JP3664625B2 - 増幅装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号を増幅する増幅器で発生する歪みを補償する増幅装置に関し、特に、増幅器の温度や増幅器の入力レベルが変化した場合であっても、歪み補償を高速に安定化させる増幅装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばCDMA方式を採用する移動通信システムに備えられた基地局装置等では、送信対象となる信号を増幅器で増幅することが行われている。また、増幅器で信号を増幅する際には当該信号が増幅されるのと同時に例えば当該信号とは異なる周波数帯域に歪みが発生することから、このような基地局装置等では、増幅器で発生した歪みを低減させる歪み補償処理を行うことにより、通信品質の向上を図っている。
【0003】
図5には、例えばフィードフォワード方式を用いて歪み補償を行う増幅装置の一例を示してあり、この増幅装置には、信号を分配する2つの分配器1、5や、信号を減衰させる2つの減衰器(可変減衰器)2、8や、信号の位相をシフトさせる(ずらす)2つの位相器(可変位相器)3、9や、信号を増幅する2つの増幅器4、10や、信号を遅延させる2つの遅延線6、11や、信号を合成する合成器7、12が備えられている。また、各減衰器2、8での減衰量や各位相器3、9での位相シフト量は可変であり、例えば制御部(図示せず)により変化させることができる。
【0004】
ここで、上記図5中で上方に配置された減衰器2、位相器3、増幅器4は増幅対象となる信号を処理するためのものであり、以下では、これらをそれぞれ第1の減衰器2、第1の位相器3、主増幅器4とも言う。なお、主増幅器4で発生する歪みが補償対象となる歪みである。
一方、上記図5中で下方に配置された減衰器8、位相器9、増幅器10は後述するように合成器7で取得される歪み成分を処理するためのものであり、以下では、これらをそれぞれ第2の減衰器8、第2の位相器9、歪み増幅器10とも言う。
【0005】
上記図5に示した増幅装置により行われる信号処理の一例を示す。
すなわち、増幅装置では、増幅対象となる信号(伝送波)が外部入力端子Pを介して分配器1に入力され、当該信号が当該分配器1により分配されて第1の減衰器2及び遅延線6へ出力される。
【0006】
第1の減衰器2に入力される信号は当該第1の減衰器2により減衰させられた後に第1の位相器3へ出力され、当該信号の位相が当該第1の位相器3によりシフトさせられた後に当該信号が主増幅器4へ出力される。主増幅器4に入力される信号は当該主増幅器4により増幅され、当該増幅信号が分配器5へ出力される。ここで、分配器5へ出力される増幅信号には、主増幅器4で発生した歪みが含まれる。分配器5に入力される信号(増幅信号)は当該分配器5により分配されて遅延線11及び合成器7へ出力される。
【0007】
また、分配器1から遅延線6に入力される信号は当該遅延線6により所定の時間遅延させられて合成器7へ出力される。
分配器5から合成器7に入力される信号(増幅信号の一部)と遅延線6から合成器7に入力される信号とは当該合成器7により合成させられ、当該合成信号が第2の減衰器8へ出力される。
【0008】
ここで、制御部は、分配器5から合成器7に入力される信号中の歪み以外の信号成分(すなわち、本来の処理対象となる信号成分)の振幅と、遅延線6から合成器7に入力される遅延信号の振幅とが同じになるように第1の減衰器2での減衰量を調整するとともに、当該信号成分の位相と当該遅延信号の位相とが逆位相になる(すなわち、互いに90度ずれる)ように第1の位相器3での位相シフト量を調整する。
【0009】
このような調整が行われると、遅延線6から合成器7に入力される信号には歪みが含まれていないことから、当該合成器7による合成処理では本来の処理対象となる信号成分(入力伝送波の成分)が相殺され、これにより、当該合成器7からは例えば主増幅器4で発生した歪み成分のみが合成信号として取得されて当該歪み成分が第2の減衰器8へ出力される。
【0010】
第2の減衰器8に入力される合成信号(上記の調整が行われた場合には、歪み成分)は当該第2の減衰器8により減衰させられた後に第2の位相器9へ出力され、当該合成信号の位相が当該第2の位相器9によりシフトさせられた後に当該合成信号が歪み増幅器10へ出力される。歪み増幅器10に入力される合成信号は当該歪み増幅器10により増幅され、当該増幅信号が合成器12へ出力される。
【0011】
また、分配器5から遅延線11に入力される信号は当該遅延線11により所定の時間遅延させられて合成器12へ出力される。
歪み増幅器10から合成器12に入力される信号と遅延線11から合成器12に入力される信号とは当該合成器12により合成させられ、当該合成信号が外部出力端子Qから出力される。
【0012】
ここで、制御部は、例えば上記のような第1の減衰器2及び第1の位相器3の調整を行った後に、歪み増幅器10から合成器12に入力される歪み成分の振幅と、遅延線11から合成器12に入力される遅延信号の振幅とが同じになるように第2の減衰器8での減衰量を調整するとともに、当該歪み成分の位相と当該遅延信号の位相とが逆位相になる(すなわち、互いに90度ずれる)ように第2の位相器9での位相シフト量を調整する。
【0013】
このような調整が行われると、遅延線11から合成器12に入力される信号には主増幅器4で発生した歪み成分が含まれていることから、当該合成器12による合成処理では主増幅器4で発生した歪み成分が相殺され、これにより、当該合成器12からは歪み補償された増幅信号、ずなわち、主増幅器4で増幅された信号から当該主増幅器4で発生した歪みを除去した信号が合成信号として取得されて外部出力端子Qを介して出力される。
【0014】
ここで、図6には、上記した制御部等により行われる歪み補償処理、すなわち、上記した2つの減衰器2、3での減衰量や上記した2つの位相器3、9での位相シフト量をパラメータとして調整する処理の手順の一例を示してある。なお、この調整処理は、例えば歪み補償を高速に安定化させるために、ソフトウエアを用いて行われる。
【0015】
上記図6に示されるように、制御部では、歪み補償処理の制御が開始されると、まず、例えば予めメモリに記憶された初期値のデータを参照して、上記した各減衰器2、8での減衰量及び上記した各位相器3、9での位相シフト量のそれぞれに対して初期値を設定する(ステップS21)。
【0016】
次に、制御部では、必要に応じて、第1の位相器3を制御して当該第1の位相器3での位相シフト量を初期値から変化させるとともに(ステップS22)、第1の減衰器2を制御して当該第1の減衰器2での減衰量を初期値から変化させることにより(ステップS23)、例えば合成器7で歪み成分のみが取得されるように当該位相シフト量及び当該減衰量を調整する(ステップS24)。
【0017】
次いで、制御部では、必要に応じて、第2の位相器9を制御して当該第2の位相器9での位相シフト量を初期値から変化させるとともに(ステップS25)、第2の減衰器8を制御して当該第2の減衰器8での減衰量を初期値から変化させることにより(ステップS26)、合成器12で歪み成分が相殺されるように当該位相シフト量及び当該減衰量を調整し(ステップS27)、これにより、最適な歪み補償が実現されるようにする。
【0018】
なお、主増幅器4で発生する歪みが安定でなくなると(ステップS28)、上記のようにして調整した各減衰器2、8での減衰量や各位相器3、9での位相シフト量が最適な値からずれるため、制御部では、再び上記のような調整処理を行って最適な歪み補償が実現されるようにする(ステップS22〜ステップS27)。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば上記図5に示したような従来の増幅装置では、各減衰器2、8に設定する減衰量の初期値や各位相器3、9に設定する位相シフト量の初期値が固定的に定められていたため、例えば主増幅器4の温度や主増幅器4の入力レベルといった主増幅器4の使用環境が変化した場合には、当該初期値における歪み量が悪化してしまう(大きくなってしまう)ことから、歪み補償を安定化させるのに要する時間(安定化時間)が非常に長くなってしまうといった不具合があった。
【0020】
ここで、図7には、具体例として、通常の状態(初期値における歪み量が悪化していない状態)における歪み補償処理時間と残存する歪み量との関係の一例を実線R1で示すとともに、初期値における歪み量が悪化した状態における歪み補償処理時間と残存する歪み量との関係の一例を点線R2で示してある。なお、同図に示したグラフの横軸は歪み補償処理の処理時間を示し、縦軸は歪み補償後の信号(例えば合成器12から出力される信号)に含まれる歪みの量を示している。
【0021】
同図に示されるように、例えば通常の状態では初期値における歪み量xが比較的小さいことから歪み補償の安定化時間t1も比較的短いのに対して、例えば初期値における歪み量が悪化した状態では当該歪み量yが大きくなってしまうことから安定化時間t2も非常に長くなってしまうといった不具合があった。
【0022】
また、例えば上記のような増幅装置が基地局装置等に備えられる場合には、歪み補償が安定化されるまでに多くの時間がかかってしまうと、当該安定化が実現されるまでの間において隣接チャネル漏洩電力(つまり、歪みの電力)が増加してしまうことや大きな相互変調歪みが発生してしまうことが生じるため、システムに悪影響が及ぼされ、通信品質の劣化等を生じてしまうといった不具合があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、増幅器で発生する歪みを補償するに際して、例えば増幅器の温度や増幅器の入力レベルが変化した場合であっても、歪み補償を高速に安定化させることができる増幅装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る増幅装置では、次のようにして、信号を増幅する増幅器で発生する歪みを補償する。
すなわち、回路パラメータに応じて増幅器で発生する歪みを補償する歪み補償回路を用いて歪み補償を行うに際して、検出手段が増幅器の温度又は増幅器の入力レベルの少なくともいずれか一方を検出し、制御手段が検出手段の検出結果に応じた値を回路パラメータの初期値として歪み補償回路に設定した後に、当該回路パラメータを当該初期値から変化させて、歪み補償回路による補償後の信号に含まれる歪みを低減させる。
【0025】
従って、歪み補償回路の回路パラメータの初期値が増幅器の温度の検出結果や増幅器の入力レベルの検出結果に応じて歪み補償回路に設定されるため、例えば増幅器の温度や増幅器の入力レベルが変化した場合であっても、従来と比べて、歪み補償を高速に安定化させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明に係る一実施例を図面を参照して説明する。
なお、本例では、例えば上記図5に示したようなフィードフォワード方式歪み補償増幅装置に本発明を適用した場合を示す。また、本例では、説明の便宜上から、上記図5に示した増幅装置と同様な構成部分1〜12、P、Qについては同一の符号を付して示し、また、上記図6に示したグラフと同様な歪み補償処理を表す実線R1や点線R2については同一の符号を付して示す。
【0027】
図1には、本例の増幅装置の構成例を示してあり、この増幅装置には、例えば上記図5に示したものと同様な外部入力端子Pと分配器1と第1の減衰器2と第1の位相器3と主増幅器4と分配器5と遅延線6と合成器7と第2の減衰器8と第2の位相器9と歪み増幅器10と遅延線11と合成器12と外部出力端子Qとが備えられているとともに、本例の特徴部分である周囲温度検出器21と入力レベル検出器22と初期値算出装置23とが備えられており、また、各減衰器2、8や各位相器3、9を制御する制御部(図示せず)が備えられている。
【0028】
本例では、制御部等により行われる歪み補償処理の手順の一例を示しつつ、主として、本例の特徴部分である周囲温度検出器21や入力レベル検出器22や初期値算出装置23について詳しく説明する。
周囲温度検出器21は、本例の増幅装置の周囲の温度を検出し、当該検出結果を初期値算出装置23に通知する機能を有している。
【0029】
入力レベル検出器22は、外部入力端子Pを介して分配器1に入力される信号の電力レベルを検出し、当該検出結果を初期値算出装置23に通知する機能を有している。
初期値算出装置23は、周囲温度検出器21から通知される周囲温度の検出結果と入力レベル検出器22から通知される入力電力レベルの検出結果とに応じた値を各減衰器2、8での減衰量の初期値や各位相器3、9での位相シフト量の初期値として当該各減衰器2、8や当該各位相器3、9に設定する機能を有している。
【0030】
ここで、図2を参照して、本例の初期値算出装置23による初期値の設定の仕方を詳しく説明する。
すなわち、本例の初期値算出装置23は例えばメモリを有しており、当該メモリには、各減衰器2、8での減衰量の初期値や各位相器3、9での位相シフト量の初期値として設定する値と、当該値を初期値とする場合における周囲温度の条件及び入力電力レベルの条件とが予め対応付けられて記憶されている。
【0031】
一例として、上記図2(a)に示されるように、メモリには、周囲温度が(25±a)[°C]以内であって入力電力レベルが(規定入力レベル±b)[dB]以内である状態を通常状態として、当該通常状態において第1の減衰器2に設定する減衰量の初期値Aと、第1の位相器3に設定する位相シフト量の初期値Bと、第2の減衰器8に設定する減衰量の初期値Cと、第2の位相器9に設定する位相シフト量の初期値Dとが記憶されている。なお、上記した規定入力レベルは、例えば主増幅器4の性能等に応じて、予め設定されている。
【0032】
また、上記図2(b)に示されるように、メモリには、周囲温度が(25−c)[°C]に達して入力電力レベルが(規定入力レベル±b)[dB]以内である状態を周囲温度が低下した周囲温度低下状態として、当該周囲温度低下状態において第1の減衰器2に設定する減衰量の初期値(A−α)と、第1の位相器3に設定する位相シフト量の初期値(B−β)と、第2の減衰器8に設定する減衰量の初期値(C−γ)と、第2の位相器9に設定する位相シフト量の初期値(D−δ)とが記憶されている。なお、周囲温度の変化量cは同図(a)で示した変化量aより大きく、α〜δは変化量cに対する各パラメータ(すなわち、各減衰器2、8での減衰量及び各位相器3、9での位相シフト量)の通常状態からの変化量を示す。
【0033】
また、上記図2(c)に示されるように、メモリには、周囲温度が(25±a)[°C]以内であって入力電力レベルが(規定入力レベル+d)[dB]に達した状態を入力電力レベルが増加した入力電力増加状態として、当該入力電力増加状態において第1の減衰器2に設定する減衰量の初期値(A−ε)と、第1の位相器3に設定する位相シフト量の初期値(B−ζ)と、第2の減衰器8に設定する減衰量の初期値(C−η)と、第2の位相器9に設定する位相シフト量の初期値(D−θ)とが記憶されている。なお、入力電力レベルの変化量dは同図(a)で示した変化量bより大きく、ε〜θは変化量dに対する各パラメータ(すなわち、各減衰器2、8での減衰量及び各位相器3、9での位相シフト量)の通常状態からの変化量を示す。
【0034】
また、例えば装置の使用状況等に応じて、メモリには、以上に示した状態以外の状態において各減衰器2、8に設定する減衰量の初期値や各位相器3、9に設定する位相シフト量の初期値が当該状態における周囲温度の条件や入力電力レベルの条件と対応させられて記憶されている場合もある。
【0035】
ここで、通常状態以外の状態において各減衰器2、8や各位相器3、9に初期値として設定する値としては、当該通常状態以外の状態で当該値を各減衰器2、8及び各位相器3、9に設定すると、例えば当該通常状態以外の状態で通常状態に対して定められた初期値を設定する場合と比べて、歪み補償後の信号(例えば合成器12から出力される信号)に含まれる歪みの量が小さくなるような値が定められている。つまり、本例では、周囲温度や入力電力レベルに応じた値を各減衰器2、8や各位相器3、9に初期値として設定した段階で、歪み補償後の信号に含まれる歪みの量が或る程度小さくなることが実現される。なお、このような初期値は例えば実験により定められ、或いは、理論的な計算により定められてもよい。
【0036】
本例の初期値算出装置23は、例えば歪み補償処理が開始されると、まず、上記図2(a)〜上記図2(c)に示したようなメモリの記憶内容を参照するとともに、周囲温度検出器21による周囲温度の検出結果及び入力レベル検出器22による入力電力レベルの検出結果を参照する。次に、初期値算出装置23は、メモリに記憶された各状態における周囲温度の条件及び入力電力レベルの条件と、周囲温度の検出結果及び入力電力レベルの検出結果とを比較して、これらの検出結果に合った周囲温度の条件及び入力電力レベルの条件を有する状態における各パラメータ(すなわち、各減衰器2、8での減衰量及び各位相器3、9での位相シフト量)の通常状態からの変化量を算出する。
【0037】
そして、例えば周囲温度と入力電力レベルとの両方或いはいずれか一方の変化量が著しくて、検出された周囲温度と検出された入力電力レベルとの両方或いはいずれか一方が通常状態における条件(上記図2(a)に示した条件)から外れてしまった場合には、初期値算出装置23は、各減衰器2、8での減衰量の初期値として設定する値の通常状態からの補正量(変化量)や各位相器3、9での位相シフト量の初期値として設定する値の通常状態からの補正量(変化量)を算出し、当該算出結果に基づいて、当該周囲温度及び当該入力電力レベルに応じた減衰量の初期値を各減衰器2、8に伝送して設定するとともに、当該周囲温度及び当該入力電力レベルに応じた位相シフト量の初期値を各位相器3、9に伝送して設定する。
【0038】
次に、図3を参照して、本例の制御部等により行われる歪み補償処理、すなわち、上記した2つの減衰器2、8での減衰量の初期値や上記した2つの位相器3、9での位相シフト量の初期値を設定して、これらの減衰量や位相シフト量をパラメータとして調整する処理の手順の一例を示す。なお、この調整処理は、例えば歪み補償を高速に安定化させるために、ソフトウエアを用いて行われる。
【0039】
上記図3に示されるように、歪み補償処理の制御が開始されると、まず、初期値算出装置23では、例えば上記図2(a)〜上記図2(c)に示したような予めメモリに記憶された初期値のデータを参照した後に(ステップS1)、周囲温度検出器21及び入力レベル検出器22により周囲温度及び入力電力レベルを検出し(ステップS2)、当該検出結果に応じた値を最適な初期値として算出して、算出した値を各減衰器2、8での減衰量及び各位相器3、9での位相シフト量のそれぞれの初期値として設定する(ステップS3)。
【0040】
次に、制御部では、必要に応じて、第1の位相器3を制御して当該第1の位相器3での位相シフト量を初期値から変化させるとともに(ステップS4)、第1の減衰器2を制御して当該第1の減衰器2での減衰量を初期値から変化させることにより(ステップS5)、例えば合成器7で歪み成分のみが取得されるように当該位相シフト量及び当該減衰量を調整する(ステップS6)。
【0041】
次いで、制御部では、必要に応じて、第2の位相器9を制御して当該第2の位相器9での位相シフト量を変化させるとともに(ステップS7)、第2の減衰器8を制御して当該第2の減衰器8での減衰量を変化させることにより(ステップS8)、合成器12で歪み成分が相殺されるように当該位相シフト量及び当該減衰量を調整し(ステップS9)、これにより、最適な歪み補償が実現されるようにする。
【0042】
なお、主増幅器4で発生する歪みが安定でなくなると(ステップS10)、上記のようにして調整した各減衰器2、8での減衰量や各位相器3、9での位相シフト量が最適な値からずれるため、制御部では、再び上記のような調整処理を行って最適な歪み補償が実現されるようにする(ステップS4〜ステップS9)。
【0043】
また、例えば周囲温度検出器21により検出される周囲温度や入力レベル検出器22により検出される入力電力レベルが変化すると(ステップS11)、上記のようにして設定した各減衰器2、8での減衰量の初期値や各位相器3、9での位相シフト量の初期値が最適な値からずれるため、初期値算出装置23では、再び上記のような初期値設定処理を行って最適な初期値が設定されるようにし(ステップS2、S3)、制御部では、再び上記のような調整処理を行う(ステップS4〜ステップS9)。
【0044】
ここで、図4には、具体例として、例えば上記図7に示したものと同様な実線R1及び点線R2を示してあるとともに、本例の歪み補償処理が行われる場合における歪み補償処理時間と残存する歪み量との関係の一例を点線R3で示してあり、図4に示したグラフの横軸は歪み補償処理の処理時間を示し、縦軸は歪み補償後の信号(例えば合成器12から出力される信号)に含まれる歪みの量を示している。
【0045】
なお、本例では、実線R1は例えば通常状態において当該通常状態に対応した初期値が設定された場合(初期値における歪み量が悪化していない場合)における歪み補償処理時間と残存する歪み量との関係の一例を示しており、点線R2は例えば通常状態以外の状態において通常状態に対応した初期値が設定された場合(初期値における歪み量が悪化した場合)における歪み補償処理時間と残存する歪み量との関係の一例を示している。
【0046】
上記図4に示されるように、例えば通常状態以外の状態において従来のように通常状態に対応した固定的な初期値を設定した場合には当該初期値における歪み量yが大きくなって歪み補償の安定化に要する時間(安定化時間)t2も非常に長くなってしまうが、本例では、それぞれの状態に応じた初期値を設定することにより当該初期値における歪み量を例えば上記した歪み量x程度に小さくしてから歪み補償処理が行われるため、歪み補償の安定化時間を例えば上記した安定化時間t1程度に短くすることができる。
【0047】
以上のように、本例の増幅装置では、周囲温度検出器21により検出される周囲温度及び入力レベル検出器22により検出される入力電力レベルに応じた値が各減衰器2、8での減衰量の初期値や各位相器3、9での位相シフト量の初期値として設定されて、これらの減衰量や位相シフト量がパラメータとして当該初期値から変化させられて歪み補償が行われる。
【0048】
従って、本例の増幅装置では、例えば周囲温度や入力電力レベルが変化した場合であっても、従来と比べて、歪み補償を高速に安定化させることができる。具体的には、例えば周囲温度が非常に低い状態や非常に高い状態で装置の電源がオンにされた場合や、例えば信号の入力電力レベルが変動してしまうような場合であっても、本例の増幅器では、歪み補償を高速に安定化させることができる。
【0049】
また、本例の増幅装置は、一例として、CDMA方式を採用する基地局装置等に備えられて、当該基地局装置等により無線送信される信号(キャリア信号)を増幅する。このような増幅に際して、本例の増幅装置では、上記と同様に、当該基地局装置等の周囲温度や信号(キャリア信号)の入力電力レベルに応じた初期値の設定が行われるため、従来と比べて、歪み補償を高速に安定化させることができる。従って、本例のような増幅装置が基地局装置等に備えられる場合には、歪み補償の安定化を高速に実現することができるため、例えば上記課題で示したような隣接チャネル漏洩電力(つまり、歪みの電力)や相互変調歪みの発生を低く抑えることができ、これにより、通信品質を向上させること等ができる。
【0050】
ここで、本例では、信号を増幅する主増幅器4が本発明に言う増幅器に相当し、当該主増幅器4で発生する歪みが補償対象の歪みである。
また、本例では、2つの分配器1、5や2つの減衰器2、8や2つの位相器3、9や2つの遅延線6、11や歪み増幅器10や合成器12を有して各減衰器2、8での減衰量や各位相器3、9での位相シフト量に応じて主増幅器4で発生する歪みを補償する回路が本発明に言う歪み補償回路に相当する。また、本例では、各減衰器2、8での減衰量や各位相器3、9での位相シフト量が本発明に言う回路パラメータに相当する。
【0051】
また、本例では、周囲温度検出器21が周囲温度を検出するとともに入力レベル検出器22が入力電力レベルを検出する機能により、本発明に言う検出手段が構成されている。ここで、本例では、増幅装置の周囲温度を主増幅器4(本発明に言う増幅器)の温度と擬制して検出する構成としたが、当該主増幅器4の使用環境(ここでは、温度)を実用上で有効な程度で特定することができれば、温度検出の場所としては任意であってもよい。同様に、本例では、外部入力端子Pを介して入力される信号のレベルを主増幅器4(本発明に言う増幅器)の入力レベルと擬制して検出する構成としたが、当該主増幅器4の使用環境(ここでは、入力レベル)を実用上で有効な程度で特定することができれば、信号レベル検出の位置としては任意であってもよい。
【0052】
また、本例では、初期値算出装置23が周囲温度検出器21による周囲温度の検出結果及び信号レベル検出器22による入力電力レベルの検出結果に応じた値を各減衰器2、8での減衰量の初期値や各位相器3、9での位相シフト量の初期値として歪み補償回路に設定する機能や、制御部が当該減衰量や当該位相シフト量を当該初期値から変化させて、歪み補償回路による歪み補償後の信号(本例では、例えば合成器12から出力される信号)に含まれる歪みを例えばゼロにするように低減させる(すなわち、歪み補償する)機能により、本発明に言う制御手段が構成されている。
【0053】
なお、本例では、増幅器の温度(本例では、周囲温度)と増幅器の入力レベル(本例では、入力電力レベル)との両方を検出して、これら両方の検出結果に応じた値を初期値として設定したが、本発明では、例えば増幅器の温度のみを検出して当該検出結果に応じた値を初期値として設定してもよく、また、例えば増幅器の入力レベルのみを検出して当該検出結果に応じた値を初期値として設定してもよく、要は、温度と入力レベルとの少なくともいずれか一方を検出するものであればよい。
【0054】
また、本発明に言う回路パラメータの初期値の設定の仕方としては、特に限定はなく、例えば複数の温度状態や複数の入力レベル状態に応じて各状態で初期値として用いるのに適当な値(離散的な値)を予め記憶して、温度や入力レベルの検出結果に対応する値を初期値として選択して設定するような構成としてもよく、また、例えば温度や入力レベルの基準値(以下で、基準値Aと言う)や初期値の基準値(以下で、基準値Bと言う)を予め定めて、温度や入力レベルの基準値Aからの変化方向(例えば増加方向或いは減少方向)に応じて、初期値として設定する値を基準値Bからアナログ的にずらす(例えば温度や入力レベルの変化量に応じた量を増加させる或いは減少させる)ような構成としてもよい。
【0055】
ここで、本発明に係る増幅装置の構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
一例として、本発明に係る増幅装置の適用分野としては、必ずしもCDMA方式を採用する基地局装置や移動局装置に適用されるばかりでなく、本発明は、例えばTDMA方式やFDMA方式を採用する基地局装置等といった他の装置に適用することも可能であり、また、歪み補償の対象となる信号としても種々のものであってもよい。
【0056】
また、本発明に係る増幅装置により行われる歪み補償処理(初期値設定処理を含む)等としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROMに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成であってもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピーディスクやCD−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体として把握することもでき、当該制御プログラムを記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る増幅装置によると、回路パラメータに応じて増幅器で発生する歪みを補償する歪み補償回路を用いて歪み補償を行うに際して、増幅器の温度又は増幅器の入力レベルの少なくともいずれか一方を検出し、当該検出結果に応じた値を回路パラメータの初期値として歪み補償回路に設定した後に、当該回路パラメータを当該初期値から変化させて、歪み補償回路による補償後の信号に含まれる歪みを低減させるようにしたため、例えば増幅器の温度や増幅器の入力レベルが変化した場合であっても、従来と比べて、歪み補償を高速に安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る増幅装置の構成例を示す図である。
【図2】各状態に対応した回路パラメータの初期値の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る増幅装置により行われる歪み補償処理の手順の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る増幅装置を用いた場合の安定化時間の一例を示す図である。
【図5】従来例に係る増幅装置の構成例を示す図である。
【図6】従来例に係る増幅装置により行われる歪み補償処理の手順の一例を示す図である。
【図7】従来例に係る増幅装置を用いた場合の安定化時間の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、5・・分配器、 2、8・・減衰器、 3、9・・位相器、
4、10・・増幅器、 6、11・・遅延線、 7、12・・合成器、
21・・周囲温度検出器、 22・・入力レベル検出器、
23・・初期値算出装置、 P・・外部入力端子、 Q・・外部出力端子、
Claims (1)
- 信号を増幅する増幅器で発生する歪みを補償する増幅装置において、
信号を増幅する増幅器と、
回路パラメータに応じて増幅器で発生する歪みを補償する歪み補償回路と、
増幅器の温度又は増幅器の入力レベルの少なくともいずれか一方を検出する検出手段と、
歪み補償回路の回路パラメータを初期値から変化させて、歪み補償回路による補償後の信号に含まれる歪みを低減させる制御手段と、を備え、
制御手段は、増幅器の温度又は増幅器の入力レベルの少なくともいずれか一方の基準値である検出結果基準値と、歪み補償回路の回路パラメータの初期値の基準値である初期値基準値と、検出結果基準値からの変化量に応じた初期値基準値からの変化量をメモリに記憶しており、検出手段による検出結果の検出結果基準値からの変化量に応じた変化量だけ初期値基準値からずらした値を回路パラメータの初期値として歪み補償回路に設定することを特徴とする増幅装置。
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