JP3668419B2 - アレーアンテナの制御装置及び制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のアンテナ素子を備えたアレーアンテナを制御するための制御装置及び制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来例のアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。図10において、複数N個のアンテナ素子1−1乃至1−Nが互いに所定の間隔で1直線上に並置されてなるアレーアンテナ100によって無線信号が受信され、各アンテナ素子1−1乃至1−Nで受信された無線信号はそれぞれ、低雑音増幅器(LNA)2−1乃至2−N、所定の中間周波数の中間周波信号に周波数変換するダウンコンバータ5−1乃至5−N、中間周波信号をベースバンド信号に復調する復調器7−1乃至7−N及びアナログ/ディジタル変換を行うA/D変換器9−1乃至9−Nを介してビーム制御回路93及び可変移相器91−1乃至91−Nに出力される。可変移相器91−1乃至91−Nはそれぞれ、入力されるベースバンド信号を、ビーム制御回路93から指示される移相量だけ移相した後、合成器92に出力する。合成器92は入力される複数N個のベースバンド信号を電力合成して、合成後のベースバンド信号をビーム制御回路93に出力するとともに、外部装置に出力する。
【0003】
ここで、ビーム制御回路93は、A/D変換器9−1乃至9−Nから入力される各ベースバンド信号と、合成後のベースバンド信号とに基づいて、例えば公知のLMS(Least Mean Square)法等のMMSE(Minimizing Mean Square Error)の基準に基づく手法などの適応ビーム制御アルゴリズムを用いて、合成後のベースバンド信号が最大となりかつアレーアンテナ100が所定の方向に主ビームを向けるような可変移相器91−1乃至91−Nの各移相量を計算して各可変移相器91−1乃至91−Nを制御するために出力する。
【0004】
以上のように構成された、いわゆる適応型アレーアンテナの制御装置は、複数のアンテナ素子1−1乃至1−N及び無線受信機回路に、デジタル信号処理回路である可変移相器91−1乃至91−N、合成器92及びビーム制御回路93を組み合わせることにより、受信電波環境に適応した指向性パターンを得ることができる高機能なアンテナ制御装置である。図10の従来例では、ディジタルビーム形成回路(DBF)を用いた構成であり、アレーアンテナの主ビームを所望到来波の方向に形成したり、干渉波の方向にヌル点を形成してこれを除去するという機能を有する。
【0005】
しかしながら、アンテナ素子1−1乃至1−N毎に受信回路(低雑音増幅器2−1乃至2−N、ダウンコンバータ5−1乃至5−N、及び復調器7−1乃至7−N)並びにA/D変換器9−1乃至9−Nを用いる必要があるので、ハードウエア規模や消費電力が大きくなるという問題点があった。特に、アンテナ素子の素子数が多い高利得アンテナの場合に特にこの問題は深刻なものとなる。さらに、アンテナ素子毎に受信するので信号レベルが低下した環境下では動作が困難となるという欠点もある。
【0006】
この問題点を解決するために、本発明者らは、例えば、従来技術文献1「田野ほか,“M−CMA(Modified Constant Modulus Algorithm),−マイクロ波信号処理による適応ビーム形成のためのディジタル信号処理アルゴリズム−”,電子情報通信学会研究報告,A・P99−62,pp.15−22,1999年」において、このマイクロ波帯でビーム形成を行いディジタル信号処理制御を行うアダプティブアレーに適した適応アルゴリズムとして、M−CMA(Modified Constant Modulus Algorithm)が提案されている。このM−CMA法では、ハードウェア構成の簡易化のため、ビーム形成器を可変移相器と加算器で構成することを前提としている。M−CMA法はCMA法と同じように振幅偏差の平均自乗誤差の最小化を評価基準とするため、CMA法と同様にビームステアリングとヌルステアリングの同時制御が可能である。言うまでもなく、M−CMA法はブラインドアルゴリズムに位置づけられるため、フレーム同期や周波数・位相同期を確立する前にビーム形成可能である。従って、種々の同期確立以前にビーム形成が行われ、ビーム形成器からはSINR(Signal to Interference and Noise Ratio)の高い信号がIF段以降に供給されるため、劣悪なSINR環境下においても種々の同期が容易に確立できるという利点もある。原理的にM−CMA法は各可変移相器の制御電圧に対する誤差平面における傾斜ベクトルを摂動を用いて推定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、M−CMA法では、同じ時刻の受信信号に対して摂動を与えた時のビーム形成器の出力信号(摂動項)と、与えないビーム形成器の出力信号(非摂動項)が更新式において必要になる。これを近似的に求める手段として、高速サンプリングを用いる方法がある。これは摂動をかけると同時に、ビーム形成器の出力信号をシンボルレートに対して高速にサンプリングし、この出力の隣り合った信号を「非摂動項」と「摂動項」として用いるのである。この動作原理には、雑音の影響を無視すれば、高速サンプルされたビーム形成器の出力信号の隣り合った信号の相関は非常に高く、両者の違いは摂動の有り無しの違いだけであることを利用している。ただしこの場合、ビットレートに比較して非常に高速なサンプリングを行えるA/D変換器が必要になること、サンプリングタイミング調整が困難であって、回路構成が複雑になるという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来例に比較して構成が簡単であって、時間的にかつビーム形成方向として正確に主ビームの制御やヌルの制御ができるアレーアンテナの制御装置及び制御方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアレーアンテナの制御装置は、複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号をそれぞれ所定の移相量だけ移相させて出力する複数N個の移相手段と、
上記各移相手段から出力される複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力する合成手段と、
上記合成手段から出力される無線信号をベースバンド信号に復調して出力する復調手段と、
上記復調手段から出力されるベースバンド信号を所定の利得で利得制御して出力する利得制御手段と、
上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号と所定値の基準信号との間の誤差信号を発生して出力する減算手段と、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記減算手段から出力される誤差信号の電力の傾斜ベクトルを計算し、計算された誤差信号の電力の傾斜ベクトルと上記誤差信号に基づいて当該誤差信号が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための各移相量及び上記利得制御手段の利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力する制御手段とを備えたアレーアンテナの制御装置において、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調手段と上記利得制御手段との間、又は上記利得制御手段と上記制御手段及び上記減算手段との間に挿入して設けられ、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行する時分割処理手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
上記アレーアンテナの制御装置において、上記利得制御手段は、好ましくは、トランスバーサルフィルタ回路であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るアレーアンテナの制御装置は、複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号をそれぞれ所定の移相量だけ移相させて出力する複数N個の移相手段と、
上記各移相手段から出力される複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力する合成手段と、
上記合成手段から出力される無線信号をベースバンド信号に復調して出力する復調手段と、
上記復調手段から出力されるベースバンド信号を所定の利得で利得制御して出力する利得制御手段と、
上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号の符号を判別して符号判別値を示す符号判別値信号を出力する符号判別手段と、
上記符号判別手段から出力される符号判別値信号と、上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号との間の誤差信号を発生して出力する減算手段と、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号の摂動前後の変化量を計算し、計算された変化量と、上記復調手段から出力されるベースバンド信号と、上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号と、上記減算手段から出力される誤差信号とに基づいて、上記誤差信号の自乗平均が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための上記各移相量及び上記利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力する制御手段とを備え、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調手段と上記利得制御手段との間、又は上記利得制御手段と上記制御手段及び上記減算手段との間に挿入して設けられ、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行する時分割処理手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
上記アレーアンテナの制御装置は、好ましくは、上記復調手段の後段に挿入して設けられ、上記復調手段から出力されるベースバンド信号に対してアナログ・ディジタル変換して、変換後のディジタルのベースバンド信号を出力する変換手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係るアレーアンテナの制御方法は、複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号を、複数の移相手段を用いて、それぞれ所定の移相量だけ移相させるステップと、
上記移相された複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力するステップと、
上記合成後の無線信号をベースバンド信号に復調するステップと、
上記復調されたベースバンド信号を、利得制御手段を用いて所定の利得で利得制御するステップと、
上記利得制御されたベースバンド信号と所定値の基準信号との間の誤差信号を発生するステップと、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記誤差信号の電力の傾斜ベクトルを計算し、計算された誤差信号の電力の傾斜ベクトルと上記誤差信号に基づいて当該誤差信号が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための各移相量及び上記利得制御するステップの利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力するステップとを含むアレーアンテナの制御方法において、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調するステップと上記利得制御するステップとの間、又は上記利得制御するステップと上記計算するステップ及び上記誤差信号を発生するステップとの間で実行され、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0014】
上記アレーアンテナの制御方法において、上記利得制御するステップは、好ましくは、トランスバーサルフィルタ回路を用いて実行されることを特徴とする。
【0015】
またさらに、本発明に係るアレーアンテナの制御方法は、複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号を、複数の移相手段を用いてそれぞれ所定の移相量だけ移相させるステップと、
上記移相された複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力するステップと、
上記合成後の無線信号をベースバンド信号に復調するステップと、
上記復調されたベースバンド信号を、利得制御手段を用いて所定の利得で利得制御するステップと、
上記利得制御されたベースバンド信号の符号を判別して符号判別値を示す符号判別値信号を出力するステップと、
上記符号判別値信号と、上記利得制御されたベースバンド信号との間の誤差信号を発生するステップと、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記利得制御されたベースバンド信号の摂動前後の変化量を計算し、計算された変化量と、上記復調されたベースバンド信号と、上記利得制御されたベースバンド信号と、上記誤差信号とに基づいて、上記誤差信号の自乗平均が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための上記各移相量及び上記利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力するステップとを備え、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調するステップと上記利得制御するステップとの間、又は上記利得制御するステップと上記計算するステップ及び上記誤差信号を発生するステップとの間で実行され、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
上記アレーアンテナの制御方法は、好ましくは、上記復調するステップの後に実行され、上記復調されたベースバンド信号に対してアナログ・ディジタル変換して、変換後のディジタルのベースバンド信号を出力するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る第1の実施形態であるアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図であり、図10と同様のものについては同一の符号を付している。また、図2は、図1の時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20と摂動付加回路30の詳細な内部構成を示すブロック図である。
【0019】
この第1の実施形態のアレーアンテナの制御装置は、複数N個のアンテナ素子1−1乃至1−Nが互いに所定の間隔で配置されてなるアレーアンテナ100(例えばリニアアレーであって、2次元形状又は3次元形状で配置されてもよい。)のビームをM−CMA法を用いて制御するためのビーム制御回路20を備えた適応制御型制御装置において、A/D変換器9とビーム制御回路30との間に、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動付加回路30で摂動されない期間における1つの信号(少なくとも1つの信号でもよい。)と、摂動付加回路30で摂動された期間におけるトレーニング信号であるM系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行する時分割フィルタバンク回路10を備えたことを特徴としている。すなわち、この実施形態では、M−CMA法を用いたビーム制御における上述の問題を解決する方法としてポリフェーズ表現で構成された時分割フィルタバンク回路10を利用し、これにより、同時刻における摂動項と非摂動項が厳密な形で得られるため、正確なビーム・ヌル制御を可能にする。ここで、時分割フィルタバンク回路10内のディジタルフィルタ13−0乃至13−(M−1)は、例えば、ディジタル位相変調システムで帯域制限フィルタとして用いられる、ルートロールオフフィルタをポリフェーズ構成したものである。
【0020】
以下、図1に示すアレーアンテナの制御装置の構成について説明する。図1において、複数N個のアンテナ素子1−1乃至1−Nが互いに所定の間隔で配置されてなるアレーアンテナ100によって無線信号が受信され、各アンテナ素子1−1乃至1−Nで受信された無線信号はそれぞれ、低雑音増幅器(LNA)2−1乃至2−Nを介して可変移相器3−1乃至3−Nに入力される。各可変移相器3−1乃至3−Nはそれぞれ、入力される無線信号を、摂動付加回路30から出力される各移相制御電圧vk,i(i=1,2,…,N)に対応した各移相量だけ移相した後、合成器4に出力する。合成器4は入力されるN個の無線信号を電力合成して、合成後の無線信号を、所定の中間周波数の中間周波信号に周波数変換するダウンコンバータ5及び中間周波信号の帯域成分のみを帯域ろ波する帯域通過フィルタ(BPF)6を介して復調器7に出力する。復調器7は、入力される無線信号を、送信機側の変調方法(例えば、QPSK、PSK、FSKなど)に対応した復調方法を用いてベースバンド信号に復調して、所望のベースバンド信号のみを取り出す低域通過フィルタ(LPF)8を介してA/D変換器9に出力する。A/D変換器9は、入力されるアナログのベースバンド信号をディジタルのベースバンド信号にA/D変換して、変換後のベースバンド信号信号ukを外部装置に出力するとともに、時分割フィルタバンク回路10を介してビーム制御回路20にに出力する。
【0021】
なお、可変移相器3−1乃至3−Nと合成器4とは、例えば公知の大規模GaAsMMICにてなるマイクロ波シグナルプロセッサによって構成することができる。また、本実施形態においては、ベースバンド信号はトレーニング信号として例えばM系列信号を含み、A/D変換器9のサンプリングレートをfs=2Mfcとする。ここで、Mは1以上の自然数であり、fcはシンボルクロック周波数である。
【0022】
時分割フィルタバンク回路10は、図2に示すように、互いに縦続に接続されそれぞれ1/(2Mfc)の遅延時間を有する(M−1)個の遅延回路11−1乃至11−(M−1)と、それぞれ(M/2)倍のダウンサンプリングレートを有するM個のダウンサンプラ12−0乃至12−(M−1)と、それぞれ詳細後述する伝達関数を有し例えばFIRフィルタで構成されるM個のディジタルフィルタ13−0乃至13−(M−1)と、それぞれ(1/4)倍のダウンサンプリングレートを有するM個のダウンサンプラ14−0乃至14−(M−1)とを備えて構成される。時分割フィルタバンク回路10において、A/D変換器9からのベースバンド信号ukは、ダウンサンプラ12−(M−1)、ディジタルフィルタ13−(M−1)及びダウンサンプラ14−(M−1)を介して、時分割処理されたベースバンド信号Ψk,M-1としてビーム制御回路20に出力されるとともに、互いに縦続接続された(M−1)個の遅延回路11−(M−1)乃至11−1を介してダウンサンプラ12−0に出力される。ここで、遅延回路11−(M−1)から出力されるベースバンド信号ukは、ダウンサンプラ12−(M−2)、ディジタルフィルタ13−(M−2)及びダウンサンプラ14−(M−2)を介して、時分割処理されたベースバンド信号Ψk,M-2としてビーム制御回路20に出力される。以下、同様にして、遅延回路11−mから出力されるベースバンド信号ukは、ダウンサンプラ12−m、ディジタルフィルタ13−m及びダウンサンプラ14−mを介して、時分割処理されたベースバンド信号Ψk,mとしてビーム制御回路20に出力され、ここで、m=M−3,…,0である。
【0023】
図3は、図2の時分割フィルタバンク回路10の動作例を示すブロック図であり、本実施形態では、一例として、N=M−1の場合を示している。
【0024】
本実施形態では、図3に示すように、1シンボルの時間Tを2分割して、時間T/2において、M個のサンプル信号(これはM系列信号を対応する。)を含み、M個のサンプル信号は、摂動付加回路30で摂動されない期間における1つの非摂動項のサンプル信号(Δv=0)と、摂動付加回路30で摂動された期間におけるトレーニング信号であるM系列信号内の複数N(=M−1)個の摂動項のサンプル信号(摂動付加電圧Δvが付加された)とを含む。そして、時分割フィルタバンク回路10は、M個のサンプル信号のうち、1つの非摂動項のサンプル信号(Δv=0)と、M−1個の摂動項のサンプル信号(摂動付加電圧Δvが付加された)が異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行する。
【0025】
図2において、時分割フィルタバンク回路10から出力される時分割処理後のベースバンド信号Ψk,0は、ビーム制御部21に直接に出力されるとともに、ビーム制御部21により指定される制御利得gkを有する可変増幅器22−0を介してビーム制御部21及び減算器24に入力される。また、時分割フィルタバンク回路10から出力される時分割処理後のベースバンド信号Ψk,mは、ビーム制御部21により指定される制御利得gkを有する可変増幅器22−mを介してビーム制御部21に入力され、ここで、m=1,2,…,M−1である。ここで、制御利得は正又は負の値をとりうる。一方、基準信号発生器23は所定の一定値を有する基準信号σを発生して減算器24に出力する。減算器24は基準信号σから利得増幅後のベースバンド信号yk,0を減算して、その誤差(又は偏差)信号ekをビーム制御部21に出力する。ビーム制御部21は、入力される誤差信号ekと、それぞれ利得制御されたM個のベースバンド信号yk,0乃至yk,M-1と、利得制御前のベースバンド信号Ψk,0とに基づいて、詳細後述するように、M−CMA法を用いて、摂動付加回路30のスイッチングコントローラ32を制御して各可変移相器3−1乃至3−Nの各移相制御電圧vk,i(i=1,2,…,N)を所定のシフト量だけ摂動させ、これにより対応する各移相量を所定の対応シフト量だけ摂動させ、各移相量に対する減算器22から出力される誤差信号ekの電力の傾斜ベクトルを計算し、計算された誤差信号ekの電力の傾斜ベクトルに基づいてA/D変換器9から出力されるベースバンド信号ykの電力を最大にしかつ、減算器22から出力される誤差信号ekに基づいて当該誤差信号ekが最小となるように、アレーアンテナ100の主ビームを所定の方向に向けるための各移相量に対応する各移相制御電圧vk,i及び可変増幅器21の増幅度gkを計算して、計算した各移相制御電圧vk,iを摂動付加回路30を介して各可変移相器3−1乃至3−Nに出力するとともに、計算した増幅度gkを可変増幅器21に出力する。
【0026】
摂動付加回路30は、摂動付加電圧Δvを発生する摂動付加電圧発生器31と、N個のスイッチ34−1乃至34−Nと、N個の加算器33−1乃至33−Nとを備えて構成される。ここで、摂動付加電圧発生器31により発生された摂動付加電圧Δvはスイッチ34−1乃至34−Nの各接点bに入力され、スイッチ34−1乃至34−Nの各接点aはそれぞれ接地されている。これらスイッチ34−1乃至34−Nの切り換えは、ビーム制御部21の制御により動作するスイッチコントローラ32により制御され、ここで、各スイッチ34−1乃至34−Nは通常接点a側に接続されているが、スイッチングコントローラ32は、例えばトレーニング信号を受信しているときに、図3に示すように、1シンボルの半分の時間T/2において、M系列信号のM=N+1個のサンプル信号のうちの1つの非摂動項のサンプル信号(Δv=0)に続いて、各移相器3−1乃至3−Nに対応する複数N(=M−1)個の摂動項のサンプル信号(摂動付加電圧Δvが付加された)が順次出力されるように、N個のスイッチ34−1乃至34−Nのうちの1つのスイッチのみを順次接点b側に切り換えることにより、ビーム制御部21から出力される移相制御電圧vk,n(n=1,2,…,N)に対して加算器33−1乃至33−Nのうちの1つで加算して付加する。摂動付加回路30から出力される移相制御電圧は移相制御電圧vk,n(n=1,2,…,N)としてそれぞれ移相器3−1乃至3−Nに出力される。
【0027】
なお、トレーニング信号を受信しているときに、摂動付加電圧Δvを付加するときは、ビーム制御回路20から出力される移相制御電圧vk,nと、摂動付加回路30から出力される移相制御電圧vk,nとは異なるが、説明の便宜上同一の記号を付す。
【0028】
次いで、本実施形態で用いるM−CMA法の原理と課題について説明する。マイクロ波信号処理によるビーム形成とディジタル信号処理を融合したアダプティブアレーの構成を示す図1では、間隔dで空間に配列されたアレーアンテナ100のアンテナ素子1−1乃至1−Nによって受信された受信信号は、LNA2−1乃至2−Nを介して、MMIC等で構成される可変移相器3−1乃至3−Nによって重み付けされたのち合成器4で加算され、ビーム形成器の出力信号となる。時刻kにおいてi番目の給電素子で受信された信号をuk,iとするとビーム形成器の出力信号skは、等価低域モデル(例えば、従来技術文献2「エス.スタインほか,”現代の通信回線理論”,森北出版,1970年」参照。)を用いて次式ように表される。
【0029】
【数1】
【0030】
上記数1において、vk,iはi番目のアンテナ素子1−iに接続された可変移相器3−iに印加される制御電圧であり、θ(・)は可変移相器3−iの制御電圧に対する移相特性関数であり、Nはアンテナ素子の数,jは虚数単位を示している。このビーム形成器の出力信号はダウンコンバータ5によりベースバンド帯に変換され、A/D変換器9によりA/D変換される。ここで、周波数変換された信号sk’とビーム形成器の出力信号skは全く異なったものであるが、周波数変換とフィルタリングが理想的に行われたとすると、両者の違いはexp(j2pft)の有無だけである。ただし、fは搬送波周波数で、iは虚数単位、tは時刻を表している。本実施形態では、ビーム形成器の理論上の特性の上界を検証するため、RF帯の不完全性等は考慮しない。この場合、exp(j2pft)の有無は本質的な問題ではないので、本実施形態では周波数変換された信号sk’とビーム形成器の出力信号skを同一視して説明を行う。
【0031】
A/D変換された受信信号はベースバンド帯のAGC増幅器である可変増幅器22−0乃至22−(M−1)により増幅される。増幅後の信号ykと所望レベルσとの誤差は誤差信号ekとして次式のように定義される。
【0032】
【数2】
ek=σp−gk p|sk|p=σp−|yk|p
ただし、
【数3】
yk=gksk
【0033】
ここで、gkは時刻kにおける可変増幅器22−0乃至22−(M−1)の利得である。また、上記数2における|・|は、複素数の絶対値をとることを意味している。一方、pはM−CMA法における乗数であり、1以上の自然数をとり、本実施形態では例えばp=2である。この、可変増幅器の利得gkを下記の評価基準によって最適化する。
【0034】
【数4】
J=E[|ek|q]→min
【0035】
上記数4において、Jはコスト関数であり、E[・]は集合平均を取る関数であり、qはpと共にM−CMA法の乗数を意味している。従って、数4は、コスト関数Jを最小化する評価基準を表している。この解を公知のSGD(Stochastic Gradient Decent)の原理に基づいて求めると、可変増幅器の利得gkに関しては以下の式を繰り返すことにより最適値が求められる。
【0036】
【数5】
【0037】
上記数5のmはステップサイズパラメータと呼ばれる係数である。さらに、上記数4の評価基準に基づいて、上記数1のビーム形成器の制御電圧まで最適化を図るなら、SGDの原理から次式を繰り返すことにより最適値が求まる。
【0038】
【数6】
【0039】
ここで、Δi|・|はi番目のアンテナ素子1−iに接続された可変移相器3−iの制御電圧に対する微係数を表しており、以下のように近似的に求める。
【0040】
【数7】
【0041】
上記数6を用いることにより、可変増幅器の利得gkだけでなく、通常のCMA法と同様に数2で定義された振幅偏差までも抑圧することができる。ただし、上記数6及び数7から制御電圧の最適値を求めるには同時刻の「摂動項」と「非摂動項」が必要になる。これは、摂動をかけると同時に、シンボルレートに比較して高速にA/D変換し、隣あった信号を利用することで解決できる。すなわち、隣り合った信号は信号相関が高いため、ほとんど同一と見なせ、かつその片方が摂動を受けているため上記の要求条件を満足できる。しかしながら、精度を上げるには、かなり高速でサンプルする必要があり、今後ビットレートが高速化することを考慮するとハードウェアの実現が困難となる。そこで、本実施形態では、このサンプリングレートを低減でき、高精度な「非摂動項」、「摂動項」を得るために時分割フィルタバンク回路10を利用しており、次いで、これについて詳述する。
【0042】
上記数1で示されたビーム形成器の出力信号はダウンコンバータ5によって周波数変換され、A/D変換器9によってディジタル信号に変換されるが、その時のサンプリングレートを情報レートのM倍で行い、ディジタルフィルタで不要信号の除去を行い、デシメーションを行うことで復調信号を得るシステムを利用する。このディジタルフィルタをFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成する場合、一般にその伝達関数T(z-1/M)は以下のようにポリフェーズ表現することができる。
【0043】
【数8】
【0044】
ただし、Tl(z-1),l=0,…,M−1は各ポリフェーズフィルタを構成するフィルタバンクであり、次式のように定義される。
【0045】
【数9】
【0046】
各フィルタの入力信号は、バンク内の各フィルタの動作速度がナイキストレート以上であれば、サンプリングレートに関わらず一定のスペクトラム情報を保持している。このとき、雑音がなければすべてのフィルタバンクからは、同一の信号が出力される。ただし、以下の条件を満足させる必要がある。
【0047】
【数10】
Tl(z-1)=Tm(z-1);l,m=0,…,M−1
【0048】
ここで、当該フィルタバンクにより同一の信号が得られることを示す。入力信号をuk-(i+l/M)とすると、上記数10で定義されたポリフェーズフィルタの出力信号は次式のように表される。
【0049】
【数11】
【0050】
この信号をDFT(Digital Furrier Transform)すると次式のように表される。
【0051】
【数12】
【0052】
ただし、F(・)は・のDFT後の信号を表している。すなわち、全てのポリフェーズフィルタからは同一の周波数スペクトラムを持つ信号が得られる。従って、この出力をIDFT(Inverse DFT)すれば疑いもなく同一の時系列が得られる。
【0053】
次いで、ポリフェーズ表現のフィルタバンクの伝達関数を行列表現するため、次式で定義する遅延行列F(l)を導入する。
【0054】
【数13】
Φ(l)≡diag[z-l z-l-1/M … z-l-(M-1)/M]
l=−L,…,L−1
【0055】
ここで、≡は「定義する」ことを意味し、diag(・)は括弧内ベクトルを対角要素とする対角行列を意味している。この遅延行列を用いることで、フィルタバンクの伝達関数は次式のようにベクトル表現できる。
【0056】
【数14】
【0057】
ただし、H=[h-L,h-L+1/M,…,hL+(M-1)/M]Tはポリフェーズ化される前のフィルタのインパルス応答を表している。一方、数1で表されるビーム形成器において、1番目のアンテナ素子1−1から順次摂動をかけていく場合、その出力信号は以下のように数式表現できる。
【0058】
【数15】
【0059】
上記数15におけるUk,iとWk,iはそれぞれi番目のアンテナ素子1−iの出力信号と、その出力信号に対する重み係数行列であり、次式のように表される。
【0060】
【数16】
【数17】
Uk,i=diag[uk,i uk-1/M,i … uk-(M-1)/M,i]
【0061】
このビーム形成器の出力信号を上記数14で表されたポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路10に入力すると、可変増幅器22−0乃至22−(M−1)への入力信号が得られる。すなわち上記数14に出力信号を入力して逆z変換すると、その出力信号ベクトルΨkは上記数15で定義された行列を用いて次式のように表される。
【0062】
【数18】
【0063】
ここで、ベクトルΘk,iを
【数19】
Θk,i≡[Uk+L,i,…,Uk-(L-1),i]H
と導入する。ここで、雑音の影響がなく、上記数10の条件が満足されていれば、上述のようにベクトルΘk,iの要素は全て同一となる(数11及び数12を用いて上述した通りである。)そこで、その値をθk,iとおくと、ベクトルP=[1,…,1]を用いて、ベクトルΘk,iは
【数20】
Θk,i≡θk,iP
と表される。すると上記数18も次式のように書き換えられる。
【0064】
【数21】
【0065】
上記数21は各アンテナ素子1−1乃至1−Nからの信号を一旦、ベースバンド帯に変換し、伝達関数T(z)のディジタルフィルタを通過した後に、重み係数
【数22】
Wk T=[exp(−j2θ(vk,i),…,exp(−j2θ(vk+l/M,i)),…]で重み付けしたものと等価な信号が、ポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路10のl/M番目のフィルタから出力されることを意味している。そこで、重み係数Wk,iを次式のように動作させる。ただし、M≧N+1とする(図1乃至図3の実施形態では、M=N+1としている。)。
【0066】
【数23】
vk+l/M,i=vk,i;i≠lのとき
vk+l/M,i=vk,i+Δv;i≠lのとき
ここで、i=1,…,N,及びl=0,…,M−1である。
【0067】
すなわち、M個の連続した入力信号系列において、最初のサンプル信号には全く摂動を与えず、その次のサンプルから各素子に接続された可変移相器3−1乃至3−Nの制御電圧に摂動を順次かけていく。具体的には、l番目のサンプル信号では、l番目の可変移相器3−lの制御電圧にだけ摂動を与える。これにより、ポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路10の0番目のフィルタ(図2の時分割フィルタバンク回路10では、ディジタルフィルタ13−0及びダウンサンプラ14−0)からは非摂動項の信号Ψk,0が出力され、l番目のフィルタ(図2の時分割フィルタバンク回路10では、ディジタルフィルタ13−l及びダウンサンプラ14−l)からはl番目のアンテナ素子1−lに対する摂動項の信号Ψk,lが出力される。従って、ポリフェーズフィルタを応用することで、上述した問題が解決できることがわかる。すなわち、ポリフェーズフィルタを応用したM−CMA法のアダプティブアレーは以下の逐次的な係数更新式に基づき最適係数を求めることができる。
【0068】
【数24】
yk,i=gkΨk,i
ここで、i=0,1,…,M−1
【数25】
ek=σp−|yk,0|p
【数26】
vk,i=vk-1,i+μ|ek|q-2ek|yk,0|p-1(|yk,i|−|yk,0|)
ここで、i=0,…,M−1
【数27】
gk-1=gk-1+μ|ek|q-2ek|yk,0|p-1|Ψk,0|
【0069】
一般に、ポリフェーズフィルタとしてはアンチエリアジングフィルタが適用されるが、通信システムではA/D変換器9の前にアナログ低域通過フィルタが備えられているため、アンチエリアジングフィルタは不要である。そこで、本実施形態では、例えば、位相変調システムでしばしば利用されるナイキストフィルタ系における、受信機のルートロールオフフィルタをポリフェーズ化することにより時分割フィルタバンク回路10を構成する。
【0070】
図1において、A/D変換器9によるA/D変換前にエリアジングフィルタである低域通過フィルタ8を経た後にポリフェーズフィルタである時分割フィルタバンク回路10に入力される。図2の時分割フィルタバンク回路10であるポリフェーズフィルタバンク内の各ルートロールオフフィルタであるディジタルフィルタ13−0乃至13−(M−1)は、信号にエリアジング歪みを与えないようにナイキストレートの2倍以上で動作させる必要がある。従って、ルートロールオフトフィルタをM−フェーズ化する場合には、A/D変換器9はナイキストレートの2M倍以上でサンプルする必要がある(本実施形態では、サンプリングレートを上述のように、f=2Mfcとしている。)。そして、縦続接続された遅延回路11−1乃至11−(M−1)により時分割した後、M/2倍のダウンサンプラ12−0乃至12−(M−1)でM/2倍にデシメーションし、ディジタルフィルタ13−0乃至13−(M−1)を経た後、4倍のダウンサンプラ14−0乃至14−(M−1)で4倍にデシメーションすることにより、時分割処理された並列でM個のサンプル信号からなるM系列の復調信号を得る。なお、ダウンサンプラ12−0乃至12−(M−1)の倍数と、ダウンサンプラ14−0乃至14−(M−1)の倍数は、好ましくは、それらの積が2Mとなるように選択される。
【0071】
時分割フィルタバンク回路10の動作例を示す図3では、1シンボル内を2(N+1)倍、すなわちアンテナの素子数N+1の2倍でオーバサンプルし、N+1個のフィルタバンクに分配する。各フィルタバンクはシンボルレートの2倍で演算を行う。一方、同期して1/2シンボル内で順次、各アンテナ素子1−1乃至1−Nに接続された可変移相器3−1乃至3−Nに対して摂動を与える。ただし、必ず1/2シンボル毎に摂動をリセットし、すなわち、非摂動項の信号を発生させる。なお、図3では1シンボル内で全ての摂動を行ったが、1シンボルの信号を受信する毎に1つのアンテナ素子の可変移相器への摂動を与え、これを1素子ずつ行いことで演算速度を低減させることも可能である。この場合、N個のシンボル信号を受信して初めて、全素子の摂動を終了する。ただし、摂動を与えない期間を1/2シンボルに挿入する必要があることを考慮すると、サンプリングレートはシンボルレートの4倍まで低減できる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、ポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路10を用いることにより、処理すべき信号のレートを低下させかつ各アンテナ素子に対応する複数の摂動項の信号を正確に取り出すことができる。従って、ビットレートに比較して非常に高速なサンプリングを行えるA/D変換器を必要とせず、低速となるのでサンプリングのタイミング調整も容易となる。それ故、回路構成が簡単であって、時間的正確にかつ、ビーム形成方向として正確に主ビームの制御やヌルの制御ができる。
【0073】
<第1の変形例>
図4は、第1の実施形態の変形例である、本発明に係る第1の変形例のアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20aの構成を示すブロック図であり、図1及び図2と同一のものは同一の符号を付している。
【0074】
第1の実施形態においては、M個の可変増幅器22−0乃至22−(M−1)を時分割フィルタバンク回路10とビーム制御部21との間に備えていたが、これに代えて、ビーム制御部21で指定される制御利得gkを有する1個の可変増幅器22をA/D変換器9と、時分割フィルタバンク回路10との間に挿入したことを特徴としている。ここで、ビーム制御部21は、M−CMA法によるビーム制御処理において、利得制御前のベースバンド信号yk,0(図2のベースバンド信号Ψk,0)を必要とするが、これは、図4の時分割フィルタバンク回路10から出力されるベースバンド信号Ψk,0を制御利得gkで除算することにより計算することができる。また、これにとって代わって、図4において1点鎖線で示すように、A/D変換器9からのベースバンド信号ukから利得制御前のベースバンド信号yk,0(図2のベースバンド信号Ψk,0)を時分割分離して取り出してもよい。
【0075】
以上のように構成された第1の変形例によれば、第1の実施形態における作用効果に加えて、可変増幅器22の個数を大幅に減少させることができ、これにより、回路構成をより簡単にできるという特有の効果を有する。
【0076】
<第2の実施形態>
図5は、本発明に係る第2の実施形態であるアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20tの構成を示すブロック図であり、図5のTRF回路61−1乃至61−(M−1)(以下、総称して、符号61を付す。)の詳細な内部構成を示すブロック図であり、図1乃至図4及び図10と同一のものについては同一の符号を付している。この第2の実施形態のアレーアンテナの制御装置は、第1の実施形態に係る図1及び図2のビーム制御回路20に代えて、TDL(Tapped Delay Line;タップ付き遅延線)回路70を有するトランスバーサルフィルタ回路(以下、TRF回路という。)61を備えるとともに、詳細後述する時空間信号処理M−CMA法を用いて適応型のビーム制御を行うビーム制御部21tを備えるビーム制御回路21tを備えたことを特徴としている。その他の構成は第1の実施形態と同様であり、ここで詳細説明を省略する。
【0077】
図5において、A/D変換器9から時分割フィルタバンク回路10を介して出力されるベースバンド信号Ψk,m(m=0,1,2,…,M−1)は、ビーム制御部21t及びTRF回路61内の可変増幅器72−0に入力されるとともに、複数(L−1)個の遅延回路71−1乃至71−(L−1)が縦続接続されてなるTDL回路70の第1段の遅延回路71−1に入力される。上記ベースバンド信号Ψk,mは可変増幅器72−0を介して加算器73に出力されるとともに、複数(L−1)段の遅延回路71−1乃至71−(L−1)及び可変増幅器72−(L−1)を介してビーム制御部21t及び加算器73に出力される。TDL回路70において、各遅延回路71−1乃至71−(L−1)はそれぞれ入力される信号を所定の遅延時間τだけ遅延して出力する。ここで、遅延時間τは、好ましくは1シンボル時間の1/2に設定されるが、例えば1シンボル時間、もしくはそれ以下に設定されてもよい。
【0078】
遅延回路71−1から出力される、ベースバンド信号Ψk,m=bpkの遅延信号bpk-1はビーム制御部21tに出力されるとともに、可変増幅器72−1を介して加算器73に出力される。また、遅延回路71−2から出力されるベースバンド信号bpkの遅延信号bpk-2はビーム制御部21tに出力されるとともに、可変増幅器72−2を介して加算器73に出力される。さらに、遅延回路71−3から出力されるベースバンド信号bpkの遅延信号bpk-3はビーム制御部21tに出力されるとともに、可変増幅器72−3を介して加算器73に出力される。さらに同様にして、遅延回路71−(L−2)から出力されるベースバンド信号bpkの遅延信号bpk-Lはビーム制御部21tに出力されるとともに、可変増幅器72−(L−2)を介して加算器73に出力される。ここで、可変増幅器(又は利得制御器)72−0乃至72−(L−1)はそれぞれ、ビーム制御部21tにより設定される増幅度w0乃至wL-1で入力される信号を増幅(又は利得制御)して出力し、ここで、増幅度(又は利得)は正又負の値をとる。そして、加算器73は入力されるベースバンド信号bpk及びその複数(L−1)個の遅延信号bpk-1乃至bpk-L+1を加算して加算結果の信号を出力信号yk,m(m=0,1,2,…,M−1)としてビーム制御部21tに出力する。なお、出力信号yk,0は、減算器24にも出力される。このように構成することにより、TDL回路70と、可変増幅器72−0乃至72−(L−1)と、加算器73とを備えたTRF回路61を構成する。すなわち、第2の実施形態では、第1の実施形態における各可変増幅器22−0乃至22−(M−1)を図6のTRF回路61で構成している。
【0079】
一方、基準信号発生器23は所定の一定値を有する基準信号σを発生して減算器24に出力する。減算器24は基準信号σから出力信号yk,0を減算して、その誤差(又は偏差)信号ekをビーム制御部21tに出力する。ビーム制御部21tは、入力される誤差信号ekと、ベースバンド信号bkkと、その遅延信号bkk-1乃至yk-L+1と、TRF回路61−0乃至61−(M−1)の通過後のベースバンド信号yk,m(m=0,1,2,…,M−1)とに基づいて、時空間信号処理M−CMA法を用いて、各可変移相器3−1乃至3−Nの各移相制御電圧vk,i(i=1,2,…,N)を摂動付加回路30を制御することにより所定のシフト量だけ摂動させ、これにより対応する各移相量を所定の対応シフト量だけ摂動させ、各移相量に対する減算器24から出力される誤差信号ekの電力の傾斜ベクトルを計算し、計算された誤差信号ekの電力の傾斜ベクトルに基づいて、減算器24から出力される誤差信号ekに基づいて当該誤差信号ekが最小となるように、アレーアンテナ100の主ビームを所定の方向に向けるための各移相量に対応する各移相制御電圧vk,i及び各可変増幅器72−0乃至72−(L−1)の増幅度w0乃至wL-1を計算してそれぞれ各可変移相器3−1乃至3−N及び各可変増幅器72−0乃至72−(L−1)に出力して設定する。
【0080】
以上のように構成された第2の実施形態に係るアレーアンテナの制御装置においては、ビーム制御回路20tは、誤差信号ekが最小となるように、アレーアンテナ100の主ビームを希望波方向に向けかつ、干渉波方向にヌルを向けるように、適確に適応ビーム制御することができる。また、マルチパス伝送路において生じる希望波の遅延波をTRF回路61を用いて取り込んで同相合成することができ、希望波における信号対雑音電力比(S/N)を改善することができる。また、第2の実施形態では、低雑音増幅器2−1乃至2−N及び可変移相器3−1乃至3−Nは、アンテナ素子1−1乃至1−Nの素子数Nに対応したN個を必要とするが、合成器4以降の回路では、各回路構成要素は1つのみで済む。従って、図10に示す従来例に比較して、従来例に比較してハードウエア構成が簡単であって、回路構成要素の数が少ないので消費電力が少ない。
【0081】
次いで、第2の実施形態で用いる適応ビーム処理について以下に説明する。第2の実施形態に係るアダプティブアレーアンテナの構成において、ベースバンド信号yk=yk(vk,1,…,vk,N)は公知の等価低域モデルを用いて上記の数1のように表わすことができる。このベースバンド信号ykは、TDL回路70を有するTRF回路61に入力される。TRF回路61では、TDL回路70の各タップから出力される信号はそれぞれ、可変増幅器72−0乃至72−(L−1)によりタップ係数である増幅度wk(i)で重み付けされた後、加算器73で加算されて、以下に示す出力信号yk,m(=zkとおく。)を出力する。
【0082】
【数28】
【0083】
ここで、ビームとヌルのブラインド制御を行うため、公知のCMA法と同様に、TRF回路61の出力信号zkの振幅偏差の最小化を図る。すなわち、出力信号yk,0=zkと基準信号σとの誤差を次式のように定義すると、
【数29】
ek=σp−|zk(vk,1,…,vk,N)|p
以下の式を満足することが必要条件となる。ただし、σは基準信号のレベルであり、所望の振幅レベルを示している。
【0084】
【数30】
【数31】
【0085】
ここで、pとqはCMA法の推定の次元を示すもので、実際は、p=q=2のときがCMA法と呼ばれ、それ以外はゴダードのアルゴリズムと呼ばれる。数30の偏微分は、上記数1と数28によりCMA法では求めることができない。そこで、本実施形態においては、第1の実施形態に係るM−CMAと同様に、可変移相器3−1乃至3−Nの制御電圧vk,1,…,vk,Nを摂動させて、これにより各移相量を摂動させて求める。また、上記数31は通常のCMA法と同様に求めることができる。ここで、出力信号zkをzk=zk(vk(1),…,vk(N))として、係数更新処理を以下のように行う。
【0086】
上記数29を誤差関数とし、上記数30及び数31を満足する解を探すアルゴリズムは、公知の最急降下法の原理を適用すれば、次式のように表わすことができる。
【0087】
【数32】
【数33】
【0088】
上記数32と数33はそれぞれ、上記数30及び数31を満足するさせるためのアルゴリズムの式である。上記数32における偏微分項は、上記数26の偏微分の近似式を用いて得ることができる。一方、上記数31における偏微分項は、上記数28の両辺を偏微分することによって直接的に求めることができる。従って、上記数32及び数33は次式となり、次式の係数更新式を用いて収束処理を実行する。
【0089】
【数34】
vk,i=vk-1,i+μvek q-1|zk|p-2Δi|zk|,
(i=1,…N)
【数35】
wk(i)=wk-1(i)+μwek q-1|zk|p-2zk *yk,
(i=0,…L−1)
【0090】
ただし、
【数36】
である。
【0091】
上記数46において、Δvは摂動のための微少項であり、上記数34及び数35におけるμvとμwはそれぞれ、移相器3−1乃至3−Nの制御電圧と、可変増幅器72−0乃至72−(L−1)の増幅度であるタップ係数のステップサイズである。本実施形態に係る時空間信号処理M−CMA法のアルゴリズムを正しい収束させるには、この2種類のステップサイズは以下の条件を満足する必要がある。
【0092】
【数37】
μw=μvΔv
ここで、Δvの単位はラジアンである。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によれば、ポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路10を用いることにより、処理すべき信号のレートを低下させかつ各アンテナ素子に対応する複数の摂動項の信号を正確に取り出すことができる。従って、ビットレートに比較して非常に高速なサンプリングを行えるA/D変換器を必要とせず、低速となるのでサンプリングのタイミング調整も容易となる。それ故、回路構成が簡単であって、時間的正確にかつ、ビーム形成方向として正確に主ビームの制御やヌルの制御ができる。
【0094】
<第2の変形例>
図7は、第2の実施形態の変形例である、本発明に係る第2の変形例のアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20taの構成を示すブロック図であり、図5及び図6と同一のものは同一の符号を付している。
【0095】
第2の実施形態においては、M個のTRF回路61−0乃至61−(M−1)を時分割フィルタバンク回路10とビーム制御部21tとの間に備えていたが、これに代えて、ビーム制御部21tで指定される重み係数を有する1個のTRF回路61をA/D変換器9と、時分割フィルタバンク回路10との間に挿入したことを特徴としている。ここで、ビーム制御部21tは、時空間信号処理M−CMA法によるビーム制御処理において、利得制御前のベースバンド信号yk,0(図5のベースバンド信号Ψk,0)を必要とするが、これは、図7の時分割フィルタバンク回路10から出力されるベースバンド信号Ψk,0を重み付け係数で除算することにより計算することができる。また、これにとって代わって、図7において1点鎖線で示すように、A/D変換器9からのベースバンド信号ukから利得制御前のベースバンド信号yk,0(図7のベースバンド信号Ψk,0)を時分割分離して取り出してもよい。
【0096】
以上のように構成された第2の変形例によれば、第2の実施形態における作用効果に加えて、TRF回路61の個数を大幅に減少させることができ、これにより、回路構成をより簡単にできるという特有の効果を有する。
【0097】
<第3の実施形態>
図8は、本発明に係る第3の実施形態であるアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20mの構成を示すブロック図であり、図1乃至図7及び図10と同一のものについては同一の符号を付している。本実施形態のアレーアンテナの制御装置は、ビーム制御部21mを有するビーム制御回路20mを備えたことを特徴としている。
【0098】
ビーム制御回路20mは、復調器7及び時分割フィルタバンク回路10を介してA/D変換器9からの出力信号であるベースバンド信号Ψk,m(m=0,1,2,…,M−1)に基づいて、詳細後述する変形された最小平均二乗法(以下、M−LMS法という。)を用いて、可変移相器3−1乃至3−Nの各移相量を摂動付加回路30を制御することによりそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、可変増幅器82−0乃至82−(M−1)から出力されるベースバンド信号yk,mの摂動前後の変化量Δyk,mを計算し、計算された変化量Δyk,mと、A/D変換器9から時分割フィルタバンク回路10を介して出力されるベースバンド信号Ψk,0と、可変増幅器82から出力されるベースバンド信号yk,mと、ベースバンド信号Ψk,0を可変増幅器82により利得制御されたベースバンド信号yk,0とそれの符号判別値dk(符号判別器83の出力である。)との間の誤差信号ekとに基づいて、当該誤差信号ekの自乗平均が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための上記各移相量及び上記利得gkを計算してそれぞれ各可変移相器3−1乃至3−N及び可変増幅器82−0乃至82−(M−1)に出力することを特徴としている。
【0099】
ビーム制御回路20mは、ビーム制御部21mと、可変増幅器82−0乃至82−(M−1)と、符号判別器83と、減算器84とを備えて構成される。ここで、各可変増幅器82−0乃至82−(M−1)は、入力されるベースバンド信号Ψk,mを、ビーム制御部81により示される制御利得gkで増幅して、利得制御されたベースバンド信号yk,mをビーム制御部21mに出力し、また、そのうちベースバンド信号yk,0を符号判別器83、減算器84及びビーム制御部21mに出力する。次いで、符号判別器83は、後述するように、入力されるベースバンド信号ykの符号判別値dkを演算して減算器84に出力する。さらに、減算器84は、符号判別値dkからベースバンド信号yk,0を減算して減算結果の誤差信号ekをビーム制御部81に出力する。そして、ビーム制御部81は、入力されるベースバンド信号Ψk,0及びyk,m、並びに誤差信号ekに基づいてM−LMS法を用いて制御利得gkを演算して可変増幅器82に出力するとともに、可変制御電圧vk,i(i=1,2,…,N)を演算してそれぞれ可変移相器3−1乃至3−Nに出力する。
【0100】
このビーム制御回路80では、A/D変換後のベースバンド信号Ψkのみに基づいて、M−LMS法を用いて、例えば、データ伝送を行う前の所定のトレーニング期間において、各可変移相器3−1乃至3−Nに対する各移相制御電圧vk,iを摂動付加回路30を制御することにより所定のシフト量だけ摂動させることにより、各移相量に対する、可変増幅器82から出力されるベースバンド信号yk,mの摂動前後の変化量Δyk,mを計算し、計算された変化量Δyk,mと、A/D変換器9から時分割フィルタバンク回路10を介して出力されるベースバンド信号Ψk,0と、可変増幅器82−0乃至82−(M−1)から出力されるベースバンド信号yk,mと、ベースバンド信号yk,0の符号判別値dk(符号判別器83の出力である。)とベースバンド信号yk,0との間の誤差信号ekとに基づいて、当該誤差信号ekの自乗平均が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための上記各移相量及び上記利得を計算してそれぞれ各可変移相器3−1乃至3−N及び可変増幅器82−0乃至82−(M−1)に出力する。
【0101】
以上のように構成されたアレーアンテナの制御装置においては、ビーム制御回路20mは、ビーム制御回路20mの減算器84で発生される誤差信号ekの自乗平均が最小となるように、アレーアンテナ100の主ビームを適応的に所定の方向に形成する。構成されたアレーアンテナの制御装置では、低雑音増幅器2−1乃至2−N及び可変移相器3−1乃至3−Nは、アンテナ素子1−1乃至1−Nの素子数Nに対応したN個を必要とするが、合成器4以降の回路では、各回路構成要素は1つのみで済む。従って、図10に示す従来例に比較して、ハードウエア構成が簡単であって、回路構成要素の数が少ないので消費電力が少ない。
【0102】
次いで、ビーム制御回路20mにおける制御アルゴリズムについて説明する。まず、可変増幅器82−0乃至82−(M−1)から出力される利得制御されたベースバンド信号yk,mは次式で表される。
【0103】
【数38】
yk,m=gkΨk,m
【0104】
ここで、Ψk,mはA/D変換器9から時分割フィルタバンク回路10を介して出力され複素数で表されたベースバンド信号であり、gkは実数で表された可変増幅器82−0乃至82−(M−1)の利得であり、yk,mは複素数で表された可変増幅器82−0乃至82−(M−1)の各出力信号を示している。このとき、誤差信号ekを次式のように定義される。
【0105】
【数39】
ek=dk−yk,0
【0106】
ここで、dkは符号判別器83からの、符号判別値を示す出力信号であり、次式のように求められる。
【0107】
【数40】
dk=sgn[Re(yk)]+j・sgn[Im(yk)]
【0108】
ここで、Re[・]は引数の実数を示す関数であり、Im[・]は引数の虚数を示す関数である。また、sgn[x]は符号判別関数であり、以下のように定義される。
【0109】
【数41】
【0110】
この時、各可変増幅器82−0乃至82−(M−1)の利得は次式のように更新される。
【0111】
【数42】
gk=gk-1+μRe[Ψk,0ek *]
【0112】
ここで、μはステップサイズパラメータと呼ばれ、0<μ<1での適当な定数である。また、*は複素共役を示す。一方、可変位相器3−iの制御電圧は次式のように更新される。
【0113】
【数43】
vk,i=vk-1,i+μRe(ek *Δyk,i)
【0114】
このとき、変化量Δyk,iは次式のように求められる。
【0115】
【数44】
Δyk,i=yk,0(vk-1,1,…,vk-1,i+Δv,…,vk-1,N)−yk,0(vk-1,1,…,vk-1,i,…,vk-1,N)
【0116】
数44の右辺の第2項は、摂動電圧を付加しないときの時刻k−1の移相制御電圧vk-1,1,…,vk-1,i,…,vk-1,Nを各可変移相器3−1乃至3−Nに印加したときの利得制御されたベースバンド信号ykを示す。また、数44の右辺の第1項は、時刻k−1の移相制御電圧vk-1,1,…,vk-1,i,…,vk-1,Nに加えて、第i番目のアンテナ素子1−iに対応する可変移相器3−iのみに摂動電圧Δvを余分にかけたときの利得制御されたベースバンド信号yk,0を示す。そして、数44で表されるΔyk,iはこれら2つの信号の変化量、すなわち、摂動前後のベースバンド信号yk,0の変化量である。
【0117】
従って、数43から明らかなように、計算した摂動前後のベースバンド信号yk,0の変化量Δyk,iと、誤差信号ekとに基づいて移相制御電圧vk,iを演算して設定する。そして、数42から明らかなように、誤差信号ekの自乗平均が最小となるように、可変増幅器82−0乃至82−(M−1)の利得gkを決定して設定する。このようにビーム制御することにより、当該アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けることができ、特に、TDMA等で利用されるプリアンブルやCDMA等で利用されるパイロット信号を所望信号として用いることで、搬送波対干渉波電力比(CIR)がマイナス、すなわち、所望信号が干渉波よりもレベルが低い場合にも、所望波方向にビームを向け、干渉波方向にヌルを形成できる。
【0118】
本実施形態においては、振幅制御は、A/D変換器9から時分割フィルタバンク回路10を介した出力ベースバンド信号yk,mに対してディジタル信号処理により行い、マイクロ波帯(RF帯)の可変移相器制御では、移相器入力信号を観測できないため、摂動により係数の更新量を求める。また、振幅制御では、出力ベースバンド信号yk,mがディジタル信号として得られるため、数42の形式で、振幅推定アルゴリズムが得られる。また、発明したアルゴリズムは誤差信号ekの二乗平均の最小化という公知のLMS法と同様の規範を用いているため、発明したアルゴリズムを「M−LMS法」と呼んでいる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態によれば、M−LMS法を用いてビーム制御するので、DBF回路で実現されたアダプティブアレーと同様に、ビーム、ヌル制御が可能で有ることに加えて、RF帯でビーム形成が行えるため、従来例に比較して回路規模やコストの削減が可能になるという利点がある。従って、構成が簡単であって消費電力が少ない。また、TDMA等で利用されるプリアンブルやCDMA等で利用されるパイロット信号を所望信号として用いることで、搬送波対干渉波電力比(CIR)がマイナス、すなわち、所望信号が干渉波よりもレベルが低い場合にも、所望波方向にビームを向け、干渉波方向にヌルを形成できる。従って、劣悪な環境であっても安定に適応動作を行うことができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、ポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路10を用いることにより、処理すべき信号のレートを低下させかつ各アンテナ素子に対応する複数の摂動項の信号を正確に取り出すことができる。従って、ビットレートに比較して非常に高速なサンプリングを行えるA/D変換器を必要とせず、低速となるのでサンプリングのタイミング調整も容易となる。それ故、回路構成が簡単であって、時間的正確にかつ、ビーム形成方向として正確に主ビームの制御やヌルの制御ができる。
【0121】
<第3の変形例>
図9は、第3の実施形態の変形例である、本発明に係る第3の変形例のアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20maの構成を示すブロック図であり、図8と同一のものは同一の符号を付している。
【0122】
第3の実施形態においては、可変増幅器82−0乃至82−(M−1)を時分割フィルタバンク回路10とビーム制御部21mとの間に備えていたが、これに代えて、ビーム制御部21mで指定される重み係数を有する1個の可変増幅器82をA/D変換器9と、時分割フィルタバンク回路10との間に挿入したことを特徴としている。ここで、ビーム制御部21mは、M−LMS法によるビーム制御処理において、利得制御前のベースバンド信号yk,0(図8のベースバンド信号Ψk,0)を必要とするが、これは、図9の時分割フィルタバンク回路10から出力されるベースバンド信号Ψk,0を制御利得gkで除算することにより計算することができる。また、これにとって代わって、図9において1点鎖線で示すように、A/D変換器9からのベースバンド信号ukから利得制御前のベースバンド信号yk,0(図9のベースバンド信号Ψk,0)を時分割分離して取り出してもよい。
【0123】
以上のように構成された第3の変形例によれば、第3の実施形態における作用効果に加えて、可変増幅器82の個数を大幅に減少させることができ、これにより、回路構成をより簡単にできるという特有の効果を有する。
【0124】
<他の変形例>
以上の実施形態においては、A/D変換器9を用いてベースバンド信号をA/D変換した後、その後の回路においてディジタル信号処理を行っているが、A/D変換器9を挿入せず、その後の回路においてアナログで信号処理を実行してもよい。
【0125】
以上の実施形態においては、摂動付加回路30は、各ビーム制御回路20,20a,20t,20ta,20m,20maとは別の回路で構成されているが、摂動付加回路30の機能を各ビーム制御回路20,20a,20t,20ta,20m,20ma内においてソフトウエア又はハードウエア回路で統合して構成してもよい。
【0126】
【実施例】
さらに、本発明者らは、第1の実施形態に係る、ポリフェーズフィルタを応用したM−CMA法のアダプティブアレーの干渉抑圧特性を計算機シミュレーションにより実験したので、その実験方法及び実験結果について以下に詳述する。
【0127】
変調方式としてQPSK変調方式を用い、検波器には遅延検波を適用した送受信機構成を前提とした。また,伝送路はAWGN(Additive White Gaussian Noise)チャネルを適用した。アンテナは半波長間隔のリニアアレーアンテナで、その素子数は4とした。また、リニアアレーアンテナの正面方向を0度とすると、希望波は−50度の方向から、干渉波は30度の方向から等レベルで入射する環境を想定した。また、M−CMA法の乗数をp=q=1に設定し、ステップサイズμ=0.0001とした。処理速度の低減のためオーバサンプルはシンボルレートの4倍とした。また、アレーアンテナの初期状態は正面方向にビームを形成している。
【0128】
図11は、第1の実施形態のシミュレーション結果であって4素子リニアアレーアンテナの場合の指向性パターンを示すグラフである。図11から明らかなように、希望波方向に理論限界の12dB程度のアレーファクタを持つビームを形成している。干渉波方向には深いヌルを形成できていることがわかる。ただし,SNRが低い場合には、若干ヌルの位置がずれている。これは、SNRが低い場合には、ビームを形成する方に制御が集中し、ヌルには多少感度が落ちるためと考えられる。
【0129】
図12は、第1の実施形態のシミュレーション結果であって4素子リニアアレーアンテナの場合の搬送波/雑音電力比(CNR)に対するビットエラーレート(BER)の特性を示すグラフである。図12においては、理論値として、干渉がない条件での4素子最大比合成ダイバーシチ受信時の遅延検波の特性を示している。M−CMA法を用いたアダプティブアレーは希望波にビームを向けるだけでなく干渉波方向に鋭いヌルを形成できるため、すべてのCNR条件において、理論値に1.5dBにまで漸近する優れた特性が得られることが分かる。この1.5dBの劣化は上述したヌルに対する感度低下によるものと考えられる。
【0130】
以上説明したように、小型・低価格化が可能なアナログビーム形成型アダプティブアレーにおいて適応ビーム制御を可能とするM−CMA法の効果的な実現方法として、ポリフェーズフィルタを利用した。原理的にM−CMA法の係数更新式においては同時刻の「摂動項」と「非摂動項」が必要となる。この信号を簡易に得る方法として、ポリフェーズフィルタを構成する各フィルタバンクを備えた時分割フィルタバンク回路10が同時刻に全く同じ波形を出力することを利用する。すなわち、時分割フィルタバンク回路10内の各ポリフェーズフィルタには摂動を受けた信号と受けない信号を振り分けることで、フィルタ毎に異なった摂動あるいは、非摂動項が出力されるのである。
【0131】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、ポリフェーズフィルタバンクである時分割フィルタバンク回路を用いることにより、処理すべき信号のレートを低下させかつ各アンテナ素子に対応する複数の摂動項の信号を正確に取り出すことができる。従って、ビットレートに比較して非常に高速なサンプリングを行えるA/D変換器を必要とせず、低速となるのでサンプリングのタイミング調整も容易となる。それ故、回路構成が簡単であって、時間的正確にかつ、ビーム形成方向として正確に主ビームの制御やヌルの制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1の実施形態であるアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1の時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20と摂動付加回路30の詳細な内部構成を示すブロック図である。
【図3】 図2の時分割フィルタバンク回路10の動作例を示すブロック図である。
【図4】 第1の実施形態の変形例である、本発明に係る第1の変形例のアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20aの構成を示すブロック図である。
【図5】 本発明に係る第2の実施形態であるアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20tの構成を示すブロック図である。
【図6】 図5のTRF回路61の詳細な内部構成を示すブロック図である。
【図7】 第2の実施形態の変形例である、本発明に係る第2の変形例のアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20taの構成を示すブロック図である。
【図8】 本発明に係る第3の実施形態であるアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20mの構成を示すブロック図である。
【図9】 第3の実施形態の変形例である、本発明に係る第3の変形例のアレーアンテナの制御装置における時分割フィルタバンク回路10とビーム制御回路20maの構成を示すブロック図である。
【図10】 従来例のアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】 第1の実施形態のシミュレーション結果であって4素子リニアアレーアンテナの場合の指向性パターンを示すグラフである。
【図12】 第1の実施形態のシミュレーション結果であって4素子リニアアレーアンテナの場合の搬送波/雑音電力比(CNR)に対するビットエラーレート(BER)の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1−1乃至1−N…アンテナ素子、
2−1乃至2−N…低雑音増幅器(LNA),
3−1乃至3−N…可変移相器、
4…合成器、
5…ダウンコンバータ、
6…帯域通過フィルタ(BPF)、
7…復調器、
8…低域通過フィルタ(LPF)、
9…A/D変換器、
10…時分割フィルタバンク回路、
11−1乃至11−(M−1)…遅延回路、
12−0乃至12−(M−1)…ダウンサンプラ、
13−0乃至13−(M−1)…ディジタルフィルタ、
14−0乃至14−(M−1)…ダウンサンプラ、
20,20a,20t,20ta,20m,20ma…ビーム制御回路、
21,21t,21m…ビーム制御部、
22−0乃至22−(M−1)…可変増幅器、
23…基準信号発生器、
24…減算器、
30…摂動付加回路、
31…摂動付加電圧発生器、
32…スイッチコントローラ、
33−1乃至33−N…加算器、
34−1乃至34−N…スイッチ、
61,61−0乃至61−(M−1)…トランスバーサルフィルタ回路(TRF回路)、
70…TDL回路、
71−1乃至71−(L−1)…遅延回路、
72−0乃至72−(L−1)…可変増幅器、
73…加算器、
100…アレーアンテナ。
Claims (8)
- 複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号をそれぞれ所定の移相量だけ移相させて出力する複数N個の移相手段と、
上記各移相手段から出力される複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力する合成手段と、
上記合成手段から出力される無線信号をベースバンド信号に復調して出力する復調手段と、
上記復調手段から出力されるベースバンド信号を所定の利得で利得制御して出力する利得制御手段と、
上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号と所定値の基準信号との間の誤差信号を発生して出力する減算手段と、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記減算手段から出力される誤差信号の電力の傾斜ベクトルを計算し、計算された誤差信号の電力の傾斜ベクトルと上記誤差信号に基づいて当該誤差信号が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための各移相量及び上記利得制御手段の利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力する制御手段とを備えたアレーアンテナの制御装置において、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調手段と上記利得制御手段との間、又は上記利得制御手段と上記制御手段及び上記減算手段との間に挿入して設けられ、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行する時分割処理手段をさらに備えたことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。 - 上記利得制御手段は、トランスバーサルフィルタ回路であることを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御装置。
- 複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号をそれぞれ所定の移相量だけ移相させて出力する複数N個の移相手段と、
上記各移相手段から出力される複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力する合成手段と、
上記合成手段から出力される無線信号をベースバンド信号に復調して出力する復調手段と、
上記復調手段から出力されるベースバンド信号を所定の利得で利得制御して出力する利得制御手段と、
上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号の符号を判別して符号判別値を示す符号判別値信号を出力する符号判別手段と、
上記符号判別手段から出力される符号判別値信号と、上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号との間の誤差信号を発生して出力する減算手段と、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号の摂動前後の変化量を計算し、計算された変化量と、上記復調手段から出力されるベースバンド信号と、上記利得制御手段から出力されるベースバンド信号と、上記減算手段から出力される誤差信号とに基づいて、上記誤差信号の自乗平均が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための上記各移相量及び上記利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力する制御手段とを備え、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調手段と上記利得制御手段との間、又は上記利得制御手段と上記制御手段及び上記減算手段との間に挿入して設けられ、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行する時分割処理手段をさらに備えたことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。 - 請求項1乃至3のうちの1つに記載のアレーアンテナの制御装置において、
上記復調手段の後段に挿入して設けられ、上記復調手段から出力されるベースバンド信号に対してアナログ・ディジタル変換して、変換後のディジタルのベースバンド信号を出力する変換手段をさらに備えたことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。 - 複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号を、複数の移相手段を用いて、それぞれ所定の移相量だけ移相させるステップと、
上記移相された複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力するステップと、
上記合成後の無線信号をベースバンド信号に復調するステップと、
上記復調されたベースバンド信号を、利得制御手段を用いて所定の利得で利得制御するステップと、
上記利得制御されたベースバンド信号と所定値の基準信号との間の誤差信号を発生するステップと、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記誤差信号の電力の傾斜ベクトルを計算し、計算された誤差信号の電力の傾斜ベクトルと上記誤差信号に基づいて当該誤差信号が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための各移相量及び上記利得制御するステップの利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力するステップとを含むアレーアンテナの制御方法において、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調するステップと上記利得制御するステップとの間、又は上記利得制御するステップと上記計算するステップ及び上記誤差信号を発生するステップとの間で実行され、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行するステップをさらに含むことを特徴とするアレーアンテナの制御方法。 - 上記利得制御するステップは、トランスバーサルフィルタ回路を用いて実行されることを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。
- 複数N個のアンテナ素子が互いに所定の間隔で並置されてなるアレーアンテナの各アンテナ素子で受信された複数N個の無線信号を、複数の移相手段を用いてそれぞれ所定の移相量だけ移相させるステップと、
上記移相された複数N個の無線信号を合成して、合成後の無線信号を出力するステップと、
上記合成後の無線信号をベースバンド信号に復調するステップと、
上記復調されたベースバンド信号を、利得制御手段を用いて所定の利得で利得制御するステップと、
上記利得制御されたベースバンド信号の符号を判別して符号判別値を示す符号判別値信号を出力するステップと、
上記符号判別値信号と、上記利得制御されたベースバンド信号との間の誤差信号を発生するステップと、
上記複数の移相手段の各移相量をそれぞれ所定のシフト量だけ摂動させ、各移相量に対する、上記利得制御されたベースバンド信号の摂動前後の変化量を計算し、計算された変化量と、上記復調されたベースバンド信号と、上記利得制御されたベースバンド信号と、上記誤差信号とに基づいて、上記誤差信号の自乗平均が最小となるように、上記アレーアンテナの主ビームを所定の方向に向けるための上記各移相量及び上記利得を計算してそれぞれ上記各移相手段及び上記利得制御手段に出力するステップとを備え、
上記ベースバンド信号は複数個のサンプル信号を含む系列信号を含み、
上記復調するステップと上記利得制御するステップとの間、又は上記利得制御するステップと上記計算するステップ及び上記誤差信号を発生するステップとの間で実行され、入力されるベースバンド信号に基づいて、摂動されない期間における少なくとも1つのサンプル信号と、摂動された期間における上記系列信号内の複数のサンプル信号とが異なる出力信号として出力されるように時分割処理を実行するステップをさらに含むことを特徴とするアレーアンテナの制御方法。 - 請求項5乃至7のうちの1つに記載のアレーアンテナの制御方法において、
上記復調するステップの後に実行され、上記復調されたベースバンド信号に対してアナログ・ディジタル変換して、変換後のディジタルのベースバンド信号を出力するステップをさらに含むことを特徴とするアレーアンテナの制御方法。
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