JP3677434B2 - 密閉型電動圧縮機 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気冷蔵庫等に搭載される密閉型電動圧縮機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、密閉型電動圧縮機（以下、圧縮機と言う。）は、その運転音の静かなものが求められ、圧縮機内部で発生する様々な騒音に対して改良がなされている。
【０００３】
以下図面を参照しながら、従来の圧縮機の一例について説明する。
【０００４】
図５，図６は従来の圧縮機を示すものである。５１は密閉容器、５２は密閉容器５１内に弾性支持された圧縮要素、５３は圧縮要素５２の上部に配設された電動要素である。
【０００５】
５４は電動要素５３により回転駆動されるクランクシャフト、５５はクランクシャフト５４の下先端部に取付けられた給油管、５６は密閉容器５１内に封入された冷凍機油である。
【０００６】
以上のように構成された圧縮機について、以下その動作を説明する。
【０００７】
電動要素５３によって回転駆動されたクランクシャフト５４の下先端部に取付けられた遠心ポンプ部５５ａとこの遠心ポンプ部５５ａと連続した同心回転部５５ｂとからなる給油管５５はその同心回転部５５ｂのみが密閉容器５１内に封入された冷凍機油５６中で回転することで冷凍機油攪拌が少なくなり給油管５５が油面を切る音、又給油管が油面を切ることによって加振されて共振する音は小さくできた。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような構成では、同心回転部５５ｂのみが密閉容器５１内に封入された冷凍機油５６中で回転運転するため、開口部６１から同心回転部５５ｂの回転運転によって生ずる遠心力が小さく、よって揚程が低く給油量が低減すると言う問題を有していた。
【０００９】
本発明は上記課題に鑑み、圧縮要素摺動部の潤滑を確保しかつ、給油管による冷凍機油攪拌を少なくした騒音が小さい圧縮機を提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明では、一端はクランクシャフトの偏心軸部に設けた油孔に、他端は冷凍機油中でかつクランクシャフトの主軸部の回転中心軸線上に開口した給油管を備え、前記給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度を小さくしたものである。
【００１１】
これにより、角度の大きい第一の遠心ポンプ部による冷凍機油の攪拌を回避し、油面切り音、冷凍機油跳ね飛ばし音、給油管の共振音を低減し、かつ、圧縮要素摺動部への潤滑を確保することができる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項１に記載の発明は、一端はクランクシャフトの偏心軸部に設けた油孔に、他端は冷凍機油中でかつクランクシャフトの主軸部の回転中心軸線上に開口した給油管を備え、前記給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度を小さくしたものであり、これにより冷凍機油の攪拌を抑るという作用を有する。
【００１３】
請求項２に記載の発明は、第二の遠心ポンプ部のクランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度を５°以上１５°以下にしたものであり、第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を低減させることなく、冷凍機油の攪拌を抑えるという作用を有する。
【００１４】
請求項３に記載の発明は、主に第二の遠心ポンプ部が密閉容器内に封入された冷凍機油中に位置したものであり、角度の大きい第一の遠心ポンプ部が油面の上方で回転し、クランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度が小さい第二の遠心ポンプ部が油面の下方で回転するので冷凍機油の攪拌を抑え給油管への加振力を低く抑えるという作用を有する。
【００１５】
請求項４に記載の発明は、第一の遠心ポンプ部と第二の遠心ポンプ部の間である給油管の曲げ部で第二の遠心ポンプ部の、回転中心方向にガス抜き孔を設けたものであり、給油管先端の開口部から吸い込んだ気泡や給油管内部での発泡により生じたガスを給油管外に排出する作用を有する。
【００１６】
請求項５に記載の発明は、第二の遠心ポンプ部内側に円筒形のバーをプロジェクションで配設したものであり、給油管の回転と共に円筒形のバーも回転するので冷凍機油かき上げ効果により第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を向上することができるという作用を有する。
【００１７】
【実施例】
以下、本発明の実施の形態について、図１から図５を用いて説明する。なお従来と同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【００１８】
（実施例１）
図１は本発明の圧縮機の縦断面図を示し、図２は図１の要部斜視図、図３は図１の要部縦断面図を示す。
【００１９】
図１、において、１は密閉容器、２は圧縮要素、３は電動要素、４は圧縮要素２を構成するクランクシャフトであり、主軸部４ａと、この主軸部４ａの下方に位置する偏心軸部４ｂとからなる。５はクランクシャフト４の偏心軸部４ｂに設けた油孔４ｄに取り付けられた給油管で、第一の遠心ポンプ部５ａとこの第一の遠心ポンプ部５ａの下にある第二の遠心ポンプ部５ｂとからなる。第一の遠心ポンプ部５ａと第二の遠心ポンプ部５ｂにはそれぞれクランクシャフト４の回転中心軸Ｌ−Ｌ方向に対する傾斜角度８ａ，８ｂが設けてあり角度の大きさは８ａ＞８ｂとなっている。６は密閉容器１内部に封入されて密閉容器１の底に溜まっている冷凍機油である。７は給油管５の第一の遠心ポンプ部５ａ下端から第二の遠心ポンプ部５ｂ始端である給油管の曲げ部で回転中心方向側に設けたガス抜き孔７である。９は給油管５の第二の遠心ポンプ部５ｂ先端に設けられた開口部であり密閉容器１の底部に溜まっている冷凍機油６中に開口している。
【００２０】
以上のような構成において、電動要素３の駆動によってクランクシャフト４が回転してその下先端部に取り付けられた給油管５を回転駆動している。この際、冷凍機油６の油面６ａは第一の遠心ポンプ部５ａ下端から第二の遠心ポンプ部５ｂ始端で給油管５の曲げ部である給油管５の回転放射方向側曲げ部５ｃより下方に位置しているのでクランクシャフト４の軸方向に対する傾斜角度８ａの大きい第一の遠心ポンプ部５ａが油面６ａの上方で回転し、クランクシャフト４の軸方向に対する傾斜角度８ｂの小さい第二の遠心ポンプ部５ｂのみが冷凍機油６中で回転するため油面切りを減少させ、冷凍機油６の跳ね飛ばしを減少させる。
【００２１】
そのため油面切り音、跳ね飛ばされた冷凍機油による音の発生も減少する。また、給油管５の加振も小さいことから給油管５の共振による音の発生も減少する。
【００２２】
また、第二の遠心ポンプ部５ｂのクランクシャフト４の回転中心軸方向に対する傾斜角度８ｂをパラメータに行った給油試験の結果では角度８ｂが４°では油面６ａが下がると給油量が５０Ｈｚ時で１０ｃｃ／ｍｉｎ、６０Ｈｚ時で２０ｃｃ／ｍｉｎであったが角度８ｂを５°以上にすると油面６ａが下がっても給油量が５０Ｈｚ時で２０ｃｃ／ｍｉｎ、６０Ｈｚ時で３０ｃｃ／ｍｉｎであった。これらのことから角度８ｂを５°以上とすることにより油面６ａが下がっても第二の遠心ポンプ部５ｂのポンプ能力を低減させること無く冷凍機油６を第一の遠心ポンプ部５ａに供給することができる。
【００２３】
またクランクシャフト４の回転中心軸方向に対する傾斜角度８ｂをパラメータに行った騒音試験の結果では角度８ｂが１５°以下の時は油面切りによる給油管５の共振音である５〜６．３ｋＨで３ｄＢの低減が見られた。しかし１６°を越えると音の増加傾向が見られた。これらのことから角度８ｂを１５°以下にすることにより第二の遠心ポンプ部５ｂによる冷凍機油６の攪拌を抑え、給油管５の回転による冷凍機油６の油面切り音や跳ね飛ばし音を低減して、それによる音の発生を低減することができる。
【００２４】
また、第一の遠心ポンプ部５ａと第二の遠心ポンプ部５ｂの間である給油管５の曲げ部５ｃで第二の遠心ポンプ部５ｂの、回転中心方向側にガス抜き孔７を設けている。
【００２５】
通常運転中冷凍機油６中には３〜５％の冷媒ガスが溶け込んでおり、給油管５内部を冷媒ガスの溶け込んだ冷凍機油６が通る時に攪拌により冷媒ガスが冷凍機油内から遊離し、給油管内を塞ぐため給油を阻害する傾向にある。この現象は傾斜角度が大きくなる給油管５の曲げ部５ｃで最も多いので、この位置にガス抜き孔を設けることによりガス層を効果的に給油管５外に排出し、冷凍機油６の供給の阻害を回避することができるため信頼性の向上を図れる。
【００２６】
また、他の実施例によれば、図４に示すように給油管５を構成する第二の遠心ポンプ部５ｂ内で回転中心軸Ｌ−Ｌより遠い位置の給油管５内に円筒形のバー１０をプロジェクション溶接等により配設したものである。
【００２７】
以上のような構成において給油管の給油能力について説明すると、給油量は給油管の回転速度の二乗と偏芯量に比例する。また、クランクシャフト回転中心軸線から第二の遠心ポンプ部５ｂ内壁に存在する冷凍機油６の距離が実質偏芯量であるとすると、第二の遠心ポンプ部５ｂ内壁の冷凍機油６が給油管５の回転により第二の遠心ポンプ部５ｂ回転方向から反回転方向内壁に移動すると実質偏芯量が小さくなる。しかし円筒形のバー１０で冷凍機油６が第二の遠心ポンプ部５ｂから反回転方向に移動することをくいとめることにより第二の遠心ポンプ部５ｂ管内回転放射方向内壁に冷凍機油６が存在するため実質偏芯量が増えポンプ能力を向上することができ信頼性向上となる。
【００２８】
なお、円筒形のバー１１を給油管５回転方向と同方向に角度を付けて、斜めにプロジェクションで配設しても、冷凍機油６が第二の遠心ポンプ部５ｂ管内回転放射方向内壁をかけ登りやすくなり、第二の遠心ポンプ部５ｂのポンプ能力をさらに向上させることができ信頼性向上となる。
【００２９】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項１に記載の発明によれば、給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度を小さくしたものであり、これにより冷凍機油の攪拌を抑えつつ第二の遠心ポンプ部の遠心ポンプ作用によって冷凍機油を第一の遠心ポンプ部に供給し第一の遠心ポンプ部の遠心ポンプ作用によって冷凍機油を圧縮要素の各摺動部へと供給するという給油機構によって給油管の回転による冷凍機油の油面切りや跳ね飛ばしを低減して、それによる音の発生を低減することができ、給油管の加振を小さくすることによってその共振音の発生を小さくするという有利な効果が得られる。
【００３０】
又、請求項２に記載の発明によれば、第二の遠心ポンプ部のクランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度を５°以上にすることにより第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を低減させることなく、冷凍機油を第一の遠心ポンプ部に供給し第一の遠心ポンプ部の遠心ポンプ作用によって冷凍機油を圧縮要素の各摺動部へと供給するので信頼性が向上し、また角度を１５°以下にすることにより第二の遠心ポンプ部による冷凍機油の攪拌を抑え、給油管の回転による冷凍機油の油面切り音や跳ね飛ばし音を低減して、それによる音の発生を低減することができるという有利な効果が得られる。
【００３１】
又、請求項３に記載の発明によれば、主に第二の遠心ポンプ部が密閉容器内に封入された冷凍機油中に位置したものであり、角度の大きい第一の遠心ポンプ部が油面の上方で回転し、クランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度が小さい第二の遠心ポンプ部が油面の下方で回転するので冷凍機油の攪拌を抑え給油管の加振力を低く抑えるので給油管によるすりばち状の油面切り、冷凍機油の跳ね飛ばし音を低減することが出来るという有利な効果が得られる。
【００３２】
又、請求項４に記載の発明は、第一の遠心ポンプ部と第二の遠心ポンプ部の間である給油管の曲げ部で第二の遠心ポンプ部の、回転中心方向にガス抜き孔を設けたものであり、給油管先端の開口部から吸い込んだ気泡や給油管内部での発泡により生じたガスを給油管外に排出することにより圧縮要素各摺動部へ冷凍機油の供給を阻害する給油管内部のガス溜りを回避することが出来るため信頼性の向上を図れるという有利な効果が得られる。
【００３３】
又、請求項５に記載の発明によれば、第二の遠心ポンプ部内側に円筒形のバーをプロジェクションで配設したものであり、給油管の回転と共に円筒形のバーも回転するので冷凍機油かき上げ効果により第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を向上することができ信頼性向上が図れるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態による圧縮機を示す縦断面図
【図２】上記圧縮機の要部斜視図
【図３】同上圧縮機の要部縦断面図
【図４】本発明の他の実施の形態による給油管の縦断面図
【図５】従来の圧縮機を示す縦断面図
【図６】上記圧縮機の要部斜視図
【符号の説明】
１ 密閉容器
２ 圧縮要素
３ 電動要素
４ クランクシャフト
４ａ 主軸部
４ｂ 偏心軸部
４ｃ 油溝
４ｄ 油孔
５ 給油管
５ａ 第一の遠心ポンプ部
５ｂ 第二の遠心ポンプ部
５ｃ 曲げ部
６ 冷凍機油
６ａ 油面
７ ガス抜き孔
８ａ，８ｂ 角度
９ 開口部
１０ 円筒形のバー
【発明の属する技術分野】
本発明は電気冷蔵庫等に搭載される密閉型電動圧縮機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、密閉型電動圧縮機（以下、圧縮機と言う。）は、その運転音の静かなものが求められ、圧縮機内部で発生する様々な騒音に対して改良がなされている。
【０００３】
以下図面を参照しながら、従来の圧縮機の一例について説明する。
【０００４】
図５，図６は従来の圧縮機を示すものである。５１は密閉容器、５２は密閉容器５１内に弾性支持された圧縮要素、５３は圧縮要素５２の上部に配設された電動要素である。
【０００５】
５４は電動要素５３により回転駆動されるクランクシャフト、５５はクランクシャフト５４の下先端部に取付けられた給油管、５６は密閉容器５１内に封入された冷凍機油である。
【０００６】
以上のように構成された圧縮機について、以下その動作を説明する。
【０００７】
電動要素５３によって回転駆動されたクランクシャフト５４の下先端部に取付けられた遠心ポンプ部５５ａとこの遠心ポンプ部５５ａと連続した同心回転部５５ｂとからなる給油管５５はその同心回転部５５ｂのみが密閉容器５１内に封入された冷凍機油５６中で回転することで冷凍機油攪拌が少なくなり給油管５５が油面を切る音、又給油管が油面を切ることによって加振されて共振する音は小さくできた。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような構成では、同心回転部５５ｂのみが密閉容器５１内に封入された冷凍機油５６中で回転運転するため、開口部６１から同心回転部５５ｂの回転運転によって生ずる遠心力が小さく、よって揚程が低く給油量が低減すると言う問題を有していた。
【０００９】
本発明は上記課題に鑑み、圧縮要素摺動部の潤滑を確保しかつ、給油管による冷凍機油攪拌を少なくした騒音が小さい圧縮機を提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明では、一端はクランクシャフトの偏心軸部に設けた油孔に、他端は冷凍機油中でかつクランクシャフトの主軸部の回転中心軸線上に開口した給油管を備え、前記給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度を小さくしたものである。
【００１１】
これにより、角度の大きい第一の遠心ポンプ部による冷凍機油の攪拌を回避し、油面切り音、冷凍機油跳ね飛ばし音、給油管の共振音を低減し、かつ、圧縮要素摺動部への潤滑を確保することができる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項１に記載の発明は、一端はクランクシャフトの偏心軸部に設けた油孔に、他端は冷凍機油中でかつクランクシャフトの主軸部の回転中心軸線上に開口した給油管を備え、前記給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度を小さくしたものであり、これにより冷凍機油の攪拌を抑るという作用を有する。
【００１３】
請求項２に記載の発明は、第二の遠心ポンプ部のクランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度を５°以上１５°以下にしたものであり、第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を低減させることなく、冷凍機油の攪拌を抑えるという作用を有する。
【００１４】
請求項３に記載の発明は、主に第二の遠心ポンプ部が密閉容器内に封入された冷凍機油中に位置したものであり、角度の大きい第一の遠心ポンプ部が油面の上方で回転し、クランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度が小さい第二の遠心ポンプ部が油面の下方で回転するので冷凍機油の攪拌を抑え給油管への加振力を低く抑えるという作用を有する。
【００１５】
請求項４に記載の発明は、第一の遠心ポンプ部と第二の遠心ポンプ部の間である給油管の曲げ部で第二の遠心ポンプ部の、回転中心方向にガス抜き孔を設けたものであり、給油管先端の開口部から吸い込んだ気泡や給油管内部での発泡により生じたガスを給油管外に排出する作用を有する。
【００１６】
請求項５に記載の発明は、第二の遠心ポンプ部内側に円筒形のバーをプロジェクションで配設したものであり、給油管の回転と共に円筒形のバーも回転するので冷凍機油かき上げ効果により第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を向上することができるという作用を有する。
【００１７】
【実施例】
以下、本発明の実施の形態について、図１から図５を用いて説明する。なお従来と同一部分は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【００１８】
（実施例１）
図１は本発明の圧縮機の縦断面図を示し、図２は図１の要部斜視図、図３は図１の要部縦断面図を示す。
【００１９】
図１、において、１は密閉容器、２は圧縮要素、３は電動要素、４は圧縮要素２を構成するクランクシャフトであり、主軸部４ａと、この主軸部４ａの下方に位置する偏心軸部４ｂとからなる。５はクランクシャフト４の偏心軸部４ｂに設けた油孔４ｄに取り付けられた給油管で、第一の遠心ポンプ部５ａとこの第一の遠心ポンプ部５ａの下にある第二の遠心ポンプ部５ｂとからなる。第一の遠心ポンプ部５ａと第二の遠心ポンプ部５ｂにはそれぞれクランクシャフト４の回転中心軸Ｌ−Ｌ方向に対する傾斜角度８ａ，８ｂが設けてあり角度の大きさは８ａ＞８ｂとなっている。６は密閉容器１内部に封入されて密閉容器１の底に溜まっている冷凍機油である。７は給油管５の第一の遠心ポンプ部５ａ下端から第二の遠心ポンプ部５ｂ始端である給油管の曲げ部で回転中心方向側に設けたガス抜き孔７である。９は給油管５の第二の遠心ポンプ部５ｂ先端に設けられた開口部であり密閉容器１の底部に溜まっている冷凍機油６中に開口している。
【００２０】
以上のような構成において、電動要素３の駆動によってクランクシャフト４が回転してその下先端部に取り付けられた給油管５を回転駆動している。この際、冷凍機油６の油面６ａは第一の遠心ポンプ部５ａ下端から第二の遠心ポンプ部５ｂ始端で給油管５の曲げ部である給油管５の回転放射方向側曲げ部５ｃより下方に位置しているのでクランクシャフト４の軸方向に対する傾斜角度８ａの大きい第一の遠心ポンプ部５ａが油面６ａの上方で回転し、クランクシャフト４の軸方向に対する傾斜角度８ｂの小さい第二の遠心ポンプ部５ｂのみが冷凍機油６中で回転するため油面切りを減少させ、冷凍機油６の跳ね飛ばしを減少させる。
【００２１】
そのため油面切り音、跳ね飛ばされた冷凍機油による音の発生も減少する。また、給油管５の加振も小さいことから給油管５の共振による音の発生も減少する。
【００２２】
また、第二の遠心ポンプ部５ｂのクランクシャフト４の回転中心軸方向に対する傾斜角度８ｂをパラメータに行った給油試験の結果では角度８ｂが４°では油面６ａが下がると給油量が５０Ｈｚ時で１０ｃｃ／ｍｉｎ、６０Ｈｚ時で２０ｃｃ／ｍｉｎであったが角度８ｂを５°以上にすると油面６ａが下がっても給油量が５０Ｈｚ時で２０ｃｃ／ｍｉｎ、６０Ｈｚ時で３０ｃｃ／ｍｉｎであった。これらのことから角度８ｂを５°以上とすることにより油面６ａが下がっても第二の遠心ポンプ部５ｂのポンプ能力を低減させること無く冷凍機油６を第一の遠心ポンプ部５ａに供給することができる。
【００２３】
またクランクシャフト４の回転中心軸方向に対する傾斜角度８ｂをパラメータに行った騒音試験の結果では角度８ｂが１５°以下の時は油面切りによる給油管５の共振音である５〜６．３ｋＨで３ｄＢの低減が見られた。しかし１６°を越えると音の増加傾向が見られた。これらのことから角度８ｂを１５°以下にすることにより第二の遠心ポンプ部５ｂによる冷凍機油６の攪拌を抑え、給油管５の回転による冷凍機油６の油面切り音や跳ね飛ばし音を低減して、それによる音の発生を低減することができる。
【００２４】
また、第一の遠心ポンプ部５ａと第二の遠心ポンプ部５ｂの間である給油管５の曲げ部５ｃで第二の遠心ポンプ部５ｂの、回転中心方向側にガス抜き孔７を設けている。
【００２５】
通常運転中冷凍機油６中には３〜５％の冷媒ガスが溶け込んでおり、給油管５内部を冷媒ガスの溶け込んだ冷凍機油６が通る時に攪拌により冷媒ガスが冷凍機油内から遊離し、給油管内を塞ぐため給油を阻害する傾向にある。この現象は傾斜角度が大きくなる給油管５の曲げ部５ｃで最も多いので、この位置にガス抜き孔を設けることによりガス層を効果的に給油管５外に排出し、冷凍機油６の供給の阻害を回避することができるため信頼性の向上を図れる。
【００２６】
また、他の実施例によれば、図４に示すように給油管５を構成する第二の遠心ポンプ部５ｂ内で回転中心軸Ｌ−Ｌより遠い位置の給油管５内に円筒形のバー１０をプロジェクション溶接等により配設したものである。
【００２７】
以上のような構成において給油管の給油能力について説明すると、給油量は給油管の回転速度の二乗と偏芯量に比例する。また、クランクシャフト回転中心軸線から第二の遠心ポンプ部５ｂ内壁に存在する冷凍機油６の距離が実質偏芯量であるとすると、第二の遠心ポンプ部５ｂ内壁の冷凍機油６が給油管５の回転により第二の遠心ポンプ部５ｂ回転方向から反回転方向内壁に移動すると実質偏芯量が小さくなる。しかし円筒形のバー１０で冷凍機油６が第二の遠心ポンプ部５ｂから反回転方向に移動することをくいとめることにより第二の遠心ポンプ部５ｂ管内回転放射方向内壁に冷凍機油６が存在するため実質偏芯量が増えポンプ能力を向上することができ信頼性向上となる。
【００２８】
なお、円筒形のバー１１を給油管５回転方向と同方向に角度を付けて、斜めにプロジェクションで配設しても、冷凍機油６が第二の遠心ポンプ部５ｂ管内回転放射方向内壁をかけ登りやすくなり、第二の遠心ポンプ部５ｂのポンプ能力をさらに向上させることができ信頼性向上となる。
【００２９】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項１に記載の発明によれば、給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度を小さくしたものであり、これにより冷凍機油の攪拌を抑えつつ第二の遠心ポンプ部の遠心ポンプ作用によって冷凍機油を第一の遠心ポンプ部に供給し第一の遠心ポンプ部の遠心ポンプ作用によって冷凍機油を圧縮要素の各摺動部へと供給するという給油機構によって給油管の回転による冷凍機油の油面切りや跳ね飛ばしを低減して、それによる音の発生を低減することができ、給油管の加振を小さくすることによってその共振音の発生を小さくするという有利な効果が得られる。
【００３０】
又、請求項２に記載の発明によれば、第二の遠心ポンプ部のクランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度を５°以上にすることにより第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を低減させることなく、冷凍機油を第一の遠心ポンプ部に供給し第一の遠心ポンプ部の遠心ポンプ作用によって冷凍機油を圧縮要素の各摺動部へと供給するので信頼性が向上し、また角度を１５°以下にすることにより第二の遠心ポンプ部による冷凍機油の攪拌を抑え、給油管の回転による冷凍機油の油面切り音や跳ね飛ばし音を低減して、それによる音の発生を低減することができるという有利な効果が得られる。
【００３１】
又、請求項３に記載の発明によれば、主に第二の遠心ポンプ部が密閉容器内に封入された冷凍機油中に位置したものであり、角度の大きい第一の遠心ポンプ部が油面の上方で回転し、クランクシャフトの回転中心軸線に対する傾斜角度が小さい第二の遠心ポンプ部が油面の下方で回転するので冷凍機油の攪拌を抑え給油管の加振力を低く抑えるので給油管によるすりばち状の油面切り、冷凍機油の跳ね飛ばし音を低減することが出来るという有利な効果が得られる。
【００３２】
又、請求項４に記載の発明は、第一の遠心ポンプ部と第二の遠心ポンプ部の間である給油管の曲げ部で第二の遠心ポンプ部の、回転中心方向にガス抜き孔を設けたものであり、給油管先端の開口部から吸い込んだ気泡や給油管内部での発泡により生じたガスを給油管外に排出することにより圧縮要素各摺動部へ冷凍機油の供給を阻害する給油管内部のガス溜りを回避することが出来るため信頼性の向上を図れるという有利な効果が得られる。
【００３３】
又、請求項５に記載の発明によれば、第二の遠心ポンプ部内側に円筒形のバーをプロジェクションで配設したものであり、給油管の回転と共に円筒形のバーも回転するので冷凍機油かき上げ効果により第二の遠心ポンプ部のポンプ能力を向上することができ信頼性向上が図れるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施の形態による圧縮機を示す縦断面図
【図２】上記圧縮機の要部斜視図
【図３】同上圧縮機の要部縦断面図
【図４】本発明の他の実施の形態による給油管の縦断面図
【図５】従来の圧縮機を示す縦断面図
【図６】上記圧縮機の要部斜視図
【符号の説明】
１ 密閉容器
２ 圧縮要素
３ 電動要素
４ クランクシャフト
４ａ 主軸部
４ｂ 偏心軸部
４ｃ 油溝
４ｄ 油孔
５ 給油管
５ａ 第一の遠心ポンプ部
５ｂ 第二の遠心ポンプ部
５ｃ 曲げ部
６ 冷凍機油
６ａ 油面
７ ガス抜き孔
８ａ，８ｂ 角度
９ 開口部
１０ 円筒形のバー
Claims (1)
- 密閉容器内に冷凍機油を貯留するとともに圧縮要素と電動要素を配設し、前記圧縮要素には前記電動要素により回転駆動される主軸部と偏心軸部からなるクランクシャフトと、一端が前記偏心軸部に設けた油孔に、他端が前記冷凍機油中でかつ前記クランクシャフトの前記主軸部の回転中心軸線上に開口した給油管とを備えるとともに、前記給油管はそれぞれクランクシャフトの回転中心軸方向に対し傾斜を設けた第一の遠心ポンプ部と、この第一の遠心ポンプ部の下に設けた第二の遠心ポンプ部を備え、前記第二の遠心ポンプ部は前記第一の遠心ポンプ部より、前記クランクシャフトの回転中心軸線に対する前記傾斜の角度が小さいことを特徴とする密閉型電動圧縮機。
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