JP3673946B2 - ねじ転造ダイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ねじ転造ダイスに関して、特に、ねじブランク材に主ねじと該主ねじとピッチが相違する補助ねじとを同時に転造することが可能なねじ転造ダイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
先端部に主ねじと同軸のパイロットが設けられ、該パイロットに主ねじと同一ピッチの補助ねじが形成されたパイロット付ボルトが、従来から知られている。上記パイロット付ボルトでは、母材に形成されたねじ孔と被締結部材に形成されたボルト挿通孔との軸心がずれて、ボルトの軸心とねじ孔の軸心とが一致していない場合であっても、パイロットに形成された補助ねじをねじ孔に係合させてボルトを締付方向へ回転させることにより、ボルトの軸心をねじ孔の軸心に徐々に一致させるようにしてボルトの主ねじをねじ孔に螺合させることができる。また、上記パイロット付ボルトと同様の作用を有するボルトとして、先端部分の外径が先端に向けて小さく形成され、当該先端部分に主ねじと同一ピッチで且つ主ねじと連続するねじが設けられた巻先ねじ等が従来から知られている。これらのボルトは、特にインパクトレンチを用いて締付けるのに適しており、自動車の製造ライン等で多用されている。
【0003】
ところで、一般に、ボルトを製造する場合、高精度で生産性が高く且つ切屑が発生しないことから、材料の可塑性を利用してねじブランク材にねじを転造することが行われ、ねじブランク材にねじを転造するための工具の一例としてねじ転造ダイスがある。ねじ転造平ダイスは一対で構成されており、それぞれの転造面を対向させるようにして転造盤(図示せず)に取付けられる。そして、固定側ねじ転造平ダイスを固定し、可動側ねじ転造平ダイスを上記固定側ねじ転造平ダイスに対して平行往復移動させることにより、ダイス移動方向の一方から対向する転造面間に投入されたねじブランク材にねじが転造されて、製品としてのボルトがダイス移動方向の他方から排出される構造になっている。
【0004】
従来、上記パイロット付ボルト或いは巻先ねじを転造により形成する場合、転造面に主ねじ及び補助ねじと同一のリード角の主ねじ及び補助ねじの像を形成した一体のねじ転造平ダイスを用いて、主ねじと補助ねじとを同時に転造することが行われていた。しかしながら、主ねじと補助ねじとを同時に転造することができるねじは、主ねじのピッチと補助ねじのピッチとが同一ピッチのものに限定されていた。また、補助ねじのピッチを主ねじのピッチよりも大きく設定することで、パイロット付ボルト或いは巻先ねじとしての性能を向上させることができるが、ピッチが相違するねじを同時に転造することは既知の技術では極めて困難で、ピッチが相違するねじを同時に転造する場合、主ねじの転造と補助ねじの転造とを各々独立した工程で行う必要があり、製造コストの増大を余儀なくされていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ねじブランク材にピッチが相違するねじを同時に転造してねじの生産性を最大限に向上させることが可能なねじ転造ダイスを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、対向する一対の転造面を転造方向へ相対移動させて一対の転造面間に投入されるねじブランク材にねじを転造するねじ転造ダイスであって、転造面には、所定のリード角の主ねじ転造尾根部が付設されてねじブランク材の主部に所定ピッチの主ねじを転造する主ねじ転造面と、所定のリード角の補助ねじ転造尾根部が付設されてねじブランク材の補助部に主ねじとピッチが相違する補助ねじを転造する補助ねじ転造面と、が配設されて、補助ねじ尾根部は、主ねじ転造面と補助ねじ転造面との境界を介して主ねじ転造尾根部と連続するように転造方向へ配置されると共に、リード角が、一対の転造面が転造方向へ相対移動してねじブランク材の主部に主ねじが1ピッチ分転造されると同時に、外径が主部より小さいねじブランク材の補助部に所望のリード角の補助ねじが1ピッチ分転造されるように調整されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のねじ転造ダイスにおいて、補助ねじ尾根部のリード角が、tan-1〔(補助ねじのピッチ)/(主ねじの1ピッチ分の転造距離)〕に調整されることを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のねじ転造ダイスにおいて、各ねじ転造ダイスが、主ねじ転造面が付設された主ねじ転造ダイスと、補助ねじ転造面が付設された補助ねじ転造ダイスと、に分割可能に構成されることを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に記載の発明では、一対の転造面を転造方向へ相対移動させてねじブランク材の主部に1ピッチ分の主ねじが転造されることにより、外径が主部より小さいねじブランク材の補助部に主ねじとピッチが相違する所望のリード角の補助ねじが1ピッチ分転造される。
【0010】
請求項2に記載の発明では、補助ねじ尾根部のリード角(補助ねじ尾根部が転造方向となす角度)が、tan-1〔(補助ねじのピッチ)/(主ねじの1ピッチ分の転造距離)〕に調整されるので、一対の転造面を転造方向へ相対移動させてねじブランク材の主部に1ピッチ分の主ねじが転造されることにより、ねじブランク材の補助部には所望のリード角の補助ねじが1ピッチ分転造される。
【0011】
請求項3に記載の発明では、主ねじ転造面或いは補助ねじ転造面のいずれかが消耗した場合、ねじ転造ダイスを主ねじ転造ダイスと補助ねじ転造ダイスとに分割して必要部分のみを交換することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態のねじ転造ダイス及びねじ製造方法を図1乃至図9に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、図3に示すねじブランク材1の主部2にリード角がθmで且つピッチがPmの主ねじ3を転造すると同時に、外径が上記主部2より小さい当該ねじブランク材1の補助部4に上記主ねじ3に連続してリード角がθsで且つピッチがPsの補助ねじ5を転造するねじ転造ダイス及びねじ製造方法を詳細に説明する。図5及び図6に示すのは、転造盤(図示せず)の固定テーブルに取付けられる固定側ねじ転造平ダイス6と、上記固定テーブルに対して平行往復移動可能なラムに取付けられる可動側ねじ転造平ダイス7と、からなる本実施の形態の一対のねじ転造平ダイス6,7である。これらねじ転造平ダイス6,7には、各々の転造面8a,8bに上記ねじブランク材1に転造するねじ形状が付設されており、これら転造面8a,8bは、各ねじ転造平ダイス6,7を転造盤に取付けた状態で各転造面8a,8bが対向して配置されると共に、上記ラムを駆動させることで転造方向(可動側ねじ転造平ダイス7の往復移動方向、図5に示す紙面視左右方向)へ相対移動するように構成されている。
【0013】
上記固定側ねじ転造平ダイス6には、図1に示すように、可動側ねじ転造平ダイス7との対向面に、転造方向へ延出する境界9の一側に主ねじ転造面8aが配設されると共に上記境界9の他側に補助ねじ転造面8bが配設されている。そして、上記主ねじ転造面8aには、主ねじ3の像が型取られた複数の主ねじ転造尾根部10(ねじ形状)が主ねじ3と同一のリード角θmで且つ同一のピッチPmで付設されている。また、上記補助ねじ転造面8bには、補助ねじ5の像が型取られた複数の補助ねじ転造尾根部11(ねじ形状)が、図7に示すように、主ねじ3の1ピッチ分の転造距離Lm(ねじブランク材1の主部2の外周面を展開した場合の、転造された主ねじ3の転造方向への長さ)分の転造方向への変位に対し、ねじブランク材の軸線方向へ補助ねじ5の所望ピッチ(補助部4に形成する補助ねじ5のピッチ、即ち補助部4に形成する補助ねじ5のリード)Ps分転造方向と直交する方向へ変位するような勾配のリード角θrで付設されている。また、上記補助ねじ転造尾根部11は、上記主ねじ転造面8aと補助ねじ転造面8bとの境界9で、主ねじ転造尾根部10と連続するように転造方向へ配置されている。
【0014】
また、図2及び図6に示すように、上記固定側ねじ転造平ダイス6は、上記主ねじ転造面8aと補助ねじ転造面8bとの境界9で、主ねじ転造平ダイス6aと補助ねじ転造平ダイス6bとに分割可能に形成されており、主ねじ転造平ダイス6aと補助ねじ転造平ダイス6bとは、少なくとも2本の位置決めピン(図示せず)で相互に位置決めされ、この位置決めされた状態でボルト12により固定される構造になっている。上記補助ねじ転造平ダイス6bの補助ねじ転造面8bには、当該補助ねじ転造平ダイス6bと主ねじ転造平ダイス6aとの締結面、と補助ねじ転造面8bとの角部に、図3に示すねじブランク材1の主部2と補助部4との間に介在する斜部13に整合させた斜面14が設けられている。そして、補助ねじ転造尾根部11は、上記斜面14上に付設された部分が、主ねじ転造平ダイス6aの主ねじ転造面8aの主ねじ転造尾根部10に連結される構造になっている。なお、上記固定側ねじ転造平ダイス6と対をなす可動側ねじ転造平ダイス7は、固定側ねじ転造平ダイス6と略同一の形状をなすので、その詳細な説明を省く。
【0015】
以下、上記ねじ転造平ダイス6,7を用いてねじ3,5を転造する際の作用を説明する。まず、各ねじ転造平ダイス6,7を、それぞれ転造盤の固定テーブル、ラム(共に図示せず)に取付ける。この状態では、一対のねじ転造平ダイス6,7間で、各主ねじ転造面8a同士及び各補助ねじ転造面8b同士が対向する。そして、ラムを駆動して可動側ねじ転造平ダイス7を転造方向へ所定のストロークで平行往復移動させ、所定のタイミングで、ねじブランク材1を転造方向の一方から一対のねじ転造平ダイス6,7間へ投入する。これにより、ねじブランク材1の主部2に主ねじ3が1ピッチ分転造されて、同時に補助部4に補助ねじ5が1ピッチ分転造され、製品としてのパイロットボルト15(図4参照)が一対のねじ転造平ダイス6,7間の転造方向の他方から排出される。
【0016】
次に、本ねじ転造平ダイス6,7を用いることで、図3に示すねじブランク材1の主部2に主ねじ3を1ピッチ分転造すると同時に、補助部4に補助ねじ5を1ピッチ分転造する際の作用を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、可動側ねじ転造平ダイス7のみが転造方向へ平行往復移動し、可動側ねじ転造平ダイス7の移動に伴いねじブランク材1が軸線回りに回転しながら転造方向へ移動してねじブランク材1に主ねじ3及び補助ねじ5が転造されるが、ここでは、ねじブランク材1に主ねじ3の1ピッチ分と補助ねじ5の1ピッチ分とが同時に転造される際の作用を分かり易く説明するために、ねじブランク材1の軸線を基準(軸線を固定)として、固定側ねじ転造平ダイス6と可動側ねじ転造平ダイス7とが転造方向の相反する方向へ相対移動することで、ねじブランク材1が軸線回りに回転して当該ねじブランク材1に主ねじ3と補助ねじ5とが転造されるものとする。
【0017】
まず、ねじブランク材1の主部2と各ねじ転造平ダイス6,7の主ねじ転造面8aとの間に滑りがなく、且つ各ねじ転造平ダイス6,7が転造方向の相反する方向へ等速度運動する場合、図8に示すように、各ねじ転造平ダイス6,7は、転造方向の相反する方向へVm=πDm´/T(=Lm/T)の速度で移動すると共に、ねじブランク材1は、主部2の外周面が周速度Vmで軸線回りに回転する。ただし、Tは主ねじ3を1ピッチ分転造するのに要する時間(ねじブランク材1が1回転するのに要する時間)、Dm´はねじブランク材1の主部2の外径である。これにより、各ねじ転造平ダイス6,7がねじブランク材1に対して転造方向へLm=πDm´の距離だけ移動し、ねじブランク材1が軸線回りに1回転することでねじブランク材1の主部2にはリード角θmの主ねじ3が1ピッチ分転造される。
【0018】
一方、ねじブランク材1の主部2に主ねじ3を1ピッチ分転造するのに要する時間、即ちねじブランク材1が軸線回りに1回転するのに要する時間をTとすると、補助ねじ5の1ピッチ分の転造を時間Tで行うためのねじブランク材1の補助部4の外周面の周速度は、Vs=πDs´/T(=Ls/T、Ds´<Dm´)となる。ただし、Lsは補助ねじ5の1ピッチ分の転造距離、即ちねじブランク材1の補助部4の外周面を展開した場合の、転造された補助ねじ5の転造方向への長さであり、Ds´はねじブランク材1の補助部4の外径である。従って、各ねじ転造平ダイス6,7の転造方向への移動速度Vmと、ねじブランク材1の補助部4の外周面の周速度Vsと、の間には、Vg=Vm−Vs=π(Dm´−Ds´)/T=(Lm−Ls)/Tの差が生じることとなる。
【0019】
ここで、ねじブランク材1の主部2と各ねじ転造平ダイス6,7の主ねじ転造面8aとの転造圧力と、ねじブランク材1の補助部4と各ねじ転造平ダイス6,7の補助ねじ転造面8bとの転造圧力と、を比較した場合、前者が後者よりも十分大きい値となる。従って、各ねじ転造平ダイス6,7を転造方向の相反する方向へ移動させた場合、図9に示すように、各ねじ転造平ダイス6,7の補助ねじ転造面8bとねじブランク材1の補助部4との間には相対速度Vgの滑りが生じることとなる。即ち、各ねじ転造平ダイス6,7をねじブランク材1の軸線に対して転造方向の相反する方向へ速度Vmで移動させると、各ねじ転造平ダイス6,7の補助ねじ転造面8bとねじブランク材1の補助部4との間には相対速度Vgの滑りが生じて、補助部4の周速度VsがVs=Vm−Vgとなる。言い換えると、各ねじ転造平ダイス6,7をねじブランク材1の軸線に対して転造方向の相反する方向へ移動速度Vmで主ねじ3の1ピッチ分の転造距離Lmだけ移動させると、ねじブランク材1の補助部4には、各ねじ転造平ダイス6,7の補助ねじ転造面8bと当該ねじブランク材1の補助部4との間に相対速度Vgの滑りが生じて、1ピッチ分の補助ねじ5が転造されることとなる。
【0020】
次に、各ねじ転造平ダイス6,7の補助ねじ転造面8bとねじブランク材1の補助部4との間に滑りが生じることによる、補助部4に形成される補助ねじ5への作用を説明する。前述のように、各ねじ転造平ダイス6,7をねじブランク材1の軸線に対して転造方向の相反する方向へ移動速度Vmで主ねじ3の1ピッチ分の転造距離Lmだけ移動させると、ねじブランク材1の補助部4には、1ピッチ分の補助ねじ5が転造される。この時、当該ねじブランク材1の補助部4と各ねじ転造平ダイス6,7の補助ねじ転造面8bとの間に相対速度Vgの滑りが生じて、ねじブランク材1の補助部4に食い込んだ補助ねじ転造面8bの補助ねじ転造尾根部11が、順次補助ねじ5を転造方向へ速度Vgで送るようにしてねじブランク材1の補助部4(補助ねじ5)を塑性変形させる。従って、図7に示すように、各ねじ転造平ダイス6,7が転造方向の相反する方向へ移動速度Vmで転造距離Lmだけ移動してねじブランク材1の主部2にピッチPmの主ねじ3が1ピッチ分転造されると、ねじブランク材1の補助部4にはリード角θsの補助ねじ5が1ピッチPs分形成されることとなる。
【0021】
この実施の形態では以下の効果を奏する。
各ねじ転造平ダイス6,7の各転造面の転造方向両側に主ねじ転造面8aと補助ねじ転造面8bとを配設して、主ねじ転造面8aに、主ねじ3の像が型取られた複数の主ねじ転造尾根部10を主ねじ3と同一のリード角θm且つ同一のピッチPmで付設すると共に、補助ねじ転造面8bに、補助ねじ5の像が型取られて主ねじ転造面と補助ねじ転造面との境界で主ねじ転造尾根部と連続するように転造方向へ配置される複数の補助ねじ転造尾根部11を、θr=tan-1〔(補助ねじのピッチ)/(主ねじの1ピッチ分の転造距離)〕のリード角で付設した。
従って、一対のねじ転造平ダイス6,7を転造方向へ相対移動させてねじブランク材1の主部2に主ねじ3が1ピッチ分転造されると、外径が主ねじ3より小さいねじブランク材1の補助部4には、当該補助部4と各ねじ転造平ダイス6,7との間に転造方向への滑りが生じて、主ねじ3に連続する所望のリード角θsの補助ねじ5が1ピッチ分だけ転造される。
【0022】
これにより、従来1本のねじブランク材1にピッチが相違するねじ3,5を転造により形成する場合、各ねじ(本実施の形態では主ねじ3と補助ねじ5)の転造距離が異なるため成形が別工程で行われていたが、これを同時に転造することが可能となり、異径部にピッチが相違するねじが付設されるボルト15(本実施の形態ではパイロットボルト15)の生産性を最大限に向上させることができる。
また、各ねじ転造平ダイス6,7を、主ねじ転造面8aが付設された主ねじ転造平ダイス6aと補助ねじ転造面8bが付設された補助ねじ転造平ダイス6bとに分割可能に形成したので、主ねじ転造面8a或いは補助ねじ転造面8bのいずれかが先に消耗した場合、主ねじ転造平ダイス6aと補助ねじ転造平ダイス6bとの一方のみを交換するだけで済み、ダイスの維持費が安価となる。
【0023】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
図10及び図11に示すように、補助ねじ転造面8bを主ねじ転造面8aに対して一様に傾斜させてもよい。この場合、図12に示す先端がテーパ状に形成されたねじブランク材1に、図13に示すように、主ねじ3と該主ねじ3とピッチが相違するテーパ状の補助ねじ5とを同時に転造して巻先ねじ15を形成することができる。さらにこの場合、一対のねじ転造ダイス6,7を転造方向へ相対移動させた際の、ねじブランク材1のテーパ部の外周面上の周速度の差異を考慮して補助ねじ転造尾根部11を曲線で形成してもよい。更にこの場合、主ねじ転造面8aと補助ねじ転造面8bとの境界で、補助ねじ転造尾根部11を主ねじ転造尾根部10に整合させることで、主ねじ3と補助ねじ5とを連続させることができる。
【0024】
また、図14及び図15に示すように、主ねじ転造尾根部10と補助ねじ転造尾根部11とを必ずしも連続させる必要はない。例えば、図14及び図15に示すように、主ねじ転造面8aと補助ねじ転造面8bとの間に転造方向へ延出する平坦部17を設けて一対のねじ転造平ダイス6,7を構成してもよい。この場合、図16及び図17に示すように、主部2と補助部4との間に平坦部16が形成されたねじブランク材1を用いることで、主ねじ3と補助ねじ5との間に平坦部16を介在させたボルト15の、主ねじ3と該主ねじ3とピッチが相違する補助ねじ5とを同時に転造することが可能となる。なお、図17に示す平坦部16を有したボルト15は、図16に示す形状のねじブランク材1に、図10及び図11に示す一対のねじ転造ダイス6,7を用いて各ねじ3,5を転造することでも得られる。
【0025】
また、本ねじ転造ダイスにより同時に転造するねじはピッチが相違していれば同一径のねじてあってもよい。例えば、図20に示すように、両側に、同一径(Dm=Ds)で且つ互いにピッチが相違する(Pm<Ps)主ねじ3と補助ねじ5とが形成されるスタッドボルト18に各ねじ3,5を同時に転造する場合、図18及び図19に示す一対のねじ転造ダイス6,7を転造方向へ相対移動させ、該一対のねじ転造ダイス6,7の相対移動に伴い、主ねじ転造面8aとスタッドボルト18の主部2と、及び補助ねじ転造面8bとスタッドボルト18の補助部4と、を同時に転造方向へ僅かに滑らせることにより、同一径で且つピッチが相違するねじ3,5を同時に転造することができる。この場合、主ねじ転造面8aに付設する主ねじ転造尾根部10のリード角と、補助ねじ転造面8bに付設する補助ねじ転造尾根部11のリード角とは適宜調節すればよい。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ねじブランク材にピッチが相違するねじを同時に転造してねじの生産性を最大限に向上させることが可能なねじ転造ダイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、固定側(可動側)ねじ転造平ダイスの転造面を示す図である。
【図2】 本実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図1における左側面図である。
【図3】 パイロットボルトのねじブランク材の説明図である。
【図4】 図3に示すねじブランク材から得られるパイロットボルトの説明図である。
【図5】 本実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、一対のねじ転造平ダイスでねじブランク材にねじを転造している状態を示す図である。
【図6】 本実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図5を紙面左側方から見た図である。
【図7】 本実施の形態のねじ転造ダイスの補助ねじ転造尾根部のリード角θrを説明するための図で、横軸はねじの転造距離、縦軸はねじのピッチ(リード)である。
【図8】 本実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図6におけるA−A断面図である。
【図9】 本実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図6におけるB−B断面図である。
【図10】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、固定側(可動側)ねじ転造平ダイスの正面図である。
【図11】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図10における左側面図である。
【図12】 補助部がテーパ状に形成されたねじブランク材の説明図である。
【図13】 図12におけるねじブランク材から得られるパイロットボルトの説明図である。
【図14】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、主ねじ転造尾根部と補助ねじ転造尾根部とが連続しない場合のねじ転造平ダイスの転造面を示す図である。
【図15】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図14における左側面図である。
【図16】 主部と補助部との間に平坦部が介在するねじブランク材の説明図である。
【図17】 図16におけるねじブランク材から得られるパイロットボルトの説明図である。
【図18】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、両側に同一径で且つピッチが異なるねじを有するスタッドボルトのねじを同時に転造するためのねじ転造平ダイスの転造面を示す図である。
【図19】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図18における左側面図である。
【図20】 他の実施の形態のねじ転造ダイスの説明図で、特に、図18及び図19のねじ転造ダイスにより、両側に同一径で且つピッチが相違するねじが形成(転造)されたスタッドボルトを示す図である。
【符号の説明】
1 ねじブランク材、2 主部、3 主ねじ、4 補助部、5 補助ねじ、6 固定側ねじ転造平ダイス(ねじ転造ダイス)、7 可動側ねじ転造平ダイス(ねじ転造ダイス)、8a 主ねじ転造面、8b 補助ねじ転造面、10 主ねじ転造尾根部、11 補助ねじ転造尾根部

Claims (3)

  1. 対向する一対の転造面を転造方向へ相対移動させて前記一対の転造面間に投入されるねじブランク材にねじを転造するねじ転造ダイスであって、
    前記転造面には、所定のリード角の主ねじ転造尾根部が付設されて前記ねじブランク材の主部に所定ピッチの主ねじを転造する主ねじ転造面と、所定のリード角の補助ねじ転造尾根部が付設されて前記ねじブランク材の補助部に前記主ねじとピッチが相違する補助ねじを転造する補助ねじ転造面と、が配設されて、
    前記補助ねじ尾根部は、前記主ねじ転造面と前記補助ねじ転造面との境界を介して前記主ねじ転造尾根部と連続するように転造方向へ配置されると共に、リード角が、前記一対の転造面が転造方向へ相対移動して前記ねじブランク材の主部に前記主ねじが1ピッチ分転造されると同時に、外径が前記主部より小さい前記ねじブランク材の補助部に所望のリード角の前記補助ねじが1ピッチ分転造されるように調整されることを特徴とするねじ転造ダイス。
  2. 前記補助ねじ尾根部のリード角が、tan-1〔(補助ねじのピッチ)/(主ねじの1ピッチ分の転造距離)〕に調整されることを特徴とする請求項1に記載のねじ転造ダイス。
  3. 前記各ねじ転造ダイスが、前記主ねじ転造面が付設された主ねじ転造ダイスと、前記補助ねじ転造面が付設された補助ねじ転造ダイスと、に分割可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のねじ転造ダイス。
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