JP3666857B2 - 酸化型染毛剤用第1剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化型染毛剤用第1剤に関し、さらに詳しくは、毛髪への染着力が高く、かつ染毛処理に伴う毛髪のダメージ(損傷)が少ない酸化型染毛剤用第1剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
染毛剤としては、酸化染料(酸化染料中間体)を含有する第1剤と過酸化水素を酸化剤として含有する第2剤とからなる酸化型染毛剤が広く使用されている。この酸化型染毛剤による染毛処理は、まず、上記第1剤と第2剤を混合し、その混合物を毛髪に塗布して、低分子の酸化染料を毛髪中に浸透させ、過酸化水素が分解して発生する酸素により毛髪中で酸化染料の酸化重合を行わせて色素を生成させることにより、毛髪を染毛するものである。
【0003】
そして、上記の過酸化水素の分解は、アルカリと毛髪中のシスチンの存在下で生じるが、カラー(染毛処理)やパーマ(パーマネントウエーブ処理)を繰り返している現代人の毛髪では、毛髪中のシスチン量が減少しているため、染毛処理時に過酸化水素の分解が生じにくく、特にダメージが進んでシスチン量が少なくなっている毛髪を染毛する場合は、過酸化水素の分解による酸素の発生が少ないため、酸化染料の重合が完結せず、そのため、ねらい通りの色味を出すことが困難であるという問題があった。例えば、赤茶色に染毛しようとしても、過酸化水素からの酸素の発生が少ない場合、酸化染料の重合が完結しないため、赤茶色になる前の青茶色でしか染毛できないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような酸化型染毛剤により染毛処理する場合の問題点を解決し、ねらい通りの色味を出すことができ、毛髪への染着力が高く、かつ染毛処理に伴う毛髪のダメージが少ない酸化型染毛剤用第1剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸化染料を0.5〜3重量%含有させ、N,N′−ジアセチルシスチンを1〜10重量%含有させ、かつアルカリ剤を0.5〜15重量%含有させ、pHを7〜11に調整して酸化型染毛剤用第1剤を調製することにより、上記課題を解決したものである。
【0006】
すなわち、酸化型染毛剤用第1剤中に含有させたN,N′−ジアセチルシスチンが過酸化水素の分解を促進して酸素の発生量を増加させるので、たとえダメージが進んでいてシスチン量が少なくなっている毛髪を染毛する場合でも、酸化染料の重合が促進され、ねらい通りの色味を出すことができて毛髪への染着力を高めることができる。また、染毛処理時に毛髪中からのシスチンの消費が抑制されるので、染毛処理に伴う毛髪のダメージも少なくなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の酸化型染毛剤用第1剤は、水または水を主剤とする水性液に、少なくとも、酸化染料、N,N′−ジアセチルシスチンおよびアルカリ剤をそれぞれ特定量含有させ、かつpHを特定の領域に調整することによって調製されるが、それらのうち、まず、N,N′−ジアセチルシスチンの含有量について詳細に説明する。
【0008】
本発明において、N,N′−ジアセチルシスチンの含有量は、1〜10重量%であることを要するが、これは次の理由によるものである。すなわち、N,N′−ジアセチルシスチンの含有量が1重量%より少ない場合は、過酸化水素の分解を充分に促進することができなくなり、そのため、酸化染料の重合を完結させることができなくなって、ねらい通りの色味が出せず、毛髪への染着力を充分に向上させることができなくなったり、染毛処理に伴う毛髪のダメージを減少させることができなくなり、また、N,N′−ジアセチルシスチンの含有量が10重量%より多くなっても、効果の増加がほとんどなく、高価なN,N′−ジアセチルシスチンの無駄が生じることになる。
【0009】
本発明において、酸化染料(酸化染料中間体)としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミンなどのトルエンジアミン類、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノールなどのアミノフェノール類、オルトアミノ−メタニトロフェノールなどのアミノニトロフェノール類、硫酸4,4−ジアミノジフェニルアミンなどのジフェニルアミン類、2,6−ジアミノピリジンなどのジアミノピリジン類などやそれらの塩の1種または2種以上用いることができる。この酸化染料の酸化型染毛剤用第1剤中における含有量は、0.5〜3重量%であることが必要であるが、これは次の理由によるものである。すなわち、酸化染料の含有量が上記より少ない場合は、毛髪を充分に染色することができなくなり、また酸化染料の含有量が上記より多い場合には、過剰の酸化染料が毛髪表面に多く付着して、日常生活で色落ちが多くなったり、衣服などを汚染させることになる。
【0010】
また、本発明の酸化型染毛剤用第1剤には、必要に応じてカップラーを含有させることができる。そのカップラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、メタアミノフェノール、レゾルシン、ピロガロール、カテコールなどが用いられる。
【0011】
また、本発明の酸化型染毛剤用第1剤には、そのpHを7〜11に調整するためにアルカリ剤を含有させるが、そのアルカリ剤としては、特に限定されることはないものの、例えば、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが用いられる。このアルカリ剤の酸化型染毛剤用第1剤中における含有量は、0.5〜15重量%にされる。アルカリ剤の含有量が上記より少ない場合は、過酸化水素から酸素を充分に発生させることができなくなって、毛髪を充分に染色することができなくなり、またアルカリ剤の含有量が上記より多い場合は、皮膚に対する刺激が強くなる。
【0012】
本発明の酸化型染毛剤用第1剤は、水または水を主剤とする水性液中に上記成分を溶解または分散させることによって調製されるが、その際、上記成分以外に、必要に応じて、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの各種界面活性剤、グリセリン、プロピレングリコールなどの保湿剤、セタノールなどの高級アルコール、ラノリン、スクワラン、流動パラフィンなどの油性成分、亜硫酸塩、アスコルビン酸などの安定剤、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの増粘剤などを適宜含有させることができる。そして、この第1剤は前記のようにpH7〜11に調整される。
【0013】
本発明の酸化型染毛剤用第1剤と組み合わせて使用する第2剤には、過酸化水素を酸化剤として含有させる。この過酸化水素の第2剤中における含有量としては、特に限定されることはないが、0.1〜15重量%、特に1〜6重量%が好ましい。過酸化水素の含有量が上記範囲より少ない場合は、毛髪を充分に染色することができなくなるおそれがあり、また過酸化水素の含有量が上記範囲より多い場合は、皮膚に対する刺激が強くなるおそれがある。
【0014】
第2剤も、水または水を主剤とする水性液中に上記成分を溶解または分散させることによって調製されるが、その際、上記成分以外にも、フェナセチン、スズ(錫)酸ナトリウム、EDTAなどの安定剤、パラフィンなどの油脂類、高級アルコール、界面活性剤、酸、pH調整剤、香料などを必要に応じて適宜含有させることができる。そして、この第2剤は通常pH2〜4に調整される。
【0015】
本発明の酸化型染毛剤用第1剤の剤型としては、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、エアゾールフォームなどの種々のタイプを採用できる。また、この第1剤と組み合わせて使用する第2剤も、上記のような種々の剤型をとり得ることができ、通常、第1剤と第2剤とは同じ剤型に調製しておくことが好ましい。
【0016】
そして、本発明の酸化型染毛剤第1剤を使用するにあたっては、染毛処理の直前に第1剤と第2剤と混合し、その混合物を毛髪に塗布し、過酸化水素により酸化染料または酸化染料とカップラーを発色させ、その状態でしばらく放置し、その後、すすぎを行い、乾燥すればよい。
【0017】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0018】
実施例1および比較例1
表1に示す組成で実施例1および比較例1の酸化型染毛剤用第1剤を調製した。この酸化型染毛剤用第1剤のpHは約10である。なお、表中の各成分の配合量を示す単位は重量部であり、これは以後の組成を示す表においても同様である。
【0019】
【表1】
【0020】
上記のようにして調製した実施例1の酸化型染毛剤用第1剤および比較例1の酸化型染毛剤用第1剤について、以下に示すように染着力および感触の比較試験を行った。まず、毛髪に対する染着力の比較試験から説明するが、その染毛処理にあたって、上記第1剤と組み合わせて使用する第2剤は、実施例1の第1剤、比較例1の第1剤に対しても共通で、次の表2に示す組成のものであり、そのpHは約3である。
【0021】
【表2】
【0022】
染着力:
実施例1の酸化型染毛剤用第1剤および比較例1の酸化型染毛剤用第1剤のそれぞれ5gと、そのそれぞれに対して上記第2剤をそれぞれ5gずつカップに入れ、ハケで混合後、それらの混合物を重さ1gの100%白髪毛束にそれぞれ別々に塗布し、30℃で30分間放置して染毛した後、水洗し、さらに市販のシャンプーを用いて2回洗浄し、さらに市販のヘアトリートメントを塗布し、すすぎ後、乾燥した。
【0023】
上記染毛処理後の毛束のL値(明度値)を色差計(ミノルタ社製彩色差計CR−200)で測定した。その結果を表3に示す。この色差測定では、L値が小さいほど濃く染まっていることを示す。
【0024】
【表3】
【0025】
表3に示すように、実施例1は、比較例1に比べて、L値が小さく、N,N’−ジアセチルシスチンを含有させた実施例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いた方が、N,N’−ジアセチルシスチンを含有させていない比較例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いた場合より、染着力が優れていることが明らかであった。
【0026】
つぎに、感触の評価を毛束とモニターの頭髪での染毛処理により評価する。
【0027】
毛束での感触評価:
まず、次の(1)〜(6)に示す工程により毛束に染毛処理を行った。
(1)実施例1の酸化型染毛剤用第1剤および比較例1の酸化型染毛剤用第1剤のそれぞれ15gと、そのそれぞれに対して前記第2剤をそれぞれ15gずつカップに入れ、ハケで混合し、それらの混合物を重さ20gの人毛黒髪毛束にそれぞれ別々に塗布する。
(2)30℃で30分間放置する。
(3)その後、水洗する。
(4)市販のシャンプーで2回洗浄後、すすぐ。
(5)市販のトリートメントを塗布し、すすぐ。
(6)ドライヤーで乾燥する。
【0028】
感触の評価は、5人のパネラーにより上記染毛処理の(6)の工程終了後の毛束を手で触り、その感触によって評価した。その結果、5人のパネラー全員が実施例1の酸化染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した毛束の方が、比較例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した毛束より、「指通り性が良い」と評価した。
【0029】
モニターの頭髪での感触評価:
まず、次の(1)〜(6)に示す工程により頭髪に染毛処理を行った。
(1)モニターの頭髪を中央で半分に分け、その一方に実施例1の酸化型染毛剤用第1剤30gと前記第2剤30gとの混合物を塗布し、他方に比較例1の酸化型染毛剤用第1剤30gと前記第2剤30gとの混合物を塗布する。
(2)30分間室温で放置する。
(3)その後、お湯ですすぐ
(4)市販のシャンプーで2回洗浄後、すすぐ。
(5)市販のトリートメントを塗布し、すすぐ。
(6)ドライヤーにて乾燥する。
【0030】
感触の評価は、5人のパネラーにより上記染毛処理の(6)の工程終了後のモニターの頭髪を手で触り、その感触によって評価した。その結果、5人のパネラー全員が実施例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した頭髪の方が、比較例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した頭髪より、「指通り性が良い」と評価した。
【0031】
上記のように、毛束での感触評価においても、またモニターの頭髪での感触評価においても、N,N′−ジアセチルシスチンを含有させた実施例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した場合の方が、N,N′−ジアセチルシスチンを含有させていない比較例1の酸化型染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した場合より、「指通り性が良い」ということは、本発明の酸化型染毛剤用第1剤を用いて染毛処理した場合には毛髪のダメージ(損傷)が少ないことを示しているものと判断できる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、毛髪への染着力が高く、かつ染毛処理に伴う毛髪のダメージが少ない酸化型染毛剤用第1剤を提供することができた。
Claims (1)
- 酸化染料を0.5〜3重量%含有し、N,N′−ジアセチルシスチンを1〜10重量%含有し、かつアルカリ剤を0.5〜15重量%含有し、pHが7〜11であることを特徴とする酸化型染毛剤用第1剤。
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