JP3672137B2 - 光重合性組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光重合性組成物に関するものである。特に可視光領域の光線に対して極めて高感度であり、例えばAr+ レーザー光、YAG−SHGレーザー光に対しても良好な感応性を示す光重合性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光重合系を利用した画像形成法は多数知られており、印刷版、プリント回路、塗料、インキ、ホログラム記録、3次元造形等の広い分野に用いられている。例えば、付加重合可能なエチレン性二重結合を含む化合物と光重合開始剤、さらに所望により用いられる有機高分子結合剤、熱重合禁止剤等からなる光重合性組成物を、支持体上に皮膜層として設け、所望画像を像露光して露光部分を重合硬化させ、未露光部分を溶解除去することにより硬化レリーフ画像を形成する方法、少なくとも一方が透明である2枚の支持体間に上述の光重合性組成物の層を設け、透明支持体側より像露光し光による接着強度の変化を誘起させた後、支持体を剥離することにより画像を形成する方法、光重合性組成物およびロイコ色素等の色材料を内容物に有するマイクロカプセル層を設けた感光材料を作成し、この感光材料を画像露光して露光部分のカプセルを光硬化させ、未露光部分のカプセルを加圧処理、あるいは加熱処理により破壊し、色材料顕色剤と接触させることにより発色させ、着色画像を形成する方法、その他、光重合性組成物の光によるトナー付着性の変化を利用した画像形成法、光重合性組成物の光による屈折率の変化を利用した画像形成法等が知られている。
【0003】
これらの方法に応用されている光重合組成物の多くは、光重合開始剤として、ベンジル、ベンゾインエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン等が用いられてきた。しかしながら、これらの光重合開始剤は400nm以下の紫外光に対する光重合開始能力に比較し、400nm以上の可視光に対する光重合開始能力が顕著に低く、その結果その応用範囲が著しく限定されていた。
【0004】
近年、画像形成技術の発展に伴い、可視領域の光線に対し高い感応性を有するフォトポリマーが要請されている。それは、例えば非接触型の投影露光製版や可視光レーザー製版等に適合した感光材料である。このような可視光レーザーとしてはAr+ レーザーの488nm光、YAG−SHGレーザーの532nm光などが、有望視されている。
【0005】
可視光領域の光線に感応することのできる光重合開始系については、従来、多くの提案がなされてきた。例えば、米国特許2,850,445号に記載のある種の感応性染料、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号、特開昭54−155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号)、置換トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58−15503号)、ビイミダゾール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−140203号、特開昭59−189340号)、ローダニン骨格の色素とラジカル発生剤の系(特開平2−244050号)等が挙げられる。
【0006】
また、チタノセンが光重合開始剤として有効であることは、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−10602号、特開昭63−41484号、特開平3−12403号に記載されており、併用系としての使用例としては、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号、特開平4−219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号)等を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、これらの従来技術は確かに可視光線に対し有効であるが、感度が十分でない等の問題があり、実用に供することができなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は高感度の光重合性組成物を提供することである。特に、400nm以上の可視光線、Ar+ レーザー、YAG−SHGレーザーの出力に対応する488nm、532nmのような光に対し、感度の高い光重合性組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の構造を有する増感色素とこの増感色素との共存下で光照射時に活性ラジカルを発生しうるチタノセン化合物の併用系が、400nm以上の可視光線に対し極めて感度が高いことを見出し、下記(1)の本発明に到達したものである。そして、好ましくは下記(2)である。
【0010】
(1)i)エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合可能な化合物、ii) 下記式(I)で表される増感色素およびiii)チタノセン化合物を含有する光重合性組成物。
【0011】
【化2】
Figure 0003672137
【0012】
[式(I)において、A1 およびA2 は各々炭素原子またはヘテロ原子を表す。Q1 はA1 、A2 およびこれらに隣接する炭素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す1およびX2 は各々シアノ基または置換カルボニル基を表し、X1 とX2 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは1または2である。]
【0013】
(2)前記ii) 増感色素およびiii)チタノセン化合物を含有する光重合性開始系が、さらに下記(a)〜(h)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する上記(1)の光重合性組成物。
【0014】
(a)炭素−ハロゲン結合を有する化合物
(b)下記式(II)で表されるケトン化合物
【0015】
【化3】
Figure 0003672137
【0016】
[式(II)において、Ar は下記式で表される芳香族基を表し、R10およびR11は各々水素原子またはアルキル基を表し、R10とR11は互いに結合して炭素原子とともに環を形成してもよく、R10とR11と炭素原子とによって形成される環はカルボニル基とモルホリノ基とを連結する二価基となっていてもよい。
【0017】
【化4】
Figure 0003672137
【0018】
(式中、R12〜R16は互いに同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、−S−R18、−SO−R18または−SO2 −R18(ここでR18は水素原子、アルキル基またはアルケニル基を表す。)を表す。L1 は単なる結合またはアルキレン基を表す。ただし、L1 が単なる結合であるとき、R12〜R16のうち少なくとも1個は−S−R18または−SO−R18である。
【0019】
17は水素原子、アルキル基またはアシル基を表す。Y1 は水素原子または下記式で表される置換カルボニル基を表す。
【0020】
【化5】
Figure 0003672137
【0021】
式中、R10およびR11は各々式(II)におけるものと同義のものである。)](c)下記式(III )で表されるケトオキシム化合物
【0022】
【化6】
Figure 0003672137
【0023】
[式(III )において、R19およびR20は各々同一であっても異なるものであってもよく、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を表す。R21およびR22は各々同一であっても異なるものであってもよく、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、ヒドロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基または置換チオ基を表す。R23およびR24は各々水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または置換カルボニル基を表す。R23とR24とは互いに結合して炭素原子数2〜8の環を形成してもよく、環の連結主鎖中には、−O−、−NR23−(R23は上記と同義)、−O−CO−、−NH−CO−、−S−および−SO2 −のうちの少なくとも1個を含んでいてもよい。]
【0024】
(d)有機過酸化物
(e)下記式(IV)で表されるチオ化合物
【0025】
【化7】
Figure 0003672137
【0026】
[式(IV)において、R25はアルキル基またはアリール基を表し、R26は水素原子またはアルキル基を表す。また、R25とR26とは互いに結合して炭素原子および窒素原子とともに縮合環を有していてもよい複素環を完成するのに必要な原子群となってもよい。]
【0027】
(f)ヘキサアリールビイミダゾール
(g)芳香族オニウム塩
(h)ケトオキシムエステル
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明の光重合組成物は、i)エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する付加重合可能な化合物と、光重合性開始系としてii) 式(I)[上記化2に掲載]で表される増感色素およびiii)チタノセン化合物とを含有する。
【0030】
上記i)の付加重合性不飽和結合を有する重合可能な化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0031】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0032】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0033】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0034】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0035】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0036】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0037】
さらに、前述のエステルモノマーの混合物も挙げることができる。
【0038】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0039】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(V)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0040】
CH2=C(R)COOCH2CH(R′)OH (V)
(ただし、RおよびR′はHあるいはCH3 を示す。)
【0041】
また、特開昭51−37193号に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。さらに日本接着協会誌 vol. 20、No. 7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらの使用量は、任意であるが、好ましくは、組成物全成分に対して好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜55重量%、よりさらに好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは10〜50重量%、より特に好ましくは10〜40重量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0042】
本発明の光重合性組成物に光重合性開始系として含有させるii) 増感色素は式(I)[上記化2に掲載]で表されるものである。
【0043】
式(I)について説明すると、A1 およびA2 は各々炭素原子またはヘテロ原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。Q1 はA1 、A2 および炭素原子とともに複素環を形成するのに必要な原子群を表す。
【0044】
1 、A2 で表される炭素原子は水素原子およびアルキル基やアリール基等の置換基のうちの1個または2個が結合したものである。
【0045】
1 、A2 で表されるヘテロ原子は酸素原子、硫黄原子、窒素原子等であり、窒素原子は水素原子およびアルキル基やアリール基等の置換基のうちの1個が結合したものであってもよい。
【0046】
1 、A2 のうちの少なくとも一方はヘテロ原子であることが好ましく、とりわけ、A1 、A2 のうちの少なくとも一方はNR3 またはSであることが好ましい。ここで、R3 は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基、アルキニル基、置換アルキニル基を表す。
【0047】
3 で表されるアルキル基としては炭素原子数が1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1〜12の直鎖状、炭素原子数3〜12の分岐状、ならびに炭素原子数5〜10の環状のアルキル基がより好ましい。特には炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0048】
3 で表される置換アルキル基の置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、Nーアルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3 H)およびその共役塩基基(スルホナト基と称す。金属塩も含む)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィイナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファイル基、ホスフォノ基(−PO32 )およびその共役塩基基(ホスフォナト基と称す。金属塩も含む)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3 (alkyl )2 :alkyl =アルキル基、以下同)、ジアリールホスフォノ基(−PO3 (aryl)2 :aryl=アリール基、以下同)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3 (alkyl )(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3 (alkyl ))およびその共役塩基基(アルキルホスフォナト基と称す。金属塩も含む)、モノアリールホスフォノ基(−PO3 H(aryl))およびその共役塩基基(アリールホスフォナト基と称す。金属塩も含む)、ホスフォノオキシ基(−OPO32 )およびその共役塩基基(アリールホスフォナト基と称す。金属塩も含む)、ホスフォノオキシ基(−OPO32 )およびその共役塩基基(ホスフォナトオキシ基と称す。金属塩も含む)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3 (alkyl )2 )、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3 (aryl)2 )、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO3 (alkyl )(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3 H(alkyl )およびその共役塩基基(アルキルホスフォナトオキシ基と称す。金属塩も含む)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3 H(aryl))およびその共役塩基基(アリールフォスホナトオキシ基と称す。金属塩も含む)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0049】
これらの置換アルキル基中の置換基におけるアルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等が挙げることができる。
【0050】
また、置換アルキル基中の置換基におけるアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1 CO−)におけるG1 としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。これら置換基のうちさらにより好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0051】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1〜20のアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状、炭素原子数3〜12の分岐状ならびに炭素原子数5〜10の環状のアルキレン基を挙げることができる。このような置換基とアルキレン基を組み合わせることで得られるR3 で表される置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、アリルオキシエチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、ヘキシルオキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトエチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0052】
3 で表されるアリール基としては1個〜3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、またはベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものから誘導される基を挙げることができる。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0053】
3 で表される置換アリール基としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0054】
3 で表されるアルケニル基としては、炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基を挙げることができる。
【0055】
またR3 で表される置換アルケニル基の置換基としては、置換アルキル基で述べた置換基を挙げることができる。
【0056】
3 で表されるアルケニル基ないし置換アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、スチリル基、2−ペンテニル基、2−シクロヘキシニル基などを挙げることができる。
【0057】
3 で表されるアルキニル基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキニル基を挙げることができる。
【0058】
またR3 で表される置換アルキニル基の置換基としては、置換アルキル基で述べた置換基を挙げることができる。
【0059】
3 で表されるアルキニル基ないし置換アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2−フェニルエチニル基、1−ブチニル基等を挙げることができる。
【0060】
3 で表されるアルコキシカルボニル基としては、炭素原子数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基がオキシカルボニル基に結合した残基を挙げることができ、その具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0061】
以上、R3 について述べたが、本発明においてはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基が好適で有り、特に無置換の直鎖状のアルキル基およびアルコキシ基、カルボキシル基、スルホナト基、アルコキシカルボニル基等で置換された置換アルキル基が好適である。
【0062】
次に式(I)におけるQ1 について説明する。Q1 は上述のA1 、A2 およびこれらの隣接炭素原子と共同して、複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。このような複素環としては5、6、7員の含窒素、あるいは含硫黄複素環が挙げられ、好ましくは5、6員の複素環がよい。
【0063】
含窒素複素環の例としては例えばL.G.Brooker et at.,J.Am.Chem.Soc.,73,5326-5358(1951)および参考文献に記載されるメロシアニン色素類における塩基性核を構成するものとして知られているものをいずれも好適に用いることができる。具体例としては、チアゾール類(例えば、チアゾール、4−メチルチアゾール、4−フェニルチアゾール、5−メチルチアゾール、5−フェニルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、4,5−ジフェニルチアゾール、4,5−ジ(p−メトキシフェニルチアゾール)、4−(2−チエニル)チアゾール等)、ベンゾチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール、6−クロロベンゾチアゾール、7−クロロベンゾチアゾール、4−メチルベンゾチアゾール、5−メチルベンゾチアゾール、6−メチルベンゾチアゾール、5−ブロモベンゾチアゾール、4−フェニルベンゾチアゾール、5−フェニルベンゾチアゾール、4−メトキシベンゾチアゾール、5−メトキシベンゾチアゾール、6−メトキシベンゾチアゾール、5−ヨードベンゾチアゾール、6−ヨードベンゾチアゾール、4−エトキシベンゾチアゾール、5−エトキシベンゾチアゾール、テトラヒドロベンゾチアゾール、5,6−ジメトキシベンゾチアゾール、5,6−ジオキシメチレンベンゾチアゾール、5−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、6−ジメチルアミノベンゾチアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾチアゾール等)、ナフトチアゾール類(例えば、ナフト[1,2]チアゾール、ナフト[2,1]チアゾール、5−メトキシナフト[2,1]チアゾール、5−エトキシナフト[2,1]チアゾール、8−メトキシナフト[1,2]チアゾール、7−メトキシナフト[1,2]チアゾール等)、チアナフテノ−7’,6’,4,5−チアゾール類(例えば、4’−メトキシチアナフテノ−7’,6’,4,5−チアゾール等)、オキサゾール類(例えば、4−メチルオキサゾール、5−メチルオキサゾール、4−フェニルオキサゾール、4,5−ジフェニルオキサゾール、4−エチルオキサゾール、4,5−ジメチルオキサゾール、5−フェニルオキサゾール等)、ベンゾオキサゾール類(ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、5−メチルベンゾオキサゾール、5−フェニルベンゾオキサゾール、6−メチルベンゾオキサゾール、5,6−ジメチルベンゾオキサゾール、4,6−ジメチルベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−メトキシベンゾオキサゾール、4−エトキシベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール、6−メトキシベンゾオキサゾール、5−ヒドロキシベンゾオキサゾール、6−ヒドロキシベンゾオキサゾール等)、ナフトオキサゾール類(例えば、ナフト[1,2]オキサゾール、ナフト[2,1]オキサゾール等)、セレナゾール類(例えば、4−メチルセレナゾール、4−フェニルセレナゾール等)、ベンゾセレナゾール類(例えば、ベンゾセレナゾール、5−クロロベンゾセレナゾール、5−メトキシベンゾセレナゾール、5−ヒドロキシベンゾセレナゾール、テトラヒドロベンゾセレナゾール等)、ナフトセレナゾール類(例えば、ナフト[1,2]セレナゾール、ナフト[2,1]セレナゾール等)、チアゾリン類(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン等)、2−キノリン類(例えば、キノリン、3−メチルキノリン、5−メチルキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン、6−クロロキノリン、8−クロロキノリン、6−メトキシキノリン、6−エトキシキノリン、6−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン等)、4−キノリン類(例えば、キノリン、6−メトキシキノリン、7−メチルキノリン、8−メチルキノリン等)、1−イソキノリン類(例えば、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン等)、3−イソキノリン類(例えば、イソキノリン等)、ベンズイミダゾール類(例えば、1,3−ジエチルベンズイミダゾール、1−エチル−3−フェニルベンズイミダゾール等)、3,3−ジアルキルインドレニン類(例えば、3,3−ジメチルインドレニン、3,3,5,−トリメチルインドレニン、3,3,7,−トリメチルインドレニン等)、2−ピリジン類(例えば、ピリジン、5−メチルピリジン等)、4−ピリジン(例えば、ピリジン等)等を挙げることができる。
【0064】
また、含硫黄複素環の例としては、例えば、特開平3−296759号記載の色素類におけるジチオール部分構造を挙げることができる。
【0065】
具体例としては、ベンゾジチオール類(例えば、ベンゾジチオール、5−t−ブチルベンゾジチオール、5−メチルベンゾジチオール等)、ナフトジチオール類(例えば、ナフト[1,2]ジチオール、ナフト[2,1]ジチオール等)、ジチオール類(例えば、4,5−ジメチルジチオール類、4−フェニルジチオール類、4−メトキシカルボニルジチオール類、4,5−ジメトキシカルボニルベンゾジチオール類、4,5−ジトリフルオロメチルジチオール、4,5−ジシアノジチオール、4−メトキシカルボニルメチルジチオール、4−カルボキシメチルジチオール等)等を挙げることができる。
【0066】
以上に述べた式(I)における、Q1 が上述のA1 、A2 およびこれらに隣接する炭素原子と共同して形成する含窒素あるいは硫黄複素環の例のうち、より好ましい例としては、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、ナフトチアゾール類、ベンゾオキサゾール類、ベンズイミダゾール類、3、3−ジアルキルインドレニン類が挙げられ、さらにより好ましくはチアゾール類を挙げることができる。
【0067】
1 で完成される複素環としては以下のものを例示することができる。
【0068】
【化8】
Figure 0003672137
【0069】
(Q−1)〜(Q−5)の式中において、A3 は酸素原子、硫黄原子、または水素原子、アルキル基およびアリール基のうちの1個が結合した窒素原子、または水素原子、アルキル基およびアリール基のうちの2個が結合した炭素原子を表す。A3 中のアルキル基およびアリール基としては上述のR3 と同様のものを例示することができる。
【0070】
(Q−1)〜(Q−9)の式中R3 は上述のA1 、A2 のところのもと同義であり、置換基Eはハメットのσ値が−0.9から+0.5までの範囲に有るものである。その例としては、水素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、アセチル基、エトキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボキシラト基(−COO- )、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アセチルアミノ基、−PO3 H基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ベンシルオキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、メルカプト基、アセチルチオ基、チオシアノ基、(−SCN)、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、アミノスルホニル基、ジメチルスルホニル基(−S+ (CH32 )、スルホナト基(−SO2 -)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子、ヨージル基、トリメチルシリル基(−Si(CH33 )、トリエチルシリル基、トリメチルスタニル基(−Sn(CH33 )を挙げることができる。これらの置換基のうちで好ましいものは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、塩素原子、臭素原子である。
【0075】
次に、式(I)におけるX1 およびX2 について具体的に説明する。X1 およびX2 は各々独立して、シアノ基または置換カルボニル基を表し、X1 とX2 とは互いに結合して環を形成してもよい。
【0076】
1 、X2 で表される置換カルボニル基(G2 −CO−)としては、G2 が一価の非金属原子団のものを使用でき、具体的にはG2 が置換または無置換アルキル基(具体例はR3 で挙げたものと同じ)、置換または無置換アリール基(具体例はR3 で挙げたものと同じ)、置換または無置換の芳香族ヘテロ環基(フリル基、チエニル基、ピリジル基等)、置換または無置換のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ベンジルオキシ基等)、アリーロキシ基(フェノキシ基等)、置換または無置換のアミノ基(ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基等)のものを用いることができる。このような置換カルボニル基の好ましい例としては、ホルミル基、アシル基、フロイル基、テノイル基、ピリジンカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述R3 の例として挙げたアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基を挙げることができる。より好ましい具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基、2−フロイル基、2−テノイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基等が挙げられる。
【0077】
1 とX2 が互いに結合して環を形成するものとしては、下記部分構造式(Ia)で表される部分構造をなすものを挙げることができる。
【0078】
【化9】
Figure 0003672137
【0079】
式中、Zは置換基を有しても良い5員、6員もしくは7員の炭化水素環、もしくは複素環を完成するのに必要な非金属原子団を表す。
【0080】
部分構造式(Ia)で表される部分構造の例としてはメロシアニン色素類の酸性核として知られるものを挙げることができる。
【0081】
以下、部分構造式(Ia)で表される部分構造の例についてより詳しく述べる。
【0082】
Zが完成する炭化水素環の例としては、1,3−シクロペンタンジオン類(例えば、1,3−シクロペンタンジオン等)、1,3−シクロペンテンンジオン類(例えば、1,3−シクロペンテンジオン等)、1,3−シクロヘキサンジオン類(例えば、1,3−シクロヘキサンジオン、ジメドン、5−フェニル−1,3−シクロヘキサンジオン等)を挙げることができる。
【0083】
好ましい炭化水素環の他の例としては下記部分構造式(Ia−1)で表されるインダンジオン類(1,3−ジケトヒドリンデン等)を挙げることができる。
【0084】
【化10】
Figure 0003672137
【0085】
[式中、X10はアルキル基(例えばR3 の例と同様)、置換アルキル基(例えばR3 の例と同様)、アリール基(例えばR3 の例と同様)、置換アリール基(例えばR3 の例と同様)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換のアミノ基(例えばアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)またはハロゲン原子を表す。x1 は0〜4の整数である。]
【0086】
Zが完成する複素環の例としては、1−オキサ−2,4−シクロペンタンジオン類(例えば、テトロン酸等)、1−チア−2,4−シクロペンタンジオン類(例えば、チオテトロン酸等)、1,3−ジオキサ−4,5−シクロヘキサンジオン類(メロドラム酸等)を挙げることができる。
【0087】
好ましい複素環の他の例としては、部分構造式(Ia−2)で表される2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン類(即ち、バルビツル酸類、2−チオバルビツル酸類およびこれらの1,3−置換体)、
【0088】
【化11】
Figure 0003672137
【0089】
[式中、A4 は酸素原子または硫黄原子を表し、X11、X12はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基(例えばR3 の例と同様)、置換アルキル基(例えばR3 の例を同様)、アリール基(例えばR3 の例と同様)、置換アリール基(例えばR3 の例と同様)を表す。]
【0090】
部分構造式(Ia−3)で表される5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロ−5−チアゾロ[3,2−a]ピリミジン類(例えば5,7−ジオキソ−3−フェニル−6,7−ジヒドロ−5−チアゾロ[3,2−a]ピリミジン等)
【0091】
【化12】
Figure 0003672137
【0092】
[式中、X13、X14はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基(例えばR3 の例と同様)、置換アルキル基(例えばR3 の例と同様)、アリール基(例えばR3 の例と同様)、置換アリール基(例えばR3 の例と同様)を表す。]
【0093】
部分構造式(Ia−4)で表される3,5−ピラゾリジンジオン類(例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン等)、
【0094】
【化13】
Figure 0003672137
【0095】
[式中、X15、X16はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基(例えばR3 の例と同様)、置換アルキル基(例えばR3 の例と同様)、アリール基(例えばR3 の例と同様)、置換アリール基(例えばR3 の例と同様)を表す。]
【0096】
部分構造式(Ia−5)で表される1,2,3,4−テトラヒドロ−2,4−キノリンジオン類(例えば1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−2,4−キノリンジオン等)
【0097】
【化14】
Figure 0003672137
【0098】
[式中、X17は水素原子、アルキル基(例えばR3 の例と同様)、置換アルキル基(例えばR3 の例と同様)、アリール基(例えばR3 の例と同様)、置換アリール基(例えばR3 の例と同様)を表し、X18はX10と同様の置換基を表す。x2 は0〜4の整数である。]
【0099】
部分構造式(Ia−6)で表される2,4−クロマンジオン類(例えば2,4−クロマンジオン等)
【0100】
【化15】
Figure 0003672137
【0101】
[式中、X19は独立にX10と同様の置換基を表す。x3 は0〜4の整数である。]
【0102】
部分構造式(Ia−7)で表される2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン類(例えば2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−6−メチル−2H−ピラン等)
【0103】
【化16】
Figure 0003672137
【0104】
[式中、X20、X21はそれぞれ独立にX10と同様の置換基を表す。]
【0105】
以上挙げた、X1 、X2 のうち、より好ましい例としては、部分構造(Ia)が、(Ia−1)で表されるインダンジオン類、(Ia−2)で表される2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン類であるものが挙げられ、さらにより好ましくは、(Ia−2)で表される2−チオバルビツル酸類であるものが挙げられる。
【0106】
式(I)において、nは1または2である。
【0107】
式(I)で表される増感色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、Q1 で完成される環(Q1 で表示)、X1 とX2 とが結合した炭素二価基およびnの組み合わせで示しているものもある(No.1〜86)。
【0108】
【化17】
Figure 0003672137
【0109】
【化18】
Figure 0003672137
【0110】
【化19】
Figure 0003672137
【0111】
【化20】
Figure 0003672137
【0112】
【化21】
Figure 0003672137
【0113】
【化22】
Figure 0003672137
【0114】
【化23】
Figure 0003672137
【0115】
【化24】
Figure 0003672137
【0116】
【化25】
Figure 0003672137
【0117】
【化26】
Figure 0003672137
【0118】
【化27】
Figure 0003672137
【0119】
【化28】
Figure 0003672137
【0120】
【化29】
Figure 0003672137
【0121】
式(I)で表される増感色素は、F.M.ヘイマーら著、「ザ・シアニン・ダイズ・アンド・リレィテッド・コンパウンズ」(F.M.Hamer et al., "The Cyanine Dyes and Related Compounds ") 第511〜611頁(1964年)に記載された方法、KAI ARNE JENSEN およびLARS HENRIKSENらがACTA CHEMICA SCANDINAVICA 22巻1107〜1128頁(1968年)に記載した方法などを参照して合成することができる。
【0122】
これらの増感色素は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの増感色素の使用量は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対し、0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.2〜10重量部の範囲である。
【0123】
本発明において光重合性開始系として用いられるチタノセン化合物は、前記した増感色素との共存下で光照射した場合、活性ラジカルを発生し得るチタノセン化合物であればいずれであってもよく、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号公報に記載されている公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。
【0124】
さらに具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル(以下「A−1」ともいう。)、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフエニ−1−イル(以下「A−2」ともいう。)、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(以下「A−3」ともいう。)等を挙げることができる。
【0125】
本発明の光重合性組成物に用いられるチタノセン化合物は単独でまたは2種以上併用して用いることができる。
【0126】
チタノセン化合物の使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対し、0. 5〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは2〜50重量部の範囲で用いることができる。
【0127】
本発明の光重合性組成物には、前記の増感色素とチタノセン化合物の他に、感度向上の目的で以下に説明する(a)〜(h)の化合物を添加することができる。
【0128】
(a)炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、まず下記式(VI)で表される化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0129】
【化30】
Figure 0003672137
【0130】
式(VI)中、Xはハロゲン原子を表す。Y2 は−CX3 、−NH2 、−NHR31 、−NR31 2 、−OR31を表す。ここでR31はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。またR30は−CX3 、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。
【0131】
また、炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、下記式(VII) で表される化合物も好ましい。
【0132】
【化31】
Figure 0003672137
【0133】
式(VII) 中、R32は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、ニトロ基またはシアノ基であり、
Xはハロゲン原子であり、
kは1〜3の整数である。
【0134】
さらに、炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、下記式(VIII)で表される化合物も好ましい。
【0135】
33−Z3 −CH2-m m −R34 (VIII)
式(VIII)中、R33は、アリール基または置換アリール基であり、R34は−CO−NR3536、下記のオキサジアゾリル基
【0136】
【化32】
Figure 0003672137
【0137】
またはハロゲン原子であり、Z3 は−CO−、−CS−または−SO2 −であり、R35、R36はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基または置換アリール基であり、R37は式(VII) 中のR32と同じであり、mは1または2である。
【0138】
また、炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、下記式(IX)で表される化合物も好ましい。
【0139】
【化33】
Figure 0003672137
【0140】
式(IX)中、R38は置換されていてもよいアリール基または複素環基であり、R39は炭素原子数1〜3のアルキル基またはアルケニル基を有するトリハロアルキル基またはトリハロアルケニル基であり、pは1、2または3である。
【0141】
また、炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、下記式(X) で表されるトリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物も好ましい。
【0142】
【化34】
Figure 0003672137
【0143】
式(X) 中、Lは水素原子または式:CO-(R40)q (CX3)rの置換基であり、
Mは置換または非置換のアルキレン基またはアリーレン基であり、
2 はイオウ、セレンまたは酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基またはN−R41基であり、
M+Q2 は一緒になって炭素原子および窒素原子とともに5もしくは6員環を形成し、
40は炭素環式または複素環式の芳香族基であり、
41はアルキル基、アラルキル基またはアルコキシアルキル基であり、
Xは塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子であり、
q=0およびr=1の組合せであるかまたはq=1およびr=1または2の組合せである。
【0144】
また、炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、下記式(XI)で表される4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体も好ましい。
【0145】
【化35】
Figure 0003672137
【0146】
式(XI)中、Xはハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R42は水素原子またはCH3-t t 基であり、R43はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である。
【0147】
また、炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、下記式(XII) で表される2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体も好ましい。
【0148】
【化36】
Figure 0003672137
【0149】
式(XII) 中、Xはハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R44は水素原子またはCH3-v v 基であり、R45はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。
【0150】
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan, 42,2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン[以下「a−90」ともいう。]、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許第1388492 号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許第3337024 号明細書記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0151】
【化37】
Figure 0003672137
【0152】
【化38】
Figure 0003672137
【0153】
また、F. C. Schaefer等による J. Org. Chem.,29,1527(1964)記載の化合物、例えば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
【0154】
さらに特開昭62−58241号記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0155】
【化39】
Figure 0003672137
【0156】
さらに特開平5−281728号記載の化合物、例えばの下記の化合物を挙げることができる。
【0157】
【化40】
Figure 0003672137
【0158】
あるいはさらに M. P. Hutt, E. F. Elslager および L. M. Werbel 著 Journal of Heterocyclic chemistry, 第7巻(No. 3), 第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて当業者が容易に合成することができる次のような化合物群を挙げることができる。
【0159】
【化41】
Figure 0003672137
【0160】
【化42】
Figure 0003672137
【0161】
【化43】
Figure 0003672137
【0162】
【化44】
Figure 0003672137
【0163】
【化45】
Figure 0003672137
【0164】
【化46】
Figure 0003672137
【0165】
【化47】
Figure 0003672137
【0166】
【化48】
Figure 0003672137
【0167】
【化49】
Figure 0003672137
【0168】
あるいは、ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、例えば、4−(4−メトキシ−スチリル)−6−(3,3,3−トリクロルプロペニル)−2−ピロンおよび4−(3,4,5−トリメトキシ−スチリル)−6−トリクロルメチル−2−ピロン、あるいはドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0169】
【化50】
Figure 0003672137
【0170】
またドイツ特許第3021590号に記載の化合物群のなかから下記の化合物を例示することができる。
【0171】
【化51】
Figure 0003672137
【0172】
さらにはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群のなかから、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0173】
【化52】
Figure 0003672137
【0174】
次に本発明で使用する成分(b)の式(II)[前記化3に掲載]で表されるケトン化合物について説明する。ここで、R10、R11は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。またR10とR11とは互いに結合して炭素原子とともに環を形成してもよく、このような環としてはシクロヘキサノン等が挙げられる。またR10とR11と炭素原子とによって形成される環はカルボニル基とモルホリノ基とを連結する二価基となっていてもよく、このような二価基としてはp−フェニレン基等が挙げられる。
【0175】
Arは前記式[化4に掲載]で表される芳香族基であるが、R12〜R16は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜12のアルケニル基、アリール基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、−S−R18、−SO−R18、−SO2 −R18を表し、R18は水素原子、アルキル基またはアルケニル基である。
【0176】
またR17は水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基、または炭素原子数2〜13のアシル基を表す。
【0177】
これらのアルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基はさらに炭素原子数1〜6の置換基で置換されてもよい。
【0178】
1 は単なる結合またはアルキレン基(エチレン基、エチル−ジメチルアミノエチレン基等)を表す。L1 が単なる結合であるとき、R12〜R16のうちの少なくとも1個は−S−R18、−SO−R18である。
【0179】
1 は水素原子または前記式[化5に掲載]で表される置換カルボニル基を表し、式中R10およびR11は上記と同義のものである。
【0180】
具体例としては、米国特許4318791号、欧州特許0284561A号に記載の下記化合物を挙げることができる。
【0181】
【化53】
Figure 0003672137
【0182】
【化54】
Figure 0003672137
【0183】
【化55】
Figure 0003672137
【0184】
次に本発明で使用される成分(c)の式(III) [前記化6に掲載]で表されるケトオキシム化合物について説明する。
【0185】
式(III) 中、R19、R20は同一または異なるものであってもよく、置換基を有していてもよく不飽和結合を含んでいても良い脂肪族ないし芳香族炭化水素基、あるいは複素環基を表す。R19、R20の具体例としては、アリル基、フェニルメチル基、n−ブチル基、n−ドデシル基、2−メトキシエトキシエチル基、4−メトキシカルボニルフェニルメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、4−メトキシカルボニルブチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−メトキシカルボニルアリル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、4−メトキシフェニル基、4−メチルチオフェニル基、4−モルホリノフェニル基等がある。
【0186】
21、R22は同一または異なるものであってもよく、水素原子、置換基を有していても良く不飽和結合を含んでいても良い脂肪族ないし芳香族炭化水素基、複素環基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基を表す。R21、R22の具体例としては、メチル基等がある。
【0187】
23、R24は水素原子、置換基を有していても良く不飽和結合を含んでいてもよい脂肪族ないし芳香族炭化水素基、あるいは置換カルボニル基を表す。また、R23、R24は互いに結合して環を形成してもよく、環の連結主鎖中には−O−、−NR23−、−O−CO−、−NH−CO−、−S−、および−SO2 −のうちの少なくとも1個含んでいてもよく、環の炭素原子数は2〜8である。
【0188】
23、R24の具体例としてはメチル基等があり、これらにより形成される環の具体例としてはモルホリン環等がある。
【0189】
具体的な(c)の化合物として、以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0190】
【化56】
Figure 0003672137
【0191】
【化57】
Figure 0003672137
【0192】
【化58】
Figure 0003672137
【0193】
【化59】
Figure 0003672137
【0194】
【化60】
Figure 0003672137
【0195】
本発明で使用される成分(d)の有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を有する化合物を挙げることができる。例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、
【0196】
2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチル過酸化マレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、3,3′,4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0197】
これらの中で、3,3′,4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(以下「d−1」ともいう。)、3,3′,4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0198】
本発明に使用される成分(e)としてのチオ化合物は、式(IV)[前記化7に掲載]で表される。
【0199】
式(IV)において、R25はアルキル基またはアリール基を表し、R26は水素原子またはアルキル基を表す。R25、R26のアルキル基としては炭素原子数1〜4のものが好ましい。またR25のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基のような炭素原子数6〜10のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R25とR26とは互いに結合して炭素原子および窒素原子とともに縮合環を有していてもよい複素環を完成するのに必要な原子群となってもよい。この場合の縮合環としてはベンゼン環等が挙げられる。
【0200】
式(IV)で表されるチオ化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。以下では式(IV)を再掲し、式(IV)のR25等の組合せで示している。
【0201】
【化61】
Figure 0003672137
【0202】
【化62】
Figure 0003672137
【0203】
【化63】
Figure 0003672137
【0204】
【化64】
Figure 0003672137
【0205】
本発明に使用される成分(f)のヘキサアリールビイミダゾールとしては、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール[以下「f−1」ともいう。]、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。ケトオキシムエステルとしては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0206】
また、本発明に使用される成分(g)の芳香族オニウム塩としては、周期表の15(5B)、16(6B)、17(7B)族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩は、特公昭52−14277号、特公昭52−14278号、特公昭52−14279号に示されている化合物を挙げることができ、具体的には、以下の化合物を挙げることができる。
【0207】
【化65】
Figure 0003672137
【0208】
【化66】
Figure 0003672137
【0209】
【化67】
Figure 0003672137
【0210】
【化68】
Figure 0003672137
【0211】
【化69】
Figure 0003672137
【0212】
【化70】
Figure 0003672137
【0213】
【化71】
Figure 0003672137
【0214】
これらの中で好ましいものは、BF4 塩またはPF6 塩の化合物、さらに好ましくは芳香族ヨードニウム塩のBF4 塩またはPF6 塩である。
【0215】
本発明に使用される成分(h)のケトオキシムエステルとしては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン[以下「h−1」ともいう。]、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−ブロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0216】
これらの(a)〜(h)の添加剤は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物100重量部に対し0.05〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは3〜50重量部の範囲が適当である。
【0217】
本発明の組成物中のこれらの光重合開始剤系の含有濃度は通常わずかなものである。また、不適当に多い場合には有効光線の遮断等好ましくない結果を生じる。本発明における光重合開始剤系の量は、光重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と必要に応じて添加される線状有機高分子重合体との合計に対して0.01重量%から60重量%の範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは、1重量%から30重量%で良好な結果を得る。
【0218】
本発明の光重合性組成物には、バインダーとしての線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、光重合可能なエチレン性不飽和化合物と相溶性を有している線状有機高分子重合体である限り、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とする水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0219】
特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体および〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。さらにこの他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。これらの線状有機高分子重合体は全組成物中に任意な量を混和させることができる。しかし90重量%を超える場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えない。好ましくは30〜85重量%である。また光重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機高分子重合体は、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は3/7〜5/5である。
【0220】
また、本発明においては以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01重量%〜約5重量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5重量%〜約10重量%が好ましい。
【0221】
さらに、感光層の着色を目的として染料もしくは顔料を添加してもよい。着色剤としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5重量%〜約5重量%が好ましい。加えて、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0222】
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計重量に対し10重量%以下添加することができる。
【0223】
本発明の光重合性組成物を支持体上に塗布する際には種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
【0224】
その被覆量は乾燥後の重量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0225】
上記支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられる。寸度的に安定な板状物としては、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、また、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む。)、亜鉛、銅などのような金属の板、さらに、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックのフィルム、上記のような金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの支持体のうち、アルミニウム板は寸度的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。さらに、特公昭48−18327号に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0226】
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、砂目立て処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
【0227】
さらに、砂目立てしたのちに珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板が好ましく使用できる。特公昭47−5125号に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理したのちに、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものが好適に使用される。上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、もしくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸またはそれらの塩の水溶液または非水溶液の単独または二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0228】
また、米国特許第3658662号に記載されているようなシリケート電着も有効である。
【0229】
さらに、特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理および珪酸ソーダ処理を組合せた表面処理も有用である。
【0230】
また、特開昭56−28893号に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレイン、陽極酸化処理さらに珪酸ソーダ処理を順に行ったものも好適である。
【0231】
さらに、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。
【0232】
さらに特願平5−304358号に開示されているようなラジカルによって付加反応を起こし得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0233】
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる光重合性組成物の有害な反応を防ぐため、かつ感光層の密着性の向上等のために施されるものである。
【0234】
支持体上に設けられた光重合性組成物の層の上には、空気中の酸素による重合禁止作用を防止するため、例えばポリビニルアルコール、特にケン化度99%以上のポリビニルアルコール、酸性セルロース類などのような酸素遮断性に優れたポリマーよりなる保護層を設けてもよい。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。
【0235】
また本発明の光重合性組成物は通常の光重合反応に使用できる。さらに、印刷版、プリント基板等作成の際のフォトレジスト等多方面に適用することが可能である。特に本発明の光重合性組成物の特徴である高感度性と可視光領域までの幅広い分光感度特性により、Ar+ レーザー、YAG−SHGレーザー等の可視光レーザー用の感光材料に適用すると良好な効果が得られる。
【0236】
本発明の光重合性組成物を用いた感光材料は、画像露光したのち、現像液で感光層の未露光部を除去し、画像を得る。これらの光重合性組成物を平版印刷版の作成に使用する際の好ましい現像液としては、特公昭57−7427号に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミンまたはジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%になるように添加される。
【0237】
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号および同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。
【0238】
さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0239】
本発明に用いられる活性光線は紫外光から可視光の幅広い領域のものであってよく、光源としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等が使用できる。
【0240】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0241】
実施例1
厚さ0.3mmのアルミニウム板を10重量%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20重量%硝酸で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1重量%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2 の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1重量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20重量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2 において、陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように、2分間陽極酸化処理した。その表面粗さを測定したところ、0.3μm (JIS
B0601によるRa表示)であった。
【0242】
このように処理された基板の裏面に下記のゾル−ゲル反応液をバーコーターで塗布し100℃で1分間乾燥し、乾燥後の塗布量が70mg/m2 のバックコート層を設けた支持体を作成した。
【0243】
ゾル−ゲル反応液
テトラエチルシリケート 50重量部
水 20重量部
メタノール 15重量部
リン酸 0.05重量部
【0244】
上記成分を混合、攪拌すると約5分で発熱が開始した。60分間反応させた後、以下に示す液を加えることによりバックコート塗布液を調製した。
【0245】
Figure 0003672137
【0246】
このように処理されたアルミニウム板上に、下記組成の光重合性組成物を乾燥塗布量が1.4g/m2となるように塗布し、80℃2分間乾燥させ感光層を形成させた。
【0247】
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.5g
アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合モル比80/20) 2.0g
光重合開始系 (表1)
増感色素
チタノセン化合物
(a)〜(h)の化合物
フッ素系ノニオン界面活性剤(F−177P) 0.03g
熱重合禁止剤N−ニトロソフェニルヒドロキシル 0.01g
アミンアルミニウム塩
顔料分散物 2.0g
顔料分散物の組成
組成: Pigment Blue 15:6 30重量部
アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 20重量部
(共重合モル比83/17)
シクロヘキサノン 35重量部
メトキシプロピルアセテート 35重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80重量部
メチルエチルケトン 20g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
【0248】
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3重量%の水溶液を乾燥塗布重量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥した。
【0249】
このようにして、本発明の光重合性組成物を用いた感光材料No. 1〜No. 36(表1)を作成した。
【0250】
上記の光重合性組成物において増感色素、チタノセン化合物および(a)〜(h)の化合物を表2に示すように変更するほかは同様にして光重合性組成物を得、これらの光重合性組成物を各々用いて、上記と同様にして比較例の感光材料No. 50〜No. 62を作成した。
【0251】
このようにして作成した感光材料上に富士写真フイルム(株)製の富士PSステップガイド(ΔD=0.15で不連続に透過濃度が変化するグレースケール)を密着させ、その上から露光した。
【0252】
光源には、キセノンランプを用い、ケンコー光学フィルターBP−49を通した光を0.0132mW/cm2で80秒間照射した。
【0253】
露光した感光材料は120℃にて20秒間加熱を行った後に現像した。感度は作成直後の感光材料について求め、現像後のPSステップガイドのクリアー段数で示した。この段数の値が大きいほど感度が高い。なお、現像は下記の現像液に25℃の条件下、10秒間浸漬して行った。
【0254】
DP−4(富士写真フイルム(株)製) 66.5g
水 881.4g
リポミンLA(20重量%水溶液) 52.1g
【0255】
結果を表1、表2に示す。なお、比較の増感色素であるアルコール可溶性エオシンE0 −1は以下に示すものであり、また(a)〜(h)の化合物のうち、a−90、d−1、e−34、e−41、f−1、h−1の構造式は以下のとおりである。
【0256】
【表1】
Figure 0003672137
【0257】
【表2】
Figure 0003672137
【0258】
【化72】
Figure 0003672137
【0259】
表1、表2に示された結果から、本発明の光重合性組成物において、光重合開始系として本発明の増感色素およびチタノセン化合物を含むものは、高感度であることが明白である。そして、さらに(a)〜(h)の化合物を併用することで、さらに高感度になることがわかる。これに対し、光重合開始系が増感色素を含まずチタノセン化合物のみしか含まないものとなったり、また増感色素が含まれていても式(I)の増感色素と異なる色素では、本発明の効果は得られない。
【0260】
実施例2
実施例1において、感光層を形成する際の光重合性組成物を下記組成とするほかは同様にして感光材料No.100〜No.133(表3)を作成した。
【0261】
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.5g
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合モル比75/25) 2.0g
光重合開始系 (表3)
増感色素
チタノセン化合物
(a)〜(h)の化合物
フッ素系ノニオン界面活性剤(F−177P) 0.03g
熱重合禁止剤N−ニトロソフェニルヒドロキシル 0.01g
アミンアルミニウム塩
顔料分散物 2.0g
顔料分散物の組成
組成: Pigment Blue 15:6 30重量部
アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 20重量部
(共重合モル比83/17)
シクロヘキサノン 35重量部
メトキシプロピルアセテート 35重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80重量部
メチルエチルケトン 20g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
【0262】
上記の光重合性組成物において増感色素、チタノセン化合物および(a)〜(h)の化合物を表4に示すように変更するほかは同様にして光重合性組成物を得、これらの光重合性組成物を各々用いて、上記と同様にして比較例の感光材料No. 150〜No. 162を作成した。
【0263】
これらの感光材料に対し、実施例1と同様の処理を行って同様に特性を調べた。結果を表3、4に示す。表中のE0 −1等は実施例1と同様のものである。
【0264】
【表3】
Figure 0003672137
【0265】
【表4】
Figure 0003672137
【0266】
表3、表4の結果から、実施例1と同様の傾向を示すことがわかった。
【0267】
実施例3
実施例1において、感光層を形成する際の光重合性組成物を下記組成とするほかは同様にして感光材料No.200〜No.204(表5)を作成し、同様にして特性を調べた。結果を表5に示す。表中のE0 −1は実施例1と同様のものである。
【0268】
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.8g
アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合モル比75/25) 1.7g
光重合開始系 (表5)
増感色素
チタノセン化合物
(a)〜(h)の化合物
フッ素系ノニオン界面活性剤(F−177P) 0.03g
熱重合禁止剤N−ニトロソフェニルヒドロキシル 0.01g
アミンアルミニウム塩
顔料分散物 2.0g
顔料分散物の組成
組成: Pigment Blue 15:6 30重量部
アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 20重量部
(共重合モル比83/17)
シクロヘキサノン 35重量部
メトキシプロピルアセテート 35重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80重量部
メチルエチルケトン 20g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
【0269】
【表5】
Figure 0003672137
【0270】
表5より、実施例1、2と同様の傾向を示すことがわかった。
【0271】
【発明の効果】
本発明の光重合性組成物は紫外光から可視光の幅広い領域の活性光線に対して高感度を有する。したがって光源としては超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、および太陽光等が使用できる。

Claims (1)

  1. i)エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合可能な化合物、ii)下記式(I)で表される増感色素およびiii)チタノセン化合物を含有する光重合性組成物。
    Figure 0003672137
    [式(I)において、A1 およびA2 は各々炭素原子またはヘテロ原子を表す。Q1 はA1 、A2 およびこれらに隣接する炭素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す1およびX2 は各々シアノ基または置換カルボニル基を表し、X1 とX2 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは1または2である。]
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