JP3664694B2 - 大麦を主体としたせんべいの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大麦を主体として圧縮膨張成形機により製造されるせんべいの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病や大腸ガンなどの予防には、食物繊維を摂取する必要があるが、我が国では、この食物繊維の摂取量が年々不足する傾向にある。
【0003】
食物繊維の不足を補うためには、食物繊維を多量に含んだ食品類を摂取する必要がある。食物繊維を多量に含む食品類の中で、特に大麦は、我が国の農業政策上大変重要な産物のひとつであり、しかも食物繊維を摂取するのに穀類のなかでは最適な食品といわれている。
【0004】
しかし、大麦は、その用途のほとんどが味噌、焼酎の原料として利用されているが、味噌や焼酎だけからでは、必要量の食物繊維を摂取することは困難である。また、押麦に加工し白米と混合炊飯する麦ご飯として食することも考えられるが、主食の米の需要が減少している状況では押麦の需要もまた減少の傾向にある。
【0005】
従って、食物繊維の摂取源として、かつ、高脂血症等の成人病予防にも有効な大麦の新たな用途の開発は、我が国の農業政策や保健衛生の面からも好ましい。大麦を美味しく、しかも手軽に摂取することができれば、食物繊維の所要量を満たすことも至極簡単なことであり、健康生活の維持向上に多大な貢献をなすものといえる。
【0006】
一方、いつでもどこでも手軽に摂取できる食品として、せんべいがある。せんべいには、通常、米を主体とする粉体を蒸した後、焼成して製造したもの他、精米した米粒を、圧縮膨張成形機を用いて加圧圧縮した後、急に減圧することにより米粒を膨張させて製造したもの(一般にぽんせんべいという)もある。
ぽんせんべいは、米粒が当初の体積の約3倍程度に膨れて各粒が結合し、所定の形状に成形されたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、米以外の食物繊維を多く含む穀物を主体とする原料を使用してぽんせんべいを製造することが考えられる。
しかしながら、米以外の穀物を主体とした原料を圧縮膨張成形機に投入してぽんせんべいを製造しようとすると、機械の圧力、温度、時間を調整しても、膨らみ方が少なく、一定の形状に形成できないという問題がある。
【0008】
また、米粒に他の大麦粒を混入して製造すると、米粒は大きく膨らむが、大麦粒は膨らみが小さく、粒の食感が大きく異なるため、食べにくいものになる。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、大麦粒を大きく膨張させ、食感がよく、健康増進にも有効な大麦を主体としたせんべいおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の大麦を主体としたせんべいは、精白した大麦を主成分として、前記大麦の各粒が膨張して一体的に結合している。
主成分とするとは、味付用の調味料等を別にして、大麦以外の穀物を使用していないことをいう。
【0011】
せんべいは、大麦を主成分として他の穀物を含まないので、大麦の風味が保持されている。また、大麦は、食物繊維を多く含むので、手軽にかつ多量に食物繊維を摂取できる。
【0012】
前記精白された大麦は、外皮および種皮を除去され、質量の30〜50%が除去されたものであることが好ましい。
大麦の外皮および種皮の除去量を、質量の30〜50%としたのは、除去量が30%未満であると、固い外皮や種皮が残って食感が悪くなり、また、色が黒くなり外観が悪くなるからである。また、50%を越えると、大麦の粒が割れてしまい、形が不揃いになるため、せんべいの外形が悪くなるからである。
大麦の30〜50%を除去して精白しているので、せんべいに加工したときの食感および外観がよくなり、また、均一になる。
【0013】
本発明の大麦を主体としたせんべいの製造方法は、粒状の原料を圧縮膨張成形機の気密室内に投入し、前記気密室を加熱圧縮した後、減圧することにより前記原料を膨張させて外形を形成する膨張工程を有するせんべいの製造方法において、前記原料は粒状の大麦からなり、前記膨張工程の前に、前記原料の水分を調整する水分調整工程を有している。
【0014】
大麦は、米粒に比べて含水率が小さく、このまま圧縮膨張成形機に投入してもあまり膨張しないので、せんべいが変形して形成され、また、アルファ化の度合いが少ないが、加水することによって膨張しやすくなり、また、膨張によって食感が軽くなり、さらに、せんべいのアルファ化が促進され食味がよくなる。
また、もとの含水率が大きい場合には、膨張しすぎて圧縮膨張成型機内で破裂し、破片が機械に付着して焦げ付くことがあるが、この場合は、乾燥させることによって、調整する。
【0015】
原料となる前記大麦は、外皮および種皮を、質量の30〜50%が除去されるまで精白し、前記水分調整工程では、前記原料の含水率を15〜18質量%にすることが好ましい。
【0016】
大麦の除去量が30%未満であると、膨張工程において、残った外皮や種皮が焦げてピストンに付着して熱効率が悪くなり、膨張しにくくなる。
また、大麦の除去量が50%を超えると、精白麦の歩留まりが悪くなる。
大麦の30〜50%を除去して精白しているので、押麦の歩留まりをよくするとともに、機械のトラブルが防止される。
含水率が15%未満であると、膨張工程で大麦が膨張せず、形状が不均一になるとともに、食感が悪くなる。また、含水率が18%を越えると、圧縮膨張成形機で形成されたせんべいがピストンに付着して焦げ付き、作業や取り扱いが困難になる。
含水率を15〜18%にすると、大きく膨張して均一な形状のせんべいが形成されるとともに、形成されたせんべいの排出性や作業性がよくなる。
【0017】
前記水分調整工程は、大麦に加水して混合した後、6時間以上放置することが好ましい。
大麦を所定時間以上放置することにより、内部まで水分が浸透し、均一に膨張する。
【0018】
前記水分調整工程の前に、精白した前記大麦をアルファ化してから押麦に加工する前加工工程を設け、前記膨張工程の後に、前記せんべいの表面に調味料を塗布する味付工程を設けることも可能である。
大麦を蒸してアルファ化させ、圧搾、乾燥させた押麦に加工してから水分調整するので、水を吸収または乾燥しやすくなり、膨張工程において膨張しやすくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の大麦を主体としたせんべいの製造方法の手順を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の大麦を主体としたせんべいは、精白した大麦を主成分として、大麦の各粒が膨張して一体的に結合した一般にぽんせんべいと呼ばれるものであり、原料準備工程S1、前加工工程S2、水分調整工程S3、膨張工程S4、味付工程S5を経て製造される。
【0020】
(原料準備工程S1)
原料となる大麦は、異物や異種穀粒を除去する精選工程(S11)の後、精麦機によって外皮および種皮を除去され、質量の30〜50%を除去して精白される精白工程(S12)を通過する。
【0021】
(前加工工程S2)
精白した前記大麦を、蒸気によって加熱する蒸気噴出機に投入してアルファ化処理を行う(S21)。
そして、圧接ローラを備えた圧扁機で圧搾し(S22)、次いで、冷却機に投入して乾燥を行い(S23)、押麦に加工する。
さらに精選選別工程(S24)で麦の粒度を整え、精選工程(S11)で除去できなかった異物を除去して押麦を精選する。
【0022】
(水分調整工程S3)
押麦への加水は、食品の味付け等に用いられる攪拌機の内部で行う。
攪拌機内で所定量の押麦を攪拌しながら、シャワーノズル等の散水手段を用いて押麦の全体に散水を行う(S31)。
押麦への加水、混合の後は、押麦の内部に水分を十分浸透させるため6時間、好ましくは12時間以上放置する(S32)。
押麦の含水率は、加水する前の状態で12%程度であり、これに、例えば5%程度の加水を行って16〜17%程度の含水率にする。
なお、原料の含水率は、質量の15〜18%の範囲内であればよく、もとの含水率が18%を超えている場合には、散水(S31)および水分浸透(S32)の代わりに、原料を乾燥させる工程を追加する。
【0023】
(膨張工程S4)
図2は、大麦を主体としたせんべいの製造方法に用いる圧縮膨張成形機の金型の使用状態を示す説明図である。
圧縮膨張成形機1の金型は、上型2、中型3および下型4を有している。
中型3は固定配置されており、その中央部には、上下に貫通する丸孔5が形成されている。
上型2および下型4は円柱状に形成されており、丸孔5に嵌合可能な状態で中型3の上下に配置され、それぞれ独立して上下に移動できる。
丸孔5の内部の空間部には、気密室6が形成される。
【0024】
図2(A)に示すように、初期状態では、下型4が中型3に嵌入し、上型2が上昇した状態になっている。
【0025】
まず、図2(B)に示すように、下型4を中型3に嵌入させた状態で、下端部付近まで下げ、水分調整工程を通過した粒状の原料である押麦を、気密室6となる空間部内に投入する(S41)。
【0026】
次いで、図2(C)に示すように、上型2を下降させ、中型3の丸孔5に嵌入し、そして、気密室6内を加熱圧縮する(S42)。
このとき、気密室6内の粒状の原料は、加熱されながら圧縮されており、気密室6内は高圧の状態になっている。
【0027】
次に、図2(D)に示すように、上型2を急上昇させ、気密室6内を減圧する(S43)ことにより、前記原料を膨張させ、表面が凸凹に形成された円板状の、または断面波形のせんべい7を成形する。
【0028】
なお、圧縮膨張成形機1の上型2および下型4の温度は265℃程度、コンプレッサ圧力は0.7MPa、焼き時間は2.4〜2.8秒程度に設定して加工を行っている。また、丸孔5の直径は、例えば45mm程度で、形成されるせんべい7の質量は、0.8〜0.9g程度になっている。
【0029】
(味付工程S5)
膨張工程の後に、せんべい7の表面に調味料を塗布する(S51)。調味料は、液状の黒糖、醤油、生姜等を、せんべい7の質量と同じ量だけ、図示しない噴霧器によって吹き付けている。その後、図示しない温風乾燥機内の棚にせんべいを入れて、約60℃の温度で約3時間乾燥する。乾燥の間にせんべい同士がくっつくことがあるので、時々ほぐす作業を行う。
このようにして、膨らみ方が小さく加工しにくい大麦を主体としたせんべいを製造することができる。
以上の工程により製造されたせんべいは、100gあたり8.6g程度の食物繊維を含み、40枚程度(36g)食することにより、成人の1日の必要摂取量と言われている20〜25gの15%を補うことができる。
【0030】
【実施例】
上記の製造方法を用いて原料の含水率を変えたせんべいを製造した。
次に実験結果を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
水分を加える前の大麦の含水率は12%だった。
表1に示すように、水分が15〜18%でよく膨れ、特に16〜17%にしたときが、一番よく膨れたのが観察された。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果を奏する。
(1)本発明の穀物を主体としたせんべいは、大麦を主成分として他の穀物を含まないので、大麦の風味が保持されている。また、大麦は、食物繊維を多く含み、食物繊維の水溶性、不溶性のバランスにも優れているので、摂取することによってコレステロールの低下や血糖値の上昇を抑える等、成人病予防の生理効果が得られる。
また、大麦の各粒が膨張して一体的に結合しているので、大麦独特の香ばしい風味が損なわれず、食感が軽く、幅広い年代の人々に食されることが期待できる。
(2)大麦の外皮および種皮の30〜50%を除去して精白しているので、押麦の歩留まりをよくするとともに、機械のトラブルが防止される。
(3)本発明の大麦を主体としたせんべいの製造方法は、原料が粒状の大麦からなり、膨張工程の前に、原料の水分を調整する水分調整工程を有しているので、膨張工程において大きく膨張することができ、また、膨張によって食感が軽くなり、さらに、せんべいのアルファ化が促進され食味がよくなる。
(4)含水率を15〜18%にすると、大きく膨張して均一な形状のせんべいが形成されるとともに、せんべいの排出性や作業性がよくなる。
(5)大麦に加水して混合した後、6時間以上放置すると、内部まで水分が浸透し、均一に膨張する。
(6)大麦を蒸してアルファ化させ、圧搾、乾燥させた押麦の水分を調整すると、表面積が大きくなって水を吸収しやすく、または乾燥しやすくなり、膨張工程において膨張しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の大麦を主体としたせんべいの製造方法の手順を示す説明図である。
【図2】 大麦を主体としたせんべいの製造方法に用いる圧縮膨張成形機の金型の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 圧縮膨張成形機
2 上型
3 中型
4 下型
5 丸孔
6 気密室
7 せんべい
Claims (4)
- 粒状の原料を圧縮膨張成形機の気密室内に投入し、前記気密室を加熱圧縮した後、減圧することにより前記原料を膨張させて外形を形成する膨張工程を有するせんべいの製造方法において、
前記原料は精白した粒状の大麦からなり、前記膨張工程の前に、
前記大麦を蒸気によって加熱する蒸気噴出機に投入してアルファ化してから押麦に加工する前加工工程と、
前記押麦の水分を調整する水分調整工程と、
を有することを特徴とする大麦を主体としたせんべいの製造方法。 - 原料となる前記大麦は、外皮および種皮を除去し、質量の30〜50%が除去されるまで精白し、前記水分調整工程では、前記原料の含水率を15〜18質量%にすることを特徴とする請求項1に記載の大麦を主体としたせんべいの製造方法。
- 前記水分調整工程は、大麦に加水して混合した後、6時間以上放置することを特徴とする請求項1または2に記載の大麦を主体としたせんべいの製造方法。
- 前記膨張工程の後に、前記せんべいの表面に調味料を塗布する味付工程を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の大麦を主体としたせんべいの製造方法。
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