JP3671707B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造方法に関し、とくに、磁場により鋳型内の溶鋼流動を制御しつつ鋳造する鋼の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造においては、溶鋼中の非金属介在物(以下単に介在物ともいう)や気泡が凝固シェルに捕捉されて製品欠陥の原因となる。これを防止するために、以下に挙げるように、鋳型内の溶鋼に磁場を印加し溶鋼流動を制御する技術が多数提案されている。
【0003】
特開平2−284750号公報、特開平7−100607号公報、特開平7−100608号公報、特開平8−052549号公報には、鋳型長辺方向の全域に静磁場を印加し浸漬ノズルからの吐出流を制動する方法が開示されている。
特開昭63−154246号公報では鋳型長辺方向の短辺側上下端部に静磁極を設置し、また、特開平8−19842 号公報ではメニスカス部からノズル吐出口までの範囲に3組以上の静磁極を設置し、ノズル近傍で静磁場が弱くなるようにしてメニスカス部での溶鋼流速低減と渦発生抑制、およびノズル吐出口からの吐出流の減速、分散を図る方法を提案している。
【0004】
特開平2−37946 号公報には電磁攪拌によりメニスカスに水平旋回流をつくり、ノズル周りに熱供給する方法が開示されている。
特開平7−112247号公報には電磁攪拌によりメニスカスに水平旋回流をつくると共にノズル吐出口より下方に静磁場を印加し、メニスカス部溶鋼に凝固シェルの洗浄力を付与する方法が開示されている。
【0005】
特開平7−112246号公報ではストレート型のノズルを用い、鋳型上部に上向きの移動磁場を、下部に静磁場を印加する方法が開示されている。
特公平7−100223号公報では電磁攪拌用コイルに交直重畳電源をつなぎ、電磁制動力と電磁攪拌力を組み合わせて印加する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
鋳型内のメニスカス部においては、特にノズル近傍で溶鋼の流れが停滞し、介在物、気泡の集積が生じやすく、また、熱供給が不良となって、凝固シェルに大きな爪状の組織が発生して偏析を生じたり介在物、気泡が凝固シェルに捕捉されやすくなる。静磁場はノズルからメニスカスへの溶鋼流を制動、減速する電磁ブレーキ作用により、メニスカスのパウダ巻き込み、湯面変動によるノロ噛みを防止し、また介在物、気泡の浮上を促進するが、その反面、上記したノズル周りの熱供給不良を助長する。ノズル周りの溶鋼流動は極めて不規則であり、静磁場を印加しない状態でも一時的に溶鋼の淀みが発生することが観測される。したがって、特開昭63−154246号公報、特開平8−19842 号公報のように、ノズル近傍に静磁場が強く印加されないようにしても、溶鋼流の停滞を常に安定して防止することは困難である。
【0007】
一方、移動磁場でメニスカス溶鋼を電磁攪拌することで介在物、気泡が凝固シェルに捕捉されるのを防止する、あるいはノズル周りに十分に熱供給する方法では、電磁攪拌で誘起された溶鋼流動がパウダ巻き込みを引き起こす危険性が高くなる。特に電磁攪拌で誘起された流れが鋳型短辺壁へ衝突して大きな湯面変動が生じ、ノロ噛みあるいはパウダ巻き込みを発生する。またノズルからメニスカスへの流れと電磁攪拌で誘起された流れが干渉し渦を発生することでパウダの巻き込みが生じる。
【0008】
静磁場と移動磁場を幅方向に一様に重畳印加する方法では、攪拌と制動が同時に起こるが、電磁攪拌で誘起された流れが鋳型短辺壁へ衝突して湯面が大きく変動し、ノロ噛みあるいはパウダ巻き込みを発生する問題は免れない。
これら従来技術の問題に鑑み、本発明では、メニスカスでのパウダ巻き込み、ノロ噛みを防止し、かつノズル周りの溶鋼停滞をなくして、全幅で表面品質に優れた鋳片が得られる鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、連続鋳造鋳型内溶鋼に磁場を印加しながら鋳造する鋼の連続鋳造方法において、メニスカス部の長辺方向中心部に移動磁場を印加してノズル近傍の溶鋼を水平または垂直に流動させると共に、前記長辺方向中心部を除くメニスカス部の部分には静磁場を印加してこの部分の溶鋼流動を制動することを特徴とする鋼の連続鋳造方法である。
【0010】
本発明においてメニスカス部とは、鋳型内溶鋼のメニスカス(=湯面)から浸漬ノズルの吐出口深さ位置までの部分を指す。
前記移動磁場は凝固シェル界面の溶鋼流速を20〜50cm/sとするように印加し、前記静磁場は強さ0.1 〜0.5 Tで印加するのが好ましい。
なお、本発明では、鋳型内溶鋼のメニスカス部に上記方法にて磁場を印加することを必須とするが、必要に応じてメニスカス部以外の部位にも静磁場を印加することを妨げるものではない。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の基本的実施形態を示す正断面模式図である。図1において左右方向が長辺方向、奥行方向が短辺方向であり、1はノズル(浸漬ノズル)、2は鋳型(連続鋳造鋳型)、3はノズルからメニスカスへの流れ、4は静磁極、5は交番磁極、6はノズル吐出流、7は沿壁下降流、10はメニスカスである。
【0012】
メニスカス部の長辺方向中心部を挟んで交番磁極4の一方と他方を短辺方向に対向させ、メニスカス部の長辺方向中心部を除く部分を挟んで静磁極5の一方と他方を短辺方向に対向させている。
操業時には、交番磁極5によりメニスカス部の長辺方向中心部に移動磁場(交番磁界)を印加してノズル1近傍の溶鋼を水平または垂直に電磁攪拌すると共に、静磁極4によりメニスカス部の長辺方向中心部を除く部分に静磁場(静磁界)を印加してこの部分(ノズル1近傍以外の部分)の溶鋼流動を制動する。
【0013】
ノズル1近傍の溶鋼を電磁攪拌するから溶鋼の停滞を防止でき熱供給改善、凝固シェル洗浄の効果を高めて、介在物、気泡の凝固シェルへの捕捉を防止することができ、同時にノズル1近傍以外の部分の溶鋼流動を制動するから、ノズル1からメニスカス10への流れ3、電磁攪拌による流れ(図示せず)、および、これらの流れの干渉により副次的に発生する流れ(図示せず)によるパウダ巻き込みやノロ噛みを防止することができる。
【0014】
前記移動磁場は凝固シェル界面の溶鋼流速を20〜50cm/sとするように印加するのが好ましい。
その理由は、凝固シェル界面の溶鋼流速が20cm/s未満では、熱供給が不十分となって、大きな爪状の凝固組織が発生しやすくなり、また凝固シェル界面を洗浄する力が不十分となって介在物、気泡の凝固シェルへの捕捉を防止しにくくなり、一方、凝固シェル界面の溶鋼流速が50cm/s超では、流れが速すぎ、また湯面変動が大きくなって、パウダ巻き込みやノロ噛みが発生しやすくなるからである。
【0015】
前記静磁場は強さ0.1 〜0.5 Tで印加するのが好ましい。
その理由は、静磁場の強さが0.1 T未満では、制動力が不十分となって、ノズル近傍部の外側の不規則な流れによるパウダ巻き込みやノロ噛みを防止することが困難となり、一方、静磁場の強さが0.5 T超では、制動力がノズル近傍の流れにまで及ぶようになり、電磁攪拌の効果を弱めてしまうからである。
【0016】
図2、図3は、本発明の実施形態の例を示す平面模式図であり、図2、図3とも、交番磁極5はノズル1近傍に水平攪拌流8A をつくるように配置し、静磁極4は短辺方向(図の上下方向)では対向極性を違えて配置するが、長辺方向(図の左右方向)では対向極性を図2では違え(異種極対向型)、図3では同じ(同種極対向型)にしている。
【0017】
図4は、本発明の実施形態の例を示す正断面模式図であり、交番磁極5を、ノズル1近傍に垂直攪拌流8B をつくるように配置している。
図5は、本発明においてメニスカス部以外の部位にも静磁場を印加する実施形態の例を示す立体模式図である。この例では、メニスカス部の長辺方向中心部に対して交番磁極5、その両側に対して静磁極4を振り分け配置するが、この静磁極4を磁石9の一方の極にて構成し、磁石9の他方の極にて、メニスカス部の下方の部位に対して長辺方向全域に均等に静磁場を印加する静磁極4A を構成している。
【0018】
図2〜図5のいずれの形態を採用するかは、操業条件に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
【実施例】
鋳造幅1500mm、鋳造厚み220mm の連続鋳造鋳型を用いて鋳造速度2.0m/minで鋳造する連続鋳造操業において、メニスカス部溶鋼流動制御を図3に示した形態にて行いながら鋳造して実施例とし、一方、メニスカス部溶鋼流動制御を図6(a) 〜(e) に示す形態にて行いながら鋳造して比較例1〜5とし、得られた鋳片について熱延および冷延後のコイル表面欠陥発生率指数を調査した。
【0020】
実施例では、交番磁極と静磁極の溶鋼深さ方向中心位置はメニスカスから100mm 下方の位置にとり、交番磁極は鋳型長辺幅を中心として鋳型長辺幅の1/3 の区間に設置し、残りの区間に静磁極を設置した。移動磁場は、凝固シェル界面で20〜50m/s の溶鋼流速が得られるように印加し、静磁場は、強さ0.3 Tで印加した。
【0021】
比較例1(図6(a) )は磁場印加なしの例、比較例2(図6(b) )は実施例から交番磁極5を取り去った例、比較例3(図6(c) )は実施例と同じ磁極設置区間の全域に交番磁極5を配置した例、比較例4(図6(d) )は比較例3の交番磁極5を交流直流重畳印加用磁極11に置き換えた例、比較例5(図6(e) )は比較例3の交番磁極5を静磁極4に置き換えた例である。
【0022】
実施例と比較例1〜5のコイル表面欠陥発生率指数の鋳片幅方向分布を図7に示す。
磁場を印加しない比較例1では最も悪い結果となった。静磁場のみ印加する比較例2,5では電磁制動が効きすぎてノズル近傍の溶鋼への熱供給不良が生じ、偏析による幅中心部の欠陥を軽減することができなかった。一方、長辺方向全域に電磁攪拌を施す比較例3,4では溶鋼の鋳型短辺壁への衝突を十分緩和することができず、ノロ噛みやパウダ巻き込みによる幅端部の欠陥を軽減することができなかった。
【0023】
これら比較例に対し、実施例では、長辺方向中央部に電磁攪拌を施すと同時に長辺方向周辺部(中央部以外の部分)に電磁制動を施すため、幅中心部での偏析と幅端部でのノロ噛みやパウダ巻き込みの双方とも抑制することができ、表面欠陥が全幅にわたって軽減するという最も良い結果が得られた。
【0024】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、メニスカス部のノズル近傍部分の溶鋼流動を常に解消できて安定した熱供給を行い、同時にノズル近傍部分以外の部分の溶鋼流動の乱れを制動するから、鋳片圧延後の製品表面欠陥を製品全幅にわたり軽減することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的実施形態を示す正断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態の例を示す平面模式図である。
【図3】本発明の実施形態の例を示す平面模式図である。
【図4】本発明の実施形態の例を示す正断面模式図である。
【図5】本発明の実施形態の例を示す立体模式図である。
【図6】本発明の比較例を示す正断面模式図である。
【図7】実施例と比較例のコイル表面欠陥発生率指数の鋳片幅方向分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ノズル(浸漬ノズル)
2 鋳型(連続鋳造鋳型)
3 ノズルからメニスカスへの流れ
4,4A 静磁極
5 交番磁極
6 ノズル吐出流
7 沿壁下降流
8A 水平攪拌流
8B 垂直攪拌流
9 磁石
10 メニスカス(湯面)
11 交流直流重畳印加用磁極
Claims (1)
- 連続鋳造鋳型内溶鋼に磁場を印加しながら鋳造する鋼の連続鋳造方法において、メニスカス部の長辺方向中心部に移動磁場を印加してノズル近傍の溶鋼を水平または垂直に流動させると共に、前記長辺方向中心部を除くメニスカス部の部分には静磁場を印加してこの部分の溶鋼流動を制動することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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