JP3675906B2 - 多層合成皮革及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材と樹脂層との接着強度が強く、耐寒性に優れ、かつ高周波ウエルダー加工も可能な外観の良い多層合成皮革に関するものである。本発明による多層合成皮革は、特に靴、鞄、壁装材等に好適に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
靴、鞄、ベルト、手帳等の装丁や壁装材などとして、種々の織布にポリ塩化ビニルやウレタン等の樹脂層を設けた多層シート材が広く使用されている。これらのシート材は、表面に凹凸模様(以下、エンボスという)を付すことにより、立体的な意匠を施したり、特に靴や鞄等に用いる場合には合成皮革として本革らしさを醸し出して用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂層にポリ塩化ビニルやウレタン樹脂を用いた場合、比重が大きく(1.2〜1.4g/cm3)、特に鞄などに用いると重くなってしまったり、色移りしやすいなどの不都合があった。
また、ポリ塩化ビニルを用いた場合、含有されている可塑剤がしみ出てきて黄ばんだりする問題があるほか、耐寒性や耐油性に劣るという問題がある。さらに、燃焼したときに、有毒な塩素ガスが生じるので廃棄処分にも不都合で、特に、壁装材として用いた場合には、火災時に有毒ガスが発生する恐れがある。また、多量の可塑剤を用いているために、落書きされたときに汚れを落としにくいというなどの欠点がある。
【0004】
他方、ウレタン樹脂を用いた場合、可塑剤がしみ出たり、塩素ガスが発生することなどはないが、長時間経過すると、加水分解反応が起きて脆化しやすく、耐久性に劣るという問題があった。また、ポリ塩化ビニルとは異なり、高周波ウェルダーによる加工が行えないという欠点がある。
また、ポリ塩化ビニルやウレタン樹脂はポリオレフィン系樹脂に対する接着性が小さく、積層する場合は接着剤を介在させる必要があり、製造工程の増加やコストの増加を余儀なくされるという問題があった。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、基材と樹脂層との接着強度が強く、耐寒性に優れ、かつ高周波ウエルダー加工も可能な外観の良い多層合成皮革を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、少なくとも、基材層と、表面をエンボス加工した樹脂層からなり、該樹脂層がエチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体であることを特徴とする多層合成皮革である。
請求項2記載の発明は、少なくとも、基材層と、表面をエンボス加工した樹脂層からなり、該樹脂層がエチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体100重量部に対し、アルキルスルホン酸系化合物0.1〜5重量部及び/又はカルボン酸エステル0.1〜10重量部を加えてなる樹脂組成物であることを特徴とする多層合成皮革である。
【0007】
請求項3記載の発明は、エチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体を、エチレン系共重合体の融点以上の温度で溶融押出ししながら基材上に積層して樹脂層を形成すると同時に、エンボス付の冷却ロールを用いて該樹脂層にエンボス加工を施すことを特徴とする多層合成皮革の製造方法である。
請求項4記載の発明は、エチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体100重量部に対し、アルキルスルホン酸系化合物0.1〜5重量部及び/又はカルボン酸エステル0.1〜10重量部を加えてなる樹脂組成物を、エチレン系共重合体の融点以上の温度で溶融押出ししながら基材上に積層して樹脂層を形成すると同時に、エンボス付の冷却ロールを用いて該樹脂層にエンボス加工を施すことを特徴とする多層合成皮革の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に用いられる基材としては、靴、鞄等の材料として従来一般に使用されているものが用いられる。そのような基材としては、例えば、紙、綿布、ナイロン織布、ポリエステル織布等の各種織布、ポリエステル不織布、再生セルロース不織布等の各種不織布、スフ入り布、ナイロンタフタ等の他、ポリプロピレンシート、ポリエチレンシート等のポリオレフィン系シートやポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等の各種発泡シートが挙げられる。
また、本発明で用いられるエチレン系共重合体は、エチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びラジカル重合性酸無水物からなる多元共重合体である。
【0009】
ここで用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、様々な化合物があり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましく用いられる。また、酢酸ビニル等のビニルエステル類や、N−メチルアクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド類も用いることが可能である。これらのモノマーは、単独で、あるいは2種類以上を併用しても差し支えない。
【0010】
エチレン系共重合体中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位の割合は、10〜45重量%の範囲であり、好ましくは10〜40重量%の範囲、さらに好ましくは12〜30重量%の範囲である。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位の割合が10重量%未満では、得られる共重合体が硬くなり合成皮革様の手触りが得られず、また、高周波ウエルダー適性も低下するため好ましくない。45重量%を超えると、樹脂が柔らかくなりすぎ、ブロッキング等の問題がでてくるため好ましくない。
エチレン系共重合体に用いられるラジカル重合性酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸、ドデセニル無水コハク酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、炭素数が多くとも18である末端に二重結合を有するアルカジエニル無水コハク酸等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いても差し支えない。なかでも、無水マレイン酸、無水イタコン酸が好ましく用いられる。
【0011】
エチレン系共重合体中のラジカル重合性酸無水物に由来する単位の割合は、0.1〜5重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜4.5重量%の範囲、更に好ましくは1.0〜4.0重量%の範囲である。ここで、ラジカル重合性酸無水物の割合が0.1重量%未満では、添加する顔料分散性が低下したり、高周波ウエルダー適性が不足するなどの問題点が生じ、好ましくない。また、5重量%を超えると、樹脂が硬くなり成形性が低下するばかりか経済的にも高価となり、好ましくない。
また、本発明で用いられるエチレン系共重合体のメルトフローレート(以下、MFRともいう)(JIS−K7210,表1,条件4)は、0.5〜50g/10分の範囲が好ましい。
本発明で用いられるエチレン系共重合体は、基本的には通常の低密度ポリエチレンの製造設備及び技術を利用して製造することができる。
上記のように製造されるエチレン系共重合体は2種類以上併用しても良い。
【0012】
以上のようにして製造されるエチレン系共重合体は、比重が0.92〜0.95g/cm3と小さく、また先に記述した種々の基材との接着性に優れている。特にポリオレフィン系基材との接着性はポリ塩化ビニルやウレタン樹脂に比べて良好であり、基材との接着に当たって接着剤を介在させる必要がない。また、本エチレン系共重合体は、ポリオレフィン系樹脂であるにも関わらず良好な高周波ウエルダー加工適性を有している他、顔料や、フィラーの分散性も良いという特徴を有している。
【0013】
本発明のエチレン系共重合体は更に、帯電防止剤としてアルキルスルホン酸系化合物を加えて用いることができる。アルキルスルホン酸系化合物の具体例を示せば、下記一般式(1)
(R1−SO3 -)nMn+ (1)
(但し、R1は炭素数2〜30の炭化水素基を表し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示されるアルキルまたはアルキル芳香族スルホン酸塩;
下記一般式(2)
(R2O(CH2CH(R’)O)mCOCH2SO3 -)nMn+ (2)
(但し、R2は炭素数2〜30の炭化水素基であり、R’は水素またはメチル基を示し、mは0〜9を表し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示される酢酸エステルのスルホン酸塩;
【0014】
下記一般式(3)
【化1】
(但し、R3、R4は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R’は水素またはメチル基を示し、l、mは0〜9を示し、nは1または2を示し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示される二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩;一般式(4)
(R5CON(R6)CH2CH2SO3 -)nMn+ (4)
(但し、R5は炭素数2〜25の炭化水素基、R6は水素または炭素数1〜6の炭化水素基を表し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示される脂肪族アミドのスルホン酸塩;
【0015】
一般式(5)
(R7O(CH2CH(R’)O)m)−SO3 -)nMn+ (5)
(但し、R7は炭素数2〜25の炭化水素基またはカルボン酸エステル基を表し、R’は水素またはメチル基を示し、mは0〜10を示し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示されるポリオキシアルキレン硫酸エステル塩;
一般式(6)
(R8CON(R9)CH2CH2OSO3 -)nMn+ (6)
(但し、R8は炭素数2〜25の炭化水素基、R9は水素または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示される脂肪族アマイドの硫酸エステル塩;
【0016】
一般式(7)
((R10)2NCH2CH2OSO3 -)nMn+ (7)
(但し、R10は炭素数1〜25の炭化水素基を表し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示される脂肪族アミンの硫酸エステル塩;
一般式(8)
(R12−OSO3 -)nMn+ (8)
(但し、R12は炭素数2〜25の炭化水素基を表し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示されるアルキルまたはアルキル芳香族硫酸エステル塩;ナフタリンスルホン酸のホルマリン縮合物とIA族及びIIA族の金属塩等を挙げることができる。これらのアルキルスルホン酸系化合物は単独または2種以上を併用しても差し支えない。
また、アルキルスルホン酸系化合物の他、下記のようなアルキルリン酸系化合物も使用できる。
一般式(9)
(R11O(CH2CH(R’)O)m)2PO(O-Mn+) (9)
(但し、R11は炭素数2〜25の炭化水素基を表し、R’は水素またはメチル基を示し、mは0〜10を示し、nは1又は2を表し、MはLi、Na、K、Mg、Caを示す)で示される脂肪族アルコールリン酸エステル塩。
【0017】
これらのうち、アルキルまたは芳香族スルホン酸、アルキル硫酸エステル塩が好ましく用いられる。中でも、アルキルスルホン酸塩が好適に用いられる。更にいえば、R1が直鎖状、または分岐状のアルキル基であるアルキルスルホン酸塩が好ましい。
本発明で用いられる、アルキルスルホン酸系化合物の使用量はエチレン系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲、好ましくは0.5重量部〜3重量部の範囲である。0.1重量部より少ない場合には、帯電防止効果が発現されなくなる。逆に5重量部を越えて使用しても、帯電防止効果の向上はそれ以上は望めず、製品の表面にブリードを生じる等の問題を起こすことになるため、好ましくない。
【0018】
更に、本発明に関わるエチレン系共重合体は、防汚性を付与するためにカルボン酸エステルを加えて使用することもできる。ここで用いられるカルボン酸エステル化合物は、25℃で3000cps以下の粘度を有し、沸点が170℃以上であるカルボン酸エステル化合物であることが望ましい。粘度は、5〜2500cpsが好ましく、10〜2000cpsが更に好ましい。また、沸点は、170℃以上であり、特に200℃以上が好ましく、さらには230℃以上であることが好ましい。
【0019】
このようなカルボン酸エステルの具体例を示せば、フタル酸ジエステル;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル等、脂肪酸エステル;オレイン酸ブチル、オレイン酸エチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アセチルリシノール酸メチル、アビエチン酸メチル、ステアリン酸ブチル、五塩化ステアリン酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等、グリコールエステル;ジエチレングリコールベンゾエート、トリエチレングリコール−2−エチルブチラート、ペンタエリスリトールヘキサエステル等、脂肪族二塩基酸エステル;アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ヒドロフタル酸ジ−n−オクチル、ヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ヒドロフタル酸ジイソデシル等、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−n−ヘキシル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジブチル等、トリメリット酸エステル;トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、エポキシ系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル等、ポリエステル樹脂;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等の二塩基酸とグリコール、グリセリン類及び一塩基酸等との重合体、が挙げられる。これらのうち、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0020】
カルボン酸エステルの添加量はエチレン系共重合体100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲、好ましくは0.5重量部〜5重量部の範囲である。0.1重量部より少ない場合には、防汚性が発現されなくなる。逆に10重量部を越えて使用しても、防汚効果の向上はそれ以上は望めず、成形性を低下させる上、製品の表面にブリードによる問題を起こすことになるため、好ましくない。
上記のアルキルスルホン酸系化合物及びカルボン酸エステルは、両者を同時にエチレン系共重合体に添加することもできる。そうすることによって、帯電防止性と防汚性を同時にエチレン系共重合体に付与することができる。
本発明に関わるエチレン系共重合体或いは、該共重合体にアルキルスルホン酸系化合物又は/及びカルボン酸エステルを加えた樹脂組成物(以下エチレン系共重合体組成物という)は、更にブロッキング防止剤として、無機フィラーを加えて使用することもできる。ここで用いられる無機フィラーは、少なくともAl、Mg、Ca、Siのうち少なくとも1種を含む無機化合物である。具体的な例を示すと、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等を挙げることができる。特に、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムが好適である。
【0021】
無機フィラーの含有量は、エチレン系共重合体に対して0.1〜5重量%の範囲であることが好ましく、特に、0.3〜3重量%の範囲が好ましく、さらには0.7〜2.5重量%の範囲が好適である。
本発明のエチレン系共重合体或いは、エチレン系共重合体組成物は、更に、使用する目的に応じ、その特徴を失わない範囲でポリオレフィン系樹脂や有機カルボン酸の金属塩等を配合することも可能である。
【0022】
用いられるポリオレフィン系樹脂としては、本発明に関わるエチレン系共重合体を除く、他の種々のポリオレフィン系重合体を用いることができる。例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブタジエン、及び上記各樹脂の構成単位又はこれら以外のオレフィンの共重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体;ブテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン等をコモノマーとした直鎖状低密度ポリエチレン;プロピレン−エチレンのブロック共重合体;エチレン−酢酸ビニル又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体;更に、これらの樹脂の混合物等を挙げることができる。
有機カルボン酸の金属塩としては、具体的には例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の低級カルボン酸の金属塩;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の高級カルボン酸の金属塩;一般にアイオノマーと呼称される高分子カルボン酸の金属塩等を挙げることができる。
【0023】
また、本発明に関わるエチレン系共重合体或いは、エチレン系共重合体組成物は、その特徴を損なわない範囲で、各種の添加剤、配合剤、充填剤等を配合することができる。具体的には例えば、酸化防止剤(耐熱安定剤)、紫外線吸収剤(光安定剤)、防曇剤、難燃剤、滑剤(スリップ剤、アンチブロッキング剤)、ガラスフィラー等の無機充填剤、有機充填剤、補強材、着色剤(染料、顔料)、発泡剤、架橋剤、香料等が挙げられる。
各成分の混合にあたっては、通常知られている種々の混合方法を用いることができる。具体的には例えば、各成分を高温のトルエンのような溶媒に溶解、再沈させる方法、各成分を溶融状態で混合する方法、すなわち一般的に用いられている加圧ニーダー、ロール、バンバリーミキサー、スタティックミキサー、スクリュー式押出機等を用いる方法等が挙げられる。また、場合によっては、各成分をドライブレンドし成形時に組成物化することも可能である。
【0024】
本発明に関わるエチレン系共重合体或いは、エチレン系共重合体組成物を、基材に積層するに当たっては、溶融押出ラミネート法が用いられる。その際、表面にエンボス模様の刻まれたロールを押圧することにより、積層と同時に樹脂層表面にエンボス加工を施すことができる。
図2に、そのような方法の具体的な製造装置の一例を示す。
図2に示す方法では、まず、基材2を繰出しロール4から繰り出し、ガイドロール5等を経て押付けロール6とエンボス付の冷却ロール(エンボスロール)7の間に導入する。
さらに、Tダイ等を備えた押出機8から樹脂層の原料であるエチレン系共重合体あるいはエチレン系共重合体組成物の溶融樹脂9を、押付けロール6とエンボスロール7との間であって、基材2とエンボスロール7との間に導入する。この際の樹脂の押出成形温度は、エチレン系共重合体の融点以上であることが必要であり、具体的には100℃以上の温度であり、好ましくは120〜300℃の範囲、より好ましくは160〜250℃の範囲である。
【0025】
そして、溶融樹脂9/基材2は押付けロール6とエンボスロール7との間で圧着され、かつ溶融樹脂はエンボス加工されると同時に冷却固化され、図1に示すような樹脂層1及び基材層2からなる多層合成皮革3となる。
その後、樹脂層1と基材層2とからなる多層合成皮革3は、ガイドロール5等を経て巻取りロール10に巻取られる。
以上のようにして、本発明の多層合成皮革が連続的に製造される。本方法を用いれば、多量かつ同一の多層合成皮革を短時間で効率よく製造することができるため、経済的にも優れた方法である。
また、本発明の多層積層体を製造する目的には、エンボスロールを使用する代りに、エンボス付の工程紙と称される副資材を用いて押圧する方法や、エンボス模様の刻まれたプレス板でプレス加工する熱プレス法を用いることも可能である。
【0026】
以上のようにして製造される、本発明の多層合成皮革の各層の厚みは、用途によって異なるため一義的に決められるものではない。しかし、樹脂層の厚みは、エンボス加工を行うことから、少なくとも40μm以上の厚みであることが好ましい。また、最大厚みは、成形加工性の点から最大500μmまでの範囲である。一方、基材層の厚みは、10μmから500μmの範囲である。また、用途によっては、本発明の基材層と樹脂層以外の層、例えば保護層等をさらに設けて、3層以上の積層体とすることも可能である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明がこれによって限定されるものではいことは言うまでもない。
【0028】
〈実施例1〉
基材として綿布、エチレン系共重合体としてエチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体[MFR(JIS−K7210,表1,条件4)が11g/10分、アクリル酸メチルに由来する単位の含量が15重量%、無水マレイン酸に由来する単位の含量が2.5重量%]を用い、図2に示した製造方法により、成形温度220℃で成形した。
得られた多層合成皮革Aは、樹脂層の厚みが100μm、基材層の厚みが300μmであった。本多層合成皮革Aは、外観、触感共に良好であった。また、層間接着強度を測定したところ、基材が材料破壊した。また、樹脂層同士を合わせ2.5mm幅のシールバーを有する高周波ウエルダーを用いてシール圧2kg/cm2でヒートシールし、15mm幅の試験片を切り出してそのヒートシール強度を測定したところ、970g/15mm幅であり、良好な高周波ウエルダー加工性を有していた。また、多層合成皮革Aを−30℃に冷却しても、十分な柔軟性を有していた。
【0029】
〈実施例2〉
基材としてポリエチレンテレフタレート不織布、エチレン系共重合体としてエチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体[MFR(JIS−K7210,表1,条件4)が8g/10分、メタクリル酸メチルに由来する単位の含量が20重量%、無水マレイン酸に由来する単位の含量が2.0重量%]を用い、図2に示した製造方法により、成形温度220℃で成形した。
得られた多層合成皮革Bは、樹脂層の厚みが50μm、基材層の厚みが200μmであった。本多層合成皮革Bは、外観、触感共に良好であった。また、層間接着強度を測定したところ、基材が材料破壊した。また、実施例1と同様にして高周波ウエルダー加工性を評価したところ、ヒートシール強度は850g/15mm幅であり、良好な高周波ウエルダー加工性を有していた。
【0030】
〈実施例3〉
樹脂層の原料として、実施例1と同様のエチレン系共重合体100重量部及び炭素数14のアルキル基を有するアルキルスルホン酸ナトリウム塩1.5重量部からなる樹脂組成物を用いた他は、実施例1と同様の方法で成形し多層合成皮革Cを得た。
得られた多層合成皮革Cは、樹脂層の厚みが100μm、基材層の厚みが300μmであり、外観、触感共に良好であった。また、層間接着強度を測定したところ、基材が材料破壊した。また、実施例1と同様にして高周波ウエルダー加工性を評価したところ、ヒートシール強度は1030g/15mm幅であり、良好な高周波ウエルダー加工性を有していた。さらに、3ヵ月間室温に置いた後に樹脂層の表面固有抵抗を測定したところ、1.2×1013Ωであり、良好な帯電防止性を示した。
【0031】
〈実施例4〉
樹脂層の原料として、実施例2と同様のエチレン系共重合体100重量部及びジ(2−エチルヘキシル)フタレート[粘度:60cps(25℃)]1.5重量部からなる樹脂組成物を用いた他は、実施例2と同様の方法で成形し多層合成皮革Dを得た。
得られた、多層合成皮革Dは、樹脂層の厚みが50μm、基材層の厚みが200μmであり、外観、触感共に良好であった。また、層間接着強度を測定したところ、基材が材料破壊した。また、実施例1と同様にして高周波ウエルダー加工性を評価したところ、ヒートシール強度は860g/15mm幅であり、良好な高周波ウエルダー加工性を有していた。さらに、カーボンブラック:グリース=2:10の組成の黒色ペーストを塗布し、布で拭き取った後の汚れの付着強度を、ポリ塩化ビニル性合成皮革の場合と比較評価したところ、ほぼ同等の付着量であり、良好な耐防汚性を有していた。
【0032】
〈実施例5〉
樹脂層の原料として、実施例1と同様のエチレン系共重合体100重量部、炭素数14のアルキル基を有するアルキルスルホン酸カリウム塩1.0重量部及びジ(2−エチルヘキシル)アジペート[粘度:12cps(25℃)]1.0重量部からなる樹脂組成物を用いた他は、実施例1と同様の方法で成形し多層合成皮革Eを得た。
得られた、多層合成皮革Eは、樹脂層の厚みが100μm、基材層の厚みが300μmであり、外観、触感共に良好であった。また、層間接着強度を測定したところ、基材が材料破壊した。また、実施例1と同様にして高周波ウエルダー加工性を評価したところ、ヒートシール強度は920g/15mm幅であり、良好な高周波ウエルダー加工性を有していた。さらに、実施例3と同様に表面固有抵抗を測定したところ、1.3×1013Ωと、良好な帯電防止性を示した。次いで、実施例4と同様な汚れ評価を行った結果、ポリ塩化ビニルの場合とほぼ同等であり、良好な耐防汚性を有していた。
【0033】
〈比較例1〉
樹脂層の原料として、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を用いた他は、実施例1と同様の方法で、多層合成皮革Fを製造した。
得られた多層合成皮革Fの層間接着強度を測定したところ、150g/15mm幅(界面剥離)と、極めて低い接着強度しか示さなかった。また、本多層合成皮革Fを−30℃に冷却したところ、柔軟性は全く失われていた。
【0034】
〈比較例2〉
樹脂層の原料として、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体[MFR(JIS−K7210,表1,条件4)が6g/10分、メタクリル酸メチルに由来する単位の含量が15重量%]を用いた他は、実施例1と同様の方法で、多層合成皮革Gを製造した。
得られた多層合成皮革Gの層間接着強度を測定したところ、200g/15mm幅(界面剥離)と、極めて低い接着強度しか示さなかった。また、実施例1と同様にして高周波ウエルダー加工性を評価したが、ヒートシール強度は110g/15mm幅と非常に弱いものであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明の多層合成皮革に用いるエチレン系共重合体は、比重が0.92〜0.95g/cm3とポリ塩化ビニルやウレタン樹脂等の比重(1.2〜1.4g/cm3)より小さく、製品の軽量化が可能となる。また、耐寒性や耐油性にも優れている。
さらに、可塑剤を多量に用いないので、可塑剤が原因となる黄ばみも生じ難く、色移りしくにいという特徴を有する。また、落書きなども落としやすい特性を有している。
さらに、燃焼させても塩素ガスや、塩化水素ガス、酸化窒素ガス等は発生せず、環境上また災害対策上好ましい。
また、加水分解反応を起こさないので、脆化することがなく耐久性に優れ、しかも高周波ウェルダーを適用できるので加工性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の多層合成皮革の側面図である。
【図2】本実施例の多層シート材の製造方法を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 樹脂層
3 多層合成皮革
2 基材層
4 繰出しロール
5 ガイドロール
6 押付けロール
7 冷却ロール(エンボスロール)
8 押出機
9 溶融樹脂
10 巻取りロール
Claims (4)
- 少なくとも、基材層と、表面をエンボス加工した樹脂層からなり、該樹脂層がエチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体であることを特徴とする多層合成皮革。
- 少なくとも、基材層と、表面をエンボス加工した樹脂層からなり、該樹脂層がエチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体100重量部に対し、アルキルスルホン酸系化合物0.1〜5重量部及び/又はカルボン酸エステル0.1〜10重量部を加えてなる樹脂組成物であることを特徴とする多層合成皮革。
- エチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体を、エチレン系共重合体の融点以上の温度で溶融押出ししながら基材上に積層して樹脂層を形成すると同時に、エンボス付の冷却ロールを用いて該樹脂層にエンボス加工を施すことを特徴とする多層合成皮革の製造方法。
- エチレンに由来する単位89.9重量%〜50重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単位10重量%〜45重量%及びラジカル重合性酸無水物に由来する単位0.1重量%〜5重量%からなるエチレン系共重合体100重量部に対し、アルキルスルホン酸系化合物0.1〜5重量部及び/又はカルボン酸エステル0.1〜10重量部を加えてなる樹脂組成物を、エチレン系共重合体の融点以上の温度で溶融押出ししながら基材上に積層して樹脂層を形成すると同時に、エンボス付の冷却ロールを用いて該樹脂層にエンボス加工を施すことを特徴とする多層合成皮革の製造方法。
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