JP3674054B2 - 蒸発器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、冷媒を循環させる冷凍サイクルで減圧手段の下流に設けられる蒸発器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の蒸発器は、例えば自動車用空気調和装置などに利用されており、例えば、次のようなものが考えられている。即ち、複数積層されたプレートの間に個々に形成され、冷媒の蒸発領域となる複数の冷媒蒸発流路と、上記複数のプレートを貫通して形成され、上記減圧手段から流出した冷媒を上記各冷媒蒸発流路へ導入する入口流路と、上記複数のプレートを貫通して形成され、上記各冷媒蒸発流路から流出した冷媒を送り出す出口流路と、上記プレートの積層方向両側に配設され、上記入口流路または上記出口流路の一端または両端を封止するエンドプレートと、を備えたものがそれである。
【0003】
この種の蒸発器では、減圧手段から流出した冷媒を入口流路を介して冷媒蒸発流路へ導入し、その冷媒蒸発流路にて冷媒を蒸発(気化)させた後、出口流路を介して送り出すことができる。すると、冷媒が蒸発する際に室内空気との間で熱交換が行われ、室内空気を冷却することができる。
【0004】
また、近年、上記構成に加えて、更に、上記入口流路の冷媒と上記出口流路の冷媒とを熱交換させる熱交換部と、上記熱交換された上記入口流路の冷媒を、更に減圧した後上記各冷媒蒸発流路へ導入する第2減圧手段と、を備えたいわゆるα型の蒸発器も考えられている。このような蒸発器では、減圧手段で冷媒を所定圧(以下中間圧という)に減圧した後、熱交換部にてその冷媒を冷却し、更に、第2減圧手段にて減圧した後、その冷媒を蒸発させることができる。このように、冷媒の減圧を2段階にして、両減圧過程の間に冷却を行うことによって、一層熱交換効率を向上させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この種の蒸発器では、次のように冷媒の圧力が高くなると充分な強度が保持できなくなる可能性がある。一般にこの種の蒸発器では、上記各プレートおよびエンドプレートをろう付けなどによって接着している。この場合、隣接するプレート同士は冷媒蒸発流路の両側などで接着し合って強固に接着される。
【0006】
しかしながら、入口流路,出口流路は各プレートを貫通して形成されている。従って、エンドプレートの入口流路または出口流路を封止している部分には対向して配設されるプレートなどがない。しかも、入口流路および出口流路は比較的広い断面積を有している。このため、冷媒の圧力が高いとエンドプレートのこの部分に歪などが加わり、ろう付けなどが剥がれ易くなる可能性がある。
【0007】
特に、前述のα型の蒸発器では、中間圧の冷媒が導入されるためエンドプレートに印加される圧力が高く、一層その可能性が高い。このため、余り中間圧を高くすることができず、充分に熱交換効率を向上させることもできない。
そこで、本発明は、冷媒の圧力を高くしても充分な強度を保持することのできる蒸発器を提供することを目的としてなされた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、
冷媒を循環させる冷凍サイクルで減圧手段の下流に設けられる蒸発器において、
複数積層された蒸発部プレートの間に個々に形成され、冷媒の蒸発領域となる複数の冷媒蒸発流路と、
複数積層された熱交換部プレートの間に、入口冷媒流路と出口冷媒流路とを個々に形成してなり、上記入口冷媒流路の冷媒と上記出口冷媒流路の冷媒とを熱交換させる熱交換部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記減圧手段から流出した冷媒を上記入口冷媒流路へ導入する下入口冷媒タンク部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記入口冷媒流路から流出した冷媒を送り出す上入口冷媒タンク部と、
上記複数の蒸発部プレートを貫通して形成され、上記上入口冷媒タンクから流出した冷媒が導入される入口タンク部と、
上記入口タンク部の冷媒を、更に減圧した後上記各冷媒蒸発流路へ導入する第2減圧手段と、
上記複数の蒸発部プレートを貫通して形成され、上記各冷媒蒸発流路から流出した冷媒を送り出す出口タンク部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記出口タンク部から流出した冷媒を上記出口冷媒流路へ導入する上出口冷媒タンク部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記出口冷媒流路から流出した冷媒を送り出す下出口冷媒タンク部と、
上記熱交換部プレートの積層方向両側に配設され、一方は上記上入口冷媒タンク部,上記下入口冷媒タンク部,上記下出口冷媒タンク部,及び上記上出口冷媒タンク部の一端を封止し、他方は前記蒸発部プレートに積層される一対のエンドプレートと、
上記一方のエンドプレートの、上記下入口冷媒タンク部および上記下出口冷媒タンク部の一端を封止する部分に設けられたジョイントブロックと、
上記一方のエンドプレートの上記上出口冷媒タンク部の封止部分にのみ立設され、該エンドプレートを補強する補強用リブと、
を備えたことを特徴とする蒸発器を要旨としている。
【0010】
更に、請求項2記載の発明は、
上記補強用リブが、上記エンドプレート上の閉曲線に沿って立設されたことを特徴とする請求項1記載の蒸発器を要旨としている。
【0011】
【作用】
このように構成された請求項1記載の発明では、上入口冷媒タンク部,下入口冷媒タンク部,下出口冷媒タンク部,及び上出口冷媒タンク部の一端を封止するエンドプレートの、上記出口冷媒タンク部を封止している部分のみを補強用リブによって補強している。このため、冷媒の圧力が高くなってもこの部分に歪などが加わるのが防止され、この部分近傍でろう付けが剥がれたりすることが良好に防止される。従って、冷媒の圧力を高くしても充分な強度を保持可能である。
【0012】
しかも、本発明は、いわゆるα型の蒸発器に適用されたものである。前述のように、α型の蒸発器では冷媒の圧力が高くなる可能性が高いが、上記構成を採用したことによって冷媒の圧力を高くしても充分な強度を保持可能である。また、このため中間圧を一層高くすることも可能となる。
【0013】
更に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明の構成に加えて、更に、補強用リブをエンドプレート上の閉曲線に沿って立設している。このため、補強用リブは、エンドプレートに加わるあらゆる方向の曲げ応力に対してエンドプレートを補強する。従って、蒸発器の強度が一層確実に保持される。
【0014】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面と共に説明する。図3,図4は第1実施例の蒸発器1の外観を表すもので、図3はその平面図、図4は正面図である。また、図2は蒸発器1の模式図である。
【0015】
蒸発器1は、自動車用冷凍サイクルに用いられるもので、減圧手段としての膨張弁100(図2)の下流側に設けられる。蒸発器1は、冷凍サイクルの配管に接続され膨張弁100から流出した冷媒の導入および気化後の冷媒を蒸発器1の外に送出するための接続部となるジョイントブロック10と、蒸発器1の入口側と出口側との冷媒間で熱交換(後述する)させる熱交換部20と、冷媒と室内空気とを熱交換させる冷媒蒸発部50とからなる。
【0016】
ジョイントブロック10は、膨張弁100から流出した二相状態の冷媒の入口となる流入口11と、気化後の冷媒を送り出す流出口12とが設けられている。熱交換部20は、図5に示す板状のプレート21をろう付けにより複数積層し、各プレート21の間に冷媒を流すように構成される。図6は図5のA−A線あるいはC−C線断面図であり、図7は図5のB−B線断面図である。このプレート21は、積層したときに冷媒の流路が形成されるように平板に凹凸を形成したものであり上下対称である。プレート21の中央には、縦方向に複数の溝22が形成される。従って、プレート21の裏面では、この溝22が形成されていない部位で図7に示すように複数の溝23が形成されることとなる。プレート21の下部の一方には、凹面部24が形成され、この凹面部24に、ジョイントブロック10の流入口11を介して送られてきた冷媒(以下、入口冷媒という)を流入させるための円孔25が穿設されている。一方、プレート21下部の他方には、凸面部26が形成され、この凸面部26に、後述する出口冷媒(冷媒蒸発部50から送られてきた冷媒)をジョイントブロック10の流出口12に送る横長の円孔27が穿設されている。
【0017】
同様に、プレート21の上部には、凹面部28および凸面部29が形成され、それぞれ円孔25,27と同一形状の円孔30,31が穿設されている。なお、図6において、括弧を付した符号は、図5のA−A線での各部の符号を表す。
このプレート21の積層状態の断面を図8,図9に示す。図8は図5A−A線での積層状態断面図であり、図9は図5B−B線での積層状態断面図である。なお、C−C線での積層状態も、図8とほぼ同一である(詳しくは、後述の図12参照)。図示するように、熱交換部20は、両側のエンドプレート32,33間に、プレート21を互いに表面と裏面とを向かい合わせて積層して形成される。冷媒蒸発部50に面するエンドプレート32には、プレート21の円孔30,31と向かい合う位置に、それらと同一形状の円孔34,35が穿設されている。また、ジョイントブロック10に面するエンドプレート33には、プレート21の円孔25,27と向かい合う位置に、それらと同一形状の円孔36,37が穿設され(図12)、円孔30,31と向かい合う位置に、検査用バルブ38,補強用リブ39が設けられている。
【0018】
ここで、検査用バルブ38は、エンドプレート33を部分的に厚肉にして形成されたネジ穴38aに六角ボルト38bを螺合してなる周知のものである。この検査用バルブ38は、製造後にネジ穴38aより治具を挿入し、内部の圧力を検査した後六角ボルト38bを螺合して封止される。また、補強用リブ39の構成については後に詳述する。
【0019】
このように積層することで、図8に示すように、熱交換部20の上部には、円孔30を穿設した凹面部28により空洞部40(以下、上入口冷媒タンク部40という)と、円孔31を穿設した凸面部29により空洞部41(以下、上出口冷媒タンク部41という)とが形成される。同様に、後述の図12に示すように、熱交換部20の下部には、円孔25を穿設した凹面部24により空洞部42(以下、下入口冷媒タンク部42という)と、円孔27を穿設した凸面部26により空洞部43(以下、下出口冷媒タンク部43という)とが形成される。また、図9に示すように、熱交換部20の中央には、溝22により上入口冷媒タンク部40と下入口冷媒タンク部42とを結ぶ複数の流路44(以下、入口冷媒流路44という)と、溝23により上出口冷媒タンク部41と下出口冷媒タンク部43とを結ぶ複数の流路45(以下、出口冷媒流路45という)とが形成される。
【0020】
ここで、冷媒の流れについて、図10,図11,図12に基づいて説明する。図10は、図4のD−E線矢視図、図11はD−F線矢視図、図12はD−G線矢視図である。ジョイントブロック10の流入口11から流入した冷媒(入口冷媒)は、図12の矢印aに示すように、下入口冷媒タンク部42に送られ、図11に示す各プレート21間に形成された複数の入口冷媒流路44に分配されて流れ込み、上方に送られる。そして、各入口冷媒流路44を流れる入口冷媒は、図10の矢印bに示すように、上入口冷媒タンク部40に流れ込み合流して冷媒蒸発部50に送られる。冷媒蒸発部50での冷媒の流れについては後述する。
【0021】
冷媒蒸発部50で一部気化された冷媒(出口冷媒)は、図10の矢印cに示すように、熱交換部20の上出口冷媒タンク部41に送られ、図11に示す各プレート21間に形成された複数の出口冷媒流路45に分配されて流れ込み、ここで完全に気化し、過熱蒸気となって下方に送られる。そして、各出口冷媒流路45を流れる出口冷媒は、図12の矢印dに示すように、下出口冷媒タンク部43に流れ込み合流し、ジョイントブロック10の流出口12から流出し、図2に示す感温筒101を経て圧縮機(図示略)へ送られる。
【0022】
従って、後述するように、入口冷媒とで出口冷媒とが、この熱交換部20で熱交換されることとなる。
冷媒蒸発部50は、室内空気を効率的に冷却するための波板状のコルゲートフィン51(以下、フィン51という)と図13に示すプレート52とをろう付けにより積層したもので、この積層状態の断面を図14(図3のH−H線での断面正面図)、図15(図13,図14のJ−J線での断面平面図)に示す。
【0023】
プレート52は、略長方形の板状で、その上部に略円筒形の入口タンク53と出口タンク54とが形成されている。入口タンク53は、熱交換部20の上入口冷媒タンク部40に整合する位置に設けられ、その中央に円孔55が穿設されており、熱交換部20から送られてきた冷媒が導入される部位となる。出口タンク54は、熱交換部20の上出口冷媒タンク部41に整合する位置に設けられ、その中央に横長の円孔56が穿設されており、熱交換部20の上出口冷媒タンク部41に冷媒を送り出す部位となる。
【0024】
このプレート52は、積層したときにプレート52間に冷媒の流路が形成されるように、外周に対して中央部がくぼんでいる。この中央部である中央凹面部57には、冷媒の伝熱促進のための複数のクロスリブ58と、冷媒を下方に導き更に方向転換して出口タンク54に導く中央隔壁59が凸状に形成されている。この中央隔壁59は、通常は中心にあるが圧力損失を均一にするために冷媒の蒸発による膨張に合わせて斜め方向に形成されていてもよい。
【0025】
入口タンク53と中央凹面部57との間には、両者を結ぶ細い溝59aが形成されている。このため、入口タンク53の冷媒は、この溝59aを通過して中間圧から低圧に減圧され中央凹面部57に流れる。
冷媒蒸発部50は、端面となるエンドプレート61と熱交換部20のエンドプレート32との間で、上述したプレート52を図14,図15に示すように向かい合わせて冷媒の流路を形成し、各プレート52の裏面の間に波板状のフィン51を装着してろう付けにより形成される。このとき、各プレート52に形成された溝59aが向かい合って、冷媒の流路面積を狭くする絞り部60が形成される。また、各フィン51には、冷媒と室内空気との熱交換を促進するための細い溝62が複数形成されている。なお、向かい合わせてろう付けされるプレート52の形状は、左右反対、つまり一方のプレート52に対して他方のプレート52の形状を鏡に映した形状としている。但し、向かい合うクロスリブ58は、互いに交差する方向に形成されている。
【0026】
このようにプレート52を積層したときのプレート52内での冷媒の流れを図13の矢印e,f,gにて示す。熱交換部20から各入口タンク53(以下、各入口タンク53を重ねることで形成された冷媒の溜り部を入口タンク部70という)に送られた冷媒は、分配されて各絞り部60を通過し、中央凹面部57間を下方に向かって流れ(矢印e)、更に下部で方向転換して上方に向い(矢印f)、各出口タンク54(以下、各出口タンク54を重ねることで形成された冷媒の溜り部を出口タンク部71という)に流れ込み(矢印g)、合流して熱交換部20の上出口冷媒タンク部41に送られる。このとき、プレート52の中央凹面部57間では、交差するクロスリブ58により、冷媒が分散され全体に広く行き渡る。なお、図15において81が下方に向かう冷媒の流路となり、82が上方に向かう冷媒の流路となる(以下、この流路81,82、即ち、中央凹面部57間の冷媒の流路を冷媒蒸発流路80と総称する)。この冷媒蒸発流路80を冷媒が流れるときに、冷媒は、フィン51を介して室内空気と熱交換し、一部が蒸発しつつ等温膨張を続ける。
【0027】
次に、以上のように構成された第1実施例の蒸発器での冷媒の状態を図16,図2を用いて説明する。図16は、冷凍サイクル上での冷媒の状態を表すモリエ線図である。
図示しない圧縮機により圧縮された(図中線m部分)高圧の冷媒は、図示しない凝縮器で放熱し(図中線n部分)、気体状冷媒から液体状冷媒へと相変化する。そして、通常の冷凍サイクルでは、膨張弁により、線o上を点Wまで膨張させているため、冷媒は蒸発器の入口で気体と液体との気液二相状態となり、本実施例のような積層型蒸発器は各冷媒蒸発流路80に冷媒が均等に分配されにくい。そこで、本実施例の蒸発器1では、熱交換部20で入口冷媒と出口冷媒(後述するが、絞り部60により入口冷媒よりも低温となっている)を熱交換させることで入口冷媒を冷却し、冷媒を線p上に沿って点Xまで変化させて液相方向へシフトしている。このため、冷媒は完全に液体となり、冷媒蒸発部50の入口タンク部70から各プレート52間の冷媒蒸発流路80に均等に分配される。このとき、冷媒蒸発流路80の入口となる絞り部60により、冷媒は線q上に沿って点Yにまで減圧されて、一層低温化した気液二相状態となり、フィン51を介して室内空気と熱交換され蒸発を開始する(図中線r部分)。冷媒は、その一部が蒸発した状態(点Z1 )、即ち乾き度が1未満で冷媒蒸発部50の出口タンク部71で合流し熱交換部20に送られる。この冷媒(出口冷媒)は、熱交換部20のプレート21間に形成された出口冷媒流路45を通過することで入口冷媒と熱交換される。このため、出口冷媒流路45内で冷媒の乾き度は1以上となって(点Z2 )冷媒は過熱蒸気となり(図中線s1 ,s2 部分)、感温筒101を経て圧縮機へと送られる。
【0028】
即ち、図2に示すように、膨張弁100から送られた気液二相状態の冷媒(入口冷媒)は、入口冷媒流路44を流れるときに出口冷媒流路45を流れる低温の冷媒(出口冷媒)と熱交換して冷却されて、より液相側へシフトし、冷媒蒸発部50の入口タンク部70に送られる。なお、図中において冷媒の液状態部分にハッチングを施す。そして、均一に各冷媒蒸発流路80に流れ込むと共に、絞り部60により減圧されて室内空気と熱交換して一部が気化しつつ等温膨張する。冷媒は気液二相状態のまま、冷媒蒸発部50の出口タンク部71に送られて合流し、熱交換部20の出口冷媒流路45を流れる。このとき、冷媒(出口冷媒)は、入口冷媒流路44を流れる入口冷媒と熱交換して加熱され、すべて乾き度が1以上の過熱蒸気となる。つまり、図16の線pにおける冷媒と線s1 ,s2 における冷媒とを熱交換している。従って、各冷媒蒸発流路80における冷媒を過熱蒸気になるまで熱交換せずに、つまり冷媒のスーパヒートを熱交換部20で行うことで、一定温度を維持することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施例の蒸発器1によれば、熱交換部20および絞り部60を設けたことにより、入口冷媒と出口冷媒とを熱交換して各冷媒蒸発流路80に冷媒を均一に分配することができ、しかも、冷媒蒸発流路80において、過熱蒸気にするのではなく出口冷媒流路45部分ではじめて乾き度が1以上の過熱蒸気に変えている。従って、冷媒蒸発流路80において内面がドライアウトすることを防止でき、熱交換効率を高めることができる。
【0030】
更にこの結果、蒸発器1の熱交換性能が向上し、冷媒の室内空気との熱交換を均一にすることができ、フィンを通過した室内空気の温度を均一かつ十分に低下させることができる。
一方、本実施例のように、入口冷媒と出口冷媒とを熱交換部20にて熱交換し、熱交換後の入口冷媒を更に減圧した後蒸発させるいわゆるα型の蒸発器1では、熱交換部20内の入口冷媒が中間圧(線p部分)に保持され、エンドプレート33に比較的大きな荷重が加わることが知られている。そこで、本実施例ではエンドプレート33を補強用リブ39にて補強している。次に、この補強用リブ39の構成について更に詳しく説明する。
【0031】
図1(A)はエンドプレート33の構成を表す斜視図であり、図1(B)はそのエンドプレート33に設けられた補強用リブ39の構成を表すK−K線断面図である。補強用リブ39は、角の取れた略正方形状に突出した台部39aと、その台部39a上から上下,左右方向の十字状に突出した凸部39bとから構成されている。即ち、台部39aの周囲はエンドプレート33上の閉曲線に沿って立設されているので、エンドプレート33に加わるあらゆる方向の曲げ応力に対してエンドプレート33を補強することができる。また、凸部39bは、エンドプレート33に左右,上下方向に加わる曲げ応力に対して、特に有効にエンドプレート33を補強することができる。
【0032】
このため、エンドプレート33の上出口冷媒タンク部41の一端を封止する部分が良好に補強され、この部分に歪などが加わるのを防止することができる。このため、この部分近傍でろう付が剥がれたりするのを良好に防止することができる。また、エンドプレート33の、上入口冷媒タンク部40の一端を封止する部分には検査用バルブ38が、下入口冷媒タンク部42および下出口冷媒タンク部43の一端を封止する部分にはジョイントブロック10が、それぞれ設けられている。そして、検査用バルブ38およびジョイントブロック10は、エンドプレート33の上記封止部分を補強している。
【0033】
従って、上記実施例では、冷媒の圧力を高くしても充分な強度を保持することができる。また、上記実施例では、入口冷媒が中間圧に保持されるα型の蒸発器1に本発明を適用しているのでこの効果が一層顕著となる。更に、上記実施例では、充分な強度が確保されるので中間圧を高くすることもできる。中間圧を高くすると冷媒の飽和温度が上昇し一層熱交換効率を向上させることができる。
【0034】
なお、プレート21が熱交換部プレートに該当し、プレート52が蒸発部プレートに該当し、更に、絞り部60が第2減圧手段に該当する。
【0037】
また更に、補強用リブの形状としては、前述の補強用リブ39の形状以外にも種々の形状が考えられる。例えば、図17に例示する第2実施例の補強用リブ139のように、エンドプレート133から略正方形状に突出した台部139aの端縁と、その台部139a上から十字状に突出した凸部139bの端部との間に多少間隔が開くように構成してもよい。
【0038】
図18に例示する第3実施例の補強用リブ239のように、エンドプレート233から略正方形状に突出した台部239a上に、十字状にくぼんだ凹部239bを形成してもよい。
図19に例示する第4実施例の補強用リブ339のように、エンドプレート333から略正方形状に突出した台部339a上に、その台部339aと相似形の凸部339bを形成してもよい。
【0039】
更に、図20に例示する第5実施例の補強用リブ439のように、エンドプレート433から略正方形状に突出した台部439a上に、その台部439aと相似形状の凹部439bを形成してもよい。なお、図17〜20において、(A)は斜視図、(B)はそのM−M,L−L,N−N,またはO−O断面図である。
【0040】
これらの場合も上記実施例の補強用リブ39とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。但し、凸部39b,139b,339bを形成する第1,第2,第4実施例に比べて、凹部239b,439bを形成する第3,第5実施例の方が、蒸発器1の外形を小さくしてその収納スペースを節約することができる。また、凸部39b,139b,339bまたは凹部239b,439bの高さまたは深さhと、台部39a,139a,239a,339a,439aの高さHとの大小関係は、H<h,H=h,H>hのいずれに設定してもよく、中間圧の大きさ、蒸発器1の収納スペースなどに応じて適宜設定することができる。
【0041】
更に、台部39a,139a,239a,339a,または439aのみによって補強用リブを構成し、その上に凸部も凹部も形成しなくてもよい。この場合も、エンドプレート33,133,233,333,433を補強することができる。但し、この場合補強用リブの平面部分が大きくなるため、エンドプレート33〜433に対する補強効果が小さくなる。逆に、凸部39b,139b,339bまたは凹部239b,439bをエンドプレート33,133,233,333,433に直接形成して補強用リブとしてもよい。また、上記各実施例では、台部39a,139a,239a,339a,439aをいずれも略正方形に形成しているが、これらを略円形,略六角形など種々の形状に形成することもできる。この場合も、上記各実施例とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の発明では、冷媒の圧力が高くなっても、エンドプレートの入口流路または出口流路を封止している部分に歪などが加わるのを防止することができる。このため、この部分近傍でろう付けが剥がれたりするのを良好に防止することができる。従って、冷媒の圧力を高くしても充分な強度を保持することができる。
【0043】
また、本発明は、冷媒の圧力が高くなる可能性の高いα型の蒸発器に適用されたものである。従って、冷媒の圧力を高くしても充分な強度を保持することができる効果が一層顕著となる。また、このため中間圧を一層高くすることもできる。中間圧を高くすると冷媒の飽和温度が上昇し、更に一層熱交換効率を向上させることができる。
【0044】
更に、請求項2記載の発明では、閉曲線に沿って立設された補強用リブは、エンドプレートに加わるあらゆる方向の曲げ応力に対してエンドプレートを補強することができる。従って、蒸発器の強度を一層確実に保持することができる。このため、中間圧をより一層高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の蒸発器のエンドプレートの構成を表す斜視図,断面図である。
【図2】 その蒸発器の動作を説明する模式図である。
【図3】 その蒸発器の構成を表す平面図である。
【図4】 その蒸発器の構成を表す正面図である。
【図5】 その蒸発器における熱交換部のプレートの構成を表す正面図である。
【図6】 そのプレートの構成を表す図5A−A線断面図である。
【図7】 そのプレートの構成を表す図5B−B線断面図である。
【図8】 そのプレートの図5A−A線での積層状態を表す断面平面図である。
【図9】 そのプレートの図5B−B線での積層状態を表す断面平面図である。
【図10】 第1実施例の蒸発器を図4D−E線から見た矢視図である。
【図11】 その蒸発器を図4D−F線から見た矢視図である。
【図12】 その蒸発器を図4D−G線から見た矢視図である。
【図13】 その蒸発器における冷媒蒸発部のプレートの構成を表す平面図である。
【図14】その冷媒蒸発部の構成を表す図3H−H線での断面正面図である。
【図15】 その冷媒蒸発部の構成を表す図13J−J線での断面平面図である。
【図16】 第1実施例の蒸発器における冷媒の状態を表すモリエ線図である。
【図17】第2実施例の蒸発器の補強用リブの構成を表す斜視図,断面図である。
【図18】第3実施例の蒸発器の補強用リブの構成を表す斜視図,断面図である。
【図19】第4実施例の蒸発器の補強用リブの構成を表す斜視図,断面図である。
【図20】第5実施例の蒸発器の補強用リブの構成を表す斜視図,断面図である。
【符号の説明】
1…蒸発器 20…熱交換部 21…プレート
25,27,30,31,34,35,36,37,55,56…円孔
32,33,61…エンドプレート 39…補強用リブ
40…上入口冷媒タンク部 41…上出口冷媒タンク部
42…下入口冷媒タンク部 43…下出口冷媒タンク部 44…入口冷媒流路
45…出口冷媒流路 50…冷媒蒸発部 52…プレート
60…絞り部 70…入口タンク部 71…出口タンク部
80…冷媒蒸発流路 100…膨張弁
Claims (2)
- 冷媒を循環させる冷凍サイクルで減圧手段の下流に設けられる蒸発器において、
複数積層された蒸発部プレートの間に個々に形成され、冷媒の蒸発領域となる複数の冷媒蒸発流路と、
複数積層された熱交換部プレートの間に、入口冷媒流路と出口冷媒流路とを個々に形成してなり、上記入口冷媒流路の冷媒と上記出口冷媒流路の冷媒とを熱交換させる熱交換部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記減圧手段から流出した冷媒を上記入口冷媒流路へ導入する下入口冷媒タンク部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記入口冷媒流路から流出した冷媒を送り出す上入口冷媒タンク部と、
上記複数の蒸発部プレートを貫通して形成され、上記上入口冷媒タンクから流出した冷媒が導入される入口タンク部と、
上記入口タンク部の冷媒を、更に減圧した後上記各冷媒蒸発流路へ導入する第2減圧手段と、
上記複数の蒸発部プレートを貫通して形成され、上記各冷媒蒸発流路から流出した冷媒を送り出す出口タンク部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記出口タンク部から流出した冷媒を上記出口冷媒流路へ導入する上出口冷媒タンク部と、
上記複数の熱交換部プレートを貫通して形成され、上記出口冷媒流路から流出した冷媒を送り出す下出口冷媒タンク部と、
上記熱交換部プレートの積層方向両側に配設され、一方は上記上入口冷媒タンク部,上記下入口冷媒タンク部,上記下出口冷媒タンク部,及び上記上出口冷媒タンク部の一端を封止し、他方は前記蒸発部プレートに積層される一対のエンドプレートと、
上記一方のエンドプレートの、上記下入口冷媒タンク部および上記下出口冷媒タンク部の一端を封止する部分に設けられたジョイントブロックと、
上記一方のエンドプレートの上記上出口冷媒タンク部の封止部分にのみ立設され、該エンドプレートを補強する補強用リブと、
を備えたことを特徴とする蒸発器。 - 上記補強用リブが、上記エンドプレート上の閉曲線に沿って立設されたことを特徴とする請求項1記載の蒸発器。
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