JP3667111B2 - 光ピックアップ装置及びクロストーク除去方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク等の記録媒体から記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置に関し、特に、光学的に読み取った信号中から、隣接トラックからのクロストーク成分を除去するクロストーク除去手段を備えた光ピックアップ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光ピックアップ装置には、記録媒体の高密度記録化に伴う隣接トラックからのクロストークを除去するために、クロストーク除去手段が設けられている。従来のクロストーク除去手段としては、特開平6−342522号公報、特開平10−3679号公報、本出願人が先に行った特願平9−274220号及び特願平9−308411号に示されたものがある。
【0003】
これらの従来技術では、記録情報を読み取るための主ビームと、トラッキングサーボを行うための一対の副ビームとを記録媒体に照射する3ビーム法が適用されている。そして、主ビームで記録情報を読み取る際の隣接トラックからのクロストークの影響を除去するために、クロストーク除去手段が設けられている。
【0004】
このクロストーク除去手段は、主ビームの反射光を検出することで得られる第1の光検出信号と一方の副ビームの反射光を検出することで得られる第2の光検出信号とを光ディスクの走査線速度に対応して時間遅延させることにより、光検出した時点を一致させるように位相調整し、更に、これらの時間遅延の施された第1の光検出信号及び第2の光検出信号と、他方の副ビームの反射光を検出することで得られる第3の光検出信号とを加減算処理することによって、クロストーク成分を相殺するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のクロストーク除去手段は、主ビームと副ビームとが記録媒体に対して予め決められた所定間隔でスポット照射されることを前提にして、第1,第2の光検出信号を時間遅延することにより、第1〜第3の光検出信号の位相合わせを行っている。したがって、主ビームと副ビームが常に所定間隔でスポット照射される場合には、光ディスクの走査線速度に対応して第1〜第3の光検出信号の位相を一致させることができるため、上記の加減算処理によってクロストーク成分を効果的に除去することが可能である。
【0006】
しかし、主ビームと副ビームとのスポット照射位置が変動した場合には、光ディスクの走査線速度に対応して時間遅延を行うと、第1〜第3の光検出信号間に位相ズレが生じることになるため、上記の加減算処理を行ってもクロストーク成分を効果的に除去することができない場合があった。
【0007】
例えば、3ビーム法を適用した光ピックアップ装置では、レーザダイオードから射出される光をグレーティングに通すことで、0次光と±1次光を発生させ、0次光を主ビームに、±1次光を副ビームにそれぞれ割り当るようにしている。しかし、レーザダイオードの温度依存性に起因して射出光の波長が変動した場合に、上記のスポット照射位置が変動することになり、その結果、上記の第1の光検出信号と第2の光検出信号を時間遅延させると位相ズレが生じることとなり、クロストーク成分を相殺することができない場合があった。
【0008】
すなわち、光ピックアップ装置に適用される一般的なレーザダイオードの光出力が一定のときの動作電流Iopと波長λは、図6及び図7の特性図に示すように、温度に依存して変動するため、上記従来のクロストーク除去手段では、そのクロストークの抑制効果が十分に発揮されない場合があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような上記従来の課題を克服するために成されたものであり、記録媒体の多数のトラックに記録されている記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置であって、光源としてのレーザダイオードと、上記レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、上記レーザダイオードに供給される上記駆動電流を検出する電流検出手段と、上記記録媒体の目的トラックに照射される主光線と隣接トラックに照射される一対の副光線とを上記レーザダイオードの射出光から生成する光学手段と、上記目的トラックと隣接トラックからの反射光を検出し、それぞれに対応する目的信号と隣接信号を生成する光検出手段と、上記目的信号と上記隣接信号に時間遅延を施すことにより、上記目的信号と上記隣接信号の時間合わせを行う遅延手段と、上記遅延手段により時間合わせされた上記目的信号と上記隣接信号を演算することにより、上記目的信号に含まれる隣接トラックからのクロストーク成分を除去する演算手段と、上記電流検出手段の出力に基づいて上記遅延手段の遅延時間を調節する制御手段とを備える構成とした。
【0010】
かかる構成によると、レーザダイオードの射出光の波長が変動し、それに伴って目的トラックと隣接トラックにそれぞれ照射される主光線と一対の副光線の照射位置との間隔が変動した場合に、レーザダイオードの射出光の波長変動に応じた変化が電流検出手段によって検出される。この電流検出手段で検出される変化は、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動と相関関係があり、この結果、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動に応じて、遅延手段の遅延時間が設定される。
【0011】
このため、演算手段には、時間合わせが行われた目的信号と隣接信号が供給されることとなり、これらの時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することによって、隣接トラックからのクロストーク成分が除去された目的信号が生成される。
【0012】
また、本発明は、光源としてのレーザダイオードと、上記レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、上記レーザダイオードに供給される上記駆動電流を検出する電流検出手段と、記録媒体の目的トラックに照射される主光線と隣接トラックに照射される一対の副光線とを上記レーザダイオードから生成する光学手段と、上記目的トラックと隣接トラックからの反射光を検出し、それぞれに対応する目的信号と隣接信号を生成する光検出手段とを備え、上記記録媒体のトラックに記録されている記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置におけるクロストーク除去方法であって、上記目的信号と上記隣接信号に時間遅延を施すことにより、上記目的信号と上記隣接信号の時間軸を合わせる遅延工程と、上記遅延手段により時間軸が合わせられた上記目的信号と上記隣接信号を演算することにより、上記目的信号に含まれる隣接トラックからのクロストーク成分を除去する演算工程と、上記電流検出手段の出力に基づいて上記遅延手段の遅延時間を調節する制御工程とを備えることとした。
【0013】
かかる方法によっても、上記の光ピックアップ装置の発明と同様に、レーザダイオードの射出光の波長が変動し、それに伴って目的トラックと隣接トラックにそれぞれ照射される主光線と一対の副光線の照射位置との間隔が変動した場合に、レーザダイオードの射出光の波長変動に応じた変化が電流検出手段によって検出される。この電流検出手段で検出される変化は、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動と相関関係があり、この結果、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動に応じて、遅延工程の遅延時間が設定される。
【0014】
このため、演算工程では、時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することとなり、これらの時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することによって、隣接トラックからのクロストーク成分が除去された目的信号が生成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図5を参照して説明する。尚、CD(コンパクトディスク)やDVD(ディタルビデオディスクまたはデジタルバーサタイルディスク)等の光ディスクから記録情報を読み取るための光ピックアップ装置について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る光ピックアップ装置に備えられている光学系の構成を模式的に示す構成図である。
【0017】
同図において、この光学系は、光源であるレーザダイオードLDと、レーザダイオードLDから射出される光を回折するグレーティングGTと、グレーティングGTで生成される0次光と±1次光を集光するコリメータレンズCL、及びコリメータレンズCLからの光を集束することで、0次光から主光線(以下、主ビームという)Bc、±1次光から1対の副光線(以下、副ビームという)Bi,Boを生成する対物レンズOLを備えて構成されている。
【0018】
かかる構成によると、光ディスクの目的トラック上に主ビームBcによる微細な主スポットPcが結ばれ、目的トラックに隣接する隣接トラック上に、副ビームBi,Boによる副スポットPi,Poがそれぞれ結ばれる。
【0019】
すなわち、レーザダイオードLDから、後述する目的値VRに従って本来的に決められている波長λの光が射出される場合(理想状態)には、図4(a)に示すように、主スポットPcを中心にして副スポットPiとPoが、光ディスクの回転方向θtに沿って共に等しい間隔dで結ばれる。ここで、副スポットPiがラジアル方向θrの内側、副スポットPiがラジアル方向θrの外側に結ばれる。 そして、主ビームBcと副ビームBi,Boがそれぞれ目的トラックと隣接トラックで反射あるいは回折されることによって生じる戻り光を、対物レンズOLとコリメータレンズCL及びダイクロイックミラー等(図示略)を介して、図2中に示す光検出器2,3,4が受光することにより、記録情報の読み取りが行われる。
【0020】
ここで、上記理想状態における主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔dを具体的に説明する。本実施形態では、レーザダイオードLDの波長λを410nm、グレーティングGTのピッチΔPを32μm、レーザダイオードLDの射出端からグレーティングGTまでの間隔vを5.48mm、コリメータレンズCLの焦点距離fCLを11mm、対物レンズOLの焦点距離fOLを3.3mm、コリメータレンズCLと対物レンズOLによる光学倍率βを約3.33に設定している。尚、図1中のIoとIiは、±1次光の仮想発光点を示している。
【0021】
この結果、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔yは、次式(1)に示す理論式から、
y=(λ/ΔP)×(v/β)≒20.92μm …(1)
となっている。
【0022】
ここで、上記式(1)で求められる間隔yは、図4(a)に示したように、光ディスクの回転方向θtに対して斜め方向に結ばれる主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔であって、回転方向θtに沿った間隔dとは若干異なるが、トラックピッチが間隔dに比べて極めて小さいことを考慮すると、d=yとしても、実用上はクロストーク除去精度に殆ど影響を及ぼさない。ちなみに、本実施形態では、トラックピッチは、約0.37μmとなっている。
【0023】
次に、クロストーク除去装置の構成を図2及び図3を参照して説明する。図2は、このクロストーク除去装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0024】
図2において、主スポットPcからの戻り光を検出する第1の光検出器2と、副スポットPiからの戻り光を検出する第2の光検出器3と、副スポットPoからの戻り光を検出する第3の光検出器4と、各光検出器2,3,4から出力される目的信号Scと隣接信号Si,So をそれぞれ入力する前置回路5,6,7と、前置回路5,6,7からそれぞれ出力される目的データDcと隣接データDi,Doに基づいて、隣接トラックからのクロストークを除去するクロストーク除去回路22とが備えられている。
【0025】
前置回路5,6,7は何れも同じ構成となっている。そこで、前置回路5の構成を代表して述べると、目的信号Sc中から記録情報のアナログ信号成分だけを抽出し、所要の等価を行って出力するアナログイコライザ5aと、アナログイコライザ5aの出力を所定ビットのデジタルデータに変換するA/D変換器5bと、そのデジタルデータ中の直流成分を除去することで、記録情報を表す目的データDcを生成する直流成分除去回路5cが備えらている。
【0026】
更に、目的データDcの位相成分を位相検出回路5dで抽出して、この位相成分をローパスフィルタ5eとVCO(ボルテージコントロールオシレータ)回路5fを通じてA/D変換器5bにサンプリングクロックとして供給することにより、適正な目的データDcが得られるように、サンプリングクロックの周波数及び位相が帰還制御されるようになっている。
【0027】
クロストーク除去回路22は、遅延時間制御回路8と、遅延手段としてのFIFO(ファーストインファーストアウト)メモリ9,10、演算手段としての加減算回路11、可変フィルタ12,13、及び可変フィルタ12,13のフィルタ特性を調整するコントローラ回路14,15を備えて構成されている。
【0028】
遅延時間制御回路8は、レーザダイオードLDを駆動している駆動回路16から出力されるレーザダイオードLDの駆動電流を表す検出信号Sdを、A/D変換器17を介して入力し、その検出信号Sdの値に応じて、FIFOメモリ9,10のそれぞれの遅延時間τ1,τ2を調整する。
【0029】
すなわち、駆動回路16には、図3に示すAPC回路(自動出力制御回路)が備えられており、レーザダイオードLDから射出される光の一部を検出し、その発光強度に応じた電流を発生するフォトダイオードPDと、フォトダイオードPDに流れる電流IPDに比例した電圧VPDを発生する抵抗16aと、電圧VPDと目標値VRとの差分値を求める差動増幅器16bとを有すると共に、その差分値がゼロとなるように駆動電流Idを増幅器16cとローパスフィルタ16d及び抵抗16eを介してレーザダイオードLDに供給する構成を有している。この構成により、レーザダイオードLDには、その発光強度が一定となるように駆動電流Idが供給される。
【0030】
そして、抵抗16eに発生する電圧降下を差動増幅器16fが検出することで、駆動電流Idの値を表す検出信号SdをA/D変換器17を介して遅延時間制御回路8に供給し、遅延時間制御回路8がこの検出信号Sdに基づいてFIFOメモリ9,10のそれぞれの遅延時間τ1,τ2を調整する。
【0031】
FIFOメモリ9は、図4(a)に示した理想状態では、遅延時間制御回路8の指示に従って、間隔dに相当する時間tを遅延時間τ1として設定し、これにより、目的データDcを遅延時間tだけ遅らせて加減算回路11に供給する。
【0032】
FIFOメモリ10は、上記理想状態では、遅延時間制御回路8の指示に従って、間隔2×dに相当する時間2×tを遅延時間τ2として設定することにより、隣接データDiを遅延時間2×tだけ遅らせて、ローパスフィルタ12を介して加減算回路11に供給する。
【0033】
ここで、上記の理想状態では、レーザダイオードLDに供給される駆動電流Idは、レーザダイオードLDが予め設定した温度における所定値となり、これに伴って射出光は予め設定された波長λとなり、更に、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔dが波長λに対応して決まる。更に、検出信号Sdは駆動電流Idの値を表しているため、間隔dとの相関関係も有している。そこで、遅延時間制御回路8は、検出信号Sdに基づいて、間隔dを光ディスクの走査線速度との関係で時間換算し、それによって得られる時間t(=d/走査線速度)をFIFOメモリ9の遅延時間τ1とし、時間2×tをFIFOメモリ10の遅延時間τ2として設定している。
【0034】
加減算回路11は、可変フィルタ12を介してFIFOメモリ9から遅延時間τ1だけ遅れて出力される目的データDc(τ1)と、可変フィルタ13を介してFIFOメモリ10から遅延時間τ2だけ遅れて出力される隣接データDi(τ2)と、前置回路7から時間遅延が施されることなく出力される隣接データDoとを次式(2)にしたがって加減算することにより、隣接トラックからのクロストークの除去された目的データDc’を生成する。
Dc’=Dc(τ1)−Di(τ2)−Do …(2)
ここで、コントローラ14,15は、それぞれFIFOメモリ10,9で遅延後の隣接データDi,Doと目的データDc’との相関を計算することによって、目的データDc’に含まれるそれぞれ内周側、外周側の隣接トラックからのクロストーク成分を検出し、クロストークの残留量が最小となるようにそれぞれフィルタ12,13のフィルタ係数を設定する。
【0035】
このフィルタ係数は、一種の減衰特性を表しており、設定されたフィルタ係数は光ディスクのチルト、すなわち光ピックアップ装置の光軸に対するラジアル方向の傾きを反映している。そして、それぞれ内周側、外周側のフィルタ係数の設定信号が演算回路19に供給され、ここで両者の差分に応じたチルトエラー信号Seが生成される。尚、具体例としては、フィルタ係数の設定信号としてフィルタ係数自体を用い、演算回路19にてこの係数間の差分に応じて生成したPWM(Pulse Width Modulation)波を低域ろ波することで、チルトエラー信号Seを生成することができる。このチルトエラー信号Seは、光ピックアップ装置の光軸を光ディスクのチルトに追従させて駆動制御するために使用される。
【0036】
目的データDc’は、ビタビ複号回路20及び8/16復調回路21によって復調され、目的トラックに記録されている記録情報を有する再生データDとされる。
【0037】
次に、かかる構成を有する本実施形態の動作を図4及び図5を参照して説明する。
【0038】
まず、上記の理想状態では、図4(a)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poが予め決められた間隔dで配置される。更に、FIFOメモリ9の遅延時間τ1は、この間隔dに対応する時間tに設定され、FIFOメモリ10の遅延時間τ2は、間隔2×dに比例した時間2×tに設定される。
【0039】
この状態で、記録情報の読み出しが行われると、加減算回路11には、遅延時間τ1=tだけ時間遅延された目的データDc(τ1)と、遅延時間τ2=2×tだけ時間遅延された隣接データDi(τ2)と、時間遅延の施されない隣接データDoが供給される。
【0040】
このため、図4(b)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poが光ディスクの回転方向θtに揃っている(位相が合っている)状態で、光検出器2,3,4が同時に光検出を行ったのと等価な状態となり、更に、加減算回路11が上記式(2)に基づいて、これらの目的データDc(τ1)と隣接データDi(τ2),Doを加減算することにより、隣接トラックからのクロストークが除去された目的データDc’が生成されることになる。
【0041】
次に、主スポットPcと副スポットPi,Poが予め決められた位置からずれた場合の動作を説明する。従来技術で説明したように、レーザダイオードLDの温度依存性に起因して、その射出光の波長λが不可避的に変動すると、一例として図5(a)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔が、dからd+Δdに変化することとなる。尚、間隔の変動分Δdは、波長λの変動に応じてプラスの値にもマイナスの値にもなる。
【0042】
このように主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔がd+Δdに変化した場合には、遅延時間制御回路8が、駆動回路16から出力される検出信号Sdに基づいて、FIFOメモリ9,10の遅延時間τ1,τ2を可変調整することにより、加減算回路11に供給される目的データDc(τ1)と隣接データDi(τ2)及び隣接データDoの時間合わせが行われる。
【0043】
すなわち、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔d+Δdに変動している場合には、レーザダイオードLDの駆動電流Idが変動しており、それに伴って検出信号Sdも変動している。更に、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔の変動と、検出信号Sdの変動との間には、一定の相関関係がある。このため、遅延時間制御回路8が検出信号Sdに基づいて、FIFOメモリ9,10を制御することにより、FIFOメモリ9は、間隔d+Δdに比例した時間t+Δtが遅延時間τ1として設定され、FIFOメモリ10は、間隔2×(d+Δd)に比例した時間2×(t+Δt)が遅延時間τ2として設定される。
【0044】
この結果、図5(b)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poが光ディスクの回転方向θtに揃っている(位相が合っている)状態で、光検出器2,3,4が同時に光検出を行ったのと等価な状態が得られることとなり、加減算回路11が上記式(2)に基づいてこれらの目的データDc(τ1)と隣接データDi(τ2),Doを加減算することにより、隣接トラックからのクロストークが除去された目的データDc’が生成されることとなる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、レーザダイオードLDの射出光の波長が変動し、それによって主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔が変動した場合でも、レーザダイオードLDの駆動電流Idの変化に応じて、FIFOメモリ9,10の遅延時間τ1,τ2を調整するようにしたので、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔に対する走査時間と、FIFOメモリ9,10の遅延時間τ1,τ2とを常に一定の時間関係に設定することができる。このため、隣接トラックからのクロストークを効果的に除去することができる。
【0046】
尚、本実施形態では、光ディスクを対象とする光ピックアップ装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、トラッキングサーボ等が必要な記録媒体全般に適用できるものである。
【0047】
また、時間遅延手段としてFIFOメモリを適用する場合を説明したが、これに代えて、ランダムアクセスメモリや、電荷結合デバイス(CCD)を用いた遅延素子や、多段のシフトレジスタ等、情報を一時的に保持し得る他のデバイスを適用してもよい。
【0048】
また、レーザダイオードLDの駆動電流Idを抵抗16eの電圧降下として検出する場合を説明したが、これに代えて、駆動電流Idに比例した電流を発生させるカレントミラー回路や、駆動回路16中のAPC回路等に予め設けられている電流検出用トランジスタを利用する等、他の検出手段を適用してもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、光源としてのレーザダイオードの波長が変動するのに伴って、目的トラックと隣接トラックにそれぞれ照射される主光線と一対の副光線の照射位置が変動しても、レーザダイオードの駆動電流の変化に基づいて、目的信号と隣接信号との時間合わせのための遅延時間の調整を行うようにしたので、これらの時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することによって、隣接トラックからのクロストーク成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の光ピックアップ装置に備えられている光学系の構成を模式的に示す構成図である。
【図2】本実施の形態の光ピックアップ装置に備えられているクロストーク除去装置の構成を示すブロック図である。
【図3】レーザダイオードの駆動電流を検出するための回路を示す回路図である。
【図4】光ディスクのトラックに照射される主パターンと副パターンの、理想状態における位置関係を示す説明図である。
【図5】光ディスクのトラックに照射される主パターンと副パターンの、理想状態でない場合における位置関係を示す説明図である。
【図6】レーザダイオードにおける動作電流の温度依存性を示す特性図である。
【図7】レーザダイオードにおける波長の温度依存性を示す特性図である。
【符号の説明】
LD…レーザダイオード
GT…グレーティング
CL…コリメータレンズ
OL…対物レンズ
PD…フォトダイオード
Pc…主パターン
Pi,Po…副パターン
Bc…主光線(主ビーム)
Bi,Bo…副光線(副ビーム)
2,3,4…光検出器
8…遅延時間制御回路
9,10…FIFOメモリ
11…加減算器
16…駆動回路
16a,16e…抵抗
16b,16f…差動増幅器
16d…ローパスフィルタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク等の記録媒体から記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置に関し、特に、光学的に読み取った信号中から、隣接トラックからのクロストーク成分を除去するクロストーク除去手段を備えた光ピックアップ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の光ピックアップ装置には、記録媒体の高密度記録化に伴う隣接トラックからのクロストークを除去するために、クロストーク除去手段が設けられている。従来のクロストーク除去手段としては、特開平6−342522号公報、特開平10−3679号公報、本出願人が先に行った特願平9−274220号及び特願平9−308411号に示されたものがある。
【0003】
これらの従来技術では、記録情報を読み取るための主ビームと、トラッキングサーボを行うための一対の副ビームとを記録媒体に照射する3ビーム法が適用されている。そして、主ビームで記録情報を読み取る際の隣接トラックからのクロストークの影響を除去するために、クロストーク除去手段が設けられている。
【0004】
このクロストーク除去手段は、主ビームの反射光を検出することで得られる第1の光検出信号と一方の副ビームの反射光を検出することで得られる第2の光検出信号とを光ディスクの走査線速度に対応して時間遅延させることにより、光検出した時点を一致させるように位相調整し、更に、これらの時間遅延の施された第1の光検出信号及び第2の光検出信号と、他方の副ビームの反射光を検出することで得られる第3の光検出信号とを加減算処理することによって、クロストーク成分を相殺するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のクロストーク除去手段は、主ビームと副ビームとが記録媒体に対して予め決められた所定間隔でスポット照射されることを前提にして、第1,第2の光検出信号を時間遅延することにより、第1〜第3の光検出信号の位相合わせを行っている。したがって、主ビームと副ビームが常に所定間隔でスポット照射される場合には、光ディスクの走査線速度に対応して第1〜第3の光検出信号の位相を一致させることができるため、上記の加減算処理によってクロストーク成分を効果的に除去することが可能である。
【0006】
しかし、主ビームと副ビームとのスポット照射位置が変動した場合には、光ディスクの走査線速度に対応して時間遅延を行うと、第1〜第3の光検出信号間に位相ズレが生じることになるため、上記の加減算処理を行ってもクロストーク成分を効果的に除去することができない場合があった。
【0007】
例えば、3ビーム法を適用した光ピックアップ装置では、レーザダイオードから射出される光をグレーティングに通すことで、0次光と±1次光を発生させ、0次光を主ビームに、±1次光を副ビームにそれぞれ割り当るようにしている。しかし、レーザダイオードの温度依存性に起因して射出光の波長が変動した場合に、上記のスポット照射位置が変動することになり、その結果、上記の第1の光検出信号と第2の光検出信号を時間遅延させると位相ズレが生じることとなり、クロストーク成分を相殺することができない場合があった。
【0008】
すなわち、光ピックアップ装置に適用される一般的なレーザダイオードの光出力が一定のときの動作電流Iopと波長λは、図6及び図7の特性図に示すように、温度に依存して変動するため、上記従来のクロストーク除去手段では、そのクロストークの抑制効果が十分に発揮されない場合があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような上記従来の課題を克服するために成されたものであり、記録媒体の多数のトラックに記録されている記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置であって、光源としてのレーザダイオードと、上記レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、上記レーザダイオードに供給される上記駆動電流を検出する電流検出手段と、上記記録媒体の目的トラックに照射される主光線と隣接トラックに照射される一対の副光線とを上記レーザダイオードの射出光から生成する光学手段と、上記目的トラックと隣接トラックからの反射光を検出し、それぞれに対応する目的信号と隣接信号を生成する光検出手段と、上記目的信号と上記隣接信号に時間遅延を施すことにより、上記目的信号と上記隣接信号の時間合わせを行う遅延手段と、上記遅延手段により時間合わせされた上記目的信号と上記隣接信号を演算することにより、上記目的信号に含まれる隣接トラックからのクロストーク成分を除去する演算手段と、上記電流検出手段の出力に基づいて上記遅延手段の遅延時間を調節する制御手段とを備える構成とした。
【0010】
かかる構成によると、レーザダイオードの射出光の波長が変動し、それに伴って目的トラックと隣接トラックにそれぞれ照射される主光線と一対の副光線の照射位置との間隔が変動した場合に、レーザダイオードの射出光の波長変動に応じた変化が電流検出手段によって検出される。この電流検出手段で検出される変化は、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動と相関関係があり、この結果、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動に応じて、遅延手段の遅延時間が設定される。
【0011】
このため、演算手段には、時間合わせが行われた目的信号と隣接信号が供給されることとなり、これらの時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することによって、隣接トラックからのクロストーク成分が除去された目的信号が生成される。
【0012】
また、本発明は、光源としてのレーザダイオードと、上記レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、上記レーザダイオードに供給される上記駆動電流を検出する電流検出手段と、記録媒体の目的トラックに照射される主光線と隣接トラックに照射される一対の副光線とを上記レーザダイオードから生成する光学手段と、上記目的トラックと隣接トラックからの反射光を検出し、それぞれに対応する目的信号と隣接信号を生成する光検出手段とを備え、上記記録媒体のトラックに記録されている記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置におけるクロストーク除去方法であって、上記目的信号と上記隣接信号に時間遅延を施すことにより、上記目的信号と上記隣接信号の時間軸を合わせる遅延工程と、上記遅延手段により時間軸が合わせられた上記目的信号と上記隣接信号を演算することにより、上記目的信号に含まれる隣接トラックからのクロストーク成分を除去する演算工程と、上記電流検出手段の出力に基づいて上記遅延手段の遅延時間を調節する制御工程とを備えることとした。
【0013】
かかる方法によっても、上記の光ピックアップ装置の発明と同様に、レーザダイオードの射出光の波長が変動し、それに伴って目的トラックと隣接トラックにそれぞれ照射される主光線と一対の副光線の照射位置との間隔が変動した場合に、レーザダイオードの射出光の波長変動に応じた変化が電流検出手段によって検出される。この電流検出手段で検出される変化は、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動と相関関係があり、この結果、主光線と一対の副光線の照射位置との間隔の変動に応じて、遅延工程の遅延時間が設定される。
【0014】
このため、演算工程では、時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することとなり、これらの時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することによって、隣接トラックからのクロストーク成分が除去された目的信号が生成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図5を参照して説明する。尚、CD(コンパクトディスク)やDVD(ディタルビデオディスクまたはデジタルバーサタイルディスク)等の光ディスクから記録情報を読み取るための光ピックアップ装置について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る光ピックアップ装置に備えられている光学系の構成を模式的に示す構成図である。
【0017】
同図において、この光学系は、光源であるレーザダイオードLDと、レーザダイオードLDから射出される光を回折するグレーティングGTと、グレーティングGTで生成される0次光と±1次光を集光するコリメータレンズCL、及びコリメータレンズCLからの光を集束することで、0次光から主光線(以下、主ビームという)Bc、±1次光から1対の副光線(以下、副ビームという)Bi,Boを生成する対物レンズOLを備えて構成されている。
【0018】
かかる構成によると、光ディスクの目的トラック上に主ビームBcによる微細な主スポットPcが結ばれ、目的トラックに隣接する隣接トラック上に、副ビームBi,Boによる副スポットPi,Poがそれぞれ結ばれる。
【0019】
すなわち、レーザダイオードLDから、後述する目的値VRに従って本来的に決められている波長λの光が射出される場合(理想状態)には、図4(a)に示すように、主スポットPcを中心にして副スポットPiとPoが、光ディスクの回転方向θtに沿って共に等しい間隔dで結ばれる。ここで、副スポットPiがラジアル方向θrの内側、副スポットPiがラジアル方向θrの外側に結ばれる。 そして、主ビームBcと副ビームBi,Boがそれぞれ目的トラックと隣接トラックで反射あるいは回折されることによって生じる戻り光を、対物レンズOLとコリメータレンズCL及びダイクロイックミラー等(図示略)を介して、図2中に示す光検出器2,3,4が受光することにより、記録情報の読み取りが行われる。
【0020】
ここで、上記理想状態における主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔dを具体的に説明する。本実施形態では、レーザダイオードLDの波長λを410nm、グレーティングGTのピッチΔPを32μm、レーザダイオードLDの射出端からグレーティングGTまでの間隔vを5.48mm、コリメータレンズCLの焦点距離fCLを11mm、対物レンズOLの焦点距離fOLを3.3mm、コリメータレンズCLと対物レンズOLによる光学倍率βを約3.33に設定している。尚、図1中のIoとIiは、±1次光の仮想発光点を示している。
【0021】
この結果、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔yは、次式(1)に示す理論式から、
y=(λ/ΔP)×(v/β)≒20.92μm …(1)
となっている。
【0022】
ここで、上記式(1)で求められる間隔yは、図4(a)に示したように、光ディスクの回転方向θtに対して斜め方向に結ばれる主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔であって、回転方向θtに沿った間隔dとは若干異なるが、トラックピッチが間隔dに比べて極めて小さいことを考慮すると、d=yとしても、実用上はクロストーク除去精度に殆ど影響を及ぼさない。ちなみに、本実施形態では、トラックピッチは、約0.37μmとなっている。
【0023】
次に、クロストーク除去装置の構成を図2及び図3を参照して説明する。図2は、このクロストーク除去装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0024】
図2において、主スポットPcからの戻り光を検出する第1の光検出器2と、副スポットPiからの戻り光を検出する第2の光検出器3と、副スポットPoからの戻り光を検出する第3の光検出器4と、各光検出器2,3,4から出力される目的信号Scと隣接信号Si,So をそれぞれ入力する前置回路5,6,7と、前置回路5,6,7からそれぞれ出力される目的データDcと隣接データDi,Doに基づいて、隣接トラックからのクロストークを除去するクロストーク除去回路22とが備えられている。
【0025】
前置回路5,6,7は何れも同じ構成となっている。そこで、前置回路5の構成を代表して述べると、目的信号Sc中から記録情報のアナログ信号成分だけを抽出し、所要の等価を行って出力するアナログイコライザ5aと、アナログイコライザ5aの出力を所定ビットのデジタルデータに変換するA/D変換器5bと、そのデジタルデータ中の直流成分を除去することで、記録情報を表す目的データDcを生成する直流成分除去回路5cが備えらている。
【0026】
更に、目的データDcの位相成分を位相検出回路5dで抽出して、この位相成分をローパスフィルタ5eとVCO(ボルテージコントロールオシレータ)回路5fを通じてA/D変換器5bにサンプリングクロックとして供給することにより、適正な目的データDcが得られるように、サンプリングクロックの周波数及び位相が帰還制御されるようになっている。
【0027】
クロストーク除去回路22は、遅延時間制御回路8と、遅延手段としてのFIFO(ファーストインファーストアウト)メモリ9,10、演算手段としての加減算回路11、可変フィルタ12,13、及び可変フィルタ12,13のフィルタ特性を調整するコントローラ回路14,15を備えて構成されている。
【0028】
遅延時間制御回路8は、レーザダイオードLDを駆動している駆動回路16から出力されるレーザダイオードLDの駆動電流を表す検出信号Sdを、A/D変換器17を介して入力し、その検出信号Sdの値に応じて、FIFOメモリ9,10のそれぞれの遅延時間τ1,τ2を調整する。
【0029】
すなわち、駆動回路16には、図3に示すAPC回路(自動出力制御回路)が備えられており、レーザダイオードLDから射出される光の一部を検出し、その発光強度に応じた電流を発生するフォトダイオードPDと、フォトダイオードPDに流れる電流IPDに比例した電圧VPDを発生する抵抗16aと、電圧VPDと目標値VRとの差分値を求める差動増幅器16bとを有すると共に、その差分値がゼロとなるように駆動電流Idを増幅器16cとローパスフィルタ16d及び抵抗16eを介してレーザダイオードLDに供給する構成を有している。この構成により、レーザダイオードLDには、その発光強度が一定となるように駆動電流Idが供給される。
【0030】
そして、抵抗16eに発生する電圧降下を差動増幅器16fが検出することで、駆動電流Idの値を表す検出信号SdをA/D変換器17を介して遅延時間制御回路8に供給し、遅延時間制御回路8がこの検出信号Sdに基づいてFIFOメモリ9,10のそれぞれの遅延時間τ1,τ2を調整する。
【0031】
FIFOメモリ9は、図4(a)に示した理想状態では、遅延時間制御回路8の指示に従って、間隔dに相当する時間tを遅延時間τ1として設定し、これにより、目的データDcを遅延時間tだけ遅らせて加減算回路11に供給する。
【0032】
FIFOメモリ10は、上記理想状態では、遅延時間制御回路8の指示に従って、間隔2×dに相当する時間2×tを遅延時間τ2として設定することにより、隣接データDiを遅延時間2×tだけ遅らせて、ローパスフィルタ12を介して加減算回路11に供給する。
【0033】
ここで、上記の理想状態では、レーザダイオードLDに供給される駆動電流Idは、レーザダイオードLDが予め設定した温度における所定値となり、これに伴って射出光は予め設定された波長λとなり、更に、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔dが波長λに対応して決まる。更に、検出信号Sdは駆動電流Idの値を表しているため、間隔dとの相関関係も有している。そこで、遅延時間制御回路8は、検出信号Sdに基づいて、間隔dを光ディスクの走査線速度との関係で時間換算し、それによって得られる時間t(=d/走査線速度)をFIFOメモリ9の遅延時間τ1とし、時間2×tをFIFOメモリ10の遅延時間τ2として設定している。
【0034】
加減算回路11は、可変フィルタ12を介してFIFOメモリ9から遅延時間τ1だけ遅れて出力される目的データDc(τ1)と、可変フィルタ13を介してFIFOメモリ10から遅延時間τ2だけ遅れて出力される隣接データDi(τ2)と、前置回路7から時間遅延が施されることなく出力される隣接データDoとを次式(2)にしたがって加減算することにより、隣接トラックからのクロストークの除去された目的データDc’を生成する。
Dc’=Dc(τ1)−Di(τ2)−Do …(2)
ここで、コントローラ14,15は、それぞれFIFOメモリ10,9で遅延後の隣接データDi,Doと目的データDc’との相関を計算することによって、目的データDc’に含まれるそれぞれ内周側、外周側の隣接トラックからのクロストーク成分を検出し、クロストークの残留量が最小となるようにそれぞれフィルタ12,13のフィルタ係数を設定する。
【0035】
このフィルタ係数は、一種の減衰特性を表しており、設定されたフィルタ係数は光ディスクのチルト、すなわち光ピックアップ装置の光軸に対するラジアル方向の傾きを反映している。そして、それぞれ内周側、外周側のフィルタ係数の設定信号が演算回路19に供給され、ここで両者の差分に応じたチルトエラー信号Seが生成される。尚、具体例としては、フィルタ係数の設定信号としてフィルタ係数自体を用い、演算回路19にてこの係数間の差分に応じて生成したPWM(Pulse Width Modulation)波を低域ろ波することで、チルトエラー信号Seを生成することができる。このチルトエラー信号Seは、光ピックアップ装置の光軸を光ディスクのチルトに追従させて駆動制御するために使用される。
【0036】
目的データDc’は、ビタビ複号回路20及び8/16復調回路21によって復調され、目的トラックに記録されている記録情報を有する再生データDとされる。
【0037】
次に、かかる構成を有する本実施形態の動作を図4及び図5を参照して説明する。
【0038】
まず、上記の理想状態では、図4(a)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poが予め決められた間隔dで配置される。更に、FIFOメモリ9の遅延時間τ1は、この間隔dに対応する時間tに設定され、FIFOメモリ10の遅延時間τ2は、間隔2×dに比例した時間2×tに設定される。
【0039】
この状態で、記録情報の読み出しが行われると、加減算回路11には、遅延時間τ1=tだけ時間遅延された目的データDc(τ1)と、遅延時間τ2=2×tだけ時間遅延された隣接データDi(τ2)と、時間遅延の施されない隣接データDoが供給される。
【0040】
このため、図4(b)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poが光ディスクの回転方向θtに揃っている(位相が合っている)状態で、光検出器2,3,4が同時に光検出を行ったのと等価な状態となり、更に、加減算回路11が上記式(2)に基づいて、これらの目的データDc(τ1)と隣接データDi(τ2),Doを加減算することにより、隣接トラックからのクロストークが除去された目的データDc’が生成されることになる。
【0041】
次に、主スポットPcと副スポットPi,Poが予め決められた位置からずれた場合の動作を説明する。従来技術で説明したように、レーザダイオードLDの温度依存性に起因して、その射出光の波長λが不可避的に変動すると、一例として図5(a)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔が、dからd+Δdに変化することとなる。尚、間隔の変動分Δdは、波長λの変動に応じてプラスの値にもマイナスの値にもなる。
【0042】
このように主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔がd+Δdに変化した場合には、遅延時間制御回路8が、駆動回路16から出力される検出信号Sdに基づいて、FIFOメモリ9,10の遅延時間τ1,τ2を可変調整することにより、加減算回路11に供給される目的データDc(τ1)と隣接データDi(τ2)及び隣接データDoの時間合わせが行われる。
【0043】
すなわち、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔d+Δdに変動している場合には、レーザダイオードLDの駆動電流Idが変動しており、それに伴って検出信号Sdも変動している。更に、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔の変動と、検出信号Sdの変動との間には、一定の相関関係がある。このため、遅延時間制御回路8が検出信号Sdに基づいて、FIFOメモリ9,10を制御することにより、FIFOメモリ9は、間隔d+Δdに比例した時間t+Δtが遅延時間τ1として設定され、FIFOメモリ10は、間隔2×(d+Δd)に比例した時間2×(t+Δt)が遅延時間τ2として設定される。
【0044】
この結果、図5(b)に示すように、主スポットPcと副スポットPi,Poが光ディスクの回転方向θtに揃っている(位相が合っている)状態で、光検出器2,3,4が同時に光検出を行ったのと等価な状態が得られることとなり、加減算回路11が上記式(2)に基づいてこれらの目的データDc(τ1)と隣接データDi(τ2),Doを加減算することにより、隣接トラックからのクロストークが除去された目的データDc’が生成されることとなる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、レーザダイオードLDの射出光の波長が変動し、それによって主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔が変動した場合でも、レーザダイオードLDの駆動電流Idの変化に応じて、FIFOメモリ9,10の遅延時間τ1,τ2を調整するようにしたので、主スポットPcと副スポットPi,Poの間隔に対する走査時間と、FIFOメモリ9,10の遅延時間τ1,τ2とを常に一定の時間関係に設定することができる。このため、隣接トラックからのクロストークを効果的に除去することができる。
【0046】
尚、本実施形態では、光ディスクを対象とする光ピックアップ装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、トラッキングサーボ等が必要な記録媒体全般に適用できるものである。
【0047】
また、時間遅延手段としてFIFOメモリを適用する場合を説明したが、これに代えて、ランダムアクセスメモリや、電荷結合デバイス(CCD)を用いた遅延素子や、多段のシフトレジスタ等、情報を一時的に保持し得る他のデバイスを適用してもよい。
【0048】
また、レーザダイオードLDの駆動電流Idを抵抗16eの電圧降下として検出する場合を説明したが、これに代えて、駆動電流Idに比例した電流を発生させるカレントミラー回路や、駆動回路16中のAPC回路等に予め設けられている電流検出用トランジスタを利用する等、他の検出手段を適用してもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、光源としてのレーザダイオードの波長が変動するのに伴って、目的トラックと隣接トラックにそれぞれ照射される主光線と一対の副光線の照射位置が変動しても、レーザダイオードの駆動電流の変化に基づいて、目的信号と隣接信号との時間合わせのための遅延時間の調整を行うようにしたので、これらの時間合わせが行われた目的信号と隣接信号を演算することによって、隣接トラックからのクロストーク成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の光ピックアップ装置に備えられている光学系の構成を模式的に示す構成図である。
【図2】本実施の形態の光ピックアップ装置に備えられているクロストーク除去装置の構成を示すブロック図である。
【図3】レーザダイオードの駆動電流を検出するための回路を示す回路図である。
【図4】光ディスクのトラックに照射される主パターンと副パターンの、理想状態における位置関係を示す説明図である。
【図5】光ディスクのトラックに照射される主パターンと副パターンの、理想状態でない場合における位置関係を示す説明図である。
【図6】レーザダイオードにおける動作電流の温度依存性を示す特性図である。
【図7】レーザダイオードにおける波長の温度依存性を示す特性図である。
【符号の説明】
LD…レーザダイオード
GT…グレーティング
CL…コリメータレンズ
OL…対物レンズ
PD…フォトダイオード
Pc…主パターン
Pi,Po…副パターン
Bc…主光線(主ビーム)
Bi,Bo…副光線(副ビーム)
2,3,4…光検出器
8…遅延時間制御回路
9,10…FIFOメモリ
11…加減算器
16…駆動回路
16a,16e…抵抗
16b,16f…差動増幅器
16d…ローパスフィルタ
Claims (6)
- 記録媒体の多数のトラックに記録されている記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置であって、
光源としてのレーザダイオードと、
前記レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、
前記レーザダイオードに供給される前記駆動電流を検出する電流検出手段と、
前記記録媒体の目的トラックに照射される主光線と隣接トラックに照射される一対の副光線とを前記レーザダイオードの射出光から生成する光学手段と、
前記目的トラックと隣接トラックからの反射光を検出し、それぞれに対応する目的信号と隣接信号を生成する光検出手段と、
前記目的信号と前記隣接信号に時間遅延を施すことにより、前記目的信号と前記隣接信号の時間合わせを行う遅延手段と、
前記遅延手段により時間合わせされた前記目的信号と前記隣接信号を演算することにより、前記目的信号に含まれる隣接トラックからのクロストーク成分を除去する演算手段と、
前記電流検出手段の出力に基づいて前記遅延手段の遅延時間を調節する制御手段とを具備することを特徴とする光ピックアップ装置。 - 前記電流検出手段は、前記レーザダイオードに直列接続された抵抗に生じる電圧降下に基づいて前記駆動電流を検出することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光学手段は、グレーティングであることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記レーザダイオードの射出光の強度を検出する手段を更に備え、
前記駆動手段は前記検出した射出光の強度が一定となるように前記レーザダイオードに駆動電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。 - 光源としてのレーザダイオードと、
前記レーザダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、
前記レーザダイオードに供給される前記駆動電流を検出する電流検出手段と、
記録媒体の目的トラックに照射される主光線と隣接トラックに照射される一対の副光線とを前記レーザダイオードから生成する光学手段と、
前記目的トラックと隣接トラックからの反射光を検出し、それぞれに対応する目的信号と隣接信号を生成する光検出手段とを備え、
前記記録媒体のトラックに記録されている記録情報を光学的に読み取る光ピックアップ装置におけるクロストーク除去方法であって、
前記目的信号と前記隣接信号に時間遅延を施すことにより、前記目的信号と前記隣接信号の時間軸を合わせる遅延工程と、
前記遅延手段により時間軸が合わせられた前記目的信号と前記隣接信号を演算することにより、前記目的信号に含まれる隣接トラックからのクロストーク成分を除去する演算工程と、
前記電流検出手段の出力に基づいて前記遅延手段の遅延時間を調節する制御工程とを備えたことを特徴とするクロストーク除去方法。 - 前記光学手段はグレーティングであり、前記光ピックアップ装置は前記レーザダイオードの射出光の強度を検出する手段を更に備えており、前記駆動手段は前記検出した射出光の強度が一定となるように前記レーザダイオードに駆動電流を供給することを特徴とする請求項5に記載のクロストーク除去方法。
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