JP3666774B2 - 自動車用シート構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用シート構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用シートとしては、例えば、特開平5−277020号公報「自動車用シート」が知られている。
上記技術は、シートの位置の変化に対応することが可能な加熱及び冷却機能を有する自動車用シートを提供することを目的としたものであり、同公報の図1に示される通り、シート2を構成する背当て部2a及び着座部2bと、この背当て部2a内に形成したダクト5aと、着座部2b内に形成したダクト5bとを備えたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記技術では、背当て部2a、着座部2bにダクト5a,5bを一体成形しているため、成形型が複雑となりコストが嵩む。
また、着座した時に、ダクト5a,5bの断面積が減少し、通気性が悪くなるという不都合がある。
そこで、本発明の目的は、成形が容易で、着座した時にダクトの通気性を損わない自動車用シート構造を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、シートのパッドに通気孔を設け、この通気孔にダクトを接続し、このダクトを介して温度調節済みの空気を前記通気孔に送るようにした自動車用シートにおいて、前記ダクトを、前記パッドに押当てる硬質の平板状部材と、この平板状部材に接合する軟質の断面視Ω字形状部材とで構成した。
【0005】
ダクトをシートのパッドとは別体にしたことで成形が容易になり、また、パッド側に硬質の平板状部材を設けたため、着座した時にダクトがつぶれにくく、通気性を損うことがない。
更に、パッドに平板状部材を押当てたことで、着座した時の凹凸感がなく、座り心地を維持することができる。
更にまた、Ω字形状部材を軟質としたことで、通気ダクト全体を硬質とするよりも柔軟性が増し、上記した座り心地に影響を与えにくい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る自動車用シートの斜視図であり、シート1は、着座するためのシートクッション2と、背もたれとなるシートバック3と、このシートバック3の上部に設けたヘッドレスト4とからなる。
シートクッション2及びシートバック3は、それぞれ表皮5,6にエア吹出孔7…(…は複数個を示す。以下同様。)を有する。
【0007】
図2は本発明に係る自動車用シートの温調風供給装置を示す系統図であり、温調風供給装置10は、吸気口11から吸気したエアを下流へ圧送するためのブロア12と、このブロア12の下流のエアの流れを切換える第1ダンパ13と、この第1ダンパ13の下流に設けた温度調整機構20と、この温度調整機構20を通ったエアをシートクッション2下部から排出するためのシートクッション排気ダクト14及びシートバック3後部から排出するためのシートバック排気ダクト15と、これらの排気ダクト14,15へのエアの流れを切換える第2ダンパ16とからなる。なお、17は排気口である。
【0008】
温度調整機構20は、通電することにより熱を発生したり吸収することのできる熱電素子21と、この熱電素子21と送られてきたエアとの熱の授受を行わせるための熱交換器22,23とからなる。
【0009】
熱電素子21は、異種の導体を結合させ、これらの導体に電流を流すと、これらの接点でジュール熱以外の熱が発生(又は吸収)するペルチェ効果を利用したものであり、ペルチェ素子ともいう。
この熱電素子21に上記とは逆の方向の電流を流すと、接点で熱を吸収(又は発生)する。
接点を2つ設ければ、一方が発熱し、他方が発熱量と同量だけ熱を吸収する。
【0010】
図3は本発明に係るシートクッションの平面図であり、シートクッション2は、一対のシートレール31,32と、このシートレール31,32に取付けたシートフレーム33と、このシートフレーム33に取付けたシートスプリング34…とからなる。
【0011】
温調風供給装置10(図2参照)のブロア12は、シートクッション2の下部前部に設けたものであり、ブロア12の後部に温度調整機構20を直接接続したものである。
シートクッション排気ダクト14は、平面視U字形状であり、フレキシブルな中間ダクト18を介して温度調整機構20に接続するものである。
【0012】
中間ダクト18は、上記したシートクッション排気ダクト14に接続する第1管部18aと、シートバック排気ダクト15(図2参照)に接続する第2管部18bとに分岐するものである。
【0013】
図4は本発明に係るシートクッション排気ダクトの分解斜視図であり、シートクッション排気ダクト14は、パッド35(図7参照)に押当てる硬質の平板状部材14aと、この平板状部材14aに接着、溶着等により接合する軟質の断面視Ω字形状部材14bとからなる。
【0014】
平板状部材14aは、エアを排出するための排気ノズル14c…及びこれら排気ノズル14c…の先端に開けたエア排出孔14d…と、シートスプリング34…(図3参照)にワイヤ等で取付けるための耳部14e…とを有する。
Ω字形状部材14bは、Ω字溝14fと、エアを取入れるエア吸入口14gと、シートスプリング34…(図3参照)にワイヤ等で取付けるための耳部14h…とを有する。
【0015】
耳部14e…と耳部14h…とは、同一形状であり、接合した時にワイヤ等を挿入するためのスリット14j…をそれぞれ有する。
平板状部材14aの材質としては硬質樹脂、Ω字形状部材14bの材質としては軟質樹脂又はゴムが好適である。
【0016】
このように、シートクッション排気ダクト14を、パッド35(図7参照)に押し当てる硬質の平板状部材14aと、この平板状部材14aに接合する軟質のΩ字形状部材14bとで構成したことで、シートクッション排気ダクト14がシート1(図1参照)を構成するパッド35(図7参照)とは別体となり、成形が容易になる。
また、パッド35(図7参照)側に硬質の平板状部材14aを設けたため、着座した時にシートクッション排気ダクト14がつぶれにくく、通気性を損うことがない。
【0017】
更に、パッド35(図7参照)に平板状部材14aを押当てたことで、着座した時の凹凸感がなく、座り心地を維持することができる。
更にまた、Ω字形状部材14bを軟質としたことで、シートクッション排気ダクト14全体を硬質とするよりも柔軟性が増し、上記した座り心地に影響を与えにくい。
【0018】
図5は本発明の係るシートバックの正面図であり、シートバック3は、サブシートフレーム41と、このサブシートフレーム41に取付けたシートスプリング42…とからなる。
シートバック排気ダクト15は、正面視H字形状であり、エア排出孔15b…と、シートスプリング42…にワイヤ等で取付けるための耳部15c…とを有し、中間ダクト18の第2管部18bに接続するものである。なお、46は中間ダクト18を固定するためにサブシートフレーム41に設けた取付部である。
【0019】
以上に述べた温調風供給装置10の作用を次に説明する。
図6(a)〜(d)は本発明に係る温調風供給装置の作用を示す系統図であり、(a)は第1ダンパ13及び第2ダンパ16を中間位置にした状態、(b)は第1ダンパ13を片側に倒して排気ダクト14,15側にのみ送風した状態、(c)は第1ダンパ13を片側に倒して排気ダクト14,15側にのみ送風し、且つ第2ダンパ16を一方に倒して排気ダクト14側にのみ送風した状態、(d)は第1ダンパ13を片側に倒して排気ダクト14,15側にのみ送風し、且つ第2ダンパ16を他方に倒して排気ダクト15側にのみ送風した状態を示す。
【0020】
(a)において、ブロア12を作動させると、車室内のエアは、吸気口11から吸入され、ブロア12の下流に設けた第1ダンパ13で分流する。
一方のエアは、温度調整機構20の熱交換器22内を通る。
熱電素子21は、予め通電されて、熱を発生(又は熱を吸収)する。そして、この熱は熱交換器22でエアと熱交換する。
これによりエアは温風(又は冷風)となって、温度調整機構20の下流の第2ダンパ16で分流する。
【0021】
一方のエアは、シートクッション2(図2参照)に設けたシートクッション排気ダクト14のエア排出孔14d…から排出される。
他方のエアは、シートバック3(図2参照)に設けたシートバック排気ダクト15のエア排出孔15b…から排出される。
【0022】
また、第1ダンパ13を通過した他方のエアは、熱交換器23内を通る。
熱交換器23内では、熱電素子21の特性により、上記の発生した熱量と等しい熱量を熱交換する。
これにより、エアは冷風(又は温風)となって排気口17から車室内又は車室外へ排出される。
【0023】
(b)において、ブロア12を作動させると、車室内のエアは、吸気口11から吸入され、第1ダンパ13により温度調整機構20の熱交換器22内のみを通る。
そして、エアは、熱交換器22で熱交換し、温風(又は冷風)となって第2ダンパ16で分流する。
一方のエアは、シートクッション2(図2参照)のシートクッション排気ダクト14のエア排出孔14d…から排出される。
【0024】
他方のエアは、シートバック3(図2参照)のシートバック排気ダクト15のエア排出孔15b…から排出される。
この時のエア排出孔14d…,15b…からの風量は、排気口17から排出されない分だけ、(a)の場合に比べて多くなる。
【0025】
(c)において、ブロア12を作動させると、車室内のエアは、吸気口11から吸入され、第1ダンパ13により温度調整機構20の熱交換器22内のみを通る。
そして、エアは、熱交換器22で熱交換し、温風(又は冷風)となり、第2ダンパ16によってシートクッション2(図2参照)のシートクッション排気ダクト14のみに送られ、エア排出孔14d…から排出される。
この時のエア排出孔14d…からの風量は、エア排気孔15b…から排出されない分だけ、(b)の場合に比べて多くなる。
【0026】
(d)において、ブロア12を作動させると、車室内のエアは、吸気口11から吸入され、第1ダンパ13により温度調整機構20の熱交換器22内のみを通る。
そして、エアは、熱交換器22で熱交換し、温風(又は冷風)となり、第2ダンパ16によってシートバック3(図2参照)のシートバック排気ダクト15のみに送られ、エア排出孔15b…から排出される。
この時のエア排出孔15b…からの風量は、エア排気孔14d…から排出されない分だけ、(b)の場合に比べて多くなる。
【0027】
図7は本発明に係るシートの縦断面図であり、シートクッション2は、シート形状を保持し、且つクッション体として作用するパッド35と、このパッド35の外側を覆う通気性を備えたカバーパッド36と、更に、このカバーパッド36の外側を覆う表皮5とを有する。
【0028】
パッド35は、シートクッション排気ダクト14のエア排出孔14d…に接続する通気孔35a…を有し、シートスプリング34(図3参照)に取付けたものである。
パッド35の材質としては、ウレタンフォームが好適である。
【0029】
シートバック3は、シート形状を保持し、且つクッション体として作用するパッド43と、このパッド43の外側を覆う通気性を備えたカバーパッド44と、更に、このカバーパッド44の外側を覆う表皮6とを有する。
【0030】
パッド43は、シートバック排気ダクト15のエア排出孔15b…に接続する通気孔43a…を有し、シートスプリング42(図5参照)に取付けたものである。
パッド43の材質としては、ウレタンフォームが好適である。
【0031】
上記通気孔35aを通過したエアは、カバーパッド36内を通り、表皮5のエア吹出孔7…(図1参照)から吹出す。
この吹出されたエアによって、着座した人のでん部や脚部を暖めたり冷やしたりする。
上記通気孔43aを通過したエアは、カバーパッド44内を通り、表皮6のエア吹出孔7…(図1参照)から吹出す。
この吹出されたエアによって、着座した人の腰部や背部を暖めたり冷やしたりする。
【0032】
図8は本発明に係るシートバックの要部拡大断面図であり、パッド43は、通気孔43aの入口に環状の突部43bを一体形成したものである。
この突部43bは、パッド43にシートバック排気ダクト15を押当て、パッド43の通気孔43aにシートバック排気ダクト15の排気ノズル15dを挿入した時に、通気孔43aとシートバック排気ダクト15との接続部のエアのリークを防止するためのシール部となる。
ここで、破線▲1▼,▲2▼は、突部43bにシートバック排気ダクト15を押当てる前の形状である。
【0033】
このように、パッド43にシートバック排気ダクト15を押当てることで、通気孔43aにシートバック排気ダクト15のエア排出孔15bを接続するので、接続が容易であり、更に、通気孔43aと排気ノズル15dとの位置関係、通気孔43aの内径、排気ノズル15dの外径等の寸法ばらつきが生じても、この突部43bを含むパッド43の柔軟性によって上記ばらつきを吸収しリークを防止することができる。
【0034】
図9は本発明に係るシートバックの斜視図(背面視)であり、パッド43に多数の環状の突部43b…を一体形成したことを示す。
このように、パッド43に突部43bを一体形成したことで、通気孔43a入口をシールするための別部材が不要となり、部品数を減らすことができる。なお、図7に示したシートクッション2においても、通気孔35aの入口に、環状の突部(不図示)をパッド35に一体形成し、この突部をシートクッション排気ダクト14に当てることで、通気孔35a入口におけるリークを防止した。
【0035】
尚、本発明の実施の形態では、両ダクト14,15に断面視Ω字形状部材14b,15fを使用したが、これに限るものではなく、断面視コ字形状部材や断面視ヘ字形状部材を用いてもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の自動車用シート構造は、ダクトを、パッドに押当てる硬質の平板状部材と、この平板状部材に接合する軟質の断面視Ω字形状部材とで構成したので、ダクトがシートのパッドとは別体となり、成形が容易になる。
【0037】
また、パッド側に硬質の平板状部材を設けたので、着座した時にダクトがつぶれにくく、通気性を損うことがない。
更に、パッドに平板状部材を押し当てたので、着座した時の凹凸感がなく、座り心地を維持することができる。
更にまた、Ω字形状部材を軟質としたので、通気ダクト全体を硬質とするよりも柔軟性が増し、上記した座り心地に影響を与えにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動車用シートの斜視図
【図2】本発明に係る自動車用シートの温調風供給装置を示す系統図
【図3】本発明に係るシートクッションの平面図
【図4】本発明に係るシートクッション排気ダクトの分解斜視図
【図5】本発明の係るシートバックの正面図
【図6】本発明に係る温調風供給装置の作用を示す系統図
【図7】本発明に係るシートの縦断面図
【図8】本発明に係るシートバックの要部拡大断面図
【図9】本発明に係るシートバックの斜視図(背面視)
【符号の説明】
1…シート、2…シートクッション、3…シートバック、14,15…ダクト(シートクッション排気ダクト、シートバック排気ダクト)、14a,15e…平板状部材、14b,15f…Ω字形状部材、35,43…パッド、35a,43a…通気孔。

Claims (1)

  1. シートのパッドに通気孔を設け、この通気孔にダクトを接続し、このダクトを介して温度調節済みの空気を前記通気孔に送るようにした自動車用シートにおいて、前記ダクトを、前記パッドに押当てる硬質の平板状部材と、この平板状部材に接合する軟質の断面視Ω字形状部材とで構成したことを特徴とする自動車用シート構造。
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