JP3670715B2 - 精密洗浄方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、精密部品から汚れ成分を除去するための洗浄方法に関し、さらに詳しくは、機械部品、電気電子部品、光学素子、半導体部品およびそれらを加工する際に用いられる治工具類などの精密部品から、加工油、加工屑、グリース、ワックス、フラックス、ピッチあるいは手脂などの汚れ成分を除去して、高品質に洗浄する精密洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、機械部品はトリクロロエタン、トリクロロエチレン、エチレンクロライドなどの塩素系溶剤、あるいはケロシン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素系溶剤を用いて浸漬、超音波振動、バレルなどの方法で汚れ成分を除去してきた。一方、電気電子部品および光学素子は主にトリクロロエタン、フロン113などの塩素系溶剤あるいはフロン系溶剤を用いて汚れを除去してきた。
【0003】
ところがトリクロロエタン、フロンなどの塩素系およびフロン系溶剤は、オゾン層破壊の問題からモントリオール議定書締結により1996年以降の使用ができなくなる問題点がある。また、トリクロロエチレン、エチレンクロライド等の塩素系溶剤は地下水を汚染する問題があり、環境汚染の点からその使用を継続することは好ましくない。ケロシン、ベンゼンなどの炭化水素系溶剤は、洗浄性が優れ、乾燥性にも優れているが、有機則で規制の対象となるものがあると共に、発癌性が大きいことが明らかになっており、人体安全性上その使用は好ましくなく、しかも、発臭性があって使用上、臭いに問題がある。
【0004】
このようなことから地球環境問題、安全指向の点で、これらの洗浄剤の代替品が種々開発されている。例えば機械部品用としては水系洗浄剤やグリコールエーテル類を主成分とする洗浄剤が提案されている。また、電気電子部品、特に電気実装基板用としては、上記グリコールエーテル類やリモネンなどのテルペン類を主成分とする洗浄剤が提案されている。
【0005】
一方、特開平5−4076号公報には、洗浄性および仕上がり性に優れ、短時間で乾燥可能な機械部品の洗浄方法として、沸点が100°C〜350°Cの炭化水素を主成分とする洗浄剤で汚れを除去した後、沸点が80°C〜200°Cの完全フッ素化化合物で仕上げる洗浄方法が提案されている。また、特開平5−43893号公報には、ナフタリン、ビフェニルを実質的に含まない沸点150〜240°Cの炭化水素留分を主成分とする洗浄剤組成物を用いて洗浄することが記載されている。これにより環境汚染がなく、安全性および汚れの除去性に優れ、しかも安価な洗浄を可能としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらグリコールエーテル類を主成分とする洗浄剤は、洗浄性に優れるが臭いが強く、しかも乾燥性が劣るものが多いという問題点を有し、リモネンなどのテルペン類を主成分とする洗浄剤は安全性および洗浄性に優れるが、同様に臭いが強い問題を有している。しかもテルペン類は天然物由来であるため、品質安定性に欠けると共に、量的に安定供給できない不便さを有している。
【0008】
一方、水系洗浄剤は安全性及び安定供給という点で優れているが、水系洗浄剤を用いる洗浄では、洗浄剤を置換するリンス水の処理方法、乾燥方法および金属に対する錆の発生を考慮する必要があり、設備的に、しかも被洗浄物に大きな制約があることが問題点となっている。
【0009】
次に、特開平5−4076号公報のように、炭化水素を主成分とする洗浄剤で汚れを除去した後、完全フッ素化化合物で仕上げる方法は、洗浄性および仕上がり性に優れ、短時間で乾燥可能であり、さらに水を用いていないため排水処理および錆の問題もないが、仕上げに用いられる完全フッ素化化合物が非常に高価であるという問題を有している。このため、高度の密閉性の洗浄装置を用いたり、この洗浄装置の蒸気回収装置を取り付けて、完全フッ素化化合物の消費量を抑制する等の特別な工夫が必要となり、装置が複雑化し、制御も面倒となる新たな問題が生じている。
【0010】
特開平5−43893号公報に記載の洗浄剤組成物は環境汚染がなく、汚れの除去性に優れ、安価であるという利点を有しているが、多くの種類の炭化水素の混合物であるため、乾燥工程後に被洗浄物表面にシミが発生しやすく、精密洗浄の用途に用いることが困難である。また、発癌性の疑いのある芳香族炭化水素分を100%除去できないため、人体安全性に問題があると共に、臭いが強いという問題点がある。
【0011】
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたものであり、精密部品に付着している汚れ成分を、環境汚染がなく、洗浄性および乾燥性に優れ、安価にそして高品質に除去することが可能な精密洗浄方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段および作用】
上記目的を達成する本発明の洗浄方法は、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素からなる洗浄剤を用いて被洗浄物から汚れを除去することを特徴とする。この洗浄において、前記飽和炭化水素からなる洗浄剤として、イソパラフィンを用いることができ、また、この飽和炭化水素からなる洗浄剤の主成分として炭素数9のイソノナンとすることができる。
【0013】
以上の本発明では洗浄剤として、飽和炭化水素を用いるものである。炭化水素類としては、石油を精製した際に分溜される留分を金属触媒などを用いて水素添加したり、分離吸着や蒸留などを用いて精製したものが従来より洗浄剤として用いられてきた。これら洗浄剤は、オゾン層を破壊したり、地下水を汚染するという環境汚染の恐れがない、他の種類の洗浄剤と比較して非常に安価で、安定した量を確保でき、しかも金属に対して錆を発生させることがないなど多くの優れた点を有している。しかし、非常に純度が悪く、沸点が広範囲に分布したり、人体に悪影響を与えると考えられる不飽和炭化水素や芳香族炭化水素を含有しており、仕上がり性及び人体安全性が問題となることもあった。
【0014】
本発明に用いる飽和炭化水素系の洗浄剤は、プロピレンやブテンガスからの重合反応によって製造した数種類の炭化水素系溶剤を蒸留装置で蒸留選別し、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の炭化水素である。このようなプロピレンやブテンガスからの重合反応による製造工程では、複数の沸点ピークを有した数種類の限定された炭化水素系溶剤が生成し、その後の蒸留工程で容易に高純度の飽和炭化水素を分離することができる。
【0015】
本発明に用いる飽和炭化水素として、さらに好ましくは95%留出温度が初留点から3℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素であり、最も良好なものは、99.5%留出温度が初留点から3℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素である。
【0016】
このように蒸留される温度領域を狭く限定することにより、高沸点分が減少して主成分の純度が向上し、不飽和炭化水素や芳香族炭化水素の含有を防止できるため、臭気、安定性および人体安全性を向上させることができる。また、洗浄に使用することで汚れた洗浄剤を蒸留再生して循環使用する場合においても、蒸留される温度領域が狭いため、汚れ成分との分離性が良く、高い再生率で洗浄剤を再生することが可能である。
【0017】
本発明に用いる洗浄剤として、炭素数が8より小さい場合、引火性が極端に増加して取扱いの安全性が低下するので好ましくない。逆に炭素数が12より大きい場合、その沸点が加工油などの多くの汚れ成分の沸点に接近するため、洗浄剤を蒸留再生して循環使用する際に、汚れ成分との分離性が悪くなる。
【0018】
以上のような飽和炭化水素からなる本発明に用いる洗浄剤は、表面張力が約18〜22dyne/cmと極めて低く、被洗浄物の細かい隙間やネジ部等の非貫通穴に対して、洗浄剤が容易に出入りできるため、凹凸の激しい複雑形状を有した被洗浄物から汚れを除去することが可能で、洗浄性に優れている。なお、本発明に用いる洗浄剤は、従来から用いられている炭化水素系溶剤の環境汚染の恐れがない、安定供給が可能である、非常に安価である、錆の発生がないなどの優れたメリットをそのまま有している。
【0019】
本発明は、以上のような飽和炭化水素からなる洗浄剤を用いて汚れ成分を除去するものである。この洗浄としては、例えば切削油などの加工油と切削屑が付着した機械加工部品を上記飽和炭化水素系の洗浄剤に浸漬し、超音波振動、バブリング、液中噴流あるいは液流などの物理力を作用させて、切削油と切削屑を除去することができる。またフラックスが付着した電気基板、研磨剤あるいはピッチが付着したレンズ等の光学素子など様々な精密部品から汚れ成分を精密に除去することができる。
【0020】
以上のような本発明に用いる飽和炭化水素としては、イソパラフィンを選択することができる。飽和炭化水素にはノルマルパラフィン類、イソパラフィン類およびナフテン類がある。この内、ノルマルパラフィン類は洗浄性あるいは臭いに劣り、ナフテン類は臭いあるいは人体安全性に劣っているが、イソパラフィンは洗浄性、臭いおよび人体安全性に優れており、このイソパラフィンを選択的に用いるものである。
【0021】
本発明においては、炭素数9のイソノナンを主成分とした飽和炭化水素を用いることができる。炭素数8以上12以下のイソパラフィンには、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン及びイソドデカンがある。この内、イソノナンは洗浄性および消防法規制の点で他の化合物に優れる。消防法規則の保有量ではイソオクタンは第1石油類に属しているため、200リットルに制限されているが、イソノナンは第2石油類に属しているため、1000リットルまで保有できる優位さがある。一方、イソデカン、イソウンデカン及びイソドデカンは洗浄性が劣る難点がある。
【0022】
本発明の別の洗浄方法は、被洗浄物に付着している汚れ成分を洗浄剤によって除去した後、被洗浄物に付着している前記洗浄剤を置換し、その後、乾燥する方法において、前記乾燥工程の直前に用いられる洗浄剤として、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素を用いることを特徴としている。この方法において、乾燥工程の直前に用いられる飽和炭化水素としてイソパラフィンを用いることができ、あるいはその主成分が炭素数9のイソノナンを用いることができる。
【0023】
この方法では、洗浄後の乾燥工程直前に用いる洗浄剤として、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下に限定した飽和炭化水素を採択使用するものである。かかる飽和炭化水素としては、95%留出温度が初留点から3℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から5℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素が好ましく、さらには、99.5%留出温度が初留点から3℃以内である炭素数8以上12以下の飽和炭化水素が良好である。
【0024】
乾燥工程の直前に用いる洗浄剤は一般的に「仕上げ液」、「乾燥液」あるいは「リンス液」と呼ばれている。このような洗浄剤は前工程で用いられた他の洗浄剤を置換(=リンス)して表面を正常に仕上げた後、乾燥させるために使用される。本発明では、かかる洗浄剤が蒸留される温度領域を狭く限定することにより、含まれる高沸点分が減少するため、主成分の純度が向上する。これにより乾燥シミの発生を抑制することができ、部品を高品質に仕上げることができる。蒸留される温度範囲が上述した範囲より広い場合、乾燥した際に含まれる高沸点分を核として物品表面に乾燥シミが発生する。本発明に用いる飽和炭化水素の炭素数が8より小さい場合、引火性が極端に増加して、取扱いの安全性が低下するので好ましくない。逆に炭素数が12より大きい場合、乾燥速度が極端に小さくなって、乾燥性に劣るので好ましくない。
【0025】
以上の飽和炭化水素を乾燥工程の直前に用いる例としては、高沸点有機溶剤で汚れ成分をほとんど除去した後、本発明の飽和炭化水素に浸漬して、十分に前槽の洗浄剤を置換(リンス)し、その後、低速で飽和炭化水素から引き上げ、乾燥工程に移行する手順がある。この方法において、汚れを除去する際あるいは置換リンスする際には様々な物理力を加えると効果的である。高沸点有機溶剤は飽和炭化水素と相溶することが好ましいが、完全に溶解するものでなくても、置換リンスすることは可能である。この方法では高沸点有機溶剤を直接乾燥するのが難しい場合に有効であり、しかも、乾燥シミの発生および乾燥時間の長時間化を防ぐことができる。本発明ではかかる高沸点有機溶剤を上述した飽和炭化水素に変えても良い。この方法の場合、1種類の飽和炭化水素のみで簡単に精密洗浄できる。乾燥工程としては、温風、回転、赤外線加熱あるいは真空乾燥など様々な方法を用いることができる。
【0026】
本発明の飽和炭化水素として、イソパラフィンを選択することができる。飽和炭化水素にはノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびナフテンがあるが、ノルマルパラフィン類は臭いに劣り、ナフテン類は臭いあるいは人体安全性に劣っている。これに対して、イソパラフィンは乾燥性、臭いおよび人体安全性に優れている。特に乾燥工程においては、洗浄剤が揮発するので臭いが小さいということは重要な点である。
【0027】
本発明の飽和炭化水素としては、炭素数9のイソノナンを主成分とした化合物を選択することができる。炭素数8以上12以下のイソパラフィンには、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソウンデカンおよびイソドデカンがあるが、特にイソノナンは乾燥性および消防法規制に優れる。例えば、消防法規則の保有量ではイソオクタンは第1石油類に属しているため、200リットルに制限されるが、イソノナンは第2石油類に属しているため、1000リットルまで保有できる優位さがある。一方イソデカン、イソウンデカンおよびイソドデカンは洗浄性が劣る難点がある。
【0028】
【実施例】
サイズ60×70mmのSUS304からなる金属製平板に、商品名「ユニカットGH−35(日本石油(株)製)」の切削油1.0gを均一に塗布して被洗浄物Aとし、直径5mm:深さ6mmの止まり穴の開いたSUS304からなる金属製ブロックの止まり穴に、商品名「ダフニーカットHS−1(出光興産(株)製)」の切削油0.5gを注入したものを被洗浄物Bとした。
【0029】
図1は洗浄の手順を示す。この洗浄は第1槽で汚れを除去し、第2槽で仕上げるものであり、第2槽は乾燥工程の直前に配置される。これらの槽における洗浄は、常温の洗浄液に1分浸漬すると共に、100W、40KHzの出力で超音波振動を作用させることで行った。また、乾燥工程は80℃の温風を3分吹きつけることで行った。
【0030】
洗浄性の評価は、乾燥工程の後に、シミの有無を外観目視で観察すると共に、被洗浄物に残留している油分をトリクレンで抽出し、吸光度測定によって油分の除去率を算出することで行った。表1はこの評価を示す。同表における「除去性」欄の「○」は90%以上、「△」は90〜50%、「×」は50%以下の油分の除去率であり、「シミ」欄の「○」は表面にシミがなく、「×」は表面にシミがあったものを示す。なお、同表における「PGM−AC」は第3石油類に属する(株)クラレ製のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点143℃)であり、「ナフテゾールM」は第3石油類に属する日本石油(株)製のナフテン系炭化水素(沸点210〜235℃)、「ダフニーアルファクリーナーH」は第3石油類に属する出光興産(株)製のイソパラフィン系炭化水素(沸点213〜263℃)である。表2は上記実施例1〜5に用いた飽和炭化水素の95%留出温度および99%留出温度の温度範囲を示す。
【0031】
表1における実施例1〜5は第1槽及び第2槽のいずれも、飽和炭化水素を用いたもので、油分の除去性、外観及び乾燥性が「○」となっている。表1における実施例6〜8は第1槽に上述した高沸点溶剤を用い、第2槽に飽和炭化水素を用いたものである。いずれの実施例6〜8も表1に示されるように、油分の除去率、外観および乾燥性が「○」であり、高品質に仕上げることができることが明らかである。
【0032】
比較例1は、汎用のイソパラフィン系炭化水素溶剤で炭素数=14が主成分であるダフニールアルファクリーナーH(出光興産(株) 沸点166〜202℃第3石油類)を用いた例である。表1に示されるように、油分の除去性は「○」で問題がないが、外観の観察では表面にシミが発生した。さらに液残りもあった。これにより炭素数が12以上では特に乾燥性および仕上がり性に問題となることがわかる。比較例2は、従来から用いられている炭化水素洗浄剤のケロシン(沸点175〜320℃ 第2石油類)を用いた例である。表1に示されるように、油分の除去性は「○」で問題がないが、外観の観察では表面にシミが発生した。これにより蒸留される温度範囲が広くなると仕上がり性に劣ることがわかる。さらに、不飽和炭化水素や芳香族炭化水素が含まれるので人体安全性、安定性および臭いに問題がある。比較例3ではナフテゾールMを、比較例4ではエチルカルビトールを用いた例である。いずれも油分の除去性は「○」で問題がないが、表面にシミが発生したり、液残りがあり、しかも乾燥性および仕上がり性に劣っている。さらにこれらは臭いが強い問題もある。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
図2は本発明の別の実施例及び比較例の洗浄手順を示す。この洗浄では、凸面の曲率R=46.9mm、凹面の曲率R=9.6mmの凹凸面を有する直径16mmの硝材BK7からなるガラスレンズ20枚を被洗浄物とした。第1槽では、常温の純水に浸漬して、1分間、揺動させ、第2槽では、常温のIPA(イソプロピルアルコール)に浸漬して、1分間、揺動させた。第3槽では、洗浄剤を交代させ、常温で浸漬し、その後、低速で引き上げた。乾燥工程では、80℃の温風を3分間、吹きつけた。
【0036】
これらの処理の後、蛍光灯の反射光下のレンズ表面に呼気をかけて目視で評価する呼気評価と、レンズ表面にフッ化マグネシウム(MgF2 )のコーティングを施して、蛍光灯の反射光下で目視で評価するコーティング評価とを行った。シミなどの異物が表面に確認されたものは全て不良品と判断し、不良品の発生率を求めた。評価の結果を表3に示す。
【0037】
実施例9〜11は、光学レンズのような超精密部品の仕上がり性に対する評価とすることができる。表3に示すように、シミなどの異物が表面に確認されたものは全くなく、不良率0%であった。実施例9〜11の洗浄剤は、高沸点成分が含まれておらず、シミ発生の核とならないため、清浄に仕上げることができたものである。これにより実施例9〜11に用いた飽和炭化水素は仕上がり性に優れることがわかる。
【0038】
比較例5、6は汎用の飽和炭化水素溶剤を用いた例である。比較例5はイソパラフィン系炭化水素洗浄剤で炭素数=14が主成分であるダフニーアルファクリーナーHを用いた例である。表3に示すように、呼気評価およびコーティング評価のいずれも、不良率が高い。これにより炭素数が12より大きくなると、乾燥性が著しく低下して、仕上がり性に劣ることがわかる。比較例6は炭素数=9〜12であるケロシン(沸点175〜320℃、第2石油類)を用いた例である。表3に示すように、呼気評価およびコーティング評価のいずれも、不良率が高く、95%留出温度および99%留出温度と初留点との温度範囲が広くなると仕上がり性に劣ることがわかる。このような高沸点成分も含む洗浄剤で仕上げると、この高沸点成分のみが遅く乾燥するため、その部分がシミなどの異物として残るものである。以上のことから、超精密部品を高品質に仕上げるには炭素数と95%留出温度および99%留出温度と初留点との温度範囲の規定が必要であることがわかる。なお、炭素数が7以下の飽和炭化水素洗浄剤の場合、高品質に仕上げることは可能であるが、引火点が20℃以下になり、引火の危険性が増し、安全性が低下するとともに、消防法の規制が厳しくなるため好ましくない。
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】
本発明の洗浄方法は、従来から用いられてきた炭化水素洗浄剤の人体安全性、臭気性、あるいは仕上がり性の低さなどの問題点を解決するとともに、非塩素系であるため、オゾン層を破壊することなく、また地下水への混入による環境破壊の心配もなく、フロン113などの塩素系の洗浄剤と同等の性能を有し、被洗浄物から汚れを高品質に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の洗浄手順を示すブロック図である。
【図2】別の実施例の洗浄手順を示すブロック図である。
Claims (2)
- 被洗浄物に付着している汚れ成分を洗浄剤によって除去した後、被洗浄物に付着している前記洗浄剤を置換し、その後、乾燥する方法において、前記乾燥工程の直前に用いられる洗浄剤として、95%留出温度が初留点から5℃以内で、かつ99%留出温度が初留点から10℃以内である炭素数8以上12以下のイソパラフィンを用いることを特徴とする精密洗浄方法。
- 前記イソパラフィンの主成分が炭素数9のイソノナンであることを特徴とする請求項1記載の精密洗浄方法。
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