JP3666986B2 - 発芽用種子の保存方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業食品、特に貯穀類を長期間にわたって維持する貯穀類の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
世界的な食料不足が懸念されている。『地球白書1995−96』(L.R.ブラウン編,澤村 宏監訳,ダイヤモンド社)によると、世界の穀物備蓄量は1987年以降減少している。1985年に備蓄量は史上最高の水準に達しているが、その後8年間で1億6300万トン減少したという。また、1993年において、異常な冷夏のために日本で米不足が起こったが、日本政府が200万トンの緊急輸入をすると発表するや否や、米の世界市場価格が劇的に上昇した。米の世界収穫量は3億5000万トンに達するが、備蓄が低水準であるために、微妙なバランスを保っていた世界市場が混乱してしまったためであるという。
【0003】
このような状況下、日本の農業構造,取り分け水稲栽培の構造転換が迫られている。平成6年度の『農業白書』(農林統計協会)においても、平成5(1993)年の冷害をふまえ、水稲生産安定化のために、耐病性の強い品種の開発,普及に加えて、耕作方法などにおける基本技術の励行を行うとしている。さらに、国際化が進展する中で各種の施策として、低コスト化,省力化を進め、大規模経営体向けの省力的な水稲管理自動制御システム及びサイロ冷却方式の活用による米の高品質・低コストな乾燥調製貯蔵システムの実用化を図るとしている。
【0004】
以上の点から、米,穀類などのいわゆる貯穀類の備蓄のための高品質,低コストを実現するための保存システムが望まれていることは明らかである。
【0005】
米を例に取ると、常温貯蔵で起こる品質劣化を極力防止するためには、低温貯蔵がよいことは明らかである。玄米の水分含量及び保蔵温度と、遊離脂肪酸生成初速度との関係では、玄米の水分含量が望ましい含量において温度が低いほど遊離脂肪酸生成初速度は小さい。また、温度が15度を下回ると、カビ数やコクゾウの発生量が目に見えて減少する。温度15℃以下での貯蔵は、低温貯蔵といわれるが、低温貯蔵には次のような利点がある。すなわち、(1)害虫や微生物の害を防ぐ,(2)薫蒸を要しないので、薫蒸による品質劣化が防げる、(3)呼吸による損耗を少なくし、新鮮度を保つ、(4)食味がよい、(5)玄米の搗精効果がよい、(6)米の水分と重量の変化を調節できる点である。しかし、この貯蔵法が実用されているのはごく一部分に過ぎないとされている(以上、『食品学(第2版)』より、古賀克也,冨田祐一郎,福永隆生共著 三共出版)。
【0006】
加えて、食糧を安定的に確保するためには、種子の保存も重要なテーマである。種子を保存するための条件は、低温,低湿状態がよいとされている。穀類が種子であることを考えると、穀類を食糧としての保存をするための条件で保存できれば、他種類の施設は必要がなくなる。
【0007】
さて、この低温貯蔵を実現するためには、空調システムによって絶えず気温を制御する必要があるが、現行で実施されている常温保存に比べれば高コストとならざるを得ない。そこで、水中あるいは地下において天然の低温を利用して穀類を保存する低温貯蔵法も試みられているが、貯蔵物の貯蔵期間は気温により限定されてしまう。
【0008】
生物体の生命活動は、空気とともに水を欠かすことはできない。また、生鮮食品,穀類などの保存などについても、水は重要な役割をなしている。水の重要性に関する認識は古くからあったが、生物にとって水がどのような役割を果たしているかに関しては、曖昧なままであった。最近の測定技術の進歩により、細胞内の水の状態についてより具体的な知識が得られるようになった。その結果、細胞内の水は稀釈溶液とは異なる状態にあることが分かった(上平 恒,逢坂 昭。生体系の水 講談社サイエンティフィック 1989年)。本文献には、水は単一の分子として存在するのではなく、水素結合によって形成された集団として挙動していることが述べられているが、そのような集団はクラスターと呼ばれる。
【0009】
雪解け水に種子の発芽を高めたり、動植物の成長を促進したりするなどの作用があることが知られているが、この作用に関し、韓国科学院の全教授は、液体の水は5員体,6員環,5員環の3種のクラスターの混合物であり、常温近辺では5員環の水が主体であり、温度を下げてゆくと6員環の割合が多くなると考え、雪解け水は、6員環の割合が多く、この6員環の水は生体に馴染の良い、呼吸されやすい、いわゆる生理活性の高い水として、雪解け水の特異な物性を説明している(久保田 昌治 おもしろい水の話(株)日刊工業新聞社 1994年 p287〜288参照)。しかしながらこのような雪解け水も、4〜5日経過すると効果がなくなってしまうといわれ、これがどのような理由に基づくかはまだ良く分かっているわけではない。
【0010】
水が気体分子と反応して結晶化する現象が知られている。これは、気体分子が水和して、周辺の水分子の構造に影響を与え、水分子の集団に包接されたからである。麻酔薬の作用メカニズムの議論に、薬物分子が水の中に溶けて包接化合物を形成して作用するのか、あるいは細胞膜の中に溶けて膜の外の水の氷構造を発生させるのかの議論があるが、いずれにしても、麻酔は水素結合ネットワークを発生させ電荷の輸送をブロックすると考えられている(茅 幸二,西 信之 クラスター 産業図書 1994年)。
【0011】
さらにまた、年代物のブランデーやウイスキーのまろやかさや飲料水のおいしさなどについて、クラスターの大きさやその分布という観点からも論じられている。いずれも、おいしいものは、クラスターの大きさが異なるというものであり、17O−NMRにより観測されている。水のクラスターの大きさを変える方法として、天然の涌き水のようにカルシウムなどの無機イオンの共存などの他、セラミックのフィルターや中空糸膜あるいは電気分解の利用、超音波を照射する方法などが用いられている(食品と開発 Vol.24 82−85(1989))。
【0012】
ところで、空気中に存在する負に帯電した空気イオン(以下、単に負イオンという)が注目を集めている。負イオンには、自律神経系への作用をはじめとして、広く動植物の物質代謝に影響を与えていると言われている(森下 敬一 『水と生命』参照,美土里書房 1992年)。特に、人,動物への効果に関しては、精神の鎮静作用,催眠作用,疲労防止,疲労回復作用,鎮痛作用,利尿作用,気管支喘息および慢性気管支炎,風邪の軽快化作用,壮快感効果,動物飼育向上作用があることが実証されており、負イオンのこのような作用を利用するために負イオン発生装置を空調設備に利用する試みが現在盛んに行われている。さらに、負イオンには、脱臭,除塵,除菌促進効果,帯電防止効果があるとされる。負イオンが大量に拡散された空気は本来の空気の組成とは異なるが、その結果本来の空気にはなかった作用が空気に付与されたことになり、このことを空気の活性化というならばこの様な空気は活性空気といえるだろう。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記の例のように、新たなる生理活性が付与された物質、すなわち活性物質とするために、水であればそのクラスター構造を制御すること、空気であれば本来存在する空気イオンのうち負イオンを大量に供給することにより、それぞれの活性物質が提供され、使用されている。
【0014】
しかしながら、活性化された水はあくまでバルクとしての水の作用であり、この水に生理活性が付与されていたとしても、その作用を利用して植物の育成や生鮮食品を保存するときには、植物や食品を水中に浸漬、灌水、あるいは水の散布によらなければならない。殊に食品の鮮度を維持しようとするときに必ずしもその食品を水中に浸漬しあるいは灌水できるとは限らない。しかも、雪解け水に前述のような活性化作用があるとしても、その作用が長続きするわけではなく、また水の活性化処理の手法が必ずしも確立されているわけでもない。
【0015】
さらに、活性化された空気、すなわち、負イオンが大量に拡散された空気は、コロナ放電によって得ることができるが、この方法を用いる場合は、不純物として人体に有害なオゾン,窒素酸化物が混在しているので、これらを完全に除去しなければならないが、これらの不純物を完全に除去することは困難であり、除去できるとしても高価となるであろう。
【0016】
レナード効果を利用して負イオンを発生させる方法は、例えば特開平4−141179号公報(陰イオン製造方法及びその装置)に記載されている。この先行例に記載された方法は、要するに、微細水滴製造機にて水から微細水滴を発生させると同時に、この微細水滴に風速0.5〜50m/secで空気を吹き込み微細水滴混合空気とし、そのあと、この微細水滴混合空気を分離器に通して少なくとも粒径1μmより大きな微細水滴を分離して超微細水滴混合空気となし、該超微細水滴混合空気1m3中に陰イオン(負イオン)を1.25×109以上発生させるというものである。このとき発生させた負イオンには上記のような不純物は含まれていない。
【0017】
しかし、上記方法によって製造された負イオンを含む空気の生理活性に関しては、負イオンのみの作用によって得られているかどうか、生理活性として、農産食品の保存期間を延長することができるものであるかどうかについては未だ未解明のまま残されている。
【0018】
本発明の目的は、農業食品、特に穀類に接触的に作用して食品保存物の品質を長期間にわたって維持させる食品の保存方法を提供することにある。
【0019】
上記目的を達成するため、空気中で水を分裂させ微細水滴を発生させ発生した微細水滴を分離し負イオンを発生させ、発芽率が保持されるようにその発生した負イオンを含む空気中に発芽用種子を保存することにより発芽用種子の発芽率を高い率に保持するものである。
【0020】
(1)定義
本発明において「生理活性」とは、貯穀類をはじめとする農業食品の保存において、農業食品の物の生命活動を促進しおよび/または抑制することにより通常予測されるのとは異なる現象が起こることをさす。その現象は、分子レベルのミクロのものであっても、個体レベルのマクロのものであっても良い。そのような現象を起こす機能のある物質を「生理活性物質」という。例えば、この発明における生理活性とは、貯穀類の長期保存における鮮度維持のことを示す。ところで、貯穀類なども、生鮮食品などと同様に収穫後も呼吸などの生命活動を保持している。
【0021】
本発明において「活性化」とは、水など通常は特別の生理活性を有しない物質の構造および組成を変えることによって、対象に作用して種子の発芽,動植物の成長,ブランデー,ウイスキーのまろやかさなどのような本来は顕著に示されない生理活性を発現させる特性を付与することをいい、活性化された物質のことを「活性物質」と称する。ただし、本発明においては単に「構造」と記した場合には、構造式に代表される化学構造および成分組成両方を指す。
【0022】
本発明において、温度15℃以下において、相対湿度70〜90%となるような空間において、該高湿度空気に含まれる成分が保存物に対して接触的に作用してその品質の保存性を発現することを特徴とする高湿度活性空気を「真気」という。「真気」の語源は、例えば中国の古書『黄帝内経』などに見られ、現在の中医学では、人間が生きる上で根本となるものの意味で用いられる用語である。本発明にいう「真気」は、中医学で用いられる「真気」を直接意味するものではない。
【0023】
本発明において、真気を製造する装置を「真気発生機」,真気を用いた食品保存庫のことを「真気保存庫」という。
【0024】
本発明において「接触的」とは、貯穀類の表皮など外界の水分や空気と接触する部位において、真気が接することをいう。接触した真気の活性点への作用には2様式が考えられる。それを「直接作用」「間接作用」と呼ぶ。「直接作用」とは、真気が作用点に対して直接働きかけて引き起こす場合のメカニズムを指し、「間接作用」とは、真気が生物体内に存在する「受容体」に働き、活性点に対しては、真気が受容体に働きかけたことによって生成される物質やその他の信号がセカンドメッセンジャーとして働くメカニズムのことを指す。「受容体」は、実在しても非実在でも良い観念的なものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
(1)真気の製造方法
本発明にいう真気は、理想的には、水と空気に外部エネルギーを加え水を分裂させる工程によって得られるが、その際に生じると考えられる微細水滴を完全に除去することにより得られる。しかし、発生した水滴を完全に除去しなければ真気の効果が発現しないというわけではない。
【0026】
原料に用いる水は、水道水や蒸留水、さらに井戸水などの天然水などいずれも用いることができるが、表面張力,粘度,溶質,溶存酸素濃度,水素イオン濃度,酸化還元電位などの水質を変えることにより、製造される真気の構造を変えることができる。さらに、水に何らかの機能を付与したもの、いわゆる活性水を用いても良い。また、原料として用いる空気は、天然の空気や真気を用いることができるが、いずれの場合も、清浄度,酸素濃度,相対湿度等の組成に注意すべきであり、また、真気の成分と反応して新たに生理活性物質を生ずるような微量成分にも注意すべきである。逆に、以上述べた水,空気の各種組成を制御することにより真気の構造を制御することができる。
【0027】
外部エネルギーの付与は、空気に運動エネルギーを与え、運動する空気中に水を噴射させることである。高速で流動する空気中に噴射された水は分裂し、レナード効果(滝効果)又はシンプソン理論(水滴分裂説)によって空気中に負イオンを発生し、また、水の分裂によって中性成分を生ずる。中性成分は、外部エネルギーを得て構造化が進んだ状態にあり、電荷を持たず、さらに水の分子が有限個会合したクラスターといわれるものが観測される。空気中に残存する水滴は可及的にこれを除去する。この際、膨張収縮、平衡を考慮することにより、真気の構造を変えることができる。すなわち、真気製造時における風速、噴射圧、接触温度、噴射水を衝突させる板の角度、板間隔などは重要である。また、その製造装置の材質によっても真気の構造を変えることができる。混合系を含む真気は外部エネルギーが付与されて流動し、食品の生物体に接触的に作用して、その生物体に生理活性を起こさせ、あるいは、空間において除塵、脱臭などの作用を起こさせる。
【0028】
真気製造工程は、気体と液体を接触させる工程(第1工程)と、そこで製造されたものを精製する工程(第2工程)とに分けることができる。真気発生機において、これらの工程をそれぞれの独自の反応器あるいは精製装置によって行っても良いし2つの工程を1つの反応器によって同時に行っても良い。逆に、これらの工程を3つ以上の反応器によって行っても良い。また、第1工程のみを目的とした反応器と、第1工程と第2工程両方を行うことを目的とした反応器との組み合わせでも良い。
【0029】
第1工程の気液の接触は、レナード効果、およびシンプソン理論に基づいて行う。第1工程反応器への原料水の導入の動力源として、原料水の反応器への自然落下、ポンプによる送液、圧力による圧入等を上げることができる。原料水の反応器への導入口の構造としては、反応器での反応を促進するために、配管を細くするのが良い。しかし、配管が細すぎると真気の発生量が減少するので、ノズルを用いるのが好適である。
【0030】
図1に示した如く、各種用途別にスプレーパターンの異なるものが用いられる。図1はスプレーイングシステム社製のノズルパターンを示している。霧化を目的としたエアーアトマイジングには一流体微噴霧ノズル及び気体と液体とによる二流体微噴霧ノズルは対象外として、本霧化用ノズルによる「真気」発生用には用いない。
【0031】
噴射圧の重要性を前述したが、負イオンの発生量はスプレーパターンにも関連しており、ホロコーン、フルコーン、フラット、ソリッドの順序でスプレー速度効率が増加しており、また、衝撃効率も順次高くなる。従って、スプレー速度効率の高いノズルほど負イオン発生量が多くなる。
【0032】
図2に、スプレー粒子の代表粒子径(M.V.D)を示したが、これはレーザー光線を使用して測定したもので、M.V.D粒子径とはスプレーされた粒径の50%がその粒子径以下であり、他の50%はその粒子径以上であり、M.V.D粒子径と中性成分としての水の分子が有限個会合したクラスターと相関性があり、さらに生理活性とも相関性がある。即ち、M.V.D粒子径が小さい方がさわやかな環境を作り出す。ホロコーンは負イオンの発生量は少ないが、M.V.D粒子径が小さいため、最も最適に真気に満たされ空間を創造する。
【0033】
噴射された水は、反応器の中の衝突板に分裂してレナード効果を起こす。衝突板は、固定式でも、可動式でも良い。負イオンの発生量はスプレーノズルと衝突板との距離、及び衝突板の形状、材質、スプレーパターンによる衝突角度等に関連する。最適な距離はスプレーパターンによって異なるが、5cm〜30cm以内である。材質としては、比重が大きいものがよく、スプレーパターンによる衝突角度はいずれの場合も直角がよい。衝突板の装置角度は板上に水たまりができないようにすることが大切であって、水たまりの上にいくら噴射しても負イオンの発生量は極端に低下する。
【0034】
図3は直角に曲げたL型衝突板にスプレーをしている状況で、衝突板上にスプレーをしている状況で、衝突板上に水たまりが見られない。さらに、衝突面上に溝を作り水切れもよくすると負イオン発生量はさらに増大する。
【0035】
第1工程は、レナード効果,シンプソン理論を起こさせるための処理であり、反応器内に空気が導入され、その空気中で水を分裂させる。空気の導入の動力源は、ファンを使用したり、反応器を減圧にさせたり、逆に高圧空気を使用することにより導入することができる。反応器内に空気を導入する場合、地球の自転によるコリオリ力はPは、
P=2mvω
m;質量
v;速度
ω;回転の角速度
が働くように導入するとともに遠心力Fは、
F=mrω2;
r;半径
が十分に働くように空気を旋回流として導入する。その際、反応器への入り口流速が10〜12m/sの場合は、出口流速を8〜10m/sと入り口流速に対して出口流速が少し小さい方が好ましい。
【0036】
第2工程は、製造した“粗真気”をさらに精製するための処理である。第2工程においては、主として水滴の除去などの分離と、さらに除去される水滴を原料として第1工程で行った反応を推進する反応(後反応)に分けることができる。第2工程で処理中の空気に平衡,圧縮,膨張機能を加味すると、水滴の除去などの分離とともに、第1工程での反応が推進される。
【0037】
第1工程から第2工程への移送は、静圧(mmH2O)が発生しないように結合すると良い。例えば、第2工程にサイクロンセパレータを使用する場合は、コリオリ力が働くように導入するとともに、サイクロンセパレータの入口形状は、渦巻式として連結すると水滴の分離工程が良くなると同時に静圧も抑えられる。
【0038】
真気は、例えば図4に示す真気発生機を用いて発生させる。図4に示す真気発生機の仕様は以下のとおりである。
【0039】
1.反応器 寸法 ;200φ×400H(mm)
容積 ;12リットル(l)容
材質 ;ガラス
形状 ;セパラブルフラスコ
空気取入口及び吹出口
;接線型
;40×100(mm)
2.スリーワンモータ
形式 ;BL1200Z
回転数;最大1200rpm
3.撹拌羽根
形式 ;平板4板型
傾斜角度;45℃,20℃,10℃,3種類
4.ノズル
形式 ;ホロコーン(スプレーイングシステム社製)
サイズ;0.5
個数 ;4個
5.水槽
寸法 ;200φ×400H(mm)
形式 ;オーバーフロー型
室 ;塩ビ製
6.ポンプ
形式;渦巻型ポンプ
13リットル(l)/min×23.5m×0.4kw
7.送風機
形式;ターボファン
4m9/min×55mmAq×0.2kw
8.サイクロンセパレータ
寸法
外径(D1);180φ(mm)
内径(D2);130φ(mm)
円筒部高さ(H1) ;200H(mm)
コーン部高さ(H2);200H(mm)
空気取入口;渦巻型
60×140(mm)
材質;ガラス
図4において、12リットル(l)容のセパラブルフラスコ1を反応器に用い、これにスリーワンモータ2とホロコーンノズル4の4個を取り付けた。スリーワンモータ2の軸には撹拌羽根3として水平方向に10度の角度を持つ平板の平板羽根を取付け、セパラブルフラスコ1の下部に空気取入口9及び上部に吹出口10を空気の流れが接線型になるように取り付けた。
【0040】
セパラブルフラスコ1の底部には、水溜りしないようコックの開閉を調整できるようにして水槽5に接続した。
【0041】
ホロコーン型ノズル4の4個へポンプ6より、1.5kg/cm2の圧力で水槽5の水を送り、セパラブルフラスコ1内に水を噴射しながらスリーワンモータ2を500rpmで回転させ、空気取入口9の気流流速を10m/secに設定して送風機7より空気を吹き込み、サイクロンセパレータ8の出口より真気を得た。得られた真気は、相対湿度80%RH、負イオン濃度は25,000個/mlであった。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0043】
(参考例1)
イオンの測定
図4に示す真気発生機と、比較のため電気式コロナ放電型イオン発生器を用いた。評価には、アクリル製の箱(縦1m,横1m,高さ1m)を用いた。
【0044】
真気発生機は、測定ボックスの壁面から5cmのところに置いた。イオン測定器を真気発生機から10cmの所(場所A)と、同じ高さで50cm離れた所(場所B)において同時に測定した。真気発生機の運転開始後、ただちにイオンの発生が認められ、一定の値が保持された。稼動10分後負イオンを測定したところ表1のような結果を得た。
【0045】
【表1】
【0046】
一方、電気式コロナ放電型イオン発生器を測定ボックスの中に入れ、該イオン発生器の近傍の10cmの所(場所A)と、やや上方80cmの所(場所B)とに設置し、同時に測定した。測定開始後、場所Aにおいてはただちに、場所Bにおいてはややおくれて、イオンの濃度が急激に上昇することが観測されたが、その後徐々に下がりはじめた。表4には稼動10分後のイオンの測定結果をあわせて示す。
【0047】
(参考例2)
真気発生機として、水を固定羽根(衝突板)に吹付けてこれを分裂させる形式のものを用い、また、気液の分離は、膨張,収縮,平衡を繰返させることにより空気中より水滴を除去することに行った。一定時間運転後、真気発生機のスイッチを切り、一定時間毎にイオン濃度を測定した。イオンの測定場所は、実施例2の場所である。イオン濃度はスイッチを切った後8分間記録した。その結果を、図5(場所A,Bにおける負イオン濃度の減少)に示す。負イオンは、時間に対して対数−対数グラフ上において直線的に減少した。
【0048】
(参考例3)
参考例1と同型の真気発生機を用い、3坪の部屋(内容積21.4m3、室内表面積47.2m3)の部屋を真気で満たして真気ルームとした。ただし、タンクの水温を11.5℃とし、真気発生機と部屋とを結ぶライン上に設けられた加熱器の温度を23.0℃とし、真気ルーム内の温度を24℃,湿度60%とした。真気ルーム内の温湿度が一定となったところで、真気発生機を完全に停止させ、15分間イオン濃度を測定した。その結果を図6(アクリル板の容器、真気ルームおよび計算値)に示す。負イオンは、時間に対して対数−対数グラフ上において直線的に減少した。
【0049】
(参考例4)
真気の構造
イオンの減少に関する実験を数値的にシミュレーションした。計算結果を図6(アクリル板の容器,真気ルームおよび計算値)に示す。計算値においても、時間に対して対数−対数グラフ上において直線的に減少した。
【0050】
以下に、シミュレーションの趣旨ついて説明する。真気中に含まれている負イオンの構造は、A-Wn(A:O2,OH,N2等,Wn:(H2O)n,n=1,2,3)と表すことができる。真気の製造において、Aやnが選択して合成されるものではないので、様々な分子あるいはクラスターの混合物であり、各々の分子あるいはクラスターには、それぞれ固有の安定性があると考えられる。真気は半減期を横軸にしたときにも量的分布を示すことになるが、これを半減期分布と定義する。すなわち、真気は分子量分布、組成分布および半減期分布を持つ。負イオンの消滅は、負イオン1分子が電子受容体に電子を与えて中性分子となる機構を考えることができるので、ある構造の負イオンのみに着目した場合、その減少は一次反応式(3)
Cit=Ciexp(−kit) ……(3)
Cit;時刻tにおける成分Aiの濃度
Ci;成分Aiの初濃度
ki;成分Aiの反応速度定数
t;時刻
に従うと考えられる。実施例2,3において観測されたイオンの減少は、様々な構造を持つ負イオンが固有の半減期によって消滅しているものの総和である。したがって、観測されるイオンの減少、すなわち、イオン濃度の変化は、式(1)
【0051】
【式1】
【0052】
C;観測開始後時刻tにおける空気イオン濃度
Ci;成分Aiの観測開始時の濃度
ki;成分Aiの反応速度定数
t;時刻
に従う。
【0053】
そして、この検討からイオンの減少を測定し、これを対数−対数グラフ上に図示したときの傾きは半減期分布の違いによるものであることが分かった。実施例3において、場所A,Bにおけるイオンの減少の傾向が同一であるのは、両場所において、半減期分布が一致しているからである(図5参照)。さらに実施例3において、アクリル板内でも真気ルーム内でも同一の傾きであることが示されている。このことは、イオンの混合物が空間内に均一に分布していることも示すものである。表2にシミュレーションに用いた各種のパラメーターを示す。
【0054】
【表2】
【0055】
イオン成分A1〜A11の各々の濃度変化の様子を図7(ある構造のイオンの濃度変化)に示した。また、5,60,120,300,600,900秒後の各種イオンの半減期分布を図8(時間経過による分布の変化)に示す。
【0056】
次に、半減期30秒以下,100秒以下,140秒以下,240秒以下の負イオンが観測される場合を図9(半減期分布の違いと観測されるイオンの減少)に示す。この場合は、半減期の長いものが加わるにつれて、観測されるイオンの変化が異なることがわかる。逆に、観測されるイオンの変化(S字型の減少,L字型の減少)などから、半減期分布を予想することができる。
【0057】
(参考例5)
真気の水のクラスターの構造
真気の中性成分の分析は、質量分析法によって行った。質量分析計は四重極質量分析計を用い、コロナ放電によって得られる活性アルゴンガスにより大気圧下でイオン化をすることによって測定した(M.Tsuhiya,el al.,International Journal of Mass Spectrometry and Ion Processes,90,55−70(1987).)。サンプリングは、イオン源の周囲を湿度80%以上の真気で満たして行った。サンプルのイオン化は、高電圧の針の近傍において、中性成分が活性アルゴンガスと反応し電子が針に捕捉されることにより正イオンが生じることにより行われる。通常この反応の場はガラス管によって囲われている。
【0058】
真気はガラス管の外部から供給されるので、ガラス管の径や形状によって、同一のサンプルであっても観測されるスペクトルは異なる。真気を観測する場合、管径が細いほど針先でのサンプルの凝縮は起こりにくくなり、実際よりも小さなクラスターが観測される場合がある。本実施例においては、管の内径が3cm,長さが6cmのものを用いた。同一のサンプルでも、管の内径が2.5cm,長さが5.5cmとなっただけで観測される分布が異なる(通常、分布が高質量数側にシフトする)。
【0059】
図10(真気中の水クラスターの分布に対する針温度の影響)に、針温度を変化させたときの真気中の分布の変化や、水クラスターの構成分子数の変化を示した。このときの真気の湿度はイオン源のガラス管内において99%であった。平均構成分子数Nは、式(2)
【0060】
【式2】
【0061】
Ii;i番目の質量数の強度
ni;i番目の水クラスターの構成分子数
で計算した。針温度を上げることによって、分子量の分布が高質量数から低質量数に移ってきていることが明らかである。さらに、針近傍での凝縮はあまり起こっていないことが示されている。この検討から、真気の典型的なチャートを図11に示した。針温度の変化による分布の変化は、ガラス管への導入方向によっても変わるが、本実施例の結果は、ガラス管の下方より真気を導入して計算したものである。
【0062】
次に、真気のクラスターと天然に存在する空気中に含まれる水のクラスターを比較した。真気は、高湿度であるため、低湿度の場合は室内の空気を使用すれば測定可能であるが、高湿度となると人工的に製造する必要がある。天然の空気中の水分は、水を加熱すれば得ることができるので、次のように測定を行った。
【0063】
高湿度空気の水源は、300mlの三つ口フラスコに水を入れ、それを加熱することによって得た。加熱は水浴を用いて行い、アルゴンガスを流通させ、液面近傍のクラスターをガラス管とプラスチックチューブを用いてサンプリングしてイオン源の中に導入した。湿度は、イオン源の中の湿度を測定したが、アルゴン流量を変化させることによってイオン源内の湿度は変化させることができた。
【0064】
この時に針先での凝縮が懸念されたので、針温度の影響を調べた結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に明らかなとおり、水源の温度が46℃のとき、やや凝縮が起こっていることが分かる。なお、53℃の時は、46℃のときよりも大きなクラスターが得られているが、凝縮の影響はなかった。また、水源の温度が高いほど大きなクラスターが得られた。この結果は、水を加熱して得た水のクラスターは、天然の高湿度空気中の水のクラスターと同様の傾向を示すものと思われるが、実験装置の構造(ガラス管の大きさ,形状や、装置全体の大きさ,形状)に大きく依存していることを示している。水を加熱した場合の、比較的高湿度の場合の水のマススペクトルを図12に示した。
【0067】
また、相対湿度と水のクラスターの平均構成分子数との関係を表4に示した。
【0068】
【表4】
【0069】
天然の空気中においては、湿度が高くなるにつれて水のクラスターの大きさは大きくなるが、真気の場合は、高湿度の場合においても凝縮の影響が少なく、表3に明らかなとおり、比較的小さなクラスターが観測された。
【0070】
(実施例1)
真気発生機を、冷蔵庫,倉庫などの保存庫に接続し、適当な循環回数で真気を送り込むことにより保存空間を作成した。
保存空間の相対湿度は、所定量の乾燥空気によって希釈してもよく、また、製造された真気を熱することにより相対湿度を下げる方法でも良い。乾燥空気として用いられる空気は、十分に湿度の低い外気を用いても良い。
【0071】
保存空間の清浄度を保つ場合等、必要に応じて保存空間に清浄な外気を導入しても良い。また、原料水に水道水や比較的塩分の高い水を用いる場合は、少量の水を常時導入して水タンクの中を清浄に保つのがよい。
【0072】
真気保存庫Aを作製した。保存庫11には内容積が、500lのステンレス製の箱を用い、真気発生機12は図13のように接続して、真気保存庫Aとした。これを、循環回数60回/時間で真気発生機を運転し、箱に真気を送り込んだ。ただし、予定外の外気の侵入を防止するために庫内に計算量の外気を導入した。外気の導入には、濾過用のHEPAフィルター13を通してエアレーションユニットMAU−1C(東京理化器械)を用い、導入量は1分間当たり内容積の0.1%とした。また、真気発生機12の水タンク5は、抗菌活性炭フィルターアビオAシリーズ(クリタック)を通過させた水道水を1分間当たり20mlの水をオーバーフローさせた。
【0073】
比較のため恒温恒湿庫PR−3ST(タバイエスペック)を庫内温度10から15℃,相対湿度70〜80%で長期連続運転が可能な仕様として入手した。なお、真気保存庫と同様な方法により庫内に計算量の外気を導入した。
【0074】
また、比較のため、貯穀類をポリエチレン袋に入れ、それをポリプロピレン製の入れ物に入れて室内に放置した。
【0075】
以上の真気保存庫と、恒温恒湿庫,室内放置(ポリエチレン内)にて貯穀類保存実験を行った。
【0076】
実験は、大豆,小麦,玄米,精白米を、それぞれ真気保存庫および恒温恒湿庫内において庫内温度13℃,湿度75%RHで長期保存を実施した。また、ポリエチレン袋内に入れたまま室内に放置したものと比較して保存性を評価した。
【0077】
保存性は、次の点により知ることができる。水分や黴数のほか、チアミン,総トコフェロール,直接還元糖,抽出油の酸価,脂肪酸度,過酸化物価などの化学的測定が試みられ、さらに、大豆については物性試験を、大豆と玄米について発芽試験を、精白米に関しては食味試験を実施し、保存性の評価を行った。各種データは次の方法により求められた。
【0078】
水分:検体をコーヒーミルにより粉砕後、所定量を秤量し、強制循環式温風乾燥機により乾燥(小麦,玄米,精白米は135℃ 3時間,大豆は130度 2時間)し、シリカゲルデシケーターにて放冷した。乾燥により減少した量を水分量として初期重量で除し、水分(%)を求めた。
【0079】
黴数:検体10gを無菌的に秤量し、90mlの滅菌したリン酸緩衝生理食塩液を加え十分に混合した。調製した試料液及びその段階希釈液を各1mlずつをそれぞれ2枚のシャーレに分注した。クロラムフェニコール加ポテトデキストロース(グルコース10%)寒天培地約15mlを加えて混釈し、凝固させ、25℃で7日間培養した。培養後、生育した黴集落数を計測し、集落数に希釈倍数を乗
じたものを検体1g当たりの黴数とした。
【0080】
チアミン:氏家らの方法により(ビタミン Vol.64,379(1990),)行った。試料を酸性条件下タカジアスターゼにより酸素分解し、脱着後、高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
【0081】
総トコフェノール:0.5gの試料を60mlの遠心管に秤量し、0.5mlの1(w/v)%塩化ナトリウム用役,10mlの3(w/v)%ピロガロール/エタノール試液、および1mlの60(w/v)%水酸化カリウム試液を加え、水浴中、70℃で30分間,けん化を行った。反応終了後、22.5mlの1(w/v)%塩化ナトリウム試液を加え、15mlのヘキサン/酢酸エチル(9/1)で3回抽出した。溶媒残去後、残渣をヘキサンに溶解し、高速液体クロマトグラフィにより定量した。
【0082】
直接還元糖:ソモギ法の変法により行った。試料を中性条件下超音波により抽出し、酢酸鉛で除蛋白した後、1000mlに定溶した。濾過後、炭酸ナトリウムにより脱鉛し、濾過をして試験溶液とした。A液は、90gの酒石酸カリウムナトリウム(ロッシュル塩)と225gのリン酸三ナトリウムを700mlの水に溶解し、これを30gの硫酸銅を水に溶解した液及び3.5gのヨウ素酸カリウムを少量の水に溶解した液を順次加え、水を加えて全量1000mlとした。B液は、90gのシュウ酸カリウムおよび40gのヨウ化カリウムを水に溶解して1000mlとしたものを用いた。100mlの共栓三角フラスコに10mlのA液と試験溶液(5〜25mgの還元糖を含む量に相当する量)を入れ、水を入れて全量30mlとした。沸騰石を数個入れて加熱し、3分間沸騰した。その後、氷冷し10mlのB液と、10mlの2N硫酸を加え、室温で2分間放置した。指示薬を、1%可溶性デンプン試液とし、終点が青色になるまで、0.05Nのチオ硫酸ナトリウム試液により滴定した。空試験を実施した。
【0083】
抽出油の酸価,過酸化物価:試料をビーカーに採取し、クロロホルム/メタノール(2/1)を適量加え、1分間ホモジナイズした。上澄みを分液ロートに移し下層を分離し、下層を硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒留去をした。残渣を窒素ガスを利用して溶媒を完全に除去し、抽出油とした。酸価および過酸化物価は、常法を用いて分析した。
【0084】
脂肪酸度:20.0gの試料を精密に量り取り、三角フラスコに入れ、ベンゼン50mlを加え、共栓をして1分間振とうした。室温で1時間振とうし、50mlのメスシリンダーを受器として濾過し、フェノールフタレインアルコール試液を指示薬として0.05N水酸化ナトリウム試液で滴定した。空試験を実施した。
【0085】
バーオキシダーゼ力価:試料を粉砕し、5gを正確に量り取り、50mlの水を加え冷却しながら60分間穏やかに撹拌して抽出した。これを、3000rpmで10分間遠心分離し、濾紙で濾過して試験液とした。分光光度計のセルに1.4mlのアミノアンチピリン/フェノール試液と1.5mlの過酸化水素試液を入れ、さらに、試験液0.1mlを加えた。25℃,510nmにおける吸光度の増加を記録した。
【0086】
大豆の物性試験方法:試料大豆50gを精製水250gに15℃,24時間浸漬した。浸漬液と濾別し、大豆は重量を測定し、浸漬による重量増加率%(100×浸漬後の重量増加分(g)/無水物重量(g))を求めた。その後、蒸し器中で30分間蒸煮し、蒸煮後重量測定し、蒸煮大豆の重量増加率%(100×浸漬,蒸煮による重量増加分(g)/無水物重量(g))を求めた。この大豆はラップをして20時間保存したのち、クリープメーターによる破断試験に用いた。一方、浸漬液は、250mlに定溶した後アルミ製秤量瓶に浸漬液25mlを採取し、常圧乾燥(105℃,2時間)後、残留物の重量を測定し、溶出固形分(%)(100×残留物の重量(g)/無水物重量(g))を求めた。
【0087】
クリープメーターによる物性試験は以下のように行った。クリープメーターは、REONER RE−305(山電)を用いて行い、データを解析したソフトは破断強度解析(Ver.2.0,山電)を用いた。クリープメーターの設定条件は、設定速度0.5mm/s,設定歪率90%,プランジャーは円形(直径5mm)を用いた。
【0088】
発芽試験方法:発芽用種子100粒を精製水中で15℃,23.5時間吸水させた。その後、次亜塩素酸ナトリウム例えば(キッチンハイター(商品名))ならば1ml)を用い、さらに30分間処理した。大豆は直径150mmのシャーレ,玄米は直径90mmのシャーレを用いた。シャーレは培地として脱脂綿をなるべく嵩が低くなるようにして敷き詰め、上に濾紙を敷き、濾紙がつかる程度に水を入れ、種子を1つのシャーレあたり50粒で重ならないように並べた。20℃の培養器において、玄米は14日間,大豆は7日間観察し、各種子から、芽および根が1mm以上出ている状態を発芽している状態として、発芽数を求めた。食味試験は以下の試験例中において詳述する。
【0089】
(試験例1)
大豆800gを、真気保存庫,恒温恒湿庫およびポリエチレン袋内で6カ月間保存した。6カ月後、保存した大豆を取り出し、生化学的試験,物性試験,発芽試験を行い、結果をそれぞれ表5,6,7に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
その結果、真気中で保存したものは発芽率が良く、浸漬による溶出固形分が少ないことが分かった。他の点は、対照保存庫と、室温と同等であった。
【0094】
(試験例2)
玄米800gを、真気保存庫,恒温恒湿庫およびポリエチレン袋内で6カ月間保存した。6カ月後、保存した玄米を取り出し、生化学的試験,発芽試験を行った。それぞれ結果を表8,9に示した。
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
(参考試験例1)
精白米(平成6年度産コシヒカリ)を、真気保存庫,恒温恒湿庫およびポリエチレン袋内で6カ月間保存した、生化学的試験を行った。その結果を表10に示す。
【0098】
【表10】
【0099】
また、7カ月間保存したものについて官能検査を実施した。官能検査は、(財)日本穀物検定協会中央研究所で開発された食糧庁方式や農林省食品総合研究所等の方法を参考に実施した(パネル30人,女性)。3保存方法間における比較をアンケートによって行った。
【0100】
アンケートによって得られた項目別評点平均の検体(1検定)を行い、その結果を表11に示す。
【0101】
上記試験の実施直後に、新米(平成7年度酸コシヒカリ)を追加し、直感的な方法で4試料を好きな順に順位付けるアンケートを実施した。その結果を表12に示す。
【0102】
さらに、この結果を順位法の検定表を用いる方法により統計処理を行ったところ、おいしい精白米の順位としては、新米,恒温恒湿庫,室内保存,真気保存庫の順であり、隣接順位間および恒温恒湿庫と真気保存庫との間には有為さが認められなかった。なお、パネラーの好みは、ケンドールの一致性の係数Wを用いる方法により、危険率5%で好みが一致している、ということが確認されている。新米(平成7年度産コシヒカリ)を追加直感的な方法で4試料を好きな順に順位付けをした。
【0103】
【表11】
【0104】
【表12】
【0105】
この結果は、いずれの保存米も、新米以上においしいものは見出されなかったが、真気保存した精白米の評価には注目すべき点がある。すなわち、好きな順に並べる評価において、最も好きな順位として挙げた人と最も嫌いな順位として挙げた人が両極端に分かれたことである。以上の実施例で述べたように、どの保存方法で保存したものも生化学的検査において特別な挙動をしていることとは考えられない。真気で保存した精白米が両方の嗜好に分かれて評価されている理由は、常識的な生化学的な検査では説明しきれないメカニズムが作用している可能性も示唆される。
【0106】
【発明の効果】
本発明における結果から、真気が温度13℃において相対湿度75%の真気空間において、大豆,玄米の発芽率が高い率に保持されていた。発芽はまず吸水が起こり、それにより各種スイッチが入れられ、発芽が開始すると言われている。真気中で保存したものの発芽率が高い理由は、
(1)吸水システムに対して保存期間を通じて働きかけ、吸水が効率的に行われた。
(2)保存期間中を通して真気が大豆、あるいは玄米に対して働きかけ、生存のための必要最小限の生化学反応のバラスンをはかり、発芽に際しても効率的に反応することができた。
ということが考えられる。
【0107】
さらに、大豆,玄米,小麦,精白米において、生化学的分析値が、対照保存庫のものと比較してほぼ同等であり、また、室内放置のものと比較して全般に良好と考えられる値を示している。ところで、対照保存庫は温湿度管理に関して現在考えられる最高水準の保存庫である。そこで、これらの貯穀類の保存は温湿度管理がポイントである点を考えれば、真気を利用した保存方法が対照保存庫と遜色ない結果であり、したがって、現在考えられる最高水準の保存を行ったことになる。さらに、大豆,玄米において、発芽率が良好であったが、発芽率に影響を与える項目(良好な呼吸のバランスによるATPの節約,各種酸素の良好な保全)について生化学的分析を実施していれば、さらに良好な結果が得られていたと思われる。
【0108】
空気中で水を分裂させ微細水滴を発生させ発生した微細水滴を分離し負イオンを発生させ、その発生した負イオンを含む空気中に発芽用種子を保存することで、発芽用種子の発芽率を高い率に保持されることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 真気発生機の水スプレーに用いるスプレーパターンとその応用例を示す図
【図2】 スプレーパターンと噴射圧とスプレー粒子径を示す図
【図3】 衝突板上に水スプレーをしたときの水の分散状況を示す図
【図4】 本発明の生理活性空気を発生させる真気発生機の一例を示す図
【図5】 参考例3の場所A,Bにおける負イオン濃度変化を示す図
【図6】 参考例4のイオン濃度の変化及び実施例4〜6の実験およびシミュレーションの結果を示す図
【図7】 参考例5におけるイオン成分A1〜A11の各々の濃度変化のシミュレーション結果を示す図
【図8】 参考例5における5,60,120,300,600,900秒後の半減期分布の変化のシミュレーション結果を示す図
【図9】 参考例5における半減期イオン群のうち、一部のイオンが存在するときに観測されるイオン濃度の変化を示す図
【図10】 針温度を変化させたときの真気中の水クラスター分布の変化を示す図
【図11】 相対湿度100%,針温度72℃における真気のマススペクトラムを示す図
【図12】 水を加熱して得られる高湿度空気のマススペクトルを示す図
【図13】 本発明の実施例1の真気保存庫の概略図
【符号の説明】
1 反応器(セパラブルフラスコ)
2 スリーワンモータ
3 撹拌羽根
4 ノズル
5 水槽
6 ポンプ
7 送風機
8 サイクロンセパレータ
9 空気取入口
10 吹出口
Claims (1)
- 空気中で水を分裂させ微細水滴を発生させ発生した微細水滴を分離し負イオンを発生させ、発芽率が保持されるようにその発生した負イオンを含む空気中に発芽用種子を保存することを特長とした発芽用種子の保存方法。
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