JP3965545B2 - 鋼の連続鋳造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造において磁場による溶鋼流動制御を行う連続鋳造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造では、湯面におけるモールドパウダの巻き込み防止や、介在物、気泡の侵入による製品欠陥防止、不均一凝固防止を目的とした、磁場による溶鋼流動制御が行われている。
過大な溶鋼流動を制動するための電磁ブレーキ技術として、特開昭57−17356 号公報には、スラブ連鋳機の鋳型に電磁石を設置し、浸漬ノズルからの吐出流に垂直な磁場を印加して吐出流を制動する方法が提案されている。
【0003】
また、上記手法をさらに発展させたものとして、特開平2−284750号公報では鋳型全幅にわたる静磁場を浸漬ノズルの吐出口上部および下部に印加する方法が提案されている。
溶鋼の淀みを防止する目的の電磁攪拌として特開平2−37946 号公報ではメニスカスに低周波移動磁場を印加して溶鋼に流れを与えてパウダへの熱供給確保と凝固シェルへの介在物捕捉防止を行うことが提案されている。
【0004】
特開平1−228645号公報では中炭素鋼の縦割れ防止のため電磁攪拌によりメニスカス近傍で溶鋼流速40〜120cm/s で流動させる方法が提案されている。
電磁ブレーキと電磁攪拌を組み合わせた方法も提案されている。特開昭61−193755号公報では浸漬ノズルの吐出流に静磁場を印加し大形介在物の浮上を促進しその下で電磁攪拌による水平流により小型介在物が凝固シェルに捕捉されるのを防止する方法が示されている。特開平5−23803 号公報では鋳型内で0.1 〜0.4m/sの溶鋼流が得られるように電磁攪拌し、メニスカス下1.5 mから連鋳機の垂直部にかけて幅方向均一な静磁場を印加して介在物の侵入を防止することが提案されている。特開平5−154620号公報ではメニスカスを電磁攪拌し、浸漬ノズル吐出口の上下に幅方向均一な静磁場を印加する方法が提案されている。
【0005】
また、特開平9−262650号公報、特開平9−262651号公報に、同一鉄心に巻いた複数のコイルに直流と三相交流を切り替えて流すことにより、鋳型内に移動交流磁場や静磁場を印加する方法が提案されている。
特開平10−305353号公報では静磁場と移動磁場を重畳させて浸漬ノズル吐出口上下に印加する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
浸漬ノズルからの溶鋼の吐出速度が突発的あるいは定常的に大きい操業を行う場合、湯面近傍の溶鋼流れは大きくなりパウダ巻き込みを引き起し、鋳型短辺壁近傍の下降流も大きくなって介在物が鋳片内未凝固溶鋼浴深部まで侵入してしまう。また、凝固シェル前面の溶鋼流動が緩慢になると、溶鋼の流れによる介在物の洗い流し(以下、Washing 効果と記す)が弱くなり、介在物の凝固シェルへの捕捉が容易となったり、初期凝固部では熱供給低下で爪状の凝固組織が大きく成長してパウダの捕捉や浮上してくる気泡、介在物の捕捉を引き起こす。
【0007】
したがって、吐出流からの上向き流および下向き流はこれを減衰させ、同時に強固シェル前面の溶鋼流動はこれを活発化させることが重要である。
特開平2−37946 、特開平1−228645、特開平5−23803 の各号公報の、電磁攪拌によるメニスカス部の流動付与では、吐出流からの上向き流および下向き流を減衰させる機能はないため、パウダ巻き込みや介在物の鋳片内未凝固溶鋼浴深部侵入を防止することは困難である。
【0008】
また、特開平2−37946 、特開平1−228645、特開平5−23803 、特開平5−154620、特開平10−305353の各号公報の、電磁攪拌でメニスカス部に溶鋼の鋳型周方向への旋回流を作るという手段では、図4に示すように浸漬ノズル2の吐出口から出た溶鋼流れが一部反転してメニスカスへ浮上してくる流れ(吐出反転浮上流5)と電磁攪拌による旋回流4とが衝突し、メニスカス部でのパウダ巻き込みを引き起こす渦6Aや、介在物の凝固シェルへの捕捉を助長する淀み6Bが形成される。なお、特開平10−305353公報技術のように移動磁場に静磁場を重畳しても吐出反転浮上流5と旋回流4との衝突を防ぐことは困難である。
【0009】
特開平2−284750号公報の、鋳型全幅にわたる静磁場を浸漬ノズルの吐出口上部および下部に印加する方法では、凝固シェル前面の溶鋼流動を活発化させる機能がなくWashing 効果に乏しい。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、吐出流からの上向き流、下向き流を減衰させ、同時に凝固シェル前面の溶鋼流動を活発化し、しかもメニスカス部での電磁攪拌旋回流と吐出反転浮上流との干渉による渦や淀みの形成を防止可能な鋼の連続鋳造方法および装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、まず、図2に示すように、鋳型3の、浸漬ノズル2吐出口14より上方および下方の部位に、直流電磁石8を配置して鋳造厚み方向(紙面直角方向)に直流磁場のみを二段に印加する実験を多数行い、数値計算および鋳片凝固組織調査から、同図に示すような吐出流起因溶鋼流動パターン9が発生することを究明した。この方法によれば、湯面流速の乱れが減少するため、パウダ巻き込みが著しく減少し、また、鋳型内の深い位置への大型介在物の侵入も著しく減少することが判明した。しかし、直流磁場による流れの層流化のため、凝固シェル前面の溶鋼流動が緩慢となり、凝固シェル前面でのWashing 効果を十分得られず、鋳片に非金属介在物が捕捉され欠陥となる場合があることが確認された。
【0011】
そこで、次に、前記吐出流起因溶鋼流動パターン9を大きく歪ませることなく、凝固シェル前面での溶鋼流動を活性化させる手段を鋭意探究し、その結果、図1に示すように、図2の直流電磁石8に代えて、交流直流両用電磁石7とし、かつ、この交流直流両用電磁石7を、交流磁場が矢印10の方向に移動する、すなわち鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動するように構成することにより、凝固シェル前面での溶鋼流動が顕著に活性化するという知見を得た。
【0012】
本発明は、この知見に基づいて成されたものであり、その要旨とするところは、以下に記載の鋼の連続鋳造方法および装置にある。
(1)鋳型内溶鋼の、浸漬ノズル吐出口より上方および下方の部位に交流磁場と直流磁場とを重畳して鋳造厚み方向に印加しながら連続鋳造する方法において、前記交流磁場を鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【0013】
(2)前記交流磁場の周波数は0.1 〜10Hzである(1)記載の鋼の連続鋳造方法。
(3)鋳型内溶鋼の、浸漬ノズル吐出口より上方および下方の部位に磁場を印加しながら連続鋳造する装置において、鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動する交流磁場を発生させるコイルと直流磁場を発生させるコイルとを共通の鉄心に巻き、磁場の方向と鋳造厚み方向が一致するように鋳型の鋳造厚み方向両側に配設してなることを特徴とする鋼の連続鋳造装置。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、鋳造方向(鋳型高さ方向)の二位置(二段)に交流直流重畳磁場を、その印加方向を鋳造厚み方向(鋳型短辺方向)にとって、印加する点は、従来と同様であるが、本発明では交流磁場の移動方向が従来と異なる。すなわち、従来では、交流磁場が鋳造幅(鋳型長辺壁幅)の一端から他端に向かって移動するのに対し、本発明では、交流磁場が鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動する。従来のような交流磁場の移動のさせ方では、これに直流磁場(静磁場と同義)を重畳印加しても、図4に示したように、鋳型周方向に沿った水平な旋回流が生じ、この旋回流と吐出反転浮上流との衝突による渦や淀みの発生を防ぎ得ず、湯面でのパウダ巻き込みや、凝固シェル前面での気泡、介在物の捕捉を回避することは困難である。
【0015】
本発明では、交流磁場を鋳造幅中心に関して幅方向で左右対称に移動させるようにしたから、上記のような旋回流を生じることがなく、したがって、吐出反転浮上流は衝突の相手を失い、渦、淀みの発生もない。この交流磁場(左右対称移動交流磁場)により付勢された左右からの流れは鋳造幅中央で合体するが、この合体流は乱れのない層流状態を維持しながら、湯面(メニスカス)付近の流れは下降し、吐出口より下方の流れは上昇することが実験および計算により確かめられた。
【0016】
また、交流磁場は、表皮効果により鋳造厚み表面側(凝固シェル前面付近)では直流磁場による制動力に勝る攪拌力を発揮してこの部位での流れを活性化し、気泡、介在物の鋳片への捕捉を防止する。一方、鋳造厚み中心側では交流磁場による攪拌力は減衰し、直流磁場の制動力が主体的に作用する結果、この部位での流れ(吐出流からの上向き流および下向き流)が減衰し、湯面流速の乱れが抑えられてパウダ巻き込みが防止され、同時に下降流速が低減されて大型介在物の深部侵入も防止される。
【0017】
本発明では、交流磁場の周波数を0.1 〜10Hzとするのが好ましい。この周波数が0.1 Hz未満では凝固シェル前面にWashing 効果を奏し得るに十分な溶鋼流動を付与することが困難であり、一方、10Hz超では鋳型の銅板で交流磁場が減衰し、やはり凝固シェル前面にWashing 効果を奏し得るに十分な溶鋼流動を付与することが困難であるからである。
【0018】
図3は、本発明に係る上記方法の実施に適した装置の一例を示す平断面模式図(a)および(b)側断面模式図である。一対の交流直流両用電磁石7が、浸漬ノズル2を浸漬した鋳型3の鋳造厚み方向両側で対向する形で配設されている。交流直流両用電磁石7の鉄心部(ヨーク)12は上下に磁極を有し、上下の磁極(上極、下極)はそれぞれ浸漬ノズル2吐出口14の上方、下方にあり、その延長方向は鋳造幅方向に一致させてある。なお、直流コイル8Aの巻き方は、鋳型3の両側で対向する磁極の極性が相補的(一方がNなら他方はS)となるような巻き方とする。
【0019】
各磁極の先端部は複数対(この例では3対)に枝分かれし、各枝には交流用コイル11を巻き、各枝に共通の根元には直流コイル8Aを巻いてある。この例では交流コイル11に三相交流を流すが、三相交流の互いに異なる各相をU相、V相、W相とすると、鋳造幅中心から左右に数えて1番目の交流コイル11にはW相、2番目にはV相、3番目にはU相を流す。このように、多相交流電流の互いに異なる各相を鋳造幅中心に関して幅方向に左右対称に配列することにより、その多相交流電流により発生する交流磁場を、矢印10で示す方向、すなわち鋳造幅の両端から左右対称に中心に向かう方向に移動させることができる。
【0020】
また、交流コイルと直流コイルを同じ磁極の枝分かれ部と根元部に巻くことで、交流直流重畳磁場の印加箇所を精度よく設定できるとともに、交流磁場、直流磁場の強さや周波数を独立に調整することも容易である。
なお、凝固シェル13前面の溶鋼流動を鋳造幅方向で均一化する観点から、磁極先端部の枝分かれの個数は、これを鋳造幅に応じて設定することが好ましい。
【0021】
また、凝固シェル前面の溶鋼流動を鋳造幅全体にわたり一様に活性化する観点から、交流直流両用電磁石はこの例のように鋳造幅全体を覆う恰好に設置することが好ましい。
【0022】
【実施例】
垂直曲げ型の連続鋳造機により、幅1500mm厚み220mm の低炭素アルミキルド鋼を、浸漬ノズル吐出角度:水平から下向きに15°、鋳造速度:1.2m/minおよび2.5m/minで鋳造する際に、図3に示したものと同様の装置を用い、表1に示す各種の磁場印加条件にてストランドの鋳型部位に磁場を印加しながら鋳造を行い、得られた鋳片について、圧延後の鋼板表面欠陥検査による表面欠陥指数と、鋼板プレス加工時の介在物起因加工割れ検査による加工割れ指数を調査した。表面欠陥指数、加工割れ指数は、それぞれ電磁流動制御を実施しない場合を1.0 とした指数である。
【0023】
なお、表1中、移動型をA型とした磁極では、従来のように溶鋼に水平旋回流を付与するべく、図3において、三相交流の幅方向相配列を図3記載の配列に代えて、左から順にU相、V相、W相、U相、V相、W相とした。これにより発生する交流磁場(A型交流磁場と称する;従来の移動磁場に該当)は鋳造幅の一端から他端に向かって移動する。これに対し、移動型をB型とした磁極では、本発明に則り溶鋼に鋳造幅両端から中心に向かう流れを付与するべく、三相交流の幅方向相配列を図3記載の配列の通り左右対称とした。これにより発生する交流磁場(B型交流磁場と称する)は鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動する。
【0024】
また、表1中、交流磁場の強さは単独印加時の鋳型銅板内側位置での磁束密度実効値、直流磁場の強さは単独印加時の鋳造厚み中心位置での磁束密度値でそれぞれ示した。交流磁場、直流磁場双方とも強さが0Tでない極が、交流直流重畳磁場を印加した極である。表1の条件1〜5は本発明範囲外の比較例であり、条件6が本発明範囲内の実施例である。
【0025】
表面欠陥指数および加工割れ指数の調査結果を表1に示す。なおこの調査結果は二つの鋳造速度条件別調査値の平均値である。
【0026】
【表1】
【0027】
比較例では、A型交流磁場と直流磁場を単独であるいは重畳して印加する条件としている。直流磁場のみの場合、溶鋼熱供給不良となり初期凝固部に爪状組織が成長する。この爪状組織はパウダを噛込み、表面欠陥指数を高める。A型交流磁場のみの場合、爪状組織成長は抑制できるが、電磁ブレーキ力に乏しいため介在物の鋳片内未凝固溶鋼浴深部侵入が生じるほか、メニスカス部で鋳型周方向の旋回流と吐出反転浮上流とが衝突し渦や淀みが形成される。介在物の鋳片内未凝固溶鋼浴深部侵入は加工割れ指数を高める。渦はパウダ巻き込みを生じ、淀みは介在物の凝固シェルへの捕捉を助長していずれも表面欠陥指数を高める。A型交流磁場に直流磁場を重畳すると、介在物の深部侵入は抑制できるが、渦や淀みは解消できない。そのため、比較例では、上下両極にA型交流磁場・直流磁場を重畳印加したベストの条件5でも、加工割れ指数は0.1 に低減するものの表面欠陥指数はなお0.2 と高い。
【0028】
これに対し、実施例では、条件5においてA型交流磁場に代えてB型交流磁場とした条件6(周波数は2Hzから5Hzに最適化)を採用したことにより、凝固シェル前面でのWashing 効果を強化し、鋳造厚み中心部には電磁ブレーキ力を作用させて溶鋼流(吐出流からの上向き流、下向き流)の流速低減・層流化を促進し、さらにメニスカス部での旋回流生成を抑制してそこでの渦や淀みの形成をなくしたので、比較例では到達できなかった表面欠陥指数、加工割れ指数0.05に到達することができた。
【0029】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、鋼の連続鋳造において、吐出流からの上向き流、下向き流を減衰させ、同時に凝固シェル前面の溶鋼流動を活発化し、しかもメニスカス部での電磁攪拌旋回流と吐出反転浮上流との干渉による渦や淀みの形成を防止できるようになるので、一段と高品質の鋳片を製造できるようになるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】左右対称移動交流磁場と直流磁場との重畳二段印加による吐出流起因溶鋼流動パターンを示す側面模式図である。
【図2】直流磁場単独二段印加による吐出流起因溶鋼流動パターンを示す側面模式図である。
【図3】本発明に係る装置の一例を示す平断面模式図(a)および(b)側断面模式図である。
【図4】メニスカス部での電磁攪拌による旋回流と吐出反転浮上流との干渉を示す平断面模式図である。
【符号の説明】
1 交流電磁石
2 浸漬ノズル
3 鋳型
4 旋回流
5 吐出反転浮上流
6A 渦
6B 淀み
7 交流直流両用電磁石
8 直流電磁石
8A 直流コイル
9 吐出流起因溶鋼流動パターン
10 本発明に係る交流磁場の移動方向を示す矢印
11 交流コイル
12 鉄心部(ヨーク)
13 凝固シェル
Claims (3)
- 鋳型内溶鋼の、浸漬ノズル吐出口より上方および下方の部位に交流磁場と直流磁場とを重畳して鋳造厚み方向に印加しながら連続鋳造する方法において、前記交流磁場を鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
- 前記交流磁場の周波数は0.1 〜10Hzである請求項1記載の鋼の連続鋳造方法。
- 鋳型内溶鋼の、浸漬ノズル吐出口より上方および下方の部位に磁場を印加しながら連続鋳造する装置において、鋳造幅の両端から中心に向かって左右対称に移動する交流磁場を発生させるコイルと直流磁場を発生させるコイルとを共通の鉄心に巻き、磁場の方向と鋳造厚み方向が一致するように鋳型の鋳造厚み方向両側に配設してなることを特徴とする鋼の連続鋳造装置。
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