JP3674678B2 - 建築用内装板材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人間の生活環境に有益な陰イオンを積極的に発生させ、空気環境とともに自然環境を改善する建築用内装板材に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、木毛セメント板は、古くから映画館や体育館等の大型建築物に使用されており、軽量な断熱板材として現在でも建築用内装材として広範な用途に使用されている。
【0003】
一方、人間の生活環境において、室内の空気雰囲気を清浄化する目的で、コロナ放電や電子ビームを利用して陰イオンを発生させる空気清浄機が広範に利用されている。また、電気石の微粉末を樹脂繊維のフィルターに混入させ、このフィルターに空気を通過させて陰イオンを室内に供給し、空気環境を改善するようにしている。
しかし、この方法では、陰イオンの発生量が少なくて充分な効果を期待することができないし、また陰イオンを発生させるために電気的に駆動する装置が必要であり、しかもこの装置を長期間にわたって継続的に作動させたり、保守、点検する必要がある。また、コロナ放電を利用する機器を使用すると、陰イオンばかりでなく窒素酸化物、オゾン、活性酸素などのガスが同時に発生するので、人体に悪影響を与えることがある。
【0004】
また特開平10−147887号公報には、希土類元素イオンと多価のオキソアニオンで形成される無機重合体をマトリックスとし、クロム化合物及び/又は含クロム化合物コロイド粒子を含有する塗料からなる耐食性被覆層を金属板の表面に形成する技術が掲げられている。
しかし、上記従来の塗料は、陰イオンを発生する希土類元素イオンを使用しているが、耐クロム溶出性に優れたクロメート処理を目的とするものであって、陰イオンの発生を目的とするものではない。
【0005】
更に、特開平9−313626号公報には、電気石粉末と遠赤外線発生粉末と1.7μm波動エネルギー発生物質の粉末とを一定の割合で混合させてなる遠赤外線及び陰イオン発生材が提案されている。
しかし、前記陰イオン発生材であっても、充分な量の陰イオンを発生させることができない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように充分な量の陰イオンを発生できる材料、手法については有効なものが知られていなかった。
そこで、本発明者らは、鋭意研究の末、充分な量の陰イオンを発生できる塗膜を形成する塗料を開発した。
さらに、本発明者らはこの塗料を用いて、より効率良く、多量の陰イオンを発生させることを目的として検討を進め、木毛セメント板の軽量、断熱等の物性を損なうことなく、多量の陰イオンを効率よく発生できるという機能を付与させ、この木毛セメント板から大気中に発生させて住空間における空気雰囲気を清浄化させ、人間の生活環境を改善できることを見出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、かさ比重0.7以下の木毛セメント板の表層、若しくは前記木毛セメント板と同等の表面性状を有する木片、木繊維、竹毛等を含有するセメント板、表面性状(表面粗さ)が凹凸状又は多孔質状の非平滑面である下地材、化粧その他の目的で表面にエンボス加工が施された天井又は壁用の化粧ボードから選ばれる建築用板の表層に陰イオンを発生する塗料を凹凸若しくは表面性状に追従して定着させたことを特徴とする建築用内装板材に関するものである。
即ち、前記目的を達成するために、本発明者らは、建築用内装材の中でも特に表面積が大きなかさ比重0.7以下の木毛セメント板に着目し、この木毛セメント板の表層に、陰イオンを発生する塗料を定着させることにより、この表面積の大きな定着部分から多量の陰イオンを効率良く発生し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する塗料は、既に平成11年11月26日付けに特許出願(特願平11−336430号)した陰イオン発生塗料であり、電気伝導性を有する塗料成分と、陰イオンを発生する鉱物の微粉末とを含有してなる。
【0009】
本発明において使用する塗料中の塗料成分としては、導電性物質を添加して電気伝導性を付与することがその塗料の本来の目的を著しく逸脱する絶縁塗料、電着塗料を除いたあらゆる種類の塗料を使用することができ、油性塗料、水性塗料、酒精塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料など広範に例示することができる。その内で、特に水性塗料の乳化重合塗料の1種であるアクリル酸エステル共重合エマルジョン塗料が建築物の内外装塗料として最も一般的に使用されているから、有効に使用することができる。
【0010】
また、塗料成分に電気伝導性をもたらせるために使用する導電性物質としては、銀微粉末、銅微粉末、その他の導電性金属微粉末、炭素微粉末、炭素繊維微粉末、チタン酸カリウムのウィスカーなどを例示することができ、これらの組成物の1種又は2種以上を選択して利用することができる。
【0011】
前記導電性物質を塗料成分に添加する量は、導電性物質の種類によって相違するが、塗料成分100重量部に対し導電性物質5〜20重量部が効果的である。そして、前記導電性物質を塗料成分に添加することにより、塗膜とした場合の表面固有抵抗を、105〜108Ωcmの範囲にして適度の電気伝導性をもたらせると、塗料成分中に添加されている陰イオン発生鉱物から多量の陰イオンを発生することができる。
【0012】
また、陰イオンを発生する鉱物としては、電気石及び/又はガーネット、若しくはバリウム、ジルコニウム、シリカ、ストロンチウム、カルシウム、燐、硫黄、塩素、希土類元素等を含む鉱物のいずれか1種又は2種以上であり、希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジムなどを例示することができる。
【0013】
前記陰イオンを発生する鉱物の添加量は、塗料成分100重量部に対し、鉱物を3〜30重量部添加するのが最適である。また、前記鉱物の粒度としては、平均粒度として10μm以下が望ましいが、平均粒度が5mm以下程度でも使用可能である。
【0014】
前記した構成の塗料によって塗膜を形成すると、陰イオン発生鉱物は自発分極している極性結晶体であり、結晶の両端にプラス極、マイナス極が自発的に生じて電位が永久に保存されるので、プラス極からマイナス極へ常時微弱な電流が流れている。
そして、結晶粒子の周囲塗膜の表面固有抵抗が大きくて電気伝導度が低いと、帯電性が大きくなって微弱電流の電流値が低くなるために、陰イオンの発生が抑えられる。また、結晶粒子の周囲塗膜の表面固有抵抗が小さくて電気伝導度が高いと、隣接する結晶粒子間での電位が中和されて陰イオンの発生が抑えられる。したがって、塗膜状態において、鉱物の結晶粒子の周囲物質の表面固有抵抗が105〜108Ωcmの範囲であると、適度の電気伝導性を有するので、塗膜表面における陰イオンの発生を高いレベルで維持することが可能となる。
【0015】
しかし、陰イオンの発生量は塗膜の表面積に比例するので、前記塗料によって平滑な塗膜を形成したのでは、特に容積が大きな内装空間では、充分な環境改善効果が得られない。
これに対し、本発明では表面積の大きなかさ比重0.7以下の木毛セメント板の内装側の表層に、前記塗料を定着させるので、塗料は表層の凹凸に追従して定着し、また一部の塗料は表層から微細空隙内に浸入して定着し、表面積の大きな定着部分(有効表面積)を形成し、平滑な塗膜を形成した場合に比べて陰イオンの発生量が飛躍的に増大するものとなる。
【0016】
尚、本発明において、前記木毛セメント板のかさ比重が0.7を越えると、木毛に対するセメントの割合が増加するため、表面性状(表面粗さ)が平滑に近づき、かさ比重が0.8以上になるとほとんど平滑面となり、表面積の大きな定着部分が得られず、そのため陰イオン発生量もそれほぼ増加しないものとなる。
また、本発明において、前記塗料を定着させる対象とはかさ比重が0.7以下の木毛セメント板に限定するものでなく、これと同等の表面性状(表面粗さ)を有する建築用板でも良く、例えば積層タイプの木毛セメント板にあっては表層の表面性状(表面粗さ)が前記かさ比重が0.7以下の木毛セメント板と同等であれば、結果的にかさ比重が0.7以上であっても良い。さらに、材質についても前記木毛ばかりでなく、木片、木繊維、竹毛等を含有するセメント板であって、表面性状(表面粗さ)が凹凸状、多孔質状等の非平滑面である建築用板材(下地材)であっても良い。或いは化粧、その他の目的で表面にエンボス加工が施された天井、壁等の化粧ボード等であっても良い。このように前記かさ比重は木毛セメント板に限定する条件であって、本発明に適用される対象の表面性状(表面粗さ)を木毛セメント板にて示したものであり、対象の材質や構造を限定するものではない。何れの対象においても、前記塗料の濃度や粘度、塗布量(定着量)、定着方法等によって表層の凹凸への追従度合などが異なるが、前記塗料を定着させて得られる定着部分の表面積が平滑面と比べて150%以上となるような表面性状(表面粗さ)を有する建築用板を選定するか、或いはエンボス加工等を施すことが望ましい。
【0017】
また、本発明において、前記塗料を前記木毛セメント板、或いはその他の建築用板材や化粧ボード等の表層に定着させる方法としては、ロールコーターによる塗布、リンガーロールによる塗布、バーコーターによる塗布、スプレーによる吹き付け塗布、刷毛塗りなど公知の塗料の塗布方法並びに含浸方法を利用することができ、また表面性状(表面粗さ)によっては塗膜厚においても通常の塗料と同様でよい場合もあるし、数μm以下が望ましい場合もある。但し、過剰量の塗布並びに含浸は、前記木毛セメント板等の表層の凹凸や微細空隙を充満させてしまい、その場合、表面積の増加が見込めないので、適宜に塗料の粘度及び濃度を調整して塗布又は含浸させて適量を定着させればよい。
【0018】
【実施例】
以下に、試験に用いた塗料及び被着体を示す。
【0019】
[塗料]
・ アクリル酸エステルの共重合エマルジョンを主成分とする水性塗料(元旦フューテック株式会社製フュアコートFX)に、チタン酸カリウムを主成分とする導電性ウィスカー(大塚化学株式会社製デントールWK)を、塗料100重量部に対し導電性ウィスカーを10重量部添加すると共に、イオン発生鉱物(ランタン族希土類元素を含む粘土鉱物)を3重量部添加して充分に攪拌混合して作製した。
・ イオン発生鉱物を30重量部添加した以外は前記と同様に作製した。
・ また、それぞれの塗料を吹き付け塗装する際に希釈した塗料も作製した。
【0020】
[被着体]
・ 市販の平滑な壁紙を用いた。
・ 木毛セメント板として元旦ビューティ工業株式会社社製元旦ボード40mm
を用いた。
【0021】
[試験体の作製]
前記塗料を、前記被着体に、ローラー塗り、又はエアレススプレーによる吹き付けにて塗布して試験体とした。尚、市販の平滑な壁紙に対するエアレススプレーによる塗布量は1m2当たり200g/m2であった。
尚、塗料を全く塗布しないものも試験体に加えた。
【0022】
[評価方法]
陰イオンは壁(塗装面)から1cm離れた所で、ユニバーサル企画社製イオン測定器IC−1000にて測定した。また、各測定値の平均を求め、その平均値から陰イオンが発生した量(測定量)を求め、さらに塗料を全く塗布しないもの(室内の空気中に存在する陰イオンが測定される)に比べて陰イオンがどの程度増加したか(増加量)を求めた。
【0023】
[試験結果]
被着体が市販の平滑な壁紙である場合には、190個の陰イオンの増加発生量があった。
これに対し、被着体が木毛セメント板(元旦ボード)である場合には、300〜500個の陰イオンの増加発生量があった。
さらに、イオン発生鉱物を30重量部添加した塗料では、3重量部添加した塗料に比べて陰イオンの増加発生量が大きかった。
【0024】
前記塗料に代えて、アクリル酸の共重合エマルジョンを主成分とする水性塗料(元旦フューテック株式会社製フュアコートS)に電導材として粉末状炭素繊維(東レ株式会社製トスカ)を、水性塗料100重量部に対し10重量部添加すると共に、トルマリンとランタン族希土類元素を含有する粘土系鉱物を8対2の割合で混合した陰イオン発生鉱物を10重量部添加したものを用いても、ほぼ同様な結果が得られた。
また、上記粉末状炭素繊維の代わりに、銀微粉末、銅微粉末を使用して添加量を塗料100重量部に対し15重量部にしても同様の効果を得られた。
更に、トルマリンの代わりにガーネットを使用する場合に、陰イオン発生材の添加量を1.2倍程度にすることで同様の効果を得られた。
【0025】
【発明の効果】
以上要するに、本発明の建築用内装板材は、かさ比重0.7以下の木毛セメント板の表層、若しくは前記木毛セメント板と同等の表面性状(表面粗さ)を有する建築用板の表層に陰イオンを発生する塗料を定着させたので、大きな表面積を有する定着部分から多量の陰イオンを効率良く恒常的に発生させることができ、平滑な塗膜を形成する場合に比べて住空間における空気雰囲気を清浄化させる効果や人間の生活環境を改善する効果も著しく向上させることができる。
Claims (4)
- かさ比重0.7以下の木毛セメント板の表層、若しくは前記木毛セメント板と同等の表面性状を有する木片、木繊維、竹毛等を含有するセメント板、表面性状(表面粗さ)が凹凸状又は多孔質状の非平滑面である下地材、化粧その他の目的で表面にエンボス加工が施された天井又は壁用の化粧ボードから選ばれる建築用板の表層に陰イオンを発生する塗料を凹凸若しくは表面性状に追従して定着させたことを特徴とする建築用内装板材。
- 陰イオンを発生する塗料は、電気伝導性を有する塗料成分と、陰イオンを発生する鉱物の微粉末とを含有することを特徴とする請求項1に記載の建築用内装板材。
- 電気伝導性を有する塗料成分が、アクリル酸エステル共重合エマルジョンに、導電性金属の微粉末、炭素繊維及びチタン酸カリウムから選ばれる導電性物質の1種又は2種以上を、塗料成分100重量部に対し導電性物質5〜20重量部添加して電気伝導性を有するようにした請求項2に記載の建築用内装板材。
- 陰イオンを発生する鉱物が、電気石及び/又はガーネット、若しくはバリウム、ジルコニウム、シリカ、希土類元素等を含む鉱物のいずれか1種又は2種以上であり、前記塗料成分100重量部に対し前記鉱物を3〜30重量部添加してなる請求項2又は3に記載の建築用内装板材。
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