像(L側画像のプロファイルをPL )及びR側画像(R側画像のプロファイルをPR )についてそれぞれ示す図である。また、図8(c)は、ラインH1上(範囲−h1 〜+h1 )におけるプロファイルPL 及びプロファイルPR の正規化された相関関数を示すグラフである。
【0058】
図8(c)によれば、各プロファイルPL 及びプロファイルPR において、最も相関が強く類似した特徴量を有する画素位置と画像中心とのズレ量d1 が示されている。つまり、L側画像及びR側画像において、中心からズレ量d1 だけ移動した位置は、当該L側画像及びR側画像における被写体の略対応する部位を表している。
【0059】
したがって、L側画像の採光野を画像中心から−h1 方向へ当該ズレ量d1 の1/2分、R側画像の採光野を画像中心から+h1 方向へ当該ズレ量d1 の1/2分それぞれ移動させれば、L側画像及びR側画像における被写体の略対応する部位に採光野を設定することができる。
【0060】
上述した左右画像ズレ量計算部40の機能を表すブロック図を図9に示す。
【0061】
ラインメモリ部(L)41aは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)の内、例えば水平方向における所定位置のライン(例えば水平方向のラインH1 )の画像信号をサンプリングして保持するものであり、また、ラインメモリ部(R)41bは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(R)の内、前記L側のラインと同一位置のラインH1 の画像信号をサンプリングして保持するものである。
【0062】
相関関数演算部42は、ラインメモリ部(L)41a及びラインメモリ部(R)41bによりそれぞれサンプリングされた所定のラインの画像信号(当該ライン上の各画素の濃度値)のプロファイルPL 及びプロファイルPR に基づいて、当該プロファイルPL 及びプロファイルPR の正規化された相関関数Cを演算するものである。
【0063】
ズレ量計算部43は、相関関数演算部42により演算された相関関数Cの内の最大の相関関数Cmax を求め、この相関関数Cmax が得られたライン上の位置を求める。そして、画像中心位置から当該位置とのズレ量d1 を求めて、このズレ量d1 を採光野設定部(L)36a1 及び採光野設定部(R)36b1 に送るものである。
【0064】
次に本構成のX線透視診断装置1Bの全体動作について、特にABC制御回路40の処理を中心に説明する。
【0065】
本実施形態においても、TVモニタ30には、L側画像及びR側画像が交互に表示され、観察者Sは、診断対象部位を含む画像を立体視することができる。
【0066】
一方、ABC制御回路4Bを構成するコンピュータ回路は、図10に示す処理を行っている。すなわち、ABC制御回路4Bは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)を画像メモリに保持する(ステップS10)。そして、保持されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の中から、水平方向において同一位置のライン(水平ラインH1 (画像中心をh0 とし、範囲−h1 〜+h1 );図7(a)参照)上の各画像信号(ライン上の各画素の濃度値)をそれぞれ読み出して、一旦メモリに保持する(ステップS11)。
【0067】
次いでABC制御回路4Bは、メモリに保持されたL側のラインH1 上の画像データのプロファイルPL とメモリに保持されたR側のラインH1 上の画像データのプロファイルPR との間の正規化された相関関数Cを演算し(ステップS12)、得られた相関関数Cの中から、最大の相関関数Cmax を選び、さらに、その最大の相関関数Cmax が得られた水平方向の位置座標hmax を求める(ステップS13。この正規化された相関関数Cのグラフを図7(c)に示す。
【0068】
そして、ABC制御回路4Bは、画像中心の位置座標h0 と位置座標hmax との差、すなわち、L側画像(画像データ)及びR側画像(画像データ)間のズレ量d1 を求める(ステップS14)。
【0069】
続いて、ABC制御回路4Bは、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に採光野として予め定められた画像中央の矩形アドレス領域を、第1実施形態と同様に、ディジタル画像信号(L)の場合は、画像中心に対して右方向へd1 /2に対応する画素分、ディジタル画像信号(R)の場合は画像中心に対して左方向へd1 /2に対応する画素分だけそれぞれ移動させて、採光野として新たな矩形アドレス領域を設定する(ステップS15)。
【0070】
すなわち、新たに設定された採光野は、L側画像及びR側画像において、最も相関が強い領域、言い換えれば、当該L側画像及びR側画像における被写体の診断対象部位を含む領域に設定されている。
【0071】
そして、ABC制御回路4は、ディジタル画像信号(L)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を演算し、且つディジタル画像信号(R)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を計算する(ステップS16)。次いで、それぞれの計算結果(L側採光野積分値,R側採光野積分値)をX線制御部16に送り(ステップS17)、処理を終了する。
【0072】
X線制御部16では、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整され、且つ送られたR側画像の積分値が設定値に近付くように、R側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整される。
【0073】
このとき、L側画像及びR側画像における採光野領域は、当該L側画像及びR側画像における被写体の診断対象部位を含む領域に設定されているため、L側画像及びR側画像共に同一の輝度調整が施され、得られたステレオ画像も、観察者Sにとって非常に視認しやすいものとなる。
【0074】
特に、本実施形態では、新たに採光野を設定するための画像間ズレ量d1 を相関関数により求めているため、非常に正確に画像間ズレ量d1 を求めることができ、この結果、輝度調整の精度もより向上する。
【0075】
なお、本実施形態では、水平方向において同一位置のライン(水平ラインH1 )上の画像信号を読み出して相関関数演算を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画素信号からの読み出しは、ラインに限らず、2次元の領域であってもよい。また、複数のラインからそれぞれ画像信号を読み出して、各画像信号毎に相関関数演算を行うことにより、ズレ量を精度良く求めることも可能である。
【0076】
また、本実施形態では、相関関数演算処理により求められた左右画像ズレ量d1 に基づいて、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)毎に新たな採光野を設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1実施形態の変形例と同様に、例えばズレ量d1 に基づいてどちらか一方の画像信号(例えばディジタル画像信号(L))に新たな採光野を設定し、このディジタル画像信号(L)における採光野領域の画像信号の積分値のみを用いてL側X線及びR側X線両方の曝射制御を行ってもよい。
【0077】
上述した変形例の構成を図11に示す。図11に示すX線透視診断装置1Cでは、ABC制御回路4Cの機能ブロックが図7と異なり(採光野設定部及び採光野積分部はL側のみ(採光野設定部36a及び採光野積分部37a)となっている)、X線制御部16B及び高電圧発生部15Bの処理も図7と異なっている。
【0078】
すなわち、X線制御部16Bでは、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15Bを介して調整されるとともに、R側X線の管電圧及び管電流の値は、L側X線の管電圧及び管電流と同一となるように高電圧発生部15Bを介して調整される。
【0079】
この結果、第1実施形態の変形例と同様に、実際に採光野を設定されていない側の曝射制御による輝度調整も、L側及びR側X線の両方で個別に曝射制御を行った場合と比べて遜色ない効果を維持でき、しかも第2実施形態と比べてABC制御回路で行う処理が簡素化されるという新たな効果が得られる。
【0080】
ところで、本実施形態では、L側画像及びR側画像の特徴量として相関関数を求めて当該L側画像及びR側画像のズレ量d1 を計算したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の計算、例えばウエーブレット変換処理等に基づいてL側画像及びR側画像のズレ量d1 を計算してもよい。
【0081】
(第3実施形態)
第3実施形態におけるX線透視診断装置の概略構成を図12に示す。図12に示すように、本実施形態のX線透視診断装置1Dは、ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)を保持する画像メモリ(L)26a及び画像メモリ(R)26bと階調変換部27a及び階調変換部(R)27bとの間に、画像シフト部50を設けている。
【0082】
この画像シフト部50で行なわれる画像シフト技術について、その概念を図13(a)及び(b)を用いて説明する。なお、図13(a)は左右の異なるX線焦点から撮影されたL側画像及びR側画像における観察対象(リンゴ、輻輳角θ1 )を左右の眼で観察する状態を模式的に示したものである。
【0083】
両眼視差を用いるステレオ法では、左右の眼のピントの合っている位置(合致位置)はL側画像及びR側画像であるが、立体像が見えるのは輻輳角位置、すなわち視線の交点位置である。すなわち、ピント合致位置と視線交点位置とが異なっている場合では、観察者Sが観察対象を立体視することが困難になったり、立体視を行なうことにより肉体的、精神的疲労を感じる恐れがあった。
【0084】
そこで、画像シフト技術を用いてステレオ視する方法が採られている。この画像シフト技術によれば、図13(b)に示すように、L側画像を左方向、R側画像を右方向へシフトしていき、観察対象部分を一致させる(このときの輻輳角θ2 )。この結果、輻輳角位置(視線の交点位置)とピント合致位置が等しくなるため、より簡単に且つ肉体的/精神的疲労を感じることなく立体視を行なうことができる。
【0085】
このような画像シフト技術を具体的に行なう画像シフト部50について、以下に説明する。
【0086】
この画像シフト部50は、演算制御部並びにディジタル画像信号(L)用及びディジタル画像信号(R)用の画像メモリ等を有している。演算制御部は、画像メモリ26a及び画像メモリ26bを参照し、画像メモリ26aにおいて診断対象部位を表す画像信号が格納された領域のアドレスAdr(26a)及び画像メモリ26bにおいて画像信号が格納された領域のアドレスAdr(26b)を例えば閾値処理等によりそれぞれ認識する。そして認識されたアドレスAdr(26a)及びアドレスAdr(26b)が略一致するように、画像メモリ26aに格納されたディジタル画像信号(L)全体及びディジタル画像信号(R)全体を互いに接近する方向へシフトさせて、それぞれ画像シフト部50の画像メモリ(L用)及び画像メモリ(R用)にそれぞれ記憶するようになっている。
【0087】
そして、本実施形態の階調変換部(L)27a及び階調変換部(R)27bは、画像メモリ(L)26a及び画像メモリ26b(R)ではなく、画像シフト部50の画像メモリ(L)及び画像メモリ(R)に保持されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に対して階調変換処理を施すようになっている。
【0088】
したがって、切換部28、D/A変換器29等の処理によりTVモニタ30に交互に表示されるL側画像及びR側画像における診断対象部位(観察対象部位)は、互いの画像において略一致した位置となっている。すなわち、観察者Sの視線の交点位置は、ピント合致位置であるモニタ画面上の観察対象部位にあるため、観察者Sは、簡単且つ肉体的/精神的疲労を感じることなく立体視を行なうことができる。
【0089】
一方、画像シフト部50の演算制御部は、アドレスAdr(26a)及びアドレスAdr(26b)が略一致するまでのディジタル画像信号(L)全体及びディジタル画像信号(R)全体のシフト量(ディジタル画像信号(L)全体のシフト量をSH(L),及びディジタル画像信号(R)全体のシフト量をSH(R)とする)を保持しており、当該SH(L)及びSH(R)をABC制御回路4Dに送るようになっている。
【0090】
本実施形態のABC制御回路4Dは、画像ズレ量計算部を有しておらず、機能ブロックとして、採光野設定部(L)51a及び採光野設定部(R)51bと、採光野積分部(L)37a2 及び採光野積分部(R)37b2 とを有している。
【0091】
採光野設定部(L)51aは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及び画像シフト部50から送られたSH(L)に基づいて、採光野として予め定められたアドレス領域(当該ディジタル画像信号(L)の略中央の矩形領域)を移動させて新たな採光野を設定するものであり、同様に採光野設定部(R)51bは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(R)及び画像シフト部50から送られたSH(R)に基づいて採光野として予め定められたアドレス領域(当該ディジタル画像信号(R)の略中央の矩形領域)を移動させて新たな採光野を設定するものである。なお、採光野積分部(L)37a2 及び採光野積分部(R)37b2 の機能、及び透視診断装置1Dのその他の構成は、第1及び第2実施形態と略同等であるため、その説明は省略する。
【0092】
次に本構成のX線透視診断装置1Dの全体動作について、特にABC制御回路4Dの処理を中心に説明する。
【0093】
ABC制御回路4Dを構成するコンピュータ回路は、図14に示す処理を行っている。すなわち、ABC制御回路4Dは、画像シフト部50から送られたSH(L)及びSH(R)に基づいて、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に採光野として予め定められた画像中央の矩形アドレス領域を、ディジタル画像信号(L)の場合は、画像中心に対して右方向へSH(L)に対応する画素分、ディジタル画像信号(R)の場合は画像中心に対して左方向へSH(R)に対応する画素分だけそれぞれ移動させて、採光野として新たな矩形アドレス領域を設定する(ステップS20)。すなわち、図15(a)及び(b)に示すように、L側画像全体を左方向へSH(L)シフトさせ、R側画像全体を右方向へSH(R)シフトさせれば、診断対象部位が一致する(図15(c)参照)ということは、元の各画像においては、画像中央(I.I.11の中央)に位置させた診断対象部位は、SH(L)(左側画像)あるいはSH(R)(右側画像)だけ互いに反対の方向(L側→右方向,R側→左方向)分離れた位置にあることになる(図15(d)及び(e)参照)。したがって、その移動量及び移動方向に合わせて採光野を移動させることにより、L側画像及びR側画像において、当該採光野を診断対象部位が表示された画像位置に対応させることができる。
【0094】
そして、ABC制御回路4Dは、ディジタル画像信号(L)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を演算し、且つディジタル画像信号(R)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を計算する(ステップS21)。次いで、それぞれの計算結果(L側採光野積分値,R側採光野積分値)をX線制御部16に送り(ステップS22)、処理を終了する。
【0095】
X線制御部16では、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整され、且つ送られたR側画像の積分値が設定値に近付くように、R側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整される。
【0096】
このとき、L側画像及びR側画像における採光野領域は、当該L側画像及びR側画像における被写体の診断対象部位を含む領域に設定されているため、第1及び第2実施形態と同様に、得られた積分値及びその積分値に応じて調整された各L側X線及びR側X線の管電圧及び管電流は略一致することになる。したがって、L側画像及びR側画像共に同一の輝度調整が施され、得られたステレオ画像も、観察者Sにとって非常に視認しやすいものとなる。
【0097】
特に、本実施形態では、画像間のズレ量を求める必要なく、画像シフト部で得られる画像シフト量に基づいて対象部位を含む新たな新たに採光野を設定することができるため、ABC制御回路での処理がより簡単になる。
【0098】
なお、本実施形態では、画像シフト部50から送られた画像シフト量に基づいて、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)毎に新たな採光野を設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1実施形態及び第2実施形態の変形例と同様に、例えばどちらか一方のシフト量(例えばSH(L))に基づいてどちらか一方の画像信号(例えばディジタル画像信号(L))に新たな採光野を設定し、このディジタル画像信号(L)における採光野領域の画像信号の積分値のみを用いてL側X線及びR側X線両方の曝射制御を行ってもよい。
【0099】
上述した変形例の構成を図16に示す。図16に示すX線透視診断装置1Eでは、ABC制御回路4Eの機能ブロックが図12と異なり(採光野設定部及び採光野積分部はL側のみ(採光野設定部51a及び採光野積分部37a2 )となっている)、X線制御部16C及び高電圧発生部15Cの処理も図12と異なっている。
【0100】
すなわち、X線制御部16Cでは、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15Cを介して調整されるとともに、R側X線の管電圧及び管電流の値は、L側X線の管電圧及び管電流と同一となるように高電圧発生部15Cを介して調整される。
【0101】
この結果、第1実施形態及び第2実施形態の変形例と同様に、実際に採光野を設定されていない側の曝射制御による輝度調整も、L側及びR側X線の両方で個別に曝射制御を行った場合と比べて遜色ない効果を維持でき、しかも第3実施形態と比べてABC制御回路で行う処理が簡素化されるという新たな効果が得られる。
【0102】
また、本実施形態では、画像シフト部を有するX線透視診断装置において、画像シフト部の画像シフト量に基づいて新たな採光野を設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上述した画像シフト部で行なわれる処理を画像シフト量を求めることのみに用いることも可能である。
【0103】
すなわち、ABC制御回路は、A/D変換器25から送られる画像信号(L)及び画像信号(R)に基づいて画像シフト量(SH(L)及びSH(R))を演算する画像シフト量演算部を機能ブロックとして有している。そして、当該ABC制御回路は、前掲図13と略同様の処理を行ない、演算されたSH(L)及びSH(R)に基づいて新たな採光野を設定することも可能である。
【0104】
(第4実施形態)
第4実施形態のX線透視診断装置の概略構成を図17に示す。図17に示すX線透視診断装置1Fによれば、ABC制御回路4Fは、画像ズレ量計算部を有しておらず、機能ブロックとして、採光野設定部(L)55a及び採光野設定部(R)55bと、採光野積分部(L)37a3 及び採光野積分部(R)37b3 とを有している。
【0105】
採光野設定部(L)55a及び採光野設定部(R)55bは、被写体を透過したX線に基づく画素値(濃度値)と直接入射したX線に基づく画素値とを明確に区別するために、予めメモリに記憶された閾値(スレショールド値;以下THとする)に基づいて、直接X線が入射しない領域(あるいは直接X線の入射が最小の領域)に採光野を設定するものである。
【0106】
すなわち、採光野設定部(L)55aは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)の内、例えば水平方向における所定位置のライン(例えば水平方向のラインH10)上の画像信号(画素値)をサンプリングし、その画素値がTHを越えるか否かを判断する。そして、当該THを越えない画素値が格納された画素領域を採光野設定可能領域、越える画素値が格納された画素領域を採光野設定不可能領域と定める。そして、定められた採光野設定可能領域から、診断対象部位の位置等を考慮して最適な採光野領域を設定するものである。同様に、採光野設定部(R)55bは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(R)の内、前記L側のラインと同一位置のラインH10の画像信号をサンプリングし、その画素値がTHを越えるか否かを判断する。そして、当該THを越えない画素値が格納された画素領域を採光野設定可能領域、越える画素値が格納された画素領域を採光野設定不可能領域と定める。そして、定められた採光野設定可能領域から、診断対象部位の位置等を考慮して最適な採光野領域を設定するものである。
【0107】
なお、採光野積分部(L)37a3 及び採光野積分部(R)37b3 の機能、及び透視診断装置1Eのその他の構成要素は第1〜第3実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0108】
次に本構成のX線透視診断装置1Eの全体動作について、特にABC制御回路4Eの処理を中心に説明する。
【0109】
ABC制御回路4Eを構成するコンピュータ回路は、図18に示す処理を行っている。すなわち、ABC制御回路4Eは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)を画像メモリに保持する(ステップS30)。そして、保持されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の中から、水平方向において同一位置のラインH10上の各画素の画素値をそれぞれ読み出して、一旦メモリに保持する(ステップS31)。
【0110】
次いでABC制御回路4Eは、メモリに保持されたL側の水平ラインH10上の例えばn番目の画素P(n) の画素値V(n) 及びメモリに保持されたR側の水平ラインH10上の例えばn番目の画素P'(n)の画素値V'(n)が予めメモリに保持されたTHを越えているか否か(V(n) 及びV'(n ) ≧TH)をそれぞれ個別に判断し(ステップS32)、NOの場合(V(n) 及びV'(n)<TH)には、V(n) 及びV'(n)が格納された画素P(n) 及びP'(n)を採光野設定可能領域とする(ステップS33)。一方、YESの場合(V(n) 及びV'(n)≧THには、V(n) 及びV'(n)が格納された画素P(n) 及びP'(n)を採光野設定不可能領域とする(ステップS34)。
【0111】
ABC制御回路4Fは、上記ステップS32〜ステップS34の処理を画像信号(L)における水平ラインH10上の全ての画素及び画像信号(R)における水平ラインH10上の全ての画素に対して行ない、各画像信号(L)及び画像信号(R)における全ての採光野設定可能領域を定める(ステップS35)。
【0112】
このステップS32〜ステップS35の処理を図19を用いて概念的に説明する。図19は、水平ラインH10上の各画素の画素値分布と予め定められたTHに基づく採光野設定ラインとを表すグラフである。図19によれば、THを越えない画素値を有する画素領域(Pn1〜Pn2)を採光野設定可能領域としている。
【0113】
続いて、ABC制御回路4Fは、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)における診断対象部位の位置等を考慮して、上記採光野設定可能領域(L側及びR側)の中から例えば当該対象部位を最も含む矩形アドレス領域を新たな採光野領域としてそれぞれ設定する(ステップS36)。
【0114】
すなわち、新たに設定された採光野は、直接X線が入射されない(あるいは入射が最も少ない)位置に設定されることになる。
【0115】
そして、ABC制御回路4は、ディジタル画像信号(L)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を演算し、且つディジタル画像信号(R)において新たに設定された採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を計算する(ステップS37)。次いで、それぞれの計算結果(L側採光野積分値,R側採光野積分値)をX線制御部16に送り(ステップS38)、処理を終了する。
【0116】
X線制御部16では、送られたL側画像の積分値に応じて、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整され、且つ送られたR側画像の積分値に応じて、R側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15を介して調整される。
【0117】
このとき、L側画像及びR側画像における採光野領域は、X線管10からの直接X線が入射されない位置に設定されているため、得られた積分値及びその積分値に応じて調整された各L側X線及びR側X線の管電圧及び管電流は、直接X線の影響の無い極めて正確な値に設定されている。したがって、L側画像及びR側画像共に非常に精度の高い輝度調整が施され、得られたステレオ画像も、観察者Sにとって非常に視認しやすいものとなる。
【0118】
なお、本実施形態では、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に基づいて、閾値処理により当該ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)毎に新たな採光野を設定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1実施形態乃至第3実施形態の変形例と同様に、例えばどちらか一方のディジタル画像信号(L)に基づいて、閾値処理によりどちらか一方の画像信号(例えばディジタル画像信号(L))に新たな採光野を設定し、このディジタル画像信号(L)における採光野領域の画像信号の積分値のみを用いてL側X線及びR側X線両方の曝射制御を行ってもよい。上述した変形例の構成を図20に示す。図20に示すX線透視診断装置1Gでは、ABC制御回路4Gの機能ブロックが図17と異なり(採光野設定部及び採光野積分部はL側のみ(採光野設定部55a及び採光野積分部37a3 )となっている)、X線制御部16D及び高電圧発生部15Dの処理も図17と異なっている。
【0119】
すなわち、X線制御部16Dでは、送られたL側画像の積分値に応じて、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部15Dを介して調整され、さらにL側X線の曝射制御に加えて、当該L側画像の積分値に応じて、R側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流までもが高電圧発生部15Dを介して調整される。
【0120】
この結果、第1実施形態乃至第3実施形態の変形例と同様に、実際に採光野を設定されていない側の曝射制御による輝度調整も、L側及びR側X線の両方で個別に曝射制御を行った場合と比べて遜色ない効果を維持でき、しかも第4実施形態と比べてABC制御回路で行う処理が簡素化されるという新たな効果が得られる。
【0121】
(第5実施形態)
第5実施形態のX線透視診断装置の概略構成を図21に示す。図21に示すX線透視診断装置70は、X線透視画像撮影部71,ステレオ画像表示部72,ABC制御回路73を備えている。
【0122】
ABC制御回路73は、A/D変換器25から送られるディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の内、どちらか一方のディジタル画像信号(本実施形態ではディジタル画像信号(L))画像収集タイミングに応じて、採光野として予め定められたアドレス領域(当該ディジタル画像信号(L)の略中央の矩形領域)の画素値を積分値を演算してX線制御部16に送るようになっている。
【0123】
また、X線制御部74は、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧を高電圧発生部75を介して調整し、さらにL側X線の曝射制御に加えて、当該L側画像の積分値に応じて、R側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流を高電圧発生部75を介して調整するようになっている。
【0124】
一方、本実施形態のX線透視診断装置70は、階調変換部(L)76a及び階調変換部76bの各階調変換テーブルを、L側画像及びR側画像のズレ量に基づいて書き換える処理を行なう処理装置80を有している。この処理装置80は、図21にブロック構成で示した機能を行なうようになっており、これらの機能は、制御用ソフトウエアやデータ保持用のメモリ、画像データを記憶用の画像メモリ、CPU等を備えたコンピュータ回路で具体化される。
【0125】
以下、処理装置80の各機能ブロックについて、図21を参照して説明する。
【0126】
左右画像ズレ量計算部81は、各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係からL側画像及びR側画像間のズレ量dを計算するものである。
【0127】
階調変換テーブル計算部82は、A/D変換器25から送られるディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)並びに左右画像ズレ量計算部81で計算されたL側画像及びR側画像間のズレ量dに基づいて、少なくとも一方の階調変換テーブル(本実施形態ではR側の階調変換テーブル(R))を新たに作成し、新たに作成された階調変換テーブル(RA)を階調変換部(R)76bに送るようになっている。
【0128】
ここで、上述した階調変換テーブル作成部82の詳細な機能を表すブロック図を図22に示す。
【0129】
採光野指定部(L)85aは、左右画像ズレ量計算部81から送られたズレ量dに基づいて採光野(ディジタル画像信号(L)の略中央の矩形領域)とは異なる階調変換処理用の新たな採光野を設定するものであり、採光野指定部(R)85bは、左右画像ズレ量計算部81から送られたズレ量dに基づいて採光野(ディジタル画像信号(R)の略中央の矩形領域)とは異なる階調変換処理用の新たな採光野を設定するものである。
【0130】
画像メモリ部(L)86aは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)を記憶するものであり、画像メモリ部(R)86aは、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(R)を記憶するものである。
【0131】
積分値計算部(L)87aは、画像メモリ部(L)86aで記憶されたディジタル画像信号(L)の内、採光野指定部(L)85aで指定された階調変換用採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を計算するものであり、積分値計算部(R)87bは、画像メモリ部(R)86bで記憶されたディジタル画像信号(R)の内、採光野指定部(R)85bで指定された階調変換用採光野領域の画像信号(画素値)の積分値を計算するものである。
【0132】
階調変換テーブル作成部88は、積分値計算部(L)87aで計算された階調変換用採光野領域の画素値の積分値(L)と積分値計算部(R)87bで計算された階調変換用採光野領域の画素値の積分値(R)との比を演算する。そして、演算された比の値に応じて、少なくとも一方の階調変換テーブル(本実施形態では階調変換テーブル(R))のγ曲線を変化させて、新たな階調変換テーブル(階調変換テーブルRA)を作成し、作成された新たな階調変換テーブルを階調変換部(L)76a及び(あるいは)階調変換部(R)76bのルックアップテーブルに書き込むようになっている。
【0133】
階調変換部76aは、処理装置80により書き込まれた新たな階調変換テーブル、又は予め定められた階調変換テーブル(L)を参照して当該ディジタル画像信号(L)に対して階調変換処理を施すように構成され、階調変換部(R)76bは、処理装置80により書き込まれた新たな階調変換テーブル(階調変換テーブル(RA))、又は予め定められた階調変換テーブル(R)を参照して当該ディジタル画像信号(R)に対して階調変換処理を施すように構成されている。
【0134】
次に本構成のX線透視診断装置70の全体動作について、特に処理装置80の処理を中心に説明する。
【0135】
患者Pが載置された寝台Bを移動させて、患者Pの診断対象部位(観察領域)をI.I.11検出面の中心軸上に位置させる。そして、X線制御部16の制御の下で高電圧発生部15を介して供給された管電圧、管電流に応じてX線管10の左右2個のX線焦点10L,10Rから交互にX線が曝射される。曝射されたX線は、患者Pの診断対象部位を含む領域を透過し、この透過X線は、I.I.11、光学系20、TVカメラ21、及びCCU22を介して各種補正が施されたアナログ画像信号に変換され、さらにA/D変換器25によりディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に変換される。
【0136】
変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の内、ディジタル画像信号(L)はABC制御回路73に送られ、当該ディジタル画像信号(L)の画像収集タイミングに応じて採光野領域の画素値の積分値が演算されてX線制御部16に送られる。X線制御部74では、送られたL側画像の積分値が設定値に近付くように、L側X線焦点10Lを介して曝射されるL側X線の管電圧及び管電流、並びにR側X線焦点10Rを介して曝射されるR側X線の管電圧及び管電流が高電圧発生部75を介して調整される。
【0137】
また、変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)は、上述したステレオ画像表示部3の各処理により、L側画像及びR側画像としてTVモニタ30に交互に表示され、その結果、観察者Sは、診断対象部位を含む画像を立体視することができる。
【0138】
以上述べたABC制御回路73の積分値計算及びX線制御タイミング,A/D変換器25により変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の出力タイミング(画像収集タイミング),及びL側画像とR側画像の表示タイミングを表すタイムチャートを図23に示す。図23に示すように、ABC制御回路73の積分値に応じてL側X線及びR側X線が制御され、L側画像及びR側画像が得られている。
【0139】
一方、処理装置80を構成するコンピュータ回路は、図24に示す処理を行なっている。すなわち、処理装置80は、前掲図3に示す各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係データ(X線焦点10L,10Rから患者P(寝台B)までの距離(a)、患者P(寝台B)からI.I.11(その検出面)までの距離(b)、左右X線焦点10L,10R間の距離(c)に基づいて、次式に示す比例演算により、L側画像における診断対象部位の画像及びR側画像における診断対象部位の画像間のズレ量dを計算する(ステップS40)。
【0140】
【数2】
a:c=b:d ……(3)
∴d=bc/a ……(4)
【0141】
続いて、処理装置80は、ステップS40の処理により求められたL側画像及びR側画像間のズレ量dをメモリに保持し、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)を画像メモリに保持する(ステップS41)。そして、処理装置80は、各ディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に採光野として予め定められた画像中央の矩形アドレス領域から、ディジタル画像信号(L)の場合は、画像中心に対して右方向へd/2に対応する画素分、ディジタル画像信号(R)の場合は画像中心に対して左方向へd/2に対応する画素分だけそれぞれ離れた矩形アドレス領域を階調変換用採光野として設定する(ステップS42)。
【0142】
すなわち、前掲図4に示すように、L側画像及びR側画像間のズレ量がdであれば、各L側画像及びR側画像のズレ量はそれぞれd/2であるから、各画像において画像中央(I.I.11の中央)に位置させた診断対象部位はd/2だけ互いに反対の方向(L側→右方向,R側→左方向)へ移動している。したがって、その移動量及び移動方向に合わせて階調変換用の新たな採光野を設定することにより、L側画像及びR側画像において、当該階調変換用採光野を診断対象部位が表示された画像位置に対応させることができる。
【0143】
次いで、処理装置80は、ディジタル画像信号(L)において設定された階調変換用採光野領域(K(L)とする)の画素値の積分値を演算し、且つディジタル画像信号(R)において設定された階調変換用採光野領域(K(R)とする)の画素値の積分値を計算する(ステップS43)。
【0144】
そして、処理装置80は、計算されたL側階調変換用採光野積分値F(L)とR側階調変換用採光野積分値F(R)との比をとり(ステップ44)、この比の値に応じて、階調変換テーブル(R)のγ曲線を変化させて、新たな階調変換テーブル(階調変換テーブルRA)を作成する(ステップ45)。
【0145】
ここで、ステップS45の処理の内容について、詳細に説明する。今、予め定められた階調変換用テーブル(L)のγ曲線を傾きIL の直線,階調変換用テーブル(R)のγ曲線を傾きIR の直線(「IL =IR 」)とすると、階調変換用テーブル(L)の階調変換特性は図25(a)に示すグラフとして表され、また、階調変換用テーブル(R)の階調変換特性は、図25(b)に示すグラフ(破線)として表される。
【0146】
診断対象部位を含む位置に設定された階調変換用採光野領域K(L)及びK(R)の積分値F(L)及びF(R)の比を「F(L):F(R)=x:y(x>y)」とすると、当該採光野領域の画像信号を、上述した階調変換用テーブル(L)及び階調変換用テーブル(R)により階調変換すると、L側画像及びR側画像において、上述した画素値の積分値の比に基づく輝度差が生じてしまう。
【0147】
そこで、ステップS45の処理により、階調変換テーブル(R)のγ曲線を変化させて、「IR :IRA=y:x(∴IRA=IR ×(x/y))」を満足する傾きIRAのγ曲線を有する階調変換テーブル(RA)を作成したため(図25(b)の実線参照)、階調変換テーブル(L)の階調変換特性(γ曲線の傾きIL )と階調変換テーブル(RA)の階調変換特性(γ曲線の傾きIRA)との比は、「IL :IRA=y:x」となり、上述した画素値の積分値の比に基づく輝度差を補うものになっている。
【0148】
そして、処理装置80は、階調変換テーブルRAを階調変換部(R)76bのルックアップテーブルに書き込み(ステップS46)、処理を終了する。
【0149】
この結果、階調変換部76a及び階調変換部76bにより階調変換処理された後の階調変換用採光野領域内の画像信号(L)及び画像信号(R)の輝度は、上述した画素値の積分値の比に基づく輝度差を、階調変換テーブル(L)及び階調変換テーブル(RA)の変換特性の差により補正しているため、略等しくなる。
【0150】
したがって、TVモニタ30に交互に表示されるL側画像及びR側画像の階調変換用採光野部分、すなわち診断対象部分は、L側画像及びR側画像共に同一の輝度調整が施されているため、得られたステレオ画像は、観察者Sにとって非常に視認しやすいものとなる。
【0151】
なお、本実施形態では、階調変換用採光野領域内の画素値の積分値に応じて、R側の階調変換テーブル(R)を、新たな階調変換テーブル(RA)としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばL側の階調変換テーブル(L)を、新たな階調変換テーブル(LA)としてもよく、また、R側の階調変換テーブル(R)及びL側の階調変換テーブル(L)それぞれを、新たな階調変換テーブル(RA)及び新たな階調変換テーブル(LA)としてもよい。
【0152】
また、本実施形態では、階調変換テーブルのγ曲線を直線とし、その傾きを変化させて新たな階調変換テーブルを作成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、階調変換テーブルのγ曲線のカーブ自体を変化させてもよい。
【0153】
さらに、本実施形態では、処理装置の左右画像ズレ量計算部は当該左右画像のズレ量を各X線焦点10L,10R、寝台B、I.I.11の位置関係から計算したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該ズレ量を、例えば、A/D変換器によりA/D変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に基づいて、当該画像信号の特徴量、例えば相関関数により求めてもよい。
【0154】
上述した変形例の構成を図26に示す。図26に示すX線透視診断装置70Aによれば、処理装置80Aの左右画像ズレ量計算部90は、当該左右画像のズレ量を、A/D変換器25によりA/D変換されたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)に基づいて、当該画像信号の特徴量、例えば相関関数により求めるものである。なお、その他の処理装置90の残りの機能及び透視診断装置70Aのその他の構成要素は第5実施形態(図21)と略同等であり、その説明は省略する。
【0155】
本変形例における処理装置80Aを構成するコンピュータ回路は、前掲図10で示したABC制御回路のステップS10〜ステップS14の処理と同一の相関関数に基づく処理を行ない、画像信号(L)及び画像信号(R)間のズレ量d1 を求める(図27、ステップS50)。以下、処理装置80Aは、上述したステップS42〜ステップS46の処理を行なう(但し、d→d1 )。この結果、第5実施形態と同様に、L側画像の診断対象部位及びR側画像の診断対象部位共に同一の輝度調整を施すことができ、観察者Sにとって非常に視認しやすいステレオ画像を得ることができる。
【0156】
(第6実施形態)
第6実施形態におけるX線透視診断装置の概略構成を図28に示す。図28に示すように、本実施形態のX線透視診断装置70Bは、第3実施形態と同様に、画像メモリ(L)26a及び画像メモリ(R)26bと階調変換部76a及び階調変換部(R)76bとの間に画像シフト部50を設けた構成である。
【0157】
本実施形態の処理装置80Bは、左右画像ズレ量計算部を有しておらず、機能ブロックとして、階調変換テーブル作成部95を有している。
【0158】
すなわち、階調変換テーブル作成部95は、第3実施形態の採光野設定部(L)51a,(R)51b及び採光野積分部(L)37a2 ,(R)37b2 と略同等の機能を有している。すなわち、階調変換テーブル作成部95は、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)、ディジタル画像信号(R)及び画像シフト部50から送られたSH(L)、SH(R)に基づいて、予め定められた採光野とは異なる階調変換用採光野領域K(L)及びK(R)を指定し、且つ指定された階調変換用採光野領域K(L)及びK(R)内の画素値の積分値に応じて、新たな階調変換テーブル(階調変換テーブルRA)を作成するようになっている。なお、透視診断装置70Bのその他の構成は、第5実施形態と略同等であるため、その説明は省略する。
【0159】
次に本構成のX線透視診断装置70Bの全体動作について、特に処理装置80Bの処理を中心に説明する。
【0160】
本実施形態における処理装置80Bを構成するコンピュータ回路は、前掲図14で示したABC制御回路のステップS20の処理と略同等の画像シフト量SH(L),SH(R)に基づく処理を行ない、採光野領域から右方向へSH(L)に対応する画素分、ディジタル画像信号(R)の場合は画像中心に対して左方向へSH(R)に対応する画素分だけ離れた矩形アドレス領域を階調変換用採光野として設定する(図29、ステップS60)。以下、処理装置80Bは、上述したステップS43〜ステップS46の処理を行なう。この結果、第5実施形態と同様に、画素値の積分値の比に基づく輝度差を階調変換テーブル(L)及び階調変換テーブル(RA)の変換特性の差により補正することができるため、L側画像の診断対象部位及びR側画像の診断対象部位共に同一の輝度調整を施すことができ、観察者Sにとって非常に視認しやすいステレオ画像を得ることができる。
【0161】
(第7実施形態)
第7実施形態におけるX線透視診断装置の概略構成を図30に示す。図30に示すように、本実施形態のX線透視診断装置70Cにおける処理装置80Cは、左右画像ズレ量計算部を有しておらず、機能ブロックとして、階調変換テーブル作成部97を有している。
【0162】
すなわち、階調変換テーブル作成部97は、第4実施形態の採光野設定部(L)55a,(R)55b及び採光野積分部(L)37a3 ,(R)37b3 と略同等の機能を有している。すなわち、階調変換テーブル作成部97は、A/D変換器25から送られたディジタル画像信号(L)及びディジタル画像信号(R)の内、例えば水平方向のラインH10上の画像信号(画素値)をサンプリングし、当該画素値と予めメモリに記憶された閾値(スレショールド値;以下THとする)とに基づいて、直接X線が入射しない領域(あるいは直接X線の入射が最小の領域)に階調変換用採光野領域K(L)及びK(R)を設定する。そして、設定された階調変換用採光野領域K(L)及びK(R)内の画素値の積分値に応じて、新たな階調変換テーブル(階調変換テーブルRA)を作成するようになっている。なお、透視診断装置70Cのその他の構成は、第5実施形態と略同等であるため、その説明は省略する。
【0163】
次に本構成のX線透視診断装置70Cの全体動作について、特に処理装置80Bの処理を中心に説明する。
【0164】
本実施形態における処理装置80Cを構成するコンピュータ回路は、前掲図18で示したABC制御回路のステップS30〜ステップS36の処理と略同等の閾値処理を行ない、画像信号(L)及び画像信号(R)において、新たな矩形アドレス領域を階調変換用採光野として設定する(図31、ステップS70)。以下、処理装置80Cは、上述したステップS43〜ステップS46の処理を行なう。この結果、第5実施形態と同様に、画素値の積分値の比に基づく輝度差を階調変換テーブル(L)及び階調変換テーブル(RA)の変換特性の差により補正することができるため、L側画像の診断対象部位及びR側画像の診断対象部位共に同一の輝度調整を施すことができ、観察者Sにとって非常に視認しやすいステレオ画像を得ることができる。
【0165】
なお、上述した各実施形態において、採光野領域を矩形領域としたが、円形領域や他の形状を有する領域であってもよい。
【0166】
また、上述した各実施形態では、ABC制御回路及び処理装置を、当該ABC制御回路及び処理装置の各機能ブロックを具体的に実現するコンピュータ回路で構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば各機能ブロックをハードワイヤードロジック回路等で構成してもよい。
【0167】
さらに、上述した各実施形態では、L側画像及びR側画像を偏光フィルタ及び偏光メガネを用いた方式で立体視したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば裸顔視方式、アナグリフ方式等各種の方式で立体視する構成であってもよい。
【0168】
さらにまた、上述した各実施形態では、採光野の設定、及び設定された採光野領域の画像信号の積分をデジタル処理で行う実施形態を示したが、アナログ処理で実施することも可能である。
【0169】
上述した各実施形態では、TVカメラから出力された画像信号(ビデオ信号)出力に基づいてX線曝射制御,階調変換特性変更処理をおこなったが、従来例で述べたようなフォトピックアップを用いて取り出された信号に基づいてX線曝射制御,階調変換特性変更処理を行うことも可能である。
【0170】
なお、上述した各実施形態において、別に設定した動画検出機能により動画検出された場合において、採光野領域を再設定することも可能である。
【0171】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明によれば、ステレオ方式によりX線透視を行なうX線透視診断装置において、輝度調整用の採光野領域(信号採取領域)を、観察者の左眼用の画像(L側画像)及び観察者の右眼用の画像(R側画像)においてそれぞれ個別に例えば両画像の対応する領域に設定したため、L側画像及びR側画像における互いに対応する画像領域に設定された採光野領域の画像信号に基づいて輝度調整が行われる。したがって、L側画像及びR側画像の輝度を略等しく設定することができるため、X線ステレオ透視像(立体像)の画質を向上させ、観察者が非常に視認しやすいステレオ透視像を作成、表示することができる。その結果、X線ステレオ透視下での観察者の作業性及び視認性を向上させることができる。
【0172】
また、本発明によれば、直接X線の入射が他の領域より少ない画素領域に新たに採光野を設定することができるため、直接X線の影響を最小限にして輝度調整を行なうことができる。したがって、L側画像及びR側画像において非常に正確な輝度調整を行なうことができ、X線ステレオ透視像(立体像)の画質を向上させ、観察者が非常に視認しやすいステレオ透視像を作成、表示することができる。その結果、X線ステレオ透視下での観察者の作業性及び視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】ABC制御回路の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図3】左右X線焦点、寝台、I.I.の位置関係を示す図。
【図4】画像ズレ量に基づく採光野の移動を示す図。
【図5】ABC制御回路のL側採光野積分値,R側採光野積分値及びX線制御タイミング,画像収集タイミング,及びL側画像とR側画像の表示タイミングを表すタイムチャート。
【図6】第1実施形態の変形例に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第2実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図8】(a)はL側画像及びR側画像に対して共通の例えば水平方向のラインH1 を設定した状態を示す図、(b)はラインH1 における各画素の濃度値のプロファイルPL 及びPR を示す図、(c)はラインH1上におけるプロファイルPL 及びPR の正規化された相関関数を示すグラフ。
【図9】ABC制御回路の左右画像ズレ量計算部の機能を表すブロック図。
【図10】ABC制御回路の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図11】第2実施形態の変形例に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図12】本発明の第3実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図13】(a)は左右の異なるX線焦点から撮影されたL側画像及びR側画像における観察対象を左右の眼で観察する状態を模式的に示す図であり、(b)はL側画像及びR側画像をシフトして観察対象部分を一致させた状態を模式的に示す図。
【図14】ABC制御回路の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図15】(a)〜(c)は、L側画像全体を左方向、R側画像全体を右方向へシフトさせて、診断対象部位が一致した状態を示す図、(d)〜(e)は、診断対象部位の位置とシフト量との関係を示す図。
【図16】第3実施形態の変形例に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図17】本発明の第4実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図18】ABC制御回路の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図19】水平ラインH10上の各画素の画素値分布と予め定められたTHに基づく採光野設定ラインとを表すグラフ。
【図20】第4実施形態の変形例に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図21】本発明の第5実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図22】階調変換テーブル作成部の詳細な機能を表すブロック図。
【図23】ABC制御回路の積分値計算及びX線制御タイミング,画像収集タイミング,及びL側画像とR側画像の表示タイミングを表すタイムチャート。
【図24】処理装置の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図25】(a)は階調変換用テーブル(L)の階調変換特性を示すグラフであり、(b)は階調変換用テーブル(R)(破線)及び階調変換テーブル(RA)の階調変換特性(実線)を示すグラフ。
【図26】第5実施形態の変形例に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図27】処理装置の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図28】本発明の第6実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図
【図29】処理装置の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図30】第7実施形態に係わるX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図31】処理装置の処理の一例を示す概略フローチャート。
【図32】ステレオ方式のX線透視診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図33】透視画像の略中心に固定された採光野を示す図。
【図34】(A)は、光学系のフォトピックアップからの信号によるABCを用いたX線透視診断装置の一例を示すブロック図、(B)は、TVカメラのビデオ信号によるABCを用いたX線透視診断装置の一例を示すブロック図。
【図35】ステレオ方式のX線透視診断装置においてABCを行なう際の透視撮影状態を示す図。
【図36】採光野と対象部位との位置関係を示す図。
【図37】採光野における直接X線入射領域を示す図。
【符号の説明】
1,1A〜1G,70,70A〜70C X線透視診断装置
2,2A〜2G,71,71A〜71C X線透視画撮影部
3,3A〜3G,72,72A〜72C ステレオ画像表示部
4,4A〜4G,73 ABC制御回路
10 X線管
10L 左側X線焦点
10R 右側X線焦点
11 I.I.
15,15A〜15D,75 高電圧発生部
16,16A〜16D,74 X線制御部
20 光学系
21 TVカメラ
22 CCU
25 A/D変換器
26a 画像メモリ(L)
26b 画像メモリ(R)
27a,76a 階調変換部(L)
27b,76b 階調変換部(R)
28 切換部
29 D/A変換器
30 TVモニタ
31 偏光フィルタ
32 切換制御部
33 偏光メガネ
35,40 左右画像ズレ量計算部
36a,36a1 ,51a,55a,85a 採光野設定部(L)
36b,36b1 ,51b,55b,85b 採光野設定部(R)
37a,37a1 ,37a2 ,37a3 採光野積分部(L)
37b,37b1 ,37b2 ,37b3 採光野積分部(R)
41a ラインメモリ部(L)
41b ラインメモリ部(R)
42 相関関数演算部
43 ズレ量計算部
80,80A〜80C 処理装置
81,90 左右画像ズレ量計算部
82,95,97 階調変換テーブル計算部
86a 画像メモリ部(L)
86b 採光野設定部(R)
87a 積分値計算部(L)
87b 積分値計算部(R)
88 階調変換テーブル作成部
Claims (14)
- 2つの異なるX線焦点から被写体に対してX線を曝射して観察者の左眼用の画像及び右眼用の画像を撮影する画像撮影手段と、前記左眼用画像の輝度及び前記右眼用画像の輝度を調整する輝度調整手段とを備え、輝度調整された左眼用画像及び右眼用画像に基づいて前記被写体の診断対象部位を立体的に表示するX線透視診断装置において、
前記輝度調整手段は、前記被写体の左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を前記輝度調整用の信号採取領域としてそれぞれ個別に設定する設定手段と、設定された左眼用画像の信号採取領域及び右眼用画像の信号採取領域の内の少なくとも一方の領域内の画像信号に応じて前記2つのX線焦点から曝射されるX線の曝射条件を制御する曝射条件制御手段とを備えたことを特徴とするX線透視診断装置。 - 前記信号採取領域は前記診断対象部位を含む請求項1記載のX線透視診断装置。
- 前記曝射条件制御手段は、前記左眼用画像の信号採取領域及び前記右眼用画像の信号採取領域の内のどちらか一方の信号採取領域内の画像信号に応じて前記2つのX線焦点から曝射されるX線の曝射条件を制御する手段である請求項1又は2記載のX線透視診断装置。
- 前記曝射条件制御手段は、前記信号採取領域内の全ての画素の画素値の積算値を計算する積算値計算手段と、計算された積算値と予め定められた基準値とを比較して前記X線の曝射条件を制御する制御手段とを備えた請求項1記載のX線透視診断装置。
- 前記画像撮影手段は、前記2つのX線焦点を有するX線管と、このX線管の当該2つのX線焦点からそれぞれ曝射され前記被写体を透過したX線をそれぞれ検出する検出器とを有し、この検出器により検出された信号に基づいて前記左眼用画像及び前記右眼用画像を作成する手段であり、前記設定手段は、前記被写体,前記X線管の各X線焦点,及び前記検出器間相互の位置関係に基づいて前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有した請求項1記載のX線透視診断装置。
- 前記設定手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像間の特徴量により前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有した請求項1記載のX線透視診断装置。
- 前記左眼用画像及び前記右眼用画像を表示するためのモニタと、前記左眼用画像及び前記右眼用画像における前記診断対象部位の位置が互いに一致するように、当該左眼用画像全体及び前記右眼用画像全体を所定方向にシフトさせて前記モニタに表示させるシフト表示手段とを備え、前記設定手段は、前記シフト表示手段による前記左眼用画像全体及び前記右眼用画像全体のシフト量に基づいて当該左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有した請求項1記載のX線透視診断装置。
- 前記設定手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像における少なくとも1本の同一位置の画像ラインの画素値を各画像毎にサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングされた各画素値を予め定められた閾値とそれぞれ比較する比較手段と、比較の結果前記閾値を越えない画素値を有する画素領域を各画像毎に個別に求める手段と、各画像毎に個別に求められた画素領域の少なくとも一部を前記信号採取領域として当該各画像毎に個別に設定する手段とを有した請求項1乃至4記載の内の何れか1項記載のX線透視診断装置。
- 2つの異なるX線焦点から被写体に対してX線を曝射して観察者の左眼用の画像及び右眼用の画像を撮影する画像撮影手段と、前記左眼用画像の輝度及び前記右眼用画像の輝度を調整する輝度調整手段とを備え、輝度調整された左眼用画像及び右眼用画像に基づいて前記被写体の診断対象部位を立体的に表示するX線透視診断装置において、
前記輝度調整手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像の内の少なくとも一方の画像内に予め定められた前記輝度調整用の第1の信号採取領域の画像信号に応じて前記2つのX線焦点から曝射されるX線の曝射条件を制御する曝射制御手段と、前記被写体の左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を前記輝度調整用の第2の信号採取領域としてそれぞれ個別に設定する設定手段と、設定された左眼用画像の第2の信号採取領域及び右眼用画像の第2の信号採取領域の画像信号の輝度を画像処理により略等しく設定する画像処理手段とを備えたことを特徴とするX線透視診断装置。 - 前記画像処理手段は、前記左眼用画像における第2の信号採取領域内及び前記右眼用画像における第2の画像信号採取領域内の全ての画素の画素値の積算値をそれぞれ計算する積算値計算手段と、計算された左眼用画像における第2の信号採取領域内の積算値と右眼用画像における第2の信号採取領域内の積算値との比を計算する計算手段と、この計算手段により計算された比の値に応じて前記左眼用画像及び右眼用画像の内の少なくとも一方に対して施す階調変換特性を変化させる手段とを備えた請求項9記載のX線透視診断装置。
- 前記画像撮影手段は、前記2つのX線焦点を有するX線管と、このX線管の当該2つのX線焦点からそれぞれ曝射され前記被写体を透過したX線をそれぞれ検出する検出器とを有し、この検出器により検出された信号に基づいて前記左眼用画像及び前記右眼用画像を作成する手段であり、前記設定手段は、前記被写体,前記X線管の各X線焦点,及び前記検出器間相互の位置関係に基づいて前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有した請求項9記載のX線透視診断装置。
- 前記設定手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像間の特徴量により前記左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有した請求項9記載のX線透視診断装置。
- 前記左眼用画像及び前記右眼用画像を表示するためのモニタと、前記左眼用画像及び前記右眼用画像における前記診断対象部位の位置が互いに一致するように、当該左眼用画像全体及び前記右眼用画像全体を所定方向にシフトさせて前記モニタに表示させるシフト表示手段とを備え、前記設定手段は、前記シフト表示手段による前記左眼用画像全体及び前記右眼用画像全体のシフト量に基づいて当該左眼用画像及び右眼用画像における互いに対応する領域を決定する手段を有した請求項9記載のX線透視診断装置。
- 前記設定手段は、前記左眼用画像及び右眼用画像における少なくとも1本の同一位置の画像ラインの画素値を各画像毎にサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングされた各画素値を予め定められた閾値とそれぞれ比較する比較手段と、比較の結果前記閾値を越えない画素値を有する画素領域を各画像毎に個別に求める手段と、各画像毎に個別に求められた画素領域の少なくとも一部を前記第2の信号採取領域として当該各画像毎に個別に設定する手段とを有した請求項9記載のX線透視診断装置。
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