JP3664277B2 - 発泡成形品用導電性シリコーンゴム組成物及び発泡導電性ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコーンゴムの優れた特性を損なうことなく、細かく均一なセルを有し、かつ、成形品の硬度を容易に調整することが可能な発泡成形品用導電性シリコーンゴム組成物と、この組成物からなる発泡弾性体層を備えた、特に、静電転写式複写機、レーザービームプリンタ等の現像部や転写部などで好適に使用される発泡導電性ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電転写式複写機、レーザービームプリンタ等の現像部や転写部などの部位においては、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属などからなる導電性中心材上に、導電性ゴム組成物からなる発泡弾性体層が被覆形成された発泡導電性ロールが使用されている。上記発泡弾性体層を構成する導電性ゴム組成物としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の各種合成ゴムを主成分とし、これにカーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の導電性粒子及び発泡剤、架橋剤等を所定の割合で配合したものなどが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの中でも、シリコーンゴムを主成分とした導電性シリコーンゴム組成物は、製造時の抵抗値安定性及び低温低湿から高温高湿までの環境に対する抵抗値安定性に優れているとともに、特に圧縮に対する歪み特性が他のものに比べて極めて優れているという利点がある。しかしながら、この種の導電性シリコーンゴム組成物においては、シリコーンゴムの粘度が元々低いうえに、製造時に使用される架橋剤の架橋速度が発泡速度に比べて遅いため、セルが大きくなり過ぎ粗く不均一なものになってしまうという問題があった。発泡成形品においては、細かく均一なセルを有していることが、その特性を損なわない上で最も重要であるが、従来の導電性シリコーンゴムでは、そのような細かく均一なセルを有した発泡成形品を得ることは困難であった。
【0004】
そこで、このような問題に対して従来では、シリカ、マイカ、クレー等の無機充填剤を多量に配合して未架橋シリコーンゴムコンパウンドの粘度を高め、これによってセルを細かく均一にする試みがなされているのであるが、この方法の場合には、無機充填剤の影響によって発泡弾性体層の特性が変化してしまうことが懸念されるため、無機充填剤の配合量には限度があり、実際上の改善には至っていない。
【0005】
さて、この種の導電性シリコーンゴム組成物を構成材料として用いた発泡導電性ロールとしては、細かく均一なセルを有し、かつ特性変化が少ないことに加え、使用条件に合った最適な硬度を備えたものが要求される。ロールの硬度を調整する方法としては、例えば、発泡弾性体層を構成するシリコーンゴムの架橋度を変更する方法や、シリコーンゴムに配合する発泡剤の量を変更して発泡倍率を変化させて行う方法などが考えられるが、これらの方法で硬度調整を行う場合には、上記と同様、発泡弾性体層のセルが粗く不均一なものになってしまうとともに、特性が変化しまうことが懸念されるため、架橋度の調整や配合量の調整が非常に煩雑であった。
【0006】
このように現状では、シリコーンゴムの優れた特性を損なうことなく、細かく均一なセルを有し、かつ、成形品の硬度を容易に調整することが可能な導電性シリコーンゴム組成物は得られていない。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、シリコーンゴムの優れた特性を損なうことなく、細かく均一なセルを有し、かつ、成形品の硬度を容易に調整することが可能な導電性シリコーンゴム組成物と、この組成物からなる発泡弾性体層を備えた発泡導電性ロールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するべく種々研究を重ねた結果、シリコーンゴムにエチレン−プロピレンゴムを特定の混合比率で混合させた場合に、シリコーンゴムの優れた特性を維持したまま、細かく均一なセルを有した発泡成形品が得られることを見い出した。また、このとき、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムの混合比率を変更するだけで、他の添加剤の種類や配合量を何ら変更することなく、シリコーンゴムの安定した特性を維持したまま発泡成形品の硬度を容易に調整することが可能であることも見い出した。本発明者は、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明による発泡成形品用導電性シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムを95:5〜60:40の重量比で混合して得られた混合物に、少なくとも導電性付与剤を含有させていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の他の態様による発泡導電性ロールは、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムを95:5〜60:40の重量比で混合して得られた混合物に、少なくとも導電性付与剤、発泡剤及び架橋剤を含有させた導電性シリコーンゴム組成物からなる発泡弾性体層が、導電性中心材上に被覆されていることを特徴とするものである。
以上
【0011】
【発明の実施の形態】
シリコーンゴムとしては、従来より様々な種類のものが公知となっているので、それらを単独で、若しくは2種以上を併用して用いれば良い。従来公知のシリコーンゴムとしては、例えば、
(1)ビニル基を有するオルガノポリシロキサンを有機過酸化物で架橋させるタイプ、
(2)ケイ素原子結合ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素を有するオルガノポリシロキサンを白金系化合物の存在下で付加反応させて架橋させるタイプ、
(3)分子鎖両末端に水酸基を有するオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素を有するオルガノポリシロキサンを有機スズ化合物の存在下で脱水素反応させて架橋させるタイプ、
(4)分子鎖両末端に水酸基を有するオルガノポリシロキサンと加水分解性のオルガノシラン類を有機スズ化合物やチタン酸エステル類の存在下で縮合反応させて架橋させるタイプのものなどが挙げられるが、これらの中でも、有機過酸化物で架橋するタイプ(1)及び付加反応により架橋するタイプ(2)のものは、作業上取り扱い易いので好ましい。特に、有機過酸化物で架橋するタイプ(1)のものであれば、後述するエチレン−プロピレンゴムとの共架橋を必要とする場合に有効である。尚、これらは、予め充填剤等の各種の添加剤が配合されたものであっても構わない。
【0012】
エチレン−プロピレンゴムとしては、エチレンとプロピレンを共重合させたもの(EPM)の他、更に第三成分として、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等のジエン系モノマーを共重合させたもの(EPDM)などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、シリコーン変性されたものや、上記シリコーンゴムと同様に予め充填剤、可塑剤、架橋促進剤、老化防止剤等の各種の添加剤が配合されたものであっても構わない。
【0013】
本発明においては、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムを95:5〜60:40の重量比で混合することを必須要件としている。エチレン−プロピレンゴムはシリコーンゴムコンパウンドの粘度を高めてセルを細かく均一にする作用を呈するものである。エチレン−プロピレンゴムの重量比が5未満では、シリコーンゴムコンパウンドの粘度を充分に高めることがてきないためセルを細かく均一にすることができない。また、エチレン−プロピレンゴムの重量比が40を超えると、シリコーンゴムコンパウンドの粘度が高くなり過ぎ、充分な発泡倍率が得られず発泡成形品として充分な硬度にならないとともに、シリコーンゴムの優れた特性を維持することが困難になってしまう。
【0014】
上記の混合物を主成分とし、これに少なくとも導電性付与剤を含有させることにより本発明の発泡成形品用導電性シリコーンゴム組成物が完成する。導電性付与剤としては従来公知のもの、例えば、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子等の導電性粒子、炭素繊維等の繊維を粉砕した物、金属粉末等の粉状物、金属酸化物粉体、導電性ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラック粒子は安価であり、かつ導電性付与の効果も大きいため好ましい。導電性付与剤の種類や配合量は、本発明によって得られるゴム組成物に要求される抵抗値等を考慮して適宜に選択する。
【0015】
尚、本発明においては、上記の成分以外にも、充填剤(補強性充填剤、増量充填剤)、顔料、耐熱性向上剤、難燃剤等の各種の添加剤を必要に応じて適宜配合しても良い。このようなものとしては、例えば、煙霧質シリカ、沈殿法シリカ、けいそう土、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、マイカ、クレイ、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、水酸化セリウム、ガラスビーズ、ポリジメチルシロキサン、アルケニル基含有ポリシロキサン、ポリオルガノシルセスキオキサンなどが挙げられる。
【0016】
本発明のゴム組成物を使用して発泡成形品を製造する方法としては、例えば、組成物中に予め所定の温度で分解あるいは気化してガスを発生する発泡剤を配合しておき、これを加熱して発泡させる方法や、高圧下で組成物中にガスを溶解させ、その後圧力を低下させることにより発泡させる方法などが挙げられる。これらは、得ようとする発泡成形品の種類等を考慮して適宜に選択する。このようにして製造された発泡成形品は、シリコーンゴムの優れた特性を何ら損なうことなく、細かく均一なセルを有したものとなる。従って、本発明のゴム組成物は、例えば、発泡導電性ロールの構成材料などとして好適に使用することができる。
【0017】
本発明の他の態様による発泡導電性ロールは、上記構成の導電性シリコーンゴム組成物に少なくとも発泡剤及び架橋剤を配合したものを、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属などからなる導電性中心材上に、プレス成形、トランスファー成形、押出成形などの公知の成形方法により被覆して弾性体層を形成し、その後、加熱して架橋と同時に発泡させ、更にそれを所定の外径まで研削することにより得ることができる。この際、導電性中心材上には従来公知のように、予めプライマー処理等の前処理を施しておくことが好ましい。これによって導電性中心材と発泡弾性体層との接着性を高めることができる。
【0018】
発泡剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジカルボンアミド(ADCA)などが挙げられる。発泡剤の配合量は、特に限定されないが、好ましくは、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムの混合物100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下とする。発泡剤の配合量が1重量部未満では、ほとんど発泡せず、また、10重量部を超えると隣接したセル同志が互いに連なってしまい、粗いセルになってしまう。尚、発泡剤の種類によっては、必要に応じて有機酸、尿素等の発泡助剤を併用しても良い。更に、合成ゴムに発泡剤を高濃度で充填した発泡剤を使用することもできる。
【0019】
架橋剤としては、シリコーンゴムの架橋に一般的に用いられているものであれば何でも良く特に限定されない。例えば、2,5ジメチル−2,5−ビス(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン、ジターシャリブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは、使用するシリコーンゴムのタイプ等を考慮して適宜に選択する。
【0020】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と併せて説明する。尚、シリコーンゴムとしては、ジメチルビニルシリコーンゴムを使用し、エチレン−プロピレンゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)を使用した。各配合材料の詳細は表2に示すとおりである。
【0021】
まず、表1に示した配合材料の内、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、導電性付与剤及び充填剤を3リットルニーダーで混練した。次に、得られた組成物と、発泡剤及び架橋剤を12インチオープンロールで水冷しながら充分に混練し、これをクロスヘッドダイ式押出機に供給して直径6mm、長さ260mmのステンレス製の導電性中心材上に、肉厚4.5mmとなるように押出被覆した。その後、250℃に保持された熱風炉中で10分間加熱して架橋と同時に発泡させ、次いで再び200℃に保持された乾燥炉中で8時間加熱処理した。このようにして得られた発泡弾性体層を外径15mm、長さ220mmに研削して発泡導電性ロールを製造した。
【0022】
本実施例では、このようにして製造した発泡導電性ロールのセル径、発泡倍率、ロール硬度及び抵抗値をそれぞれ測定し、その結果を基に品質の評価を行った。測定結果は表1に併記した。
【0023】
測定方法は以下のとおりである。
セル径
発泡弾性体層から厚さ0.5mm以下に切断したものを試料とし、この試料片に点在するセルの中から任意に抽出した5つのセルの内径をスケール付の拡大投影機を用いて測定し、その平均値及び最大値と最小値の差を表1に示した。得られた平均値によりセルの細かさを評価し、最大値と最小値の差によりセルの均一さを評価した。
【0024】
発泡倍率
発泡弾性体層から質量が5g程度となるように採取したものを試料とし、この試料の比重を測定した。そして、未架橋状態(未発泡状態)のゴム組成物の比重に基づき発泡状態での体積増加分を算出し、これを発泡倍率として表1に示した。
【0025】
ロール硬度
発泡弾性体層上の任意の5箇所のアスカーC硬度を測定し、その平均値及び最大値と最小値の差を表1に示した。最大値と最小値の差によりロール硬度のバラツキを評価した。
【0026】
抵抗値
発泡導電性ロールをアルミニウム板に1kgfの荷重で押し当て、その状態で導電性中心材とアルミニウム板間にDC1kVの電圧を印加して抵抗値を測定した。表1には、10℃、25%RH雰囲気中での抵抗値と40℃、80%RH雰囲気中での抵抗値を示した。そして、抵抗値の変化から環境に対する抵抗値の安定性を評価した。抵抗値の変化が1桁を超えなければ合格と判断した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1から明らかなように、本発明にかかるゴム組成物を発泡弾性体層の構成材料として使用したロール(実施例1乃至実施例4)は、いずれも、細かく均一なセルを有しており、ロール硬度にはバラツキが全く見られていない。また、これらは、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムの混合比率の変更によってロール硬度が変化しているものの、抵抗値の安定性は何ら損なわれていない。つまり、シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムの混合比率を変更するだけで、他の添加剤の種類や配合量を何ら変更することなく、シリコーンゴムの優れた特性(抵抗値安定性)を維持したままロールの硬度を容易に調整できることが判る。
【0030】
これに対して、エチレン−プロピレンゴムを全く混合していない比較例1は、セルが粗く不均一であり、そのためにロール硬度のバラツキも大きくなっている。比較例2は、エチレン−プロピレンゴムを混合しているものの、その混合比率が本発明の範囲に満たない場合の例であるが、シリコーンゴムコンパウンドの粘度を充分に高めることがてきないため比較例1と同様にセルが粗く不均一なものであった。ロール硬度のバラツキも比較例1とほとんど変化していない。比較例3は、エチレン−プロピレンゴムの混合比率が本発明の範囲を超える場合の例であるが、発泡倍率が55%と不充分であるためロール硬度が60以上となっているとともに、抵抗値の変化も1桁以上となっており、シリコーンゴムの安定した特性を維持できていない。比較例4は、比較例1における充填剤の配合量を、シリコーンゴムの特性(例えば、伸び、引張強度)に影響が及ばない程度の量まで増加した場合の例であるが、セルの状態は比較例2と同程度にまでしか改善されていない。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の発泡成形品用導電性シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムの優れた特性を損なうことなく、細かく均一なセルを有し、かつ、成形品の硬度を容易に調整することが可能である。従って、例えば、静電転写式複写機、レーザービームプリンタ等の現像部や転写部などで使用される発泡導電性ロールの構成材料として好適である。
Claims (2)
- シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムを95:5〜60:40の重量比で混合して得られた混合物に、少なくとも導電性付与剤を含有させていることを特徴とする発泡成形品用導電性シリコーンゴム組成物。
- シリコーンゴムとエチレン−プロピレンゴムを95:5〜60:40の重量比で混合して得られた混合物に、少なくとも導電性付与剤、発泡剤及び架橋剤を含有させた導電性シリコーンゴム組成物からなる発泡弾性体層が、導電性中心材上に被覆されていることを特徴とする発泡導電性ロール。
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