JP3663233B2 - 成形体の成形方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向する2以上のパンチとダイにより、例えば粉末や金属等の材料を所定の形状に成形するための成形体の成形方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、粉末材料を圧縮成形して所定の成形品を得る方法として、ウィズドロアル法が知られている。この成形法は、加圧成形と同時に上パンチの加圧速度と関連を持った速度でダイを下降させるものであり、この種の技術に関連して、例えば、特開平5−146896号公報に開示された「粉末成形プレスの加圧制御方法」が知られている。
【0003】
上記従来技術は、上パンチと下パンチと金型とを備えた粉末成形プレスにおいて、加圧開始時に前記上パンチを一時停止させた後、各パンチおよび金型を同時に規定の加圧速度および速度にて駆動するものである。これにより、成形品を成形する際に、特に、加圧開始時点から理想的な動きを実現することができ、上パンチ、下パンチおよび金型を同調させることが可能になるとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、上パンチの加圧速度および速度に比例した規定量で下パンチおよび金型を同時に下降させている。このため、加圧時の成形体には、その軸応力と反力とが互いに打ち消し合って恰も応力が作用しない部分、所謂、ニュートラルゾーンが発生してしまう。すなわち、上パンチの成形速度等に対し一定比率で下パンチおよび金型が移動されるため、その比率によってニュートラルゾーンの発生する位置が成形体の上部から中央、あるいはその逆に向かって変化するだけであり、該ニュートラルゾーンの発生を抑えることができない。
【0005】
ニュートラルゾーンは、部分的に成形密度が低かったり、成形欠陥が多い部位であるため、このニュートラルゾーンが生成されると、その箇所に応力集中が惹起され、例えば、金型からノックアウトする際に応力が集中して局部的な破断が生じてしまうという問題が指摘されている。しかも、該ニュートラルゾーンでは、収縮が大きなものとなってしまう。
【0006】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、成形時にニュートラルゾーンが発生することがなく、高品質な成形体を確実に得ることが可能な成形体の成形方法および装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、ダイと少なくとも一つのパンチが同軸上でかつ相対的な加速度差を連続的に変化させながら移動して成形作業を行う。このため、ダイとパンチの相対的な加速度差が連続的に変化し、成形体に作用する応力や圧力が変化する。これによって、ニュートラルゾーンは、時々刻々変化して消滅し、成形体に該ニュートラルゾーンが発生することを確実に阻止することができる。
【0008】
また、本発明は、パンチおよびダイが第1および第2アクチュエータを介して進退されるとともに、このパンチおよびダイの移動加速度が第1および第2検出手段により検出される。そして、制御手段が第1および第2検出手段からの信号に基づいて第1および第2アクチュエータを駆動するため、パンチとダイが互いに加速度差を連続的に変化させながら移動する。これにより、成形体にニュートラルゾーンが発生することを回避することが可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1において、参照数字10は、本実施形態に係る成形体の成形装置を示す。この成形装置10は、鉛直方向に対向する下パンチ12および上パンチ14と、この下パンチ12および上パンチ14と成形用キャビテイ16を構成するダイ18と、前記上パンチ14を成形方向(矢印A方向)に沿って進退させる第1油圧シリンダユニット(第1アクチュエータ)20と、前記ダイ18を該上パンチ14の進退方向に沿って進退させる第2油圧シリンダユニット(第2アクチュエータ)22と、前記上パンチ14の移動加速度を検出する第1検出手段24と、前記ダイ18の移動加速度を検出する第2検出手段26と、前記第1および第2油圧シリンダユニット20、22および前記第1および第2検出手段24、26に接続されるCPU(制御手段)28とを備える。
【0010】
下パンチ12は、ベッド30上に上方向に向かって固定されており、このベッド30上には前記下パンチ12の外方にあって複数本(例えば、4本)のラムガイド32が立設される。上パンチ14は、上ラム34の下面に下方に向かって固着されるとともに、この上ラム34の下面には、ラムガイド32を嵌合するガイド筒体36が固着される。
【0011】
上ラム34の上面には、第1油圧シリンダユニット20を構成するシリンダ部38が連結される。この第1油圧シリンダユニット20は、管路40a、40bを介してタンク42に接続されており、この管路40a、40b上に流量制御弁44a、44bが配設される。
【0012】
ダイ18の下面には複数のクランプロッド46の一端が固着され、このクランプロッド46の他端が下ラム48に固定される。下ラム48には、第2油圧シリンダユニット22を構成するシリンダ部50が連結される。この第2油圧シリンダユニット22は、管路52a、52bを介してタンク42に接続されるとともに、その途上に流量制御弁54a、54bが介装される。
【0013】
第1検出手段24は、ベッド30に立設される上スケール56と、上ラム34に固着されこの上スケール56を読み取って前記上ラム34の移動加速度を検出する第1加速度検出センサ58とを備える。第2検出手段26は、下ラム48とダイ18を連結する一のクランプロッド46に設けられる下スケール60と、ベッド30に固定されこの下スケール60を読み取ることによって前記ダイ18の移動加速度を検出する第2加速度検出センサ62とを備える。
【0014】
このように構成される成形装置10の動作に関連し、第1の実施形態に係る成形方法を図2のフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0015】
先ず、成形装置10のキャビテイ16に粉末材料が充填された後(図2中、ステップS1)、CPU28を介して第1油圧シリンダユニット20が駆動され、シリンダ部38の駆動作用下に上ラム34が下降を開始する(ステップS2)。この上ラム34の下降時に上パンチ14の圧力PUPとこの上パンチ14の移動加速度αUPが検出され(ステップS3)、この圧力PUPが所定の圧力Pより大きくなると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進んで第2油圧シリンダユニット22が駆動される。このため、下ラム48がシリンダ部50の作用下に矢印A方向に移動を開始し、ダイ18の移動加速度αdownが検出される(ステップS6)。
【0016】
ここで、各移動加速度αUP、αdownは、第1および第2検出手段24、26を構成する第1および第2加速度検出センサ58、62を介して検出され、その信号がCPU28に送られる。CPU28では、上パンチ14とダイ18の加速度差が一定にならないように、すなわち、前記上パンチ14の移動加速度αUPとダイ18の移動加速度αdownの加速度差が連続的に変化するように第1および第2油圧シリンダユニット20、22を駆動制御する(ステップS7)。
【0017】
次いで、上パンチ14の圧力PUPが所定の最大圧力Pmaxに等しくなると(ステップS8中、YES)、ステップS9に進んでダイ18の下降が停止されるとともに、上パンチ14が上昇される。そして、ステップS10に進み、成形体の離型作業が行われる。なお、上パンチ14およびダイ18の移動加速度の変化が図3に示されており、これらの荷重の変化が図4に示されている。
【0018】
一方、従来のウィズドロアル法により成形体を得る際の上パンチ(上パンチ14に相当する)とダイ(ダイ18に相当する)の移動加速度が図5に示されており、このパンチとダイの荷重が図6に示されている。すなわち、従来のウィズドロアル法では、図5に示されるように、区間A−Bで上パンチとダイの加速度差が等しくなり、見かけ上応力が作用しないニュートラルゾーンが生成されてしまう。
【0019】
これに対して、第1の実施形態では、図3に示すように、区間A−Bで上パンチ14の移動加速度とダイ18の移動加速度が変化しており、成形中に成形体にかかる応力や圧力が変化し、ニュートラルゾーンはその位置が連続的に変化することになり、結果的に該ニュートラルゾーンが発生することを阻止することができる。すなわち、粒子の再配列や移動が強制的に行われるからである。
【0020】
これによって、簡単な構造で成形体中にニュートラルゾーンが発生することを確実に阻止し、この成形体の強度および品質の向上が容易に遂行されるという効果が得られる。
【0021】
次に、第2の実施形態に係る成形方法を、図7に示されるタイムスケジュールを参照して以下に説明する。
【0022】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の成形装置10を使用し、ダイ18の下降速度が加圧成形中、一定であり、すなわち、このダイ18の移動加速度αdown=0であり、上パンチ14の移動加速度αupが連続的に変化するように制御される。
【0023】
この第2の実施形態では、ダイ18の成形時に移動する速度が一定であるため、その移動加速度αdownが0となる。このため、ダイ18の移動は、ニュートラルゾーンの移動および消滅に対し何ら作用するものではない。従って、上パンチ14の移動速度が一定であれば、ニュートラルゾーンが成形体の中央部に生じてしまう。また、上パンチ14の移動加速度αupが一定であると、成形体中の応力分布が変化してニュートラルゾーンが成形体の中央部から移動するが、このニュートラルゾーンは消滅しない。
【0024】
これに対して、第2の実施形態では、上パンチ14の移動加速度αupが連続的に変化するため、ニュートラルゾーンは刻々とその位置を変え、結果的に消滅して成形体中に前記ニュートラルゾーンが生成されることを阻止することができる。
【0025】
なお、第2の実施形態では、上パンチ14の移動加速度αupが変化する一方、ダイ18の移動加速度αdownを0に設定しているが、図8に示すように、上パンチ14の移動加速度αupが0であり、ダイ18の移動加速度αdownが連続的に変化する場合にも同様の効果が得られる。すなわち、上パンチ14とダイ18の少なくとも一方を移動加速度が連続的に変化するように移動させればよく、これによって成形体にニュートラルゾーンが生成されることがない。
【0026】
ところで、上記成形装置10は、粉末成形用の装置であり、以下、図9A〜図9Dを参照して塑性加工用の成形装置80について説明する。
【0027】
この成形装置80は、固定された下パンチ82と、昇降自在な上パンチ84と、互いに接離自在でかつ一体的に進退可能な下型ダイ86および上型ダイ88とを備える。
【0028】
そこで、成形装置80内に構成される成形用キャビテイ90に予熱されたビレット92が配置された後、下型ダイ86と上型ダイ88の合わせ面が接合される(図9A参照)。次いで、図9Bに示すように、上パンチ84が下降されるとともに下型ダイ86および上型ダイ88が一体的に下降し、ビレット92の粗成形が行われる。
【0029】
その際、上パンチ84は、下型ダイ86および上型ダイ88の移動加速度以上で移動するとともに、それぞれの加速度差が連続的に変化するように制御される。さらに、図9Cに示すように、仕上げ成形が行われた後、離型されて成形体94が取り出される(図9D参照)。
【0030】
このように塑性加工用の成形装置80においても、上記成形装置10と同様に、成形体中にニュートラルゾーンが生成されることを阻止でき、高品質な成形体を容易かつ確実に得ることができるという利点がある。
【0031】
【実施例】
第1の実施例では、先ず、平均粒径が2μmの炭化タングステン(WC)粉末を91wt%、平均粒径が1.4μmの炭化タンタル(TaC)を1wt%、平均粒径が1.5μmの炭化ニオブを2wt%、平均粒径が0.5μmの金属コバルトを6wt%ずつ用意し、これらを媒液としてアルコールを用いて十分に湿式混合した。そして、アルコール量を50vol%に調製し、金型内静水圧加圧成形法にてφ10×100mmの丸棒を成形体として成形した。その成形用タイムスケジュールが、図10に示されている。
【0032】
比較例として、従来のウィズドロアル法を用い、第1の実施例と同一組成の材料で成形体を作成する作業を行った。ところが、従来のウィズドロアル法では、φ10×100mmの成形体を得ることは困難であり、全ての成形体中において、略中央部に位置してニュートラルゾーンが発生し、破断してしまった。そして、破断せずに成形体が約50%の歩留りで得られたものは、長さが30mm程度(具体的には、φ10×35mm)であった。
【0033】
これに対して、第1の実施例では、歩留りが全て100%であり、目視観察や顕微鏡観察においてニュートラルゾーンの発生は回避されていることが確認された(表1参照)。
【0034】
【表1】
Figure 0003663233
【0035】
また、従来の造粒+有機バインダ方式を用いて行ったところ、47.6%の密度が得られ、比重の軽い窒化けい素等の成形の場合の添加量の1.5〜2倍以上のバインダ添加量が必要であった。
【0036】
次いで、これらを全て焼結し、その物性を測定した。その結果も、表1中に示されている。なお、焼結条件は、10℃/minの加熱速度で250℃、650℃、1300℃、1400℃でそれぞれ15分、15分、15分、1時間30分保持して行った。さらに、1300℃までは窒素圧を0.05bar、それ以上では3barまで窒素圧を上げて不活性雰囲気中での焼結を行った。また、造粒+有機バインダ方式では、このまま焼結できないために5日間かけて脱脂した後、同一条件で焼結した。
【0037】
表1から明らかなように、従来のウィズドロアル法では、焼結後に歩留りの低下が現れた。これは、成形時に良品として判定されたものの中に焼結後にニュートラルゾーンの部分に対応した局部的な変形が生じ、物性の低下が惹起されたからである。
【0038】
一方、第1の実施例では、ニュートラルゾーンが全く存在することがなく、成形体の均質性が飛躍的に向上し、成形歩留りのみならず、焼結後の歩留りも100%であった。
【0039】
次に、第2の実施例では、図11および図12に示す成形用タイムスケジュールに沿って銅合金の成形作業を行った。銅合金の組成は、平均粒径が20μmの電解銅粉を98.4wt%、平均粒径が1.5μmの金属クロムを1.5wt%、平均粒径が1.5μmの電解銀粉を0.1wt%ずつ混合したものであり、各粉末が所定量のアルコールを分散媒として湿式混合された後、アルコール量を60vol%に調製し、第1の実施例と同様に、金型内静水加圧成形法にて成形体を成形した。
【0040】
その際、成形条件として、最大印荷圧力を250Mpaとし、図11および図12に示す成形用タイムスケジュールに沿って成形を行い、φ10×100mmの丸棒を270本成形した。その歩留りが全て100%であり、第1の実施例と同様の効果が得られた。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、ダイと少なくとも一つのパンチが同軸上でかつ相対的な加速度差を連続的に変化させながら移動するため、成形体にニュートラルゾーンが発生することを確実に阻止することができる。
【0042】
さらに、本発明は、パンチおよびダイが第1および第2アクチュエータを介して進退されるとともに、このパンチおよびダイの移動加速度が第1および第2検出手段により検出され、その結果に基づいて制御手段が第1および第2アクチュエータを駆動する。これによって、パンチとダイが相対的な加速度差を連続的に変化させながら移動し、成形体にニュートラルゾーンが発生することを回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る成形装置の概略構成説明図である。
【図2】第1の実施形態に係る成形方法を示すフローチャートである。
【図3】前記成形方法におけるパンチおよびダイの移動加速度と時間の関係図である。
【図4】前記成形方法におけるパンチおよびダイの荷重と時間の関係図である。
【図5】従来のウィズドロアル法におけるパンチおよびダイの移動加速度と時間の関係図である。
【図6】前記従来のウィズドロアル法におけるパンチおよびダイの荷重と時間の関係図である。
【図7】第2の実施形態に係る成形方法において、パンチの移動加速度が一定の場合の該パンチおよびダイの移動加速度と時間の関係図である。
【図8】第2の実施形態に係る成形方法において、ダイの移動加速度が一定の場合の該ダイおよびパンチの移動加速度と時間の関係図である。
【図9】塑性加工用の成形装置および成形方法の説明図であり、図9Aは、前記成形装置内にビレットが配置された状態の説明図、図9Bは、粗成形が開始された状態の説明図、図9Cは、仕上げ成形が行われた状態の説明図、図9Dは、成形終了後の状態を示す説明図である。
【図10】第1の実施例の成形用タイムスケジュールである。
【図11】第2の実施例の成形用タイムスケジュールである。
【図12】前記第2の実施例の成形用タイムスケジュールである。
【符号の説明】
10、80…成形装置 12、82…下パンチ
14、84…上パンチ 16、90…キャビテイ
18…ダイ 20、22…油圧シリンダユニット
24、26…検出手段 28…CPU
86…下型ダイ 88…上型ダイ
92…ビレット

Claims (2)

  1. 対向する2以上のパンチとダイにより構成される成形用キャビテイに、材料を配置する工程と、
    前記パンチにより前記材料を押圧するとともに、前記ダイと少なくともつの前記パンチが、同軸上でかつ相対的な加速度差を連続的に変化させながら移動して、該材料の成形作業を行う工程と、
    を有し、
    前記パンチ及び前記ダイの加速度差は、前記ダイによって前記材料に付与される応力と、前記2以上のパンチによって前記材料に付与される応力のいずれかが大きくなるように制御されることを特徴とする成形体の成形方法。
  2. 対向する2以上のパンチと、
    前記2以上のパンチと成形用キャビテイを構成するダイと、
    少なくとも1つの前記パンチを成形方向に沿って進退させる第1アクチュエータと、
    前記ダイを前記パンチの進退方向に沿って進退させる第2アクチュエータと、
    前記パンチの移動加速度を検出する第1検出手段と、
    前記ダイの移動加速度を検出する第2検出手段と、
    前記第1および第2検出手段と前記第1および第2アクチュエータに接続されるとともに、前記パンチにより前記成形用キャビテイに配置された材料を押圧する際、該少なくとも1つのパンチおよび該ダイが、同軸上でかつ相対的な加速度差を連続的に変化させながら移動するように制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする成形体の成形装置。
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