JP3679730B2 - 軟磁性膜と、この軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッド、ならびに前記軟磁性膜の製造方法と、前記薄膜磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、FeNi系合金からなる軟磁性膜に係わり、特に、低応力、且つ低保磁力Hcであり、さらには、高い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の高飽和磁束密度を有する軟磁性膜は、Feの組成比が約55質量%、Niの組成比が約45質量%であるFeNi系合金であり、飽和磁束密度Bsは、1.6T程度であった。
【0003】
前記FeNi系合金は、例えば薄膜磁気ヘッドのコア層に用いられる。今後の高記録密度化に対応するためには、記録密度を高めるべく、前記コア層の飽和磁束密度Bsの向上が不可欠であり、前記コア層に用いられる軟磁性膜には、従来よりも高い飽和磁束密度Bsが要求された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
FeNi系合金からなる軟磁性膜は、Feの組成比を上げることで、飽和磁束密度Bsを高めることができる。
【0005】
しかしながら、FeNi系合金の軟磁性膜では、Feの組成比の増加に伴って飽和磁束密度Bsを高めることができる反面、応力(stress)が大きくなることがわかった。例えばFeの組成比が55質量%であるとき約110MPa程度であった応力が、Feの組成比が68質量%になると約190MPaにまで大きくなってしまう。
【0006】
このような高応力の軟磁性膜を薄膜磁気ヘッドのコア層に使用したとき、前記コア層7は剥離し易く、薄膜磁気ヘッドの信頼性が低いものとなる。特に、Fe組成比を68質量%以上にすれば飽和磁束密度Bsを1.8T以上確保でき、今後の高記録密度化に対応するには、このように高い飽和磁束密度Bsを有するFeNi系合金を使用できることが要望されたが、高飽和磁束密度Bsを確保できる反面、非常に高い応力が発生してしまうため、コア層としては使用しづらく、特に最近では、高記録密度化に伴うにしたがって、例えば0.5μm四方以下という非常に狭いトラック幅空間内に、磁性層をメッキ形成する必要があり、このような狭い空間内で適切なメッキ成長をさせるには、特に上記のような高い応力を有していては膜剥れが顕著に現れて狭トラック化に適切に対応可能な薄膜磁気ヘッドを再現性良く製造することができない。
【0007】
NiFe合金からなる軟磁性膜の応力は、軟磁性膜の平均結晶粒径が大きいと低下すると考えられる。軟磁性膜の平均結晶粒径は、軟磁性膜を電解メッキ法により成膜するとき、電解メッキ工程の条件により制御することができる。
【0008】
しかし、軟磁性膜の平均結晶粒径が大きいと、今度は、保磁力Hcが増大する。すなわち前記応力と保磁力Hcの間にはトレードオフの関係が成り立っていると考えられる。
【0009】
図21は、NiFe系合金の応力と保磁力Hcとの関係を示したグラフである。この実験に使用した試料は、すべてFeの組成比がほぼ72質量%にされたものである。
【0010】
図21に示すように、応力が低下すると逆に保磁力Hcが増大することがわかる。保磁力Hcの増加は、軟磁性膜の飽和磁束密度Bsや異方性磁界Hkなどの軟磁気特性に悪影響を及ぼし、前記軟磁性膜が劣化してしまう。このため、薄膜磁気ヘッドのコア層に使用される軟磁性膜には、できる限り低い保磁力Hcが求められる。
【0011】
以上のように、今後の高記録密度化に伴って、薄膜磁気ヘッドのコア層として使用される軟磁性膜には、飽和磁束密度Bsが高く、しかも応力及び保磁力Hcが低いことが求められるが、従来では、それらすべて満たすFeNi系合金を製造することはできなかった。
【0012】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、高飽和磁束密度Bsで且つ、低応力及び低保磁力Hcを実現できるFeNi系合金の軟磁性膜及びこの軟磁性膜を用い、高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを提供することを目的としている。
【0013】
また本発明は、メッキ浴中にジカルボン酸の添加や、さらには電解メッキ法の改良などによって、高飽和磁束密度Bsで且つ、低応力及び低保磁力HcのFeNi系合金を容易にしかも再現性良くメッキ形成することが可能な軟磁性膜の製造方法及び前記薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の軟磁性膜は、Sを含有するFeNi合金であり、Sの組成比が0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満であり、前記Feの組成比が72質量%以上で80質量%以下であり、膜面の中心線平均粗さRaは、200Å以下であり、パルス電流を用いた電解メッキ法にてメッキ形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
このような軟磁性膜は、Ni及びFeにより磁性が担われており、元素Sの組成比の増加に伴って、保磁力Hcと応力が共に低下するので、低応力と優れた軟磁気特性を両立することができる。また、元素Sの組成比の増加に伴って異方性磁界が上昇するので、軟磁気特性が向上する。
【0016】
一方、このような軟磁性膜では、飽和磁束密度Bsが、元素Sの組成比により大きな影響を受けないので、高い飽和磁束密度Bsを保持したまま、低応力、且つ優れた軟磁気特性とすることができる。
【0017】
元素Sの組成比を0.116質量%以下とすると、保磁力Hc及び応力の低下が見られず、また0.140質量%以上とすると膜面の面粗れがひどくなってしまう。面粗れがひどいと、例えば前記軟磁性膜が薄膜磁気ヘッドのコア材として使用されたとき、その上に形成されるギャップ層の厚みを一定に保てず、前記ギャップ層の厚みで決まるギャップ長が変動しやすくなり、所定の磁極形状を形成できないこと、また耐食性が低下しやすくなるので好ましくない。このため軟磁性膜の膜面の面粗れはできる限り小さくする必要がある。本発明によれば、上記の組成範囲内で形成された軟磁性膜の膜面の中心線平均粗さRaを概ね200Å以下、より好ましくは80Å以下にすることができる。
【0018】
なお本発明では、前記軟磁性膜の前記Sの組成比は、0.126質量%以上であることが好ましい。このような軟磁性膜では、応力及び保磁力Hcの双方を効果的に低減させることができる。
【0019】
また本発明では、前記Sの組成比が、0.125質量%以上で0.132質量%以下であることが好ましい。後述の実験結果によれば、この組成範囲内であると応力を概ね160MPa以下にすることができる。また磁化困難軸方向の保磁力Hcを概ね470(A/m)以下、磁化容易軸方向の保磁力Hcを、概ね270(A/m)以下に抑えることができる。このようにさらに効果的に応力及び保磁力の低下を図ることができる。また面粗れを適切に小さくでき、上記の組成範囲内で形成された軟磁性膜の膜面の中心線平均粗さRaを概ね80Å以下にすることができることが後述の実験で確認されている。
【0021】
FeNi系合金に求められる重要な特性の一つは、高飽和磁束密度Bsである。既に説明したようにFeの組成比を増加させることで、FeNi系合金の飽和磁束密度Bsを上げることができることがわかっている。
【0022】
本発明によれば、Feの組成比が55質量%程度であった従来のFeNi系合金に比べて、Fe組成比を55質量%よりも多くすることで高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。しかも本発明では、上記した元素Sの含有量であれば、高飽和磁束密度Bsを保ちつつ、応力が低く、また低保磁力HcのFeNi系合金を提供することができる。またFeの組成比を72質量%以上で80質量%以下とすれば、後述するパルス電流を用いた電解メッキ法によって容易に所定の組成比を有するFeNi系合金をメッキ形成することができる。
【0024】
また本発明の軟磁性膜は、前記Feの組成比が72質量%以上であることが好ましい。このような軟磁性膜では、飽和磁束密度Bsが1.8Tを越え、組成比によっては1.9T以上の高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。
【0027】
本発明では、FeNi系合金に上記した組成範囲の元素Sを添加しても、1.8T以上の高い飽和磁束密度Bsを保ちつつ、前記元素Sの添加によって応力を低くでき、しかも低保磁力HcのFeNi系合金を提供することができる。
【0028】
ただしFe組成比が80質量%よりも多くなると、元素Sの添加によっても応力が大きくなって膜剥れを起しやすくなり好ましくない。またFe組成比を80質量%以上にすると、結晶粒径の増大に伴う保磁力Hcの増大や、飽和磁束密度Bsなどの軟磁気特性も低下しやすくなるため、本発明では、前記Fe量を80質量%以下に設定している。
本発明では、Feの組成比は、75質量%未満であることが好ましい。また前記軟磁性膜の膜面の中心線平均粗さRaは、好ましくは、80Å以下である。
【0029】
また本発明は、磁性材料製の下部コア層と、前記下部コア層上に磁気ギャップを介して形成された上部コア層と、両コア層に記録磁界を与えるコイル層とを有する薄膜磁気ヘッドにおいて、
少なくとも一方のコア層は、上記のいずれかに記載された軟磁性膜で形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
本発明では、前記下部コア層上には記録媒体との対向面で下部磁極層が隆起形成され、前記下部磁極層が前記軟磁性膜により形成されていることが好ましい。
【0031】
また本発明は、下部コア層及び上部コア層と、前記下部コア層と上部コア層との間に位置し且つトラック幅方向の幅寸法が前記下部コア層及び上部コア層よりも短く規制された磁極部とを有し、
前記磁極部は、下部コア層と連続する下部磁極層、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記下部磁極層と前記上部磁極層間に位置するギャップ層とで構成され、あるいは前記磁極部は、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記上部磁極層と下部コア層との間に位置するギャップ層とで構成され、
前記上部磁極層及び/または下部磁極層は、上記のいずれかに記載された軟磁性膜で形成されていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明では、前記上部磁極層は前記軟磁性膜で形成され、前記上部磁極層上に形成される上部コア層は、前記上部磁極層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成されることが好ましい。
また前記磁極部のトラック幅方向への幅寸法及び奥行き寸法は、0.1μm〜0.5μmであり、前記磁極部の高さ寸法は、前記幅寸法の2倍から5倍であることが好ましい。
【0033】
また本発明では、前記コア層は、少なくとも磁気ギャップに隣接する部分が2層以上の磁性層から成り、あるいは前記磁極層が2層以上の磁性層から成り、前記磁性層のうち前記磁気ギャップに接する磁性層が、前記軟磁性膜により形成されていることが好ましい。
【0034】
このとき、前記磁気ギャップ層に接する以外の他の磁性層は、前記磁気ギャップ層に接する磁性層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成されることが好ましい。
【0035】
本発明における軟磁性膜は、0.116質量%よりも多く、且つ0.140質量%未満の元素Sを含有する、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下の元素Sを含有するFeNi系合金であり、さらにFeを72質量%以上で80質量%以下にすることで、従来に比べて高い飽和磁束密度Bsを保ちながら、低応力及び低保磁力Hcを確保できる軟磁性膜とすることができる。またこの軟磁性膜では膜面の面粗れを小さくすることができる。
【0036】
薄膜磁気ヘッドの構造には、下部コア層にギャップ層を介して上部コア層が対向する構造や、高記録密度化に適切に対応すべく開発された、前記下部コア層と下部コア層間に、トラック幅を規制するための磁極層を前記コア層とは別に設けた構造など種々存在するが、高記録密度化に対応すべくトラック幅Twを1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下に設定することが必要となり、このような極めて狭い空間内に形成される磁性層には、高い飽和磁束密度Bsなどの優れた軟磁気特性のみならず低応力や面粗れの減少などの膜特性も必要不可欠な要素となってくる。
【0037】
こうしたことから、高飽和磁束密度を有し、且つ低応力で面粗れが小さい本発明のFeNi系合金を、薄膜磁気ヘッドのコア層や磁極層として使用することにより、前記コア層及び磁極層の飽和磁束密度Bsを大きくでき、優れた軟磁気特性を有すると共に応力や面粗れを小さくできるため、所望の形状の前記コア層及び磁極層を形成することができ、また耐食性に優れた薄膜磁気ヘッドを再現性良く製造することが可能となる。
【0038】
また、本発明の軟磁性膜の製造方法は、Sを含有するFeNi合金を電解メッキ法により成膜する方法であって、電解メッキ工程に用いるメッキ浴に、Feイオン、Niイオン及びSイオンを含有させ、さらにこのメッキ浴中にジカルカルボン酸として、酒石酸 [ HOOC(C 2 H 4 O 2 )COOH ] 、酒石酸ナトリウム [ HOOC(C 2 H 2 O 2 Na 2 )COOH ] 、酒石酸ナトリウムカリウム [ HOOC(C 2 H 2 O 2 NaK)COOH ] 、シュウ酸(HOOCCOOH)、コハク酸 [ HOOC(CH 2 ) 2 COOH ] 、マロン酸 [ HOOC(CH 2 )COOH ] 、マレイン酸(HOOCHC=CHCOOH)のいずれか一つを添加して、Sの組成比が0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満となり、前記Feの組成比が72質量%以上で80質量%以下となる軟磁性膜を、パルス電流を用いた電解メッキ法によってメッキ形成することを特徴とするものである。
【0039】
本発明のように、メッキ浴中にジカルボン酸を添加すると、軟磁性膜中に元素Sが取り込まれやすくなって、前記軟磁性膜中での元素Sの組成比を所定量含有させることが可能になる。
【0040】
本発明では、前記ジカルボン酸は酒石酸ナトリウムであり、前記酒石酸ナトリウムの添加量を、前記メッキ浴全体に対し、37mmol/Lよりも多く、且つ100mmol/L未満とすることが好ましい。
【0041】
本発明では、ジカルボン酸として酒石酸ナトリウムを選択した場合、前記酒石酸ナトリウムの添加量を上記範囲内にすることで、Sの組成比が0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満となるFeNi系合金を再現性良くメッキ形成することができる。
【0042】
なお酒石酸ナトリウムを100mmol/L以下にしたのは、これ以上、酒石酸ナトリウムを添加するとFeNi系合金の膜面の面粗れがひどくなり、所定の磁極形状を形成することができないこと、またFeNi系合金の耐食性が低下するからである。酒石酸ナトリウムの添加量を100mmol/L以下にすることで、膜面の中心線平均粗さRaを200Å以下にできることが後述する実験によってわかった。
【0043】
また本発明では、前記ジカルボン酸は、酒石酸ナトリウムであり、前記酒石酸ナトリウムの添加量を、前記メッキ浴全体に対し、62mmol/L以上で82mmol/L以下とすることがより好ましい。
【0044】
上記のジカルボン酸ナトリウムを添加することで、FeNi系合金中に含まれる元素Sを、確実に0.116質量%よりも多く、0.140質量%よりも小さい組成範囲にできる。また膜面の面粗れの小さいFeNi系合金を形成でき、本発明によれば、前記膜面の中心線平均粗さRaを80Å以下に抑えることができる。
【0045】
また上記のジカルボン酸の添加量によれば、前記Sの組成比が、0.125質量%以上で0.132質量%以下となる軟磁性膜をメッキ形成することも可能である。
【0046】
また本発明では、メッキ浴中にサッカリンナトリウムを混入することが好ましい。このサッカリンナトリウム(C6H4CONNaSO2)内に含まれているSが、ジカルボン酸の添加によってFeNi系合金内に取り込まれていくものと考えられている。
【0048】
パルス電流を用いた電解メッキ法では、例えば電流制御素子のON/OFFを繰返し、メッキ形成時に、電流を流す時間と、電流を流さない空白な時間を設ける。このように電流を流さない時間を設けることで、NiFe系合金膜を、少しずつメッキ形成し、従来、一般に使用されていた直流電流を用いた電解メッキ法に比べメッキ形成時における電流密度の分布の偏りを緩和することが可能になっている。パルス電流による電解メッキ法によれば直流電流による電解メッキ法に比べて軟磁性膜中に含まれるFe含有量の調整が容易になり、前記Fe含有量を膜中に多く取り込むことができる。
【0049】
また本発明は、磁性材料製の下部コア層と、記録媒体との対向面で前記下部コア層と磁気ギャップを介して対向する上部コア層と、両コア層に記録磁界を誘導するコイル層とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法において、
前記上部コア層及び/または下部コア層を、上記に記載された製造方法により形成された軟磁性膜によりメッキ形成することを特徴とするものである。
【0050】
また本発明では、前記下部コア層上には記録媒体との対向面で下部磁極層を隆起形成し、このとき前記下部磁極層を前記軟磁性膜によりメッキ形成することが好ましい。
【0051】
また本発明は、下部コア層及び上部コア層と、前記下部コア層と上部コア層との間に位置し且つトラック幅方向の幅寸法が前記下部コア層及び上部コア層よりも短く規制された磁極部とを有し、
前記磁極部を、下部コア層と連続する下部磁極層、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記下部磁極層と前記上部磁極層間に位置するギャップ層とで形成し、あるいは前記磁極部は、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記上部磁極層と下部コア層との間に位置するギャップ層とで形成し、
前記上部磁極層及び/または下部磁極層を、上記に記載された製造方法により形成された軟磁性膜によりメッキ形成することを特徴とするものである。
【0052】
また本発明では、前記上部磁極層を前記軟磁性膜でメッキ形成し、前記上部磁極層上に形成される上部コア層を、前記上部磁極層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成することが好ましい。
また本発明では、前記下部コア層にレジスト層を形成し、前記レジスト層に前記磁極部を形成するための溝を形成し、前記溝のトラック幅方向への幅寸法及び奥行き寸法を、0.1μm〜0.5μmで形成し、前記溝の高さ寸法を、前記幅寸法の2倍から5倍で形成することが好ましい。
【0053】
また本発明では、前記コア層の少なくとも磁気ギャップに隣接する部分を2層以上の磁性層で形成し、あるいは前記磁極層を2層以上の磁性層で形成し、前記磁性層のうち前記磁気ギャップに接する磁性層を、前記軟磁性膜によりメッキ形成することが好ましい。
【0054】
また本発明では、前記磁気ギャップ層に接する以外の他の磁性層を、前記磁気ギャップ層に接する磁性層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成することが好ましい。
【0055】
上記にしたように、本発明における軟磁性膜の製造方法によれば、メッキ浴中にジカルボン酸を添加することで、FeNi系合金中に元素Sを取り込みやすくなり、高飽和磁束密度Bsを有し、低応力且つ低保磁力Hcで、さらに膜面の面粗れの小さい軟磁性膜を再現性良く形成することができる。
【0056】
そして、この製造方法を利用して本発明における軟磁性膜を、薄膜磁気ヘッドのコア層や磁極層としてメッキ形成することで、高飽和磁束密度Bsを有し、低応力且つ低保磁力Hcで、さらに膜面の面粗れの小さいコア層や磁極層を再現性良く形成でき、高記録密度化に優れた薄膜磁気ヘッドを容易に製造することが可能になる。
【0057】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の軟磁性膜は、FeNi系合金であり、FeとNiの他にSを含有するものである。
【0058】
本発明によれば、高い飽和磁束密度Bsを有すると共に、応力及び保磁力Hcの低いFeNi系合金を形成できる。さらに膜面の面粗れを小さくすることができる。
【0059】
Feは主として飽和磁束密度Bsの向上を図るために重要な磁性元素である。Fe量は多いほど前記飽和磁束密度Bsを向上させることができる。
【0060】
従来では、前記Fe量は約55質量%程度であったが、本発明では前記Fe量を55質量%より多く、且つ75質量%未満と設定している。
【0061】
前記Fe量を55質量%よりも多くすることで飽和磁束密度Bsを1.6T以上にできる。また後述するパルス電流を用いた電解メッキ法によって、Fe量を75質量%未満に容易に調整することができる。
【0062】
また本発明では、前記Feの組成比は72質量%以上であることが好ましい。これによって飽和磁束密度Bsを1.8T以上にできる。
【0063】
また本発明では、より好ましくは前記Feの組成比は68質量%以上で80質量%以下の範囲内である。前記Feの組成比を68質量%以上にすると、前記飽和磁束密度Bsを1.8T以上にできる。また本発明では組成比によっては、前記飽和磁束密度Bsを1.9T以上、あるいは2.0T程度にまで向上させることが可能になる。
【0064】
ただし前記Fe組成比は80質量%以下であることが好ましく、これよりもFe量が多くなると応力が大きくなって膜剥れが生じることが後述する実験によって確認されている。また結晶粒径の粗大化によって保磁力Hcの増大に伴う軟磁気特性の劣化も問題となる。したがって本発明では、前記Feの組成比を80質量%以下に設定している。
【0065】
本発明では上記のFe量を含有したFeNi系合金であり、高い飽和磁束密度Bsを維持しつつ、Fe量が多くなることで問題視される応力の増大や保磁力Hcの増大を改善すべく、元素Sの組成比を以下のように設定した。
【0066】
まず本発明では、前記Sの組成比は0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満であることが好ましい。後述する実験結果によれば、同程度のFe量を含むが、S組成比が本発明よりも少ない軟磁性膜に比べて、応力の低減を図ることができ、また保磁力Hcを小さくできることがわかった。本発明によれば応力(stress)を200MPa以下に抑えることができる。また磁化困難軸方向の保磁力Hcを約600(A/m)以下、磁化容易軸方向の保磁力Hcを約400(A/m)以下に抑えることができる。
【0067】
また本発明では、前記Sの組成比は0.126質量%以上であることが好ましい。これによってより適切に応力の低減、および保磁力Hcの低減を図ることができる。具体的には前記応力を概ね160(A/m)以下、磁化困難軸方向の保磁力Hcを概ね470(A/m)以下、磁化容易軸方向の保磁力Hcを概ね270(A/m)以下に抑えることができる。
【0068】
本発明では、より好ましくは前記Sの組成比を0.125質量%以上で0.132質量%以下に設定することである。これによってより適切に応力の低減、および保磁力Hcの低減を図ることができる。具体的には前記応力を概ね160(A/m)以下、磁化困難軸方向の保磁力Hcを概ね470(A/m)以下、磁化容易軸方向の保磁力Hcを概ね270(A/m)以下に抑えることができる。
【0069】
ところで元素Sを上記組成比内で含有させるには、後述するようにメッキ浴中にジカルボン酸を添加することで達成することができる。前記ジカルボン酸の添加量を多くしていけば、元素Sの組成比が大きくなることが後述する実験によってわかっている。
【0070】
しかしながら前記ジカルボン酸の添加量を多くしすぎると膜面の面粗れがひどくなることがわかった。膜面の面粗れはできる限り小さいことが好ましい。特に薄膜磁気ヘッドとして、上記したFeNi系合金を使用する場合には、前記FeNi系合金膜の面粗れがひどいと、その上に形成される層が面粗れの影響を受けて適切な形状で形成されないため、所定の形状及び特性を有する積層膜を形成できず、また耐食性の低下の問題が懸念される。
【0071】
そのため膜面の面粗れはできる限り小さくすることが好ましい。後述するようにジカルボン酸として例えば酒石酸ナトリウムを使用した場合、前記酒石酸ナトリウムの添加量は、メッキ浴全体に対し、37mmol/Lよりも多く、且つ100mmol/L未満に設定している。これによって前記FeNi系合金中に含有される元素Sの組成比は、0.140質量%未満となり、このとき膜面の中心線平均粗さRaを200Å以下に抑えることができる。
【0072】
より好ましくは、前記酒石酸ナトリウムの添加量を、メッキ浴全体に対し62mmol/L以上で82mmol/L以下に設定することであり、これによって、より確実に元素Sの含有量を、0.116質量%よりも多く且つ0.140質量%よりも小さくでき、また膜面の中心線平均粗さRaを80Å以下に抑えることが可能である。
【0073】
また上記の酒石酸ナトリウムの添加量であると、前記FeNi系合金中に含有される元素Sの組成比を、0.125質量%以上で0.132質量%以下の組成範囲内にできる。また膜面の中心線平均粗さRaを80Å以下に抑えることが可能である。
【0074】
ただし膜面の中心線平均粗さRaは、S量のみならずFe量にも影響を受けるものと考えられ、本発明では、前記Fe量を55質量%よりも多く且つ75質量%未満の範囲、より好ましくは68質量%以上で80質量%以下にすることで、上記した200Å以下、好ましくは80Å以下の中心線平均粗さRaを確保できるものと考えられる。
【0075】
なお上記したFeNi系合金には、元素Sの他に元素Cも含有することが確認されている。
【0076】
本発明におけるFeNi系合金膜の一例を以下に開示する。
膜厚が約2μmであり、Feの組成比が約72質量%、Niの組成比が約27質量%、Sの組成比が0.125〜0.132質量%であり、残部がCである。なお、これら組成比は、EPMAによる組成分析結果である。
【0077】
この軟磁性膜の保磁力Hcと応力は、Sの組成比の増加に伴い低下して、保磁力Hc(磁化困難軸方向)が、概ね480A/m以下であると共に、応力(4inchSi基板のソリによる測定)が、概ね160MPa以下である。また、異方性磁界は、Sの組成比の増加により上昇して、210A/m以上である。
【0078】
また、この軟磁性膜は、高飽和磁束密度Bsとするために、Feの組成比が72質量%と高いものである。飽和磁束密度Bsは、Sの組成比による大きな影響を受けず、約1.9Tに保持されている。
【0079】
また、この軟磁性膜の比抵抗は、Sの組成比による大きな影響を受けず、約32μΩ・cmに保持されている。
【0080】
以上詳述した本発明におけるFeNi系合金は、以下に説明する薄膜磁気ヘッドのコア層あるいは磁極層として使用される。
【0081】
ハード磁気ディスク装置等に搭載される薄膜磁気ヘッドは、例えば図1に示すように再生用ヘッド部h1と記録用ヘッド部h2(インダクティブヘッド)とから構成された複合型薄膜磁気ヘッドであり、再生用ヘッド部h1は、スライダ1の一端面1aにアルミナ等の下地層15を介して形成されており、例えばFeNi系合金からなる下部シールド層2と、アルミナ等からなり下部シールド層2を覆う下部ギャップ層3と、下部ギャップ層3上に形成された、異方性磁気抵抗効果(AMR効果)、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)、あるいはトンネル型磁気抵抗効果(TMR効果)を利用した磁気抵抗効果素子4と、磁気抵抗効果素子4に電気的に接続された電極層5と、アルミナ等からなり磁気抵抗効果素子4と電極層5を覆う上部ギャップ層6と、上部ギャップ層6上に形成された上部シールド層7とから構成されている。
【0082】
再生用ヘッド部h1上の記録用ヘッド部h2は、下部コア層7が再生用ヘッド部h1の上部シールド層7と兼用されて、FeNi系合金からなる軟磁性膜であり、アルミナやSiO2等の非磁性材料からなり下部コア層7上に形成されたギャップ層8と、Cu等の良導電材からなりギャップ層8上にパターン形成されたコイル層9と、コイル層9上に塗布されたレジスト等の絶縁層11を介して形成された上部コア層10とを有し、上部コア層10は、下部コア層7と同様、FeNi系合金からなる軟磁性膜である。上部コア層10の基端部10aは、上部シールド層7と兼用される下部コア層と磁気的に接続された状態となっており、磁気ディスク対向面1b側において、下部コア層7と上部コア層10がギャップ層8を挟持する間隔は、書き込みギャップGとなる。
【0083】
このような薄膜磁気ヘッドの磁気ディスク対向面1b側には、カーボンからなる保護膜16が形成されて、上部コア層10と下部コア層7は、保護膜16により覆われている。
【0084】
次に、本発明の薄膜磁気ヘッドの駆動を説明する。
薄膜磁気ヘッドの駆動時には、コイル層9に記録電流が印加されて、記録電流により、上部コア層10及び下部コア層7に記録磁界が誘導される。このとき、記録磁界は、上部コア層10と下部コア層7を磁化困難軸方向に貫くので、上部コア層10と下部コア層7は、軟磁性膜の磁化困難軸方向における磁気特性を有する。
【0085】
上部コア層10と下部コア層7に誘導された記録磁界は、書き込みギャップG間で洩れ磁界となり、洩れ磁界により記録媒体に磁気記録が付与される。
【0086】
このような薄膜磁気ヘッドは、上部コア層10と下部コア層7が高い飽和磁束密度Bsを有するので、高記録密度化に対応することができる。また、高記録周波数に対応するためには、上部コア層10と下部コア層7の比抵抗が高く、渦電流損失を抑えることが必要であるが、上部コア層10と下部コア層7の比抵抗は、従来と変わらず、高記録周波数特性を保持することができる。
【0087】
前記上部コア層10及び下部コア層7は、既に説明したFeNi系合金の軟磁性膜で形成される。
【0088】
本発明によれば、前記FeNi系合金には、0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満の、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下の元素Sを含み、また55質量%を越え、且つ75質量%未満の、好ましくは68質量%以上で80質量%以下のFeを含んでいる。
【0089】
そして、上記FeNi系合金によれば、飽和磁束密度Bsを1.6T以上、好ましくは1.8T以上にでき、また同等のFe量を含むが、S組成比が本発明に比べて低い軟磁性膜と比較して、応力を小さく、しかも保磁力Hcを小さくすることができる。保磁力Hcは、飽和磁束密度Bsや異方性磁界などの軟磁気特性に影響を与え、保磁力Hcを小さくするほど前記軟磁気特性を良好にすることができる。さらに膜面の面粗れも小さい。
【0090】
上記のFeNi系合金は高い飽和磁束密度Bsを有し、また他の軟磁気特性にも優れるため、前記FeNi系合金を、下部コア層7及び上部コア層10に使用することで、前記コア層のギャップ近傍に磁束を集中させて記録密度を向上させることが可能になり、今後の高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造することが可能である。
【0091】
しかも前記コア層は、応力も低く、さらに膜面の面粗れも小さいため、前記コア層の形成時、前記コア層に膜剥れが生じることなく、前記コア層を適切にその上下の層と密着させて形成することが可能になる。
【0092】
また膜面の面粗れも小さいため、耐食性に優れると共に、例えば前記FeNi系合金を下部コア層7に使用した場合、その上に形成される膜厚の非常に薄いギャップ層8を所定厚みで形成しやすく、前記下部コア層7と上部コア層10間の間隔で決定されるギャップ長Gを所定の長さで再現性良く形成することが可能になる。
【0093】
なお上記の説明において、本発明の薄膜磁気ヘッドを複合型薄膜磁気ヘッドとして説明したが、記録用ヘッド部だけの記録専用薄膜磁気ヘッドでも良い。また、上記実施の形態では、上部コア層10と下部コア層7の両方を、本発明の軟磁性膜としたが、上部コア層10と下部コア層7のどちらかが、本発明の軟磁性膜であれば良い。
【0094】
本発明では、図1に示す構造以外の薄膜磁気ヘッドにも、本発明におけるFeNi系合金の軟磁性膜を使用することができる。以下に本発明における他の薄膜磁気ヘッドの構造について説明する。
【0095】
図2は本発明における他の薄膜磁気ヘッドの部分正面図、図3は、図2に示す薄膜磁気ヘッドを一点鎖線から切断し矢印方向から見た部分縦断面図である。
【0096】
再生用ヘッド部h1の構造は図1と同じである。また図2及び図3に示す実施形態では、図1と同様に前記上部シールド層7が記録用ヘッド部h2の下部コア層としても兼用されており、前記下部コア層7上には、Gd決め層17が形成され、記録媒体との対向面から前記Gd決め層17の先端部までの長さ寸法でギャップデプス(Gd)が規制される。前記Gd決め層17は例えば有機絶縁材料で形成される。
【0097】
また前記下部コア層7の上面7aは図2に示すように、磁極部18の基端からトラック幅方向(図示X方向)に離れるにしたがって下面方向に傾く傾斜面で形成されており、これによりサイドフリンジングの発生を抑制することが可能である。
【0098】
また図3に示すように、記録媒体との対向面から前記Gd決め層17上にかけて磁極部18が形成されている。
【0099】
前記磁極部18は下から下部磁極層19、非磁性のギャップ層20、及び上部磁極層21が積層されている。
【0100】
前記下部磁極層19は、下部コア層7上に直接メッキ形成されている。また前記下部磁極層19の上に形成されたギャップ層20は、メッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されていることが好ましい。具体的には、NiP、NiPd、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Crのうち1種または2種以上から選択されたものであることが好ましい。
【0101】
なお本発明における具体的な実施形態として前記ギャップ層20にはNiPが使用される。NiPで前記ギャップ層20を形成することで前記ギャップ層20を適切に非磁性状態にできるからである。
【0102】
さらに前記ギャップ層20の上に形成された上部磁極層21は、その上に形成される上部コア層22と磁気的に接続される。
【0103】
上記のようにギャップ層20がメッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されると、下部磁極層19、ギャップ層20及び上部磁極層21を連続メッキ形成することが可能である。
【0104】
なお前記磁極部18は、ギャップ層20及び上部磁極層21の2層で構成されていてもよい。
【0105】
図2に示すように、前記磁極部18はトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法がトラック幅Twで形成されている。
【0106】
図2及び図3に示すように、前記磁極部18のトラック幅方向(図示X方向)の両側及びハイト方向後方(図示Y方向)には例えば無機絶縁材料からなる絶縁層23が形成されている。前記絶縁層23の上面は前記磁極部18の上面と同一平面とされる。
【0107】
図3に示すように、前記絶縁層23上にはコイル層24が螺旋状にパターン形成されている。また前記コイル層24上は有機絶縁材料製の絶縁層25によって覆われている。なお前記コイル層24は絶縁層を挟んで2層以上積層された構成であっても良い。
【0108】
図3に示すように、磁極部18上から絶縁層25上にかけて上部コア層22が例えばフレームメッキ法によりパターン形成されている。図2に示すように、前記上部コア層22の先端部22aは、記録媒体との対向面でのトラック幅方向における幅寸法がT1で形成され、かかる幅寸法T1はトラック幅Twよりも大きく形成されている。
【0109】
また図3に示すように、前記上部コア層22の基端部22bは、下部コア層7上に形成された磁性材料製の接続層(バックギャップ層)26上に直接接続されている。
【0110】
本発明では、前記上部磁極層21及び/または下部磁極層19が、本発明におけるFeNi系合金で形成される。
【0111】
本発明では、前記FeNi系合金には、0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満の、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下の元素Sを含み、また55質量%を越え、且つ75質量%未満の、好ましくは68質量%以上で80質量%以下のFeを含んでいる。
【0112】
そして、上記FeNi系合金によれば、飽和磁束密度Bsを1.6T以上、好ましくは1.8T以上にでき、また同等のFe量を含むが、S組成比が本発明に比べて低い軟磁性膜と比較して、応力を小さく、しかも保磁力Hcを小さくすることができる。保磁力Hcは、飽和磁束密度Bsや異方性磁界などの軟磁気特性に影響を与え、保磁力Hcを小さくするほど前記軟磁気特性を良好にすることができる。さらに膜面の面粗れも小さい。
【0113】
従って前記FeNi系合金を磁極層19、21に使用することで、高記録密度化に優れた薄膜磁気ヘッドを再現性良く形成でき、また面粗れも小さく低応力であるから、非常に狭い空間内に形成される前記磁極層19、21を所定の磁極形状で形成でき、また耐食性に優れたものとすることができる。
【0114】
図4は、本発明における他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの構造を示す部分正面図、図5は図4に示す一点鎖線から薄膜磁気ヘッドを切断し矢印方向から見た縦断面図である。
【0115】
この実施形態では、再生用ヘッド部h1の構造は図1ないし図3と同じである。
【0116】
図4に示すように下部コア層7上には、例えば無機絶縁材料で形成された絶縁層31が形成されている。前記絶縁層31には、記録媒体との対向面からハイト方向(図示Y方向)後方に所定の長さ寸法で形成されたトラック幅形成溝31aが形成されている。前記トラック幅形成溝31aは記録媒体との対向面においてトラック幅Twで形成されている(図4を参照のこと)。
【0117】
前記トラック幅形成溝31aには、下から下部磁極層32、非磁性のギャップ層33、及び上部磁極層34が積層された磁極部30が形成されている。
【0118】
前記下部磁極層32は、下部コア層7上に直接メッキ形成されている。また前記下部磁極層32の上に形成されたギャップ層33は、メッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されていることが好ましい。具体的には、NiP、NiPd、NiW、NiMo、Au、Pt、Rh、Pd、Ru、Crのうち1種または2種以上から選択されたものであることが好ましい。
【0119】
なお本発明における具体的な実施形態として前記ギャップ層33にはNiPが使用される。NiPで前記ギャップ層33を形成することで前記ギャップ層33を適切に非磁性状態にできるからである。
【0120】
なお前記磁極部30は、ギャップ層33及び上部磁極層34の2層で構成されていてもよい。
【0121】
前記ギャップ層33の上には、記録媒体との対向面からギャップデプス(Gd)だけ離れた位置から絶縁層31上にかけてGd決め層37が形成されている。前記Gd決め層37は例えば有機絶縁材料で形成される。
【0122】
さらに前記ギャップ層33の上に形成された上部磁極層34は、その上に形成される上部コア層40と磁気的に接続される。
【0123】
上記のようにギャップ層33がメッキ形成可能な非磁性金属材料で形成されると、下部磁極層32、ギャップ層33及び上部磁極層34を連続メッキ形成することが可能である。
【0124】
図5に示すように前記絶縁層31の上にはコイル層38が螺旋状にパターン形成されている。前記コイル層38は有機絶縁材料などで形成された絶縁層39によって覆われている。
【0125】
図4に示すように、トラック幅形成溝31aのトラック幅方向(図示X方向)における両側端面には、前記上部磁極層34の上面から前記絶縁層31の上面31bにかけて下部コア層7から離れる方向にしたがって徐々に幅寸法が広がる傾斜面31c,31cが形成されている。
【0126】
そして図4に示すように上部コア層40の先端部40aは、前記上部磁極層34上面から前記傾斜面31c,31c上にかけて下部コア層7から離れる方向に形成されている。
【0127】
図5に示すように前記上部コア層40は、記録媒体との対向面からハイト方向(図示Y方向)にかけて絶縁層39上に形成され、前記上部コア層40の基端部40bは下部コア層7上に直接形成されている。
【0128】
図4及び図5に示す実施形態では、下部磁極層32及び/または上部磁極層34が、本発明におけるFeNi系合金の軟磁性膜で形成される。
【0129】
本発明では、前記FeNi系合金には、0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満の、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下の元素Sを含み、また55質量%を越え、且つ75質量%未満の、好ましくは68質量%以上で80質量%以下のFeを含んでいる。
【0130】
そして、上記FeNi系合金によれば、飽和磁束密度Bsを1.6T以上、好ましくは1.8T以上にでき、また同等のFe量を含むが、S組成比が本発明に比べて低い軟磁性膜と比較して、応力を小さく、しかも保磁力Hcを小さくすることができる。保磁力Hcは、飽和磁束密度Bsや異方性磁界などの軟磁気特性に影響を与え、保磁力Hcを小さくするほど前記軟磁気特性を良好にすることができる。さらに膜面の面粗れも小さい。
【0131】
従って前記FeNi系合金を磁極層32、34に使用することで、高記録密度化に優れた薄膜磁気ヘッドを再現性良く形成でき、また面粗れも小さく低応力であるから、非常に狭い空間内に形成される前記磁極層19、21を所定の磁極形状で形成でき、また耐食性に優れたものとすることができる。
【0132】
また本発明では、図2ないし図5に示す前記下部磁極層19,32及び/または上部磁極層21,34は2層以上の磁性層が積層されて構成されていてもよい。かかる構成の場合、ギャップ層20,33に接する側の磁性層を本発明におけるFeNi系合金で形成することが好ましい。また特に前記ギャップ層20,33に接する側の磁性層を上記した、68質量%以上で80質量%以下のFeを含み、0.116質量%よりも多く且つ0.140質量%未満の、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下のSを含むFeNi系合金で形成することが好ましい。これによってギャップ近傍に磁束をより集中させることができ、今後の高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造できると共に、膜剥れなどが発生せず所定形状の磁極層を再現性良く形成することが可能である。
【0133】
また前記ギャップ層20,33に接する磁性層以外の他の磁性層は、如何なる材質、組成比の磁性材料で形成されても良いが、前記ギャップ層20,33に接する側の磁性層よりも飽和磁束密度Bsが小さくなることが好ましい。これにより前記他の磁性層からギャップ層20,33に接する側の磁性層に適切に記録磁界が導かれ高記録密度化を図ることが可能になる。
【0134】
また下部磁極層19,32の飽和磁束密度Bsは高いことが好ましいが、上部磁極層21,34の飽和磁束密度Bsよりも低くすることにより、下部磁極層と上部磁極層との間における洩れ磁界を磁化反転しやすくすると、より記録媒体への信号の書込み密度を高くできる。
【0135】
図6は本発明における他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの縦断面図である。
図1の薄膜磁気ヘッドの構造とよく似ているが、違いは、上部コア層10が2層の磁性層で積層されて構成されていることである。
【0136】
前記上部コア層10は、高い飽和磁束密度Bsを有する高Bs層47とその上に積層された上層48とで構成されている。
【0137】
前記高Bs層47及び/または下部コア層7は、本発明におけるFeNi系合金で形成される。
【0138】
本発明では、前記FeNi系合金には、0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満の、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下の元素Sを含み、また55質量%を越え、且つ75質量%未満の、好ましくは68質量%以上で80質量%以下のFeを含んでいる。
【0139】
そして、上記FeNi系合金によれば、飽和磁束密度Bsを1.6T以上、好ましくは1.8T以上にでき、また同等のFe量を含むが、S組成比が本発明に比べて低い軟磁性膜と比較して、応力を小さく、しかも保磁力Hcを小さくすることができる。保磁力Hcは、飽和磁束密度Bsや異方性磁界などの軟磁気特性に影響を与え、保磁力Hcを小さくするほど前記軟磁気特性を良好にすることができる。さらに膜面の面粗れも小さい。
【0140】
この本発明におけるFeNi系合金を、前記高Bs層47及び/または下部コア層7として使用することで、飽和磁束密度Bsなどの軟磁気特性を向上でき、ギャップ近傍に磁束を集中させて記録密度を向上させることができると共に、膜剥れなどが発生せず、所定形状のコア層を再現性良く容易に形成することができる。
【0141】
前記上部コア層10を構成する上層48は、高Bs層47に比べて飽和磁束密度Bsが小さくなっているものの、前記高Bs層47よりも比抵抗が高くされている。前記上層48は例えばNi80Fe20合金で形成される。
【0142】
これによって前記高Bs層47が前記上層48よりも高い飽和磁束密度Bsを有し、ギャップ近傍に磁束を集中させて、記録分解能を向上させることが可能になる。
【0143】
また上部コア層46に比抵抗の高い上層48が設けられたことで、記録周波数が上昇することにより発生する渦電流による損失を低減させることができ、今後の高記録周波数化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造することができる。
【0144】
また本発明では図6に示すように、高Bs層47が、ギャップ層41と対向する下層側に形成されていることが好ましい。また前記高Bs層47はギャップ層41上に直接接する上部コア層46の先端部46aのみに形成されていてもよい。
【0145】
また下部コア層7も、高Bs層と高比抵抗層の2層で構成されていてもよい。かかる構成の場合、高比抵抗層の上に高Bs層が積層され、前記高Bs層がギャップ層41を介して上部コア層10と対向する。
【0146】
また図6に示す実施形態では、上部コア層10が2層の積層構造となっているが、3層以上であってもよい。かかる構成の場合、高Bs層47は、磁気ギャップ層41に接する側に形成されることが好ましい。
【0147】
図7は本発明における他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの縦断面図である。
図7の実施形態では再生用ヘッド部h1の構成は図1と同じである。図7に示すように下部コア層7の上に下部磁極層50が記録媒体との対向面から隆起形成されている。前記下部磁極層50のハイト方向後方(図示Y方向)には絶縁層51が形成されている。前記絶縁層51の上面は、凹形状となり、コイル形成面51aが形成されている。
【0148】
前記下部磁極層50上から前記絶縁層51上にかけてギャップ層52が形成されている。さらに前記絶縁層51のコイル形成面51a上にはギャップ層52を介してコイル層53が形成されている。前記コイル層53上は有機絶縁製の絶縁層54によって覆われている。
【0149】
図7に示すように上部コア層55は、前記ギャップ層52上から絶縁層54上にかけて例えばフレームメッキ法によりパターン形成されている。
【0150】
前記上部コア層55の先端部55aは前記ギャップ層52上に下部磁極層50と対向して形成される。前記上部コア層55の基端部55bは、下部コア層7上に形成された持上げ層56を介して前記下部コア層7に磁気的に接続される。
【0151】
この実施形態においては、上部コア層55および/または下部磁極層50が、本発明におけるFeNi系合金で形成される。
【0152】
本発明では、前記FeNi系合金には、0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満の、あるいは0.125質量%以上で0.132質量%以下の元素Sを含み、また55質量%を越え、且つ75質量%未満の、好ましくは68質量%以上で80質量%以下のFeを含んでいる。
【0153】
そして、上記FeNi系合金によれば、飽和磁束密度Bsを1.6T以上、好ましくは1.8T以上にでき、また同等のFe量を含むが、S組成比が本発明に比べて低い軟磁性膜と比較して、応力を小さく、しかも保磁力Hcを小さくすることができる。保磁力Hcは、飽和磁束密度Bsや異方性磁界などの軟磁気特性に影響を与え、保磁力Hcを小さくするほど前記軟磁気特性を良好にすることができる。さらに膜面の面粗れも小さい。
【0154】
上記FeNi合金を下部磁極層50及び/または上部コア層55に使用することで、前記磁極層及びコア層を膜剥れなどがなく所定形状の耐食性に優れた膜として形成でき、飽和磁束密度Bsなどの軟磁気特性に優れた、高記録密度化に適切に対応可能な薄膜磁気ヘッドを再現性良く製造することができる。
【0155】
また上部コア層55は、その全体が前記FeNi系合金で形成されていてもよいが、図6と同様に前記上部コア層55が2層以上の磁性層の積層構造であり、そのギャップ層52と対向する側が高Bs層として前記FeNi系合金膜で形成されていてもよい。またかかる場合、前記上部コア層55の先端部55aのみが2層以上の磁性層の積層構造で形成され、前記ギャップ層52上に接して高Bs層が形成されていることが、ギャップ近傍に磁束を集中させ、記録密度を向上させる点からして好ましい。
【0156】
なお本発明では、図1ないし図7に示す各実施形態においてFeNi系合金膜はメッキ形成されていることが好ましい。本発明では前記FeNi系合金をパルス電流を用いた電解メッキ法によりメッキ形成することができる。また前記FeNi系合金をメッキ形成することで任意の膜厚で形成でき、スパッタで形成するよりも厚い膜厚で形成することが可能になる。
【0157】
また各実施形態において、符号7の層は、下部コア層と上部シールド層の兼用層となっているが、前記下部コア層と上部シールド層とが別々に形成されていてもよい。かかる場合、前記下部コア層と上部シールド層間には絶縁層を介在させる。
【0158】
次に図1ないし図7に示す薄膜磁気ヘッドの一般的な製造方法について以下に説明する。
【0159】
図1に示す薄膜磁気ヘッドは、まず下部コア層7上にギャップ層8を形成し、前記ギャップ層8の上にコイル層9をパターン形成する。前記コイル層9上に絶縁層11を形成した後、ギャップ層8から前記絶縁層11上にかけて上部コア層10をフレームメッキ法によりパターン形成する。
【0160】
図2及び図3に示す薄膜磁気ヘッドは、下部コア層7上にGd決め層17を形成した後、レジストを用いて記録媒体との対向面からハイト方向に下部磁極層19、非磁性のギャップ層20及び上部磁極層21から成る磁極部18を連続メッキによって形成する。次に前記磁極部18のハイト方向後方に絶縁層23を形成した後、例えばCMP技術を用いて前記磁極部18の上面と前記絶縁層23の上面とを同一平面に平坦化する。前記絶縁層23の上にコイル層24を螺旋状にパターン形成した後、前記コイル層24の上に絶縁層25を形成する。そして前記磁極部18上から絶縁層25上にかけて上部コア層22を例えばフレームメッキ法により形成する。
【0161】
図4及び図5に示す薄膜磁気ヘッドは、下部コア層7上に絶縁層31を形成した後、レジストを用いて前記絶縁層31の記録媒体との対向面からハイト方向後方に向けてトラック幅形成溝31aを形成する。さらに前記トラック幅形成溝31aに図4に示す傾斜面31c,31cを形成する。
【0162】
前記トラック幅形成溝31a内に、下部磁極層32、非磁性のギャップ層33を形成する。前記ギャップ層33上から絶縁層31上にGd決め層37を形成した後、前記ギャップ層33上に上部磁極層34をメッキ形成する。次に前記絶縁層31上にコイル層38を螺旋状にパターン形成した後、前記コイル層38上に絶縁層39を形成する。そして前記上部磁極層34上から絶縁層39上にかけて上部コア層40を例えばフレームメッキ法にて形成する。
【0163】
図6に示す薄膜磁気ヘッドは、まず下部コア層7上にギャップ層41を形成し、さらに絶縁層43を形成した後、前記絶縁層43の上にコイル層44をパターン形成する。前記コイル層44上に絶縁層45を形成した後、ギャップ層41から前記絶縁層45上にかけて高Bs層47と上層48からなる上部コア層10をフレームメッキ法によりパターン形成する。
【0164】
図7に示す薄膜磁気ヘッドは、まず下部コア層7上にレジストを用いて下部磁極層50を形成し、さらに前記下部磁極層50のハイト方向後方に絶縁層51を形成する。前記下部磁極層50と前記絶縁層51の上面はCMP技術によって一旦平坦化された後、前記絶縁層51の上面に凹形状となるコイル形成面51aを形成する。次に前記下部磁極層50上から前記絶縁層51上にギャップ層52を形成した後、前記ギャップ層52上にコイル層53を螺旋状にパターン形成し、さらに前記コイル層53上に絶縁層54を形成する。そして、前記ギャップ層52上から絶縁層54上にかけて上部コア層55を例えばフレームメッキ法によりパターン形成する。
【0165】
次に、本発明のFeNi系合金の製造方法について説明する。本発明はSを含有するFeNi系合金を電解メッキ法により成膜したものである。電解メッキ法は、スパッタ蒸着法に比べて成膜レートが早く、製造時間を短縮することができる。
【0166】
本発明では、前記電解メッキ工程に用いるメッキ浴に、Feイオン、Niイオン、およびSイオンを含有させている。具体的には、例えばNiCl2六水和物、NiSO4六水和物、FeSO4六水和物、NaOH、ホウ酸、応力緩衝剤であるサッカリンNa、界面活性剤のラウリル硫酸Naをメッキ浴中に入れている。サッカリンナトリウム(C6H4CONNaSO2)を入れることでSイオンをメッキ浴中に含有させることができる。
【0167】
さらに本発明では、前記メッキ浴中にジカルボン酸を添加している。ジカルボン酸としては、酒石酸[HOOC(C2H4O2)COOH]、酒石酸ナトリウム[HOOC(C2H2O2Na2)COOH]、酒石酸ナトリウムカリウム[HOOC(C2H2O2NaK)COOH]、シュウ酸(HOOCCOOH)、コハク酸[HOOC(CH2)2COOH]、マロン酸[HOOC(CH2)COOH]、マレイン酸(HOOCHC=CHCOOH)などを提示できる。
【0168】
ジカルボン酸としては他にクエン酸などもあるが、これは分子量が大きく(分子量は192)、ジカルボン酸の分子量が大きすぎるとメッキ速度を阻害し、膜面の面粗れを適切に抑制できないと考えられる。
【0169】
従って酒石酸と等価、あるいはそれよりも小さい分子量を持つジカルボン酸を選択し、メッキ浴中に添加することが好ましい。
【0170】
そして前記ジカルボン酸がメッキ浴中に添加されると、メッキ浴中に含有されたSイオンが、メッキ膜内に取り込まれやすくなり、FeNi系合金中に適量の元素Sを含有させることが可能になる。
【0171】
本発明によれば、ジカルボン酸の添加量を適切に調整することで、FeNi系合金中に0.116質量%を越え、0.140質量%未満となる元素Sを含有させることができる。
【0172】
具体的には、前記ジカルボン酸として酒石酸ナトリウムを選択し、このとき前記酒石酸ナトリウムの添加量を、前記メッキ浴全体に対し、37mmol/Lよりも多く、且つ100mmol/L未満とすることが好ましい。これによって前記FeNi系合金中の元素Sを、0.116質量%よりも多く、0.140質量%未満となる組成範囲内で適切に調整することができる。また前記酒石酸ナトリウムを100mmol/L未満としたのは、これ以上、酒石酸ナトリウムを入れると膜面の面粗れがひどくなり、具体的には前記膜面の中心線平均粗さRaは200Åを越えてしまう。従って本発明では、前記酒石酸ナトリウムを100mmol/L未満に設定している。
【0173】
また本発明では、前記ジカルボン酸として酒石酸ナトリウムを選択し、このとき前記酒石酸ナトリウムの添加量を、前記メッキ浴全体に対し、62mmol/L以上82mmol/L以下とすることがより好ましい。これによって膜面の中心線平均粗さRaを80Å以下に抑えることができる。
【0174】
また上記の酒石酸ナトリウムの添加量であれば、メッキ形成されたFeNi系合金中の元素Sの組成比を、より確実に0.116質量%よりも多く、且つ0.140質量%未満にすることができる。また後述する実験によれば、FeNi系合金中に含まれる元素Sの組成比を、0.125質量%以上で0.132質量%以下に設定することもできる。この組成範囲内であると、より効果的に応力の低下及び保磁力の低下を図ることができる。
【0175】
次に本発明では、FeNi系合金のFeの組成比であるが、本発明では前記Feの組成比を55質量%よりも多く、75質量%未満とすることが好ましく、より好ましくは、68質量%以上で80質量%以下にすることである。
【0176】
FeNi系合金中に上記したFe量を含有させるには、直流電流を用いた電解メッキ法ではなくパルス電流を用いた電解メッキ法を用いることが好ましい。パルス電流を用いた電解メッキ法では、例えば電流制御素子のON/OFFを繰返し、メッキ形成時に、電流を流す時間と、電流を流さない空白な時間を設ける。このように電流を流さない時間を設けることで、NiFe系合金膜を、少しずつメッキ形成し、直流電流を用いた電解メッキ法に比べメッキ形成時における電流密度の分布の偏りを緩和することが可能になっている。パルス電流による電解メッキ法によれば直流電流による電解メッキ法に比べて軟磁性膜中に含まれるFe含有量の調整が容易になり、前記Fe含有量を膜中に多く取り込むことができる。
【0177】
また本発明では、Fe量を68質量%以上で80質量%以下の組成範囲内に設定するには、上記したパルス電流を用いた電解メッキ法を用い、さらにメッキ浴中のNiイオン濃度を従来よりも低減させることが好ましい。例えば従来ではメッキ浴中のNiイオン濃度は40g/l程度であったが、本発明ではこれよりもNiイオン濃度を低濃度に設定する。これにより成膜時、カソード(メッキされる側)表面上に触れるメッキ液のNiイオンを減らすことができ、攪拌効果を高めてNiFe合金中に多くのFeを入れることが可能になり、前記Fe量を80質量%まで含有させることが可能になる。
【0178】
ただしFeNi系合金中のFe量が多すぎると、メッキ浴中にジカルボン酸を入れていても応力を適切に緩和できず、応力の増大によって膜剥れが生じ易くなる。しかも結晶粒径が粗大化することで保磁力Hcも増大し、それに伴う軟磁気特性の低下が問題となる。
【0179】
従ってFeNi系合金中のFe量の上限を適切に制御することが重要であり、本発明では、前期Fe量の上限値を80質量%に設定している。
【0180】
また本発明では、FeNi系合金のメッキ浴中に、2−ブチン−1、4ジオールを混入することが好ましい。これによってメッキ形成されたNiFe系合金の結晶粒径の粗大化は抑制され、前記結晶粒径が小さくなることで結晶間に空隙が生じ難くなり、膜面の面粗れをさらに適切に抑制できる。
【0181】
また本発明では、前記メッキ浴中に2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムを混入することが好ましい。これによってメッキ浴中に生じる水素は、界面活性剤である2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムによって除去され、前記水素がメッキ膜に付着することによる面粗れを抑制できる。
【0182】
また前記2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムに代えて、ラウリル硫酸ナトリウムを用いても良いが、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムを用いた方が、メッキ浴中に混入したときの泡立ちが少なく、したがって前記2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムをメッキ浴中に多く混入することができ、前記水素の除去をより適切に行うことが可能になる。また前記2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムの添加によりNiFe系合金の膜応力を低減させることも可能である。
【0183】
以下に、本発明で使用可能な具体的なメッキ浴組成、および製造工程の一例を示す。
【0184】
電解メッキ工程において用いるメッキ浴の組成は、NiCl2六水和物(117g/L)、NiSO4六水和物(50g/L)、NaOH(25g/L)、ホウ酸(25g/L)、応力緩衝剤であるサッカリンNa(2g/L)、界面活性剤のラウリル硫酸Na(0.02g/L)からなる従来のWatt浴の組成に、FeSO4六水和物(35.7g/L)と、酒石酸ナトリウム(Na2C4H4O6)を添加したものであり、酒石酸ナトリウムのメッキ浴全体に対する添加量は、62〜82mmol/Lである。
【0185】
電解メッキ工程において、FeNi合金スパッタ膜を陰極として、メッキ浴にパルス電流を印加する。そして、陰極上にFeNi系合金メッキ膜を所望の膜厚に形成して、電解メッキ工程を終了する。
【0186】
メッキ膜の成膜レートは、酒石酸ナトリウムの添加量を増やすことで徐々に遅くなっていくが、上記の酒石酸ナトリウムの添加量であれば、前記成膜レートは、約0.04μm/min程度である。このような成膜レートでは、数μm程度のメッキ膜を形成するとき、電解メッキ工程が長時間に及ぶことがなく、且つ、電解メッキ工程時間による膜厚制御が容易である。
【0187】
このように製造された軟磁性膜は、酒石酸ナトリウムの添加量の増加に伴って、元素Sの組成比が上昇する。
【0188】
後述する実験結果によれば、酒石酸ナトリウムの添加量の増加に伴って、軟磁性膜の応力と保磁力Hcは共に低下する一方、Fe、Ni、Cの組成比は、いずれも酒石酸ナトリウムの添加量による大きな影響を受けることなく、軟磁性膜の飽和磁束密度Bsは、酒石酸ナトリウムの添加により著しく低下することがないことがわかった。
【0189】
ところで上記した軟磁性膜の製造方法は、図1に示す下部コア層7及び/または上部コア層10の形成時、図2、3に示す下部磁極層19及び/または上部磁極層21の形成時、図4、5に示す下部磁極層32及び/または上部磁極層34の形成時、図6に示す下部コア層7及び/または高Bs層47の形成時、図7に示す下部磁極層50及び/または上部コア層55の形成時にそれぞれ適用される。
【0190】
そして上記軟磁性膜の製造方法を用いることで、図1ないし図7に示す構造の薄膜磁気ヘッドのコア層あるいは磁極層を容易にしかも再現性良くメッキ形成することが可能である。
【0191】
なお図2ないし図5に示す実施形態のように、下部コア層7と上部コア層22、40間にトラック幅Twで形成された磁極部18、30が別工程で形成される形態の場合、特に、メッキ浴中に添加される酒石酸ナトリウムの量を62mmol/L以上で82mmol/L以下に設定することが好ましい。
【0192】
図2、3に示す薄膜磁気ヘッドでは、下部コア層7上にレジスト層を形成し、このレジスト層に露光現像によって溝を形成する。そしてこの溝内に前記磁極部18がメッキ形成されるのであるが、前記溝のトラック幅方向(図示X方向)への幅寸法は狭トラック化に適切に対応するためには、0.1μmから0.5μm程度であることが好ましく、また奥行き(図示Y方向)の寸法もその程度であり、また高さ寸法(図示Z方向)は、幅寸法の2倍から5倍程度である。
【0193】
このような極めて狭い空間内に下部磁極層19、ギャップ層20及び上部磁極層21を適切にメッキ形成するには、前期磁極層の飽和磁束密度Bsが高くなるようにFe量の調整を適切に行うとともに、応力を小さくし、さらに膜面の面粗れを小さくしなければならない。そうしなければ膜剥れが生じ易くなり、また前記磁極層上に形成される層をも所定形状に形成できなくなる。
【0194】
そのため本発明では、膜面の面粗れが小さく且つ応力が小さいFeNi系合金で磁極層を形成できるようにメッキ浴組成を適切に調整することが好ましい。具体的には、メッキ浴中に添加される酒石酸ナトリウムの添加量をメッキ浴全体に対し、62mmol/L以上で82mmol/L以下に設定する。
【0195】
このメッキ浴組成で形成されたFeNi系合金であれば、1.8T以上の高い飽和磁束密度Bsを得ることができると共に、膜面の中心線平均粗さRaを80Å以下に抑えることができ、また応力を160MPa以下にでき、したがって極めて小さい空間内に飽和磁束密度Bsが高く、しかも膜剥れなどが生じない磁極層を容易にしかも再現性良くメッキ形成することが可能になるのである。
【0196】
なお本発明では、FeNi系合金の用途として図1ないし図7に示す薄膜磁気ヘッドを提示したが、この用途に限定されるものではない。例えば前記FeNi系合金は、薄膜インダクタ等の平面型磁気素子等にも使用可能である。
【0197】
【実施例】
次に、本発明の軟磁性膜の実施例について説明する。表1は、実施例1、2及び比較例1〜8について、メッキ浴全体に対する酒石酸ナトリウムの添加量、メッキされたFeNi系合金の組成比、応力、保磁力Hc(磁化困難軸・磁化容易軸)、異方性磁界、飽和磁束密度Bs、比抵抗、および膜面の中心線平均粗さRaをまとめたものである。
【0198】
【表1】
【0199】
この表を見ると、各試料とも比抵抗の値にさほどの差がないことがわかる。
【0200】
次にFe量について説明する。比較例1ないし5、及び実施例1、2は全て、Fe量が約72質量%前後であり、飽和磁束密度Bsも1.9T前後であることがわかる。
【0201】
一方、比較例7は、Fe量が非常に少なく、従来と同程度の約55質量%であり、飽和磁束密度Bsはたかだか1.5T程度である。また比較例8では、Fe量は68質量%であり、飽和磁束密度Bsは、1.8T程度まで上昇している。
【0202】
また比較例6では、Fe量が80質量%よりも多くなっているが、膜剥れを起して実験をすることができなかった。
【0203】
この実験結果に基づき、本発明では次のようにFe量を規定した。まずFe量を55質量%よりも大きく、75質量%未満とした。この範囲であると飽和磁束密度を1.5Tよりも大きくできることがわかる。またFe量を72質量%以上にすれば飽和磁束密度を1.9T程度にまで向上させることができる。
【0204】
また本発明では、より好ましいFe量を68質量%以上で80質量%以下とした。これによって飽和磁束密度Bsを1.8T以上にできる。またFe量が80質量%を越えると、応力の増大によって膜剥れを起したものと考える。したがって本発明のようにFe量を80質量%以下とすれば、応力の増大を低減させ膜剥れの生じない磁性層を形成することができる。
【0205】
次に表1のように、応力や保磁力、中心線平均粗さRaなど種々の特性は、各試料で一定にはなく、本発明では以下で、元素Sの組成比と各特性との関係や、酒石酸ナトリウムの添加量と各特性との関係について調べてみた。
【0206】
【表2】
【0207】
表2は、図8及び図9のグラフを作成するにあって用いた試料の実験結果である。表2は、表1に示された比較例1、2、3、4、5及び実施例1、2の実験結果を抜粋して表示したものであるが、さらにこの表2には、酒石酸ナトリウムの添加量を15mmol/Lとした実験試料を新たに付け加えている。表2には、図8、9を作成するにあたって必要な実験結果、すなわち各試料のSの組成比、応力、保磁力等が記載されている。
【0208】
ここで表2における各試料は、以下のメッキ浴組成を用いて得られたものである。電解メッキ工程において用いるメッキ浴の組成は、NiCl2六水和物(117g/L)、NiSO4六水和物(50g/L)、NaOH(25g/L)、ホウ酸(25g/L)、応力緩衝剤であるサッカリンNa(2g/L)、界面活性剤のラウリル硫酸Na(0.02g/L)からなるWatt浴の組成に、FeSO4六水和物(35.7g/L)と、酒石酸ナトリウム(Na2C4H4O6)を添加したものであり、酒石酸ナトリウムのメッキ浴全体に対する添加量は、0〜100mmol/Lである。またパルス電流を用いた電解メッキ法を用いてメッキ形成した。
【0209】
なお以下の図8以降の実験結果は、すべてこの実験方法によって得られたものである。
【0210】
図8は、応力(MPa)とFeNi系合金中に含有された元素S組成比(質量%)の関係を示すグラフである。元素Sの組成比が多くなるほど、応力は低下することがわかる。図8に示すように、元素Sの組成比が0.116質量%から0.125質量%の区間内において、FeNi系合金の応力は急激に低下し、応力を210MPa以下にすることができることがわかる。また前記元素Sの組成比を0.125質量%よりも多くしていくと、0.116質量%から0.125質量%の区間ほどの急激な低下はないものの、前記応力をさらに低下させることができることがわかる。
【0211】
図9は、保磁力Hc(A/m)とFeNi系合金中に含まれる元素Sの組成比(質量%)の関係を示すグラフである。図9に示すように、保磁力Hcは、元素Sの組成比の増加に伴って徐々に低下し、元素Sの組成比を0.116質量%以上にすると保磁力Hcの低下の度合いが大きくなり、磁化困難軸方向の保磁力Hchを約600A/m以下に、磁化容易軸方向の保磁力Hceを約470(A/m)以下にできることがわかる。
【0212】
図10は、応力(MPa)と保磁力Hc(A/m)の関係を示すグラフである。このグラフ中の試料のFeの組成比は、すべて約72質量%に固定されている。
【0213】
図10に示すように、表1に示された実施例1、2の保磁力Hcは、比較例に比べて低応力で且つ低保磁力Hcであることがわかる。
【0214】
図11は、飽和磁束密度Bs(T)とFeNi系合金中に含有されたS組成比(質量%)の関係を示すグラフである。なおこのグラフは、Fe量を約72質量%に固定された実験試料に基いて作成されたものである。
【0215】
図11に示すように、飽和磁束密度Bsは、元素Sの組成比の増加に伴って、若干低下する傾向があるものの、元素Sが0.140質量%程度以下であれば1.9T前後の飽和磁束密度Bsを保っていることがわかる。
【0216】
図12は、異方性磁界(A/m)と元素Sの組成比(質量%)の関係を示すグラフである。なおこのグラフは、Fe量を約72質量%に固定された実験試料に基いて作成されたものである。
【0217】
図12に示すように、異方性磁界は、元素Sの組成比の増加に伴って上昇しており、Sの組成比の増加に伴い軟磁気特性が向上することがわかる。
【0218】
【表3】
【0219】
表3は、次の図13ないし図15を作成するにあたって用いた各試料の実験結果である。なお表2と同様、表1に示された比較例1、2、3、4、5及び実施例1、2の実験結果を抜粋して表示したものであるが、さらに酒石酸ナトリウムの添加量を15mmol/Lとした実験試料を新たに付け加えている。表3には、図13ないし15を作成するにあたって必要な実験結果、すなわち各試料のSの組成比、C組成比、Fe組成比等が記載されている。
【0220】
図13〜15は、酒石酸ナトリウムの添加量(mmol/L)と、Sの組成比、Feの組成比、Cの組成比(質量%)の関係を示すグラフである。図13に示すように、S組成比は、メッキ浴に酒石酸ナトリウムを添加していくことで徐々に高くなっていくことがわかる。
【0221】
また図14に示すように、Feの組成比は、メッキ浴に酒石酸ナトリウムを添加していくことで若干低下してくが、実験に使用されたサンプルでは、いずれも72質量%前後のFe量を保っていることがわかる。
【0222】
また、図15に示すように、Cの組成比は、酒石酸ナトリウムの添加量にほとんど依存しないことがわかる。
【0223】
図16は、酒石酸ナトリウムの添加量と、FeNi系合金の応力との関係を示したグラフである。図16に示すように、酒石酸ナトリウムの添加量を37mmol/Lから62mmol/Lの範囲内とすると、FeNi系合金の応力は急激に低下していくことがわかる。また、これほどの急激な低下ではないが、前記酒石酸ナトリウムの添加量を62mmol/L以上にしても前記応力の低下を図ることができることがわかる。
【0224】
図17は、酒石酸ナトリウムの添加量と、FeNi系合金の保磁力Hc(磁化困難軸、磁化容易軸)及び飽和磁束密度Bsとの関係を示すグラフである。図17に示すように、酒石酸ナトリウムの添加量を37mmol/L以上にすると前記保磁力Hcを効果的に低減させることができることがわかる。
【0225】
一方、飽和磁束密度Bsは、前記酒石酸ナトリウムの添加によって、徐々に低下していくものの、1.9T前後の飽和磁束密度Bsを保っていることがわかる。
【0226】
図18は、酒石酸ナトリウムの添加量と、FeNi系合金の異方性磁界Hkとの関係を示すグラフである。図18に示すように、酒石酸ナトリウムの添加によって前記異方性磁界を上昇させることができ、軟磁気特性に優れたFeNi系合金を形成できることがわかる。
【0227】
図19は、電解メッキ工程の成膜レートと酒石酸ナトリウムの添加量の関係を示すグラフである。成膜レートは、酒石酸ナトリウムの添加量をすることで若干低下するものの、前記酒石酸ナトリウムの添加量が100mmol/Lよりも低い範囲では、0.040μm/min以上の成膜レートを保ち、メッキ工程には、大きな影響を及ぼさないものと考えられる。
【0228】
以上の実験結果からわかったことは、FeNi系合金中に含まれる元素Sの組成比を上昇させていくことで、応力及び保磁力Hcの低減を図ることができるということである(図8、9を参照されたい)。その一方で、Fe組成比が同じであるが、元素Sが異なる場合でも、飽和磁束密度Bsはさほど変化が無く(図11を参照されたい)、また元素Sの添加によって異方性磁界を向上させることができ軟磁気特性の向上を図ることができることがわかった。
【0229】
そこで本発明では、上記実験結果に基いてFeNi系合金中に含まれる元素Sの組成比を0.116質量%よりも多い範囲とし、より好ましくは0.125質量%以上に設定した。
【0230】
またメッキ浴中における酒石酸ナトリウムの添加量においても、前記酒石酸ナトリウムの添加量を上昇させていくことで、FeNi系合金の応力及び保磁力Hcの低減を図ることができることがわかった(図16、17を参照されたい)。また酒石酸ナトリウムの添加によってFeNi系合金中の元素Sの含有量は上昇するが、Fe量はさほどの低下が見られず(図13、14を参照されたい)、このように、酒石酸ナトリウムの添加によってもFe量にさほど変化が見られないため、図17に示すように、酒石酸ナトリウムの添加によっても、飽和磁束密度Bsが大きく低下することがないことがわかった。また酒石酸ナトリウムの添加によって異方性磁界を向上させることができ軟磁気特性の向上を図ることができることがわかった。
【0231】
そこで本発明では、上記実験結果に基いてメッキ浴中に添加する酒石酸ナトリウムの添加量を37mmol/Lよりも多い範囲とし、より好ましくは62mmol/L以上に設定した。
【0232】
次にFeNi系合金中に含まれる元素Sの上限値、およびメッキ浴中に添加される酒石酸ナトリウムの上限値について以下に説明する。
【0233】
表1に示すように、比較例1の場合には、膜面の中心線平均粗さRaは約83Åであり、比較例4の場合には、前記中心線平均粗さRaは約89Åであり、実施例2の場合には、前記中心線平均粗さRaは約75Åであり、比較例5の場合には、前記中心線平均粗さRaは約213Åであった。
【0234】
上記4つのサンプルにおける酒石酸ナトリウムの添加量を見てみる。比較例1は、0mmol/Lであり、比較例3は、25mmol/Lであり、実施例1は、82mmol/Lであり、比較例5は、100mmol/Lである。
【0235】
上記した膜面の中心線平均粗さRaは、この酒石酸ナトリウムの添加量が適量であれば低下するが、前記酒石酸ナトリウムの添加量が多くなりすぎると、この実験では、前記酒石酸ナトリウムの添加量が82mmol/Lを越えると、逆に前記Raは大きくなっていくものと考えられる。それは図19で説明した、前記酒石酸ナトリウムの添加量の増加によって成膜レートが遅くなることが一つの原因ではないかと考えられる。
【0236】
膜面の中心線平均粗さRaはできる限り小さいことが好ましい。中心線平均粗さRaが大きくなる、すなわち面粗れがひどくなると、耐食性の低下や、さらには所定形状の磁性層を形成できないといった問題が発生する。
【0237】
そこで本発明では、酒石酸ナトリウムの添加量の上限値を、100mmol/L未満とした。これによって膜面の中心線平均粗さRaを約200Å以下に抑えることができることがわかる。より好ましくは、前記酒石酸ナトリウムの添加量は82mmol/L以下である。これによって前記中心線平均粗さRaを約80Å以下に抑えることができることがわかる。
【0238】
従って本発明では、酒石酸ナトリウムの添加量を、37mmol/Lよりも多く、且つ100mmol/L未満と設定した。またより好ましい範囲を、62mmol/L以上で82mmol/L以下に設定した。
【0239】
また前記酒石酸ナトリウムの添加量を、100mmol/L未満、好ましくは82mmol/L以下とした場合、FeNi系合金中における元素Sの含有量は0、140質量%未満であることが図13よりわかる。また前記酒石酸ナトリウムの添加量を82mmol/L以下とした場合、元素Sの含有量を0.132質量%以下にできることがわかる。
【0240】
この実験結果により、本発明では前記FeNi系合金中における元素Sの組成比を、0.116質量%よりも多く、且つ0.140質量%未満と規定し、好ましくは0.125質量%以上で0.132質量%以下と規定した。
【0241】
次に耐食性の実験結果について以下に説明する。
実験では図20に示すような形状の磁極部を形成した。最も下の層がFe20Ni80合金膜であり、その上に高飽和磁束密度Bsを有するHi−B(下部磁極層)膜、NiP(ギャップ層)膜、Hi−B(上部磁極層)膜をメッキ形成した。
【0242】
【表4】
【0243】
本発明では2つのHi−B膜を表4に挙げた2つの磁性層でメッキ形成した。一方は、メッキ浴中での酒石酸ナトリウムを0mmol/Lとして形成されたFeNi系合金、もう一方が、メッキ浴中での酒石酸ナトリウムを82mmol/Lとして形成されたFeNi系合金である。なお各試料を10個づつ用意した。
【0244】
実験では、pH=4.7の純水に図20の積層膜からなる試料を10分間浸漬させ、またpH=2.0の希硫酸に図20の積層膜からなる試料を1分間浸漬させた。そして腐食の具合を測定した。
【0245】
表4に示すように、酒石酸ナトリウムを0mmol/Lとして形成されたFeNi系合金をHi−B膜として用いた積層膜の試料、および酒石酸ナトリウムを82mmol/Lとして形成されたFeNi系合金をHi−B膜として用いた積層膜の試料では、純水に浸した場合は、どちらの試料でも腐食は見られなかった。一方、希硫酸に浸した場合は、どちらの試料でも各10個の試料のうち腐食された試料は半分以下であったが、酒石酸ナトリウムを0mmol/Lとして形成された試料は4個腐食されたのに対し、酒石酸ナトリウムの添加量を82mmol/L以下として形成された試料では3個の腐食であった。
【0246】
このように酒石酸ナトリウムの添加量を82mmol/L以下とすれば、耐食性に優れたFeNi系合金をメッキ形成できることがわかった。これは酒石酸ナトリウムの添加量を82mmol/L以下として形成されたFeNi系合金では、膜面の中心線平均粗さRaを小さくできたためであると考えられる。具体的には前記中心線平均粗さRaを80Å以下にできる(表1などを参照されたい)。
【0247】
最後に、実験に使用した試料と、結晶粒径及び結晶配向との関係を調べた。その実験結果を表5に示す。
【0248】
【表5】
【0249】
表5における(111)反射回線幅の実験結果によって、結晶粒径の大きさを予測できるが、(111)反射回線幅は、酒石酸ナトリウムの添加量によって変化はなく、したがってFeNi系合金の結晶粒径にはほとんど変化がないものと考えられる。既に述べたように結晶粒径が小さくなれば、一般的に応力の低下が見られるが、この実験結果からすれば、元素Sの含有による応力の低下は結晶粒径の大小とほとんど関係が無いものと考えられる。また結晶配向も各試料ともにほとんど変化がなかった。
【0250】
【発明の効果】
本発明の軟磁性膜は、Sを含有するFeNi系合金であり、Sの組成比が0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満である。
【0251】
このような軟磁性膜は、Sの組成比が、0.116質量%を越えて、0.140質量%未満であるとき、Sの組成比の増加に伴って、応力と保磁力Hcが低下するので、低応力と優れた軟磁気特性を両立することができる。また膜面の面粗れを小さくすることができる。
【0252】
また本発明では、Feの組成比は55質量%よりも大きく、且つ75質量%未満であるか、好ましくは68質量%以上で80質量%以下である。これによって飽和磁束密度を1.6T以上、好ましくは1.8T以上にでき、しかも本発明によれば、この高い飽和磁束密度を維持しながら、応力を低くでき、保磁力を低くでき、さらに膜面の面粗れを小さくすることができる。
【0253】
また、本発明の軟磁性膜の製造方法は、Sを含有するFeNi系合金を電解メッキ法により成膜する方法であって、電解メッキ工程に用いるメッキ浴の組成は、Feイオン、Niイオン、Sイオンを含む溶液を含有し、さらにジカルボン酸が添加されたものである。
【0254】
前記ジカルボン酸は、具体的には酒石酸ナトリウムであることが好ましく、本発明では、前記メッキ浴全体に対する酒石酸ナトリウムの添加量が、37mmol/Lを越え、且つ100mmol/L未満であることが好ましい。より好ましくは62mmol/L以上で82mmol/L以下である。
【0255】
このような軟磁性膜の製造方法では、メッキ浴に酒石酸ナトリウムを添加したので、メッキ膜中にSが析出し、Sを含有するFeNi合金メッキ膜を製造することができる。しかも上記した酒石酸ナトリウムの添加量であると、メッキ形成されたFeNi系合金の応力及び保磁力を効果的に低くできると共に、膜面の中心線平均粗さRaを有効に小さくすることができる。
【0256】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、下部コア層と、該下部コア層上に形成され、絶縁材料からなるギャップ層と、該ギャップ層上に形成され、良導電材料からなるコイル層と、該コイル層を覆う絶縁層と、該絶縁膜上に形成された上部コア層とを有し、前記上部コア層及び下部コア層には、前記コイル層に印加された電流により記録磁界が誘導されて、前記上部コア層と下部コア層のうち少なくとも一方は、上記軟磁性膜を用いた。
【0257】
このような薄膜磁気ヘッドは、上部コア層、或いは/及び下部コア層とする軟磁性膜が、Feの組成比が同等である従来の軟磁性膜に比べて低応力、且つ低保磁力Hcであるから、下部コア層と絶縁層、或いは/及び上部コア層とギャップ層との密着性、及び記録データの信頼性が向上し、高記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】薄膜磁気ヘッドの縦断面図、
【図2】本発明の他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの部分正面図、
【図3】図2の縦断面図、
【図4】本発明の他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの部分正面図、
【図5】図4の縦断面図、
【図6】本発明の他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの縦断面図、
【図7】本発明の他の実施形態の薄膜磁気ヘッドの縦断面図、
【図8】本発明の軟磁性膜の応力とS組成比の関係を示すグラフ。
【図9】本発明の軟磁性膜の保磁力HcとS組成比の関係を示すグラフ。
【図10】本発明の軟磁性膜の応力と保磁力Hcの関係を示すグラフ。
【図11】本発明の軟磁性膜の飽和磁束密度BsとS組成比の関係を示すグラフ。
【図12】本発明の軟磁性膜の異方性磁界とS組成比の関係を示すグラフ。
【図13】本発明の軟磁性膜のS組成比と、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図14】本発明の軟磁性膜のFe組成比と、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図15】本発明の軟磁性膜のC組成比と、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図16】本発明の軟磁性膜の応力と、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図17】本発明の軟磁性膜の保磁力Hcと、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図18】本発明の軟磁性膜の異方性磁界Hkと、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図19】本発明の軟磁性膜のメッキ工程の成膜レートと、メッキ浴の酒石酸ナトリウム添加量の関係を示すグラフ。
【図20】表4の実験に使用した積層膜の構造を示す断面図、
【図21】従来におけるFeNi合金からなる軟磁性膜の応力と保磁力Hcの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
h2 記録用ヘッド部
G 書き込みギャップ
7 下部コア層
8 ギャップ層
9 コイル層
10 上部コア層
11 絶縁層
18、30 磁極部
19、32、50 下部磁極層
21、34 上部磁極層
47 高Bs層
48 上層
Claims (24)
- Sを含有するFeNi合金であり、Sの組成比が0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満であり、前記Feの組成比が72質量%以上で80質量%以下であり、膜面の中心線平均粗さRaは、200Å以下であり、パルス電流を用いた電解メッキ法にてメッキ形成されていることを特徴とする軟磁性膜。
- 前記Sの組成比が、0.126質量%以上である請求項1記載の軟磁性膜。
- 前記Sの組成比が、0.125質量%以上で0.132質量%以下である請求項1記載の軟磁性膜。
- Feの組成比は、75質量%未満である請求項1ないし3のいずれかに記載の軟磁性膜。
- 前記中心線平均粗さRaは、80Å以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の軟磁性膜。
- 磁性材料製の下部コア層と、前記下部コア層上に磁気ギャップを介して形成された上部コア層と、両コア層に記録磁界を与えるコイル層とを有する薄膜磁気ヘッドにおいて、
少なくとも一方のコア層は、請求項1ないし5のいずれかに記載された軟磁性膜で形成されていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記下部コア層上には記録媒体との対向面で下部磁極層が隆起形成され、前記下部磁極層が前記軟磁性膜により形成されている請求項6記載の薄膜磁気ヘッド。
- 下部コア層及び上部コア層と、前記下部コア層と上部コア層との間に位置し且つトラック幅方向の幅寸法が前記下部コア層及び上部コア層よりも短く規制された磁極部とを有し、
前記磁極部は、下部コア層と連続する下部磁極層、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記下部磁極層と前記上部磁極層間に位置するギャップ層とで構成され、あるいは前記磁極部は、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記上部磁極層と下部コア層との間に位置するギャップ層とで構成され、
前記上部磁極層及び/または下部磁極層は、請求項1ないし5のいずれかに記載された軟磁性膜で形成されていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記上部磁極層は前記軟磁性膜で形成され、前記上部磁極層上に形成される上部コア層は、前記上部磁極層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成される請求項8記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記磁極部のトラック幅方向への幅寸法及び奥行き寸法は、0.1μm〜0.5μmであり、前記磁極部の高さ寸法は、前記幅寸法の2倍から5倍である請求項8または9に記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記コア層は、少なくとも磁気ギャップに隣接する部分が2層以上の磁性層から成り、あるいは前記磁極層が2層以上の磁性層から成り、前記磁性層のうち前記磁気ギャップに接する磁性層が、前記軟磁性膜により形成されている請求項6ないし10のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
- 前記磁気ギャップ層に接する以外の他の磁性層は、前記磁気ギャップ層に接する磁性層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成される請求項11記載の薄膜磁気ヘッド。
- Sを含有するFeNi合金を電解メッキ法により成膜する方法であって、電解メッキ工程に用いるメッキ浴に、Feイオン、Niイオン及びSイオンを含有させ、さらにこのメッキ浴中にジカルカルボン酸として、酒石酸 [ HOOC(C 2 H 4 O 2 )COOH ] 、酒石酸ナトリウム [ HOOC(C 2 H 2 O 2 Na 2 )COOH ] 、酒石酸ナトリウムカリウム [ HOOC(C 2 H 2 O 2 NaK)COOH ] 、シュウ酸(HOOCCOOH)、コハク酸 [ HOOC(CH 2 ) 2 COOH ] 、マロン酸 [ HOOC(CH 2 )COOH ] 、マレイン酸(HOOCHC=CHCOOH)のいずれか一つを添加して、Sの組成比が0.116質量%を越え、且つ0.140質量%未満となり、前記Feの組成比が72質量%以上で80質量%以下となる軟磁性膜を、パルス電流を用いた電解メッキ法によってメッキ形成することを特徴とする軟磁性膜の製造方法。
- 前記ジカルボン酸は酒石酸ナトリウムであり、前記酒石酸ナトリウムの添加量を、前記メッキ浴全体に対し、37mmol/Lよりも多く、且つ100mmol/L未満とする請求項13に記載の軟磁性膜の製造方法。
- 前記ジカルボン酸は、酒石酸ナトリウムであり、前記酒石酸ナトリウムの添加量を、前記メッキ浴全体に対し、62mmol/L以上で82mmol/L以下とする請求項13に記載の軟磁性膜の製造方法。
- 前記Sの組成比が、0.125質量%以上で0.132質量%以下となる軟磁性膜をメッキ形成する請求項15に記載の軟磁性膜の製造方法。
- メッキ浴中にサッカリンナトリウムを混入する請求項13ないし16のいずれかに記載の軟磁性膜の製造方法。
- 磁性材料製の下部コア層と、記録媒体との対向面で前記下部コア層と磁気ギャップを介して対向する上部コア層と、両コア層に記録磁界を誘導するコイル層とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法において、
前記上部コア層及び/または下部コア層を、請求項13ないし17のいずれかに記載された製造方法により形成された軟磁性膜によりメッキ形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記下部コア層上には記録媒体との対向面で下部磁極層を隆起形成し、このとき前記下部磁極層を前記軟磁性膜によりメッキ形成する請求項18記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 下部コア層及び上部コア層と、前記下部コア層と上部コア層との間に位置し且つトラック幅方向の幅寸法が前記下部コア層及び上部コア層よりも短く規制された磁極部とを有し、
前記磁極部を、下部コア層と連続する下部磁極層、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記下部磁極層と前記上部磁極層間に位置するギャップ層とで形成し、あるいは前記磁極部は、上部コア層と連続する上部磁極層、および前記上部磁極層と下部コア層との間に位置するギャップ層とで形成し、
前記上部磁極層及び/または下部磁極層を、請求項13ないし17のいずれかに記載された製造方法により形成された軟磁性膜によりメッキ形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記上部磁極層を前記軟磁性膜でメッキ形成し、前記上部磁極層上に形成される上部コア層を、前記上部磁極層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成する請求項20記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記下部コア層にレジスト層を形成し、前記レジスト層に前記磁極部を形成するための溝を形成し、前記溝のトラック幅方向への幅寸法及び奥行き寸法を、0.1μm〜0.5μmで形成し、前記溝の高さ寸法を、前記幅寸法の2倍から5倍で形成する請求項20または21に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記コア層の少なくとも磁気ギャップに隣接する部分を2層以上の磁性層で形成し、あるいは前記磁極層を2層以上の磁性層で形成し、前記磁性層のうち前記磁気ギャップに接する磁性層を、前記軟磁性膜によりメッキ形成する請求項18ないし22のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記磁気ギャップ層に接する以外の他の磁性層を、前記磁気ギャップ層に接する磁性層よりも低い飽和磁束密度Bsを有する軟磁性膜で形成する請求項23記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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