JP3671441B2 - シ−トカバ−構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、主として車両用シ−トのシ−トカバ−構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用シ−トにおいて、図8と図9に示すようにモ−ルドパッド104を被覆するシ−トカバ−111が皮革表皮115及びカバ−パッド103によって形成され、そのシ−トカバ−111の所望とする部分に装飾ひだ121がギャザ−縫いによって形成されたものが知られている。
また、従来、ギャザ−縫いによる装飾ひだとは異なるが、シ−トカバ−の皮革表皮に装飾しわが形成されるものには、例えば、実開平3-60599 号公報に開示されたものが知られている。
これにおいては、図10と図11に示すように、皮革表皮215の裏面側に合成樹脂製綿からなる軟材216が設けられる。そして、モ−ルドパッド204側に皮革表皮215及びカバ−パッド203が吊込まれ、軟材216の密度の高低差に応じて皮革表皮215が軟材216に喰込まれることで、深いしわ221aと浅いしわ221bとがそれぞれ形成されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図8に示すように、ギャザ−縫いによって装飾ひだ121を形成する従来のものにおいては、装飾ひだ121の配列間隔、大きさ、長さ等をシ−トカバ−製品間にバラツクことなく形成することは困難であり、皮革表皮115の硬さ、肉厚等の差によって異なったものとなる。さらに、図9に示すように、着座者の荷重によって装飾ひだ121が偏平につぶされ、装飾ひだ形状に戻らなくなることがあり、見栄えが悪化される。
また、図10と図11に示す従来のものにおいて、皮革表皮215のしわ221a,221bが偏平につぶされる不具合は防止できるが、軟材216の密度の高低差に基づく皮革表皮215の喰込み量によって深いしわ221aと浅いしわ221bとが形成されるため、しわの配列間隔、大きさ、長さがシ−トカバ−ごとに大きく異なったものとなり、シ−トカバ−製品間に生じるバラツキが一層大きくなる。
【0004】
この発明の目的は、前記従来の問題点に鑑み、皮革表皮に装飾ひだを所望する間隔及び長さに正確に形成することができるとともに、装飾ひだが偏平につぶされて戻らなくなる不具合を防止することができるシ−トカバ−構造を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るシ−トカバ−構造は、分割されたカバー材が相互の縫い合わせ代においてギャザー縫いによって縫い合わされるシ−トカバ−構造であって、
前記分割されたカバー材は、皮革表皮と、その皮革表皮の裏面に一体状に接着された裏打ちパッドと、を備え、
前記分割されたカバー材の各皮革表皮の裏打ちパッドには所要長さの複数のスリット溝が平行状に配列され、
前記分割されたカバー材の各皮革表皮及びその各裏打ちパッドが前記各複数のスリット溝の部分をそれぞれ谷部として波打ち状に縮められながら前記分割されたカバー材の相互の縫い合わせ代が前記複数のスリット溝に対し交差する方向にギャザー縫いによって縫い合わされることで、前記各複数のスリット溝の部分を谷部としてこれら各複数のスリット溝の方向に延びる装飾ひだが前記分割されたカバー材によってそれぞれ形成されていることを特徴とする。
また、請求項2の発明に係るシ−トカバ−構造は、請求項1のシ−トカバ−構造において、分割されたカバー材の各皮革表皮の裏面に対する各裏打ちパッドは柔軟弾性を有する繊維層と織布とがニ−ドルパンチによって絡合されて形成され、前記分割されたカバー材の各皮革表皮の裏面と前記各裏打ちパッドの織布とがそれぞれ接着剤によって接着されていることを特徴とする。
【0006】
【作用】
前記したように構成される請求項1に記載のシ−トカバ−構造において、装飾ひだは、分割されたカバー材の各皮革表皮及びその各裏打ちパッドの所要長さの複数のスリット溝の部分をそれぞれ谷部として波打ち状に縮められながら分割されたカバー材の相互の縫い合わせ代が複数のスリット溝に対し交差する方向にギャザー縫いによって縫い合わされることで形成されるため、シ−トカバ−製品間において、装飾ひだがバラツクことなく均一なものとなる。
さらに、裏打ちパッドの所要長さの複数のスリット溝の配列ピッチや長さを適宜に変えることで、所望とする装飾ひだが任意に得られる。
また、装飾ひだは裏打ちパッドが有する柔軟弾性に基づく弾発力によって偏平につぶされることが防止される。
請求項2に記載のシ−トカバ−構造において、裏打ちパッドは、繊維層の表面にニ−ドルパンチによって織布が絡合されて形成され、皮革表皮の裏面と織布とが接着剤によって接着されることで、前記接着剤が繊維層内に浸透して繊維層のもつ柔軟弾性を阻害する不具合が防止されるとともに、繊維層の一部の繊維が織布を通して突出され、その織布と皮革表皮との間に挟まれた状態で接着剤によって接着される。
【0007】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を図1〜図7にしたがって説明する。
図7において、車両用シ−ト1はシ−トクッション2とシ−トバック41とを主体として構成されている。
図1に示すように、シ−トクッション2は、クッションフレ−ム3に支持されたモ−ルドパッド4がシ−トカバ−11によって被覆されて構成されている。なお、モ−ルドパッド4は従来と同様にしてウレタンフォ−ムのモ−ルド加工によって形成され、その上面の所要位置には、シ−トカバ−11を吊込むための吊込み溝5が凹設されている。
前記シ−トカバ−11は、着座部分をなす天板部12と、左右両側の側かまち部23と、前側の前かまち部26とがミシン縫いによって縫合されて構成されている。
【0008】
図3に示すように、シ−トカバ−11の天板部12は、前後(左右でもよい)に分割されたカバ−材13,14がギャザ−縫いによって縫合されて形成されるもので、各カバ−材13,14は、牛革、羊革等のなめし革よりなる皮革表皮15と、該皮革表皮15の裏面に一体に接着された裏打ちパッド16とを備えている。
【0009】
図4に示すように、裏打ちパッド16は、羊毛繊維、綿繊維、化学繊維等の繊維のわたが柔軟弾性を保った状態でマット状に圧縮された繊維層17の表面に綿布、化学繊維布等のような織布18がニ−ドルパンチによって絡み合されて積層状をなすとともに繊維層17の繊維の一部17aが織布18を通して織布18上に突出されている。
【0010】
前記裏打ちパッド16には、ギャザ−縫いによって所望する装飾ひだ21を形成するために、図3に示すように、長、短所要長さの複数条のスリット溝21が平行に配列されて貫設されている。
そして、皮革表皮15の裏面に裏打ちパッド16が接着される際、まず、図4に示すように、裏打ちパッド16の織布18の上面にホットメルト系接着剤19が塗布され、その上に皮革表皮15が重合された状態のもとで、前記ホットメルト系接着剤19が熱溶融されることで、図5に示すように、皮革表皮15の裏面に接着剤19によって裏打ちパッド16が接着される。
【0011】
このようにして、繊維層17の表面にニ−ドルパンチによって織布18を積層して接着剤19を塗布することで、接着剤19が繊維層17内に深く浸透して繊維層17のもつ柔軟弾性を阻害する不具合を防止することができるとともに、繊維層17の繊維の一部17aが織布18を通して突出され、その織布18と皮革表皮15との間に挟まれた状態で接着剤19によって接着されるため、接着が確実かつ強固となり、剥れを防止することができる。
【0012】
図2と図6に示すように、前記天板部12の各カバ−材13,14は、その裏打ちパッド16の各スリット溝20を谷部として波打ち状に縮められながらギャザ−縫いによって縫合されることで、天板部12には、前記各スリット溝20の部分を谷部とする装飾ひだ21が形成されている。
図1と図2に示すように、前記天板部12の裏打ちパッド16の背面側にはウレタンフォ−ムよりなるカバ−パッド25が、その周囲においてミシン縫いによって縫着されている。
【0013】
前記天板部12の左右両側に縫着された側かまち部23の皮革表皮24及び前側に縫着された前かまち部26の皮革表皮27は前記天板部12の皮革表皮15と同材質のなめし革より形成され、これら各かまち部23,26の皮革表皮24,27の裏面には、必要に応じてウレタンフォ−ムよりなるカバ−パッド25がその周縁部において縫着されている。
【0014】
また、図1に示すように、天板部12と各かまち部23,26との縫着部には吊ワイヤが内挿された吊袋28が共縫いされ、前記縫着部がその吊袋28においてモ−ルドパッド4の吊込溝5に引込まれ、同吊袋28のワイヤがモ−ルドパッド4のインサ−トワイヤにCリング29によって止着されることで、モ−ルドパッド4の上面にシ−トカバ−11の天板部12が張設されている。
シ−トカバ−11の側かまち部23及び前かまち部26においては、その先端部裏面に縫着された吊り袋30の吊りワイヤがモ−ルドパッド4の裏面側のインサ−トワイヤにCリング31によって止着されることで、モ−ルドパッド4の左右両側部及び前側部に各かまち部23,26から張設され、これによってモ−ルドパッド4がシ−トカバ−11によって被覆されている。
【0015】
また、シ−トバック41のモ−ルドパッドに対するシ−トカバ−42においても、その天板部43は前記シ−トクッション2の天板部12とほぼ同様にして構成される。
【0016】
前記したように構成されるこの実施例のシ−トカバ−構造において、天板部12の装飾ひだ21は、同天板部12の裏打ちパッド16の各スリット溝20の部分を谷部としてギャザ−縫いによって形成されるため、シ−トカバ−製品間に装飾ひだ21がバラツクことなく均一なものとなる。
さらに、裏打ちパッド16のスリット溝20の配列ピッチや長さを適宜に変えることで、所望とする装飾ひだ21が任意に得られる。
【0017】
また、装飾ひだ21は裏打ちパッド16が有する柔軟弾性に基づく弾発力によって偏平につぶされることが防止され、装飾ひだ21の形状が長期間にわたって保持される。
なお、前記実施例においては、シ−トカバ−11の天板部12に装飾ひだ21が形成される場合を例示したが、これに限るものではない。例えば、側かまち部23又は前かまち部26に形成してもよい。
また、前記実施例においては裏打ちパッド16が繊維層19と織布18とが積層されて構成される場合を例示したが、これに限るものではなく、例えば裏打ちパッド16がウレタンフォ−ム単体で形成され、その裏打ちパッド16にスリット溝20を形成することで、前記実施例と略同様の作用・効果を奏する。
【0018】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1の発明によれば、シ−トカバ−製品間おいて装飾ひだをバラツクことなく均一に形成することができるとともに、裏打ちパッドのスリット溝の配列ピッチや長さを適宜に変えることで、所望とする装飾ひだを任意に形成することができる。さらに、裏打ちパッドが有する柔軟弾性に基づく弾発力によって装飾ひだが偏平につぶされることを防止して、装飾ひだの形状を長期間にわたって保持することができる。
また、請求項2の発明によれば、裏打ちパッドは、繊維層の表面にニ−ドルパンチによって織布が絡合されて形成され、皮革表皮の裏面と織布とが接着剤によって接着されることで、前記接着剤が繊維層内に浸透して繊維層のもつ柔軟弾性を阻害する不具合を防止することができるとともに、皮革表皮と裏打ちパッドとを確実かつ強固に接着することができ、剥れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例のシ−トカバ−構造を示す断面図である。
【図2】 同じく要部を拡大して示す断面図である。
【図3】 同じくシ−トカバ−の天板部の構成部品を分離した状態を示す斜視図である。
【図4】 同じくシ−トカバ−の天板部における皮革表皮と裏打ちパッドとを接着する前の状態を示す断面図である。
【図5】 同じく皮革表皮の裏面に裏打ちパッドを接着した状態を示す断面図である。
【図6】 同じくシ−トカバ−の天板部のカバ−材をギャザ−縫いした状態を示す斜視図である。
【図7】 同じくシ−トカバ−構造を採用した車両用シ−トを示す斜視図である。
【図8】 従来のシ−トカバ−構造を示す断面図である。
【図9】 同じく装飾ひだが偏平につぶされた状態を示す断面図である。
【図10】 従来の他のシ−トカバ−構造を示す斜視図である。
【図11】 同じく断面図である。
【符号の説明】
1 車両用シ−ト
11 シ−トカバ−
15 皮革表皮
16 裏打ちパッド
17 繊維層
18 織布
19 接着剤
20 スリット溝
21 装飾ひだ

Claims (2)

  1. 分割されたカバー材が相互の縫い合わせ代においてギャザー縫いによって縫い合わされるシ−トカバ−構造であって、
    前記分割されたカバー材は、皮革表皮と、その皮革表皮の裏面に一体状に接着された裏打ちパッドと、を備え、
    前記分割されたカバー材の各皮革表皮の裏打ちパッドには所要長さの複数のスリット溝が平行状に配列され、
    前記分割されたカバー材の各皮革表皮及びその各裏打ちパッドが前記各複数のスリット溝の部分をそれぞれ谷部として波打ち状に縮められながら前記分割されたカバー材の相互の縫い合わせ代が前記複数のスリット溝に対し交差する方向にギャザー縫いによって縫い合わされることで、前記各複数のスリット溝の部分を谷部としてこれら各複数のスリット溝の方向に延びる装飾ひだが前記分割されたカバー材によってそれぞれ形成されていることを特徴とするシ−トカバ−構造。
  2. 請求項1のシ−トカバ−構造において、分割されたカバー材の各皮革表皮の裏面に対する各裏打ちパッドは柔軟弾性を有する繊維層と織布とがニ−ドルパンチによって絡合されて形成され、前記分割されたカバー材の各皮革表皮の裏面と前記各裏打ちパッドの織布とがそれぞれ接着剤によって接着されていることを特徴とするシ−トカバ−構造。
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