JP3678811B2 - 粉砕機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は粉砕機の制御装置に係り、特に、被粉砕物の生産量及び粒径分布の良好な制御応答性を実現し、かつ粉砕機の故障発生を防止するに好適な制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4に、従来より知られている粉砕機と、該粉砕機の制御装置を示す。
この図に示すように、本例の粉砕機は、ハウジング20内に備えられた被粉砕物保有手段たるターンテーブル6と、該ターンテーブル6を回転駆動するモータ5と、前記ターンテーブル6の上面外周部に押圧された粉砕手段たる粉砕ローラ8と、前記ターンテーブル6に対する前記粉砕ローラ8の加圧力を調整する加圧力調整手段14と、前記ハウジング20の下部に連通された搬送空気導入口21と、前記ハウジング20の上部に開口された粉砕機生産物の排出口22と、前記ハウジング20の上部に設けられた分級機たるベーン12と、該ベーン12の調整手段15と、前記ターンテーブル6に被粉砕原料1を供給するフィーダ2と、フィーダ2より供給された被粉砕原料1を前記ターンテーブル6の上面略中央部に導くホッパ4とから構成されている。
【0003】
前記フィーダ2によって搬送された被粉砕原料1は、ホッパ4を介して回転するターンテーブル6上に供給される。ターンテーブル6上に供給された被粉砕原料1は、ターンテーブル6の遠心力によってターンテーブル6の外周方向に順次移送され、粉砕ローラ8とによって粉砕される。粉砕された原料は、搬送空気導入口21から導入された搬送空気9によって上方に吹き上げられる。吹き上げられた被粉砕物のうち、ベーン12によって設定された粒径以下の被粉砕物(粉砕機生産物)10は、ベーン12及び排出口22を通って需要先へと輸送される。一方、吹き上げられた被粉砕物のうち、ベーン12によって設定された粒径以上の被粉砕物は、ベーン12によって粉砕機生産物10と分別され、遠心力分級捕集被粉砕物13となって再度ターンテーブル6に戻る。これよりもさらに粒径が大きな粉砕物は、重力が大きいためにベーン12に達する前に落下し、重力分級捕集被粉砕物11となって再度ターンテーブル6に戻る。したがって、前記ターンテーブル6上には、通常、被粉砕原料1と、重力分級捕集被粉砕物11と、遠心力分級捕集被粉砕物13との混合体が保有される。
【0004】
前記フィーダ2は、図示しない信号出力部からのフィーダ指令信号3に従って被粉砕原料1の運搬速度が加減され、該指令信号3に比例する量の被粉砕原料1をホッパ4に与える。フィーダ指令信号3は、粉砕機生産物10の流量が過不足の無いように加減される。この場合、粉砕機生産物10の流量がオンライン計測可能な場合は、生産物流量の計測値と目標値との偏差をPI調節により調節すれば良い。しかしながら、多くの場合には、粉砕機生産物10の流量はオンライン計測が困難であるから、通常は粉砕機生産物10の流量と因果関係にある状態量を計測し、調節することで同様の目的を達する。例えば、被粉砕原料が石炭で、需要先がドラムボイラである場合には、ドラムボイラの蒸気圧力はバーナに供給される微粉炭流量と直接的な因果関係を有するから、ドラム圧力が目標値となるように偏差のPI調節を行なうことで、フィーダ指令信号3が加減される。
【0005】
一方、前記加圧力調整手段14に与えられる加圧力指令信号16は、関数要素18により与えられる。すなわち粉砕機の粉砕能力は、ターンテーブル6に対する粉砕ローラ8の加圧力にほぼ比例して増減するから、加圧力指令信号16は、関数要素18に示すように、被粉砕原料1の供給量に比例して該加圧力を増減すべく与えられる。また、前記ベーン調整手段15に与えられる分級特性指令信号17は、関数要素19により与えられる。すなわち一般に粉砕機は、被粉砕原料1の供給量が多く、したがって高負荷運転になるほど粉砕機生産物10の粒径分布が悪化(粗粒分が増加)する傾向にあるから、この分級特性指令信号17は、関数要素19に示すように、被粉砕原料1の供給量が増加するほど分級設定を絞る(旋回力を増して粗粒の捕集効率を上げる)方向で与えられる。
【0006】
なお、需要先の事情によっては、低負荷運転時に一層の粒度の向上を要求される場合もあるので、関数要素18,19の設定法については、上述のごとく画一的に論じにくい場合もあるが、被粉砕原料の供給量に応じて加圧力指令信号16及び分級特性指令信号17を加減する構成である点においては共通している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術に係る制御回路は、粉砕機の負荷が一定であるか、あるいは負荷の変化率が低い場合には、実用上充分な性能を発揮する。例えば、粉砕機への被粉砕原料1の供給量をステツプ状に変化させたときの粉砕機生産物の応答時定数をT[分]としたとき、変化率が1/(10T)[%/分]程度以下(通例T=1〜2[分]だから、0.05〜0.1[%/分]以下を指す)の場合には、実用上充分な性能を発揮できる。
【0008】
しかしながら、昨今は5〜10[%/分](50[%]負荷から100[%]負荷への到達を25〜5[分]で行なう負荷変化率)の高速負荷変化が必要になっており、前記従来技術によるときには次のような不都合が起こる。
【0009】
▲1▼高速負荷変化領域では、被粉砕原料1供給量の関数として保有被粉砕物7の量が一意に決まらないため、ターンテーブル6上の保有被粉砕物7の量と加圧力指令信号16とがアンバランスになり、消費電力の増加といった経済上の不都合や、ターンテーブル6及び粉砕ローラ8の摩耗増加、さらには粉砕機の振動増加といった工学上の不都合、それに粉砕機生産物10の粒度分布が悪化して需要先への粉砕機生産物10の増加が遅れるといった機能上の不都合が生じる。
すなわち、本来、保有被粉砕物7の増加、減少は粉砕機生産物10の量を加減し、原料供給量と粉砕機生産物10の量の偏差が保有被粉砕物7の量の増減をもたらすから、自己平衡性により、充分に時間が経過すれば、保有被粉砕物7の量は原料1供給量に見合う値に収束するが、高速負荷変化領域ではこの作用が追い着かない。したがって、ターンテーブル6と粉砕ローラ8との間を通過する被粉砕物の流量は常に保有被粉砕物7の量に比例するとみなせるに対し、これを処理する能力を支配する加圧力指令信号16は被粉砕原料1供給量の関数として関数要素18で与えられるため、ターンテーブル6上の実際の保有被粉砕物7の量と加圧力指令信号16とがアンバランスになる。
かかるアンバランスを生じると、前述の自己平衡時の収束値を基準として被粉砕原料1に比して保有被粉砕物7の保有量が多すぎるときは、ターンテーブル6と粉砕ローラ8との間を通過する被粉砕物の流量に対して加圧力指令信号16が過小となって、粉砕後の粒径分布の悪化を招く。典型的には、高速負荷上昇時、フィーダ指令信号3は、図示しない上位の制御装置からPI制御で与えられるのが一般的であるから、その変化にはオーバーシュート分を含む場合が多い。また、いわゆる加速信号と称して、意識的にオーバーシュートさせることもある。このような場合、被粉砕原料1の供給量のオーバーシュートに伴い、保有被粉砕物7の量は急増するが、オーバーシュートの下降局面以降は減少したフィーダ指令信号3により加圧力指令信号16も低下するため、上述のアンバランスを招き、粉砕機生産物10の粒度分布が悪化し、分級手段たるベーン12を通過する粉砕機生産物10の流量が伸び悩み、需要先への粉砕機生産物10の増加が遅れる。反対に、保有被粉砕物7の保有量に比して加圧力指令信号16が過大になると、不必要な粉砕加圧力が粉砕ローラ8に作用するために、不必要な粉砕動力が消費され、またターンテーブル6と粉砕ローラ8とが接触しやすくなるために、ターンテーブル6及び粉砕ローラ8の摩耗が増加したり、粉砕機が振動するといった不都合が発生する。
【0010】
▲2▼前記▲1▼と同様に、高速負荷変化領域では、被粉砕原料1供給量の関数として保有被粉砕物7の量が一意に決まらないため、ターンテーブル6上の保有被粉砕物7の量と分級特性指令信号17とがアンバランスになり、粉砕機生産物10の粒度分布を良好に維持できないという不都合が生じる。
すなわち、負荷変化率が高い場合には、前記したように保有被粉砕物7が多くなり、これに比例して多量かつ粗粒の被粉砕物が分級手段たるベーン12に搬送されるため、被粉砕原料1の供給量に比例して分級特性指令信号17を変化させると、粉砕機生産物10の粒度分布を良好に維持できなくなる。特に、フィーダ指令信号3にオーバーシュート分を含む典型的な制御方式において、かかる不都合が顕著になる。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の不都合を解消するためになされたものであって、粉砕機の負荷が一定である場合及び粉砕機の負荷変化率が低い場合のみならず、粉砕機の負荷変化率が高速である場合にも、これに応答性良く追従して良好な粒度分布を有する粉砕機生産物を安定に供給可能な粉砕機の制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の目的を達成するために、回転する被粉砕物の保有手段と、該保有手段の外周近傍に設けられた被粉砕物の粉砕手段と、該粉砕手段に加えられる加圧力の調整手段とを有する粉砕機に付設され、前記保有手段に対する被粉砕物の供給量に応じて前記粉砕手段に加えられる加圧力を制御し、需要先に所要粒径分布及び流量の粉砕機生産物を供給する粉砕機の制御装置において、前記粉砕機のオンライン動特性モデルに実機粉砕機と同一の各操作量を与えて、一定もしくは可変の周期ごとに前記保有手段上の被粉砕物保有量と保有被粉砕物の粒度分布とを算出し、かつ各演算ごとにそれらの算出値を記憶部に記憶し、今回の演算に当っては、前回の算出値を参照して前記オンライン動特性モデルを記述する微分方程式を解き、今回算出された被粉砕物保有量及び/又は保有被粉砕物の粒度分布データから、前記調整手段に加えられる加圧力指令信号を得る構成にした。
【0013】
また、他の手段として、回転する被粉砕物の保有手段と、該保有手段の外周近傍に設けられた被粉砕物の粉砕手段と、該粉砕手段に加えられる加圧力の調整手段と、前記粉砕手段を通過した被粉砕物のうちの粗粒分を選択的に前記保有手段に再循環させる分級手段と、該分級手段の分級特性調整手段とを有する粉砕機に付設され、前記保有手段に対する被粉砕物の供給量に応じて前記分級手段の分級特性を制御し、需要先に所要粒径分布及び流量の粉砕機生産物を供給する粉砕機の制御装置において、前記粉砕機のオンライン動特性モデルに実機粉砕機と同一の各操作量を与えて、一定もしくは可変の周期ごとに前記保有手段上の被粉砕物保有量と保有被粉砕物の粒度分布を算出し、かつ各演算ごとにそれらの算出値を記憶部に記憶し、今回の演算に当っては、前回の算出値を参照して前記オンライン動特性モデルを記述する微分方程式を解き、今回算出された被粉砕物保有量及び/又は保有被粉砕物の粒度分布データから、前記分級特性調整手段に加えられる分級特性指令信号を得る構成にした。
【0014】
【作用】
本願発明者らの研究によると、フィーダから被粉砕物保有手段(ターンテーブル)に供給される被粉砕原料の量を急激に変化させた場合にも、被粉砕物保有手段が保有する被粉砕物の総量(被粉砕物保有量)と、需要先に供給される被粉砕物の粒度分布及び/又は分級手段入口の被粉砕物の粒度分布とを求め、これらのデータから加圧力調整手段に加えられる加圧力指令信号及び/又は分級特性調整手段に加えられる分級特性指令信号を算出し、粉砕ローラの加圧力及び/又は分級手段の分級特性を調整すれば、被粉砕物保有量と加圧力指令信号及び/又は分級特性指令信号とを常時バランスさせることができる。したがって、被粉砕原料の供給量の変化に応答性良く追従して所望の粒度及び量の粉砕機生産物を需要先に供給でき、また被粉砕物保有量の不足に起因する各種の工学的不都合も回避できる。
【0015】
しかし前記の各物理量は、オンライン計測(瞬時値を時々刻々得る計測方法)が不可能であるか、あるいはきわめて困難である。
【0016】
そこで、対象となる粉砕機のオンライン動特性モデルを構築し、これに実機粉砕機と同一の操作量、例えば被粉砕原料供給量、ターンテーブル回転数、搬送空気流量、分級ベーン開度等を与えることによって、常時、被粉砕物保有量と需要先に供給される被粉砕物の粒度分布及び/又は分級手段入口の被粉砕物の粒度分布とを演算で求め、さらにこれらの算出値に基づいて加圧力指令信号及び/又は分級特性指令信号を得る。これらの各信号を加圧力調整手段及び/又は分級手段調整手段に印加すると、被粉砕物保有量と加圧力指令信号及び/又は分級特性指令信号とを常時バランスさせることができるので、前記した実用上及び工学上の諸効果を得られる。
【0017】
なお、需要先に供給される被粉砕物の粒度分布及び分級手段入口の被粉砕物の粒度分布の双方を演算で求め、かつ加圧力指令信号及び分級特性指令信号の双方を得て、加圧力調整手段及び分級手段調整手段の双方を制御することがより好ましいが、いずれか一方の粒度分布情報を演算で求め、いずれか一方の指令信号を得て、いずれか一方の調整手段のみを制御するようにしても、従来技術よりも良好な結果が得られる。
【0018】
【実施例】
以下、典型的な石炭粉砕機を例にとって本発明の一実施例を説明する。
まず、本発明の実施に必要な石炭粉砕機の動特性シミユレーシヨンモデルの演算法として、本願発明者が平成3年12月13日に計測自動制御学会中国支部学術講演会にて講演したものを説明する。このシミユレーシヨンモデルは、粒度分布を僅か4つの変数で模擬可能で、低計算量で高精度を得られる点に特徴を有する。なお、本発明に適用可能な石炭粉砕機の動特性シミユレーシヨンモデルの演算法自体は、前記のほかにも従来より種々提案されており、例えば本願発明者が先に提案したモデル(特願昭63−131342号に記載)や実機データの統計処理、それに人口知能を用いた演算法などを用いることもできる。
【0019】
(1)粉砕機内の現象
(1.1)粒度分布の表記
断面を微小時間に通過する粒子中、粒径ξ以下なる質量割合により粒度分布が定義可能で、その密度関数をg(ξ)と表記し、適宜に場所を示す添字を付加する。サンプルされた静止状態の質量粒度分布密度f(ξ)との関係は質量流量Qを用いて次式となる。
g(ξ)≡E{Q|(ξ,ξ+dξ)}f(ξ)/E{Q} (1)
(1.2)粉砕機構
粉砕前後の諸量にそれぞれ添字ip,opを与えると、粒度分布について次の関係がある。
op(ξ)=∫- op|ip(ξ|η)gip(η)dη (2)
ここに、粒径ξを対数軸にとると条件付確率密度gop|ipは、L.Austin らの解明した粉砕分布定数(Power Technology,Vol.29,pp.263-275(1981),同、Vol.33,pp.113-125(1982),同、Vol.33,pp.127-134(1982)に記載)と一致し、これをsとする。
op|ip(ξ|η)=s(ξ−η) (3)
質量流量については、粉砕機構内で蓄積は無いと仮定して次式を得る。
E{Qop}=E{Qip} (4)
(1.3)分級機構
第j番目の分級機構について、各「粒子の通過」は互いに独立事象であつて、Θjをインジケータとすれば、実験により解明されている分級効率cj(ξ)(廻ほか、粉体工学誌、Vol,25,pp.430-436(1988)に記載)と次の関係がある。
rj=0|(ξ,ξ+dξ)}=cj(ξ) (5)
rj=1|(ξ,ξ+dξ)}=1−cj(ξ) (6)
分級入口炭、循環炭、及び通過炭に係わる諸量に夫々添字ij,rj,ojを与えると、ベイズ定理により粒度分布密度を表す次式を得る。
【0020】
rj(ξ)=cj(ξ)gij(ξ)/rj (7)
oj(ξ)=[1−cj(ξ)]gij(ξ)/(1−rj) (8)
ここに、
j=∫- j(ξ)gij(ξ)dξ (9)
分級機構周辺の流量は次の通り求められる。
【0021】
E{Qrj}=E{Θjij}=rjE{Qij} (10)
E{Qoj}=E{(1−Θj)Qij=(1−rj)E{Qij} (11)
(1.4)混合機構
分級機構(j=0,……,n)からの循環炭と、原料炭(添字ib)とを混合して流出炭(添字ob)となす機構を考える。ここで混合機構保有炭GbとQobとの間に次の関係を仮定する。
E{Qob}=E{P}E{Gb} (12)
Pは粒径と独立とし、この仮定を正当化するため、混合機構と続く粉砕機構の間に仮想的な分級機構(j=0)を設けて前出のL.Austinらが解明したξに依存する粉砕速度定数を考慮する。
ここで、前出の第(1)式と第(12)式に着目し、混合により粒径は変化しないと考えて、(ξ,ξ+dξ)に属する粒子のマスバランス式が得られる。
【0022】
Figure 0003678811
(2)モデルの数学的記述
(2.1)分布密度のパラメタライズ
Ξが分布密度g(ξ)に従うときλ、ρで規準化(アフイン変換)したモーメントを考える。
k(λ,ρ)=E{[(Ξ−λ)/ρ] } (14)
このとき、キユムラントβk(λ,ρ)が対応して求められる。本モデルでは、分布密度を次の4パラメータで整理する。
μ=v1(0,1),σ=[v2(0,1)]1 2 (15)
Skewness:β3(μ,σ)=v3(μ,σ) (16)
Excess:β4(μ,σ)=v4(μ,σ) 3 (17)
これらより一意にエツジワース展開係数αkが求まり、分布密度を具体的に表示できる。
g(ξ)=Σkαkp(ξ;μ,σ)hk([ξ−μ]/σ) (18)
ここにp(ξ;μ,σ)はガウス分布、hkはk次のエルミート多項式である。
【0023】
(2.2)粉砕機構
前出の第(3)式を第(2)式に代入すると重畳積分であつて、キユムラントの和に帰着し、以下を得る。
Figure 0003678811
ここに、添字sは粉砕分布定数sを、それ以外は各粒度分布密度gを指す。さらに、μop、σop、β3op,σop)、β4op,σop)は前出の第(15)式〜第(17)式及び次式を用いて計算できる。
【0024】
Figure 0003678811
(2.3)分級機構
j(ξ)は、適当なτmj、λmj、ρmjを用いて近似できる。
j(ξ)≒Σmτmjp(ξ;λmj,ρmj) (24)
ij(ξ)は第(18)式の形式であり、第(7)式及び第(10)式より循環炭の諸量が具体的に求められる。
【0025】
Figure 0003678811
ここに次の関係がある。
【0026】
Figure 0003678811
またα0rjmkは、次式にエルミート多項式の加法定理を適用し、係数を整理して得られる。
Σkαijkk([ρmrj/σij][ξ−λmrj]/ρmrj+[λmrj−μij]/σij) (29)
前出の第(25)式は分布密度の重みつき混合であり、添字mについてα0rjmkからvkmrj,ρmrj)が一意に求まり、同一λ、ρのvkは重みつき加算が可能だから、結局前出の第(23)式、第(15)式〜第(17)式を用いて、μrj、σrj、β3rj,σrj)、β4rj,σrj)が計算できる。添字ojの通過炭についても同様の議論である。
【0027】
(2.4)混合機構
適当に選んだλb、ρbで規準化すると、前出の第(13)式よりvkobについての微分方程式を得る。
【0028】
Figure 0003678811
第(23)式、第(15)式〜第(17)式を適用すれば、一般にμ、σ、β3(μ,σ)、β4(μ,σ)とvk(λ,ρ)の相互変換が可能だから、(3.2)、(3.3)の結論を代入して(30)を解くことができる。このときPade近似の採用で安定な数値計算が可能となつた。
【0029】
(3)解析例
図2に、粉砕機構に続いて2段の分級機構を有する石炭粉砕機の動特性解析例を示す。図3は、当該ケースにおいて、3分経過時点の各部の粒度分布(E{Q}g(ξ)の形式)を示す。
【0030】
図1に、本発明に係る制御装置の一例を示す。本例の制御装置は、第1の演算部20と、第2の演算部21と、第3の演算部22と、前記第1の演算部20の演算データを演算ごとに記憶する記憶部23とから構成されており、加圧力指令信号16と分級特性指令信号17の双方を算出するようになっている。
【0031】
図1において、符号24,25,28は粒径分布情報を表わす信号であって、前出の第(15)式、第(16)式、第(17)式で与える平均、分散、スキユーネス、エクセスを成分にする。
【0032】
第1の演算部20は、被粉砕原料の粒度分布情報24及びフィーダ指令信号3(図4参照)から被粉砕原料1の供給量を知つて、前出の第(19)式〜第(30)式を解く。このとき、(19)〜(22)式におけるv1s〜v4s、及び第(24)式〜第(29)式においてj=0の場合は、これらの式中の諸係数が加圧力の関数となるため、加圧力指令信号16により、現在の加圧力を知つてこれを考慮する。また、第(24)式〜第(29)式においてj=1,2の場合は、これらの式中の諸係数が分級手段の設定の関数となるため、分級特性指令信号17により、これを考慮する。また、最終的に第(30)式を解く際には、該方程式は常微分方程式であつて、これを数値積分で解く際に、必ず1回前(1積分時間幅だけ前の時点)の被粉砕物保有量、及び、粒度分布が必要であるから、現在の算出値25,26を記憶部23により、次の回(1積分時間幅だけ時間経過後)まで記憶し、信号27,28として第1の演算部20に与える。
【0033】
第2の演算部21は、現在の被粉砕物保有量及びその粒度分布を信号26,25によりそれぞれ知つて適確な加圧力指令信号16を求める。また、第3の演算部22は同様の入力により、適確な分級器設定信号17を求める。
【0034】
なお、前記実施例においては、加圧力指令信号16と分級特性指令信号17の双方を算出したが、加圧力指令信号16のみを算出して被粉砕物保有量の変化に粉砕機生産物の量を追従させることもできる。この場合には、制御装置を、第1の演算部20と、第2の演算部21と、前記第1の演算部20の演算データを演算ごとに記憶する記憶部23とから構成することができる。
【0035】
また、より鋭敏な遠心力分級特性を得るため、図4のベーンに代えて、電動機で回転駆動される回転羽根にて被粉砕物に遠心力を与える回転式分級機が採用される場合もあるが、この場合にも前記実施例と全く同様に実施できる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粉砕機の加圧力が該粉砕機内の被粉砕物の保有量及び粒度分布に応じて調節されるので、高速負荷変化時にあつても、粉砕機内に過度な被粉砕物が保有されることがなく、出口粒径分布の低下、出炭量の伸び悩み、運転動力の増加が防げる。また、不必要な加圧による摩耗や、被粉砕物保有の過小による振動も予防できる。一方、分級手段の分級特性を併せて調整するようにした場合には、これに加えて、粉砕機の分級設定が該粉砕機内の被粉砕物の保有量及び粒度分布に応じて調節されるので、高速負荷変化時にあつても粉砕機生産物の良好な粒度分布を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る制御装置の構成図である。
【図2】石炭粉砕機動特性モデルの動作例図である。
【図3】石炭粉砕機動特性モデルの動作例図である。
【図4】従来例に係る制御装置の構成図である。
【符号の説明】
2 フィーダ
3 フィーダ指令信号
6 被粉砕物保有手段
7 保有被粉砕物
8 粉砕手段
10 粉砕機生産物
12 分級手段
16 加圧力指令信号
17 分級特性指令信号
20,21,22 演算部
23 記憶部
24 被粉砕原料の粒径分布情報
25 保有被粉砕物の粒径分布情報
26 被粉砕物保有量
27 被粉砕物保有量(前回値)
28 保有被粉砕物の粒径分布情報(前回値)

Claims (2)

  1. 回転する被粉砕物の保有手段と、該保有手段の外周近傍に設けられた被粉砕物の粉砕手段と、該粉砕手段に加えられる加圧力の調整手段とを有する粉砕機に付設され、前記保有手段に対する被粉砕物の供給量に応じて前記粉砕手段に加えられる加圧力を制御し、需要先に所要粒径分布及び流量の粉砕機生産物を供給する粉砕機の制御装置において、前記粉砕機のオンライン動特性モデルに実機粉砕機と同一の各操作量を与えて、一定もしくは可変の周期ごとに前記保有手段上の被粉砕物保有量と保有被粉砕物の粒度分布とを算出し、かつ各演算ごとにそれらの算出値を記憶部に記憶し、今回の演算に当っては、前回の算出値を参照して前記オンライン動特性モデルを記述する微分方程式を解き、今回算出された被粉砕物保有量及び/又は保有被粉砕物の粒度分布データから、前記調整手段に加えられる加圧力指令信号を得ることを特徴とする粉砕機の制御装置。
  2. 回転する被粉砕物の保有手段と、該保有手段の外周近傍に設けられた被粉砕物の粉砕手段と、該粉砕手段に加えられる加圧力の調整手段と、前記粉砕手段を通過した被粉砕物のうちの粗粒分を選択的に前記保有手段に再循環させる分級手段と、該分級手段の分級特性調整手段とを有する粉砕機に付設され、前記保有手段に対する被粉砕物の供給量に応じて前記分級手段の分級特性を制御し、需要先に所要粒径分布及び流量の粉砕機生産物を供給する粉砕機の制御装置において、前記粉砕機のオンライン動特性モデルに実機粉砕機と同一の各操作量を与えて、一定もしくは可変の周期ごとに前記保有手段上の被粉砕物保有量と保有被粉砕物の粒度分布を算出し、かつ各演算ごとにそれらの算出値を記憶部に記憶し、今回の演算に当っては、前回の算出値を参照して前記オンライン動特性モデルを記述する微分方程式を解き、今回算出された被粉砕物保有量及び/又は保有被粉砕物の粒度分布データから、前記分級特性調整手段に加えられる分級特性指令信号を得ることを特徴とする粉砕機の制御装置。
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