JP3678845B2 - 湿度センサユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿度センサの出力を対数圧縮してしかも温度補償することができる回路を備えた湿度センサユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10(A)は、湿度の変化に応じて対数的にインピーダンスが変化し且つ周囲の温度変化の影響を受けてインピーダンスが変化する温度特性を有する湿度センサの構造の一例を示すものである。図10(A)において、101はセラミック基板であり、セラミック基板101の上にはRuO2 を用いて一対の電極102a及び102bが厚膜印刷により櫛歯状に形成されている。そしてこれら一対の電極102a及び102bを覆うように、感湿性高分子ポリマーを用いて感湿膜103が形成されている。一対の電極102a,102b間のインピーダンス値と相対湿度との間には、図10(B)に示すように対数的に変化する関係がある。相対湿度に対して、インピーダンス値が変化するため、湿度センサの出力電流及び出力電圧も対数的に変化する。そのため湿度センサの出力を処理する回路では、まず対数圧縮する必要がある。ここで対数圧縮とは、数桁におよぶ対数的な変化を圧縮して、処理し易いまたは使い易い範囲内の変化に変換することである。またこの湿度センサは、温度依存性が大きく、その出力電圧は温度変化と比例関係(温度が上がると出力電圧が上がり、温度が下がると出力電圧が下がる関係)で変化し、インピーダンスは温度変化と逆比例の関係(温度が上がるとインピーダンスが下がり、温度が下がるとインピーダンスが上がる関係)で変化する。
【0003】
この湿度センサの出力を対数圧縮してしかも温度補償する温度補償回路を備えた従来の湿度センサユニットとしては、サーミスタを用いた対数圧縮回路や温度補償回路を用いるものや、予め温度補正変換テーブルを用意しコンピュータを用いてこの温度補正変換テーブルから適切な出力値を選択するもの等がある。従来の湿度センサユニットにおいて、温度補正が行われると、図10(C)に示すように、温度の変化に応じてユニットの出力電圧が補正される。なお従来のユニットでは湿度センサの出力電流を電圧に変換している。そのため温度が上がってインピーダンスが下がることにより出力電流が大きくなると、出力電圧が大きくなり、また温度が下がってインピーダンスが大きくなると出力電流が小さくなって出力電圧が大きくなる。そのため温度補償では、温度が上がると出力電圧を下げ、温度が下がると出力電圧を上げる動作を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロコンピュータを用いると、温度補償精度は高くなるものの湿度センサユニットの価格は非常に高くなるため、一般的ではない。これに対してサーミスタを用いる場合には、マイクロコンピュータを用いる場合よりも価格は安くなるが、それでも価格を下げることには限界がある。またサーミスタを用いて温度補償する場合には、サーミスタの抵抗値の微調整が難しいという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、対数圧縮と温度補償とをすることができる湿度センサユニットを従来よりも安価に提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、温度補償を行うための回路構成が従来よりも簡単な湿度センサユニットを提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、対数圧縮と温度補償とをダイオードを用いて実現した安価な湿度センサユニットを提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、ダイナミックレンジが広く且つ低い湿度まで検出できる湿度センサユニットを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、湿度の変化に応じて対数的にインピーダンスが変化し且つ周囲の温度変化の影響を受けてインピーダンスが変化する温度特性を有する湿度センサの出力を対数圧縮して、しかも温度補償することができる湿度センサユニットを改良の対象とする。そのため本発明の第1のタイプの湿度センサユニットでは、湿度センサの他に、湿度センサに流す所定周波数の交流信号を出力する発振回路と、湿度センサの出力信号を対数圧縮する対数圧縮回路と、対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の半波信号に含まれる温度変化による変化分を除去する温度補償回路とを具備する。
【0010】
対数圧縮回路としては、湿度センサから出力される電流信号を電圧信号に変換するとともに対数圧縮するものを用いるのが好ましい。このような回路としては、逆並列接続された2つのダイオードを含み、湿度センサから出力された電流信号を2つのダイオードを通すことによって電圧信号に変換するとともに対数圧縮する対数圧縮回路がある。このような対数圧縮回路を用いると、簡単な構成でしかも安価に対数圧縮回路を構成することができる。ちなみに現在、ダイオードの単価はサーミスタの単価の1/5〜1/10である。ダイオードは、図9(A)に示すように、順方向電流と順方向電圧との関係が対数的に変化する。この関係は、湿度センサの湿度とインピーダンスとが対数的に変化する特性と逆の関係となる。そこで湿度センサの出力電流(交流電流)をダイオードに流して電流−電圧変換すると、電流とインピーダンスとは打ち消し合う関係となって、ダイオードから出力される電圧はリニアに変化するようになる。その結果、ダイオードの出力電圧は湿度センサの出力電流(インピーダンス)を対数圧縮したものとなる。
【0011】
対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の半波信号を増幅すれば、所定の電圧範囲でその出力電圧と相対湿度とはリニアな関係となる。しかしながら湿度センサは温度の影響を受けて特性が変化する。すなわち湿度センサのインピーダンスは、温度変化と逆比例の関係で変化する(温度が上がるとインピーダンスが小さくなり、温度が下がるとインピーダンスが大きくなる。言い換えると温度が上がると出力電流が大きくなり、温度が下がると出力電流が小さくなる。)。その結果、増幅回路の出力電圧は、温度が上がると大きくなり、温度が下がると小さくなる影響を受ける。
【0012】
そこで本発明では、温度の影響による出力の変化を補償するための温度補償回路を、温度変化に対して逆比例の関係で順方向電圧が変化するダイオードを含み、ダイオードの温度特性を利用して温度変化による変化分を除去するように構成する。
【0013】
より具体的に温度補償回路について説明すると、温度補償回路は、温度が変化しても出力が予め定めた基準温度における出力と同じになるように、対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の電圧の半波信号に含まれる温度変化による電圧変化分を除去するための温度補償信号を発生し、該温度補償信号を用いて電圧変化分を除去して温度補償した半波信号を増幅して出力するように構成するのが好ましい。この場合には、温度補償回路を1以上の抵抗と複数のダイオードとが直列接続された分圧回路を含んで構成する。そして分圧回路の1以上の抵抗の値及び複数のダイオードの数を、分圧点に温度補償信号が得られるように定める。
【0014】
発明者の試験によると、対数圧縮回路から出力された一方の極性の電圧の半波信号に含まれる温度変化による変化分の変化特性と、ダイオードの温度変化による変化分の変化特性とは非常に近似していることが分かった。そこで本発明では、このダイオードの温度特性を利用して、湿度センサの温度特性を補償する。図9(B)は、図9(C)に示した回路構成において、ダイオードの温度特性を測定したものの一例である。即ち図9(B)は、ダイオードの順方向電流を一定とした場合における順方向電圧VF と周囲温度との関係を示している。この図から分かるように、ダイオードの順方向電流が一定であると考えると、温度の増加に応じて順方向電圧が小さくなり、温度の低下に応じて順方向電圧が大きくなる。先に説明したように、湿度センサの温度特性により、ユニットの出力電圧は、温度が上がると増加し、温度が下がると減少する。そこでこの温度変化による出力の変化分を打ち消すような温度補償信号が分圧点に得られるように、1以上の抵抗と複数のダイオードとを直列接続して分圧回路を構成する。直列接続するダイオードの数は、湿度センサの温度特性に応じて定める。ちなみに変化分が大きくなるほど、ダイオードの数を増やす必要がある。
【0015】
抵抗と複数のダイオードとの直列回路だけでは、分圧点に適正な温度補償信号が得られない場合には、少なくとも1つのダイオードに対して温度補償信号を微調整する微調整用抵抗を並列接続する。微調整用抵抗の抵抗値を適宜に選択することにより、分圧点に適正な温度補償信号を得ることが可能になる。なおこの微調整用抵抗を可変抵抗器により構成してもよい。
【0016】
更に、温度補償回路を具体的に特定すると、温度補償回路は対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の電圧の半波信号だけを通し且つ半波信号を基準電圧信号に従ってシフトして増幅する増幅回路と、1以上の抵抗と複数のダイオードとが直列接続された分圧回路と、複数のダイオードの少なくとも1つのダイオードに対して並列接続されて温度補償信号を微調整する微調整用抵抗とを含んで構成することができる。そして1以上の抵抗の抵抗値、複数のダイオードの数及び微調整用抵抗の抵抗値を分圧点に得られる電圧が温度補償信号となるように定め、温度補償信号を基準電圧信号として増幅回路に供給する。このようにすると温度が高くなって、半波信号の電圧が大きくなると、ダイオードの順方向電圧が下がって(インピーダンスが小さくなって)分圧点の電圧が下がり、温度補償信号としての基準電圧信号の電圧は下がる。また温度が低くなって、半波信号の電圧が下がると、複数のダイオードの順方向電圧は上がって(インピーダンスが大きくなって)、分圧点の電圧が上がり、温度補償信号としての基準電圧信号の電圧は上がる。この原理で、増幅回路の基準電圧信号が温度の変化に応じて変動して温度補償をすることができる。
【0017】
上記第1のタイプの発明のように、対数圧縮回路の出力の一方の極性の出力電圧をそのまま利用する構成では、変化量が少ない場合に微小な変化を検出することが難しい。そこで第2のタイプの発明では、対数圧縮回路の出力をそのまま利用せずに、ピーク値検出回路を設けて、対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の半波信号のピーク値を検出してピーク値を示すピーク値信号をピーク値検出回路から得る。そしてこのピーク値信号に含まれる温度変化による変化分を除去する温度補償回路を設ける。
【0018】
この温度補償回路は、温度変化に対して逆比例の関係で順方向電圧が変化するダイオードを含み、ダイオードの温度特性を利用してピーク値信号に含まれる温度変化による変化分を除去するように構成する。より具体的には、温度補償回路を1以上の抵抗と複数のダイオードとが直列接続されてピーク値信号を分圧する分圧回路を含んで構成し、1以上の抵抗の抵抗値と複数のダイオードの数とを分圧点に前記変化分が除去されたピーク値信号が得られるように定める。なおこの場合においても、複数のダイオードの少なくとも1つのダイオードに対して並列に微調整用抵抗を接続してもよい。
【0019】
温度が高くなると、ピーク値信号の電圧は大きくなるが、複数のダイオードの順方向電圧は下がって(インピーダンスが小さくなって)、分圧点の電圧は下がる。また温度が低くなると、ピーク値信号の電圧は下がるが、複数のダイオードの順方向電圧は上がって(インピーダンスが大きくなって)、分圧点の電圧は上がる。この原理で温度補償が行われる。第2のタイプの発明によると、第1のタイプの発明よりもより低い湿度を検出することができる上、ダイナミックレンジ(出力電圧と相対湿度との関係がリニアになる範囲)が広くなる。
【0020】
なお湿度が下がると湿度センサのインピーダンスは対数的に大きくなるために、湿度が低くなると検出精度が悪くなる。そこで検出精度を上げるためには、湿度センサと並列にインピーダンス調整用の抵抗体を接続すればよい。このようにすると、湿度センサとインピーダンス調整用の抵抗体との合成インピーダンスにより見掛け上のインピーダンスが低下するため、湿度が低くなってインピーダンスが大きくなっても、ある程度の範囲まで湿度の検出が可能になる。第1のタイプの発明においてもこのようなインピーダンス調整用の抵抗体を用いてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の湿度センサユニットの実施の形態の一例について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の一例の構成を示すブロック図である。同図において、1は湿度センサに印加する所定周波数の正弦波からなる交流信号[図2(A)参照]を出力する発振回路である。感湿性高分子ポリマ−からなる感湿膜を有する湿度センサに直流を印加すると、電気分極が発生するため、交流信号を発生する発振回路が必要になるのである。2は直流分カット用のコンデンサである。3は湿度の変化に応じて対数的にインピーダンスが変化し且つ周囲の温度変化の影響を受けてインピーダンスが変化する温度特性を有する湿度センサであり、具体的には感湿性高分子ポリマ−からなる感湿膜を有する湿度センサである。そして4は、湿度センサから出力される電流信号を電圧信号に変換するとともに対数圧縮する対数圧縮回路である。図2(B)は対数圧縮回路4の出力電圧を示している。5は対数圧縮回路4の出力のうち一方の極性の半波信号に含まれる温度変化による変化分を除去する温度補償回路である。6は増幅回路であり、この増幅回路6は温度補償回路5に内蔵されていてもよい。図2(C)は増幅回路6の出力である。なおこの増幅回路6の出力は平滑回路7を通して平滑される。図2(D)は増幅回路6の出力を平滑回路7で平滑した状態を示している。なおこの平滑回路7は、湿度センサユニットの一部を構成してもよいし構成しなくてもよい。より具体的には、温度補償回路5は、温度が変化しても出力が予め定めた基準温度における出力と同じになるように、対数圧縮回路4の出力のうち一方の極性の電圧の半波信号に含まれる温度変化による電圧変化分を除去するための温度補償信号を発生し、該温度補償信号を用いて電圧変化分を除去して温度補償した半波信号を出力する。
【0022】
図3は、図1の実施の形態の一実施例の回路図を示している。図3の実施例では、増幅回路6が温度補償回路の一部5aを構成しているため、符号6の表記はしていない。また図3の実施例では、平滑回路7はユニットの一部を構成していない。図3において、図2に示した部分と同じ部分には、図2に付した符号と同じ符号を付してある。図3においては、正弦波の交流電圧信号を出力する発振回路1が、図2(A)に示すような正弦波信号を出力できるICによって構成された演算増幅器OP1と、抵抗R1〜R3とコンデンサC1〜C3とから構成される。BFは、発振回路1の出力に対して設けられたバッファ回路であり、このバッファ回路BFは、演算増幅器OP2と抵抗R4及びR5とから構成されている。
【0023】
発振回路1から出力された正弦波状の交流信号は、バッファ回路BF及び直流分カット用のコンデンサ2を介して湿度センサ3の入力電極に接続されている。抵抗R6は、バイアス抵抗である。この例では、湿度センサ3として北陸電気工業株式会社がHIS−02の製品番号で販売する抵抗変化型の湿度センサを用いている。湿度の変化に応じて、湿度センサの入出力間のインピーダンスは対数的に変化する。
【0024】
湿度センサ3の出力電極には、対数圧縮回路4が接続されている。この対数圧縮回路4は、演算増幅器OP3と抵抗R7とダイオードD1及びD2とから構成される。演算増幅器OP3の−入力端子と出力端子との間には、逆並列接続された2つのダイオードD1及びD2の逆並列回路と抵抗R7との直列回路が並列接続されている。そして演算増幅器OP3の+入力端子には、温度補償回路5の分圧回路5bからの第2の分圧点(抵抗11と抵抗R12との接続点)から基準電圧Vref が入力されている。この演算増幅器OP3のゲインは無限大に設定されており、演算増幅器OP3は−入力端子に入力された信号と+入力端子に入力された信号の差電圧を反転して出力する。湿度センサ3から出力された交流電流は、2つのダイオードD1及びD2を通ることによって、対数圧縮される。ダイオードD1及びD2の順方向電流−順方向電圧特性は、湿度センサ3の対数的に変化する電流−電圧特性と逆の関係で対数的に変化する。したがってダイオードD1及びD2を通すことによって、電流ー電圧変換を行うと、結果として、湿度センサ3の出力が対数圧縮されることになる。対数圧縮された結果、図2(B)に示すように上下が潰れたような波形の信号が対数圧縮回路4から出力される。
【0025】
対数圧縮回路4の出力は、整流と温度補償と増幅とを行う温度補償回路5に入力される。温度補償回路5の演算増幅部5aは、対数圧縮回路4の出力のうち一方の極性の電圧の半波信号を分圧回路5bの第1の分圧点(抵抗R12と抵抗R13との接続点)に得られる温度補償信号(電圧)によりシフトして、温度補償する。すなわち基準温度(例えば25℃)のときの第1の分圧点の電圧を基準電圧として、温度の変化に応じてこの基準電圧から第1の分圧点の電圧を上げたり下げたりすることにより、対数圧縮回路4の出力のうちの一方の極性の電圧の半波信号をシフトして温度補償する。第1の分圧点の電圧は、温度が上がると下がり、温度が下がると上がる。
【0026】
演算増幅部5aは、演算増幅器OP4と、演算増幅器OP4の−入力端子と出力端子とに並列接続されたダイオードD3と演算増幅器OP4の出力にアノードが接続されたダイオードD4と、抵抗R8〜R10とから構成される。この演算増幅部5は、対数圧縮回路4から出力される一方の極性(正極性)の電圧信号がダイオードD3を通って流れるときにはゲインが1になり、他方の極性(負極性)の電圧信号が演算増幅器OP4を通って流れるときには抵抗R9と演算増幅器OP4の−入力端子側の抵抗R8との比により定まるゲインで電圧信号を増幅する。このように一方の極性の電圧信号に対してゲインを示さず、他方の極性の電圧信号に対してゲインを持たせると、半波整流と同時に増幅をすることになる。即ち図2(C)に示すように、正方向の電圧信号に対してはゲイン1で、負方向の電圧信号に対して所定のゲインを持って増幅する。演算増幅器OP4の出力は入力と極性が反転するため、対数圧縮回路4で反転した極性は増幅回路5で反転して対数圧縮回路4の入力信号と増幅回路5の出力とは極性が一致することになる。
【0027】
分圧回路5bは、抵抗R11〜抵抗13の直列回路と2つのダイオードD5及びD6との直列回路が直列接続されて構成されている。なおこの例では、ダイオードD6と並列に微調整用の抵抗R14が接続されて構成されている。抵抗R12と抵抗R13との接続点が温度補償信号を出力する第1の分圧点を構成している。例えば、演算増幅器OP4の+入力端子に入力する基準電圧信号を一定に固定しておくと、湿度センサ3の温度特性により、増幅回路の出力電圧は、温度が上がると増加し、温度が下がると減少するように変動する。そこで、この例では演算増幅器OP4の+入力端子に入力する基準電圧信号として、湿度センサ3の温度特性が原因となって発生する温度変化による変化分を除去できる温度補償信号を分圧点に得るように、抵抗R11〜R13の抵抗値と2つのダイオードD1及びD2の数と、抵抗R14の抵抗値とを決定している。直列接続するダイオードの数は、湿度センサ3の温度特性に応じて定める。ちなみに変化分が大きくなるほど、ダイオードの数を増やす必要があるが、ダイオードの数による調節だけでは、過補償になる場合がある。そこでこれを防ぐように抵抗R14の抵抗値を定めてある。
【0028】
演算増幅器OP4は、−入力端子から入力される負極性の半波信号を温度補償信号によりシフトしてそれを増幅して出力する。これによって湿度センサ3の温度特性によって生じる温度変化による変化分を除去する温度補償が行われる。
【0029】
なお抵抗R11と抵抗R12との接続点の電圧は、対数圧縮回路4の演算増幅器OP3の基準電圧信号Vref として利用されているが、ダイオードD5に近い位置にある分圧点の電圧ほど、温度変化に伴う電圧の変化が大きくなり、離れるほど小さくなる。したがってこの回路では、温度補償回路5においては積極的に温度補償をしているが、対数圧縮回路4では積極的に温度補償はしていない。なおダイオードD5及びD6は湿度センサ3が載置される基板と同じ基板に設けられている。
【0030】
温度補償回路5の出力は、このユニットを使用する相手の回路に入力される。そのため相手の回路には、図1に示した平滑回路7が含まれることになる。なおこのユニットに、平滑回路を含めてもよいのは勿論である。図4は、図3の実施例から得られる相対湿度と平滑した出力電圧との関係を示す実測データである。図4においては、各特性曲線の端に示した温度は周囲温度である。このデータから分かるように、相対湿度35%以上の範囲で、ほぼリニアな特性が得られており、また周囲の温度変化に対して出力電圧はさほど大きな変動を示していない。しかしながらこのユニットでは、相対湿度が35%より小さい範囲ではリニアな特性が得にくいことが分かる。またリニアな特性が得られる出力電圧の範囲即ちダイナミックレンジも1V前後と狭い。
【0031】
図5は、本発明の第2のタイプの湿度センサユニットの構成を示すブロックである。21は湿度センサに印加する所定周波数の矩形波状の交流信号[図6(A)参照]を出力する発振回路である。22は直流分カット用のコンデンサであり、23は前述と同様の湿度センサである。24は、湿度センサから出力される電流信号を電圧信号に変換するとともに対数圧縮する対数圧縮回路である。図6(B)は対数圧縮回路24の出力電圧を示している。28は対数圧縮回路24の出力のうち一方の極性の半波信号のピーク値を検出してピーク値を示すピーク値信号を出力するピーク値検出回路である。図6(C)はピーク値検出回路28の出力を示している。そして25は、温度が変化しても出力が予め定めた基準温度における出力と同じになるように、ピーク値信号に含まれる温度変化による変化分を除去する温度補償回路である。26は、温度補償回路の出力を増幅する増幅回路であり、図6(D)は増幅回路26の出力を示している。そして27は平滑回路である。
【0032】
温度補償回路25は、1以上の抵抗と複数のダイオードとが直列接続されてピーク値信号を分圧する分圧回路を含んで構成され、1以上の抵抗の抵抗値と複数のダイオードの数とは、分圧点に変化分が除去されたピーク値信号が得られるように定められている。湿度センサ23の温度特性により、増幅回路の出力電圧は、温度が上がると増加し、温度が下がると減少する。そこで分圧回路を構成する抵抗の抵抗値及び直列接続するダイオードの数は、湿度センサの温度特性に応じて定める。
【0033】
この例では、湿度センサ23と並列にインピーダンス調整用の抵抗体Rを接続している。このようにすると、湿度センサ23とインピーダンス調整用の抵抗体Rとの合成インピーダンスにより見掛け上のインピーダンスが低下するため、湿度が低くなって湿度センサのインピーダンスが大きくなっても、ある程度の範囲まである程度の精度で湿度の検出が可能になる。
【0034】
図7は、図5の実施の形態の実施例の要部の回路図を示している。なお発振回路21及びコンデンサ22は省略してある。この例でも湿度センサ23としては、図3の湿度センサ3と同じものを用いている。そして湿度センサ23に並列接続する抵抗体Rとしては、40MΩの抵抗値を有する抵抗体を用いている。対数圧縮回路24の構成は、図3に示した対数圧縮回路4の構成と同じであるので説明を省略する。
【0035】
ピーク値検出回路27は、対数圧縮回路24から出力される電圧信号[図6(B)参照]のうち正極性の電圧信号だけをダイオードD7を通して出力して、その出力でコンデンサC5を充電する。コンデンサC5は充電電圧が低下すると、抵抗R15を通して放電し、常にその端子電圧が充電電圧(対数圧縮回路4の正極性の電圧信号のピーク値)に対応した値を示している。
【0036】
増幅回路26は、抵抗R18及び抵抗R19と、演算増幅器OP6と、コンデンサC6とから構成され、温度補償回路26は抵抗R15,抵抗R16及び抵抗17とダイオードD8〜D10とから構成されている。コンデンサC5の端子電圧は、温度補償回路26を構成する抵抗R16とダイオードD8〜D10と抵抗R17の合成インピーダンストと抵抗R15とにより定まる分圧比で分圧されて、演算増幅器OP6の+入力端子に入力される。このことは見方を変えると、ピーク値信号に含まれる温度変化による変化分に相当する温度補償信号が分圧点(抵抗R15と抵抗R16との接続点)に得られ、演算増幅器OP6の+入力端子には、抵抗R16及びダイオードD8〜D10の直列回路の両端に現れる電圧(温度補償信号)がコンデンサC5の端子電圧(ピーク値信号)から差し引かれた電圧信号が入力されていることを意味する。直列接続するダイオードD8〜D10の数は、湿度センサ23の温度特性に応じて定める。ちなみに変化分が大きくなるほど、ダイオードの数を増やす必要があるが、ダイオードの数による調節だけでは、過補償になる場合がある。そこでこれを防ぐように抵抗R17の抵抗値を定めてある。なお増幅回路26の出力は、抵抗R20とコンデンサC7とからなる平滑回路27によって平滑されて出力される。
【0037】
図8は、図7の実施例から得られる相対湿度と平滑した出力電圧との関係を示す実測データである。図7において、各特性曲線の端に示した温度は周囲温度である。このデータから分かるように、この実施例によれば相対湿度20%以上の範囲で、ほぼリニアな特性が得られており、また周囲の温度変化に対して出力電圧はさほど大きな変動を示していない。また湿度20%が以下(10%)でも出力が出るようになっている。更に、この例ではダイナミックレンジ(電圧と湿度の関係が直線的になる領域)即ち出力電圧の幅が、図4に示した第1のタイプのユニットにより得られるダイナミックレンジよりも広くなっている。しかしこのタイプの湿度センサユニットでは、検出する相対湿度のバラツキが少し大きくなる傾向があり、そのためにトリミング調整が必要になる場合もある。またピーク値を検出するために、ピーク値検出回路を構成する素子の特性のバラツキが出力特性に比較的大きな影響を与えるおそれがある。これに対して第1のタイプの湿度センサユニットでは、検出できる湿度の範囲が狭く、またダイナミックレンジも狭くなるが、このような問題は生じない。したがって用途に応じて、いずれか適当なタイプの湿度センサユニットを用いればよい。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、対数圧縮と温度補償とを行うために、ダイオードの特性を利用しているため、湿度センサユニットを従来よりも安価に提供することができる。またダイオードの特性を利用して温度補償を行うと、温度補償を行うための回路構成が従来よりも簡単になる利点がある。
【0039】
また対数圧縮回路の出力のピーク値信号を増幅回路で増幅するようにすると、ダイナミックレンジが広く且つ低い湿度まで検出できる湿度センサユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1のタイプの湿度センサユニットの実施の形態の一例の構成を示すブロックである。
【図2】 (A)〜(D)は図1の各部の出力波形を示す図である。
【図3】 図1の実施の形態の一実施例の回路図を示している。
【図4】 図3の実施例から得られる相対湿度と平滑した出力電圧との関係を示す実測データである。
【図5】 本発明の第2のタイプの湿度センサユニットの実施の形態の一例の構成を示すブロックである。
【図6】 (A)〜(D)は図5の各部の出力波形を示す図である。
【図7】 図5の実施の形態の実施例の要部を示す回路図である。
【図8】 図7の実施例から得られる相対湿度と平滑した出力電圧との関係を示す実測データである。
【図9】 (A)はダイオードの順方向電流と順方向電圧との関係を示す図であり、(B)は図9(C)に示した回路構成においてダイオードの温度特性を測定したものの一例を示す図であり、図9(C)は測定用回路を示す図である。
【図10】 (A)は湿度の変化に応じて対数的にインピーダンスが変化し且つ周囲の温度変化の影響を受けてインピーダンスが変化する温度特性を有する湿度センサの構造の一例を示す図であり、(B)はこの湿度センサのインピーダンス値と相対湿度との関係を示しており、(C)は温度変化に伴う出力電圧の変動の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 発振回路
2 直流分カット用のコンデンサ
3 湿度センサ
4 対数圧縮回路
5 温度補償回路
6 増幅回路
7 平滑回路
Claims (3)
- 感湿性ポリマーからなる感湿膜を備え、湿度の変化に応じて対数的にインピーダンスが変化し且つ周囲の温度変化の影響を受けてインピーダンスが変化する湿度センサと、
前記湿度センサに流す所定周波数の交流信号を出力する発振回路と、逆並列接続された2つのダイオードを含み、前記湿度センサから出力された電流信号を前記2つのダイオードを通すことによって電圧信号に変換するととともに対数圧縮する対数圧縮回路と、
温度が変化しても出力が予め定めた基準温度における出力と同じになるように、前記対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の電圧の半波信号に含まれる前記温度変化による電圧変化分を除去するための温度補償信号を発生して該温度補償信号を用いて前記電圧変化分を除去し、温度補償した前記半波信号を増幅して出力する温度補償回路とを具備し、
前記温度補償回路は、
前記対数圧縮回路の出力のうち前記一方の極性の電圧の半波信号だけを通し且つ前記半波信号を基準電圧信号に従ってシフトして増幅する増幅回路と、
1以上の抵抗と複数のダイオードとが直列接続された分圧回路と、
前記複数のダイオードの少なくとも1つの前記ダイオードに対して並列接続されて前記温度補償信号を微調整する微調整用抵抗とを含んでおり、
前記1以上の抵抗の抵抗値、前記複数のダイオードの数及び前記微調整用抵抗の抵抗値は前記分圧点に得られる電圧が前記温度補償信号となるように定められており、
前記温度補償信号が前記基準電圧信号として前記増幅回路に供給されていることを特徴とする湿度センサユニット。 - 湿度の変化に応じて対数的にインピーダンスが変化し且つ周囲の温度変化の影響を受けてインピーダンスが変化する湿度センサと、
前記湿度センサに流す所定周波数の交流信号を出力する発振回路と、
逆並列接続された2つのダイオードを含み、前記湿度センサから出力された電流信号を前記2つのダイオードを通すことによって電圧信号に変換するととともに対数圧縮する対数圧縮回路と、
前記対数圧縮回路の出力のうち一方の極性の半波信号のピーク値を検出してピーク値を示すピーク値信号を出力するピーク値検出回路と、
温度が変化しても出力が予め定めた基準温度における出力と同じになるように、前記ピーク値信号に含まれる前記温度変化による変化分を除去する温度補償回路と、
前記温度補償回路の出力を増幅する増幅回路とを具備し、
前記温度補償回路は、1以上の抵抗と複数のダイオードとが直列接続されて前記ピーク値信号を分圧する分圧回路と、前記複数のダイオードの少なくとも1つの前記ダイオードに対して並列接続されて微調整のために用いる微調整用抵抗とを含んで構成され、前記1以上の抵抗の抵抗値、前記複数のダイオードの数及び前記微調整用抵抗の抵抗値が、分圧点に前記変化分が除去された前記ピーク値信号が得られるように定められていることを特徴とする湿度センサユニット。 - 前記湿度センサと並列にインピーダンス調整用の抵抗体が並列接続されている請求項1または2に記載の湿度センサユニット。
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