JP3677716B2 - 放送電波伝搬解析システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放送局諸元を入力して、地域毎にメッシュ分割した各メッシュにおける前記放送局からの電界強度を計算し各放送局の放送電波の伝搬状況を解析する放送電波伝搬解析システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
地上波デジタル放送を実現するには、テレビ電波送信および中継拠点の立地計画立案のために電波伝搬状態を解析することが必要である。従来、テレビ電波送信・中継拠点の立地計画では、送信・中継拠点の組み合わせにより、定められた範囲に所定出力の電波が到達するよう拠点計画を行っているが、机上で計画する場合、実際にどのような組み合わせであれば所定の範囲に到達するかをイメージすることは難しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば拠点立地計画にあたっては、次のことを満足させる必要がある。まず、送信・中継拠点の組み合わせにより電波が計画範囲に到達していること、計画範囲周辺の同種の送信・中継拠点による影響を考慮すること、計画範囲に分布する人口、世帯などに対して所定の条件を満足する電波が到達していることである。通信・中継拠点の拠点立地計画では、拠点の位置およびその特性、地域地形などを利用し電波伝搬の状況を理論式によりシミュレートして最適な立地を計画するので、実際の伝搬状況との間には誤差が生じる。この誤差を最小限にするため実測値による補正等を施すことがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであって、計画初期段階における送信・中継拠点立地計画に有効な電波伝搬状況に関する情報を提供するものである。
【0005】
そのために本発明は、放送局諸元を入力して、地域毎にメッシュ分割した各メッシュにおける前記放送局からの電界強度を計算し各放送局の放送電波の伝搬状況を解析する放送電波伝搬解析システムであって、地域毎にメッシュ分割した地図データを格納する地図データ記憶手段と、解析条件、放送局諸元、解析条件や放送局諸元の選択、指示の入力を行う入力手段と、前記入力手段により入力された解析条件、放送局諸元に基づき前記各メッシュにおける電界強度を求める電界強度計算手段と、前記強度計算手段により計算した電界強度に基づき前記各メッシュにおける最大電界強度を求める最大電界強度計算手段と、前記強度計算手段により計算した電界強度に基づき前記各メッシュにおける干渉の有無を求める干渉計算手段と、前記電界強度、最大電界強度、干渉の有無を解析データとして格納する解析データ記憶手段と、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データ及び前記解析データ記憶手段に格納された解析データに基づき地図及び解析結果を出力する出力手段と、前記入力手段により入力された放送局、解析条件に基づき前記各計算手段を制御して前記解析データを前記解析データ記憶手段に格納し前記地図データ記憶手段に格納された地図データ及び前記解析データ記憶手段に格納された解析データに基づき前記出力手段の出力を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
前記電界強度計算手段は、円周分割と放射線状計算分割を行って分割ピッチに基づき放送局からの見通しがあるか、送受信点間に山岳回折に関係する山があるか、反射波が山で遮られるかを考慮して放射線方向の電界強度の計算を行って、各メッシュの近傍3点の前記放射線方向の計算値に基づき補間して該各メッシュの強度計算を行い、前記最大電界強度計算手段は、対象となる放送局の電界強度を比較して最大値を求めることにより強度計算を行い、前記干渉計算手段は、混信妨害を受ける放送局を希望局とし該希望局と同一チャンネル及び隣接チャンネルの放送局を妨害局として該妨害局を検索し、該検索された妨害局のうち選択された妨害局について干渉計算を行い、前記干渉の有無は、前記希望局の電界強度と前記妨害局の電界強度の差が予め設定された混信妨害比より大きいか否かにより判断することを特徴とするものである。
【0007】
前記地図データは、前記各メッシュ毎に人口や世帯数などの統計データを有し、前記制御手段は、前記出力手段に地図データと統計データと解析データを重畳して出力し、前記制御手段は、前記統計データと解析データをそれぞれ区分して異なる出力態様で前記出力手段に出力し、前記統計データを前記各メッシュの前記解析データに対応して集計し、指定された範囲における統計データの集計値との比率を計算する手段を有することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る放送電波伝搬解析システムの実施の形態を示す図、図2は地図データファイルのデータ構成例を示す図、図3は地図管理データの構成例を示す図、図4は放送局諸元ファイルのデータ構成例を示す図、図5はカラーセット設定ファイルのデータ構成例を示す図、図6は電界強度計算結果ファイルのデータ構成例を示す図、図7は最大電界強度計算結果ファイルのデータ構成例を示す図、図8は干渉計算結果ファイルのデータ構成例を示す図である。
【0009】
図1において、1は出力装置、2は入力装置、3は記憶装置、4は演算処理装置、11は地図データファイル、12は設定データファイル、13は解析データファイル、14は入出力制御部、15は電界強度計算部、16は最大電界強度計算部、17は電波干渉計算部、18は計算結果出力制御部を示す。
出力装置1は、放送電波伝搬解析を実行するに際して、初期メニュー画面からシステム設定、解析条件の設定、データの入力、解析結果の出力などのための各種画面を切り換え指示に応じ切り換えて表示出力し、あるいは印刷出力するディスプレイ、プリンタ、XYプロッタなどの各種出力手段からなるものである。入力装置2は、出力装置のメニュー画面に応じて指示、設定情報や選択情報、データの入力などを行うキーボード、タッチパネル、マウスなどの各種入力手段からなるものである。記憶装置3は、各地域をメッシュ分割した地図データ、統計データなどからなる地図データファイル11、解析条件などの設定データからなる設定データファイル12など放送電波伝搬解析に必要な各種データファイル、解析計算結果のデータからなる解析データファイル13を格納するものである。
【0010】
演算処理装置4は、出力装置1、入力装置2、記憶装置3との間の入出力制御を行う入出力制御部14、放送電波伝搬解析として各メッシュにおける電界強度を計算する電界強度計算部15、最大電界強度を計算する最大電界強度計算部16、電波干渉の有無を計算する電波干渉計算部17、解析計算した結果の出力を制御する計算結果出力制御部18などを有する。
【0011】
記憶装置3に格納した地図データファイル11は、例えば図2に示すように地図管理データにより地域、さらに各地域をメッシュ分割した各メッシュにおける地図データと統計データを管理する。地図管理データは、例えば図3に示すように地域A1、その中のメッシュ分割した各メッシュa101、a102、……に対応する緯度・経度の座標、その地図データ、統計データの情報を有する。地図データは、例えば行政界などの背景地図や等高線図、標高メッシュのデータからなり、統計データは、例えば地図データの地域、メッシュに対応した人口、世帯数などのデータからなる。
【0012】
設定データファイル12は、放送電波伝搬解析に必要な各種設定データからなり、例えば電波干渉の有無を判定するための混信妨害比、サービスエリア閾値、計算条件、計算範囲、カラーセット、電界曲線表示、放送局諸元、送信アンテナ指向特性、電界強度図表などの各データのファイルである。例えば放送局諸元ファイルでは、図4に示すように各放送局名毎に、その送信点位置(緯度・経度)、周波数(MHz)、最大実効輻射電力(kW)、送信電力(kW)、送信アンテナ高(m)、海抜高(m)、送信アンテナ指向特性(参照ファイル)、偏波面(水平/垂直)、放送方式(アナログ/デジタル)などの情報を有する。また、カラーセット設定ファイルでは、図5に示すように解析結果の電界強度(dB)の各ランクに割り当てられる出力色、電波干渉の有無に割り当てられる出力色、世帯分布(統計情報)の各ランクに割り当てられる出力色などの情報、さらには線幅の情報を有する。
【0013】
解析データファイル13は、電界強度計算により得られる電界強度計算結果、最大電界強度計算により得られる最大電界強度計算結果、電波干渉計算により得られる干渉計算結果などの各データのファイルである。例えば電界強度計算結果ファイルは、図6に示すように地域A1、その中のメッシュ分割した各メッシュa101、a102、……における各放送局H1、H2、……の電界強度、さらにはその付加情報として解析条件、放送局諸元などの情報を有する。また、最大電界強度計算結果ファイルは、図7に示すように地域A1、その中のメッシュ分割した各メッシュa101、a102、……における放送局名の組み合わせ(H1、H3、……)、(H2、H3、……)、……の最大電界強度、さらにはその付加情報として解析条件などの情報を有する。干渉結果ファイルは、図8に示すように選択された希望放送局H1、……の各メッシュa101、a102、……における妨害放送局(H5、H8、……)、(H2、H4、……)、……の干渉の有無、さらにはその付加情報として解析条件などの情報を有する。
【0014】
次に、本発明に係る放送電波伝搬解析システムにより実行される処理の内容について詳述する。図9は放送電波伝搬解析システムの全体の解析処理の流れ及び各処理におけるファイルの入出力を説明するための図、図10は電界強度計算の概念を説明するための図である。
【0015】
本発明に係る放送電波伝搬解析システムの全体の解析処理の流れは、図9に示すようにまず、システム起動時に、システム設定として、設定データファイル12の混信妨害比データファイル、サービスエリア閾値ファイル、計算条件設定ファイル、計算範囲設定ファイル、カラーセット設定ファイル、電界曲線表示設定ファイル、さらに選択地域毎に放送局諸元で指定する送信アンテナ指向特性ファイル、さらには電波法に決められた補正値を記述した電界強度図表ファイルを設定する。
【0016】
混信妨害比設定では、アナログーデジタル、デジタルーアナログ、デジタルーデジタル、アナログーアナログのそれぞれにおいて、同一チャンネルの混信妨害保護比(dB)、上隣接チャンネルの混信妨害保護比、下隣接チャンネルの混信妨害保護比、つまり、同一チャンネル、上下隣接チャンネルの混信妨害保護比の設定を行う。
【0017】
サービスエリア閾値では、干渉計算における希望局がアナログの場合のサービスエリア閾値(dB)、希望局がデジタルの場合のサービスエリア閾値のそれぞれ設定を行う。
【0018】
電界曲線表示設定では、例えば(0.00、Red 、1.5mm)、(−20.00、Orange、1.5mm)、(−20.00、Green 、1.5mm)のように電界曲線、最大電界曲線を表示したいdB値、色、線幅について、電界曲線、最大電界曲線の値と表示色との対応の設定を行う。
【0019】
送信アンテナ指向特性では、水平角度は−180°〜180°まで、垂直角度は−90°〜90°までの範囲、利得(dB)は0以下で、例えば水平(−180°、−30dB)、(−70°、−30dB)、(−60°、0dB)、垂直(−90°、−30dB)、(−30°、−30dB)のように水平、垂直毎に角度、利得の設定を行う。
【0020】
計算条件設定では、システム内で行う各種計算の条件を地域毎に設定するものであり、図10の▲2▼に示すような放送局を中心に何度刻みでプロフィルを引くかの円周分割数を設定、放送局の最大輻射電力より計算半径の算出(計算半径の最大値は例えば200kmとする)、放送局から計算半径までのプロフィル内での標高値を参照する点であるプロフィル分割ピッチ(m)を設定、▲1▼に示すようなプロフィル分割ピッチの整数倍で放送局から計算半径までの放射線状内での計算点である放射線状計算分割ピッチ(m)の設定、計算を行うメッシュサイズ(例えば250m、500m、1000m、100m)の設定を行う。なお、通常使われている1次メッシュ〜3次メッシュの区分は次のように定義されている。1次メッシュは、全国地域を1度毎の経線と3分の2度(40分)毎の緯線によって縦横に分割された区画であり、約80km四方になる。この1次メッシュを縦横にそれぞれ8等分した約10km四方の区画が2次メッシュであり、さらに2次メッシュを縦横にそれぞれ10等分した約1km四方の区画が3次メッシュである。
【0021】
計算範囲設定では、左下の経度(秒)と緯度(秒)、右上の経度(秒)と緯度(秒)により地域毎にシステム内で行う各種計算範囲の設定を行う。計算範囲として設定可能な範囲は、例えば使用する50m標高データの範囲内である。
【0022】
電界強度図表は、送信点の海抜高から受信点海抜高を引いた値(m)と送受信点間の地図上の距離(km)から求める電界強度補正値(dB)が電波法に決められており、送受信点海抜高差/送受信点間距離/補正値のファイルイメージで設定される。この補正値は、送受信点間距離が4km以上10km以内の場合と10km以上の場合で異なるものである。
【0023】
上記システム設定を行うと、次に地域選択により背景地図、等高線図を読み込んで画面に表示し、さらに標高メッシュデータを読み込む。そして、放送局設定により、放送局(送信、中継拠点)の地図上の位置を設定し、先に図4で説明したような各放送局の諸元を設定する。ここで、位置(緯度・経度)は、手入力した値が画面に反映され、あるいは画面上のクリックした位置(緯度・経度)が入力される。海抜高は、送信点位置に入力されている緯度・経度の海抜高を例えば50m標高ファイルより参照することができる。計算上の高さは、送信アンテナ高+海抜高となる。
【0024】
以上の設定に基づき各種計算を実行する。電界強度計算では、計算範囲設定ファイルにしたがった計算範囲で、選択された放送局の電界強度を計算し、電界強度計算結果ファイル、電界強度付加情報ファイル、電界強度曲線ファイルとして保存する。最大電界強度計算では、計算範囲設定ファイルにしたがった計算範囲で、選択された放送局の最大電界強度を計算し、最大電界強度計算結果ファイル、最大電界強度付加情報ファイルとして保存する。干渉計算では、希望放送局を選択して干渉計算をし、干渉結果ファイル、干渉D/Uファイル(妨害局毎)、干渉付加情報ファイルとして保存する。ここで、希望放送局の選択は、リストからの選択や画面上からの選択により、妨害放送局は、希望放送局の周波数から同一、隣接チャンネルを検索し、検索された妨害放送局から対象とする放送局を選択して干渉計算対象とし計算を行う。D/U値については、D/U値=希望局の電界強度−妨害局の電界強度であり、デジタル・アナログ共に同一処理とし、干渉の有無はデジタル・アナログの組み合わせ毎に判定用の閾値で区別する。なお、干渉計算を実行するためには電界強度計算が行われていなければならない。
【0025】
各種計算が終了すると、例えば表示設定として、表示希望放送局を選択することにより、計算結果を電界強度メッシュ図、最大電界強度メッシュ図、干渉メッシュ部、電界曲線ライン図、統計分布図、見通し図などの各種図により表示出力する。この場合、背景として、背景地図や放送局名、等高線を適宜選択し、同時に表示希望の放送局のメッシュ図及び電界曲線を選択する。また、プロフィルとして、地図上のポイントの指定、放送局の指定、緯度・経度による2点指定に基づき見通し図を表示する。この計算のパラメータは、緯度・経度、標高(海抜高+アンテナ高)である。また、付加情報として、表示されているメッシュ図のパラメータ(放送局諸元)を表示する。例えば表示されているメッシュ図が電界強度結果の場合には、電界強度結果付加情報を表示し、最大電界強度結果の場合には、最大電界強度結果付加情報を表示し、混信妨害結果の場合には、干渉結果付加情報を表示する。
【0026】
次に、各種計算処理について説明する。図11及び図12は電界強度計算の処理を説明するための図、図13は電界強度計算結果をメッシュに展開する補間処理を説明するための図、図14及び図15はサブルーチンの処理を説明するための図、図16は送受信点間に山岳回折に関係する山がある場合の例を示す図である。
【0027】
電界強度計算の処理では、図11に示すようにまず、放送局諸元ファイル及び計算条件設定ファイルに基づき円周分割数と放射線上を分割する放射線状計算分割数を読み込み(ステップS11、12)、計算範囲内の地点を抽出して(ステップS13)、各計算地点について放送局からの見通しがあるか否か、送受信点間に山岳回折に関係する山があるか否か、反射波が山で遮られるか否かを判断する(ステップS14〜16)。これらの判断により、放送局からの見通しがあり、かつ山岳回折に関係する山がある場合には処理Aを実行する。また、放送局からの見通しがあり、山岳回折に関係する山がなく、かつ反射波が山で遮られる場合には処理Bを実行する。さらに、放送局からの見通しがあり、山岳回折に関係する山がなく、かつ反射波が山で遮られない場合には処理Cを実行し、放送局からの見通しがない場合には処理Dを実行して、それぞれ放射線方向の電界強度を求め、その電界強度を計算結果ファイルに保存する。
【0028】
次に、放射線方向の計算結果ファイル、計算条件設定ファイル、放送局諸元ファイルに基づき図12に示すようにY方向のメッシュ数、X方向のメッシュ数を読み込み(ステップS17、18)、計算範囲内のメッシュを抽出して(ステップS19)、図13に示すようにプロフィル毎に計算された放射線方向の電界強度に基づき、求めるメッシュの近傍3点の線形補間により各メッシュの電界強度を算定して、電界強度計算結果ファイル、電界強度付加情報ファイルに保存する(ステップS20)。
【0029】
上記処理Aは、図14に示すように送信アンテナ指向特性ファイルを参照して送信点から見た計算点の位置(水平角度、垂直角度)の指向特性D1(送信アンテナの水平指向特性)、D2(送信アンテナの垂直指向特性)を算定し(ステップS21)、電界強度図表ファイルを参照して送信アンテナ高の補正値Eを算定して(ステップS22)、電界強度図表ファイルを参照し減衰値C′を算定する(ステップS23)。ここで、減衰値C′は、クラッター係数(建造物密集度)Γ、仰角φ(rad)を参照し、300MHz以下を0とし、300MHzを越える周波数に対して受信点が市街地にない場合と市街地の場合について算定する。クラッター係数Γは、受信点を中心とする1km平方の平均高さから10mの高さにおける当該1km平方内にある建築構造物の水平断面積の1km平方に対する100分率(%)であり、市街地とは、Γ=1(%)以上の場合をいう。また、仰角φは、受信点から送信アンテナ輻射中心(山岳回折に関係するn個の山がある場合は、n番目の頂上とする)を見る仰角とする。そして、処理Eにより山岳回折損失Sn を算定した後(ステップS24)、次の〔数1〕により電界強度を算定する(ステップS25)。
【0030】
【数1】
20log(222√P/d)+D1+D2+A1 +An+1 +S1 +S2 +……+Sn +C′+E
ここで、n=山岳回折数、P=実効輻射電力(ERP)、d=送受信距離
上記処理Eの山岳回折損失Sn の算定では、図15に示すようにまず、電界強度計算図表ファイルを参照して1番目の山までの伝搬損失A1 を算定する(ステップS26)。ここでは、送信点と1番目の山までの間で反射波が遮られていなければ、伝搬損失A1 =0とし、遮られていれば、h1を送信アンテナ位置の海抜高から電波反射点の海抜高を引いた値、h2を1番目の山の頂上の海抜高から電波反射点の海抜高を引いた値、dを送信点と1番目の山の頂上との距離とするパラメータから電界強度図表ファイルを参照して、周波数が300MHz以下、300MHzを越える場合の伝搬損失A1 を算定する。
【0031】
次に、n番目の山までの伝搬損失An+1 を算定する(ステップS27)。ここでは、n番目の山と受信点との間で反射波が遮られていれば、伝搬損失An+1 =0とし、遮られていなければ、h1をn番目山の山頂から電波反射点の海抜高を引いた値、h2を受信アンテナ位置の海抜高から電波反射点の海抜高を引いた値、dをn番目山の山頂と受信点との間の距離とするパラメータから電界強度図表ファイルを参照し、周波数が300MHz以下、300MHzを越える場合の伝搬損失An+1 を算定する。
【0032】
そして、山岳回折数nを読み込み(ステップS28)、山岳回折損失Sn を算定する(ステップS29)。ここでは、d1を1番目の山までの距離、H1を送信点と2番目の山の山頂とを結ぶ直線と1番目の山の頂上を通る鉛直線との交点の海抜高を1番目の山の海抜高から差し引いた値、diをi−1番目から1番目の山までの距離、Hiをi−1番目からi+i番目の山の山頂とを結ぶ直線とi番目の山の頂上を通る鉛直線との交点の海抜高をi番目の山の海抜高から差し引いた値、Hn+1を受信点の海抜高、Di={(d1+d2+……+di)di+1}/(d1+d2+……+di+1)とするパラメータから電界強度図表ファイルを参照し、周波数が300MHz以下、300MHzを越える場合の山岳回折損失Sn を算定する。送受信点間に山岳回折に関係する山がある場合の伝搬損失、回折損失、海抜高の対応例を示したのが図16である。
【0033】
上記処理Bは、処理Aと同様にステップS21〜23の処理を実行した後、次の〔数2〕により電界強度を算定する。
【0034】
【数2】
20log(222√P/d)+D1+D2+C′+E
ここで、P=実効輻射電力(ERP)、d=送受信距離
上記処理Cは、処理Aと同様にステップS21〜23の処理を実行した後、h1を送信アンテナ位置の海抜高から電波反射点の海抜高を引いた値、h2を計算点の海抜高から電波反射点の海抜高を引いた値、dを送受信距離とするパラメータから電界強度図表ファイルを参照し、周波数が300MHz以下、300MHzを越える場合の伝搬損失A0 を算定し、次の〔数3〕により電界強度を算定する。
【0035】
【数3】
20log(222√P/d)+D1+D2+A0 +C′+E
ここで、P=実効輻射電力(ERP)、d=送受信距離
上記処理Dは、処理Aと同様にステップS21〜23の処理を実行した後、h1を送信アンテナ位置の海抜高、h2を計算点の海抜高、dを送受信距離とするパラメータから電界強度図表ファイルを参照し、周波数が300MHz以下、300MHzを越える場合の伝搬損失A00を算定し、次の〔数4〕により電界強度を算定する。
【0036】
【数4】
20log(222√P/d)+D1+D2+A00+C′+E
ここで、P=実効輻射電力(ERP)、d=送受信距離
図17は最大電界強度計算の処理を説明するための図、図18は干渉計算の処理を説明するための図、図19は同一・隣接放送局一覧の表示画面の例を示す図である。
最大電界強度計算の処理は、図17に示すように対象となる放送局の電界強度計算結果ファイルの読み込みを行って(ステップS31)、計算条件設定ファイルから計算範囲のY方向のメッシュ数、X方向のメッシュ数を読み込む(ステップS32、33)。そして、対象となる放送局の電界強度を比較し、最大値をファイルに書き出し、最大電界強度計算結果ファイル、最大電界強度付加情報ファイルに保存する(ステップS34)。
【0037】
干渉計算の処理は、図18に示すように放送局諸元ファイルを参照して放送局を画面に表示し、混信妨害を受ける放送局(希望局)を画面から選択することにより(ステップS41)、選択された希望局と同一、隣接チャンネル(妨害局)を検索する(ステップS42)。そして、図19に示すように検索した妨害局を画面に表示することにより、妨害局を画面から選択する(ステップS43)。次に、電界強度計算結果ファイルサービスエリア閾値ファイル、混信妨害比データファイルを参照し計算範囲のY方向のメッシュ数、X方向のメッシュ数を読み込み(ステップS44、45)、希望局値≧閾値か否かを判断して(ステップS46)、希望局値≧閾値となるメッシュについてD/U結果<混信妨害比か否かを判断する(ステップS47)。そして、D/U結果<混信妨害比であれば混信あり(ステップS48)、D/U結果<混信妨害比ででなければ混信なし(ステップS49)、として結果をファイルへ書き出し、干渉結果ファイル、干渉D/Uファイル、干渉付加情報ファイルに保存する(ステップS50)。
【0038】
図20は計算結果出力制御回路の構成例を示す図、図21は計算結果出力図の例を示す図である。例えば解析データaとして電界強度計算結果ファイルから電界強度データを、地図データcとして背景地図データファイルから背景地図データを、さらに統計データbとして統計データファイルから世帯分布データをそれぞれ読み出し、背景地図の上に電界強度メッシュ図を出力すると共に、世帯分布も併せて出力する場合、優先処理回路21で解析データaを統計データbより優先させ、それぞれのデータをカラーセット設定ファイルの制御データ22に基づいて制御し、重ね合わせ回路23において背景地図上に重ね合わせる。このような出力を行うと、図21に示すように電界強度メッシュ図のサービスエリアから外れる世帯がどこにどの程度あるか視覚的に見ることができ、どの程度の世帯をカバーできるかを評価することができる。
【0039】
このように各メッシュの統計データから、例えば電界強度が50dBまでのサービスエリアに入るメッシュの世帯数、60dBまでのサービスエリアに入るメッシュの世帯数などを累計し、範囲を指定してその範囲における総世帯数との比率を求めることにより、カバー率を求めることができる。最大電界強度計算結果、干渉計算結果についても同様である。
【0040】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、送信アンテナ指向特性として、水平、垂直毎に角度、利得の設定を行っているが、その内容は、数値により水平、垂直毎の離散的な角度と利得であり、感覚的に特性が把握しにくい。そこで、設定値に基づき3次元の指向特性曲線を描画する手段を用意し、指向特性を3次元曲線で表示したり、任意の水平、垂直の角度の断面による2次元曲線で表示できるようにしてもよい。また、電界強度の計算では、円周分割と放射線状計算分割を行って放射線方向の計算を行い、求めるメッシュの3点近傍の計算値に基づき補間計算を行うようにしたが、範囲を指定して直接各メッシュの計算を行うようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、入力手段により入力された解析条件、放送局諸元に基づき各メッシュにおける電界強度を求める電界強度計算手段と、強度計算手段により計算した電界強度に基づき各メッシュにおける最大電界強度を求める最大電界強度計算手段と、強度計算手段により計算した電界強度に基づき各メッシュにおける干渉の有無を求める干渉計算手段とを備え、電界強度、最大電界強度、干渉の有無を解析データとして格納し、地図データ及び解析データに基づき地図及び解析結果を出力するので、メッシュ地図上で放送局の電波伝搬状況を電界強度図、最大電界強度図、干渉図などによりビジュアルに出力することができる。しかも、放送局の組み合わせを選択して最大電界強度図、干渉図などを出力することにより、テレビ電波送信・中継拠点の立地計画に必要な多様な情報を提供することができる。さらには、人口や世帯数などの統計データと併せて出力することにより、エリア毎のカバー状況なども容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る放送電波伝搬解析システムの実施の形態を示す図である。
【図2】 地図データファイルのデータ構成例を示す図である。
【図3】 地図管理データの構成例を示す図である。
【図4】 放送局諸元ファイルのデータ構成例を示す図である。
【図5】 カラーセット設定ファイルのデータ構成例を示す図である。
【図6】 電界強度計算結果ファイルのデータ構成例を示す図である。
【図7】 最大電界強度計算結果ファイルのデータ構成例を示す図である。
【図8】 干渉計算結果ファイルのデータ構成例を示す図である。
【図9】 放送電波伝搬解析システムの全体の解析処理の流れ及び各処理におけるファイルの入出力を説明するための図である。
【図10】 電界強度計算の概念を説明するための図である。
【図11】 電界強度計算の処理を説明するための図である。
【図12】 電界強度計算の処理を説明するための図である。
【図13】 電界強度計算結果をメッシュに展開する補間処理を説明するための図である。
【図14】 サブルーチンの処理を説明するための図である。
【図15】 サブルーチンの処理を説明するための図である。
【図16】 送受信点間に山岳回折に関係する山がある場合の例を示す図である。
【図17】 最大電界強度計算の処理を説明するための図である。
【図18】 干渉計算の処理を説明するための図である。
【図19】 同一・隣接放送局一覧の表示画面の例を示す図である。
【図20】 計算結果出力制御回路の構成例を示す図である。
【図21】 計算結果出力図の例を示す図である。
【符号の説明】
1…出力装置、2…入力装置、3…記憶装置、4…演算処理装置、11…地図データファイル、12…設定データファイル、13…解析データファイル、14…入出力制御部、15…電界強度計算部、16…最大電界強度計算部、17…電波干渉計算部、18…計算結果出力制御部

Claims (14)

  1. 放送局諸元を入力して、地域毎にメッシュ分割した各メッシュにおける前記放送局からの電界強度を計算し各放送局の放送電波の伝搬状況を解析する放送電波伝搬解析システムであって、
    地域毎にメッシュ分割した地図データを格納する地図データ記憶手段と、
    解析条件、放送局諸元、解析条件や放送局諸元の選択、指示の入力を行う入力手段と、
    前記入力手段により入力された解析条件、放送局諸元に基づき前記各メッシュにおける電界強度を求める電界強度計算手段と、
    前記強度計算手段により計算した電界強度に基づき前記各メッシュにおける最大電界強度を求める最大電界強度計算手段と、
    前記強度計算手段により計算した電界強度に基づき前記各メッシュにおける干渉の有無を求める干渉計算手段と、
    前記電界強度、最大電界強度、干渉の有無を解析データとして格納する解析データ記憶手段と、
    前記地図データ記憶手段に記憶された地図データ及び前記解析データ記憶手段に格納された解析データに基づき地図及び解析結果を出力する出力手段と、
    前記入力手段により入力された放送局、解析条件に基づき前記各計算手段を制御して前記解析データを前記解析データ記憶手段に格納し前記地図データ記憶手段に格納された地図データ及び前記解析データ記憶手段に格納された解析データに基づき前記出力手段の出力を制御する制御手段と
    を備えたことを特徴とする放送電波伝搬解析システム。
  2. 前記電界強度計算手段は、円周分割と放射線状計算分割を行って分割ピッチに基づき放射線方向の電界強度を計算し、各メッシュの近傍3点の前記放射線方向の計算値に基づき補間して該各メッシュの強度計算を行うことを特徴とする請求項1記載の放送電波伝搬解析システム。
  3. 前記放射線方向の電界強度の計算は、放送局からの見通しがあるか、送受信点間に山岳回折に関係する山があるか、反射波が山で遮られるかを考慮して行うことを特徴とする請求項2記載の放送電波伝搬解析システム。
  4. 前記最大電界強度計算手段は、選択された放送局を対象として電界強度を比較して最大値を求めることにより強度計算を行うことを特徴とする請求項1記載の放送電波伝搬解析システム。
  5. 前記干渉計算手段は、混信妨害を受ける放送局を希望局とし該希望局と同一チャンネル及び隣接チャンネルの放送局を妨害局として該妨害局を検索し、該検索された妨害局のうち選択された妨害局について干渉計算を行うことを特徴とする請求項1記載の放送電波伝搬解析システム。
  6. 前記干渉の有無は、前記希望局の電界強度と前記妨害局の電界強度の差が予め設定された混信妨害比より大きいか否かにより判断することを特徴とする請求項5記載の放送電波伝搬解析システム。
  7. 前記地図データとして、背景地図データと等高線図データと標高メッシュデータを有することを特徴とする請求項1記載の放送電波伝搬解析システム。
  8. 前記地図データとして、前記各メッシュ毎に統計データを有し、前記制御手段は、地図上に統計データと解析データを重畳して前記出力手段に出力することを特徴とする請求項1記載の放送電波伝搬解析システム。
  9. 前記統計データは、人口や世帯数であることを特徴とする請求項8記載の放送電波伝搬解析システム。
  10. 前記制御手段は、前記統計データと解析データをそれぞれ区分して異なる出力態様で前記出力手段に出力することを特徴とする請求項8記載の放送電波伝搬解析システム。
  11. 前記制御手段は、解析データの出力優先度を統計データより高くして地図上に重ねて前記出力手段より出力することを特徴とする請求項8記載の放送電波伝搬解析システム。
  12. 前記統計データを前記各メッシュの前記解析データに対応して集計し、指定された範囲における統計データの集計値との比率を計算する手段を有することを特徴とする請求項8記載の放送電波伝搬解析システム。
  13. 前記解析条件として、送信アンテナ指向特性を水平、垂直毎に角度と利得により設定し、該設定された水平、垂直毎に角度と利得による送信アンテナ指向特性を3次元に描画する手段を有することを特徴とする請求項1記載の放送電波伝搬解析システム。
  14. 放送局を中心に刻む円周分割数、放送局から計算半径までの計算点の放射線状計算分割数を設定して分割ピッチに基づき放射線方向の電界強度を計算し、各メッシュの近傍3点の前記放射線方向の計算値に基づき線形補間して該各メッシュの強度計算を行うことを特徴とする請求項12記載の放送電波伝搬解析システム。
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