JP3672268B2 - 測定用センサ及び測定用センサを用いる拡散反射スペクトル測定方法並びに乳剤製造装置 - Google Patents

測定用センサ及び測定用センサを用いる拡散反射スペクトル測定方法並びに乳剤製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高感度で高い性能安定性を有する液状物質の製造と、製造安定性を高めるための測定用センサ及び測定用センサを用いる拡散反射スペクトル測定方法並びに写真乳剤を製造する乳剤製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、顔料、感光材料に用いられる乳剤中のハロゲン化銀粒子等は、液状の分散液として取り扱われることが多い。その光の吸収挙動、反射、散乱挙動は、その使用目的上非常に重要である。そのため、液状の分散液の光吸収スペクトル、塗布された状態での光吸収スペクトルの測定が、一般的に行われている。分散液のスペクトルを測定することは重要であり、各種の方法が提案されている。
【0003】
ところで、分散液の特徴として、光の拡散性が非常に強いので透過光の分光吸収を測定するよりも、拡散反射光のスペクトルを測定する方がより実用的である。拡散反射光のスペクトル測定法は一般的に積分球を有する分光光度計を用いて行われる。例えば、化学同人社発行の第1版の「機器分析の手引き(増補改訂版)」;第1集頁108には、その方法が明示されている。しかし、この方法は液状サンプルを小量分取する必要があり、化学反応により、スペクトルが短時間で変化する場合には分取時間中にそのスペクトルが変化してしまい、正確なスペクトル把握できなかった。
【0004】
このため、化学反応に伴うスペクトル変化を、高い分解能で測定するために流通測定法が用いられることがある。この方法は、やはり、化学同人社発行の第1版の「機器分析の手引き(増補改訂版)」;第1集頁108に明示されている。この方法では、測定装置の時間分解能を数msec.まで上げることができ、化学変化に伴うスペクトル変化を正確に追跡することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法は流通時間のロスを生じるため、この点をも解決しようとすると、装置がかなりおおがかりになってしまい、簡便に使用するには問題がある。例えば、乳剤中のハロゲン化銀粒子といった分散液を調製する揚合、かなり大きな反応槽を用いる揚合が多い。分散液を調製しながら、その分光吸収変化を追跡するためには、液を流通させることが必要であるが、そのためには配管を新設するなど、負荷が大きくなることは避けられない。
【0006】
また、分光増感は、ハロゲン化銀乳剤の製造で必須の技術である。分光増感が初期の目的を達成できるかどうかは、増感色素がどのように吸着しているかに大きく依存する。吸着状態を知る手法として、乳剤あるいはベース上に塗布された状態での分光スペクトルを測定する、あるいは写真性能を調ベる、といった手法が通常用いられている。色素の吸着状態が分光増感工程中に把握できれば、もし製造中に故障が発生した揚合の処置を速やかに行うことが可能である。また、分光増感においては増感色素を併用する揚合が多い。増感色素の添加を1種の吸着状態を確認しながら、他の増感色素を添加することが可能になれば、分光増感色素の添加方法をコントロールすることで、分光増感感度を高めたり、保存性が改良できることが期待できる。
【0007】
しかし、分光増感色素がハロゲン化銀乳剤に添加されてから吸着が終了するまで、数分で終了する場合が多く、乳剤仕込み装置から、それとは別に存在する分光スペクトル測定装置で増感色素の吸着状態を確認するのでは、その間の時間ロスが大きく、実用的な色素吸着状態のデータは得られない。このような従来の乳剤製造装置では、増感色素吸着をモニターしながら分光増感工程を高度にコントロールし、高感度で保存安定性に優れたハロゲン化銀写真乳剤を製造すること、ロット間での分光増感の再現性を高めることは達成できない。
【0008】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、請求項1乃至請求項8記載の発明は、液状物質の反射光のスペクトルを簡便にリアルタイムで測定する測定用センサ及び測定用センサを用いる測定用センサを提供することを目的とし、請求項9記載の発明は、高感度で保存安定性に優れたハロゲン化銀乳剤を製造すること、ロット間での分光増感の再現性を高めることができる乳剤製造装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、請求項1記載の発明は、液状物質に光を照射する投光手段と、前記液状物質によって反射された反射光を受光する受光手段と、前記反射光のスペクトルを、リアルタイムで測定する測定手段とを有し、
前記投光手段及び前記受光手段を光ファイバーで構成し、
光透過性窓を有するケース内に前記光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、
前記光ファイバーの先端と前記光透過性窓とは離間しており、
前記光ファイバーの中心軸を延長したときに前記光透過性窓と交差する点と、前記光ファイバーの先端中心との間の距離lを、
l≧(a/sinθ)・{[cosβ/cos(θ+β)]−cosθ}
ただし、a・・・光ファイバー有効径
θ・・・光ファイバーからの光束の広がりの角度
β・・・光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度
の関係式により求めて設定したことを特徴としている。
このように、液状物質に光を照射し、この液状物質によって反射された反射光を受光し、この反射光のスペクトルをリアルタイムで測定することで、いちいち人手による実験の結果を待つことなくデータを得ることができる。
また、光ファイバーの有効径、光束の広がりの角度、光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度及び光ファイバーの中心軸を延長したときに光透過性窓と交差する点と、光ファイバーの先端中心との間の距離lを設定することで、小型で、しかも液状サンプルの一部を分取する必要なく、簡便に、かつリアルタイムに測定することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記反射光が、拡散反射光であることを特徴としている。このように、反射光が拡散反射光であり、例えば、センサユニットに設けられた光透過用窓の反射光を受光することなく、測定対象に反射した拡散反射光を受光し、これを測定するので、確実にスぺクトル分析が可能である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記液状物質が、分光増感過程の感光材料であることを特徴としている。このように、液状物質が分光増感過程の感光材料であり、従来行われていなかった、乳剤の分光増感過程の拳動を知ることができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記液状物質を製造するライン中の前記液状物質に、前記センサユニットを直接接触させて備えたことを特徴としている。このように、光ファイバーを光透過性窓を有するケース内に配置したセンサユニットに設けており、液状物質を製造するライン中の液状物質に、センサユニットを直接接触させることで、液状サンプルの一部を分取する必要なく、簡便に、かつリアルタイムに測定することができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記投光手段及び前記受光手段は、複数本の光ファイバーによって構成され、
前記光ファイバーは一体に束ねられてなり、
光透過性窓を有するケース内に前記光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、
前記液状物質を製造するライン中から前記液状物質を取り出す測定系を備え、
前記測定系において、前記液状物質に前記センサユニットを直接接触させて備えたことを特徴としている。このように、光透過性窓を有するケース内に光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、液状物質を製造するライン中から液状物質を取り出す測定系に、液状物質にセンサユニットを直接接触させることで、液状サンプルの一部を分取する必要なく、簡便に、かつリアルタイムに測定することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記光透過性窓が、ガラスによって形成されていることを特徴としている。このように、光透過性窓をガラスによって形成することで、スペクトルを測定する液状物質の温度が高い場合でも、高温により軟化することが防止される。
【0016】
請求項7記載の発明は、感光性乳剤の分光増感過程において、ハロゲン化銀粒子上の増感色素吸着状態を測定することを特徴としている。このように、感光性乳剤の分光増感過程において、ハロゲン化銀粒子上の増感色素吸着状態を測定することで、従来行われていなかった、乳剤の分光増感過程の拳動を知ることができる。
【0017】
請求項8記載の発明は、乳剤を製造するライン中に、前記請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の測定用センサを備え、
この測定用センサから得られる前記乳剤中のハロゲン化銀粒子に対する増感色素吸着状態を連続的にモニターすると共に、コントロールしつつ添加剤をオンラインで添加する添加手段を備えることを特徴としている。
このように、増感色素吸着状態を連続的にモニターすると共に、コントロールしつつ添加剤をオンラインで添加することで、高感度で保存安定性に優れたハロゲン化銀乳剤を製造すること、ロット間での分光増感の再現性を高めることができる。
請求項9記載の発明は、液状物質を製造するラインと、
前記ライン中から前記液状物質の一部を取り出す測定系とを有し、
前記測定系はバルブを介して前記ラインと接続しており、前記バルブの下流に液状物質に光を照射する投光手段と、前記液状物質によって反射された反射光を受光する受光手段と、前記反射光のスペクトルを、リアルタイムで測定する測定手段とを有し、
前記投光手段及び前記受光手段を光ファイバーで構成し、
光透過性窓を有するケース内に前記光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、
前記光ファイバーの先端と前記光透過性窓とは離間しており、
前記光ファイバーの中心軸を延長したときに前記光透過性窓と交差する点と、前記光ファイバーの先端中心との間の距離lを、
l≧(a/sinθ)・{[cosβ/cos(θ+β)]−cosθ}
ただし、a・・・光ファイバー有効径
θ・・・光ファイバーからの光束の広がりの角度
β・・・光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度
の関係式により求めて設定したことを特徴としている。
このように、液状物質を製造するライン中から液状物質を取り出して測定することで、測定光の照射によって液状物質に影響がないようにすることができる。
請求項10記載の発明は、前記センサユニットの前記光透過性窓を洗浄する洗浄系を有することを特徴としている。温純水が供給され、センサユニットの光透過性窓を洗浄する。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の測定用センサ及び測定用センサを用いる拡散反射スペクトル測定方法並びに乳剤製造装置について説明する。
【0019】
まず、この発明の測定用センサの実施例を図1に示す。この図1で、測定用センサAは、センサユニットBと測定手段Cと、光源Dとを含み、例えば液状物質の乳剤を製造する際の分光増感の過程において用いられる。センサユニットBは、止めねじ1で、光透過性窓2を固定しているリング3を筒状のケース6の開口部6aに固定する。光透過性窓2は、充分な光透過性を有する材質ならば、ガラス等の他、透明な合成樹脂等を適宜選択して使用できる。しかし、スペクトルを測定する液状物質の温度が高い場合は、高温により樹脂製窓が軟化することもあるので、光透過性窓2に適用する材料としては、ガラスが最も好ましい。
【0020】
ケース6の開口部6aには環状溝4が形成され、この環状溝4にOリング5が収まる構造になっている。即ち、光透過性窓2と筒状のケース6の開口部6aは、Oリング5によって密着しているので、光透過性窓2全体が液状物質の乳剤中に浸かっても筒状になっているケース6の部分の内部には、液は侵入してこない。
【0021】
ケース6の内部には、光ファイバープローブ7が挿入される。この光ファイバープローブ7は、図1(b)に示すように、光吸収スペクトル測定に必要な投光用光ファイバー7aと、受光用光ファイバー7bが多数、均等数づつ、束ねられることによって形成されている。このため、投光範囲と、受光範囲とは一致している。投光用光ファイバー7bが乳剤に光を照射する投光手段を構成し、受光用光ファイバー7bが乳剤からの拡散反射光を得る受光手段を構成し、光ファイバープローブ7から光が出て、光透過性窓2を通して乳剤に光が当たり、拡散反射された光が再び光透過性窓2を通して光ファイバープローブ7の受光用光ファイバーに戻る構造になっている。
【0022】
光ファイバープローブ7は分光光度計11に接続され、分光光度計11が拡散反射スペクトルが測定でき、受光手段から得られる拡散反射光からリアルタイムで拡散反射スペクトルを測定する測定手段Cを構成している。光ファイバープローブ7はケース6と止めねじ8で固定される。9はケース6に形成された止めねじ用孔である。
【0023】
測定用センサAは、図2に示すように、センサユニットBの内部に光ファイバープローブ7を配置し、この光ファイバープローブ7の先端から光ファイバーの中心軸Lを延長し、光透過性窓2と交差する点 O と、光ファイバーの先端中心との間の距離lを
距離l≧(a/sinθ)・{[cosβ/cos(θ+β)]−cosθ}
ただし、a・・・光ファイバー有効径
θ・・・光ファイバーからの光束の広がりの角度
β・・・光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度
の関係式により求めて設定している。
【0024】
例えば、投光用光ファイバー7a及び受光用光ファイバー7bの光ファイバー有効径a=2mm、光ファイバーからの光束の広がりの角度θ=10°、光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度β=60°とする場合、前記関係式により、
距離l≧2/sin10°)・{[cos60°/cos70°]−cos10°}
≧11.4(mm)
距離lが例えば、略11.4mm以上が好ましく、この値よりも小さいと、光透過性窓2からの正反射光が直接受光用光ファイバー7bに入ってしまい、正確な反射スペクトルを測定することができない。また、光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度βが小さい程、距離lは小さくできるが、センサユニットBの先端部B1が前側に出てしまい光透過性窓2の窓面積が大きくなり、センサユニットB全体の大きさは大きくなる。また、距離lが大きすぎると、光ファイバーからの光束が直接ケース6の筒部にあたり、照射光が乱されるため、またセンサユニットBが大型化することになるので、距離lは、上記の範囲を満たす範囲で適宜選択できるが、距離lは大きくしすぎない方が良い。
【0025】
また、測定用センサAは、0℃〜100℃で使用可能であり、特に、10℃〜80℃での使用が温度による変化の影響が少なく高精度の測定ができ好ましい。また、光の波長は、紫外光、可視光、赤外光の例えば190nm〜800nmで光透過率が大きいものが用いられる。
【0026】
光源Dとしては、可視光から赤外光領域を測定する時は、タングステンランプ、キセノンランプ、水銀ランプ等が用いられ、波長が400〜800nmの光を発するランプなら特に限定されないが、紫外光領域を測定するときには紫外線発生装置を用いる。また、フィルタを用いて余分な光をカットしても良い。例えば、乳剤を製造する際の分光増感の過程において測定する場合、400nmより短い波長の光を用いると乳剤を激しく劣化させるため、フィルタにより余分な光をカットする。
【0027】
光ファイバープローブ7の光ファイバーとしては、例えば、大塚電子製Y型ファイバーが使用可能である。このファイバーは、投光及び受光用ファイバーが数十本の細いファイバーで構成されており、コンパクトで使いやすいファイバーである。また、単独で液面の反射スペクトルを測定することが可能である。しかし、化学反応槽では、乳剤が激しい撹拌が行われるのが普通であり、表面は、常に流動に伴い変動する。
【0028】
このため単にファイバーを液面より上に設置するだけでは投射光が液と空気の界面で直接反射してくる正反射光の変動を大きく受け、乳剤自体の拡散反射スペクトル変化を正確に測定することが困難になる。また、乳剤中に、このファイバーの先端を浸漬させれば、正反射光の変動の影響は受けなくなる。しかし、その測定法では、ファイバー先端部に存在する分散質に投射光が集中的に照射されるため、光に対して弱い物質が分散液である場合は、スペクトル測定中に分散液が劣化することになり、正確なスペクトルが測定できない。もし、スペクトルが測定できるとしてもそれは、いわゆる拡散反射スペクトルとは異なる。このことは、「スペクトル測定と分光光度計」(柴田和夫;講談社)の頁l7を参照すれば明らかである。
【0029】
さらに、これを明らかにするため、各種の方法で測定したスペクトルを図3乃至図5に示す。なお、スペクトルの縦軸であるAbs.は、
Abs.=−log10(サンプルからの拡散反射光強度/リファレンスとして用いる標準白板からの拡散反射光強度)
で規定している。
【0030】
また、縦軸は、
R(%)=(サンプルからの拡散反射光強度/リファレンスとして用いる標準白板からの拡散反射光強度)
で表してもよい。
【0031】
図3は通常の積分球を用いて測定した分散液の拡散反射スペクトルであり、図4がこの発明と、Y型プローブ及び大塚電子製MCPD−1000を組み合わせて得られたスペクトルである。図5はこの発明の測定用センサを用いることなくY型ファイバーの先端を乳剤に浸漬して得られたスペクトルである。図3、図4のスペクトルは非常に波形が類似しているが、図5のスペクトルは他の2つとは明らかに波形が異なる。このことは、この発明が通常の拡散反射スペクトルを測定するのに適していることを示している。
【0032】
図6は測定用センサの使用形態を示す図である。液状物質の分光増感の過程において、反応槽20が配置され、この反応槽20内の液状物質が撹拌装置21で撹拌される。液状物質の液中には、測定用センサAのセンサユニットBが上方から液中に浸漬され、光透過性窓2の部分が液面22から下方に位置している。また、センサユニットBには、光源C、ディテクターとデータ処理部とを含む測定手段Cが接続され、光源Cと測定手段Dは分光吸収が測定できるのに適した組み合わせであればよい。
【0033】
センサユニットBの光透過性窓2は、投光用光ファイバー7aからの正反射光が受光用光ファイバー7bヘ戻らない構造になっていることが望まれる。図1及び図2では光透過性窓2がケース6の筒状の中心軸に対して角度が付けてあるが、このような構造でなくとも、正反射光が戻らなければよい。光透過性窓2の材質も石英ガラスでなくともよい。
【0034】
センサユニットBの内部には、光ファイバーが固定できることが必要である。投光用、受光用光ファイバーが正反射光は除き、おもに拡散反射光のみ測定できるように固定できればよい。また、投光用光ファイバーの位置を調節し、分散液に照射される光の面積を調節すれば、一部の分散液に光が強く照射されることは避けられるので、光に弱い分散液の拡散反射スペクトルを測定することができる。この発明では位置の調節を止めねじで行えるようになっているが、この方法に限らない。
【0035】
この発明では、センサユニットBの光透過性窓2が分散液中に浸漬させて用いられ、光透過性窓2とケース6の間は密着していて分散液が侵入しない構造になっていればよい。
【0036】
また、測定用センサAは、図7に示すように配置することができる。反応槽30の側壁には、液面より下の部分に光透過性窓31を取り付け、この光透過性窓31に対向させてケース32に内蔵させた一体型の光ファイバープローブ33を配置することができる。
【0037】
また、測定用センサAは、図8及び図9に示すように配置することができる。反応槽40の内部には液状物質を製造するときに撹拌する撹拌装置41が配置され、また反応槽40の底部には、製造された液状物質を排出する排出系42と、液状物質を製造するライン中から液状物質を取り出す測定系43が備えられている。測定系43には、洗浄系44が設けられている。測定系43のサンプリング管45にはバルブ46が備えられ、このバルブ46より下流側には図1及び図2に示す測定用センサAが取り付けられている。洗浄系44の洗浄管47にはバルブ48が取り付けられ、洗浄管47はサンプリング管45に測定用センサAより上流側に連通されている。
【0038】
スペクトル測定時にバルブ46を開けると、液状物質がサンプリング管45から流れ出し、測定用センサAのプローブ部先端に到達し、ここで液状物質に直接光を照射させ、液状物質からの拡散反射光からリアルタイムで拡散反射スペクトルを測定する。この測定が終了すると、バルブ46を閉じ、洗浄系44のバルブ48を開き、温純水が洗浄管47から供給され、測定用センサAを洗浄する。
【0039】
また、この発明では、センサユニットBのケース6の内部は、図10に示すように、光透過性窓2の中央部に黒体50を設けて、正反射光が当たる部分が光を吸収し、その他の部分が拡散反射光を吸収しないようになっていてもよい。具体的には、センサユニットBのケース6の内部に積分球を有していてもよい。さらに、図11に示すように、センサユニットBのケース6の内部に、光吸収スペクトル測定に必要な投光用光ファイバー60と受光用光ファイバー61とをそれぞれ別々に設けてもよい。
【0040】
また、測定用センサAで、例えば液状物質の乳剤を製造する際の分光増感の過程において用いる場合、乳剤が静止状態より流動状態で測定する方が測定精度が向上する。また光透過性窓2に乳剤の付近で乳剤が滞留しないようにして使用すると測定精度が向上する。このため、例えば、図12に示すように、乳剤を撹拌する場合には、流れを測定用センサAの光透過性窓2に向かうようにする。また、図13に示すように、整流板70を設けて流れが測定用センサAの光透過性窓2に向かうようにする。
【0041】
また、この発明で用いられる分光光度計11は、シングルビーム式でもダブルビーム式でもよい。ただし、化学反応の追跡を目的とする揚合には、高い時間分解能を有することが望ましい。
【0042】
さらに、前記したように、測定用センサAを用いた測定では、反応槽に浸漬させても良い場合と、浸漬させない場合が良い場合がある。反応槽に浸漬させても良い場合としては、光源の光が液状物質に反応に悪影響を与えることがないように光量を調節し、増感色素の吸着速度を実験室等で測定するとき、印刷用感光材料等感度の低い乳剤でカブリの影響が問題にならない乳剤のとき等である。一方、例えばISO感度100のネガフィルムのように感度が高く、カブリの影響が問題になり易い乳剤のときは、浸積させる方がよい。
[実施例1]
実際に、写真感光材料における分光増感を例にとって実施例とする。図14にこの発明で得られた拡散反射スペクトル変化を示す。分光増感とはハロゲン化銀粒子の分散液に増感色素と呼ばれる色素を添加し、ハロゲン化銀粒子上に吸着させる工程である。増感色素がハロゲン化銀粒子に吸着すると、その拡散反射スペクトルは変化するが、その吸着反応が非常に速やかに起こる場合が多く、これまではそれを反射スペクトル変化により追跡することはできなかった。増感色素は複数併用されることがあるが、この発明で色素吸着拳動が把握できるようになり、他に併用する増感色素を添加するタイミングを正確にコントロールすることができるようになった。
【0043】
次に、乳剤製造装置の実施例について説明する。この乳剤製造装置は、図15に示すように、乳剤を製造するライン中に、測定用センサAを備え、この測定用センサAから得られる乳剤中のハロゲン化銀粒子に対する増感色素吸着状態を連続的にモニターすると共に、コントロールしつつ添加剤をオンラインで添加する添加手段Eを備えている。
【0044】
この乳剤製造装置は、図8と同じ符号を付した部材は同様に構成されるので説明を省略する。また、測定用センサAは、図9に示すように測定系43に備えられ、乳剤通過時に振動しない構造になっている。また、測定用センサAは、図1及び図2に示すように構成される。
【0045】
分光スペクトルを測定するには、乳剤に光を照射し、その反射光を測定するのが一般的である。本来、ハロゲン化銀乳剤は光に弱く、照射光が強い場合は黒化銀に変成したりする。しかし、一定量のハロゲン化銀乳剤に照射される光量がある程度以下の場合は、その生成が抑えられ、分光スペクトルの測定が可能であった。
【0046】
具体的に、その条件は、ハロゲン化銀の組成、晶癖、粒子径、感度で変化するが、乳剤の流速、照射光量の最適値は実験的に求められる。ただし、この時に測定に用いた乳剤は、もとの乳剤には混合されないことが望ましい。そのため、流速が速すぎると乳剤のロスが大きくなるので、流速は0.1ml/minから10000ml/minが好ましく、さらに好ましくは、1ml/minから1000ml/minである。測定用センサAのセンサユニットBは乳剤が付着したまま乾燥することは好ましくないので、センサユニットBの洗浄が行なわれる。
【0047】
また、スペクトル測定を行うため乳剤に光を照射しても性能上問題のない場合は、乳剤を捨てる必要はないので、図6に示すように測定用センサAのセンサユニットBを直接反応槽内に導入してもよく、その場合は、乳剤内部にガラス窓が浸漬されている必要がある。また、図7に示すように反応槽の側部にガラス窓を設け、このガラス窓にセンサユニットBを対向させて設けても良い。
【0048】
さらに、分光スペクトルの測定装置としては、比較的高い時問分解能を有する装置が望ましい。例えば、大塚電子(株)製MCPD−1000は、少なくとも秒単位でスペクトルを測定でき、この発明に使用するスペクトル測定装置として適する。
【0049】
色素吸着状態を、分光光度計11でモニターする場合、分光吸収のパターンをコンピュータに記憶させておき、分光増感工程を管理することも勿論可能である。即ち、工程中の分光スペクトルの波形が基準となる分光スペクトルの範囲内であれば、分光増感工程から次の工程へ進めるが、そうでない場合、ここで対策を打つことができる。もし、この時点で故障が発見されない場合は、後工程が無駄になり、被害は甚大なものになる可能性がある。
【0050】
また、色素吸着状態をモニターしながら他の色素、あるいは写真有用の添加剤を添加することも可能である。増感色素が併用され、1種の色素の吸着途中で他の増感色素の添加が有用であれば、分光吸収波形がある一定の時点で他の色素を添加すれば良い。色素吸着の過程は、例えば乳剤温度あるいは色素添加流速に影響されるのでそれらが制御できることが望ましい。
[実施例2]
以下に示す増感色素1を添加して分光増感途中で色素吸着に伴うスペクトル変化を測定した。
【0051】
【化1】
Figure 0003672268
通常のロットでは一定時間後にスペクトルが図16中の特性曲線Xの通りだったのが、あるロットにおけるスペクトルは同時点で図16中の特性曲線Yのようになり、ピーク強度が特性曲線Xに比較して小さくなった。原因を探索したところ通常のハロゲン化銀乳剤中には図17(a)のような平板粒子が含まれているのに対し、スペクトルが異常であった乳剤中には図17(b)のように、平板粒子とともに、小粒子が多く含まれていることがわかった。そこで、ハロゲン化銀乳剤の熟成をこの時点で打ち切り、ハロゲン化銀粒子の調整段階からやり直すことになったが、以後の調整工程等を無駄に行わずに済んだため、被害を最小に抑えることができた。
[実施例3]
前記した増感色素1と、以下に示す増感色素2を併用する系で、増感色素1が添加されてからある時間が経過した時点で増感色素2が添加されると分光増感能が向上させられることがわかった。
【0052】
【化2】
Figure 0003672268
しかし、分光増感(IIR)スケールが変化するとどれだけ時間が経過したときがもっともよい増感色素2の添加時期なのかがその都度変ってしまい、せっかくの高感度化処方を工程レベルで実現することができなかった。ところが、この発明を用いて増感色素の添加タイミングを探ったところ、図18に示すように増感色素1の総添加量の内ちょうど半分が吸着した時点で増感色素2を添加すると分光増感能がもっとも高められることがわかった。この発明の乳剤製造装置を用いることで、スケール差に伴う増感色素添加タイミングを毎回的確に判断しながら分光増感を行うことができるようになった。なお、増感色素吸着量の変化は、拡散反射スペクトル測定で得られるスペクトルの吸光度をクベルカムンク変換することで求められる(「スペクトル測定と分光光度計」講談社、柴田和夫著、頁33参照)。
【0053】
【発明の効果】
前記したように、請求項1記載の発明は、液状物質に光を照射し、この液状物質によって反射された反射光を受光し、この反射光のスペクトルをリアルタイムで測定するから、いちいち人手による実験の結果を待つことなくデータを得ることができる。
また、光ファイバーの有効径、光束の広がりの角度、光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度及び光ファイバーの中心軸を延長したときに光透過性窓と交差する点と、光ファイバーの先端中心との間の距離lを設定することで、小型で、しかも液状サンプルの一部を分取する必要なく、簡便に、かつリアルタイムに測定することができる。
【0054】
請求項2記載の発明は、反射光が拡散反射光であり、例えば、センサユニットに設けられた光透過用窓の反射光を受光することなく、測定対象に反射した拡散反射光を受光し、これを測定するので、確実にスぺクトル分析が可能である。
【0055】
請求項3記載の発明は、液状物質が分光増感過程の感光材料であり、従来行われていなかった、乳剤の分光増感過程の拳動を知ることができる。
【0056】
請求項4記載の発明は、液状物質を製造するライン中の液状物質に、センサユニットを直接接触させることで、液状サンプルの一部を分取する必要なく、簡便に、かつリアルタイムに測定することができる。
【0057】
請求項5記載の発明は、投光手段及び受光手段が、複数本の光ファイバーによって構成し、光透過性窓を有するケース内に光ファイバーを配置したセンサユニットに設けたから、液状物質を製造するライン中から液状物質を取り出す測定系に、液状物質にセンサユニットを直接接触させることで、液状サンプルの一部を分取する必要なく、簡便に、かつリアルタイムに測定することができる。
【0059】
請求項6記載の発明は、光透過性窓をガラスによって形成することで、スペクトルを測定する液状物質の温度が高い場合でも、高温により軟化することが防止される。
【0060】
請求項7記載の発明は、感光性乳剤の分光増感過程において、ハロゲン化銀粒子上の増感色素吸着状態を測定することで、従来行われていなかった、乳剤の分光増感過程の拳動を知ることができる。
【0061】
請求項8記載の発明は、乳剤を製造するライン中に、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の測定用センサを備え、この測定用センサから得られる乳剤中のハロゲン化銀粒子に対する増感色素吸着状態を連続的にモニターすると共に、コントロールしつつ添加剤をオンラインで添加する添加手段を備えるから、増感色素吸着状態を連続的にモニターすると共に、コントロールしつつ添加剤をオンラインで添加することで、高感度で保存安定性に優れたハロゲン化銀乳剤を製造すること、ロット間での分光増感の再現性を高めることができる。
請求項9記載の発明は、液状物質を製造するライン中から液状物質を取り出して測定することで、測定光の照射によって液状物質に影響がないようにすることができる。
請求項10記載の発明は、センサユニットの光透過性窓を洗浄する。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定用センサの構成図である。
【図2】測定用センサのセンサユニットの構成図である。
【図3】通常の積分球を用いて測定した分散液の拡散反射スペクトルである。
【図4】この発明のY型プローブ及び大塚電子製MCPD−1000を組み合わせて得られたスペクトルである。
【図5】測定用センサを用いることなくY型ファイバーの先端を乳剤に浸漬して得られたスペクトルである。
【図6】測定用センサの取付状態を示す図である。
【図7】測定用センサの他の実施例の取付状態を示す図である。
【図8】測定用センサの他の実施例の取付状態を示す図である。
【図9】測定系に測定用センサを取り付けた実施例の構成図である。
【図10】測定用センサの他の実施例の構成図である。
【図11】測定用センサの他の実施例の構成図である。
【図12】測定用センサの他の実施例の構成図である。
【図13】測定用センサの他の実施例の構成図である。
【図14】拡散反射スペクトルを示す図である。
【図15】乳剤製造装置の構成図である。
【図16】拡散反射スペクトルを示す図である。
【図17】乳剤の粒子を示す概念図である。
【図18】拡散反射スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
A 測定用センサ
B センサユニット
C 測定手段
D 光源

Claims (10)

  1. 液状物質に光を照射する投光手段と、前記液状物質によって反射された反射光を受光する受光手段と、前記反射光のスペクトルを、リアルタイムで測定する測定手段とを有し、
    前記投光手段及び前記受光手段を光ファイバーで構成し、
    光透過性窓を有するケース内に前記光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、
    前記光ファイバーの先端と前記光透過性窓とは離間しており、
    前記光ファイバーの中心軸を延長したときに前記光透過性窓と交差する点と、前記光ファイバーの先端中心との間の距離lを、
    l≧(a/sinθ)・{[cosβ/cos(θ+β)]−cosθ}
    ただし、a・・・光ファイバー有効径
    θ・・・光ファイバーからの光束の広がりの角度
    β・・・光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度
    の関係式により求めて設定したことを特徴とする測定用センサ。
  2. 前記反射光は、拡散反射光であることを特徴とする請求項1に記載の測定用センサ。
  3. 前記液状物質は、分光増感過程の感光材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定用センサ。
  4. 前記液状物質を製造するライン中の前記液状物質に、前記センサユニットを直接接触させて備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測定用センサ。
  5. 前記投光手段及び前記受光手段は、複数本の光ファイバーによって構成され、
    前記光ファイバーは一体に束ねられてなり、
    光透過性窓を有するケース内に前記光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、
    前記液状物質を製造するライン中から前記液状物質を取り出す測定系を備え、
    前記測定系において、前記液状物質に前記センサユニットを直接接触させて備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の測定用センサ。
  6. 前記光透過性窓は、ガラスによって形成されていることを特徴とする請求項4乃至請求項のいずれかに記載の測定用センサ。
  7. 感光性乳剤の分光増感過程において、
    ハロゲン化銀粒子上の増感色素吸着状態を測定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の測定用センサを用いる拡散反射スペクトル測定方法。
  8. 乳剤を製造するライン中に、前記請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の測定用センサを備え、
    前記測定用センサから得られる前記乳剤中のハロゲン化銀粒子に対する増感色素吸着状態を連続的にモニターすると共に、コントロールしつつ添加剤をオンラインで添加する添加手段を備えることを特徴とする乳剤製造装置。
  9. 液状物質を製造するラインと、
    前記ライン中から前記液状物質の一部を取り出す測定系とを有し、
    前記測定系はバルブを介して前記ラインと接続しており、前記バルブの下流に液状物質に光を照射する投光手段と、前記液状物質によって反射された反射光を受光する受光手段と、前記反射光のスペクトルを、リアルタイムで測定する測定手段とを有し、
    前記投光手段及び前記受光手段を光ファイバーで構成し、
    光透過性窓を有するケース内に前記光ファイバーを配置したセンサユニットを備え、
    前記光ファイバーの先端と前記光透過性窓とは離間しており、
    前記光ファイバーの中心軸を延長したときに前記光透過性窓と交差する点と、前記光ファイバーの先端中心との間の距離lを、
    l≧(a/sinθ)・{[cosβ/cos(θ+β)]−cosθ}
    ただし、a・・・光ファイバー有効径
    θ・・・光ファイバーからの光束の広がりの角度
    β・・・光ファイバーの中心軸と光透過性窓のなす角度
    の関係式により求めて設定したことを特徴とする液状物質製造装置。
  10. 前記センサユニットの前記光透過性窓を洗浄する洗浄系を有することを特徴とする請求項9に記載の液状物質製造装置。
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