JP3666198B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は安定な高速出射が可能なインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ドロップ・オン・デマンド型のインクジェット方式の印字装置の1つとして、特開昭63−252750号、特開平6−234212〜234216号等に記載の剪断モード型のものが、小型化や高速化に有利であるとして知られている。
【0003】
図1は従来の剪断モード型インクジェットヘッドの構成を示す斜視図である。図において、1は圧電性セラミック基板、2はノズルプレート、3はノズル、4はインク流路、5は側壁、6はカバープレート、7はインク供給部(以下、マニホールドと言う。)、8はインク導入口である。
【0004】
圧電性セラミック基板1にはダイヤモンドブレード等により切削加工され、複数の溝(インク流路)4が全て同じ形状で平行に形成され、溝4の側面となる側壁5は矢印の方向に分局されている。溝4の深さは圧電性セラミック基板の一方の端面12に近づくにつれて徐々に浅くなって、端面12近傍では浅溝10とされている。溝4の内面には、その両側面の上半分に金属電極9がスパッタリング等によって形成されている。又、浅溝10の内面には、その側面及び底面に金属電極11がスパッタリング等によって形成されており、金属電極9と金属電極11は連通している。
【0005】
カバープレート6は、セラミック材料又は樹脂材料等から形成され、研削又は切削加工等によって、インク導入口8及びマニホールド7が形成されている。そして、圧電性セラミック基板1の溝4が加工された面とカバープレート6のマニホールド7が加工された面とがエポキシ系接着剤16等を用いて接着され(図2参照)、溝4の上面がカバープレート6で覆われてインク流路となる。
【0006】
圧電性セラミック基板1及びカバープレート6の端面に、各インク流路4の位置に対応する位置にノズル3が設けられたノズルプレート2が接着される。ノズルプレートはPET等のポリアルキレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のプラスチックによって形成されている。
【0007】
圧電性セラミック基板1の溝4の加工側と反対側の面には、各インク流路4の位置に対応する位置に導電層のパターン14が形成された基板13がエポキシ系接着剤等によって接着されており、導電層のパターン14と浅溝10の金属電極11とはワイヤボンディングの導線15で接続されている。
【0008】
図2はインク出射の動作原理を説明する図である。図のインク流路4からインクを出射するにあたり、金属電極9aと9bに正の駆動電圧が印加され、金属電圧9cと9dが接地される。図2(b)に示す様に、それぞれの側壁5には矢印の方向の駆動電界が発生する。この駆動電界の方向は圧電性セラミック基板の分局方向と直交しているため、各側壁5は圧電厚みすべり効果により、この場合、インク流路4の内部方向に急激に変形する。この変形によってインク流路4の容積が減少してインク圧力が急速に増大し、圧力波が発生して、インク流路4に連通するノズル3からインク滴が噴射される。
【0009】
駆動電圧の印加が停止されると、各側壁5が変形前の位置(図2(a))に徐々に戻るため、インク流路4内のインク圧力が徐々に低下する。そして、図示しないインク供給源(タンク)からインク導入口8及びマニホールド7を通してインク流路4にインクが供給される(図3)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の剪断モード型インクジェットヘッドを用いて、更なる高速でのインク出射を意図すると、前記圧力波の振動が減衰してインク液がノズルで形成するメニスカスが安定するまでの待ち時間が律速となる。即ち、インク流路の急激な容積減少によって発生する負の圧力波は、本来流路の溝の深さが徐々に浅くなり始める点で反射してその振幅が規制される筈であるにも拘わらず、実際には振動が理論以上にダイナミックで、減衰するまでに時間を要し、メニスカスの安定を待たずに連続出射すると、インク滴の大きさがばらついたり、空気を巻き込んで出射トラブルを生じたりの問題が発生する。従って、印字速度をより高速にすることには限界がある。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定な高速出射が可能なインクジェットヘッドを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
インク供給源からインクを導入し、複数のインク流路にインクを分配充填するインク導入口を有し、実質的に液溜まりを介することなくインク導入口からインク流路へインクを供給するインクジェットヘッド、前記インク流路が圧電性セラミックに溝として設けられ、インク導入口に連通する側がインク噴射側よりも浅く形成されていること、前記溝がインク噴射側から順に、深さが略一定の部分、深さが徐々に浅くなる部分及び浅い部分からなり、インク導入口が浅い部分の溝に連通していること、前記溝が圧力波の振動を規制する部分を有すること、
によって達成される。
【0013】
即ち本発明者は、各インク流路に渡るマニホールドが大容積でインクを保持するため、負の圧力波の振動のかなりの部分がインク流路を経てマニホールドまで伝達され、幾種類かの振幅を有する振動が合成されたかたちでメニスカスを振動させるために、その安定に要する時間が長期化すると考え、インク流路内で確実に振幅を規制するために、浅い部分の溝を設けて実質的にマニホールドを経ずにインクを供給して本発明に至った。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0015】
図4は本発明のインクジェットヘッドに係るインク流路とインク供給部の形態の1例を示す側断面図である。図においては、圧電性セラミック基板1に形成された、深さが略一定の部分41、深さが徐々に浅くなる部分42及び浅い部分43を有する溝と、カバープレート6によって形成されたインク流路4の、浅い部分43に複数のインク流路に渡るインク導入口8が連通している。インク導入口8は、浅溝部分に連通していれば負の圧力波の伝達が無視できるので、その流路の幅が一定でも、図の様に変化してもよい。
【0016】
又、カバープレート6の、インク流路が徐々に浅くなる部分に対応する位置近傍で、カバープレートのインク接触面の材質や表面物性を変える、カバープレートを切り欠いて浮き部分を設ける等して、圧力波の振動を規制することは好ましい態様である。
【0017】
図5にインク流路とインク供給部の形態の他の例を示す。この例ではインク流路はインク出射側から浅溝に至るまで徐々に浅くなり、インク導入口は該徐々に浅くなるインク流路の浅溝近傍に設けられる。
【0018】
【実施例】
インク導入口の径が2.0mmで、深さ2.0mm、インク流路への開口部の長さ14mmのマニホールドを有し、深さ略一定部分のインク流路が深さ420μm、幅105μm、長さ7.0mmであり、64個のノズルを有する従来のインクジェットヘッドと、全インク流路に渡るインク導入口を有し、インク流路については同様の図4に示すタイプのインクジェットヘッドを用い、下記組成のインクを、体積50plのインク滴として駆動電圧20V、周波数6kHzでインクジェット用ゼラチンコート紙に出射して下記の評価を行い印字品位の比較をした。尚、ヘッド又は紙を500mm/秒で移動させて印字し、ドットの形状、位置をCCD撮像装置で観察して着弾精度、サテライトの有無及びドットの評価をした。
【0019】
【0020】
【発明の効果】
実施例にて実証した如く、本発明によればインクジェット方式の高速印字を安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の剪断モード型インクジェットヘッドの構成を示す斜視図。
【図2】剪断モード型インクジェットヘッドのインク出射の動作原理を説明する図。
【図3】従来の剪断モード型インクジェットヘッドへのインクの供給を示す図。
【図4】本発明のインクジェットヘッドに係るインク流路とインク供給部の形態の1例を示す側断面図。
【図5】インク流路とインク供給部の形態の他の例を示す側断面図。
【符号の説明】
1 圧電性セラミック基板
2 ノズルプレート
3 ノズル
4 インク流路
5 側壁
6 カバープレート
7 インク供給部(マニホールド)
8 インク導入口
9,11 金属電極
10 浅溝
14 導電層のパターン
15 導線
16 接着剤等
Claims (3)
- インク供給源からインクを導入し、複数のインク流路にインクを分配充填するインク導入口を有し、前記インク流路が圧電性セラミックに溝として設けられ、前記溝がインク噴射側から順に、深さが略一定の部分、深さが徐々に浅くなる部分及び浅い部分からなり、インク導入口が浅い部分の溝に連通していることを特徴とするインクジェットヘッド。
- インク供給源からインクを導入し、複数のインク流路にインクを分配充填するインク導入口を有し溝がインク噴射側から浅溝に至るまで徐々に浅くなり、インク導入口は該徐々に浅くなるインク流路の浅溝近傍に設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 前記溝が圧力波の振動を規制する部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
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