JP3663700B2 - 耐風構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐風構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長大橋などを作る場合には、箱桁やトラス桁を使用した吊橋や斜長橋などが採用される。
【0003】
図6は、従来の箱桁を使用した吊橋の一例を示す側面図である。
【0004】
図中、1,1はアンカーレイジ、2,2は橋脚基礎であり、該橋脚基礎2,2上に主塔3,3を立設し、前記のアンカーレイジ1,1に両端部を固定された左右一対のメインケーブル4を前記の主塔3,3の各塔頂部に所定のたるみを持たせて架け渡し、各メインケーブル4の長手方向へ所定の間隔を置いて多数のハンガー5を吊下げ、該各ハンガー5の下端部に箱桁6を取付けた構造を有している。
【0005】
この箱桁6は、図7・図8に示すように、桁本体7の上面に、例えば、片側3車線、両側で6車線を形成するための建築限界によって定められた所定の幅員を備えた車道8を有し、該車道8の両外側に防護柵9,9を有し、該防護柵9,9から所定の間隔を隔てた外側位置に、桁本体7の長手方向へ所定の間隔を置いて複数のハンガー定着部10を配置し、更に、桁本体7の外側面に、断面が三角形状のフェアリング部11,11を備え、全体として空気力学的に安定な断面形状となるように形成されており、前記の各ハンガー定着部10に対して前記の各ハンガー5の下端部がそれぞれ定着されている。
【0006】
しかるに、吊橋や斜長橋などの長大橋梁の橋桁は、柔構造で可撓性に富んだ構造となっているため風の影響が大きく、低い風速でフラッターと呼ばれる破壊的振動が発生して、破壊に達し易い。そこで、フラッター対策が重要となるが、従来のフラッター対策は、主として、フラッター発生風速(フラッターが発生する時の風速。高いほど良い)に対する要求値に足りない分だけ箱桁6の剛性を高めることによって行われてきた。
【0007】
従って、鋼重の増加を招き建設費の面から不経済となる。とくに、今後の超長大橋開発においては、橋長が従来の橋よりも長くなるため、鋼重増により極度に不経済性となり、好ましくない。
【0008】
このような現状を打開するため、箱桁6の剛性を高める以外のフラッター対策として、図9に示すように、箱桁12を半幅に分離して連結梁13で連結することにより、箱桁12間に中央間隙14を作るようにすることが提案されている(分離箱桁)。このようにすると、中央間隙14に対する風の吹き抜けの影響などによって、フラッター発生風速が高められることが風洞実験などによって確認されている。しかも、箱桁12間の中央間隙14を広くする程、フラッター発生風速が高められることも上記風洞実験および解析により確認されている。
【0009】
しかし、実際には、フラッター対策として有効と成る程、箱桁12間の中央間隙14を広く確保することができないことから、図10に示すように、箱桁12間の中央間隙14を実施可能な寸法に抑え、箱桁12間の中央間隙14の幅中央位置に、補助的に、箱桁12の長手方向へ延びるセンターバリア15を1枚設けることが検討されている。
【0010】
このように箱桁12間の中央間隙14の幅中央位置に、箱桁12の長手方向へ延びるセンターバリア15を1枚設けることにより、中央間隙14部分における風の流れが変化され、フラッターを抑えるような機能が生じることから、フラッター発生風速が高められることが風洞実験によって確認されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記分離箱桁における箱桁12間の中央間隙14の幅中央位置に、箱桁12の長手方向へ延びるセンターバリア15を1枚設けた場合でも、フラッター発生風速に対する要求値をかろうじてクリアする程度の効果しかなく、要求値よりも十分に高いフラッター発生風速を安定して得られるようにはなっていない。
【0012】
尚、上記構造は、橋梁に限らず、高層建築物などの比較的扁平で風の影響を受け易い耐風構造物全般に有効である。
【0013】
本発明は、上述の実情に鑑み、より高いフラッター発生風速を安定して得られるようにした耐風構造物を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、半幅の箱桁を2つ設けて連結梁で連結することにより、箱桁間に中央間隙を有する耐風構造物本体を構成すると共に、箱桁間の中央間隙に、箱桁の長手方向へ延びるよう連結梁に対して垂直に設けられる板状のバリア部材を2枚設け、
2枚のバリア部材は、中間隙間の幅方向で互いに隔てられると共に、バリア部材の上下端を、箱桁の上下面と面一にし、
下流側の箱桁に作用する動的な空気力がフラッターを抑制する方向に作用すると共に、フラッターが生じるような高風速域では箱桁は、中央径間が正の迎角を持つよう構成されたことを特徴とする耐風構造物にかかるものである。
【0015】
この場合において、中央間隙の幅寸法を、片側の箱桁の幅寸法の0.5倍以上としても良い。
【0016】
又、中央間隙の幅寸法の0.15倍〜0.6倍程度の寸法を有してバリア部材どうしが隔てられると共に、各箱桁と対応する各バリア部材とが等しい距離だけ離されるよう、箱桁間の中央間隙に対して2枚のバリア部材を配置しても良い。
【0017】
特に、2枚のバリア部材を、箱桁間の中央間隙の三等分点の位置に配置するのが好ましい。
【0018】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0019】
箱桁を半分に分離して間に中央間隙を形成すると、中央間隙に対する風の吹き抜けの増大の影響などによって、フラッター発生風速(フラッターが発生する時の風速。高いほど良い)が高められる。又、箱桁間の中央間隙を広くする程、上記効果が大きくなるので、フラッター発生風速が高められる。
【0020】
そして、2つの箱桁間の中央間隙に、箱桁の長手方向へ延びる垂直板状のバリア部材を2枚設けることにより、中央間隙部分における風の流れがより複雑化され、中央間隙に対する通風の促進、上流側のバリア部材部分での風の剥離と下流側のバリア部材部分での風の再剥離、バリア部材間の間隙における渦の巻き込みなどが複合的に生じて、下流側の箱桁に作用する動的な空気力がフラッターを抑制する方向に作用することから、フラッター発生風速が高められる。
【0021】
この際、中央間隙の実施可能な幅寸法は、片側の箱桁の幅寸法の0.5倍〜1.4倍程度になる。
【0022】
又、箱桁間の中央間隙に対する2枚のバリア部材の設置位置は、箱桁から近付き過ぎず、且つ、相互に接近し過ぎないようにする。具体的には、中央間隙の幅寸法の0.15倍〜0.6倍程度の寸法を有してバリア部材どうしが隔てられると共に、各箱桁と対応する各バリア部材が等しい距離だけ離されるよう配置するのが良い。好ましくは、中央間隙の三等分点の位置に配置するのが理想的である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図示例と共に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態の一例である。
【0025】
半幅の箱桁16を2つ設けて連結梁17で連結することにより、箱桁16間に中央間隙18を有する耐風構造物本体19を構成する場合(分離箱桁)に、箱桁16間の中央間隙18を実施可能な幅寸法に抑えると共に、箱桁16間の中央間隙18に、補助的に、箱桁16の長手方向へ延びる垂直板状のバリア部材20を2枚設けるようにする。
【0026】
この際、中央間隙18の実施可能な幅寸法は、片側の箱桁16の幅寸法の0.5倍〜1.4倍程度である。
【0027】
又、箱桁16間の中央間隙18に対する2枚のバリア部材20の設置位置は、箱桁16から近付き過ぎず、且つ、相互に接近し過ぎないようにする。具体的には、中央間隙18の幅寸法の0.15倍〜0.6倍程度の寸法を有してバリア部材20どうしが隔てられると共に、各箱桁16と対応する各バリア部材20が等しい距離だけ離されるよう配置する。好ましくは、中央間隙18の三等分点の位置に配置する。
【0028】
更に、バリア部材20の上下端を、箱桁16の上下面とほぼ面一となるようにする。
【0029】
尚、図中、21は吊橋のメインケーブル、22はメインケーブル21から垂下されたハンガー、23は箱桁16にハンガー22を接続するためのハンガー定着部である。
【0030】
次に、作動について説明する。
【0031】
箱桁16を半分に分離して間に中央間隙18を形成すると、中央間隙18に対する風の吹き抜けの増大の影響などによって、フラッター発生風速(フラッターが発生する時の風速。高いほど良い)が高められる。又、箱桁16間の中央間隙18を広くする程、上記効果が大きくなるので、フラッター発生風速が高められる。
【0032】
そして、2つの箱桁16間の中央間隙18に、箱桁16の長手方向へ延びる垂直板状のバリア部材20を2枚設けることにより、中央間隙18部分における風の流れがより複雑化され、中央間隙18に対する通風の促進、上流側のバリア部材20部分での風の剥離と下流側のバリア部材20部分での風の再剥離、バリア部材20間の間隙における渦の巻き込みなどが複合的に生じて、下流側の箱桁16に作用する動的な空気力がフラッターを抑制する方向に作用することから、フラッター発生風速が高められる。
【0033】
この際、中央間隙18の実施可能な幅寸法は、片側の箱桁16の幅寸法の0.5倍〜1.4倍程度になる。
【0034】
又、箱桁16間の中央間隙18に対する2枚のバリア部材20の設置位置は、箱桁16から近付き過ぎず、且つ、相互に接近し過ぎないようにする。具体的には、中央間隙18の幅寸法の0.15倍〜0.6倍程度の寸法を有してバリア部材20どうしが隔てられると共に、各箱桁16と対応する各バリア部材20が等しい距離だけ離されるよう配置するのが良い。好ましくは、中央間隙18の三等分点の位置に配置するのが理想的である。
【0035】
【実施例】
図2に、本発明の効果を試すために行った風洞実験の結果を示す。
【0036】
この場合において、片側の箱桁16の幅寸法を13.7m、箱桁16の厚さを1.6mとし、中央間隙18を、片側の箱桁16の幅寸法と等しい13.7mとして、中央間隙18になにも設けない場合(線イ)と、中央間隙18の中央部に図10と同様にセンターバリアを1枚設けた場合(線ロ)と、中央間隙18の三等分点の位置に2枚のバリア部材20を設けた場合(線ハ)について実験した。
【0037】
実験の結果、中央間隙18になにも設けられていない線イの場合には、フラッター風速の要求値ニ(85m/s)を満たしていないが、中央間隙18の中央部に図10のセンターバリアを1枚設けた線ロの場合には、フラッター風速の要求値ニをかろうじてクリアすることがわかる。そして、中央間隙18の三等分点の位置に2枚のバリア部材20を設けた線ハの場合には、風の迎角θが正の時には、センターバリアを1枚設けた線ロの場合とは全く異なる特性を示し、要求値ニよりも十分に高いフラッター発生風速を安定して得られることが確認された。尚、風の迎角θが負の時には、−3度を除き、センターバリアを1枚設けた線ロの場合と同様、フラッター風速の要求値ニよりも僅かに高くなり、−3度で中央間隙18になにも設けない線イの場合と同様、フラッター風速の要求値ニを下回った。しかし、図3に示すように、分離箱桁の場合、フラッターが生じるような高風速域では箱桁16は、中央径間が正の迎角θを持つよう静的変形を起こすという解析結果が出ているので、正の迎角θの時にフラッター発生風速が高ければ、十分な安定性が得られることになる。
【0038】
尚、実験の都合上、風速125m/sまでしか実験を行わなかったため、図2のような結果となったが、中央間隙18の三等分点の位置に2枚のバリア部材20を設けた線ハにおける正の迎角θでの値は更に高くなる。
【0039】
次に、図4に、箱桁16間の中央間隙18の最適値を求めるために行った風洞実験の結果を示す。
【0040】
この場合において、片側の箱桁16の幅寸法を13.7m、箱桁16の厚さを1.6mとし、中央間隙18を、片側の箱桁16の幅寸法の1/4の3.29mとした場合(線ホ)と、片側の箱桁16の幅寸法の1/2の6.85mとした場合(線ヘ)と、片側の箱桁16の幅寸法と等しい13.7mとした場合(線ト)について実験した。
【0041】
実験の結果、風の迎角θが0度の時の値で比較すると、中央間隙18が3.29mの線ホの場合には、フラッター風速が50m/s、中央間隙18が6.85mの線ヘの場合には、フラッター風速が65m/s、中央間隙18が13.7mの線トの場合には、フラッター風速が80m/sとなった。
【0042】
そして、フラッター風速の要求値ニを風速85m/sとし、バリア部材20によるフラッター風速の向上効果を30m/s強とすると、この実験から、中央間隙18を6.85m以上とした場合にフラッター風速の要求値ニを満たし得ることがわかる。
【0043】
又、現状では、吊橋の全幅は、上下3車線、合計6車線でおよそ45m程度となるのが一般的なので、中央間隙18は19.18m程度までは拡大することが可能である。
【0044】
以上を総合すると、中央間隙18の幅寸法は、片側の箱桁16の幅寸法の0.5倍〜1.4倍程度とするのが実施可能な範囲ということになる。尚、建設コストなどが現状よりも低下して吊橋の全幅を45m以上にできるようになった場合には、中央間隙18の幅寸法を片側の箱桁16の幅寸法の1.4倍以上としても良いことはいうまでもない。
【0045】
最後に、図5に、バリア部材20の最適設置位置を求めるために行った風洞実験の結果を示す。
【0046】
この場合において、片側の箱桁16の幅寸法を15.5m、箱桁16の厚さを1.6mとし、中央間隙18を、片側の箱桁16の幅寸法と等しい15.5mとし、バリア部材20を中央間隙18のほぼ三等分点の位置に配置した場合(線チ)と、バリア部材20どうしを2.38mまで近付け、各バリア部材20と対応する箱桁16との間隔をそれぞれを6.56mに離した場合(線リ)と、各バリア部材20を対応する箱桁16へ3.12mまで近付け、バリア部材20どうしを9.26m離した場合(線ヌ)とについて実験した。
【0047】
実験の結果、正の迎角θにおいては、中央間隙18のほぼ三等分点の位置に配置した線チの場合に最もフラッター風速が高くなることが確認された。又、バリア部材20どうしを近付けた線リの場合や、各バリア部材20を対応する箱桁16へ近付けた線ヌの場合も、十分にフラッター風速の要求値ニを越えているので、有効であることが確認された。尚。バリア部材20どうしを限りなく近付けると、図10のセンターバリアの場合と実質的に同じになってしまい、反対に、各バリア部材20を対応する箱桁16へ限りなく近付けると、中央間隙18になにも設けない図9の場合と実質的に同じになってしまうので、中央間隙18の幅寸法の0.15倍〜0.6倍程度の寸法でバリア部材20どうしを隔てるのが適当ということになる。
【0048】
尚、本発明は、上述の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の耐風構造物によれば、より高いフラッター発生風速を安定して得ることができる。又、フラッターが生じるような高風速域では箱桁は、中央径間が正の迎角を持つよう静的変形を起こすので、正の迎角の時にフラッター発生風速が高ければ、十分な安定性が得られるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の部分拡大斜視図である。
【図2】本発明の効果を調べるために行った実験の結果を示す迎角とフラッター風速との関係を表わすグラフである。
【図3】分離箱桁の中央径間1/2点における風速と変形角度(迎角)との関係を表わすグラフである。
【図4】最適な中央間隔を調べるために行った実験の結果を示す迎角とフラッター風速との関係を表わすグラフである。
【図5】バリア部材の最適間隔を調べるために行った実験の結果を示す迎角とフラッター風速との関係を表わすグラフである。
【図6】一般的な吊橋の概略側面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視図である。
【図8】図7の概略拡大斜視図である。
【図9】分離箱桁の概略拡大斜視図である。
【図10】センターバリアを設けた分離箱桁の概略拡大斜視図である。
【符号の説明】
16箱桁
17連結梁
18中央間隙
19耐風構造物本体
20バリア部材
θ 迎角
Claims (4)
- 半幅の箱桁を2つ設けて連結梁で連結することにより、箱桁間に中央間隙を有する耐風構造物本体を構成すると共に、箱桁間の中央間隙に、箱桁の長手方向へ延びるよう連結梁に対して垂直に設けられる板状のバリア部材を2枚設け、
2枚のバリア部材は、中間隙間の幅方向で互いに隔てられると共に、バリア部材の上下端を、箱桁の上下面と面一にし、
下流側の箱桁に作用する動的な空気力がフラッターを抑制する方向に作用すると共に、フラッターが生じるような高風速域では箱桁は、中央径間が正の迎角を持つよう構成されたことを特徴とする耐風構造物。 - 中央間隙の幅寸法を、片側の箱桁の幅寸法の0.5倍以上とした請求項1記載の耐風構造物。
- 中央間隙の幅寸法の0.15倍〜0.6倍程度の寸法を有してバリア部材どうしが隔てられると共に、各箱桁と対応する各バリア部材とが等しい距離だけ離されるよう、箱桁間の中央間隙に対して2枚のバリア部材を配置した請求項1又は2記載の耐風構造物。
- 2枚のバリア部材を、箱桁間の中央間隙の三等分点の位置に配置した請求項3記載の耐風構造物。
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