JP3678946B2 - 合成開口レーダ装置及びこの合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は観測対象となる目標に対して、搬送波周波数が時間とともに変化するパルスを送信し、反射されたパルスから目標の画像を再生して目標散乱点を検出する合成開口レーダ装置及びこの合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の合成開口レーダ装置として、例えばAirborne Pulsed Doppler(Radar Second Edition,Guy Morris and Linda Harkness,Artech House,1997)に示されたものがあり、図11は上記文献に示された従来の合成開口レーダ装置の一例を示した図である。
【0003】
図11において、101はパルスを出力する送信機、102は後述の制御回路104から入力される周波数制御信号に基づいて時間とともに周波数を変化させた信号を出力する局部発振器、103は送信機1に対してトリガ信号を発生するパルス変調器である。制御回路104は局部発振器102に対する周波数制御信号を出力する。105は送受信を切換える送受切換器、106は送受切換器105を介して送信機101から出力されるパルスを目標に対して送信し、また目標から反射されたパルスを受信するアンテナ、107はアンテナ106により受信されたパルスを送受切換器105を介して入力して、受信信号を出力する受信機、108は受信機107から入力した受信信号を各パルス毎に圧縮するレンジ圧縮手段、109はレンジ圧縮された各パルスの受信信号をストアするメモリ、110はレンジ圧縮された複数のパルスの受信信号をメモリから読み出し、これらに対してクロスレンジ圧縮を行い、目標の画像を再生するクロスレンジ圧縮手段である。111は上述のレンジ圧縮手段108とメモリ109とクロスレンジ圧縮手段110からなる信号処理器である。
【0004】
次に動作を図12及び図13を参照して説明する。
制御回路104は、図12(a)、(b)のように時間とともに搬送波周波数がリニアに変化するように、周波数制御信号を制御して、局部発振器102に出力する。局部発振器102は、制御回路104から入力される周波数制御信号に基づいて搬送波周波数を設定した信号を出力する。時間tにおける信号の搬送波周波数f(t)は、周波数初期値をf0 、周波数変化率をkとして、下記の式(1)に基づいて設定される。
【0005】
【数1】
f(t)= f0 + kt (1)
【0006】
送信機101は、局部発振器102の出力を増幅し、パルス変調器103の送信トリガ信号に同期して、パルスを生成して出力する。送信機101から出力された送信パルスは、送受切換器105を介してアンテナ106に給電され、アンテナ106より目標に放射される。次いでアンテナ106は、目標から反射されたパルスを受信し、送受切換器105を介して、受信機107に出力する。受信パルスは受信機107において、ビデオ信号に周波数変換された後、位相検波及びディジタル変換され、受信信号として信号処理器111に出力される。
【0007】
信号処理器111のレンジ圧縮手段108では、各パルス毎に受信機107から入力された受信信号に対して、図12(c)、(d)のような特性をもつ信号を用いて畳込み演算を行う。これにより受信信号は図12(e)のように、パルスの搬送周波数変化量Δfの逆数1/Δfに相当するパルス幅にレンジ圧縮される。
【0008】
レンジ圧縮手段108によりレンジ圧縮された各パルスの受信信号は、メモリ109にストアされる。クロスレンジ圧縮手段110は、レンジ圧縮された複数のパルスの受信信号をメモリ109から読み出し、図13のようにこれらの受信信号を2次元に配置する。次にクロスレンジ圧縮手段110は、レンジ方向に下記の式(2)でセル間隔ΔRが与えられるセル毎に、複数のパルスの受信信号に対して、図12(c)、(d)のような特性をもつ信号を用いて、ディジタル信号処理の分野で周知の畳込み演算を行う。ここでcは光速を表す。これにより受信信号はクロスレンジ方向に圧縮されて、目標の画像が再生される。
【0009】
【数2】
ΔR = c/(2Δf) (2)
【0010】
このとき目標散乱点の検出は、再生された目標の画像上で、レンジ方向のセル間隔ΔR毎に得られる振幅値のピークを検出することにより行われる。
【0011】
以上のようにして、観測対象となる目標に対して搬送波周波数が時間とともに変化するパルスを送信し、反射されたパルスから目標の画像を再生して目標散乱点を検出することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の合成開口レーダ装置は、以上のように構成されているので、上記の式(2)により与えられるセル間隔ΔR以下でレンジ方向に近接した目標散乱点を分離して検出すること、すなわち分解能ΔR以上の解像度で、目標散乱点の検出ができないという課題があった。
【0013】
この発明は上記の課題を解消するためになされたものであり、パルスの搬送周波数変化量Δfによって決まる分解能以上の解像度で、目標散乱点の検出が可能な合成開口レーダ装置及びこの合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る合成開口レーダ装置は、レンジ方向に高速フーリエ変換処理を行う周波数変換手段と、この周波数変換手段により得られた周波数データを用いて、上記画像のレンジ方向について超解像処理を行い、目標散乱点のレンジと反射強度を算出する超解像処理手段とを備え、上記超解像処理手段が、周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う相関行列算出手段と、上記相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する移動平均算出手段と、上記平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値を求める固有値解析手段と、上記最小固有値から算出した固有ベクトルを用いて評価関数を計算する評価関数算出手段と、上記評価関数の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より目標散乱点のレンジを推定するレンジ推定手段と、上記レンジの推定値を用いて、上記目標散乱点の反射強度を推定する反射強度推定手段とを有し、上記周波数変換手段により得られた周波数データを高速逆フーリエ変換して、目標のレンジ方向のレンジプロフィールを生成する時間変換手段を備え、この時間変換手段により得られたレンジプロフィールに基づいて、レンジ推定手段が評価関数の振幅値のピークを検索するレンジ範囲を設定するように構成したものである。
【0015】
この発明に係る合成開口レーダ装置は、レンジ推定手段により推定した目標散乱点のレンジと反射強度推定手段により推定した上記目標散乱点の反射強度を、上記時間変換手段により得られたレンジプロフィールと比較して、上記レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点を削除する判定手段を備えたものである。
【0016】
この発明に係る合成開口レーダ装置は、レンジ推定手段により推定した目標散乱点のレンジと反射強度推定手段により推定した上記目標散乱点の反射強度を、時間変換手段により得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在するときに、判定手段が最小固有値変更指令を出力して、固有値解析手段が最小固有値を1つ繰り上げた固有値に設定を変更するようにして、上記レンジ推定手段により目標散乱点のレンジの推定を行うとともに上記反射強度推定手段により反射強度の推定を行い、上記レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と目標散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返し実行するように構成したものである。
【0017】
この発明に係る合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法は、画像のクロスレンジ方向の各成分について、レンジ方向に高速フーリエ変換処理を行う第1のステップと、この第1のステップにより得られた周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う第2のステップと、上記相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する第3のステップと、上記平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値を求める第4のステップと、上記最小固有値から算出した固有ベクトルを用いて評価関数を計算する第5のステップと、上記評価関数の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より上記目標散乱点のレンジを推定する第6のステップと、上記レンジの推定値を用いて、上記目標散乱点の反射強度を推定する第7のステップと、上記第1のステップにより得られた周波数データを高速逆フーリエ変換して、目標のレンジ方向のレンジプロフィールを生成する第8のステップを備え、この第8のステップにより得られたレンジプロフィールに基づいて、第6のステップの代わりに上記評価関数の振幅値のピークを検索するレンジ範囲を設定するものである。
【0018】
この発明に係る合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法は、第6のステップにより推定した散乱点のレンジと第7のステップにより推定した目標散乱点の反射強度を、第8のステップにより得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ散乱点を削除する第9のステップを用いるものである。
【0019】
この発明に係る合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法は、第6のステップにより推定した目標散乱点のレンジと第7のステップにより推定した目標散乱点の反射強度を、第8のステップにより得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在するときに、第9のステップが最小固有値変更指令を出力して、上記第4のステップが最小固有値を1つ繰り上げた固有値に設定し直して、上記第6のステップにより目標散乱点のレンジの推定を行うとともに上記第7のステップにより反射強度の推定を行い、上記レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と目標散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返し実行するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を図を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明のレーダ装置の実施の形態1を示す構成図である。図において、1はパルスを出力する送信機、2は後述の制御回路4から入力される周波数制御信号に基づいて時間とともに周波数を変化させた信号を出力する局部発振器、3は送信機1に対してトリガ信号を発生するパルス変調器である。制御回路4は局部発振器2に対する周波数制御信号を出力する。5は送受信を切換える送受切換器、6は送受切換器5を介して送信機1から出力されるパルスを目標に対して送信し、また目標から反射されたパルスを受信するアンテナ、7はアンテナ6により受信されたパルスを入力して、受信信号を出力する受信機、8は受信機7から入力した受信信号を各パルス毎に圧縮するレンジ圧縮手段、9はレンジ圧縮された各パルスの受信信号をストアするメモリ、10はレンジ圧縮された複数のパルスの受信信号をメモリから読み出し、これらに対してクロスレンジ圧縮を行い、目標の画像を再生するクロスレンジ圧縮手段、12は周波数変換手段、13aは超解像処理手段である。11は上述のレンジ圧縮手段8とメモリ9とクロスレンジ圧縮手段10と周波数変換手段12と超解像処理手段13aからなる信号処理器である。
【0021】
図2は超解像処理手段13aの具体的回路構成の一例を示すブロック図である。図において、14は周波数変換手段12により得られた周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う相関行列算出手段、15は相関行列算出手段14で算出された相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する移動平均算出手段、16aは移動平均算出手段15で算出された平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値λmin を求める固有値解析手段、17は固有値解析手段16aで得られた最小固有値λmin から算出した固有ベクトルを用いて評価関数P(t)を計算する評価関数算出手段、18aは評価関数算出手段17で算出された評価関数P(t)の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より目標散乱点のレンジを推定するレンジ推定手段、19は相関行列算出手段14からの相関行列R、固有値解析手段16aからの最小固有値λmin 及びレンジ推定手段18aからのレンジ値に基づいて、目標散乱点の反射強度を計算する反射強度推定手段である。
【0022】
次に動作を図3〜図5を用いて説明する。周波数変換手段12は、図3のようにクロスレンジ圧縮手段10により得られた目標の画像のクロスレンジ方向の各成分(x1 、x2 、…、xN )に対して、それぞれレンジ方向にデータ列を構成し、これらのデータに対して高速フーリエ変換を行い(第1のステップ)、周波数データ(z1 、z2 、…、zM )に変換して、超解像処理手段13aに出力する。相関行列算出手段14は周波数変換手段12より入力された周波数データに対して、下記の式(3)で定義される相関行列Rを算出する(第2のステップ)。ここで、*は共役複素数を表わす。
【0023】
【数3】
【0024】
次に移動平均算出手段15は、図4に示すように、相関行列算出手段14から出力された相関行列Rの一部から、次数M0 の小行列R1 を構成する。更に移動平均算出手段15は、相関行列から構成したL個の小行列R1 を平均化して、下記の式(4)で定義される平均相関行列Rを算出する(第3のステップ)。
【0025】
【数4】
【0026】
次いで固有値解析手段16aは、平均相関行列Rの固有値解析を実行する(第4のステップ)。この時、求められる次数M0 個の固有値λm (m=1、2、…、M0 )に対して、下記の式(5)に示す関係式が成り立つ。
【0027】
【数5】
λ1 >λ2 >…>λk >λk+1 >=λk+2 =…=λM0 (5)
【0028】
ここで固有値解析手段16aは、最小固有値λmin (λk+1 =λk+2 = … =λM0)よりも大きい固有値の数を、目標散乱点の数Kと推定する。次に、評価関数算出手段17は、固有値解析手段16aにより求めた最小固有値λm (m=k+1、…、M0 )に対応する固有ベクトルen=[ek+1 、…、eM0]と下記の式(6)で与えられるモードベクトルa(rk )とから、式(7)で定義される評価関数P(rk )を算出する(第5のステップ)。
【0029】
ここで、rk はレンジ、F0 はパルスの搬送波周波数の中心値をfc として、式(8)で与えられる初期値、ΔFは目標の画像のレンジ方向のセル数をMとして、式(9)で与えられるステップ値、Hは複素共役転置、Tはベクトルの転置をそれぞれ表わす。
【0030】
【数6】
【0031】
次いでレンジ推定手段18aは、図5に示すように評価関数P(t)の振幅値のピークを、原点より検索し、ピークを与えるレンジ値rk を求める(第6のステップ)。
【0032】
反射強度推定手段19は、下記の式(10)で定義されるモードベクトルa(rk )、式(11)で定義される行列Aを、 それぞれレンジ推定手段18aより入力したレンジ値rk を代入して計算する。
【0033】
【数7】
【0034】
更に反射強度推定手段19は、行列A、相関行列R、最小固有値λmin 、M×Mの単位行列Iから、下記の式(12)により行列Sを算出する。
【0035】
【数8】
S=(AH A)-1AH (R−λmin I)A(AH A)-1 (12)
【0036】
反射強度推定手段19は、算出した行列Sの対角項から、目標散乱点の反射強度を推定する(第7のステップ)。このようにして超解像処理手段13aは、レンジ推定手段18aにより推定した目標散乱点のレンジ値と、反射強度推定手段19により算出した目標散乱点の反射強度をもとに目標散乱点を検出する。このような方法で目標散乱点を検出した場合、前記式(2)で規定される分解能以上の解像度で、目標の散乱点を検出できる。このことは例えば、公知文献Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation(R.O.Schmidt著、IEEE Trans. AP−34,3,pp.276−280(1986))からも理解できる。
【0037】
以上説明したように、この発明による合成開口レーダ装置では、パルスの搬送周波数変化量Δfによって決まる分解能以上の解像度で、目標散乱点を検出することができる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1で示した周波数変換手段12から出力される周波数データを、高速逆フーリエ変換して目標のレンジ方向のレンジプロフィール24を生成する(第8のステップ)時間変換手段23を図6のように備える。図7に示すように、このレンジプロフィール24に基づいて設定したピーク検索範囲で、レンジ推定手段18bが評価関数の振幅値のピーク検索を行う。これにより、レンジ推定手段18bにおける演算量を減少させることができる。
【0039】
実施の形態3.
実施の形態2で示した超解像処理手段13bにおいて、レンジ推定手段18bが推定した目標散乱点のレンジと反射強度推定手段19が推定した目標散乱点の反射強度を、時間変換手段23により得られたレンジプロフィール24と比較して、レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点を削除する(第9のステップ)判定手段25aを図8に示すように備える。これにより、目標散乱点の検出精度を改善することができる。
【0040】
実施の形態4.
実施の形態3で示した超解像処理手段13cにおいて、レンジ推定手段18bにより推定した目標散乱点のレンジ及び反射強度推定手段19により推定した目標散乱点の反射強度を、時間変換手段23により得られたレンジプロフィールと判定手段25bが比較する。レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在するとき、図9に示すように、判定手段25bが最小固有値変更指令を出力して、固有値解析手段16bが最小固有値を1つ繰り上げた固有値(大きくした固有値)に設定を変更して、目標散乱点のレンジと反射強度の推定を再度実行する。
【0041】
図10に示すフローチャートに従って、まず、目標散乱点の推定(ステップST1)をし、目標散乱点の推定値>レンジプロフィールかを判断し(ステップST2)、YESならば、最小固有値変更:λmin =λmin-1 を行ってステップST1に戻る動作を繰り返し(ステップST3)、ステップST2の判断結果がNO、つまりレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と目標散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返して実行する。これにより、目標散乱点数の推定精度を改善することができる。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、受信信号から算出した平均相関行列の最小固有値に対する評価関数の振幅値のピークを与えるレンジ値に基づく、目標散乱点のレンジと反射強度を計測する超解像処理手段を備え、超解像処理手段が、周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う相関行列算出手段と、相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する移動平均算出手段と、平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値を求める固有値解析手段と、最小固有値から算出した固有ベクトルを用いて評価関数を計算する評価関数算出手段と、評価関数の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より目標の散乱点のレンジを推定するレンジ推定手段と、上記レンジの推定値を用いて、上記目標の散乱点の反射強度を推定する反射強度推定手段とを有し、周波数変換手段により得られた周波数データを高速逆フーリエ変換して、目標のレンジ方向のレンジプロフィールを生成する時間変換手段を設け、この時間変換手段により得られたレンジプロフィールに基づいて、レンジ推定手段が上記評価関数の振幅値のピークを検索するレンジ範囲を設定するように構成したので、パルスの搬送周波数変化量Δfによって決まる分解能、即ち式(2)で規定される分解能以上の解像度で目標散乱点の検出を高い精度で行うことができ、レンジ推定手段の演算量を削減することができるという効果がある。
【0043】
この発明によれば、レンジ推定手段により推定した散乱点のレンジと、反射強度推定手段により推定した散乱点の反射強度を、時間変換手段により得られたレンジプロフィールと比較して、レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ散乱点を削除する判定手段を設けて構成したので、目標散乱点の検出精度を改善することができるという効果がある。
【0044】
この発明によれば、レンジ推定手段により推定した散乱点のレンジと、反射強度推定手段により推定した散乱点の反射強度を、時間変換手段により得られたレンジプロフィールと比較して、レンジプロフィールを超えるレンジと、反射強度の推定値を持つ散乱点が存在するときに、判定手段が最小固有値変更指令を出力して、固有値解析手段が最小固有値を1つ繰り上げた(大きくした)固有値に設定し直すようにして、レンジ推定手段により散乱点のレンジの推定を行うとともに、反射強度推定手段により反射強度の推定を行い、レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返し実行するように構成したので、目標散乱点数の推定精度を改善することができるという効果がある。
【0045】
この発明によれば、目標の画像のクロスレンジ方向の各成分について、レンジ方向に高速フーリエ変換処理を行う第1のステップと、この第1のステップにより得られた周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う第2のステップと、相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する第3のステップと、平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値を求める第4のステップと、最小固有値から算出した固有ベクトルを用いて評価関数を計算する第5のステップと、評価関数の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より目標の散乱点のレンジを推定する第6のステップと、レンジの推定値を用いて、目標の散乱点の反射強度を推定する第7のステップと、第1のステップにより得られた周波数データを高速逆フーリエ変換して、目標のレンジ方向のレンジプロフィールを生成する第8のステップを設け、この第8のステップにより得られたレンジプロフィールに基づいて、第6のステップが評価関数の振幅値のピークを検索するレンジ範囲を設定するようにしたので、パルスの搬送周波数変化量によって決まる分解能、即ち式(2)で規定される分解能以上の解像度で目標散乱点を検出でき、ピーク検索に要する演算量を削減し、迅速に目標散乱点の検出を行うことができるという効果がある。
【0046】
この発明によれば、第6のステップにより推定した散乱点のレンジと第7のステップにより推定した散乱点の反射強度を、上記第8のステップにより得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ散乱点を削除する第9のステップを用いるようにしたので、目標散乱点の検出精度を改善することができるという効果がある。
【0047】
この発明によれば、第6のステップにより推定した目標散乱点のレンジと第7のステップにより推定した目標散乱点の反射強度を、第8のステップにより得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在するときに、第9のステップが最小固有値変更指令を出力して、第4のステップが最小固有値を1つ繰り上げた固有値に設定し直して、上記第6のステップにより目標散乱点のレンジの推定を行うとともに第7のステップにより反射強度の推定を行い、レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と目標散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返し実行するようにしたので、目標散乱点数の推定精度を改善することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す合成開口レーダ装置の構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1における超解像処理手段の構成図である。
【図3】 目標の画像と周波数変換手段がy軸方向に構成するデータ列を示す説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態1における相関行列と小行列の関係を示す説明図である。
【図5】 この発明の実施の形態1における評価関数のピーク検索の説明図である。
【図6】 この発明の実施の形態2における超解像処理手段の構成図である。
【図7】 この発明の実施の形態2における評価関数のピーク検索の説明図である。
【図8】 この発明の実施の形態3における超解像処理手段の構成図である。
【図9】 この発明の実施の形態4における超解像処理手段の構成図である。
【図10】 この発明の実施の形態4における最小固有値の設定変更処理のフローチャートである。
【図11】 従来の合成開口レーダ装置を示す構成図である。
【図12】 従来の合成開口レーダ装置のレンジ圧縮とクロスレンジ圧縮の説明図である。
【図13】 従来の合成開口レーダ装置のクロスレンジ圧縮手段が構成する受信信号の2次元配置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 送信機、2 局部発振器、3 パルス変調器、4 制御回路、5 送受切換器、6 アンテナ、7 受信機、8 レンジ圧縮手段、9 メモリ、10 クロスレンジ圧縮手段、11 信号処理器、12 周波数変換手段、13a,13b,13c 超解像処理手段、14 相関行列算出手段、15 移動平均算出手段、16a,16b 固有値解析手段、17 評価関数算出手段、18a,18b レンジ推定手段、19 反射強度推定手段、20 相関行列、21 小行列、22 評価関数、23 時間変換手段、24 レンジプロフィール、25a,25b 判定手段、101 送信機、102 局部発振器、103,104 制御回路、105 送受切換器、106 アンテナ、107 受信機、108 レンジ圧縮手段、109 メモリ、110 クロスレンジ圧縮手段、111 信号処理器。
Claims (6)
- 観測対象となる目標に対して搬送波周波数が時間とともに変化するパルスを送信し、上記目標から反射されたパルスを受信し、この受信パルスをビデオ信号に周波数変換した後、ディジタル変換した受信信号から上記目標のパルスの送信方向に対応したレンジ成分と該レンジ成分に直交するクロスレンジ成分からなる画像を再生する合成開口レーダ装置において、上記画像のクロスレンジ方向の各成分について、レンジ方向に高速フーリエ変換処理を行う周波数変換手段と、この周波数変換手段により得られた周波数データを用いて上記画像のレンジ方向についての超解像処理を行い、目標散乱点のレンジと反射強度を算出する超解像処理手段とを備え、上記超解像処理手段が、周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う相関行列算出手段と、上記相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する移動平均算出手段と、上記平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値を求める固有値解析手段と、上記最小固有値から算出した固有ベクトルを用いて評価関数を計算する評価関数算出手段と、上記評価関数の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より目標散乱点のレンジを推定するレンジ推定手段と、上記レンジの推定値を用いて、上記目標散乱点の反射強度を推定する反射強度推定手段とを有し、上記周波数変換手段により得られた周波数データを高速逆フーリエ変換して、上記目標のレンジ方向のレンジプロフィールを合成する時間変換手段を備え、この時間変換手段により得られたレンジプロフィールに基づいて、レンジ推定手段が評価関数の振幅値のピークを検索するレンジ範囲を設定することを特徴とする合成開口レーダ装置。
- レンジ推定手段により推定した目標散乱点のレンジと反射強度推定手段により推定した上記目標散乱点の反射強度を、時間変換手段により得られたレンジプロフィールと比較して、上記レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点を削除する判定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の合成開口レーダ装置。
- レンジ推定手段により推定した目標散乱点のレンジと反射強度推定手段により推定した上記目標散乱点の反射強度を、時間変換手段により得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在するときに、判定手段が最小固有値変更指令を出力して、固有値解析手段が最小固有値を1つ繰り上げた固有値に設定し直すようにして、上記レンジ推定手段により目標散乱点のレンジの推定を行うとともに上記反射強度推定手段により反射強度の推定を行い、上記レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と目標散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返し実行するように構成したことを特徴とする請求項2記載の合成開口レーダ装置。
- 観測対象となる目標に対して搬送波周波数が時間とともに変化するパルスを送信し、上記目標から反射されたパルスを受信し、この受信パルスをビデオ信号に周波数変換した後、ディジタル変換した受信信号から上記目標のパルスの送信方向に対応したレンジ成分と該レンジ成分に直交するクロスレンジ成分からなる画像を再生する合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法において、上記画像のクロスレンジ方向の各成分について、レンジ方向に高速フーリエ変換処理を行う第1のステップと、この第1のステップにより得られた周波数データの相互相関値を要素とする相関行列の計算を行う第2のステップと、上記相関行列の一部から小行列を構成し、これらの小行列の移動平均から平均相関行列を算出する第3のステップと、上記平均相関行列の固有値解析を行い最小固有値を求める第4のステップと、上記最小固有値から算出した固有ベクトルを用いて評価関数を計算する第5のステップと、上記評価関数の振幅値のピークを検索して、このピークを与えるレンジ値より目標散乱点のレンジを推定する第6のステップと、上記レンジの推定値を用いて、上記目標散乱点の反射強度を推定する第7のステップと、上記第1のステップにより得られた周波数データを高速逆フーリエ変換して、目標のレンジ方向のレンジプロフィールを生成する第8のステップを備え、この第8のステップにより得られたレンジプロフィールに基づいて、第6のステップが評価関数の振幅値のピークを検索するレンジ範囲を設定することを特徴とする合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法。
- 第6のステップにより推定した目標散乱点のレンジと第7のステップにより推定した上記目標散乱点の反射強度を、第8のステップにより得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点を削除する第9のステップを備えたことを特徴とする請求項4記載の合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法。
- 第6のステップにより推定した目標散乱点のレンジと第7のステップにより推定した目標散乱点の反射強度を、第8のステップにより得られたレンジプロフィールと比較して、このレンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在するときに、第9のステップが最小固有値変更指令を出力して、第4のステップが最小固有値を1つ繰り上げた固有値に設定し直すようにして、上記第6のステップにより目標散乱点のレンジの推定を行うとともに上記第7のステップにより反射強度の推定を行い、上記レンジプロフィールを超えるレンジと反射強度の推定値を持つ目標散乱点が存在しなくなるまで、この最小固有値の再設定と目標散乱点のレンジと反射強度の推定を繰り返し実行するように構成したことを特徴とする請求項5記載の合成開口レーダ装置における目標散乱点検出方法。
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