JP3666035B2 - 火力発電プラント自律適応制御システム - Google Patents

火力発電プラント自律適応制御システム Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、火力発電プラントの制御システムに係り、特に、種々の運転制限条件を満足しつつ、かつ短時間でプラントを起動させるのに好適な起動スケジュールを作成するための火力発電プラントの制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電プラントを急速起動しようとする場合、問題となるのが多くの運転制限条件と入出力間の非線形特性と時間遅れの存在である。即ち、作成される起動スケジュールは燃料流量や給水流量等の操作量に関しては勿論のこと、機器に発生する熱応力やボイラ排出NOxなど多くのプロセス状態値は運転制限条件を満たすものでなければならない。また、タービン昇速パターンや負荷上昇パターン即ち起動スケジュールを規定する操作量であるタービン昇速率や負荷上昇率と上記プロセス状態値の間には大きな非線形性と時間遅れがあるため、起動中に単なるフィードバック制御では高精度に運転制限条件を満足しながら急速な起動を実現することが不可能であった。このようなことから、従来の第1の方式では、特開昭63-94009号公報に記載のように、制御システムにプラントの全系動特性モデルを内蔵させ、実際のプラント起動前に、これを用いた起動シミュレーションの反復による起動特性予測により起動スケジュールの最適化を図っていた。即ち、テ−ブル情報や物理式として上記非線形性をモデル化し、起動スケジュールの作成に用いていた。また、従来の第2の方式としては、特開平3−164804 号公報に記載のように、実際の運転結果に基づいて起動特性を評価し、この評価結果からファジィ推論により起動スケジュールの修正量を算出する手段を有し、起動の度に得られる修正量をニューラルネットワークに学習させると共に、運転目標をニューラルネットワークに入力したときにニューラルネットワークから出力される値をもって前回起動時のスケジュールを修正することにより起動スケジュールの最適化を図っていた。即ち、制御システムにプラント全系の動特性モデルを持つことなく、ファジィ推論により専門家の持つ定性的知識とニューラルネットワークの学習能力を活用して起動スケジュールを作成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術によると、次の点が問題となる。
【0004】
(1) 従来の第1の方式によると、起動特性予測に用いる全系動特性モデルは、プラントを取り巻く気温,湿度,水温や起動前のプラント機器の温度状態などの運用条件が考慮されたものにすることが必要であり、これを作成するのに多大な時間を要し、しかも対象プラント毎に作成しなければならないこと。さらに、ボイラにおける伝熱や脱硝装置における脱硝反応などの不確定要素が多く、動特性予測精度に限界があること。また、従来の第2の方式においては、上記運用条件の変動や不確定要素も勘案してファジィ推論用知識ベースを構築することは、その因果関係の複雑さゆえに困難であり、多大な時間を要するだけでなく知識ベースの信頼性が問題となる。
【0005】
(2) 従来の第1の方式によると、プラントの全系動特性モデルを用いて実用時間内に最適起動スケジュールを求めるためには、演算処理能力が高く、メモリ容量の大きな高性能計算機システムを必要とすること。
【0006】
(3) 起動前のプラント初期状態や気温等の運用条件が異なると、過去に作成した起動スケジュールを活用することが困難で、その都度、最適解を求めなければならないこと。即ち、制御システムは上記運転条件の変化に対して適応能力がないため、起動の度に上記高性能計算機のフル稼動が必要となること。また、従来の第2の方式においては、上述したように、運用条件の変動や不確定要素も勘案してファジィ推論用知識ベースを構築することは困難であるので、従来の第1の方式と同様に運転条件の変化に対して適応能力がない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて為された発明であって、その目的は、
(1) 発電プラントの複雑大規模な全系動特性モデルを使用することなく運転制限要因を監視評価できること。即ち、運転制限要因を監視するための必要最小限の動特性モデルとすること、
(2) 初回起動時から最適起動スケジュールを求めることなく、実際の起動を繰り返す過程で起動スケジュールを最適化できること、
(3) プラント初期状態や気温等の運用条件が異なっても、過去に作成した起動スケジュールが適応的に活用できること、
が可能な火力発電プラント自律適応制御システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る火力発電プラント自律適応性御システムは、蒸気を発生させるためのボイラと、該ボイラにより発生された蒸気により駆動される蒸気タービンとを有する火力発電プラントの制御システムであっては、下記の手段を具備することを特徴とする。
【0009】
(1) 前記ボイラの点火から起動完了までの起動スケジュールを、前記火力発電プラントの起動前における温度状態に基づいて作成する基本スケジュール作成手段、
(2) 前記火力発電プラントの起動過程における所定の運転制限要因を監視する運転制限要因監視手段、
(3) 該運転制限要因監視手段により求められた運転制限要因の運転制限条件に対する余裕値を評価する余裕値評価手段、
(4) 該余裕値評価手段により得られた余裕値に基づいて、前記起動スケジュールの修正量をファジィ推論を用いて算出するスケジュール修正量算出手段と、
(5) 前記火力発電プラントの過去の起動スケジュールと運用条件とをニューラルネットワークに入力値として与えたとき、出力値として前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量が得られるように、該入出力の対応関係を記憶する適応知識修得手段、
(6) 前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量に基づいて作成された第1の起動スケジュールと、前記適応知識修得手段により得られたスケジュール修正量に基づいて作成された第2の起動スケジュールとを用いて実際の起動スケジュールを作成すると共に、該実際の起動スケジュールを作成する際の前記第1及び第2の起動スケジュールの採用比率を規定する自律係数λを、起動を繰り返すにつれて大きくすることによって、前記第2の起動スケジュールの採用比率を拡大させる自律性管理手段、
(7) 該自律性管理手段によって作成された起動スケジュールに従って前記火力発電プラントを起動制御するスケジュール実行制御手段。
【0010】
また、上記スケジュール修正量算出手段は、前記余裕値評価手段により得られた余裕値の大きさに対応した前記起動スケジュールのスケジュール修正量を規定する複数のファジィルールを記憶する知識ベースから、該ファジィルールを取り込んでスケジュール修正量を算出するものであってもよい。
【0011】
更に、上記(1)〜(7)に、前記適応知識修得手段におけるニューラルネットワークの内部接続状態を決定することにより前記入出力対応関係を学習する学習管理手段を付加しても構わない。
【0012】
ガスタービンと、該ガスタービンの排ガスを用いて蒸気を発生させるための排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで発生した蒸気により駆動される蒸気タービンとを有するコンバインドサイクル発電プラントの制御システムであっても、上記(1)〜(7)の手段もしくは学習管理手段を設けることによって本発明の目的を達成することができる。
【0013】
また、前記所定の運転制限要因は、前記ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダの応力,前記蒸気タービンの応力,前記ボイラから排出されるNOxのうち、少なくとも1つ以上であってもよいし、コンバインドサイクル発電プラントにおいては、前記排熱回収ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダの応力,前記蒸気タービンの応力,前記排熱回収ボイラから排出されるNOxのうち、少なくとも1つ以上であってもよい。
【0014】
更に、前記コンバインドサイクル発電プラントにおける起動スケジュールは、前記ガスタービンの起動スケジュールと前記蒸気タービンの起動スケジュールとからなり、かつ前記ガスタービンの起動スケジュールは、該起動スケジュールを規定する所定のパラメータにより構成され、該所定のパラメータは、昇速率,定格速度保持時間,初負荷,初負荷保持時間,負荷上昇率,負荷保持時間のうち少なくとも1つ以上であり、前記蒸気タービンの起動スケジュールは、該起動スケジュールを規定する所定のパラメータにより構成され、該所定のパラメータは、高圧タービンバイパス弁操作速度,中圧タービンバイパス弁操作速度,低圧タービンバイパス弁操作速度,高圧加減弁操作速度,中圧加減弁操作速度,低圧加減弁操作速度のうち少なくとも1つ以上であってもよい。
【0015】
前記所定の運転制限要因は、前記排熱回収ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダ応力,前記蒸気タービンの応力,前記排熱回収ボイラから排出されるNOxとし、前記余裕値評価手段は、前記排熱回収ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダ応力と前記蒸気タービン応力に対しては前記火力発電プラントの起動過程を複数区間に分割した各区間毎に前記運転制限値に対する最小余裕値を求め、前記排熱回収ボイラから排出されるNOxに対しては、瞬時値と移動平均値を求めて前記火力発電プラントの起動過程を複数区間に分割した各区間毎に前記運転制限値に対する最小余裕値を求めるものであってもよい。
【0016】
更にまた、前記スケジュール修正量算出手段は、前記余裕値評価手段から得られる排熱回収ボイラ過熱器出口蒸気ヘッダ応力の最小余裕値及び蒸気タービン応力の最小余裕値に基づく蒸気タービン主計画(STPS)用ファジィ推論と、ガスタービン広域調整(GTGT)用ファジィ推論と、該排熱回収ボイラ排出NOxの最小余裕値に基づくガスタービン主計画(GTPS)用ファジィ推論と蒸気タービン局部調整(STLT)用ファジィ推論を行い、前記STPSは前記STLTと比較して、より広範囲のスケジュールパラメータを修正対象とし、前記GTPSは前記GTGTと比較して、より緻密な修正を行い、前記GTGTは前記GTPSと比較して、より大局的な修正を行うものであってもよい。
【0017】
更にまた、前記スケジュール修正量算出手段は、前記STPS用,STLT用,GTPS用,GTGT用の各ファジィ推論より得られた同一スケジュールパラメータに対する複数の修正量の中から、優先値決定手段により昇速率,負荷変化率,弁操作速度に関するパラメータは低値を選択し、速度保持時間,負荷保持時間に関するパラメータは高値を選択するものであってもよい。
【0018】
更にまた、前記適応知識修得手段にて使用するニューラルネットワークは、信号変換機能を有するユニットを複数個集めて少なくとも入力層と出力層からなる多層構造を成し、前層ユニットの出力部と次層ユニットの入力部との接続部に設けられた内部接続強度を設定可能とし、入力層には前記起動スケジュールパラメータと運用条件に対応した数のユニットが配置され、出力層には該起動スケジュールパラメータに対応した数のユニットが配置され、入力層へ入力された信号は前記学習管理手段により予め設定され該内部接続強度に従って変換され出力層から出力されるものであってもよい。
【0019】
更にまた、前記学習管理手段は、前記火力発電プラントの起動が繰り返される度に前記スケジュール修正量算出手段より得られる新たな修正量を累積計算するための累積修正量算出手段と、該累積修正量算出手段より得られた累積修正量を格納するための累積修正量格納手段と、過去における実際の起動に適用した起動スケジュールを格納するためのスケジュール格納手段と、過去における実際の起動時の運用条件を格納するための運用条件格納手段と、前記スケジュール格納手段と前記運用条件格納手段からそれぞれ該過去の起動スケジュールと運用条件を取り出し、これを前記適応知識修得手段における前記ニューラルネットワークの入力部に入力したときに出力部から得られる出力値が、前記累積修正量格納手段に格納された累積修正量と一致するように該ニューラルネットワークの該内部接続強度を決定するための学習手段と、を有するものであってもよい。
【0020】
更にまた、前記運用条件格納手段に格納する運用条件は、前記火力発電プラントの停止期間,プラントの機器温度,圧力,復水器冷却用水温,大気の温度,湿度,プラント運転制限条件のうち少なくとも1つ以上であってもよい。
【0021】
更にまた、前記自律性管理手段は、前記スケジュール修正量算出手段から得られる修正量により定まる起動スケジュールX1 を第1の起動スケジュールとし、初回起動時スケジュールX0に前記自律係数λを掛けて得られた値λX0と前記第1の起動スケジュールX1に該自律係数の補数(1−λ)を掛けて得られた値(1−λ)X1とを加算して得られる起動スケジュールXINを該ニューラルネットワークに前記運用条件と共に入力したとき出力部から得られる前記修正量ΔXOUT と前記初回起動時スケジュールX0を加算して得られる起動スケジュールX2を第2の起動スケジュールとしたとき、前記第1の起動スケジュールX1 に前記自律係数の補数(1−λ)を掛けて得られた値(1−λ)X1 と前記第2の起動スケジュールX2に前記自律係数λを掛けて得られた値λX2を加算して得られた起動スケジュールXR をもって実際の起動スケジュールとして採用し、前記スケジュール実行制御手段に転送するものであってもよい。
【0022】
更にまた、前記自律性管理手段は、前記自律係数λを可変とするための自律係数発生手段を有し、初回起動時はλ=0とし、起動回数iもしくは前記スケジュール修正量算出手段により得られる該スケジュール修正量に対応して、起動回数を重ねるにつれて0≦λ≦1の範囲でλを大きくしていくものであってもよい。更にまた、前記運転制限要因は、少なくとも前記蒸気タービンのロータとケーシングの伸び差,前記排熱回収ボイラのドラム等に発生する応力,前記排熱回収ボイラから排出されるSOまたはCOであってもよい。
【0023】
更にまた、上記の構成を備える火力発電プラント自律適応制御システムを、ガス化複合サイクル発電プラント,常圧及び加圧流動層ボイラ発電プラントの起動制御システムに用いてもよい。
【0024】
更にまた、本発明に係る火力発電プラント自律適応制御システムにおける起動スケジュール作成の該一連の手段を、プラント運転訓練用シミュレータにおける起動スケジュール作成もしくは修正のためのガイダンス提示手段として用いてもよい。
【0025】
更にまた、本発明に係る火力発電プラント自律適応制御システムに、前記実際の起動スケジュールを表示する手段を設けてもよい。
【0026】
【作用】
本発明によれば、前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量に基づいて作成された第1の起動スケジュールと、前記適応知識修得手段により得られたスケジュール修正量に基づいて作成された第2の起動スケジュールとを用いて実際の起動スケジュールを作成すると共に、該実際の起動スケジュールを作成する際の前記第1及び第2の起動スケジュールの採用比率を規定する自律係数λを、起動を繰り返すにつれて大きくすることによって、前記第2の起動スケジュールの採用比率を拡大させる自律性管理手段を備えているので、実際の起動スケジュールを決定する際に、起動を繰り返すに連れてファジイ推論からの結論よりも、前記適応知識修得手段により得られたニューラルネットワークからの結論に依存する度合を強められることになり、プラントの運用条件の変化に対応した好適な起動スケジュールを作成することができる。
【0027】
即ち、上記適応知識修得手段は、プラント起動毎にスケジュール及びプラントの運用条件と、前記スケジュール修正量決定手段により得られた修正量との対応関係が記憶されるニューラルネットワークを有しているので、実際の起動スケジュールを作成する際に、前記ファジィ推論によるスケジュール修正量決定手段からの修正量により作成される第1のスケジュールと、前記適応知識修得手段からの修正量により作成される第2のスケジュールの採用比率(自律係数λ)を、起動を繰り返すに連れて後者の比率を大きくすれば、実際の起動スケジュールは、プラントの運用条件に対応して作成された第2のスケジュールの割合が高くなり、プラントの起動回数が多くなる程プラントの運用条件の変化に対応した好適な起動スケジュールを作成することが可能となる。
【0028】
また、上述した本発明の各手段(1)〜(7)及び知識ベース並びに学習管理手段の機能について以下に説明する。
【0029】
(1) 基本スケジュール作成手段では、プラントの温度状態と比較的相関性が高い停止期間に着目して、停止期間別にテーブル情報として予め準備された複数のスケジュールの中から、中央給電指令所から指令された起動時刻に対応して該当するスケジュールを選択し、これをもって基本スケジュールとする。これにより、必ずしも最適ではないがプラントを安全に起動できるスケジュールが作成される。
【0030】
(2) 運転制限要因監視手段では、上記スケジュール実行制御手段によりプラントが起動される過程で、直接計測が可能なプロセス状態については計測器から得られる信号により監視し、直接計測が困難なプロセス状態については計測可能なプロセス状態を動特性モデルに入力することにより運転制限要因の挙動を推定監視する。
【0031】
(3) 余裕値評価手段では、上記運転制限要因監視手段により得られる運転制限要因について制限値に対する余裕値を全起動過程において評価する。
【0032】
(4) スケジュール修正量算出手段では、上記余裕値評価手段で得られた余裕値の大きさに応じてスケジュールの修正量を算出する。このとき、後述する知識ベースを用いてファジィ推論により算出する。
【0033】
(5) 適応知識修得手段では、ニューラルネットワークを用いて適応知識を修得する。ここで、適応知識とは単に前記ファジィルールで表されたスケジュール修正方策だけでなく、プラント運用条件の変化にも対処できる適応力をもつ知識である。この知識を獲得するためにニューラルネットワークには、プラント起動毎にスケジュール及びプラント運用条件と、前記スケジュール修正量決定手段により得られた修正量との対応関係が記憶される。
【0034】
(6) 自律性管理手段では、実際の起動スケジュールを決定する際に、起動を繰り返すに連れてファジイ推論からの結論よりも、前記適応知識を修得する能力があるニューラルネットワークからの結論に依存する度合を強めてゆく働きをする。即ち、前記ファジィ推論によるスケジュール修正量決定手段からの修正量により作成されるスケジュールと前記適応知識修得手段からの修正量により作成されるスケジュールの採用比率(自律係数λ)を可変とし、起動を繰り返すに連れて後者の比率を拡大させることにより前記運用条件の変化に対する適応能力と自律性を高める働きをする。
【0035】
(7) スケジュール実行制御手段では、後述の自律性管理手段により作成される起動スケジュールに従って、タービン昇速制御,負荷上昇制御,蒸気圧力制御などプラント起動に必要なプロセス状態の制御を実施する。
【0036】
また、知識ベースは、上記余裕値評価手段で得られた余裕値との因果関係においてスケジュール修正方策を定めた複数のルールの集合体であり、各ルールは余裕値の大きさに応じたスケジュールの修正方法に関する専門家の知見を計算機で処理可能な表現にした断片的知識として機能する。
【0037】
更に、学習管理手段では、上記適応知識修得手段に対して上記対応関係を学習させる。そのために、上記プラント起動毎のスケジュール及びプラント運用条件と、前記スケジュール修正量決定手段により得られた修正量との対応関係を学習サンプルとしてニューラルネットワークに順次提示し、学習させる。即ち、本学習管理手段は、ニューラルネットワークに前者を入力したときに後者が出力されるようにニューラルネットワークの内部接続状態を決定する働きをする。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0039】
図1は、本発明の火力発電プラント自律適応制御システム1000の基本構成を示す。本システムは、中央給電指令所2000からの起動指令である起動時刻TRi(iは起動次回を示し、例えばi=1は初回起動を示す)を受けて作動し、システム内のスケジュール実行制御手段300により火力発電プラント3000が実際に起動される。
【0040】
本システム1000は、基本スケジュール作成手段100,スケジュール修正手段150,スケジュール実行制御手段300,運転制限要因監視手段400,余裕値評価手段500,スケジュール修正量算出手段600,知識ベース700,修正量格納手段650,適応知識修得手段800,学習管理手段900,自律性管理手段200より構成されている。
【0041】
基本スケジュール作成手段100では、テーブル情報として停止期間別に予め準備された複数のスケジュールの中から、中央給電指令所から指令された起動時刻TRiに対応して該当するスケジュールを選択し、これをもって基本スケジュールX0iとする。ここで、Xはスケジュールを規定する複数のパラメータ値からなるベクトル量であり、詳細については後述する。これにより、最適ではないがプラント起動上安全かつ確実なスケジュールが作成される。
【0042】
スケジュール修正手段150では、後述のファジィ推論を用いたスケジュール修正量算出手段600より得られ、修正量格納手段650に格納されている修正量ΔXi-1 と、後述の学習管理手段900に記憶された前回の起動スケジュールXi-1を用いて新たなスケジュールXiを作成する。ここで、初回起動時(i=1)には、ΔX0=0,X0=X01である。
【0043】
スケジュール実行制御手段300では、後述の自律性管理手段200により作成される起動スケジュールXRiに従って、火力発電プラント3000におけるタービン速度,負荷,蒸気圧力など起動に伴うプロセス状態の制御を実施する。
【0044】
運転制限要因監視手段400では、上記スケジュール実行制御手段300によりプラントが起動される過程で、直接計測が困難なプロセス状態については計測可能なプロセス状態を動特性モデルに入力することにより運転制限要因の挙動を推定監視する。また、直接計測が可能なプロセス状態については計測器から得られる信号により監視する。ここで監視の対象とする運転制限要因については、後に別途具体的に述べる。
【0045】
余裕値評価手段500では、上記運転制限要因監視手段400により得られる運転制限要因について制限値に対する余裕値を全起動過程において評価する。この余裕値の定義についても後に具体的に示す。
【0046】
スケジュール修正量算出手段600では、上記余裕値評価手段500で得られた余裕値の大きさに応じてスケジュールの修正量ΔXi を算出する。このとき、次に述べる知識ベース700を用いてファジィ推論により算出する。
【0047】
知識ベース700は、上記余裕値評価手段500で得られた余裕値との因果関係においてスケジュール修正方策を定めた複数のルールの集合体であり、各ルールは余裕値の大きさに応じたスケジュールの修正方法について専門家の知見を計算機で処理可能な表現にした断片的知識として機能する。
【0048】
修正量格納手段650では、上記スケジュール修正量算出手段600より得られる修正量ΔX1〜ΔXiを過去のプラント起動毎に対応させて格納しておく。
【0049】
適応知識修得手段800では、ニューラルネットワークを用いて適応知識を修得する。ここで、適応知識とは単に前記ファジィルールで表されたスケジュール修正方策だけでなく、プラント運用条件の変化にも対処できる適応力をもつ知識である。この知識を獲得するためにニューラルネットワークには、プラント起動毎にスケジュール及びプラント運用条件と、前記スケジュール修正量算出手段600により得られた修正量ΔX1〜ΔXiとの対応関係が記憶される。ここで、プラント運用条件として、本発明の実施例ではプラントの起動時温度状態に最も影響する停止期間TSi(前回停止時刻と指令起動時刻TRiとの経過時間を意味する)を用いる。
【0050】
学習管理手段900では、上記適応知識修得手段800に対して上記対応関係を学習させる。そのために、上記プラント起動毎のスケジュールXRi及びプラント運用条件である停止期間TSiと、前記スケジュール修正量算出手段600により得られている修正量ΔXi の累積値との対応関係を学習サンプルとして順次提示し、学習させる。即ち、本学習管理手段900は、適応知識修得手段800として使用するニューラルネットワークの入力層にXRk(k=1〜i−1)とTSk (k=1〜i−1)を入力したときに出力層からの出力値ΔXOUTkがΔXi の累積修正量ΔXQk(k=1〜i−1)に一致するようにニューラルネットワーク内の接続状態を決定する働きをする。上記累積修正量ΔXQkに関しては別途具体的に後述する。
【0051】
自律性管理手段200では、実際の起動スケジュールを決定する際に、起動を繰り返すに連れてファジイ推論からの結論ΔXi よりもニューラルネットワークからの結論ΔXOUTiに依存する度合を強めてゆく働きをする。即ち、前記ファジィ推論によるスケジュール修正量算出手段600から得られる修正量により作成されるスケジュールと前記適応知識修得手段800から得られる修正量により作成されるスケジュールの採用比率を自律係数λで表し、これを可変とし、起動を繰り返すに連れて後者の比率を大きくすることにより前記運用条件の変化に対する適応能力と自律性を高める働きをする。上記の自律係数λに関しては別途具体的に説明する。
【0052】
以上、本発明の概要を説明したが、以下、本発明の適用対象である火力発電プラントとして、ガスタービン,排熱回収ボイラ及び蒸気タービンから成る複合サイクル発電プラントを例に実施例を説明する。
【0053】
図2は、複合サイクル発電プラント3000の機器構成とスケジュール実行制御手段300との関係を示す。スケジュール実行制御手段300は、更にガスタービン制御システム330と蒸気タービン制御システム360から成る。ガスタービン設備3200では、燃料22を燃焼器23に注入し、燃焼用空気24をコンプレッサ20により圧入することにより燃焼で発生するエネルギーは、ガスタービン26で機械エネルギーに変換され、これにより、共通軸28に接続された発電機35を駆動し電気エネルギーに変換するとともに一部はコンプレッサ20の駆動力となる。起動時にはガスタービン制御システム330からの燃料調節弁開度指令311により燃料調節弁21を操作し、燃料流量を調節することでガスタービン設備3200及び共通軸28に接続された蒸気タービン設備3300と発電機35が昇速される。
【0054】
また、ガスタ−ビン26からの排ガス27は排熱回収ボイラ設備3100に導かれ、排ガス27の持つ熱エネルギーが回収される。このとき、排ガス27により排熱回収ボイラ設備3100の煙道14に配置された各種熱交換器内の流体が熱を受け蒸発し、過熱される。本実施例の排熱回収ボイラ設備3100では3つの圧力レベルを持つ蒸気系統から成り、それぞれから発生する蒸気が高圧蒸気341,中圧蒸気342,低圧蒸気343である。これらの蒸気が持つ熱エネルギーにより蒸気タービン設備3300において、それぞれ高圧タービン31,中圧タービン32,低圧タービン33が駆動され、共通軸28に接続された発電機35による発電の一翼を担う。
【0055】
起動時には、排熱回収ボイラ設備3100から発生する上記の高圧主蒸気341,中圧主蒸気342,低圧主蒸気343をそれぞれ高圧バイパス弁334,中圧バイパス弁335,低圧バイパス弁336を介してバイパスさせることにより個々の圧力を所定値に制御するとともに、高圧加減弁331,中圧加減弁332,低圧加減弁333を操作することにより高圧タービン31,中圧タービン32,低圧タービン33の出力上昇がなされる。従って、高圧バイパス蒸気344,中圧バイパス蒸気345,低圧バイパス蒸気346の流量は、それぞれのバイパス弁334,335,336の開度を大きくすれば増加し、加減弁331,332,333の開度を大きくすると蒸気タービンへの蒸気流入量が増加し、その分減少する。これらのバイパス弁への開度指令324,325,326及び加減弁への開度指令321,322,323はいずれも蒸気タービン制御システム360より出力される。また、プラントの起動中に中圧過熱蒸気1と高圧タービン排気2の温度偏差が所定値内に入ったとき中圧止弁337を開操作する。このときの操作信号327も蒸気タービン制御システム360より指令される。また、復水器34からの復水37は、低圧給水ポンプ16,中圧給水ポンプ17,高圧給水ポンプ18により、それぞれ低圧ドラム6,中圧ドラム7,高圧ドラム8の水位を所定値内に保つように、それぞれ低圧給水3,中圧給水4,高圧給水5として流量制御される。
【0056】
ここで、運転制限要因となるのは、高圧タービン31と中圧タービン32のロータに発生する応力と、高圧過熱器11と中圧過熱器12の出口にあるヘッダに発生する応力と、排熱回収ボイラ設備3100の煙道出口15から大気へのNOx排出量である。上記の各応力は、ガスタービン排ガス27から熱交換器のメタルへの伝熱,メタルから内部流体への伝熱,内部流体から着目部メタルへの伝熱という大きな時間遅れを伴う動的過程の結果として表れる。さらに、ロータについては遠心力,ヘッダについては蒸気圧力に対応した機械的応力が加算される。以下、特にことわらない場合は、これらを含めて単に応力と呼ぶ。また、ボイラからのNOx排出量もガスタービン自体のNOx排出特性と煙道中に設置された脱硝装置13の温度特性に大きく依存する。そのため、これらの運転制限要因を精度よく管理するには、上記各制御操作の協調性と整合性が必要となる。よって、既に述べたように、本発明の火力発電プラント自律適応制御システム1000では、これらの動的挙動を監視評価するための運転制限要因監視手段400と余裕値評価手段500を設けた。
【0057】
図3は、本発明の適用対象である複合サイクル発電プラントの起動過程と起動スケジュールパラメータの関係を示す。
【0058】
本図に示すように、ガスタービン関係のスケジュールパラメータとしては、昇速率(DN),定格速度保持時間(DTNL),初負荷(LI),初負荷保持時間(DTLI),第1負荷上昇率(DL1),負荷保持時間(DTHL),第2負荷上昇率(DL2),第3負荷上昇率(DL3)である。これらにより規定される起動スケジュールを制御目標として、操作端である燃料調節弁21の開度を調整することによりガスタービンが起動される。また、蒸気タービン関係の操作端としては既に述べたように、高圧バイパス弁(HPBV)334,中圧バイパス弁(IPBV)335,低圧バイパス弁(LPBV)336,高圧加減弁(HPCV)331,中圧加減弁(IPCV)332,低圧加減弁(LPCV)333,中圧止弁(ISHV)337があり、スケジュールパラメータとしての高圧バイパス弁操作速度 (DAHBV),中圧バイパス弁操作速度(DAIBV),低圧バイパス弁操作速度 (DALBV),低圧バイパス弁操作待期時間(DTLBV),高圧加減弁第1操作速度(DAHCV1),高圧加減弁第2操作速度(DAHCV2),低圧加減弁操作速度 (DALCV)に従って制御される。これらのスケジュールパラメータ以外の制御目標及び操作タイミングは図示の通りである。ここで、蒸気条件としてのTMSは高圧主蒸気温度、PMSは高圧主蒸気圧力、PCRP は高圧タービン排気圧力、PISは中圧主蒸気圧力、PLSは低圧主蒸気圧力、ΔTは中圧過熱器蒸気温度と高圧タービン排気温度との偏差である。また、図中、各弁の%表示は開度を示す。
【0059】
次に、図4とこれに続く図を用いて制御システムの詳細構成と各手段について順を追って説明する。
【0060】
図4は、本発明の実施例である複合サイクル発電プラントを対象とした火力発電プラント自律適応制御システムの詳細構成を示す。
【0061】
本システムは、中央給電指令所2000からの起動指令である起動時刻TRi(iは起動次回を示し、例えばi=1は初回起動を示す)を受けて作動し、システム内のスケジュール実行制御手段300により複合サイクル発電プラント3000が実際に起動される。本システム1000は、基本スケジュール作成手段100,スケジュール修正手段150,スケジュール実行制御手段300,運転制限要因監視手段400,余裕値評価手段500,スケジュール修正量算出手段600,知識ベース700,修正量格納手段650,適応知識修得手段800,学習管理手段900,自律性管理手段200より構成されている。以下、上記各手段について順を追って説明する。
【0062】
図5は、基本スケジュール作成手段100における基本スケジュール作成方式を示す。ここでは、中央給電指令所2000からの起動時刻TRiが指令されると、まず、前回のプラント停止時刻TSTPiからの経過時間である停止期間TSiを、
【0063】
【数1】
Si=TRi−TSTPi …(1)
により求める。次に、テーブル情報として停止期間別に予め準備された複数のスケジュールの中から、上記停止期間TSiに対応して該当するスケジュールを選択し、これをもって基本スケジュールX0iとする。従って、X0iはスケジュールを規定する複数のパラメータ値からなるベクトル量である。
【0064】
スケジュール修正手段150では、後述のファジィ推論を用いたスケジュール修正量算出手段600より得られ、修正量格納手段650に格納されている修正量ΔXi-1 と、後述の学習管理手段900に記憶された前回の起動スケジュールXi-1を用いて新たなスケジュールXi
【0065】
【数2】
i=Xi-1+ΔXi-1 …(2)
により作成する。ここで、初回起動時(i=1)には、ΔX0=0,X0=X01である。
【0066】
スケジュール実行制御手段300では、後述の自律性管理手段200により作成される起動スケジュールXRiに従って、複合サイクル発電プラント3000におけるタービン速度,負荷,蒸気圧力など起動に伴うプロセス状態の制御を前述の方法で実施する。
【0067】
運転制限要因監視手段400では、上記スケジュール実行制御手段300によりプラントが起動される過程で、直接計測が困難なプロセス状態である蒸気タービン応力及びボイラ応力については計測可能なプロセス状態を動特性モデルに入力することにより動的挙動を推定監視する。また、直接計測が可能なプロセス状態である排熱回収ボイラからの排出NOxについては計測器から得られる信号により監視する。
【0068】
図6は、運転制限要因監視手段400における蒸気タービン応力の監視方式を示すもので、運転制限要因として着目監視すべき個所である高圧タービン及び中圧タービンのロータ表面とロータボアに発生する応力に関する動特性モデルとして構成した。即ち、タービンの入口蒸気条件と速度及び負荷からタービン内部の蒸気条件(温度,圧力)及びロータ表面の熱伝達率を推定し、ロータメタル内部の非定常温度分布を求め、ロータの表面とボアの熱応力を算出するとともに、遠心応力を加算して総合応力を求める方式とした。また、排熱回収ボイラに発生する応力についても同様の方法で監視する。即ち、運転制限要因として着目監視すべき個所である高圧過熱器出口ヘッダと中圧過熱器出口ヘッダの内部熱伝達率を蒸気条件(温度,圧力)と流量より推定し、上記蒸気タービンの場合と同様にメタル内部の非定常温度分布を求めて、ヘッダメタルの内部及び外面の熱応力を算出するとともに、蒸気圧力による応力を加算して総合応力を求める方式とした。
次に、上記運転制限要因監視手段400により得られた運転制限要因の制限値に対する余裕値を評価するための余裕値評価手段500について説明する。
【0069】
図7は、蒸気タービン応力の制限値に対する余裕値評価方式を示す。まず、タービン起動開始から起動完了後の所定時間経過するまでの時間帯(t1〜t6)を複数区間に分割(本例では5分割の場合を示す)し、第i区間における最小応力余裕値m(i)を求める。ここで、応力余裕値mは、制限値をSL ,上記運転制限要因監視手段400により得られた値をSとし、次式で定義する。
【0070】
【数3】
m=SL−S …(3)
なお、応力値が正の場合は引っ張り応力,負の場合は圧縮応力を意味する。既に述べたように、実際には応力着目個所が高圧タービンのロータ表面とボア及び中圧タービンのロータ表面とボアの4個所であるので、求めるべき最小応力余裕値は区間毎に4つあり、これらをそれぞれ下記とする。
【0071】
HS(i):区間iにおける高圧タービンロータ表面最小応力余裕値
HB(i):区間iにおける高圧タービンロータボア最小応力余裕値
IS(i):区間iにおける中圧タービンロータ表面最小応力余裕値
IB(i):区間iにおける中圧タービンロータボア最小応力余裕値
排熱ボイラ応力の余裕値評価方式も、基本的には上記タービン応力の余裕値評価方式と同様である。但し、着目すべき個所は高圧過熱器出口と中圧過熱器出口のヘッダ外面の2個所である。これは、ヘッダの場合、外面に発生する応力が内面のそれと比較して大きいためである。従って、求めるべき最小応力余裕値は区間毎に2つあり、それぞれ下記とする。
【0072】
HHD(i):区間iにおける高圧過熱器ヘッダ外面最小応力余裕値
IHD(i):区間iにおける中圧過熱器ヘッダ外面最小応力余裕値
図8は、排出NOx特性の制限値に対する余裕値評価方式を示す。本方式もタービン応力の場合と同様に、まず、ガスタービン起動開始からプラント起動完了後の所定時間経過するまでの時間帯(t1〜t7)を複数区間に分割(本例では6分割の場合を示す)し、第i区間における最小排出NOx瞬時値余裕値mPS(i)と最小排出NOx平均値余裕値mPA(i)を求める。ここで、排出NOx瞬時値余裕値mPS及び排出NOx平均値余裕値mPAは、それぞれの制限値をPSL,PAL,計測値をPS,PAとすると、次式で定義する。
【0073】
【数4】
PS=PSL−PS …(4)
【0074】
【数5】
PA=PAL−PA …(5)
図9は、余裕値評価手段500から得られた評価結果であるmHS,mHB,mIS,mIB,mHHD,mIHD,mPS,mPAを受けて、スケジュール修正量算出手段600におけるスケジュール修正量算出方式の全体概要を示す。スケジュール修正量算出手段600では、上記余裕値評価手段500で得られた余裕値の大きさに応じてスケジュールの修正量ΔXi を算出する。本スケジュール修正量算出手段600は、さらに蒸気タービン応力調整手段610,ボイラ応力調整手段620,排出NOx調整手段630,優先値決定手段640から構成されている。上記各調整手段は、それぞれ低値選択手段611,621,631を有し、低値選択手段611は余裕値mHS,mHB,mIS,mIBの中から、低値選択手段621は余裕値mHHD.mIHDの中から、低値選択手段631は余裕値mPS,mPAの中から、それぞれ最小余裕値を選択し、これらをそれぞれmT,mB,mPとする。即ち、mT,mB,mPは次式により定義する。
【0075】
【数6】
T=Min(−mHS,mHB,−mIS,mIB) …(6)
【0076】
【数7】
B=Min(mHHD,mIHD) …(7)
【0077】
【数8】
P=Min(mPS,mPA) …(8)
次に、上記mT,mB,mPを用いてファジィ推論612,613,622,623,632,633によりスケジュール修正量ΔXT(i),ΔXB(i),ΔXP(i)が算出される。ここで、添字のT,B,Pは、それぞれ修正量が蒸気タービン応力,ボイラ応力,排出NOxの余裕値に応じて決定されることを示している。
【0078】
図10は、このときファジィルールで使用するメンバーシップ関数を示す。図10(1)に示すメンバーシップ関数は、前記タービン応力余裕値mT 及びボイラ応力余裕値mB から蒸気系のスケジュールを修正することにより応力を調整するための蒸気タービン主計画(STPS)用としての修正係数kS と、ガスタービン系のスケジュールを修正することにより応力を調整するためのガスタービン広域調整(GTGT)用としてのスケジュール修正係数kG を規定したものである。また、図10(2)に示すメンバーシップ関数は、前記排出NOx余裕値mP からガスタービン系のスケジュールを修正することにより排出NOxを調整するためのガスタービン主計画(GTPS)用としての修正係数kG と、蒸気系のスケジュールを修正することにより排出NOxを調整するための蒸気タービン局部調整(STLT)用としてのスケジュール修正係数kS を規定したものである。さらに、具体的に説明すると、図10(1)(a)は、応力評価用としてファジィルールの条件部で用いるメンバーシップ関数を示し、4つの関数(NS,ZO,PS,PB)より成り、(b)は結論部で用いるスケジュール修正係数決定用メンバーシップ関数を示し、5つの関数(NB,NS,ZO,PS,PB)より成る。ここで、各メンバーシップ関数の意味付けは、NB:Negative Big,NS:NegativeSmall ,ZO:Zero,PS:Positive Small,PB:Positive Bigである。図10(2)(a)は、排出NOx評価用としてファジィルールの条件部で用いるメンバーシップ関数を示し、4つの関数(NS,ZO,PS,PB)より成り、(b)は結論部で用いるスケジュール修正係数決定用メンバーシップ関数を示し、5つの関数(NB,NS,ZO,PS,PB)より成る。ここで、各メンバーシップ関数の意味付けは、上記図9(1)の場合と同じである。
【0079】
次に、上記メンバーシップ関数を用いたファジィルールについて説明する。
【0080】
図11は、蒸気タービン主計画(STPS)で用いるタービン応力調整ルールを示す。ここでは、4つの修正用スケジュールパラメータとして高圧バイパス弁操作速度(DAHBV),中圧バイパス弁操作速度(DAIBV),高圧加減弁第1操作速度(DAHCV1),高圧加減弁第2操作速度(DAHCV2)を、図7で示した5つの着目区間のうち第2,3,4,5区間におけるタービン応力余裕値mT との関係において修正するためのファジィルールを示す。即ち、第2と第3の区間における余裕値mT(2)とmT(3)の関係においてDAHCV1とDAHCV2の修正量を定義したルールテーブルと、第3と第4の区間における余裕値mT(3)とmT(4)の関係においてDAHCV1とDAHCV2の修正量を定義したルールテーブルと、第4と第5の区間における余裕値mT(4)とmT(5)の関係においてDAHBV,DAIBV,DAHCV1及びDAHCV2の修正量を定義したルールテーブルから成る。但し、ルールテーブルの空白部は、上記各応力余裕値とスケジュールパラメータの因果関係が小さいか殆ど無いことを意味する。
【0081】
図12は、ガスタービン広域調整(GTGT)で用いるタービン応力調整ルールを示す。ここでは、6つの修正用スケジュールパラメータとして昇速率(DN),初負荷保持時間(DTLI),第1負荷上昇率(DL1),負荷保持時間(DTHL),第2負荷上昇率(DL2),第3負荷上昇率(DL3)を、図7で示した5つの着目区間におけるタービン応力余裕値mT との関係において修正するためのファジィルールを示す。即ち、第1と第2の区間における余裕値mT(1)とmT(2)の関係においてDN,DTLI及びDL1 の修正量を定義したルールテーブルと、第2と第3の区間における余裕値mT(2)とmT(3)の関係においてDTLI,DL1,DTHL及びDL2 の修正量を定義したルールテーブルと、第3と第4の区間における余裕値mT(3)とmT(4)の関係においてDL1,DTHL,DL2及びDL3 の修正量を定義したルールテーブルと、第4と第5の区間における余裕値mT(4) と mT(5)の関係においてDTHL,DL2及びDL3 の修正量を定義したルールテーブルから成る。本ルールテーブルにおいても空白部は、上記各応力余裕値とスケジュールパラメータの因果関係が小さいか殆ど無いことを意味する。
【0082】
以上、図11,図12に示したファジィルールはボイラ応力余裕値に基づくSTPS用及びGTGT用としても共用する。
【0083】
図13は、ガスタービン主計画(GTPS)で用いる排出NOx調整ルールを示す。ここでは、8つの修正用スケジュールパラメータとして昇速率(DN),定格速度保持時間(DTNL),初負荷(LI),初負荷保持時間(DTLI),第1負荷上昇率(DL1),負荷保持時間(DTHL),第2負荷上昇率(DL2),第3負荷上昇率 (DL3)を、図8で示した6つの着目区間における排出NOx余裕値mPとの関係において修正するためのファジィルールを示す。
【0084】
即ち、第1と第2の区間における余裕値mP(1)とmP(2)の関係においてDN,DTNL,LI 及びDTLIの修正量を定義したルールテーブルと、第2と第3の区間における余裕値mP(2)とmP(3)の関係においてDTNL,LI,DTLI 及びDL1 の修正量を定義したルールテーブルと、第3と第4の区間における余裕値mP(3)とmP(4)の関係においてDTLI,DL1,DTHL,DL2及びDL3 の修正量を定義したルールテーブルと、第4と第5の区間における余裕値mP(4)とmP(5)の関係においてDL1,DTHL,DL2及びDL3 の修正量を定義したルールテーブルから成る。本ルールテーブルにおいても空白部は、上記各応力余裕値とスケジュールパラメータの因果関係が小さいか殆ど無いことを意味する。
【0085】
図14は、蒸気タービン局部調整(STLT)で用いる排出NOx調整ルールを示す。ここでは、3つの修正用スケジュールパラメータとして高圧バイパス弁操作速度(DAHBV),中圧バイパス弁操作速度(DAIBV),高圧加減弁第1操作速度(DAHCV1)を、図8で示した6つの着目区間のうち第1,2,3区間における排出NOx余裕値mP との関係において修正するためのファジィルールを示す。即ち、第1と第2の区間における余裕値mP(1)とmP(2)の関係においてDAHBV,DAIBV 及びDAHCV1の修正量を定義したルールテーブルと、第2と第3の区間における余裕値mP(2)とmP(3)の関係においてDAHBV,DAIBV及びDAHCV1の修正量を定義したルールテーブルから成る。
【0086】
以上述べたSTPSはSTLTと比較して、より広範囲のスケジュールパラメータを修正対象とし、GTPSはGTGTと比較して、より緻密な修正を行い、GTGTはGTPSと比較して、より大局的な修正を行う働きをする。
【0087】
図15は、ファジィ推論によるスケジュール修正量算出方式を示す。本図は、一例として、蒸気系スケジュール修正係数kS の算出について示す。この例では、或るスケジュールパラメータについて、4つのルールからの結論としてのメンバーシップ関数とメンバーシップ値がそれぞれ(NS,0.6),(ZO,0.8),(PS,0.4),(PB,0.2)が得られた場合を示す。総合評価値は、それぞれのメンバーシップ値で定まる台形部の重さW(i)と修正係数kS(i)の重心kSGで定義する。即ち、W(1)=0.168,W(2)=0.096,W(3)=0.096,W(4)=0.09であり、kS(1)=−0.2,kS(2)=0,kS(3)=0.15,kS(4)=0.35 であるから、kSGは次のように算出される。
【0088】
【数9】
Figure 0003666035
【0089】
従って、この起動スケジュールパラメータに対する修正量kSGは0.0273である。この結果を用いて、次式に従ってスケジュール修正量ΔXTiが算出される。
【0090】
【数10】
ΔXT=kSG(XMax−XMin) …(10)
ここで、XMax,XMinはXの上,下限値を示す。
【0091】
以上述べたような方式によると、前記STPS,GTGT,STPS,STLTのファジィ推論により同一スケジュールパラメータに対しても複数の修正量が算出される。そこで、全ての運転制限要因を確実に制限値内に抑えるために、図9に示す優先値決定手段640で最終的修正量ΔX(i)を決定する。即ち、昇速率,負荷変化率,弁操作速度に関するパラメータは図中の低値選択手段LVGにより、安全側の低値が選択される。また、速度保持時間,負荷保持時間に関するパラメータは高値選択手段HVGにより、安全側の高値が選択される。
【0092】
修正量格納手段650では、上記スケジュール修正量算出手段600より得られる修正量ΔX1〜ΔXiを過去のプラント起動毎に対応させて格納しておく。
【0093】
学習管理手段900では、ニューラルネットワークで構成された適応知識修得手段800に対して前記プラント起動毎のスケジュールXRk(k=1〜i−1)及びプラント運用条件である停止期間TSk(k=1〜i−1)と、スケジュール修正量ΔXi の累積値である累積修正量ΔXQk(k=1〜i−1)との対応関係を学習サンプルとして順次提示し、学習させる。
【0094】
図16は、ニューラルネットワークに提示する学習サンプルを示す。ここでn回目まで起動が完了しているとすると、教師データとしての累積修正量ΔXQiは次式で定義された値である。
【0095】
【数11】
Figure 0003666035
【0096】
即ち、ΔXQiは、起動が繰り返される度に得られる新たな修正量を累積修正量算出手段910にて、上記(11)式に従って累積計算されることにより得られる。また、この累積修正量ΔXQiは累積修正量格納手段920に格納される。
【0097】
本学習管理手段900は、ニューラルネットワークの入力層にXRk(k=1〜i−1)とTSk(k=1〜i−1)を入力したときに出力層からの出力値ΔXOUTk(k=1〜i−1)が累積修正量ΔXQk(k=1〜i−1)に一致するようにニューラルネットワーク内の接続状態を決定する働きをする。
【0098】
次に、ニューラルネットワークとその学習方式について説明する。
【0099】
このニューラルネットワークは、入力層,中間層,出力層の3層構造からなるもので、この基本構造に関しては、ザ エム アイ ティー プレス,ニューロコンピューティング ファンデーションズ オブ リサーチ,1988年,第318頁から362頁(The MIT Press, Neurocomputing Foundations of research, 1988, pp318−362)に詳しく述べられている。また、本論文では、或る入力信号パターンが入力層に与えられたとき、出力信号パターンが所望する信号パターン、即ち教師データと一致するように、両者の誤差に応じて中間層及び出力層の各ユニットへの入力部の接続強度を修正する学習アルゴリズム(バックプロパゲーションと称している)が示されている。本発明の実施例においても、ニューラルネットワークの構造及び学習アルゴリズムそのものは上記論文に示されたものを用いる。
【0100】
図17は、ニューラルネットワークの構造と入出変数の関係を示す。入力変数は起動スケジュールパラメータXと停止期間TS である。Xとしては、学習時には過去の起動スケジュールを格納してあるスケジュール格納手段950より読み出したXRk(k=1〜i−1)が、起動スケジュール作成時には後述の自律性管理手段200で決定されるスケジュールパラメータXINiが入力される。また、TSとしては、学習時には過去のプラント停止期間を格納してある停止期間格納手段940より読み出したTSk(k=1〜i−1)が、起動スケジュール作成時にはTSiが入力される。ニューラルネットワークにXINi が入力されたとき、学習により決定されている内部の接続強度により定まるΔXOUTiが出力変数として出力される。学習時には、ΔXOUTk(k=1〜i−1)がΔXQk(k=1〜i−1)に一致するように学習する。
【0101】
次に、自律性管理手段200について具体的に説明する。自律性管理手段200では、実際の起動スケジュールXRiを決定する際に、起動を繰り返すに連れてファジイ推論からの結論ΔXi よりもニューラルネットワークからの結論ΔXOUTiに依存する度合を強めてゆく働きをする。即ち、前記ファジィ推論によるスケジュール修正量算出手段600から得られる修正量ΔXi により作成されるスケジュールと前記適応知識修得手段800から得られる修正量ΔXOUTiにより作成されるスケジュールの採用比率である自律係数λを可変とし、起動を繰り返すに連れて後者の比率を拡大させることにより前記運用条件の変化に対する適応能力と自律性を高める働きをする。この自律係数λは自律係数発生手段210にて決定される。具体的には、次式で定義される起動スケジュールXRiが実際の起動に採用される。
【0102】
【数12】
Ri=λ(X0i+ΔXOUTi)+(1−λ)Xi …(12)
また、上式において、ニューラルネットワークからの出力であるΔXOUTiを得るための必要な入力XINiは、次式で定義される。
【0103】
【数13】
INi=λX0i+(1+λ)Xi …(13)
ここで、自律係数λは、0≦λ≦1とすると、λ=0のとき、XRi=Xi であり、λ=1のとき、XRi=X0i+ΔXOUTiとなる。即ち、前者はファジイ推論からの結論のみが採用され、ニューラルネットワークからの出力が利用されていない起動スケジュールである。後者は基本スケジュールをニューラルネットワークからの出力で補正しているため、前述のように運用条件の変化に対する適応能力を100%活用した起動スケジュールである。従って、λの値が大きくなるにつれ、本制御システムは自律性が高く成る。しかしながら、ニューラルネットワークが十分な起動経験を積む前に(学習による十分な適応能力をつける前に)この自律係数λを大きくすると、作成される起動スケジュールの最適性や高い信頼性は期待できなくなる。従って、この自律係数λを如何に選ぶかが重要となる。本実施例における自律性管理手段200では、下記の方式を適用する。
【0104】
図18は、自律性管理手段200における自律係数λを決定するための自律管理方式を示す。本実施例では、本図に示すように自律係数λの決め方により3方式の適用を可能としている。第1の方式は、本図(1)に示す飛躍成長型自律性管理方式であり、起動回数iが所定値iA に達するまではλ=0とし、ニューラルネットワークは唯ひたすら学習し、適応能力を高めておき、i≧iA でλ=1とすることで、一気に自律性を上げる方式である。第2の方式は、本図(2)に示す線形連続成長型自律性管理方式であり、i<iB ではλ=0とし、ニューラルネットワークは学習によりある程度適応能力を高めておき、iB≦i≦iCでは適応能力を高めながら徐々に一定速度で自律性を上げてゆき、i≧iC でλ=1とする方式である。第3の方式は、本図(3)に示す非線形連続成長型自律性管理方式であり、λをファジィ推論によるスケジュール修正量算出手段600から得られる修正量ΔXiの関数とする方式である。本方式は修正量ΔXiの減少に応じてλを上げてゆく方式である。λを定義する関数は具体的には、次式とする。
【0105】
【数14】
Figure 0003666035
【0106】
または、次式としても同様の機能を果たすことができる。
【0107】
【数15】
Figure 0003666035
【0108】
図19は、本発明の自律適応制御システムによる最適値収束性の改善効果を示す。本図(1)は、自律制御によらない場合、即ちファジィ推論のみにより起動スケジュールの最適化を図る場合であり、(2)は、自律適応制御による場合、即ちファジィ推論とニューラルネットワークを組み合わせることによりシステムに適応能力を持たせ、起動スケジュールの最適化を図る場合である。いずれも、プラントが起動を繰り返すにつれて初期のスケジュールから最適値に向けて収束してゆく様子を示すものである。しかし、(1)の場合は、前述のように運用条件の変化に対する適応能力がないため、非収束領域が存在し、収束限界以上の収束性は期待できない。一方、(2)の場合は、ニューラルネットワークが運用条件と起動スケジュールの因果性も含めてスケジュール修正方法を修得するという適応能力があるため、限り無く最適値に収束することができる。このことを、別の角度から評価すると次のようになる。
【0109】
図20は、本発明の自律適応制御システムによるプラントの起動特性の改善効果を示すもので、自律適応制御によらない場合と対比して示す。上記のように、自律適応制御によらない場合は非収束領域が存在するため、作成される起動スケジュールは幅を持つことになる。そのため、運転制限要因である応力や排出NOxも幅を持つことになる。従って、全てにおいて制限条件を満足するには、作成されるスケジュールは予め十分なマージンを持たせることが必要で、その分、起動時間が長くなってしまう。これに対して、自律適応制御による場合は、前述のように運用条件の変化にも柔軟に適応できるため、常に最適なスケジュールを作成できる。従って、運転制限条件に対しても精度良く満足できる起動スケジュールにより、必要最短時間の起動が可能となる。
【0110】
以上述べた本発明の実施例では、複合サイクル発電プラントを対象として具体的に説明したが、本発明はその他のプラント、例えば、ボイラ,蒸気タービン,発電機から成る通常の発電プラントや、石炭ガス化発電プラント,常圧あるいは加圧流動層ボイラ発電プラントにも適用可能なことは勿論である。また、使用燃料としても,石炭,石油,LNGなどを限定しないことも明らかである。
【0111】
また、本発明の実施例では、蒸気タービン及び排熱回収ボイラヘッダの応力と排出NOxを運転制限要因として扱ったが、適用プラントの特質に応じて、他の要因、例えば、蒸気タービンのロータとケーシングの伸び差,排熱回収ボイラのドラム等他部所の応力,排出SOxやCO等を考慮した方式とすることも可能である。また、応力を必ずしも動特性モデルとして推定しなくても、蒸気温度やメタル温度の変化率や変化幅などの間接的な制限値管理とすることも本発明の本質を変えることなく実施できることは明らかである。
【0112】
また、本発明の実施例では、運用条件としてプラントの停止期間のみを示したが、その外に、機器の温度,圧力,水温,大気の湿度,温度,気圧などプラント起動特性に係る種々の状態量を追加することも本発明の本質を基本原理を変えることなく実施できる。さらに、起動毎に運転制限条件を変更しながらプラントを運用する場合は、この運転制限条件も上記運用条件の一部として扱うことも本発明の基本原理を変えることなく実施できる。
【0113】
さらに、本発明の実施例では、修正の対象とする起動スケジュールパラメータをガスタービン関係で8個,蒸気タービン関係で4個としたが、必ずしもこれらに限定する必要はなく、図3に示した他のパラメータ,加減弁の開操作タイミング条件や蒸気圧力制御用設定値など、プラント起動パターンを規定するパラメータであれば本発明は基本原理を変えることなく実施できることは明らかである。なお、本発明の実施例では、中央給電指令所から指令される起動開始時刻を正確に守り、かつ最短時間の起動スケジュールを作成できるが、中央給電指令所から指令される起動完了時刻の代わりに、ガスタービン点火時刻,負荷併入時刻,目標負荷到達時刻などであっても、基準時刻をシフトするのみで本発明の原理を変えることなく実施できることは明らかである。
【0114】
【発明の効果】
本発明の第1の効果は、火力発電プラントの起動制御システムにおいて、前記従来方式では不可能であった機器寿命や排出NOxなど機器保護基準や環境規制値など複数の運転制限条件を同時に満足しながら起動時間を最短化する起動スケジュールの自動作成と実行を可能とすることにある。これにより、運転員の負担が大幅に軽減されるとともに、起動時間の短縮に伴うエネルギー損失も低減できるためプラント運用コストを大幅に低減することが可能となる。
【0115】
本発明の第2の効果は、火力発電プラントの起動制御システムにおいて、機器寿命や排出NOxなど機器保護基準や環境規制値など複数の運転制限条件を同時に満足しながら、中央給電指令所から指定される時刻通りに起動を完了できることにある。これにより、電力需要の変動に伴いプラントの頻繁な起動停止が必要となる電力系統への安定かつ正確な電力供給が可能となる。
【0116】
本発明の第3の効果は、火力発電プラントの起動制御システムにおいて、中央給電指令所より運転制限値が変更されたり、起動指令時刻が変更された場合にも、起動スケジュールの再作成とこれの実行が可能なことである。これにより、柔軟かつ安全なプラント運用及び電力系統運用が可能となる。
【0117】
本発明の第4の効果は、火力発電プラントの起動制御システムにおいて、運用条件の変動に対する適応能力を有するため、プラントの起動特性予測のための大規模複雑な動特性モデルを構築し、起動制御システムに内蔵する必要がないことである。このため、システムの設計,構築の時間を大幅に削減でき、計算機負荷の低減と起動スケジュール作成の高速化が可能となる。
【0118】
本発明の第5の効果は、火力発電プラントの起動制御システムにおいて、ファジィ推論とニューラルネットワークの特徴を活かして、運用条件の変動に対する適応能力を有する起動スケジュール最適化機能を実現したことにより、ファジィ推論で使用する知識ベースの簡素化が可能なことである。これにより、知識ベース構築に要する時間を大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の火力発電プラント自律適応制御システムの基本構成を示す。
【図2】本発明の適用対象である複合サイクル発電プラントの機器構成と起動スケジュール実行制御との関係を示す。
【図3】本発明の適用対象である複合サイクル発電プラントの起動過程と起動スケジュールパラメータの関係を示す。
【図4】本発明の実施例である複合サイクル発電プラントを対象とした火力発電プラント自律適応制御システムの詳細構成を示す。
【図5】本発明の実施例における基本スケジュール作成方式を示す。
【図6】本発明の実施例である複合サイクル発電プラントの運転制限要因としての蒸気タービン応力の監視方式を示す。
【図7】本発明の実施例である複合サイクル発電プラントの運転制限要因としての蒸気タービン応力の余裕値評価方式を示す。
【図8】本発明の実施例である複合サイクル発電プラントの運転制限要因としての排出NOxの余裕値評価方式を示す。
【図9】本発明の実施例における全運転制限要因を考慮したスケジュール修正量算出方式の全体概要を示す。
【図10】本発明の実施例におけるファジィルールで使用するメンバーシップ関数を示す。
【図11】本発明の実施例におけるスケジュール修正量算出手段にて蒸気タービン主計画(STPS)用として使用する蒸気タービン応力調整ルールを示す。
【図12】本発明の実施例におけるスケジュール修正量算出手段にてガスタービン広域調整(GTGT)用として使用する蒸気タービン応力調整ルールを示す。
【図13】本発明の実施例におけるスケジュール修正量算出手段にてガスタービン主計画(GTPS)用として使用する排出NOx調整ルールを示す。
【図14】本発明の実施例におけるスケジュール修正量算出手段にて蒸気タービン局部調整(STLT)用として使用する排出NOx調整ルールを示す。
【図15】本発明の実施例におけるファジィ推論によるスケジュール修正量算出方式を示す。
【図16】本発明の実施例におけるニューラルネットワークへの学習サンプルを示す。
【図17】本発明の実施例におけるニューラルネットワークの構造と入出力変数の定義を示す。
【図18】本発明の実施例における自律性管理方式を示す。
【図19】本発明の自律適応制御システムによる最適値収束性の改善効果を示す。
【図20】本発明の自律適応制御システムによる複合サイクル発電プラントの起動特性の改善効果を示す。
【符号の説明】
100…基本スケジュール作成手段、150…スケジュール修正手段、200…自律性管理手段、300…スケジュール実行制御手段、400…運転制限要因監視手段、500…余裕値評価手段、600…スケジュール修正量算出手段、
650…修正量格納手段、700…知識ベース、800…適応知識修得手段、
900…学習管理手段、1000…火力発電プラント自律適応制御システム、
2000…中央給電指令所。

Claims (20)

  1. 蒸気を発生させるためのボイラと、該ボイラにより発生された蒸気により駆動される蒸気タービンとを有する火力発電プラントの制御システムであって、
    前記ボイラの点火から起動完了までの起動スケジュールを、前記火力発電プラントの起動前における温度状態に基づいて作成する基本スケジュール作成手段と、
    前記火力発電プラントの起動過程における所定の運転制限要因を監視する運転制限要因監視手段と、
    該運転制限要因監視手段により求められた運転制限要因の運転制限条件に対する余裕値を評価する余裕値評価手段と、
    該余裕値評価手段により得られた余裕値に基づいて、前記起動スケジュールの修正量をファジィ推論を用いて算出するスケジュール修正量算出手段と、
    前記火力発電プラントの過去の起動スケジュールと運用条件とをニューラルネットワークに入力値として与えたとき、出力値として前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量が得られるように、該入出力の対応関係を記憶する適応知識修得手段と、
    前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量に基づいて作成された第1の起動スケジュールと、前記適応知識修得手段により得られたスケジュール修正量に基づいて作成された第2の起動スケジュールとを用いて実際の起動スケジュールを作成すると共に、該実際の起動スケジュールを作成する際の前記第1及び第2の起動スケジュールの採用比率を規定する自律係数λを、起動を繰り返すにつれて大きくすることによって、前記第2の起動スケジュールの採用比率を拡大させる自律性管理手段と、
    該自律性管理手段によって作成された起動スケジュールに従って前記火力発電プラントを起動制御するスケジュール実行制御手段と、
    を具備したことを特徴とする火力発電プラントの自律適応制御システム。
  2. 蒸気を発生させるためのボイラと、該ボイラにより発生された蒸気により駆動される蒸気タービンとを有する火力発電プラントの制御システムであって、
    前記ボイラの点火から起動完了までの起動スケジュールを、前記火力発電プラントの起動前における温度状態に基づいて作成する基本スケジュール作成手段と、
    前記火力発電プラントの起動過程における所定の運転制限要因を監視する運転制限要因監視手段と、
    該運転制限要因監視手段により求められた運転制限要因の運転制限条件に対する余裕値を評価する余裕値評価手段と、
    該余裕値評価手段により得られた余裕値の大きさに対応した前記起動スケジュールのスケジュール修正量を規定する複数のファジィルールを記憶する知識ベースと、
    該知識ベースに記憶されたファジィルールを用いて前記スケジュール修正量をファジィ推論により算出するスケジュール修正量算出手段と、
    前記火力発電プラントの過去の起動スケジュールと運用条件とをニューラルネットワークに入力値として与えたとき、出力値として前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量が得られるように、該入出力対応関係を記憶する適応知識修得手段と、
    該適応知識修得手段におけるニューラルネットワークの内部接続状態を決定することにより前記入出力対応関係を学習する学習管理手段と、
    前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量に基づいて作成された第1の起動スケジュールと、前記適応知識修得手段により得られたスケジュール修正量に基づいて作成された第2の起動スケジュールとを用いて実際の起動スケジュールを作成すると共に、該実際の起動スケジュールを作成する際の前記第1及び第2の起動スケジュールの採用比率を規定する自律係数λを、起動を繰り返すにつれて大きくすることによって前記第2の起動スケジュールの採用比率を拡大させる自律性管理手段と、
    該自律性管理手段によって作成された起動スケジュールに従って前記火力発電プラントを起動制御するスケジュール実行制御手段と、
    を具備したことを特徴とする火力発電プラントの自律適応制御システム。
  3. ガスタービンと、該ガスタービンの排ガスを用いて蒸気を発生させるための排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで発生した蒸気により駆動される蒸気タービンとを有する火力発電プラントの制御システムであって、
    前記ガスタービンの点火から起動完了までの起動スケジュールを、前記火力発電プラントの起動前における温度状態に基づいて作成する基本スケジュール作成手段と、
    前記火力発電プラントの起動過程における所定の運転制限要因を監視する運転制限要因監視手段と、
    該運転制限要因監視手段により求められた運転制限要因の運転制限条件に対する余裕値を評価する余裕値評価手段と、
    該余裕値評価手段により得られた余裕値に基づいて、前記起動スケジュールの修正量をファジィ推論を用いて算出するスケジュール修正量算出手段と、
    前記火力発電プラントの過去の起動スケジュールと運用条件とをニューラルネットワークに入力値として与えたとき、出力値として前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量が得られるように、該入出力の対応関係を記憶する適応知識修得手段と、
    前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量に基づいて作成された第1の起動スケジュールと、前記適応知識修得手段により得られたスケジュール修正量に基づいて作成された第2の起動スケジュールとを用いて実際の起動スケジュールを作成すると共に、該実際の起動スケジュールを作成する際の前記第1及び第2の起動スケジュールの採用比率を規定する自律係数λを、起動を繰り返すにつれて大きくすることによって前記第2の起動スケジュールの採用比率を拡大させる自律性管理手段と、
    該自律性管理手段によって作成された起動スケジュールに従って前記火力発電プラントを起動制御するスケジュール実行制御手段と、
    を具備したことを特徴とする火力発電プラントの自律適応制御システム。
  4. ガスタービンと、該ガスタービンの排ガスを用いて蒸気を発生させるための排熱回収ボイラと、該排熱回収ボイラで発生した蒸気により駆動される蒸気タービンとを有する火力発電プラントの制御システムであって、
    前記ガスタービンの点火から起動完了までの起動スケジュールを、前記火力発電プラントの起動前における温度状態に基づいて作成する基本スケジュール作成手段と、
    前記火力発電プラントの起動過程における所定の運転制限要因を監視する運転制限要因監視手段と、
    該運転制限要因監視手段により求められた運転制限要因の運転制限条件に対する余裕値を評価する余裕値評価手段と、
    該余裕値評価手段により得られた余裕値の大きさに対応した前記起動スケジュールのスケジュール修正量を規定する複数のファジィルールを記憶する知識ベースと、
    該知識ベースに記憶されたファジィルールを用いて前記スケジュール修正量をファジィ推論により算出するスケジュール修正量算出手段と、
    前記火力発電プラントの過去の起動スケジュールと運用条件とをニューラルネットワークに入力値として与えたとき、出力値として前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量が得られるように、該入出力対応関係を記憶する適応知識修得手段と、
    該適応知識修得手段におけるニューラルネットワークの内部接続状態を決定することにより前記入出力対応関係を学習する学習管理手段と、
    前記スケジュール修正量算出手段より求められたスケジュール修正量に基づいて作成された第1の起動スケジュールと、前記適応知識修得手段により得られたスケジュール修正量に基づいて作成された第2の起動スケジュールとを用いて実際の起動スケジュールを作成すると共に、該実際の起動スケジュールを作成する際の前記第1及び第2の起動スケジュールの採用比率を規定する自律係数λを、起動を繰り返すにつれて大きくすることによって前記第2の起動スケジュールの採用比率を拡大させる自律性管理手段と、
    該自律性管理手段によって作成された起動スケジュールに従って前記火力発電プラントを起動制御するスケジュール実行制御手段と、
    を具備したことを特徴とする火力発電プラントの自律適応制御システム。
  5. 請求項1及び2のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記所定の運転制限要因は、前記ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダの応力,前記蒸気タービンの応力,前記ボイラから排出されるNOxのうち、少なくとも1つ以上であることを特徴とする火力発電プラントの自律適応制御システム。
  6. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記所定の運転制限要因は、前記排熱回収ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダの応力,前記蒸気タービンの応力,前記排熱回収ボイラから排出されるNOxのうち、少なくとも1つ以上であることを特徴とする火力発電プラントの自律適応制御システム。
  7. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記起動スケジュールは、前記ガスタービンの起動スケジュールと前記蒸気タービンの起動スケジュールとからなり、かつ前記ガスタービンの起動スケジュールは、該起動スケジュールを規定する所定のパラメータにより構成され、該所定のパラメータは、昇速率,定格速度保持時間,初負荷,初負荷保持時間,負荷上昇率,負荷保持時間のうち少なくとも1つ以上であり、前記蒸気タービンの起動スケジュールは、該起動スケジュールを規定する所定のパラメータにより構成され、該所定のパラメータは、高圧タービンバイパス弁操作速度,中圧タービンバイパス弁操作速度,低圧タービンバイパス弁操作速度,高圧加減弁操作速度,中圧加減弁操作速度,低圧加減弁操作速度のうち少なくとも1つ以上であることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  8. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記所定の運転制限要因は、前記排熱回収ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダ応力,前記蒸気タービンの応力,前記排熱回収ボイラから排出されるNOxとし、前記余裕値評価手段は、前記排熱回収ボイラの過熱器出口蒸気ヘッダ応力と前記蒸気タービン応力に対しては前記火力発電プラントの起動過程を複数区間に分割した各区間毎に前記運転制限値に対する最小余裕値を求め、前記排熱回収ボイラから排出されるNOxに対しては、瞬時値と移動平均値を求めて前記火力発電プラントの起動過程を複数区間に分割した各区間毎に前記運転制限値に対する最小余裕値を求めることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  9. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記スケジュール修正量算出手段は、前記余裕値評価手段から得られる排熱回収ボイラ過熱器出口蒸気ヘッダ応力の最小余裕値及び蒸気タービン応力の最小余裕値に基づく蒸気タービン主計画(STPS)用ファジィ推論と、ガスタービン広域調整(GTGT)用ファジィ推論と、該排熱回収ボイラ排出NOxの最小余裕値に基づくガスタービン主計画(GTPS)用ファジィ推論と蒸気タービン局部調整(STLT)用ファジィ推論を行い、前記STPSは前記STLTと比較して、より広範囲のスケジュールパラメータを修正対象とし、前記GTPSは前記GTGTと比較して、より緻密な修正を行い、前記GTGTは前記GTPSと比較して、より大局的な修正を行うことを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  10. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記知識ベースは、前記STPS用,STLT用,GTPS用,GTGT用のファジィ推論に対応して構成されることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  11. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記スケジュール修正量算出手段は、前記STPS用,STLT用,
    GTPS用,GTGT用の各ファジィ推論より得られた同一スケジュールパラメータに対する複数の修正量の中から、優先値決定手段により昇速率,負荷変化率,弁操作速度に関するパラメータは低値を選択し、速度保持時間,負荷保持時間に関するパラメータは高値を選択することを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  12. 請求項1乃至4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記適応知識修得手段にて使用するニューラルネットワークは、信号変換機能を有するユニットを複数個集めて少なくとも入力層と出力層からなる多層構造を成し、前層ユニットの出力部と次層ユニットの入力部との接続部に設けられた内部接続強度を設定可能とし、入力層には前記起動スケジュールパラメータと運用条件に対応した数のユニットが配置され、出力層には該起動スケジュールパラメータに対応した数のユニットが配置され、入力層へ入力された信号は前記学習管理手段により予め設定され該内部接続強度に従って変換され出力層から出力されることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  13. 請求項2及び4のいずれか記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記学習管理手段は、
    前記火力発電プラントの起動が繰り返される度に前記スケジュール修正量算出手段より得られる新たな修正量を累積計算するための累積修正量算出手段と、
    該累積修正量算出手段より得られた累積修正量を格納するための累積修正量格納手段と、
    過去における実際の起動に適用した起動スケジュールを格納するためのスケジュール格納手段と、
    過去における実際の起動時の運用条件を格納するための運用条件格納手段と、
    前記スケジュール格納手段と前記運用条件格納手段からそれぞれ該過去の起動スケジュールと運用条件を取り出し、これを前記適応知識修得手段における前記ニューラルネットワークの入力部に入力したときに出力部から得られる出力値が、前記累積修正量格納手段に格納された累積修正量と一致するように該ニューラルネットワークの該内部接続強度を決定するための学習手段と、
    を有することを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  14. 請求項13に記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記運用条件格納手段に格納する運用条件は、前記火力発電プラントの停止期間,プラントの機器温度,圧力,復水器冷却用水温,大気の温度,湿度,プラント運転制限条件のうち少なくとも1つ以上であることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  15. 請求項1乃至4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記自律性管理手段は、前記スケジュール修正量算出手段から得られる修正量により定まる起動スケジュールX1 を第1の起動スケジュールとし、初回起動時スケジュールX0に前記自律係数λを掛けて得られた値λX0と前記第1の起動スケジュールX1に該自律係数の補数(1−λ)を掛けて得られた値(1−λ)X1 とを加算して得られる起動スケジュールXINを該ニューラルネットワークに前記運用条件と共に入力したとき出力部から得られる前記修正量ΔXOUT と前記初回起動時スケジュールX0を加算して得られる起動スケジュールX2を第2の起動スケジュールとしたとき、前記第1の起動スケジュールX1 に前記自律係数の補数(1−λ)を掛けて得られた値(1−λ)X1と前記第2の起動スケジュールX2に前記自律係数λを掛けて得られた値λX2 を加算して得られた起動スケジュールXR をもって実際の起動スケジュールとして採用し、前記スケジュール実行制御手段に転送することを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  16. 請求項1乃至4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記自律性管理手段は、前記自律係数λを可変とするための自律係数発生手段を有し、初回起動時はλ=0とし、起動回数iもしくは前記スケジュール修正量算出手段により得られる該スケジュール修正量に対応して、起動回数を重ねるにつれて0≦λ≦1の範囲でλを大きくしていくことを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  17. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおいて、前記運転制限要因は、少なくとも前記蒸気タービンのロータとケーシングの伸び差,前記排熱回収ボイラのドラム等に発生する応力,前記排熱回収ボイラから排出されるSOまたはCOであることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  18. 請求項3及び4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムを、ガス化複合サイクル発電プラント,常圧及び加圧流動層ボイラ発電プラントの起動制御システムに用いることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  19. 請求項1乃至4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムにおける起動スケジュール作成の該一連の手段を、プラント運転訓練用シミュレータにおける起動スケジュール作成もしくは修正のためのガイダンス提示手段として用いることを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
  20. 請求項1乃至4のいずれかに記載の火力発電プラント自律適応制御システムに、前記実際の起動スケジュールを表示する手段を設けたことを特徴とする火力発電プラント自律適応制御システム。
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