JP3666761B2 - 熱間鋼材の接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間鋼材の接合方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱間圧延において、スラブを一枚ずつ粗圧延機並びに仕上圧延機に供給して、間欠的に圧延を行なっていた。このような間欠圧延では、それ自体が非能率的なだけでなく特に被圧延材の板厚が薄い圧延の場合には、被圧延材の先端部が変形してガイドロールに突っかかる虞れ、また、後端部が圧延機を抜けるときに絞り込まれて圧延ロールを傷める虞れがある。
これらの不都合が発生すると、損傷箇所を修理するために圧延ラインを止めなければならない。そこで、従来は、先・後端部の圧延速度を遅くするという対策を講じているが、これでは圧延能率が低下する。
【0003】
また、熱延鋼板の先・後端部は、中央部に比べて圧延速度のバランスが崩れ、従って、適正な圧延温度範囲から外れるため、寸法外れが発生し易い。
これは、熱延鋼板の先端が巻取り機に巻取られるまではテーブルローラ上を低速の無張力で通板し、巻取り開始直後に急激な張力が作用して板幅が狭くなる。その後、一定速度・一定張力で巻取られる。さらに、鋼板が圧延機を抜けた後、低速にして無張力で巻取られるためである。
このように、仕上圧延後の鋼板の先・後端部は、圧延速度、張力の影響によって板幅及び鋼材の冷却が変動し、寸法が外れたり温度が外れ、その部分を切り捨て及び格落として処理しなければならず、生産歩留りの低下が大きくなる。
【0004】
上記のような問題を解決するために、近年、粗圧延機と仕上圧延機の間で、先行する粗圧延済み鋼板(以下「先行鋼材」という)と、後続する粗圧延済み鋼板(以下「後行鋼材」という)とを互いに接合し、仕上圧延を連続して実施すると云う技術が提案され、実用に供されつつある。
このときに重要なことは、先・後鋼材の接合技術であり、圧延の際にデスケーリング装置でスケールを除去するが、接合場所に至る間に新たにスケールが生成し、このスケールが接合の妨げになる。そこで、接合の直前にこの新スケールを除去する必要があり、そのための技術の一例を次に説明する。
【0005】
図12は従来の熱間鋼材の接合方法説明図であり、先行鋼材101をロール102で一定距離持上げ、この先行鋼材101の後端下方に後行鋼材103を臨ませ、バーナ104で発生した還元性ガス中で、ロータリカッタ105にて、先行鋼材101の後端下面及び後行鋼材103の先端上面を斜めにカットして接合面106(図13参照)を形成し、プレスパンチ107a,ダイ107bにて先行鋼材101の後端と後行鋼材103の先端とを圧接すると云うものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図13は図12の要部拡大図であり、ロータリカッタ105の回転方向は上記公報に記載の通り図において時計廻りである。この結果、先行鋼材101の後端面101aと接合面106との交わる稜線106aにバリ108が発生する。このバリ108は自由空間へ延びる形となるので、大きくなりやすい。同様に後行鋼材103の後端に大きなバリ109が発生する。
【0007】
図14(a),(b)は従来の圧接工程説明図であり、(a)はプレス開始時の先・後行鋼材の断面を示し、(b)はプレス完了時の先・後行鋼材の断面を示す。
(a)にて、先行鋼材101の後端と後行鋼材103の先端とを重ね、パンチ107a及びダイ107bにて圧接する。(b)から明らかな如く、接合部の最外端に硬いバリ108,109が残り、これらが仕上圧延の際に、仕上ロールを傷める又は鋼材自体の引張り破断の要因となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、請求項1の接合方法は、還元性又は無酸化雰囲気下で、鋼材の端部を斜めにカットして接合面を形成し、その際に、接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬように、カットにはロータリカッタを使用し、且つロータリカッタの回転方向を接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬ方向に定めたことを特徴とする。
バリの無い状態で圧接するので、接合部に欠陥が残らず、圧延中の破断を有効に防止することができる。更に、仕上ロールを傷める虞れも無い。
ロータリカッタの回転方向を制御するだけであるから、有害なバリの発生を容易に抑制することができる。
【0010】
請求項2の接合方法は、ロータリカッタのチップを、ヘ字状に並べ、且つそれの谷の部分に切屑が集るように回転方向を定めたことを特徴とする。
バリを板材の幅方向内方へ寄せたので、仮にバリが発生したとしても圧接工程で圧搾して、無害化できるので、圧延中の破断をより有効に防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る熱間圧延ラインのレイアウト図であり、熱間圧延ラインは、粗圧延機1、圧延材を巻取って保温しつつ巻戻すコイルボックス2、レベラ3、圧延材をクロス方向に切断するクロップシャー4、本発明に係る走間接合機10、仕上圧延機6、高速シャー7、巻取り機8をこの順に配列してなる。
【0012】
粗圧延機1でスラブ9から圧延した鋼材はコイルボックス2に巻取られたのちに巻き戻されて、レベラ3で先後端部の巻き癖を直す。接合する面を確保するために鋼材の先後端をクロップシャー4で切断する。
その後、走間接合機10で先行鋼材の後端と後行鋼材の先端とを接合し、仕上圧延機6にて仕上圧延をしたのち巻取り機8で巻き取り、巻取り量が一定量に達したら高速シャー7で切断して熱延コイルにする。
【0013】
図2は本発明に係る走間接合機の側面図であり、走間接合機の一例を示す。
走間接合機10は走行台車11と、プレスのためのプレスシリンダ12,パンチ13及びダイ14と、このダイ14の出側(図右側)に配置した第1クランパ15、ピンチロール16、ロール17,17及びバーナ21と、これらを一括して上下動させるための昇降フレーム18及び昇降シリンダ19,19と、ダイ14の入側に配置した第2クランパ22、ピンチロール23及びロール24,24と、バーナ25と、ロータリカッタ26からなる。27は第1クランパ作動シリンダ、28は第2クランパ作動シリンダである。
【0014】
以上の構成からなる走間接合機10の作用を次に述べる。
図3(a),(b)〜図5(a),(b)は走間接合機の作用説明図である。
図3(a)において、先行鋼材31が所定位置に達したら、第1クランパ作動シリンダ27を作動して、第1クランパ15を下げ、この第1クランパ15で先行鋼材31を固定する。
図3(b)において、矢印▲1▼の如く昇降シリンダ19,19を作動して、第1クランパ15などを所定高さ持上げる。次に、矢印▲2▼の如く後行鋼材32の先端を所定位置まで進め、第2クランパ22で固定する。
図4(a)において、バーナ21,25を作動して還元性火炎で先行鋼材31の後端及び後行鋼材32の先端を包む。
図4(b)において、図時計方向に回動したロータリカッタ26を、矢印▲3▼の如く平行四辺形を描くように移動して、後行鋼材32の先端及び先行鋼材31の後端を斜めにカットする。この工程は後に詳しく説明する。
【0015】
図5(a)において、矢印▲4▼の如く先行鋼材31を下げて、その後端を後行鋼材32の先端に重ねる。つづいて矢印▲5▼の如くパンチ13を下降して、先・後行鋼材31,32同士を圧接する。なお、矢印▲4▼と矢印▲5▼とを同時に実行して、先・後鋼材31,32同士を圧接しても良い。
図5(b)において、パンチ13並びに第1・第2クランパ15,22を開放して、繋がった状態の先・後行鋼材31,32を前進させる。33は接合部である。
以上の工程は、走行台車11を適宜走行させながら実施する。先行鋼材31及び後行鋼材32を停止する必要がないので、圧延作業が継続できる。
【0016】
図6は本発明に係るロータリ切削機の側面図であり、例えばロータリ切削機40は、ベースフレーム41と、このベースフレーム41の立壁42にレール43,43を介して上下動可能に取付けたスライダ44と、このスライダ44の上部に形成した斜面45と、この斜面45にレール46を介して摺動自在に取付けた軸受台47と、この軸受台47を往復させるシリンダ48Aと、軸受台47に回動自在に支承させたロータカッタ26及び不図示のモータとからなる。48Bはスライダ44のためのシリンダである。
【0017】
図7は本発明に係るロータリ切削機の平面図であり、軸受台47と、ロータリカッタ26と、このカッタを回動するモータ49との関係を示す。
ところで、ロータリカッタ26はアーバー26aの外周面に複数のチップ50・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)を、全体的に平面視で「ヘ」となるように並べたものであることを特徴とする。詳しくは、ロータリカッタ26で鋼材を切削した場合に、切削屑が「ヘ」の谷51に集るようにしたことを特徴とする。
【0018】
上記ロータリ切削機の作用を次に述べる。
図8(a)〜(d)は本発明のロータリ切削機の作用図である。
(a)において、先行鋼帯31の後端及び後行鋼帯32の先端をカットするためにロータリカッタ26を図時計廻りに回動する(矢印a)。
(b)において、ロータリカッタ26を矢印bの如く移動することで、後行鋼帯32の先端を斜めにカットする。このときに、削り出された接合面30と鋼材の先端面32aとが交わる稜線30aにバリが残らない。ロータリカッタ26の回転方向をそのように定めたからである。
(c)において、ロータリカッタ26を矢印cの如く上げる。
(d)において、ロータリカッタ26を矢印dの如く移動することで、先行鋼帯31の後端を斜めに切削する。このときに、削り出された接合面30と鋼材の後端面31aとが交わる稜線30aにバリが残らない。ロータリカッタ26の回転方向をそのように定めたからである。
【0019】
図9(a),(b)は図8の別実施例図である。
(a)において、ロータリカッタ26を図時計廻りに回動する。
(b)において、矢印のごとくロータリカッタ26を進めて、後行鋼帯32の先端及び先行鋼帯31の後端を斜めに切削する。1パスで両面を切削するので、切削に要する時間が図8より短縮できる。ただし、図8は先行鋼帯31のレベルにロータリカッタ26を追従させることができるので、先行鋼帯31のレベル管理をそれほど厳密にする必要がなく、実用的である。
【0020】
図10(a),(b)は本発明で得られた接合部の平面図及び断面図である。
(a)の平面図において、33は接合部、34は接合部と後行鋼材32の接合部外縁である。
(b)は(a)のB−B線断面図であり、接合部外縁34にはスケールなどの異物が無く、下面側の接合部外縁35にもバリなどの異物が無いので、接合は良好である。
【0021】
図11(a)〜(d)は本発明のロータリカッタと従来のロータリカッタとの比較図である。
(a)は本発明に係るロータリカッタ26の作用図であり、チップ50・・・を「ヘ」字状に配置し、それの谷51に切屑を集めるようにしたため、仮にバリ32bが生成したとしてもそれは小さく、圧接の際に押し潰されて母材と一体になる程度のものであるから、欠陥部とはなりえない
(b)は本発明に係る別のロータリカッタ26Bを示し、このロータリカッタ26Bは、カッタの軸方向に複数段の「へ」を並べたものであり、仮にバリ32b,32b,32bが生成したとしてもそれはより小さくなるので、実害がない。
【0022】
(c)は従来のロータリカッタ105の図であり、このロータリカッタ105はチップ111・・・をカッタの軸に平行に並べたストレートカッタであり、どうしても鋼材103の先端両側にバリ109,109が張出す。これらのバリ109,109は接合部の最外端にノッチを形成する。すると、鋼材に張力が作用した際に、最外端のノッチが亀裂の開始点となり、鋼材103が破断することになる。
(d)従来の別のロータリカッタ105Bの図であり、チップ111・・・をカッタの軸に一定角度で傾斜させたねじれチップカッタであり、どうしても鋼材103の片側にバリ109が張出す。このバリ109は接合部の最外端にノッチを形成する。すると、鋼材に張力が作用した際に、最外端のノッチが亀裂の開始点となり、鋼材103が破断することになる。
従って、チップ50・・・を「へ」字状に並べ、且つへの谷51に切屑が集るように構成した本発明のロータリカッタ26,26Bは鋼材の破断を未然に防止する作用をなす。
【0023】
なお、前記バーナ21,25で還元性火炎を先行鋼材31の後端及び後行鋼材32の先端に吹き付けたのは、先行鋼材31の後端及び後行鋼材32の先端の再酸化防止と温度低下防止を図るものである。
従って、熱した窒素ガスなどの不活性ガスを切削の間吹き付けるものであってもよい。
【0024】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。しかし、本発明は実施例に限るものではない。
実施例1及び比較例1;
(1)供試材;
炭素鋼板(C:0.1%、Si:0.5%、Mn:1.2%)
板厚30mm、板幅300mm、長さ1,000mm
温度1,250℃
【0025】
(2)直火還元炎条件;
バーナの形式;ノズル内混合方式
燃料;LPG 6Nm3/hr/1バーナ
酸素富加率;60%
空気比m;0.6
バーナ配列;鋼材の幅方向に複数本配列。
なお、バーナはリング状スリットノズルから混合気を吹き出して還元炎を発生するものである。
【0026】
(3)切削条件;
カッタの種類;ロータリカッタ(外径300mm、胴長330mm)
チップの配列;「ヘ」(実施例1)、「I」(比較例1)
回転数;1,500rpm
送り速度;6,000mm/min
切削面の幅;30mm
なお、切削はバーナ点火1秒後に開始した。
【0027】
(4)圧接条件;
圧接温度;1,050℃
重ね合せ量(幅);25mm
プレス圧;300トンプレスで押圧
雰囲気;還元炎噴射
なお、切削を終えて切削装置を退避させた後、1秒後に圧接を開始した。
(5)仕上圧延条件;
圧延機数;3段(40%,35%,30%の圧下率)
鋼材温度;1,000℃
仕上り厚さ;8.2mm
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1;
表1に示すとおり、前記(1)〜(5)の条件と、チップの配列を「ヘ」としたこと、及びロータリカッタの回転方向を図9に合せて実験をしたところ、有害なバリの発生は認められず、圧延中に鋼材が破断することもなかったので、評価は○である。
【0030】
比較例1;
表1に示すとおり、前記(1)〜(5)の条件と、チップの配列を「l」としたこと、及びロータリカッタの回転方向を図13(ただし、左右反転して見る。)に合せて実験をしたところ、有害なバリが発生し、6kgf/mm2の張力で鋼材が破断したので、評価は×である。
【0031】
尚、請求項1においては、カット手段は任意であり、又、生成したバリをワイヤブラシなどの手段で掻き取るようにしてもよく、要は、圧接前の接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬようにすればよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の接合方法は、還元性又は無酸化雰囲気下で、鋼材の端部を斜めにカットして接合面を形成し、その際に、接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬように、カットにはロータリカッタを使用し、且つロータリカッタの回転方向を接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬ方向に定めたことを特徴とする。
バリの無い状態で圧接するので、接合部に欠陥が残らず、圧延中の破断を有効に防止することができる。更に、仕上ロールを傷める虞れも無い。
ロータリカッタの回転方向を制御するだけであるから、有害なバリの発生を容易に抑制することができる。
【0034】
請求項2の接合方法は、ロータリカッタのチップを、ヘ字状に並べ、且つそれの谷の部分に切屑が集るように回転方向を定めたことを特徴とする。
バリを板材の幅方向内方へ寄せたので、仮にバリが発生したとしても圧接工程で圧搾して、無害化できるので、圧延中の破断をより有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱間圧延ラインのレイアウト図
【図2】本発明に係る走間接合機の側面図
【図3】走間接合機の作用説明図
【図4】走間接合機の作用説明図
【図5】走間接合機の作用説明図
【図6】本発明に係るロータリ切削機の側面図
【図7】本発明に係るロータリ切削機の正面図
【図8】本発明のロータリ切削機の作用図
【図9】図8の別実施例図
【図10】本発明で得られた接合部の平面図及び断面図
【図11】本発明のロータリカッタと従来のロータリカッタとの比較図
【図12】従来の熱間鋼材の接合方法説明図
【図13】図12の要部拡大図
【図14】従来の圧接工程説明図
【符号の説明】
1…粗圧延機、6…仕上圧延機、10…走間接合機、21,25…バーナ、26,26B…ロータリカッタ、30…接合面、30a…稜線、31…先行鋼材、31a…先端面(鋼材の端面)、32…後行鋼材、32a…後端面(鋼材の端面)、32b…バリ、40…ロータリ切削機、50…チップ、51…谷。
Claims (2)
- 熱間圧延ラインにて、先行鋼材の端部と後行鋼材の端部とを、圧接法で接合する熱間鋼材の接合方法において、還元性又は無酸化雰囲気下で、鋼材の端部を斜めにカットして接合面を形成し、その際に、接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬように、前記カットにはロータリカッタを使用し、且つロータリカッタの回転方向を接合面と鋼材の端面とが交わる稜線にバリを残さぬ方向に定めたことを特徴とする熱間鋼材の接合方法。
- 前記ロータリカッタのチップを、ヘ字状に並べ、且つそれの谷の部分に切屑が集るように回転方向を定めたことを特徴とする請求項1記載の熱間鋼材の接合方法。
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