JP3676040B2 - 歯科用の重合性組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は光重合、化学重合のいずれの方法でも重合し、重合前後の色調変化が小さく、硬化物の色調安定性に優れた新規な歯科用重合性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、重合性樹脂材料は随意に所望の形態の材料を作成し得る操作性、天然の組織とそっくりに修復し得る審美性、その強度の高さ等から、広く歯科治療全般に使用されるに至っている。
特に、1959年のUSP3,066,112号にて多官能アクリル系重合性樹脂へのウ蝕治療への応用が提案されて以来、常温の化学重合型の材料が多数実用化されてきた。その後、化学重合型の材料の進歩と平行して、特開昭47−247号等によりベンゾインメチルエーテル等を使用する紫外線重合型の材料、さらに、特開昭48−49875号のカンファーキノンを使用する光線重合型の材料の提案等、種々の重合方式を採用した製品が多数開発されてきた。
その後、歯科用充填剤としてはカンファーキノンを配合した光重合型材料が標準的に使用されており、金属製クラウンやインレー、アンレーの合着等の、光を照射しても有効量の光が到達しない用途には化学重合型材料が使用されている。
さらに、特開昭60−32810号にてカンファーキノンと過酸化物とアミンからなる表面に未重合層厚みが少ない歯科用組成物が提案され、更に、特開昭60−89407号にて同様の触媒組成を持つ歯科用組成物が、非常に深い硬化深度を達成し得るものとして提案されている。これらの組成物は化学重合性と光重合性の両方の機能を持つものである。このような組成物は、修復物等の表面に対しては光重合の機能により、容易に高い重合率にまで重合を進めることが出来、重合に必要な光が十分到達い得ない深い部位も、問題なく化学重合させ得る点が評価され、それ以降、歯科用接着剤や合着材に広く使用されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現在の光重合性組成物に広く用いられている重合開始剤は、α−ジケトン系化合物と各種アミン類とよりなるものであり、特に、重合開始剤として強力で広く用いられているのは、カンファーキノンである。しかしカンファーキノンはそれ自身が鮮黄色の色調を持ち、これを配合した重合性組成物は歯科用としては不適当な黄色の色調を有する。さらに、カンファーキノン配合の重合性組成物は光の照射によりその鮮黄色が退色し、重合前後でその色調を大きく変動させる。近年、歯科治療における患者の審美的要求は大きく高まっており、このような色調あるいは色調変化は好ましいことではない。
また、化学重合性組成物に広く用いられているベンゾイルパーオキサイドと各種第3級アミン類等の還元剤の組み合わせは、硬化物の熱水に対する色調安定性に問題がある。
【0004】
上記の問題を一部解決するものとして、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイドを用いる方法(特公平6−55654号)が提案されている。これによるとアシルホスフィンオキサイドを光重合開始剤とした重合硬化物は、色調安定性に極めて優れているものの、これを用いた光重合性組成物はカンファーキノンを使用した組成物に比較して、硬化深度が浅い点が問題点であった。
【0005】
本発明者らは、かかる欠点の克服を図るため鋭意検討した結果、光重合、化学重合のいずれの方式においても優れた硬化性能を示し、硬化物の色調安定性に優れた歯科用重合性組成物を見いだした。すなわち、光開始剤としてアシルホスフィンオキサイドを用い、有機過酸化物と、還元剤として芳香族スルフィン酸を用いる重合性組成物が、その硬化性能を損なうことなく、重合硬化物の色調がアシルホスフィンオキサイドを用いない組成物の硬化物より格段に安定しており、且つ硬化深度が深いという驚くべき事実を発見した。これは、アシルホスフィンオキサイドは量子収率が高いため照射表面に極めて多くのラジカルが発生し、その重合熱および表面の高濃度ラジカルによる有機過酸化物の誘発分解が働いた結果であると推測される。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、重合可能なオレフィン性不飽和基を有する単量体(a)、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド(b)、開始剤として有機過酸化物(c)及び還元剤として芳香族スルフィン酸もしくはその塩(d)を構成成分とし、有機過酸化物(c)と芳香族スルフィン酸もしくはその塩(d)が別包装に含有されてなる歯科用の重合性組成物である。
【0007】
本発明で使用する事の出来る重合可能な単量体は、ラジカル重合可能なものであれば、公知のオレフィン性不飽和基を有する単量体の何れもが使用できるが、重合操作の簡便さと生体に対する安全性よりメタ(アクリレート)系単量体が好ましい。
【0008】
本発明で用いる(メタ)アクリレート系単量体は、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステルの場合アルキル基の炭素数1〜12、芳香属基を含むエステルでは炭素数6〜12、これらの基にポリエチレングリコール鎖等の置換基を含むものはそれらの炭素数も含める)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数2〜20)、エチレングリコールオリゴマージ(メタ)アクリレート(2 〜10量体)、ビスフェノールAから誘導されるジ(メタ)アクリレート、3官能以上の多価(メタ)アクリレート等であり、さらに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート2モルとジイソシアネート1モルとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリル酸エステル類、具体的には特公昭55−33687号や特開昭56−152408号に開示される多官能型のウレタンモノマー等が好適である。
【0009】
これらの具体例としては、単官能の(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等がある。
【0010】
多官能の(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリシジルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAグリシジルジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキ−3,14−ジオキソ−5,12−ジアヘキサデカン−1,16−ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとメチルシクロヘキサンジイソシアネートとの反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとメチルシクロヘキサンジイソシアネートとの反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)との反応生成物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物等が挙げられる。また、本発明の組成物を歯科用接着剤や合着材として使用する場合には、その組成中に接着促進効果を有する強極性モノマー、特に酸性モノマーの配合が好ましく、そのような酸性モノマーとして、以下のものを例示する。
【0011】
-P(O)(OH) 2 構造を持つものとして
【0012】
【化1】
Figure 0003676040
【0013】
>P(O)(OH)構造を持つものとして
【0014】
【化2】
Figure 0003676040
【0015】
-P(O)(Z) 2 構造を持つものとして
【0016】
【化3】
Figure 0003676040
【0017】
>P(O)-Z 構造を持つものとして
【0018】
【化4】
Figure 0003676040
-P(O)(OH)-O-P(O)(OH)-構造を持つものとして
【0019】
【化5】
Figure 0003676040
【0020】
-COOH 構造を持つものとして
【0021】
【化6】
Figure 0003676040
【0022】
-CO-Z 構造を持つものとして
【0023】
【化7】
Figure 0003676040
【0024】
-COOCO- 構造を持つものとして
【0025】
【化8】
Figure 0003676040
【0026】
本発明で用いられる光重合開始剤はアシルホスフィンオキサイドであり、これらを具体的に例示すると、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸フェニルエステル等が挙げられる。
【0027】
また、本発明で使用する有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などが有効である。具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0028】
パーオキシエステル類としてはt−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド類としてはジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトンパーオキサイド類としてはメチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類としてはt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0029】
還元剤のスルフィン酸またはその塩としては、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
【0030】
これらの重合開始剤および還元剤の添加量は重合性単量体に対し、通常0.05〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で使用される。
【0031】
また本発明の光重合性組成物を齲蝕窩洞の充填修復用複合材料もしくは歯科用接着材、歯科用合着材として用いるときは、重合性単量体10−80重量%およびフィラー90−20重量%を基本組成とし、これに対して光重合開始剤や還元剤を加える。フィラーとしては、無機物、有機物あるいはこれらの複合体が用いられる。無機系フィラーの例としてはソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、結晶石英、溶融シリカ、合成シリカ、アルミナシリケート、無定形シリカ、ガラスセラミックまたはこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
無機系フィラーの粒径は特に制限はないが通常150μm以下、好ましくは100μm以下のものが適当である。また粒径の異なる数種のフィラーを混合して用いてもよい。上記無機系フィラーは公知の表面処理をしておくのが好ましい。表面処理剤の例としてはシラン化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が用いられる。
【0033】
有機系フィラーとしては、前記重合性単量体の重合体粉末を用いてもよい。また前記重合性単量体に前記無機フィラーを分散させて重合させたものの粉末(複合フィラー)も使用することができる。
【0034】
さらに本発明における歯科用光重合性組成物には、所望により重合禁止剤、紫外線吸収剤、顔料および溶剤を添加することができる。この溶剤を具体的に例示すると、水、エタノール、i−プロパノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、通常、組成物の安定性の問題から、過酸化物とスルフィン酸またはその塩とが同一包装中に配合されないように、2つ以上の包装に分割して提供される。
本発明の光重合組成物は、充填剤を添加あるいは添加せずに歯科用修復充填材料、歯面処理剤、接着剤、レジンセメント、シーラント等として用いられる他、一般工業用としてコーティング剤、接着剤、充填剤等として用いることもできる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1、2及び比較例1
本発明の重合性組成物の光重合性能評価として硬化深度を測定するために、重合性単量体としてビスフェノールAジグリシジルジメタクリレート(以後、Bis−GMAと省略する)/トリエチレングリコールジメタクリレート(以後、TEGDMAと省略する)の混合物、重合開始剤、還元剤、石英粉からなる2組の組成物A,Bを作成した(実施例1、2)。また、実施例1のホスフィンオキサイドの代わりにカンファーキノンを用いた組成物を調製し比較例1とした。それらの重量組成を表1に示す。
各組成物A,Bを等量秤取し練和したものを直径4mm、高さ12mmの金型に充填し、カバーガラスで被覆した上から歯科用光線照射器ライテルII(モリタ製作所製)で20秒間照射した。照射直後に金型から硬化物を取り出し、未重合部分をワイパーで拭き取り、硬化物の高さをノギスで計測した。結果を表1に示すが、これより本発明の組成物は硬化深度に優れ、光重合能の高いことは明らかである。
【0037】
【表1】
Figure 0003676040
【0038】
実施例3、4及び比較例2
本発明の組成物の化学重合能として硬化物のブリネル硬度を評価するために、重合性単量体、光重合開始剤、化学重合開始剤、還元剤および石英粉末からなる混合物を作成し、組成物A,Bとした(実施例3、4)。また、実施例3のホスフィンオキサイドの代わりにカンファーキノンを用いた組成物を調製し、比較例2とした。それらの重量組成を表2に示す。各組成物A,Bを等量秤取し、練和したものを直径10mm、厚さ5mmの金型に充填、ガラス板で圧接し、37℃の暗所に30分間放置して化学重合硬化体を作成した。このガラス圧接面についてミクロブリネル硬さ試験器(森試験機製作所製)を用いて表面のブリネル硬度を計測した。結果をブリネル硬度HBとして表2に示すが、これより本発明の組成物の化学硬化性能に何ら問題のないことは明らかである。
【0039】
【表2】
Figure 0003676040
【0040】
実施例5、6及び比較例3
本発明の組成物の光重合前後の色調変化を評価するために、重合性単量体、光重合開始剤、化学重合開始剤および還元剤からなる混合物を作成し、組成物A,Bとした(実施例)。また、実施例5のホスフィンオキサイドの代わりにカンファーキノンを用いた組成物を調製し、比較例3とした。それらの重量組成を表3に示す。各組成物を等量秤取し、練和したものをポリエチレンフィルムではさんだ直径20mm、厚さ1mmの金型に流し込み、色差計Σ90(日本電色製)を用いてL*a*b*表色系で測色した。次に歯科用重合器α−ライトII(モリタ東京製作所製)で5分間光照射した後、同様に測色した。この照射前後の色調変化をΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2 で表し、表3に示した。これより、本発明の組成物は光重合前後の色調変化が極めて小さく、優れていることは明らかである。
【0041】
【表3】
Figure 0003676040
【0042】
実施例7、8及び比較例4
本発明の硬化物の耐光性を評価するために、重合性単量体、光重合開始剤、化学重合開始剤および還元剤よりなる混合物を作成し、組成物A,Bとした(実施例7、8)。また、実施例7のホスフィンオキサイドの代わりにカンファーキノンを用いた組成物を調製し、比較例4とした。それらの重量組成を表4に示す。各組成物を等量秤取し、練和したものを直径20mm、厚さ1mmの金型に流し込み、歯科用重合器α−ライトII(モリタ東京製作所製)で5分間光照射し重合硬化物を作成した。該硬化物の半分をアルミホイルで被覆し、37℃水中にて150000Lxの光を24時間照射した。非照射面および照射面について、L*a*b*表色系による色差を色差計Σ90(日本電色製)を用いて計測した。ここでΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2であり、非照射面と照射面の色差を表す。これより本発明の組成物は光照射後の変色が少なく、耐光性に優れることが明らかである。
【0043】
【表4】
Figure 0003676040
【0044】
実施例9、10及び比較例5
本発明の組成物の硬化物の熱水による着色に対する安定性を評価するために、重合性単量体、光重合開始剤、化学重合開始剤および還元剤からなる混合物を作成し、これを組成物A,Bとした(実施例9、10)。また、実施例9のホスフィンオキサイドの代わりにカンファーキノンを用いた組成物を調製し、比較例5とした。これらの重量組成を表5に示す。各組成物を等量秤取し、練和したものを直径20mm、厚さ1mmの金型に流し込み、37℃の暗所に30分間放置し重合硬化物を作成した。
【0045】
この硬化物を色差計Σ90(日本電色製)を用いてL*a*b*表色系による色度を測定した後、70℃の精製水に暗所で1週間浸漬した。浸漬後の硬化物を再度同様に測色し、浸漬前後の色調変化をΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2で表し、表5に示した。これより本発明の組成物の硬化体は暗所熱水耐変着色性に優れることが明らかである。
【0046】
【表5】
Figure 0003676040
【0047】
【発明の効果】
本発明の歯科用重合性組成物は、光硬化能・化学硬化能に優れ、重合前後の色調変化が小さく、硬化物の色調安定性が高く、物理的および臨床的特性に優れたものである。

Claims (3)

  1. 重合可能なオレフィン性不飽和基を有する単量体(a)、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド(b)、開始剤として有機過酸化物(c)及び還元剤として芳香族スルフィン酸もしくはその塩(d)を構成成分とし、有機過酸化物(c)と芳香族スルフィン酸もしくはその塩(d)が別包装に含有されてなる歯科用の重合性組成物。
  2. 該光重合開始剤(b)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、該過酸化物(c)がジアシルパーオキサイドである請求項1の歯科用の重合性組成物。
  3. 該光重合開始剤(b)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、該過酸化物(c)がベンゾイルパーオキサイドである請求項1の歯科用の重合性組成物。
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