JP3665809B2 - ハブクラッチの潤滑機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、4輪駆動車等の車輪ハブと駆動軸間に設けられるハブクラッチの潤滑機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記ハブクラッチは、4輪駆動車等において、例えば路面状態のよい道路を走行する際は燃費節約のため2輪駆動とし、悪路走行の場合は4輪駆動に切り替えて走行性を向上せしめることを可能とするため採用されている。
従来のハブクラッチは、例えば本出願人が出願して実開平3−112142号として公開され、図4以下に示されるように、断面コ字形で外周にストッパ部1が形成されキー部2a等で車輪ハブH側に固定されるキーブロック2と、該キーブロック2内に所定範囲の回動のみを許してインナスプリング3で戻り可能に装着され開放端側にカム4を形成したインナカム5と、内径部が駆動軸Dに嵌合したスリーブ6の外周スプライン6aに嵌合されロックスプリング7により前記インナカム5側に押圧され且つその側部に前記インナカム5のカム4と係合するカム8が形成されたアウタカム9と、軸方向にスリット10をもち前記アウタカム9に回動のみを許して嵌合されその側面に前記キーブロック2のストッパ部1に係合し得るようインナカム5側に延びる複数の突出部11、12が形成されたホールドリング13と、外周部にクラッチ歯14が形成され、前記スリーブ6の外周スプライン6aに嵌装されて前記アウタカム9側からロックスプリング7で押圧されるドライブクラッチ15と、前記スリーブ6の外周スプライン6aに嵌装され、スリーブ6端部に固定したリテーナ16との間に配設されたリターンスプリング17で押圧されるリターンプレート18と、該プレート18と前記アウタカム9の間に設けられたリターンピン19と、車輪ハブHにキャップ20とともにボルト21により結合されたハウジング22の外端内面に設けられロック時前記クラッチ歯14と噛合うロック歯23とから構成されたものである。
【0003】
そしてこのような構成により、フリー状態からロック状態に移行させようとするときは、まず、トランスフアにより2輪駆動から4輪駆動に切換えて発進すると、駆動軸Dが回転することによってアウタカム9が回転を始め、アウタカム9はそのカム8がインナカム5のカム4と噛み合っているのでインナカム5とともに回転し、図6のようにインナカム5の突起部5aがキーブロツク2の円弧穴2bの端部に当接すると、アウタカム9のカム8がインナカム5のカム4に乗り上がる。(カムアウト作動)
アウタカム9の上記回転時ホールドリング13は共に回転するが、前記カムアウト作動によってホールドリング13の傾斜突出部11がキーブロック2の開放端に乗り上がり、該突出部11の最高位置にある最高突出部12がキーブロック2のストッパ部1に突き当たって止まる。止まったホールドリング13に対してアウタカム9はドライブシャフトDから回転力が伝達されるため連続的に回転し、アウタカム9は図7のようにカムアウト状態を維持したままホールドリング13との間で摺動する。
上記カムアウト作動によりアウタカム9は軸方向に移動し、リターンピン19を介しリターンプレート18がリターンスプリング17に抗して移動し、これによりドライブクラッチ15がロックスプリング7によりリターンプレート18と同方向に移動してクラッチ歯14がロック歯23に噛み合いロック状態となる。
【0004】
ロック状態からフリー状態に戻すときは、トランスフアにより4輪駆動から2輪駆動に切換えて車両を後進させると、アウタカムが前記と逆方向に回転せしめられ、これによりキーブロック2のストッパ部1からホールドリングの最高突出部12が外れ、アウタカム9はリターンスプリング17によりリターンピン19を介して前記と逆方向へ移動し、前記アウタカム9のカム8はインナカム5のカム4と再び噛み合うことになり、ドライブクラッチ15のクラッチ歯14はロック歯23から外れてフリーとなる。
【0005】
ところで、前記オートロックハブの作動において、前記ホールドリング13はアウタカム9の回転時、該カム9と共に回転するとともに、ハブのロック状態を保持する機能を有する必要がある。このためにはホールドリング13は、ロックからフリー、或いはフリーからロックに移行する場合、前記アウタカム9との軸方向の摩擦力が確保されないと作動できない。
その一方で、ホールドリング13とアウタカム9とは半径方向で回転の円滑性が保てないと回転面で焼付きを生ずるおそれがある。
換言すれば、ホールドリング13はアウタカム9との間で、軸方向には摩擦力を保持しながら、半径方向でアウタカム9との間に回転の円滑性を保つ必要があるということになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のホールドリング13とアウタカム9との潤滑機構は、図8に示すように、ホールドリング13のスリット10及び該スリット10から180°離れた位置に形成した凹部13aよりグリースGを回転面100に取り入れるのみの構成であったため、回転面100の半周間でグリース切れを生じて回転の円滑性を保てず、前記アウタカム9及びホールドリング13の摩耗、両者間の発熱、焼き付きを発生するおそれがあるという問題がある。
従って本発明は上記問題を解決することを課題とし、ホールドリング13をアウタカム9との間において、軸方向には摩擦力を保持しつつホールドリング13とアウタカム9の回転面100での摩耗、発熱、焼き付きの発生を防止できるハブクラッチの潤滑機構を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明ハブクラッチの潤滑機構は、外周にストッパ部をもち車輪ハブ側に固定されるキーブロック内にて所定範囲の回動のみを許して装着されるインナカムと対峙し、該カムの開放端に形成したカムと係合するカムを有し、内径部が駆動軸に嵌合したスリーブの外周スプラインに嵌合され、ばねにより前記インナカム側に押圧されるアウタカムと、軸方向にスリットをもち前記アウタカムに回動のみを許して嵌合されその側面に前記キーブロックのストッパ部に係合し得るようインナカム側に延びる複数の突出部が形成されたホールドリングとを有するハブクラッチにおいて、前記アウタカムにおける前記ホールドリングとの回転面となる外周面に、回転方向に傾斜する複数個の潤滑溝を形成するとともに、前記ホールドリング内面に前記潤滑溝等へのグリース取入れ口を形成したことを特徴とする。
【0008】
【作 用】
上記構成の本発明に係るハブクラッチでは、フリー状態からロック状態に移行させようとするとき、トランスフアにより2輪駆動から4輪駆動に切換えて発進すると、駆動軸が回転することによって、まず、前記アウタカムが前記インナカムとともに回転を始め、インナカムの突起部が前記キーブロツクの円弧穴の端部に当接すると、アウタカムのカムがインナカムのカムに乗り上がる。(カムアウト作動)
アウタカムの上記回転時、前記ホールドリングは共に回転し、前記カムアウト作動によってホールドリングの傾斜突出部がキーブロックの開放端に乗り上がり、やがて該突出部の最高位置にある最高突出部がキーブロックのストッパ部に突き当たってホールドリングは止まるが、止まったホールドリングに対してアウタカムはドライブシャフトから回転力が伝達されるため連続的に回転し、アウタカムはカムアウト状態を維持したままホールドリングとの間で回転摺動する。
この際、グリースは前記グリース取入れ口より回転面に取り入れられるのみでなく、前記アウタカムにおける外周面に形成された潤滑溝にも取り入れられ且つ保持され、アウタカムの回転につれて回転面の全周にわたって適量に潤滑される。
【0009】
【実施例】
本発明に係るハブクラッチは、基本的には前記実開平3−112142号に示すもの、即ち図4以下に示すものと同一であり、図4以下と同一符号のものは同一装置、部品を表すものとして説明を省略する。
本発明に係るアウタカム90は基本的には図4以下に示すものと同様であるが、ホールドリング13との半径方向の回転面となる外周面91には、図1乃至図3に示すように周囲等分に4本の潤滑溝92が形成されており、該潤滑溝92は、アウタカム90の軸線に対し回転方向に向けて例えば45度傾けて形成する。
なお、ホールドリング13には、その内面に該リング13の中心に対しグリース取入れ口としての前記スリット10と対称位置に、同じくグリース取入れ口としての凹部13aが形成されている。また、本実施例においてはアウタカム90とホールドリング13の軸方向間隔に2枚のスラストリング24を入れてアウタカム9とホールドリング13の摩擦力を調節するとともに、上記スラストリング24にそれぞれ油穴24aを形成して前記アウタカム9とホールドリング13の摩擦面の潤滑を確保している。
【0010】
上記構成の本発明に係るハブクラッチでは、フリー状態からロック状態に移行させようとするときは、まず、前記のようにトランスフアにより2輪駆動から4輪駆動に切換えて発進すると、駆動軸Dが回転することによってアウタカム90がインナカム5とともに回転を始め、インナカム5の突起部5aがキーブロツク2の円弧穴2bの端部に当接すると、アウタカム90のカム8がインナカム5のカム4に乗り上がる。(カムアウト作動)
アウタカム90の上記回転時ホールドリング13は共に回転し、前記カムアウト作動によってホールドリング13の傾斜突出部11がキーブロック2の開放端に乗り上がり、やがて該突出部11の最高位置にある最高突出部12がキーブロック2のストッパ部1に突き当たってホールドリング13は止まるが、止まったホールドリング13に対してアウタカム90はドライブシャフトDから回転力が伝達されるため連続的に回転し、アウタカム90はカムアウト状態を維持したままホールドリング2との間で回転摺動する。
この際、グリースGは前記スリット10及び凹部13aより回転面100に取り入れられると同時に、前記アウタカム90における前記ホールドリング13との回転面100となる外周面91に形成された潤滑溝92にも取入れられて保持され、アウタカム90の回転につれて回転面100の全周にわたり潤滑される。
【0011】
【発明の効果】
本発明ハブクラッチの潤滑機構は、外周にストッパ部をもち車輪ハブ側に固定されるキーブロック内にて所定範囲の回動のみを許して装着されるインナカムと対峙し、該カムの開放端に形成したカムと係合するカムを有し、内径部が駆動軸に嵌合したスリーブの外周スプラインに嵌合され、ばねにより前記インナカム側に押圧されるアウタカムと、軸方向にスリットをもち前記アウタカムに回動のみを許して嵌合されその側面に前記キーブロックのストッパ部に係合し得るようインナカム側に延びる複数の突出部が形成されたホールドリングとを有するハブクラッチにおいて、前記アウタカムにおける前記ホールドリングとの回転面となる外周面に、回転方向に傾斜する複数個の潤滑溝を形成するとともに、前記ホールドリング内面に前記潤滑溝等へのグリース取入れ口を形成したので、グリースが前記ホールドリングのグリース取入れ口より回転面のみでなく、前記アウタカムの外周面に形成された潤滑溝にも取り入れられ且つ保持されて、ホールドリング13はアウタカム9との間で、軸方向には摩擦力を保持しつつ、アウタカムの回転につれて回転面が全周にわたって潤滑され、ホールドリング、アウタカム等の摩耗、発熱、焼き付きの発生を完全に防止できる大なる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るハブクラッチの要部断面図で、上半分がフリー時、下半分がロック時を示す
【図2】本発明に係るハブクラッチにおけるアウタカムとホールドリングの組合せ状態を示す図1におけるA−A断面矢視図
【図3】本発明に係るハブクラッチにおけるアウタカムの潤滑溝付近の拡大図
【図4】従来のハブクラッチの全体分解斜視図
【図5】従来のハブクラッチの全体断面図
【図6】従来のハブクラッチのインナカムとアウタカムが噛み合ったとき(カムイン作動)の要部の作動状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図
【図7】従来のハブクラッチのインナカムとアウタカムが外れたとき(カムアウト作動)の要部の作動状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図
【図8】従来のハブクラッチにおけるアウタカムとホールドリングの組合せ状態を示す図1におけるA−A断面相当矢視図
2;キーブロック
3;インナスプリング
4;カム(インナカムの)
5;インナカム
6;スリーブ
7;ロックスプリング
8;カム(アウタカム9の)
9;従来のアウタカム
10;グリース取入れ口としてのスリット
11;突出部(傾斜)
12;突出部(最高)
13;ホールドリング
13a;グリース取入れ口としての凹部
14;クラッチ歯
15;ドライブクラッチ
17;リターンスプリング
18;リターンプレート
19;リターンピン
22;ハウジング
23;ロック歯
24;スラストメタル
24a;油穴
90;本発明のアウタカム
90a;カム(アウタカム90の)
91;外周部(アウタカム90の)
92;潤滑溝。

Claims (1)

  1. 外周にストッパ部をもち車輪ハブ側に固定されるキーブロック内にて所定範囲の回動のみを許して装着されるインナカムと対峙し、該カムの開放端に形成したカムと係合するカムを有し、内径部が駆動軸に嵌合したスリーブの外周スプラインに嵌合され、ばねにより前記インナカム側に押圧されるアウタカムと、軸方向にスリットをもち前記アウタカムに回動のみを許して嵌合されその側面に前記キーブロックのストッパ部に係合し得るようインナカム側に延びる複数の突出部が形成されたホールドリングとを有するハブクラッチにおいて、前記アウタカムにおける前記ホールドリングとの回転面となる外周面に、回転方向に傾斜する複数個の潤滑溝を形成するとともに、前記ホールドリング内面に前記潤滑溝等へのグリース取入れ口を形成したことを特徴とするハブクラッチの潤滑機構。
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