JP3675463B2 - 配管系の熱処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、組立てられた配管の内面に存在する引張残留応力を圧縮残留応力に転換するために、配管内に冷却材を存在させて、配管を表面から加熱する方法と装置に関わり、特に配管の加熱により配管外面と配管内面に温度差を発生させ配管内面を引張降伏させ、外面と内面の温度差がなくなったときに、配管内面の引張残留応力を低減させるのに好適な配管の熱処理方法に関する。
オーステナイト系ステンレス鋼や高ニッケル基合金では、溶接熱によって結晶粒界にクロム炭化物が析出し、この結果、結晶粒界の極近傍にクロム欠乏層が形成され、このクロム欠乏層に鋭敏化(腐食に対し感受性が高くなる現象)が発生する。また、溶接部近傍の表面には、一般に高い引張残留応力が存在するので、材料が鋭敏化した状態で、厳しい腐食環境下で使用されると応力腐食割れを起こす。すなわち、材料の鋭敏化,高い引張残留応力、および腐食環境の三因子が重畳すると、応力腐食割れの危険性が高まる。
従来は、ステンレス鋼の応力腐食割れは、タイプ304ステンレス鋼などの炭素含有量が高い材料の溶接熱影響部に発生すると考えられていた。そのため、応力腐食割れを発生させる因子のうち、材料的な因子の改善を目的として、炭素量が少なく、また、鋭敏化を起こしにくくなるような元素を添付したタイプ316Lステンレス鋼に交換された。これにより、配管の熱影響部および溶接金属では、応力腐食割れが発生しないと考えられているが、タイプ316Lステンレス鋼溶接部位の熱影響部から応力腐食割れが発生する可能性は否定できない。タイプ316Lを用いる材料因子の改善は、必ずしも十分でないことがわかった。さらに、従来の知見では割れが進展しないと考えられていたステンレス鋼の溶接金属にも、応力腐食割れが起き得る可能性は否定できない。このような可能性から、応力腐食割れを抑制するためには、材料的な因子の改善のみでなく、残留応力および環境因子の改善が重要である。
応力腐食割れの発生を抑制するために、腐食環境に曝される領域の引張残留応力の低減が対策の一つとして挙げられる。既設配管溶接部位の配管内面の引張残留応力を低減する方法として、特許公報第957324号公報に記載されている「配管系の熱処理方法」がある。本方法は、プラントの配管系を組立てた後、配管系を構成する配管の内部に冷却材を存在させ、配管を加熱して配管の内面と配管の外面との間に温度差を発生させ、内面を引張降伏させ、外面を圧縮降伏させることにより達成される。
特許公報第957324号公報
上記従来技術は、溶接金属部位に応力腐食割れが発生するような場合について配慮がされていない。一般に溶接金属およびその近傍は、配管母材と比較して降伏応力が高く、したがって、溶接により発生する引張残留応力も降伏応力程度の大きさになっていると考えられる。そのため、引張降伏を起こすために内面に発生させる引張応力を十分に大きくする必要がある。
本発明の目的は、既設配管溶接継手の配管内面において応力腐食割れの発生を抑制することを目的として、当該部位の溶接金属およびその近傍において圧縮残留応力を管内面の溶接金属部およびその近傍に発生させる熱処理方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明ではプラントの配管系の熱処理方法において、プラントの組立てられた後の炭素含有量が0.001%以上0.03%以下のオーステナイト系ステンレス鋼からなる配管系を構成する配管の内部を、冷却水を冷却材として用いて冷却し、前記配管の外部を、高周波加熱装置を用いて加熱温度の最大値を600℃以上700℃以下に加熱し、前記配管の内面と前記配管の外面との間に温度差を発生させ、前記内面を引張降伏させ、前記外面を圧縮降伏させることを特徴とするものである。
本発明によれば、炭素含有量が低いオーステナイト系ステンレス鋼からなる組立てられた配管系において、材料を鋭敏化させることなく配管溶接部内面の引張残留応力を緩和できる。これにより、配管の溶接部近傍に生じる恐れのある応力腐食割れを防止できる。また、配管内面にき裂がある場合でも、き裂先端にその進展を抑制するのに好適な圧縮残留応力を付与することができる。
ステンレス鋼では、引張残留応力が付与されたまま高温純水中に長時間曝されると、応力腐食割れを発生するおそれがある。発電プラントでは、高温水配管には耐食性等を考慮してステンレス製配管を用いることが多い。このような場合、配管の溶接部近傍における応力腐食割れを防止するために、配管内面の引張残留応力を低減するか、圧縮残留応力にすることが望ましい。以下に、応力腐食割れを防止する残留応力改善方法の具体的実施例を説明する。
最初に、配管内に冷却材をおいて配管の外表面を加熱し、その後、加熱をやめて冷却し配管が一様な温度に到達させる手順について図1を参照しながら説明する。以下の説明では、施工対象を口径600A,スケジュール100(外径609.6mm,厚さ38.9mm)の配管として説明する。
溶接部内面の引張残留応力の緩和を目的とする配管1の溶接部2の周囲に高周波加熱コイル11を配置する。高周波加熱コイル11はスペーサー12を介して配管1の外表面と一定の間隔になるように設置され、スペーサー周方向治具13により配管1に固定される。高周波加熱コイル11には、電流ケーブル14を介してトランス16から高周波電流が供給される。また、高周波加熱コイル11は、電流が流れるとコイル自身も発熱するため、高周波加熱コイル11を焼損しないために、冷却水循環装置19からコイル冷却水循環配管15を介して高周波加熱コイル11を冷却している。また、トランスには電源17から電流・電圧が供給され、さらに電源17のオン・オフが制御装置18により制御されている。制御装置18には、配管1の溶接部2の外表面に取り付けられた熱電対22からケーブル23と温度測定器21を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、印加する電流の大きさ,通電時間を設定する機構と、配管外表面の温度が所定の温度に達した場合は通電を停止する機能が組込まれている。
つぎに、図1に示す装置を用いた熱処理方法について説明する。最初に配管系に冷却水を循環させる。配管内の冷却材は、例えば沸騰水型原子力発電プラントの再循環系配管では、例えば炉水を再循環ポンプにより流動させることにより冷却材とすることができる。配管内の冷却水の循環を開始した後に、高周波誘導コイルによる配管外表面の加熱を行う。高周波誘導コイルによる加熱では、最初に冷却水循環装置19を作動させ、高周波誘導コイルの冷却を開始しておく。つぎに制御装置18から電流の大きさおよび通電時間を設定して通電を開始する。高周波誘導コイルを流れる電流と、配管表面に表皮電流が誘起され、その電流と配管の抵抗から発熱が起き、配管は外表面側から加熱される。以上のように、配管内面の冷却水の循環、および高周波誘導加熱コイルによる配管外表面側からの加熱により、配管の厚さ方向に温度差を発生させることができる。
つぎに、熱処理を行う配管の材料を炭素含有量が低いオーステナイト系ステンレス鋼に限定している理由について、図2を参照しながら説明する。図2はオーステナイト系ステンレス鋼における、鋭敏化温度と保持時間の関係を炭素含有量が0.08% の場合と、
0.03%の場合のそれぞれについて求めたものである。オーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化は、高温に曝されている間に耐食性を発揮しているクロム元素が炭素と結合してクロム炭化物を形成し、高温に曝された領域にクロム欠乏層が生じることにより発生する。したがって、材料中の炭素含有量が多いほど材料の鋭敏化は起き易くなる。図2より、例えばオーステナイト系ステンレス鋼が600℃に保持されているとき、炭素含有量が
0.08%であれば保持時間が1時間程度で鋭敏化が発生するのに対して、0.03%であれば、鋭敏化が発生するには10時間程度を要することがわかる。また、高温にさらされる時間が10時間よりも短い場合には、鋭敏化を起こさない。すなわち、配管の熱処理を行うときに、炭素含有量が高い配管では鋭敏化を抑制するために加熱温度に制限を設ける必要があるが、炭素含有量が低い配管では加熱時間が10時間に到達しなければ、鋭敏化をおこすことなく高温に曝すことができることを意味している。
ここで、炭素含有量が高いオーステナイト系ステンレス鋼としてタイプ304ステンレス鋼がある。タイプ304ステンレス鋼は過去に沸騰水型原子炉に多用された材料である。タイプ304ステンレス鋼の溶接部位における応力腐食割れ発生を抑制するために実施された前記の熱処理方法では、新たな鋭敏化を発生させないために最高加熱温度に制限が加えられた。
炭素含有量が低いオーステナイト系ステンレス鋼としてタイプ316Lステンレス鋼がある。この材料は溶接による材料の鋭敏化を起こしにくく、近年の沸騰水型原子力発電プラントでは、タイプ316Lステンレス鋼が用いられている。タイプ316Lステンレス鋼は鋭敏化を起こさないため、応力腐食割れは発生しないと考えられていた。そのため、前記のような熱処理方法をタイプ316Lステンレス鋼に施す必要性は見当たらなかった。
しかしながら、近年、タイプ316Lステンレス鋼にも応力腐食割れが発生する可能性のあることが明らかになりつつあり、応力腐食割れの発生を抑制するために、引張残留応力を低減するという観点から上記の熱処理方法を適用する必要性が生じてきている。タイプ316Lステンレス鋼では、材料の鋭敏化が起きないため、鋭敏化を抑制するという観点からは最高過熱温度を制限する必要はない。すなわち、タイプ304ステンレス鋼の場合と比較すると、タイプ316Lステンレス鋼の方が最高加熱温度を高く設定することができる。
つぎに、最高加熱温度を高く設定することにより生じる利点、および引張残留応力の低減という観点から加えるべき最高加熱温度の制限について図3〜図8を用いて説明する。図3は、配管内に冷却水を循環させ、さらに配管表面を高周波誘導加熱により加熱したときに配管の板厚さ方向に発生する温度分布を示したものであり、横軸に配管内表面からの距離,縦軸に温度を示している。温度分布のケースとてしては、配管内の冷却水の温度を20℃で循環させ、配管外表面の温度を600,700,800、および1050℃としたときの温度分布である。配管内表面は冷却水の循環により冷却水温度に保たれる。一方、配管外表面は高周波誘導加熱により温度が上昇していく。内表面と外表面の間の温度分布は、準定常状態となり内表面と外表面の間はほぼ線形に分布する。
つぎに、図3に示したように配管の板厚さ内部に内面側が低温で、外面側が高温で、その間は線形となる温度分布が発生したときの、配管内表面と配管外表面の応力−ひずみ履歴について図4を用いて説明する。図4に実線で示す経路O−A1−A2−A3−A5、および経路O−A1−A2−A4は、配管内面の応力−ひずみ関係の履歴を示している。また、破線で示す経路O−B1−B3−B5、および経路O−B1−B2−B4は、配管外面の応力−ひずみ関係の履歴を示している。
最初に、応力−ひずみ関係が温度依存性を持たないと仮定し、そのような材料からなる配管に、図3に示すような内面が低温,外面が高温,中間は線形分布となる温度分布を発生させ、その後、加熱を停止して全体を均一な温度まで冷却したときの内表面および外表面の応力−ひずみ履歴について説明する。図4に実線で示す経路O−A1−A2−A3−A5が内面の応力−ひずみ履歴であり、破線で示す経路O−B1−B3−B5が外面の応力−ひずみ履歴である。内面では、加熱による膨張が内面の冷却により拘束されるため、引張応力が発生する。一方、外面では逆に、加熱による膨張変形が内面側の低温域から拘束されるため圧縮応力が発生する。このように、外面と内面とで、応力−ひずみの履歴は対称になる。内外面の温度差をさらに大きくすると、内面は引張側の降伏が起きて引張の塑性変形が発生する。外面は圧縮側の降伏が起きて圧縮側の塑性変形が発生する。
つぎに、加熱を停止し配管内の冷却材により配管が冷却され、配管全体が一様な温度になるまでの挙動について説明する。配管外面側からの加熱停止後、内外面の温度差は小さくなっていき、最終的には配管内の冷却材の温度になる。このとき、内外面の応力は、弾性的に変化する。すなわち図4の応力−ひずみ線上を降下していく。加熱中に発生した塑性変形が大きい場合には、内面が圧縮応力に改善される。以上のように、加熱される外面側の強度が内面と同等である温度範囲では、その温度範囲内で加熱温度が高ければ高いほど、加熱処理終了後の配管全体が均一になったときに配管内面に発生する圧縮応力が大きくなる。
ここで、炭素含有量が高いオーステナイト系ステンレス鋼であるタイプ304ステンレス鋼配管の溶接部位の溶接熱影響部において、応力腐食割れの発生を抑制するために、上記の熱処理方法を適用する場合について考える。配管外面の加熱により炭素含有量が0.08%程度のタイプ304ステンレス鋼が鋭敏化しないように最高温度を考慮する必要がある。図2からわかるように、600℃では1時間、650℃では10分以上曝されると材料の鋭敏化が顕著になる。そのため、最高加熱温度は、例えば「原子力発電設備維持に係る技術基準について(財)発電設備技術検査協会」に記載されている方法では、裕度も考慮して最高加熱温度は550℃とされている。
本発明が意図する非鋭敏化材料から構成された既設配管に、内面冷却、および外面加熱による熱処理を加える場合について説明する。ここでは、炭素含有量が低いオーステナイト系ステンレス鋼であるタイプ316Lステンレス鋼を例に説明する。タイプ316Lステンレス鋼は、仕様では炭素含有量が0.03% 以下とされている。図2からわかるように、炭素含有量が0.03%のオーステナイト系ステンレス鋼では、600℃に10時間以上曝さなければ鋭敏化はおきない。1時間の場合は温度が900℃であっても鋭敏化が起きることはない。そのため、材料の鋭敏化発生を抑制するという観点からは、タイプ
316Lステンレス鋼では最高温度の制限は考慮しなくてよくなる利点がある。
以上は、鋭敏化の回避という観点から最高加熱温度について検討したものである。つぎに、最高加熱温度を配管材料の力学的溶融温度以下に制限する理由について説明する。図5は、文献「望月、ほか4名、厚板を貫通する配管の溶接による残留応力発生機構の検討、溶接学会論文集、第12巻第604号、pp561〜567(1994)」に記載されているタイプ304ステンレス鋼およびタイプ316Lステンレス鋼の応力−ひずみ関係である。温度とともに発生する引張応力は小さくなり、20℃の場合と比較して、十分に小さい荷重で変形が進行するようになる温度がある。このように、十分に小さい荷重で変形が進行するようになる温度は、力学的溶融温度と呼ばれている。図5では、1050℃になると、他の温度と比較して著しく小さい応力でひずみが発生する。すなわち、1050℃を力学的溶融温度とすることができる。
ここで、外表面側の加熱とともに、内表面側の強度と比較して、外表面側の強度が低下するときの、内面および外面の応力−ひずみ履歴について説明する。図4において、経路O−B1−B2−B4が外表面側の応力−ひずみ履歴であり、経路O−A1−A2−A4が内面側の応力−ひずみ履歴である。外面側は温度上昇により降伏応力が低下する。そのため、経路O−B1−B3−B5の経路と比較して、加熱過程で発生する圧縮応力が小さい。内面側は温度が冷却材の温度に保たれるため、内面の応力−ひずみ関係は変わらない。しかし、外面側との力学的な釣合いから内面に発生する引張り側の塑性ひずみは、経路O−A1−A2−A3−A5の場合と比較すると絶対値が小さくなる。内面は冷却材により冷却されているため、応力−ひずみ関係は一定のままである。一方、配管の外面は、高温になることにより強度が低下する。配管の厚さ断面に発生する応力は、自己平衡するため外面側で発生する圧縮応力が小さくなると、内面側の引張応力の値も小さくなる。すなわち、内面に引張側の塑性変形を発生させるためには、配管が剛性を有する必要がある。
以上に説明したように、加熱に伴い外表面側の強度が低下する場合は、外表面の最高加熱温度を高くしても必ずしも内表面に発生させる圧縮残留応力の絶対値を大きくすることはできない。絶対値が大きい圧縮応力を付与するために、オーステナイト系ステンレス鋼の、温度依存性を有する応力−ひずみ関係を考慮して、設定する最高加熱温度を検討した。
図6は、加熱中の配管の板厚内の応力分布であり、図3に示したように内面は20℃で、外面が600,700,800、および1050℃としたときの応力分布を数値計算により評価したものである。内面では引張側の降伏が起きる。発生する応力の絶対値は降伏応力の値である。内表面の温度は20℃で一定であるためいずれのケースでも、絶対値はほぼ同等である。一方、外面に発生する応力は加熱温度によって異なってくる。ここでは、外表面の最高加熱温度を600,700、および1050℃としたときのそれぞれについて、板厚内に発生する応力分布について説明する。外表面の温度が高くなるとともに、その温度に対応した降伏応力は小さくなる。しかし、600℃と700℃の比較では、外面に発生する引張応力値は700℃の方が小さいが、板厚内部では強度が高い領域が残っており、その部分で発生する応力により、内面側では引張側の塑性変形が発生する深さは、外表面を700℃まで加熱させる方が効果が大きい。その結果、図7に示すように加熱終了後に全体が均一な温度になるまで冷却されたときの残留応力は、最高加熱温度を700
℃としたときの方が深くまで圧縮応力を発生させることができる。すなわち、外面の最高加熱温度を高くすることにより内面側に付与する圧縮応力の絶対値を大きくする効果が生じている。
一方、外面を力学的溶融温度である1050℃まで加熱すると、外面側で発生する圧縮応力の絶対値は小さく、したがって、内面側の引張側の降伏が起きる深さは、700℃の場合よりも浅くなる。すなわち、最高加熱温度が力学的溶融温度に到達すると発生する変形量が大きくなるため、内面側に引張側の降伏を発生させる駆動力は小さくなる。そのため、内面に付与する圧縮応力の領域を大きくするには、最高加熱温度を力学的溶融温度以下にすることが必要条件となる。
つぎに、最高加熱温度をクリープが発生する温度以下に制限する理由について説明する。加熱を行う際に、厚肉の場合は加熱時間を十分に長くとる必要がある。しかしながら、加熱時間が長い場合にはクリープ変形が発生する。クリープ変形は、高温で荷重が付加されているときに、荷重の方向に非弾性ひずみが時間ともに発生する現象である。クリープ変形が発生すると、構造体としての強度が低下するため好ましくない。したがって、最高加熱温度はクリープ変形が発生する温度以下とすることが好ましい。
発明者らが行った単軸の引張り試験では、800℃以上の温度において、負荷荷重が減少しているにもかかわらず、ひずみは増加する測定結果が得られた。すなわち、クリープ変形が発生する温度は800℃とすることができる。図5には、発明者らが実施した測定試験から得られたクリープ変形を伴う応力−ひずみ関係を破線で示す。なお、図中に記載はないが、800℃以上の測定では応力−ひずみ関係にひずみ速度依存性があることを確認している。
図6および図7に外表面側を800℃に保持し、クリープ変形が発生したときの応力分布を示す。クリープ変形が発生することにより外面側は変形が進行し応力は発生しない。そのため、内面側で発生する引張側の降伏領域は、最高加熱温度が700℃の場合と比較すると狭くなる。図7に熱処理後に冷却され全体が均一な温度になったときの応力分布を示す。クリープ変形が起きない700℃の場合と比較すると、内面で発生する圧縮応力は、絶対値が小さい。したがって、クリープ変形が起きない温度範囲内であって、高い最高加熱温度を設定するのが好ましい。
配管突合せ継手の溶接部位では、熱処理を行う部位には溶接により引張残留応力が発生している。引張残留応力が発生している部位にさらに引張り側の荷重を負荷して引張側の塑性変形を進行させ、つぎに除荷することにより、引張残留応力は緩和される。したがって、上記で検討した加熱過程で内面に絶対値が大きく、かつ引張側の塑性変形が進行している領域の深さが板厚さに対して最も深くなる加熱条件が、引張残留応力を緩和するための最適条件となる。以上を考慮すると、タイプ316Lステンレス鋼では外面の最高加熱温度を700℃とすれば、内面に発生する圧縮応力の絶対値を大きくすることが可能であり、かつ圧縮応力が発生する範囲の板厚さに対する割合を最も大きくすることができる。
図8には、配管溶接部位の残留応力、および本実施例による熱処理施工後の残留応力分布の測定値および解析値を示している。溶接後、過熱温度600℃、および700℃の結果は測定値である。また、加熱温度800℃は数値計算による解析値である。なお、800℃の解析値は、有限要素法による温度解析および熱弾塑性クリープ解析であり、その精度は十分に検証されている方法である。図8に示す結果より、炭素含有量が0.03% 以下のオーステナイト系ステンレス鋼では、最高加熱温度を700℃としたときに内面に発生する圧縮残留応力の絶対値を最大にすることができることが検証できた。
つぎに、配管系の熱処理方法の実施例について説明する。内面にき裂を有する配管溶接部に対して、最高加熱温度を700℃とした熱処理を行う場合である。配管の板厚さをtとする。深さがt/4のき裂がある場合について説明する。t/4のき裂がある配管に内面水冷,外面加熱の処理を行ったとき、配管内面は冷却水温度に保たれる。一方、配管外表面は加熱とともに温度が上昇していく。内面が20℃で、外面が700℃の場合では、き裂先端部は引張応力が分布している範囲内にある。熱処理中にき裂先端近傍には引張応力が作用しき裂先端部は引張側の塑性変形が発生する。加熱を終了して全体を均一な温度まで冷却するとき裂先端部の残留応力を圧縮応力に改善できる。以降の進展を抑制するのに十分な効果を有する。
これまでの実施例では、施工対象を口径600A,スケジュール100(外径609.6mm,厚さ38.9mm )の配管を対象として説明した。口径,厚さが異なっても配管の内面および外面の温度分布が同じならば発生する応力および塑性変形の分布も、上記で検討した寸法の配管と同等である。これまでの実施例では、施工の対象は配管の突合せ継手として説明した。例えば、エルボと直管,鞍状管台、およびノズルに施工する場合も、内面に圧縮残留応力を発生させる最大加熱温度の最適値は、板厚さ方向の温度分布とそれに起因する応力分布が支配的な因子であるため、これまでに述べた施工方法で配管内面の引張残留応力を緩和することができる。
最高加熱温度を設定した加熱処理の実施方法について説明する。すでに説明した図1の装置を用いる。高周波加熱コイル11に流す電流の大きさ、および時間は、配管1の口径,板厚により異なる。そのため、モックアップ試験または数値計算により、電流の大きさ、および通電時間と配管内の温度分布の関係を明らかにしたデータベースを構築しておく。電流値および通電時間を制御装置18で設定し通電する。なお、設定した最高温度まで到達する時間は、加熱処理を施工するときの気温,内面の冷却材の温度等によりばらつきが生じるため、最高加熱温度に到達した時点で電源を遮断するリミッターを制御装置18内に設けて、自動的に加熱を停止するようにしておく。また、例えば温度の上昇速度を見ながら最高温度に到達した時点で作業者が手動で電源を停止してもよい。電源を停止すると、配管は内部の冷却材との熱伝達により冷却材の温度まで冷却される。配管の温度が冷却材の温度になった時点で一連の処理が完了する。この熱処理により配管溶接部内面の引張残留応力を緩和することができる。さらに、仮に溶接部位にき裂があった場合であっても、き裂先端部に圧縮応力を付与するため、熱処理終了後のき裂進展を停止させる効果が期待できる。
本発明に係る配管の残留応力改善方法の一実施例を示す図。 オーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化温度,保持時間、および炭素含有量の関係を説明する図。 図1に示した熱処理方法で配管の板厚さ方向に発生させる温度の分布図。 図1に示した熱処理方法で配管の内外面に発生する応力−ひずみの履歴を説明する図。 タイプ304ステンレス鋼およびタイプ316Lステンレス鋼の応力−ひずみ関係の温度依存性を説明する図。 図1に示した熱処理方法で配管を加熱する過程で配管の板厚内に発生する応力の分布図。 図1に示した熱処理方法で配管を処理した後の配管板厚内の残留応力分布。 熱処理前後の配管内面の残留応力分布を比較した図。 配管板厚内の残留応力分布図上にき裂深さを示した図。
符号の説明
1…配管、2…溶接部、10…コイル端子、11…高周波加熱コイル、12…スペーサー、13…スペーサー周方向治具、14…電流ケーブル、15…冷却水循環配管、16…トランス、17…電源、18…制御装置、19…冷却水循環装置、21…温度測定器、
22…熱電対、23…ケーブル。

Claims (2)

  1. プラントの組立てられた後の炭素含有量が0.001%以上0.03%以下のオーステナイト系ステンレス鋼からなる配管系を構成する配管の内部を、冷却水を冷却材として用いて冷却し、前記配管の外部を、高周波加熱装置を用いて加熱温度の最大値を600℃以上700℃以下に加熱し、前記配管の内面と前記配管の外面との間に温度差を発生させ、前記内面を引張降伏させ、前記外面を圧縮降伏させる配管系の熱処理方法。
  2. 前記請求項1に記載の配管系の熱処理方法において、熱処理を行う配管は内面にき裂を有することを特徴とする配管系の熱処理方法。
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