JP2024039901A - 歪補償装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】歪の補償特性が忘却されることに対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持する。【解決手段】歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)の非線形特性に応じて入力信号x(t)に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部31および第2の歪補償部32を有し、第2の歪補償部32が、第1の歪補償部31における歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点(即ち、歪計算部34の接続点)よりも後段かつ歪の被補償回路(非線形増幅器6)よりも前段に設けられ、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsNの更新間隔が、第1の歪補償部31で用いられる多項式係数ωNの更新間隔よりも長い。【選択図】図1
Description
この発明は、信号増幅器などの被補償回路において生じる信号の歪を抑制するための歪補償処理を行う歪補償装置に関する。
増幅器は非線形特性を有し、非線形特性によって増幅器において生じる信号の歪を補償するため、出力信号に発生する歪成分を打ち消すような歪(謂わば、逆歪特性)を入力信号に予め与えることによって出力信号の歪を補償するデジタルの歪補償器が用いられる。従来の歪補償器として、増幅器の入力信号および出力信号に基づき出力信号に含まれる歪成分のレベルを低減する歪補償器であって、第1のデジタル信号および増幅器の歪特性値に基づき増幅器を補償する補償値を算出し、第1のデジタル信号と補償値とを乗算する前置補償部と、前置補償部の乗算結果をアナログ信号に変換して増幅器に与えるD/A変換部と、増幅器の出力信号を第2のデジタル信号に変換するA/D変換部と、第1のデジタル信号および第2のデジタル信号に基づき増幅器の歪特性値を算出して前置補償部に与える比較部と、第1のデジタル信号および第2のデジタル信号に基づきA/D変換部のサンプリング速度を制御するレート制御部とを具備する歪補償器が知られている(特許文献1参照)。
ところで、従来の歪補償の処理では、アナログ音声のような基本的に無音(別言すると、雑音のみ)でいつ音声が入るかわからない信号の場合、無音時の雑音はDPD(Digital Pre-Distortion)にとって低レベルの信号として認識されるために常に補償値を更新するようになり、DPDの補償値が時間とともに変化して忘却係数によって忘れられる、という問題がある。前記問題に対してDPDの補償値を更新するか否かに対して信号レベルに閾値を設ける対処方法が挙げられるが、アナログ音声の雑音レベルは環境によって左右されるために適切な閾値を一意に設定することができない、という問題がある。また、小さい声での会話などアナログ変調の音声レベル範囲を十分に使用しない場合も高レベルの信号の補償値が忘却される、という問題がある。
そこでこの発明は、歪の補償特性が忘却されることに対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持することが可能な、歪補償装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明に係る歪補償装置は、歪の被補償回路の非線形特性に応じて入力信号に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部および第2の歪補償部を有し、前記第2の歪補償部が、前記第1の歪補償部における前記歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点よりも後段かつ前記歪の被補償回路よりも前段に設けられ、前記第2の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔が、前記第1の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔よりも長く、前記第2の歪補償部で用いられる前記多項式係数が、前記歪の被補償回路へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される、ことを特徴とする。
この発明に係る歪補償装置は、歪の被補償回路の非線形特性に応じて入力信号に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部および第2の歪補償部を有し、前記第2の歪補償部が、前記第1の歪補償部における前記歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点よりも後段かつ前記歪の被補償回路よりも前段に設けられ、前記第2の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔が、前記第1の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔よりも長く、前記第2の歪補償部における前記歪成分の補償処理の際に用いられる前記入力信号の強度に関する値が、前記歪の被補償回路へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される、ようにしてもよい。
この発明に係る歪補償装置は、前記第1の歪補償部で用いられる前記多項式係数が一定の時間間隔で更新され、前記第2の歪補償部で用いられる前記多項式係数が通信ごとに更新される、ようにしてもよい。
この発明に係る歪補償装置は、前記歪の被補償回路へと入力される前記信号のアップコンバージョンに用いられる発振器と前記歪の被補償回路から出力される信号のダウンコンバージョンに用いられる発振器とが、リセットタイミングが同期しているとともに周波数設定タイミングが同期している、ようにしてもよい。
この発明に係る歪補償装置によれば、第1の歪補償部、および当該第1の歪補償部における歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点よりも後段かつ歪の被補償回路よりも前段に設けられる第2の歪補償部を有するようにしているので、第2の歪補償部において歪の被補償回路の大まかな非線形特性/歪特性を補償するとともに第1の歪補償部において時々刻々と変化する微小な変化を補償する(言い換えると、環境の変化に的確に追従する)ことが可能となる。実施の形態に係る歪補償装置3によれば、また、第2の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔が、第1の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔よりも長いようにしているので、長時間にわたって低レベルの信号のみで高レベルの信号がない場合でも歪の補償特性が忘却されることがなく歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持することが可能となる。
この発明に係る歪補償装置によれば、第2の歪補償部で用いられる多項式係数が、歪の被補償回路へと入力される信号の送信周波数に応じて補正されるようにした場合には、歪の被補償回路の増幅特性(具体的には、非線形特性/歪特性,利得)は送信周波数に依存して大きく変動するところ、送信周波数の値ごとの多項式係数の値(言い換えると、歪補償特性)を準備しておいて送信周波数の設定値に応じて使用する多項式係数の値(言い換えると、歪補償特性)を変えることにより、歪を常に適切に補償することが可能となる。さらに言えば、第1の歪補償部と第2の歪補償部とで歪補償の役割を分担して負担を分散させることが可能となり、利得補正のダイナミックレンジを広く保つことができ、送信周波数の変化に対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持することが可能となる。
この発明に係る歪補償装置によれば、第2の歪補償部における歪成分の補償処理の際に用いられる入力信号の強度に関する値が、歪の被補償回路へと入力される信号の送信周波数に応じて補正されるようにした場合には、第1の歪補償部と第2の歪補償部とで歪補償の役割を分担して負担を分散させることが可能となり、2つの歪補償部の各々が対象とする歪補償の変動要因を減らすことができ、歪補償処理の安定性を向上させることが可能となる。
この発明に係る歪補償装置によれば、第2の歪補償部で用いられる多項式係数が通信ごとに更新されるようにした場合には、歪の補償特性が忘却されることに一層確実に対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を一層確実に維持することが可能となる。
この発明に係る歪補償装置によれば、歪の被補償回路へと入力される信号のアップコンバージョンに用いられる発振器と歪の被補償回路から出力される信号のダウンコンバージョンに用いられる発振器とが、リセットタイミングが同期しているとともに周波数設定タイミングが同期しているようにした場合には、2つの発振器各々から出力される正弦波の位相が同期し、歪補償処理のためのトレーニング時(具体的には、多項式係数の計算/更新時)と歪補償処理の実際の適用時とで歪補償処理ループの位相差が異なると歪補償処理ループが不安定になって発散し易くなることを防止すること、すなわち、歪補償処理において位相を補正しようとして歪補償特性を位相回転させるため、特性が大きく動くことから予歪引き込み時に発散し易くなってしまうことを防止することが可能となる。
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係る歪補償装置3を備える無線送信機1の概略構成を示す機能ブロック図である。この実施の形態では、歪補償装置3が、歪の被補償回路としての非線形増幅器6を含む無線送信機1に搭載される場合を例として説明する。なお、この発明の要点には関係しない回路素子については図示および説明を省略するものとし、図示や説明が為されていないとしても無線送信機1に必要とされる回路素子が適宜備えられているものとする。
(無線送信機1の全体構成)
無線送信機1は、入力される送信信号を増幅するとともに増幅時に生じる送信信号の歪を補償するDPD(Digital Pre-Distortion)処理を施してアンテナ7から送信する機序であり、主として、制御部2と、歪補償装置3と、DUC4と、送信用の数値制御発振器5と、非線形増幅器6と、アンテナ7と、分配器8と、DDC9と、帰還用の数値制御発振器10と、発振器制御部11と、を有する。
無線送信機1は、入力される送信信号を増幅するとともに増幅時に生じる送信信号の歪を補償するDPD(Digital Pre-Distortion)処理を施してアンテナ7から送信する機序であり、主として、制御部2と、歪補償装置3と、DUC4と、送信用の数値制御発振器5と、非線形増幅器6と、アンテナ7と、分配器8と、DDC9と、帰還用の数値制御発振器10と、発振器制御部11と、を有する。
制御部2は、歪補償装置3を含む無線送信機1を構成する各部の動作を制御する機能を備え、中央処理装置2a(CPU:Central Processing Unit),入出力部2b(I/O:Input/Output),および記憶部2cを含む。
制御部2は、入出力部2bを介して無線送信機1を構成する各部と接続しており、無線送信機1を構成する各部の処理の開始,内容,および終了を統制して制御する。煩雑になるので、入出力部2bから各部への信号線の図示を省略している。
記憶部2cは、中央処理装置2aが歪補償処理を含む信号送信に纏わる演算処理を行う際に生成されるデータや情報などを一時的に記憶などするための作業領域となったり各種の情報,プログラム,およびデータなどを記憶して格納などするための記憶領域となったりする機能を備え、例えば、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),ストレージなどの記憶媒体によって構成される。
記憶部2cには、制御部2が歪補償装置3を含む無線送信機1全体の動作を制御するための制御プログラムが格納される。制御部2は、記憶部2cに格納される前記制御プログラムなどに従って歪補償装置3を含む無線送信機1全体の動作を制御して各機能を実現する。
送信源(図示していない)によって生成されて無線送信機1によって送信されるベースバンドの送信信号(「入力信号x(t)」と呼ぶ;尚、デジタル信号である)が歪補償装置3へと入力される。「t」はサンプリング時刻を示し、すなわち「x(t)」はサンプリングによる離散時刻(別言すると、サンプリングタイミング)tにおける入力信号を示す。
歪補償装置3は、入力信号x(t)の入力を受け、多項式近似を用いて、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)において当該被補償回路の非線形特性/歪特性に応じて前記入力信号x(t)に生じる歪を抑制する(別言すると、歪成分を打ち消して補償する)歪補償処理(具体的には、DPD処理)を施して出力する。
DUC4(Digital Up Converter)は、歪補償装置3から出力される信号の入力を受けるとともに、送信用の数値制御発振器5(NCO:Numerically Controlled Oscillator)から出力される発振信号の入力を受け、前記信号と前記発振信号とをミキシング/乗算して、前記信号の周波数を変換して、具体的には無線周波数(RF:Radio Frequency)へとアップコンバートして、出力する。
数値制御発振器は任意周波数の正弦波を出力するモジュールであり、数値制御発振器内部には正弦波1周期(即ち、0°~360°)のデータが格納されており、位相カウンタによって出力する信号が決定される。そして、送信用の数値制御発振器5の出力、および、位相カウンタは、発振器制御部11から出力されるリセット信号によってリセットされる。
DUC4から出力される信号は、デジタル-アナログ変換処理が施され、また、必要に応じて利得の増幅処理などが施されて、非線形増幅器6へと供給される。
非線形増幅器6は、前段から供給されるアナログ信号の入力を受け、前記アナログ信号の電力を所定の増幅度G(ゲイン)で高周波増幅して出力する。非線形増幅器6は非線形領域で使用されるため、非線形増幅器6から出力されるアナログ信号には、非線形増幅器6の非線形特性/歪特性に応じた歪が生じる。
高周波増幅されて非線形増幅器6から出力される信号は、アンテナ7へと入力され、アンテナ7を介して電波として空間に放射される。
非線形増幅器6から出力される信号(尚、アナログ信号である)の一部は、前記信号のフィードバックデータとして、方向性結合器によって構成される分配器8で分岐される。
分配器8で分岐された信号は、必要に応じて減衰処理などが施され、また、アナログ-デジタル変換処理が施されて、DDC9へと供給される。
DDC9(Digital Down Converter)は、前段から供給される信号の入力を受けるとともに、帰還用の数値制御発振器10(NCO)から出力される発振信号の入力を受け、前記信号と前記発振信号とをミキシング/乗算して、前記信号の周波数を変換して、具体的には無線周波数(RF)からベースバンド(BB:baseband)周波数または中間周波数(IF:Intermediate Frequency)へとダウンコンバートして(言い換えると、歪補償装置3へと入力される入力信号x(t)の周波数へと戻して)、出力する。DDC9から出力される信号を「帰還信号y(t)」と呼ぶ。帰還信号y(t)は、サンプリングによる離散時刻tにおける入力信号x(t)に対応する予歪信号u(t)/第2の予歪信号us(t)のフィードバックデータとしての信号である。
帰還用の数値制御発振器10の出力、および、位相カウンタは、発振器制御部11から出力されるリセット信号によってリセットされる。
発振器制御部11は、送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とに対し、これら送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とを同期させてリセットするためのリセット信号を出力し、また、これら送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10との周波数を同期させて設定するための周波数設定信号を出力する。発振器制御部11は、具体的には、送信用の数値制御発振器5に対してはDUC4における周波数遷移量(具体的には、アップコンバート前後の信号、つまり、ベースバンド(BB)周波数または中間周波数(IF)と無線周波数(RF)との周波数差)を出力するための制御信号であるとともに、帰還用の数値制御発振器10に対してはDDC9における周波数遷移量(具体的には、ダウンコンバート前後の信号、つまり、無線周波数(RF)とベースバンド(BB)周波数または中間周波数(IF)との周波数差)を出力する。
すなわち、送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とのリセット信号が共通化され、これにより、送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とのリセットタイミングが同期化する。また、送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10との周波数設定信号が共通化され、これにより、送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10との周波数設定タイミングが同期化する。これらにより、送信用の数値制御発振器5から出力される正弦波の位相と帰還用の数値制御発振器10から出力される正弦波の位相とが同期するようになるので、送信周波数が変更される際に送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とを順番に(即ち、非同期で)変更すると送信用の数値制御発振器5から出力される正弦波の位相と帰還用の数値制御発振器10から出力される正弦波の位相とが変わるために歪補償処理ループの位相差が変化してしまい、歪補償処理のためのトレーニング時(具体的には、多項式近似の係数の計算/更新時)と歪補償処理の実際の適用時とで歪補償処理ループの位相差が異なると歪補償処理ループが不安定になって発散し易くなってしまうことが防止される。すなわち、歪補償処理において位相を補正しようとして歪補償特性を位相回転させるため、特性が大きく動くことから予歪引き込み時に発散し易くなってしまうことが防止される。
(歪補償装置3の構成)
そして、実施の形態に係る歪補償装置3は、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)の非線形特性に応じて入力信号x(t)に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部31および第2の歪補償部32を有し、第2の歪補償部32が、第1の歪補償部31における歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点(即ち、歪計算部34の接続点)よりも後段かつ歪の被補償回路(非線形増幅器6)よりも前段に設けられ、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsN(但し、N=0,1,2,・・・,n;以下同じ)の更新間隔が、第1の歪補償部31で用いられる多項式係数ωNの更新間隔よりも長い、ようにしている。
そして、実施の形態に係る歪補償装置3は、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)の非線形特性に応じて入力信号x(t)に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部31および第2の歪補償部32を有し、第2の歪補償部32が、第1の歪補償部31における歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点(即ち、歪計算部34の接続点)よりも後段かつ歪の被補償回路(非線形増幅器6)よりも前段に設けられ、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsN(但し、N=0,1,2,・・・,n;以下同じ)の更新間隔が、第1の歪補償部31で用いられる多項式係数ωNの更新間隔よりも長い、ようにしている。
歪補償装置3は、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)において当該被補償回路の非線形特性/歪特性に応じて入力信号x(t)に生じる歪を抑制する歪補償処理(具体的には、DPD処理)を行うための機序であり、主として、第1の歪補償部31,第2の歪補償部32,第1の強度算出部33,歪計算部34,係数テーブル35,第2の強度算出部36,および補正部37を有する。
第1の歪補償部31は、第2の歪補償部32とともに、非線形増幅器6の非線形特性/歪特性に起因して生じる歪と逆の歪特性を示す多項式に従い、歪補償装置3へと入力される入力信号x(t)に前記逆の歪特性を与えて予歪信号u(t)を生成する。
第1の歪補償部31は、具体的には、下記の数式1に示す多項式に従って予歪信号u(t)を生成する。
(数1) u(t) = ω0・x(t)・φ0(m)
+ω1・x(t)・φ1(m)
+ω2・x(t)・φ2(m)
+・・・
+ωn・x(t)・φn(m)
(数1) u(t) = ω0・x(t)・φ0(m)
+ω1・x(t)・φ1(m)
+ω2・x(t)・φ2(m)
+・・・
+ωn・x(t)・φn(m)
上記の数式1において、ω0,ω1,ω2,・・・,ωnは多項式係数(別言すると、歪補償係数)であり、また、φ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)はルジャンドル多項式に従って例えば下記の数式2A,2B,2C,2Dに示すように与えられる。ここではすべてについての列記は省略するが、φ4(m),φ5(m),・・・,φn(m)もルジャンドル多項式に従って所定の数式によって与えられる(尚、ルジャンドル多項式の3次以降の奇数次の項にならって与えられる)。添字0,1,2,・・・,nは、ωやφ(m)を相互に区別するための連番の識別子である。添字の最大値であるn(即ち、多項式の項の個数から1を引いた値)は、特定の値には限定されないものの、例えば10~20程度の範囲のうちのいずれかの値に適宜設定される。
(数2A) φ0(m) = 1
(数2B) φ1(m) = (5m-3)/2
(数2C) φ2(m) = (63m2-70m+15)/8
(数2D) φ3(m) = (429m3-693m2+315m-35)/16
(数2A) φ0(m) = 1
(数2B) φ1(m) = (5m-3)/2
(数2C) φ2(m) = (63m2-70m+15)/8
(数2D) φ3(m) = (429m3-693m2+315m-35)/16
上記の数式1ならびに数式2A乃至2Dにおけるmは、下記の数式3に示すように入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(即ち、x(t)の実数成分R(x(t))の2乗と虚数成分I(x(t))の2乗との和)としてもよく、あるいは、下記の数式4に示すように入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|としてもよい。
(数3) m =|x(t)|2 = R(x(t))2+I(x(t))2
(数4) m =|x(t)|= √[|x(t)|2] = √[R(x(t))2+I(x(t))2]
(数3) m =|x(t)|2 = R(x(t))2+I(x(t))2
(数4) m =|x(t)|= √[|x(t)|2] = √[R(x(t))2+I(x(t))2]
第1の歪補償部31は、歪補償装置3へと入力される入力信号x(t)の入力を受けるとともに、当該第1の歪補償部31内に格納されているルックアップテーブル(LUT:lookup table)を参照して取得されるφN(m)の値、および歪計算部34から供給される多項式係数ωNの値の入力を受け、前記の入力信号x(t),φN(m)の値,および多項式係数ωNの値を用いて上記の数式1に従って予歪信号u(t)を生成して出力する。
第1の強度算出部33は、歪補償装置3へと入力される入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、前記入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)、すなわちmの値(上記の数式3,数式4参照)を算出して第1の歪補償部31に対して出力する。
第1の歪補償部31内に格納されるルックアップテーブルは、上記の数式3(または、数式4)に従って算出されるmの値に応じたφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値(例えば、上記の数式2A乃至2D参照)を保持する。第1の歪補償部31内に格納されるルックアップテーブルは、すなわち、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、φ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせを保持する。φ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせは、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)がとり得る値の範囲にわたって前記とり得る値各々について(したがって、前記とり得る値の個数と同じ数だけ)予め計算されて保持される。
第1の歪補償部31は、第1の強度算出部33から出力される入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、前記入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)の入力を受け、前記|x(t)|2(または、|x(t)|)をmとして(上記の数式3,数式4参照)当該mの値に対応するφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせ(例えば、上記の数式2A乃至2D参照)を当該第1の歪補償部31内に格納されているルックアップテーブルを参照して取得する。
(第1の歪補償部31において用いられる多項式係数の計算/更新)
歪計算部34は、第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値を計算/更新するため、第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)の供給を受けるとともに、DDC9から出力される帰還信号y(t)の入力を受け、前記予歪信号u(t)と前記帰還信号y(t)とに基づいて、第1の歪補償部31以降における歪(主に、第2の歪補償部32において与えられる予歪、および非線形増幅器6において生じる歪)と逆の歪特性を計算する。第1の歪補償部31から出力されて当該第1の歪補償部31において用いられる多項式係数の計算/更新に用いられる予歪信号u(t)は、第1の歪補償部31における歪補償処理にとっての参照信号(リファレンス信号)である。
歪計算部34は、第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値を計算/更新するため、第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)の供給を受けるとともに、DDC9から出力される帰還信号y(t)の入力を受け、前記予歪信号u(t)と前記帰還信号y(t)とに基づいて、第1の歪補償部31以降における歪(主に、第2の歪補償部32において与えられる予歪、および非線形増幅器6において生じる歪)と逆の歪特性を計算する。第1の歪補償部31から出力されて当該第1の歪補償部31において用いられる多項式係数の計算/更新に用いられる予歪信号u(t)は、第1の歪補償部31における歪補償処理にとっての参照信号(リファレンス信号)である。
第1の歪補償部31から出力される予歪信号をu(t)とするとともに第1の歪補償部31以降における歪特性をHとすると、帰還信号y(t)は下記の数式5のように表され、第1の歪補償部31以降における歪特性Hの逆特性H-1は下記の数式6のように表され、また、予歪信号u(t)は下記の数式7のように表される。逆特性H-1が第1の歪補償部31において入力信号x(t)に与えられる予歪に相当する。
(数5) y(t) = H(u(t))
(数6) H-1 = u(t)/y(t)
(数7) u(t) = H-1(x(t))
(数5) y(t) = H(u(t))
(数6) H-1 = u(t)/y(t)
(数7) u(t) = H-1(x(t))
歪計算部34は、第1の歪補償部31以降における歪(主に、第2の歪補償部32において与えられる予歪、および非線形増幅器6の非線形特性/歪特性に起因して生じる歪)と逆の歪特性を示す多項式(上記の数式1参照)に従い、帰還信号y(t)に前記逆の歪特性を与えて予歪帰還信号u'(t)を生成する。すなわち、u'(t) = H-1(y(t)) と表される。
歪計算部34は、また、上記予歪信号u(t)と上記予歪帰還信号u'(t)とを比較し、上記予歪信号u(t)と上記予歪帰還信号u'(t)との差分に基づいて、上記予歪信号u(t)に対する上記予歪帰還信号u'(t)の誤差が最小となるように最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)推定アルゴリズム,再帰的最小二乗(RLS:Recursive Least Square)アルゴリズム,または最小平均二乗(LMS:Least Mean Square)アルゴリズムなどの適応制御アルゴリズムに従って多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値(上記の数式1参照)を計算する。
なお、予歪信号u(t)が第1の歪補償部31から出力されて非線形増幅器6を経由して歪計算部34へとフィードバックデータとして戻ってくる帰還信号y(t)には遅延が生じるため、歪計算部34において、第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)が帰還信号y(t)として戻ってくるタイミングで、当該帰還信号y(t)と、当該帰還信号y(t)に対応する、第1の歪補償部31から出力されて歪計算部34へと入力される予歪信号u(t)と、が比較されるように、言い換えると、帰還信号y(t)に生じる遅延に応じて予歪信号u(t)が遅延するように、例えば遅延回路を介在させるなどして調整される。
第2の歪補償部32は、第1の歪補償部31とともに、非線形増幅器6の非線形特性/歪特性に起因して生じる歪と逆の歪特性を示す多項式に従い、歪補償装置3へと入力される入力信号x(t)に前記逆の歪特性を与えて第2の予歪信号us(t)を生成する。
第2の歪補償部32は、具体的には、下記の数式8に示す多項式に従って第2の予歪信号us(t)を生成する。
(数8) us(t) = ωs0・u(t)・φ0(m)
+ωs1・u(t)・φ1(m)
+ωs2・u(t)・φ2(m)
+・・・
+ωsn・u(t)・φn(m)
(数8) us(t) = ωs0・u(t)・φ0(m)
+ωs1・u(t)・φ1(m)
+ωs2・u(t)・φ2(m)
+・・・
+ωsn・u(t)・φn(m)
上記の数式8において、ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnは多項式係数であり、また、φ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)はルジャンドル多項式に従って例えば上記の数式2A,2B,2C,2Dに示すように与えられる。ここではすべてについての列記は省略するが、φ4(m),φ5(m),・・・,φn(m)もルジャンドル多項式に従って所定の数式によって与えられる(尚、ルジャンドル多項式の3次以降の奇数次の項にならって与えられる)。添字0,1,2,・・・,nは、ωsやφ(m)を相互に区別するための連番の識別子である。第1の歪補償部31において用いられる上記の数式1に示す多項式の項の個数と第2の歪補償部32において用いられる上記の数式8に示す多項式の項の個数とは同じに設定され、すなわち、上記の数式8における添字の最大値であるnの値は、第1の歪補償部31において用いられる上記の数式1における添字の最大値であるnの値と同じに設定される。
上記の数式8におけるmは、上記の数式1ならびに数式2A乃至2Dにおけるmと同じである(上記の数式3,数式4参照)。
第2の歪補償部32は、第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)の入力を受けるとともに、補正部37から供給されるφN(m)の値、および係数テーブル35から補正部37を介して供給される多項式係数ωsNの値の入力を受け、前記の予歪信号u(t),φN(m)の値,および多項式係数ωsNの値を用いて上記の数式8に従って第2の予歪信号us(t)を生成して出力する。
係数テーブル35は、第2の歪補償部32における第2の予歪信号us(t)の生成処理で用いられる多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の組み合わせを保持する。係数テーブル35に保持される多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値は、歪計算部34によって計算されて係数テーブル35へと供給される。係数テーブル35は、前記供給される多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の組み合わせを補正部37へと供給する。
第2の強度算出部36は、第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2(または、前記予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2の正の平方根|u(t)|)を算出して補正部37に対して出力する。
補正部37は、第2の強度算出部36から出力される予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2(または、前記予歪信号u(t)の強度の2乗値|u(t)|2の正の平方根|u(t)|)の入力を受けるとともに当該補正部37内に格納されているルックアップテーブルを参照して、前記|u(t)|2(または、|u(t)|)をmとして(上記の数式3,数式4参照)当該mの値に対応するφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値(例えば、上記の数式2A乃至2D参照)の組み合わせを前記ルックアップテーブルから取得する。補正部37内に格納されるルックアップテーブルの内容は、第1の歪補償部31内に格納されるルックアップテーブルの内容と同様である。
補正部37は、上記取得したφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせを第2の歪補償部32へと供給する。
補正部37は、また、係数テーブル35から供給される多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の組み合わせを、所定の補正処理を施したうえで、第2の歪補償部32へと供給する。補正部37が行う補正処理の内容については後述する。
ここで、低い周波数の信号を出力したい場合は1サンプルでの位相カウンタの進みが小さく1周期を出力するまでのサンプル数が多くなる。逆に、高い周波数の信号を出力したい場合は1サンプルでの位相カウンタの進みが大きく1周期を出力するまでのサンプル数が少なくなる。この構造のため、数値制御発振器動作中に送信周波数(即ち、DUC4による周波数変換処理(具体的には、アップコンバージョン)における変換後の周波数)を変更した場合、位相カウンタの進む大きさは変更されるがカウンタ位置はリセットされない。したがって、送信周波数変更のタイミングに位相が依存することとなる。これにより、歪補償処理ループで使用する送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とが同期していない場合は、歪計算部34へと入力される予歪信号u(t)と帰還信号y(t)との位相差(即ち、歪補償処理ループの位相差)が送信周波数を変更したり電源を投入したりするたびに変化し、もとの周波数に設定し直した場合でも位相差は元の位相差と異なることとなる。このため、歪補償装置3を通過する際に位相回転量は送信周波数を変更したり電源を投入したりするたびに異なることとなる。この場合、歪計算部34へと入力される予歪信号u(t)と帰還信号y(t)との位相差(即ち、歪補償処理ループの位相差)が係数テーブル35に保持されている多項式係数ωsNの値が計算された時と異なると、第1の歪補償部31で位相回転が生じることとなって変化量が大きくなり、第1の歪補償部31での補償量が大きくなる、という問題がある。特に位相が180°回転する場合には原点を通ることとなり、歪補償処理ループが不安定になって発散し易い、という問題がある。
これに対し、歪補償処理ループで使用する送信用の数値制御発振器5と帰還用の数値制御発振器10とのリセットタイミングおよび周波数設定タイミングを同期させることにより、歪計算部34へと入力される予歪信号u(t)と帰還信号y(t)との位相差(即ち、歪補償処理ループの位相差)が送信周波数ごとに固定されることとなり、第2の歪補償部32において歪補償処理が安定して常に適切に行われる。また、第1の歪補償部31では位相の補償をする必要が無くなり、第1の歪補償部31での補償量が微小に抑えられる。
(第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の計算/更新)
歪計算部34から係数テーブル35へと供給されて第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の計算/更新は、第1の歪補償部31における予歪信号u(t)の生成処理で用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値の計算/更新の前に行われる。
歪計算部34から係数テーブル35へと供給されて第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の計算/更新は、第1の歪補償部31における予歪信号u(t)の生成処理で用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値の計算/更新の前に行われる。
具体的には、第1の歪補償部31における予歪信号u(t)の生成処理で用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値がすべて1に設定された状態で、第1の歪補償部31が、入力信号x(t)の入力を受けるとともに、当該第1の歪補償部31内に格納されているルックアップテーブルを参照してφN(m)の値を取得し、前記の入力信号x(t),φN(m)の値,および多項式係数ωNの値(尚、すべて1である)を用いて上記の数式1に従って予歪信号u(t)を生成して出力する。
続いて、第2の歪補償部32における第2の予歪信号us(t)の生成処理で用いられる多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値がすべて1に設定された状態で、第2の歪補償部32が、第1の歪補償部31から出力される上記予歪信号u(t)の入力を受けるとともに、補正部37から供給されるφN(m)の値の入力を受け、前記の予歪信号u(t),φN(m)の値,および多項式係数ωsNの値(尚、すべて1である)を用いて上記の数式8に従って第2の予歪信号us(t)を生成して出力する。
第2の歪補償部32から出力される第2の予歪信号us(t)は、DUC4および非線形増幅器6のそれぞれにおける処理が施されたうえで、分配器8を経由して(尚、アンテナ7には入力されない)、DDC9における処理が施されて帰還信号y(t)としてDDC9から出力される。
歪計算部34は、第1の歪補償部31から出力される上記予歪信号u(t)の供給を受けるとともに、DDC9から出力される上記帰還信号y(t)の入力を受け、前記予歪信号u(t)と前記帰還信号y(t)とに基づいて、上述した手順により、多項式係数を計算する。第1の歪補償部31から出力されて第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の計算/更新に用いられる予歪信号u(t)は、第2の歪補償部32における歪補償処理にとっての参照信号(リファレンス信号)である。
そして、上記で計算される多項式係数が係数テーブル35へと供給され、係数テーブル35は前記供給される多項式係数を多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnとして保持する。
歪計算部34における、第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の計算/更新は、例えば、下記の1)乃至4)のうちのいずれかに従って行われることが考えられる。
1)無線送信機1として通信が行われる当初に1回行われて当該の通信中は行われない。すなわち、当該の通信中は多項式係数ωsNの値が固定され、1回の通信ごとに多項式係数ωsNの値が更新される。
2)無線送信機1として所定の回数(例えば、5~10回程度)の通信が行われるごとに行われる。すなわち、所定の回数の通信が行われる期間は多項式係数ωsNの値が固定され、前記所定の回数の通信ごとに多項式係数ωsNの値が更新される。
3)所定の期間(例えば、半年~2年程度)ごとに行われる。すなわち、所定の期間は多項式係数ωsNの値が固定され、前記所定の期間ごとに多項式係数ωsNの値が更新される。
4)無線送信機1として通信が行われる当初に1回行われてその後は一切行われない。すなわち、永続的に多項式係数ωsNの値が固定される。
1)無線送信機1として通信が行われる当初に1回行われて当該の通信中は行われない。すなわち、当該の通信中は多項式係数ωsNの値が固定され、1回の通信ごとに多項式係数ωsNの値が更新される。
2)無線送信機1として所定の回数(例えば、5~10回程度)の通信が行われるごとに行われる。すなわち、所定の回数の通信が行われる期間は多項式係数ωsNの値が固定され、前記所定の回数の通信ごとに多項式係数ωsNの値が更新される。
3)所定の期間(例えば、半年~2年程度)ごとに行われる。すなわち、所定の期間は多項式係数ωsNの値が固定され、前記所定の期間ごとに多項式係数ωsNの値が更新される。
4)無線送信機1として通信が行われる当初に1回行われてその後は一切行われない。すなわち、永続的に多項式係数ωsNの値が固定される。
ここで、歪の補償特性が忘却されることに対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持するため、第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNの更新間隔は、第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ωNの更新間隔よりも長くなるように設定される。例えば、あくまで一例として挙げると、第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ωNが1~3程度の範囲のうちのいずれかのサンプルごとに(別言すると、サンプル間隔で;言い換えると、一定の時間間隔で)更新され、第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNが通信ごとに更新されるようにしてもよい。
第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の計算/更新が行われた後に、無線送信機1として通信が行われつつ、上述の第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値の計算/更新が行われる。
そして、歪計算部34は、計算した多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値を、第1の歪補償部31へと供給する。これにより、第1の歪補償部31における予歪信号u(t)の生成処理で用いられる多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値が更新される。
(第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その1)
係数テーブル35に保持される多項式係数ωsNは、非線形増幅器6の増幅特性(具体的には、非線形特性/歪特性,利得)に対応する値であるところ、非線形増幅器6の増幅特性は、送信周波数(即ち、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数)の変化、具体的には、発振器制御部11から出力される周波数設定信号に基づく送信周波数の変化に伴って変動する。
係数テーブル35に保持される多項式係数ωsNは、非線形増幅器6の増幅特性(具体的には、非線形特性/歪特性,利得)に対応する値であるところ、非線形増幅器6の増幅特性は、送信周波数(即ち、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数)の変化、具体的には、発振器制御部11から出力される周波数設定信号に基づく送信周波数の変化に伴って変動する。
そこで、補正部37は、係数テーブル35から供給される多項式係数ωsNのうちの1次項の係数ωs0の値を送信周波数に応じて補正したうえで第2の歪補償部32へと供給する。すなわち、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωs0の値が、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される。これにより、第2の歪補償部32における歪補償処理の振幅対振幅(AM/AM:Amplitude Modulation/Amplitude Modulation)特性の平均利得が調整される。
具体的には、補正部37は、係数テーブル35に保持されている多項式係数ωsNの供給を受けるとともに、発振器制御部11から出力される周波数設定信号の入力を受ける。
そして、補正部37は、上記周波数設定信号に従う現在の送信周波数の設定値fcを特定し、上記多項式係数ωsNのうちの1次項の係数ωs0の値と前記現在の送信周波数の設定値fcとを用いて例えば下記の数式9に従って補正後の1次項の係数ωs0'の値を計算する。
(数9) ωs0' = Cf×(fc-ft)×ωs0
ここに、 ωs0':1次項の係数ωs0の補正後の1次項の係数
Cf:周波数補正係数(定数)
fc:現在の送信周波数の設定値[kHz]
ft:1次項の係数ωs0が計算された時の送信周波数の設定値[kHz]
(数9) ωs0' = Cf×(fc-ft)×ωs0
ここに、 ωs0':1次項の係数ωs0の補正後の1次項の係数
Cf:周波数補正係数(定数)
fc:現在の送信周波数の設定値[kHz]
ft:1次項の係数ωs0が計算された時の送信周波数の設定値[kHz]
周波数補正係数Cfは、予め定められる定数(固定値)であり、特定の値に限定されるものではなく、例えば、当該の無線送信機1において送信周波数の設定値が相互に異なる条件下で計算された複数の1次項の係数ωs0の実績データに基づいて決定されるようにしてもよい。
1次項の係数ωs0が計算された時の送信周波数の設定値ftについては、第2の歪補償部32において用いられる1次項の係数ωs0の計算が歪計算部34において行われる時に発振器制御部11から出力される周波数設定信号が補正部37へと入力されて前記周波数設定信号に従って特定される送信周波数の設定値が前記送信周波数の設定値ftとして用いられる。
1次項の係数ωs0の値の補正の仕法は、上記の数式9に従う計算に限定されるものではなく、1次項の係数ωs0の値が送信周波数の設定値に応じて補正されるのであればどのような処理であってもよい。
(第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その1に関係する動作)
補正部37は、上記で計算される補正後の1次項の係数ωs0'の値を第2の歪補償部32へと供給するとともに、係数テーブル35から供給される多項式係数ωsNのうちの2次以降の項の係数ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値をそのまま第2の歪補償部32へと供給する。
補正部37は、上記で計算される補正後の1次項の係数ωs0'の値を第2の歪補償部32へと供給するとともに、係数テーブル35から供給される多項式係数ωsNのうちの2次以降の項の係数ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値をそのまま第2の歪補償部32へと供給する。
第2の歪補償部32は、補正部37から供給される補正後の1次項の係数ωs0'の値を上記の数式8における1次項の係数ωs0の値として用いるとともに2次以降の項の係数ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値を用いて上記の数式8に従って第2の予歪信号us(t)を生成する。
(第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その2)
第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNについて、あるいは、相互に異なる所定の送信周波数の設定条件下それぞれで歪計算部34によって計算された前記送信周波数の設定条件(具体的には、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数の値)ごとの多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値のデータセットが予め複数準備され、前記準備された多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値のデータセットを係数テーブル35が保持するようにしたうえで第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正が行われるようにしてもよい。すなわち、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsNの値が、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される。
第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNについて、あるいは、相互に異なる所定の送信周波数の設定条件下それぞれで歪計算部34によって計算された前記送信周波数の設定条件(具体的には、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数の値)ごとの多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値のデータセットが予め複数準備され、前記準備された多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値のデータセットを係数テーブル35が保持するようにしたうえで第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正が行われるようにしてもよい。すなわち、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsNの値が、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される。
補正部37は、発振器制御部11から出力される周波数設定信号の入力を受け、前記周波数設定信号に従う現在の送信周波数の設定値を特定する。
そして、補正部37は、係数テーブル35に保持されている送信周波数の設定条件(具体的には、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数の値)ごとの多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値のデータセットの中から、前記送信周波数の設定条件のうちで上記現在の送信周波数の設定値に近いものから順に2つ以上のデータセットを選択する。
そのうえで、補正部37は、上記選択したデータセットを用いて、多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnそれぞれについて補間を実施して上記現在の送信周波数の設定値に対応する多項式係数の値を計算する。補間の仕法は、特定の方式や手順には限定されないものの、例えば線形補間,スプライン補間,またはラグランジュ補間など種々の補間方式が用いられ得る。
例えば、現在の送信周波数の設定値fcに近いデータセットとして、送信周波数の設定値がf1(但し、f1<fc)の条件下で計算された多項式係数ωsf1
Nの値のデータセットと、送信周波数の設定値がf2(但し、fc<f2)の条件下で計算された多項式係数ωsf2
Nの値のデータセットとが選択された場合、下記の数式10に従って補正後の多項式係数ωsN'の値が計算される。
(数10) ωsN' = [(f2-fc)×ωsf2 N+(fc-f1)×ωsf1 N]/(f2-f1)
(数10) ωsN' = [(f2-fc)×ωsf2 N+(fc-f1)×ωsf1 N]/(f2-f1)
(第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その2に関係する動作)
補正部37は、上記で計算される補正後の多項式係数ωsN'の値を第2の歪補償部32へと供給する。
補正部37は、上記で計算される補正後の多項式係数ωsN'の値を第2の歪補償部32へと供給する。
第2の歪補償部32は、補正部37から供給される補正後の多項式係数ωsN'の値を上記の数式8における多項式係数ωs0,ωs1,ωs2,・・・,ωsnの値の組み合わせとして用いて上記の数式8に従って第2の予歪信号us(t)を生成する。
(第2の歪補償部32において用いられる入力信号の強度の補正)
非線形増幅器6の増幅特性(具体的には、非線形特性/歪特性,利得)は送信周波数(即ち、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数)の変化、具体的には、発振器制御部11から出力される周波数設定信号に基づく送信周波数の変化に伴って変動すると考えられ、補正部37から供給されて第2の歪補償部32において用いられるφN(m)の値を送信周波数に応じてシフトさせることによって歪補償処理(具体的には、DPD処理)の追従性が向上すると考えられる。なお、上述の「第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その1もしくはその2」とこの「第2の歪補償部32において用いられる入力信号の強度の補正」とは、どちらか一方のみが行われるようにしてもよく、或いは、両方が行われるようにしてもよい。
非線形増幅器6の増幅特性(具体的には、非線形特性/歪特性,利得)は送信周波数(即ち、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数)の変化、具体的には、発振器制御部11から出力される周波数設定信号に基づく送信周波数の変化に伴って変動すると考えられ、補正部37から供給されて第2の歪補償部32において用いられるφN(m)の値を送信周波数に応じてシフトさせることによって歪補償処理(具体的には、DPD処理)の追従性が向上すると考えられる。なお、上述の「第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その1もしくはその2」とこの「第2の歪補償部32において用いられる入力信号の強度の補正」とは、どちらか一方のみが行われるようにしてもよく、或いは、両方が行われるようにしてもよい。
そこで、補正部37は、第2の強度算出部36から出力される予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2(または、前記予歪信号u(t)の強度の2乗値|u(t)|2の正の平方根|u(t)|)に基づくmの値(上記の数式3,数式4参照)を送信周波数に応じて補正したうえで、補正後のmの値に対応するφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値(例えば、上記の数式2A乃至2D参照)の組み合わせを当該補正部37内に格納されているルックアップテーブルから取得する。すなわち、第2の歪補償部32における歪成分の補償処理の際に用いられる入力信号x(t)の強度に関するmの値が、歪の被補償回路(ここでは具体的には、非線形増幅器6)へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される。これにより、第2の歪補償部32における歪補償処理の入力レベル/歪レベルが調整され、振幅対振幅特性や振幅対位相特性の出力電力の縮尺が調整される。
具体的には、補正部37は、第2の強度算出部36から出力される予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2(または、前記予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2の正の平方根|u(t)|)の入力を受けるとともに、発振器制御部11から出力される周波数設定信号の入力を受ける。
そして、補正部37は、上記周波数設定信号に従う現在の送信周波数の設定値fcを特定し、上記|u(t)|2(または、|u(t)|)をmとするとともに前記現在の送信周波数の設定値fcを用いて例えば下記の数式11に従って補正後のm'の値を計算する。
(数11) m' = Cf×(fc-ft)×m
ここに、 m':mの補正後の値
Cf:周波数補正係数(定数)
fc:現在の送信周波数の設定値[kHz]
ft:多項式係数ωsNが計算された時の送信周波数の設定値[kHz]
(数11) m' = Cf×(fc-ft)×m
ここに、 m':mの補正後の値
Cf:周波数補正係数(定数)
fc:現在の送信周波数の設定値[kHz]
ft:多項式係数ωsNが計算された時の送信周波数の設定値[kHz]
周波数補正係数Cfは、予め定められる定数(固定値)であり、特定の値に限定されるものではなく、例えば、当該の無線送信機1において送信周波数の設定値が相互に異なる条件下で取得された複数の実績データに基づいて決定されるようにしてもよい。
多項式係数ωsNが計算された時の送信周波数の設定値ftについては、第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNの計算が歪計算部34において行われる時に発振器制御部11から出力される周波数設定信号が補正部37へと入力されて前記周波数設定信号に従って特定される送信周波数の設定値が前記送信周波数の設定値ftとして用いられる。
mの値の補正の仕法は、上記の数式11に従う計算に限定されるものではなく、mの値が送信周波数の設定値に応じて補正されるのであればどのような処理であってもよい。
(第2の歪補償部32において用いられる入力信号の強度の補正に関係する動作)
補正部37は、上記で計算される補正後のm'の値に対応する(つまり、補正後のm'の値をmとして)φ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせを当該補正部37内に格納されているルックアップテーブルから取得し、前記取得したφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせを第2の歪補償部32へと供給する。
補正部37は、上記で計算される補正後のm'の値に対応する(つまり、補正後のm'の値をmとして)φ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせを当該補正部37内に格納されているルックアップテーブルから取得し、前記取得したφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値の組み合わせを第2の歪補償部32へと供給する。
第2の歪補償部32は、補正部37から供給されるφ0(m),φ1(m),φ2(m),・・・,φn(m)の値を用いて上記の数式8に従って第2の予歪信号us(t)を生成する。
実施の形態に係る歪補償装置3によれば、第1の歪補償部31と、当該第1の歪補償部31における歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点(即ち、歪計算部34の接続点)よりも後段かつ歪の被補償回路としての非線形増幅器6よりも前段に設けられる第2の歪補償部32と、を有するようにしているので、第2の歪補償部32において非線形増幅器6の大まかな非線形特性/歪特性を補償するとともに第1の歪補償部31において時々刻々と変化する微小な変化を補償する(言い換えると、環境の変化に的確に追従する)ことが可能となる。実施の形態に係る歪補償装置3によれば、また、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsNの更新間隔が、第1の歪補償部31で用いられる多項式係数ωNの更新間隔よりも長いようにしているので、長時間にわたって低レベルの信号のみで高レベルの信号がない場合でも歪の補償特性が忘却されることがなく歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持することが可能となる。
実施の形態に係る歪補償装置3によれば、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsNが、歪の被補償回路としての非線形増幅器6へと入力される信号の送信周波数に応じて補正されるようにした場合には、非線形増幅器6の増幅特性(具体的には、非線形特性/歪特性,利得)は送信周波数に依存して大きく変動するところ、送信周波数の値ごとの多項式係数ωsNの値(言い換えると、歪補償特性)を準備しておいて送信周波数の設定値に応じて使用する多項式係数ωsNの値(言い換えると、歪補償特性)を変えることにより、歪を常に適切に補償することが可能となる。さらに言えば、第1の歪補償部31と第2の歪補償部32とで歪補償の役割を分担して負担を分散させることが可能となり、利得補正のダイナミックレンジを広く保つことができ、送信周波数の変化に対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を維持することが可能となる。
実施の形態に係る歪補償装置3によれば、第2の歪補償部32における歪成分の補償処理の際に用いられる入力信号x(t)の強度に関するmの値が、歪の被補償回路としての非線形増幅器6へと入力される信号の送信周波数に応じて補正されるようにした場合には、第1の歪補償部31と第2の歪補償部32とで歪補償の役割を分担して負担を分散させることが可能となり、2つの歪補償部31,32の各々が対象とする歪補償の変動要因を減らすことができ、歪補償処理の安定性を向上させることが可能となる。
実施の形態に係る歪補償装置3によれば、第2の歪補償部32で用いられる多項式係数ωsNが通信ごとに更新されるようにした場合には、歪の補償特性が忘却されることに一層確実に対処して歪を常に適切に補償して歪が的確に抑制された状態を一層確実に維持することが可能となる。
実施の形態に係る歪補償装置3によれば、歪の被補償回路としての非線形増幅器6へと入力される信号の周波数変換処理(即ち、DUC4によるアップコンバージョン)に用いられる送信用の数値制御発振器5と歪の被補償回路としての非線形増幅器6から出力される信号の周波数変換処理(即ち、DDC9によるダウンコンバージョン)に用いられる帰還用の数値制御発振器10とが、リセットタイミングが同期しているとともに周波数設定タイミングが同期しているようにしているので、送信用の数値制御発振器5から出力される正弦波の位相と帰還用の数値制御発振器10から出力される正弦波の位相とが同期し、歪補償処理のためのトレーニング時(具体的には、多項式係数ωN,ωsNの計算/更新時)と歪補償処理の実際の適用時とで歪補償処理ループの位相差が異なると歪補償処理ループが不安定になって発散し易くなることを防止すること、すなわち、歪補償処理において位相を補正しようとして歪補償特性を位相回転させるため、特性が大きく動くことから予歪引き込み時に発散し易くなってしまうことを防止することが可能となる。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では歪の被補償回路が非線形増幅器6であるようにしているが、この発明が対象とし得る歪の被補償回路は非線形増幅器に限定されるものではなく、この発明は、回路へと入力される信号に当該回路の非線形特性/歪特性に応じて歪が生じる種々の回路を被補償回路として適用され得る。
また、上記の実施の形態では歪計算部34が第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)の供給を受けて第1の歪補償部31以降における歪と逆の歪特性を計算するようにしているが、歪計算部34が第1の歪補償部31へと入力される前の入力信号x(t)の供給を受けるようにしてもよい。この場合、入力信号x(t)が第1の歪補償部31における歪補償処理にとっての参照信号(リファレンス信号)となり、歪計算部34は、入力信号x(t)と帰還信号y(t)とを比較し、前記入力信号x(t)と前記帰還信号y(t)との差分に基づいて、前記入力信号x(t)に対する前記帰還信号y(t)の誤差が最小となるように適応制御アルゴリズムに従って多項式係数ω0,ω1,ω2,・・・,ωnの値(上記の数式1参照)を計算する。
また、上記の実施の形態では第2の歪補償部32が第1の歪補償部31の後段に設けられるようにしているが、第2の歪補償部32は、歪計算部34の接続点(即ち、第1の歪補償部31における歪補償処理にとっての参照信号の取得点;上記の実施の形態では、第1の歪補償部31よりも後段)よりも後段かつ非線形増幅器6よりも前段であればどこに設けられるようにしてもよい。なお、上述のように歪計算部34が第1の歪補償部31へと入力される前の入力信号x(t)の供給を受ける(即ち、歪計算部34の接続点が第1の歪補償部31よりも前段である;即ち、第1の歪補償部31における歪補償処理にとっての参照信号の取得点が第1の歪補償部31よりも前段である)ようにした場合には、第2の歪補償部32が、歪計算部34の接続点(即ち、第1の歪補償部31における歪補償処理にとっての参照信号の取得点)よりも後段かつ第1の歪補償部31の前段(尚、非線形増幅器6よりも前段)に設けられるようにしてもよい。
また、第1の歪補償部31は、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ωNとφN(m)との積の積算値(「ΣωN・φN(m)」と表記する)を第2のルックアップテーブルとして保持するようにしてもよい。具体的には、上記の数式1を変形して得られる下記の数式12のうちの[ ]内を計算した値を第2のルックアップテーブルとして保持するようにしてもよい。
(数12) u(t) = x(t)[ω0・φ0(m)
+ω1・φ1(m)
+ω2・φ2(m)
+・・・
+ωn・φn(m)]
(数12) u(t) = x(t)[ω0・φ0(m)
+ω1・φ1(m)
+ω2・φ2(m)
+・・・
+ωn・φn(m)]
上記のように第1の歪補償部31が第2のルックアップテーブルとして|x(t)|2(または、|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、ΣωN・φN(m)の値(即ち、上記の数式12のうちの[ ]内を計算した値)を保持する場合は、第1の歪補償部31は、歪計算部34から供給される多項式係数ωNの値と当該第1の歪補償部31内にもとより格納されているルックアップテーブルのφN(m)の値とを用いて、|x(t)|2(または、|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、ΣωN・φN(m)の値を計算して保持する。
上記の場合は、また、第1の歪補償部31は、歪補償装置3へと入力される入力信号x(t)の入力を受けるとともに、第1の強度算出部33から出力される入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、前記入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)の入力を受け、前記の入力信号x(t)、および、前記|x(t)|2(または、|x(t)|)をmとして(上記の数式3,数式4参照)第2のルックアップテーブルを参照して取得される前記mの値に対応するΣωN・φN(m)の値(即ち、上記の数式18のうちの[ ]内を計算した値)を用いて上記の数式12に従って予歪信号u(t)を生成して出力する。
上記の場合は、また、多項式係数ωNの更新に伴って第2のルックアップテーブルとして保持されるΣωN・φN(m)が例えば1サンプルごとに更新されると計算負荷が大きくなって不効率となるので、多項式係数ωNの更新に伴う第2のルックアップテーブルとして保持されるΣωN・φN(m)の更新は複数サンプルごとに(例えば、500~1500程度の範囲のうちのいずれかのサンプルごとに/サンプル間隔で)行われることが好ましい。ただし、第2のルックアップテーブルとして保持されるΣωN・φN(m)の更新間隔(つまり、第1の歪補償部31において用いられる多項式係数ωNの更新間隔)は、第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNの更新間隔よりも短くなるように設定される。
また、係数テーブル35は、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、第2の歪補償部32において用いられる多項式係数ωsNとφN(m)との積の積算値(「ΣωsN・φN(m)」と表記する)を保持するようにしてもよい。具体的には、上記の数式8を変形して得られる下記の数式13のうちの[ ]内を計算した値を係数テーブル35が保持するようにしてもよい。
(数13) us(t) = u(t)[ωs0・φ0(m)
+ωs1・φ1(m)
+ωs2・φ2(m)
+・・・
+ωsn・φn(m)]
(数13) us(t) = u(t)[ωs0・φ0(m)
+ωs1・φ1(m)
+ωs2・φ2(m)
+・・・
+ωsn・φn(m)]
上記のように係数テーブル35が|x(t)|2(または、|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、ΣωsN・φN(m)の値(即ち、上記の数式13のうちの[ ]内を計算した値)を保持する場合は、係数テーブル35は、歪計算部34によって計算される、第2の歪補償部32における第2の予歪信号us(t)の生成処理用の多項式係数ωsNの値の供給を受けるとともに、補正部37内に格納されているルックアップテーブルに保持されている、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2(または、入力信号x(t)の強度の2乗値|x(t)|2の正の平方根|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、φN(m)の値の組み合わせを前記ルックアップテーブルを参照して取得する。そして、係数テーブル35は、前記多項式係数ωsNの値と前記φN(m)の値とを用いて、前記|x(t)|2(または、|x(t)|)ごとの、つまりmの値ごとの、ΣωsN・φN(m)の値を計算して保持する。
上記の場合は、また、補正部37は、第2の強度算出部36から出力される予歪信号u(t)の強度の2乗値|u(t)|2(または、前記予歪信号u(t)の強度の2乗値|u(t)|2の正の平方根|u(t)|)の入力を受けるとともに係数テーブル35を参照して、前記|u(t)|2(または、|u(t)|)をmとして(上記の数式3,数式4参照)当該mの値に対応するΣωsN・φN(m)の値を係数テーブル35から取得する。補正部37は、前記取得したΣωsN・φN(m)の値を第2の歪補償部32へと供給する。
上記の場合は、また、第2の歪補償部32は、第1の歪補償部31から出力される予歪信号u(t)の入力を受けるとともに、係数テーブル35から補正部37を介して供給されるΣωsN・φN(m)の値の入力を受け、前記の予歪信号u(t)およびΣωsN・φN(m)の値を用いて上記の数式13に従って第2の予歪信号us(t)を生成して出力する。
上記の場合は、また、相互に異なる所定の送信周波数の設定条件下それぞれで計算された前記送信周波数の設定条件(具体的には、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数の値)ごとのΣωsN・φN(m)の値が予め複数準備され、前記準備されたΣωsN・φN(m)の値を係数テーブル35が保持するようにしたうえで、上述の「第2の歪補償部32において用いられる多項式係数の補正/その2」と同様の考え方に従って、第2の歪補償部32において用いられるΣωsN・φN(m)の値の補正が行われるようにしてもよい。この場合、補正部37は、係数テーブル35に保持されている送信周波数の設定条件(具体的には、DUC4による周波数変換処理(アップコンバージョン)における変換後の周波数の値)ごとのΣωsN・φN(m)の値の中から、前記送信周波数の設定条件のうちで現在の送信周波数の設定値に近いものから順に2つ以上のΣωsN・φN(m)の値を選択する。そのうえで、補正部37は、前記選択したΣωsN・φN(m)の値を用いて、ΣωsN・φN(m)の値について補間を実施して前記現在の送信周波数の設定値に対応するΣωsN・φN(m)'の値を計算する。そして、補正部37は、第2の強度算出部36から出力される予歪信号u(t)の強度の2乗値|u(t)|2(または、前記予歪信号u(t)の2乗値|u(t)|2の正の平方根|u(t)|)をmとして(上記の数式3,数式4参照)当該mの値に対応する前記現在の送信周波数の設定値に対応するΣωsN・φN(m)'の値を選択する。補正部37は、前記選択したΣωsN・φN(m)'の値を第2の歪補償部32へと供給する。
1 無線送信機
2 制御部
2a 中央処理装置(CPU)
2b 入出力部(I/O)
2c 記憶部
3 歪補償装置
31 第1の歪補償部
32 第2の歪補償部
33 第1の強度算出部
34 歪計算部
35 係数テーブル
36 第2の強度算出部
37 補正部
4 DUC
5 送信用の数値制御発振器(NCO)
6 非線形増幅器
7 アンテナ
8 分配器
9 DDC
10 帰還用の数値制御発振器(NCO)
11 発振器制御部
2 制御部
2a 中央処理装置(CPU)
2b 入出力部(I/O)
2c 記憶部
3 歪補償装置
31 第1の歪補償部
32 第2の歪補償部
33 第1の強度算出部
34 歪計算部
35 係数テーブル
36 第2の強度算出部
37 補正部
4 DUC
5 送信用の数値制御発振器(NCO)
6 非線形増幅器
7 アンテナ
8 分配器
9 DDC
10 帰還用の数値制御発振器(NCO)
11 発振器制御部
Claims (4)
- 歪の被補償回路の非線形特性に応じて入力信号に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部および第2の歪補償部を有し、
前記第2の歪補償部が、前記第1の歪補償部における前記歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点よりも後段かつ前記歪の被補償回路よりも前段に設けられ、
前記第2の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔が、前記第1の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔よりも長く、
前記第2の歪補償部で用いられる前記多項式係数が、前記歪の被補償回路へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される、
ことを特徴とする歪補償装置。 - 歪の被補償回路の非線形特性に応じて入力信号に生じる歪成分を多項式近似を用いて補償する第1の歪補償部および第2の歪補償部を有し、
前記第2の歪補償部が、前記第1の歪補償部における前記歪成分の補償処理にとっての参照信号の取得点よりも後段かつ前記歪の被補償回路よりも前段に設けられ、
前記第2の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔が、前記第1の歪補償部で用いられる多項式係数の更新間隔よりも長く、
前記第2の歪補償部における前記歪成分の補償処理の際に用いられる前記入力信号の強度に関する値が、前記歪の被補償回路へと入力される信号の送信周波数に応じて補正される、
ことを特徴とする歪補償装置。 - 前記第1の歪補償部で用いられる前記多項式係数が一定の時間間隔で更新され、
前記第2の歪補償部で用いられる前記多項式係数が通信ごとに更新される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の歪補償装置。 - 前記歪の被補償回路へと入力される前記信号のアップコンバージョンに用いられる発振器と前記歪の被補償回路から出力される信号のダウンコンバージョンに用いられる発振器とが、リセットタイミングが同期しているとともに周波数設定タイミングが同期している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の歪補償装置。
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