JP3663100B2 - 半導体装置およびその製造方法、並びに、無線通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、チップ分離工程において有効な半導体装置およびその半導体装置を用いた無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平9‐275164号公報には、基板上にベンゾシクロブテンを塗布形成して成る半導体装置が開示されている。この公報においては、上記半導体装置におけるスクライブライン上のベンゾシクロブテンを除去することが記載されている。そして、その理由として、上記ベンゾシクロブテンがスクライブ領域に残っている場合には、チップ分離工程において行うダイシングの際にベンゾシクロブテンがダイシングブレードに巻き込まれるために、ダイシングブレードの寿命を縮めるからであることが記載されている。
【0003】
ところで、無線通信システムにおいては、電力効率が低く、50%近くが熱となって放出されてしまう。したがって、大きな出力を得るためには大量に発生する熱の速やかな放出が問題となる。そこで、半導体装置の基板を薄くした薄い半導体チップを用いることによって、放熱性を高め、搭載されている素子の熱抵抗を下げたり、実装時に付けるワイヤの長さを短くして電気信号の損失を小さくしたりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の基板上にベンゾシクロブテンを塗布形成して成る半導体装置には、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、上記半導体装置においては、ダイシングの際にベンゾシクロブテンがダイシングブレードに巻き込まれないようにするために、スクライブライン上のベンゾシクロブテンを除去するようにしている。ところが、ガリウム砒素等の化合物半導体基板はシリコン基板に比べてダイシングが難しく、チップ周辺が欠ける「チッピング」という不具合が生じる。図5に示すように、このチッピング1は、ダイシングした部分2の周辺に発生して、チップ3の一部を欠けさせてしまう。そこで、ダイシングに際しては、チッピング1によって欠けるエリアを考慮する必要が生じるため、スクライブ領域4を必要以上に広く取る必要が生じる。
【0006】
尚、上述のごとく上記化合物半導体基板をダイシングする際に生じるチッピングは、ダイシングのスピードを減ずる方法や、ダイシングブレードを研磨して鋭くする方法等によって減らすことは可能である。しかしながら、上述のチッピング減少方法は、ダイシングブレードの寿命を縮め、円滑にダイシングができなくなるという問題を発生させることになり、結局はダイシングブレード寿命の延命を図ることはできないのである。
【0007】
さらには、上記ダイシングによって分割されたチップのダイシング端においては、上記ベンゾシクロブテンが除去されているため、化合物半導体基板が露出している。したがって、放熱性を高めると共に、素子の熱抵抗や電気信号の損失の低減を図るために、上記化合物半導体基板を薄くする際に、冶具によるハンドリング中にダイシング端が破壊されてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、ダイシング時におけるチッピングおよびハンドリング時におけるエッジの損傷を防止できる半導体装置およびその製造方法、並びに、上記半導体装置を用いた無線通信システムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の発明は、有機絶縁材料によって半導体の表面が覆われて成る半導体装置において、上記半導体は,素子が形成されている複数の素子領域と個々の素子領域の間におけるスクライブ領域を有し、上記スクライブ領域における表面は,上記有機絶縁材料によって覆われており、上記スクライブ領域の表面を覆っている上記有機絶縁材料の厚みは、上記素子領域の表面を覆っている上記有機絶縁材料の厚みよりも薄いことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、半導体におけるスクライブ領域の表面は有機絶縁材料によって補強されている。したがって、上記スクライブ領域においてダイシングを行って半導体チップに分割される際に、半導体チップの周囲にチッピングが発生することが防止される。その際に、上記スクライブ領域の表面を覆っている上記有機絶縁材料の厚みは素子領域の表面を覆っている有機絶縁材料よりも薄くなっている。したがって、上記ダイシング時におけるダイシングブレードに対するダメージが低減される。さらに、上記スクライブ領域で分割された半導体チップにおけるダイシング端は、上記有機絶縁材料によって補強されている。したがって、上記半導体チップに対するハンドリングの際に、上記ダイシング端が冶具によって損傷されることはない。そして、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。
【0011】
また、上記第1の発明の半導体装置は、上記有機絶縁材料をベンゾシクロブテンで構成することが望ましい。
【0012】
上記構成によれば、上記スクライブ領域の表面が、上記有機絶縁材料としてのベンゾシクロブテンによってより強固に補強される。こうして、上記ダイシング時におけるチッピングの発生や、ハンドリング時における上記ダイシング端の損傷が、より確実に防止される。
【0013】
また、上記第1の発明の半導体装置は、上記素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みを5μm以上とすることが望ましい。
【0014】
上記構成によれば、上記素子領域の表面は5μm以上の厚みのベンゾシクロブテンで覆われている。したがって、上記素子は、上記ベンゾシクロブテンによって確実に保護される。
【0015】
また、上記第1の発明の半導体装置は、上記有機絶縁材料によって表面が覆われている半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体とすることが望ましい。
【0016】
上記構成によれば、シリコンウェハやガラス基板よりもチッピングが生じ易い上記化合物半導体を用いる場合に、上記ダイシング時におけるチッピングの発生が効果的に防止される。
【0017】
また、第2の発明の半導体装置は、ベンゾシクロブテンによって半導体の表面が覆われて成る半導体装置において、上記半導体におけるスクライブ領域の表面は、厚みが10μm未満のベンゾシクロブテンによって覆われており、上記スクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みは、上記半導体における素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄いことを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、半導体におけるスクライブ領域の表面はベンゾシクロブテンによって補強されている。したがって、上記スクライブ領域においてダイシングを行って半導体チップに分割される際に、半導体チップの周囲にチッピングが発生することが防止される。その際に、上記スクライブ領域の表面を覆っている上記ベンゾシクロブテンの厚みは10μm未満であり、上記スクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みは、上記半導体における素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄い。したがって、上記ダイシング時におけるダイシングブレードに対するダメージが低減される。さらに、上記スクライブ領域で分割された半導体チップにおけるダイシング端は、上記ベンゾシクロブテンで補強されている。したがって、上記半導体チップに対するハンドリングの際に、上記ダイシング端が冶具によって損傷されることはない。そして、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。
【0019】
また、上記第2の発明の半導体装置は、上記ベンゾシクロブテンによって表面が覆われる半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体とすることが望ましい。
【0020】
上記構成によれば、シリコンウェハやガラス基板よりもチッピングが生じ易い上記化合物半導体を用いる場合に、上記ダイシング時におけるチッピングの発生が効果的に防止される。
【0021】
また、第3の発明の半導体装置の製造方法は、素子が形成されている半導体の表面をベンゾシクロブテンで覆い、複数の素子領域の間におけるスクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みを、上記素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄くして、上記スクライブ領域に対して,当該スクライブ領域を覆っているベンゾシクロブテンごとダイシングを行って半導体チップに分割することを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、半導体におけるスクライブ領域の表面はベンゾシクロブテンによって補強されている。したがって、上記スクライブ領域においてダイシングを行って半導体チップに分割される際に、半導体チップの周囲にチッピングが発生することが防止される。その際に、上記スクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みを、上記半導体における素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄くしている。したがって、上記ダイシング時におけるダイシングブレードに対するダメージが低減される。さらに、上記スクライブ領域で分割された半導体チップにおけるダイシング端は、上記ベンゾシクロブテンで補強されている。したがって、上記半導体チップに対するハンドリングの際に、上記ダイシング端が冶具によって損傷されることはない。そして、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。
【0023】
また、上記第3の発明の半導体装置の製造方法は、上記ベンゾシクロブテンによって表面が覆われている半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体で形成することが望ましい。
【0024】
上記構成によれば、シリコンウェハやガラス基板よりもチッピングが生じ易い化合物半導体を用いる場合に、上記ダイシング時におけるチッピングの発生が効果的に防止される。
【0025】
また、第4の発明の無線通信システムは、上記第1の発明の半導体装置を上記スクライブ領域で上記ベンゾシクロブテンごと分割して得られた半導体チップを用いたことを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、上記素子領域およびダイシング端が上記ベンゾシクロブテンによって補強されてハンドリング性が向上された半導体チップを用いることによって、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。したがって、放熱性を高めると共に、搭載されている素子の熱抵抗や信号の損失の低下が図られて、高信頼性,高効率の無線通信システムが容易に得られる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態の半導体装置における縦断面図である。本半導体装置は、化合物半導体基板11上に層間絶縁膜としてのベンゾシクロブテン膜12が形成されている。そして、このベンゾシクロブテン膜12は、素子領域13と、その周辺に在るスクライブ領域14と、このスクライブ領域14を介して素子領域13に隣接する素子領域15に別れている。ここで、スクライブ領域14におけるベンゾシクロブテン膜12の厚みは、素子領域13,15におけるベンゾシクロブテン膜12の厚みよりも薄く形成されている。尚、素子領域13における化合物半導体基板11上には、素子16が形成されている。
【0028】
上記断面形状を有する半導体装置は以下のようにして形成される。すなわち、化合物半導体基板11としてのガリウム砒素基板やインジウムリン基板に、ベンゾシクロブテンの63%メシチレン溶液を、2000rpmで60秒間スピンコートする。その後、窒素雰囲気中において、90℃で30分間、150℃で10分間、280℃で5分間、300℃で5分間の4回の熱処理を行う。こうして形成されたベンゾシクロブテンの厚みは、20μmであった。
【0029】
次に、得られた半導体積層基板にノボラックフォトレジストを10μmから20μmの厚みになるように塗布する。そして、このノボラックフォトレジストにスクライブラインのパターンをフォトリソグラフィ技術によって形成し、SF6と酸素との混合ガス中において、7Paの圧力,150WのRFパワーで、平行平板型ドライエッチング装置によって、リアクティブエッチングを30分間施す。こうして、ベンゾシクロブテン膜12におけるスクライブ領域14の境界に15μmの段差が形成される。その結果、スクライブ領域14におけるベンゾシクロブテン膜12の厚みは5μmとなる。その後、半導体積層基板を薄く研磨して200μmの厚みにする。
【0030】
上述のように形成された半導体装置は、上記スクライブ領域14をダイシングソーでダイシングすることによって、個々のチップに分割される。その際におけるダイシングの条件は、ダイシングソーのカットスピードを3mm/秒〜5mm/秒として行う。尚、実際にカットされる部分はスクライブ領域14よりも狭く、ダイシング後におけるチップの形状は、図2に示すような形状となる。
【0031】
図2において、スクライブ領域における化合物半導体基板21は、ベンゾシクロブテン膜22によってカバーされている。そして、素子(図示せず)上におけるベンゾシクロブテン膜23の厚みは20μmであり、スクライブ領域におけるベンゾシクロブテン膜22の厚みは5μmである。
【0032】
この場合、上述したように、ダイシング端における化合物半導体基板21は、スクライブ領域のベンゾシクロブテン膜22によって表面がカバーされているために、上記ダイシングの際にチッピングは生じないのである。尚、チッピングの現象は、シリコンウェハやガラス基板においては発生し難く、2種類以上の元素から構成される化合物半導体、具体的には、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイト等において発生する。ところが、本実施の形態においては、スクライブ領域において、化合物半導体基板21上には厚みが5μmのベンゾシクロブテン膜22が存在しているため、ダイシングによって生ずるチッピングが抑制されるのである。24は、素子上のベンゾシクロブテン膜23上に形成されて上記素子と電気的に接続された電極である。
【0033】
また、上記ベンゾシクロブテン膜12,22,23の代りに、ポリキノリン膜やポリイミド膜等の所謂有機絶縁材料の膜を形成しても上記チッピングを抑制する効果は見られる。しかしながら、樹脂のストレスや密着性等の問題もあり、化合物半導体基板11上に全く樹脂層が無い場合に比してチッピングの発生は改善されるが、ベンゾシクロブテン膜12,22,23を用いた場合ほどの抑制効果はない。
【0034】
化合物半導体の場合、一般に基板を薄くしてダイシングを行うことが多い。こうして得られる薄いチップは、素子の熱抵抗を下げたり、実装時に付けるワイヤの長さを短くしたりして電気信号の損失を小さくできる等の効果を呈する。ところが、例えば、チップ厚みが100μm以下である場合には、チップのハンドリング性が著しく損なわれ、ハンドリング中にチップを破壊してしまう場合があるという問題がある。
【0035】
図3は、チップ厚みを50μmから200μmまで50μmずつ変えた場合におけるハンドリング時のチップ破壊による歩留りの変化を示す。尚、図中、ベンゾシクロブテンが塗布されているものは、スクライブ領域に、素子領域におけるベンゾシクロブテン厚みより薄くベンゾシクロブテンが残っている状態でダイシングしたものである。ここで、図中に記されたベンゾシクロブテンの厚みは、素子領域におけるベンゾシクロブテン厚みである。
【0036】
図3によれば、上記ベンゾシクロブテンを塗布しない従来の半導体装置の場合には、チップ厚みが100μm以下では、ハンドリングによって50%以上のチップを破壊してしまうことが分かる。これに対して、ベンゾシクロブテンがチップ表面に塗布されている場合は、ベンゾシクロブテンがチップを補強するためにハンドリング性が著しく向上することが分かる。つまり、ベンゾシクロブテンの厚みが5μmであれば、チップ厚みが50μmであっても、ハンドリングによる歩留りを60%に保つことができ、大きく低下させることはない。そして、ベンゾシクロブテン厚みが10μmの場合には更に歩留りが改善され、20μmの場合には歩留りを損なうことは無くなる。したがって、20μm以上の膜厚でベンゾシクロブテンが素子領域に存在することによって、ハンドリングによる歩留りを低下することはないと考えられる。
【0037】
そして、この効果は、上記スクライブ領域にベンゾシクロブテンを残すことによってさらに強められるのである。すなわち、特開平9‐275164号公報に開示されているように、20μmの膜厚で上記素子領域に存在するベンゾシクロブテンをスクライブ領域において全部除去した場合には、「発明が解決しようとする課題」で述べたように、チップ端面にチッピングが発生する。そして、チッピングが生じているチップ端面をコレットやピンセットで触れるためにチップが破壊されやすくなり、ベンゾシクロブテンの塗布による歩留り向上の効果を大きくは望めない。図3に示すように、上記素子領域は20μm厚のベンゾシクロブテンでカバーされているにも拘わらず、ハンドリング歩留りは、ベンゾシクロブテンの塗布なしに比して15%程度の小さな改善しかされないのである。これに対して、図2に示すごとく、上記スクライブ領域におけるベンゾシクロブテン22を5μm程度の厚みで残すだけで、ハンドリング歩留りを100%に改善できるのである。
【0038】
さらに、上記スクライブ領域に残されたベンゾシクロブテン膜は、ダイシングされて個々に分離されたチップを治具で挟んだり真空吸着して取り扱う際に、チップの周辺部を傷めてしまう問題を解決する効果も有する。通常、個々に分離されたチップを治具で取り扱う場合には、治具のエッジがチップのエッジに当ってチップの周辺部を傷めてしまう。そのために、ウェハ基板上に形成された半導体装置をチップにスクライブする際にチップエッジの面取りを行うベベルカットのようなダイシング方法が開発されている。このダイシング方法では、特殊なダイシングブレードを使用する必要があり、手間も増える。ところが、図2に示すごとく、スクライブ領域がベンゾシクロブテン22で覆われている場合は、治具のエッジのダメージをベンゾシクロブテンが吸収するため、チップのエッジを傷めることはないのである。
【0039】
図4に、上記チップを取り扱う際の例を示す。上記ベンゾシクロブテン32で覆われたチップ31は、冶具33の減圧穴34を介して治具33とチップ31との間の空間が減圧されて、冶具33に真空吸着されている。この場合、チップ31の上面全体がベンゾシクロブテン32で覆われている。したがって、治具33におけるチップ31のエッジが当接する領域35には、常にベンゾシクロブテン32が接触することになる。したがって、チップ31のエッジが傷められることはないのである。
【0040】
尚、上述したように、上記チップを治具で取り扱う場合にチップエッジが傷められることは、化合物半導体においては顕著に見られる。それにも拘わらず、従来においては根本的な解決法が無かったのである。しかしながら、本実施の形態によれば、化合物半導体装置をダイシングによってチップに分割する際に、スクライブ領域に5μm程度の厚みでベンゾシクロブテンを残してチップエッジをベンゾシクロブテンで補強している。したがって、治具33にはベンゾシクロブテン32が接触することになり、チップ31のエッジが傷められることを解決できるのである。
【0041】
尚、その場合、上記スクライブ領域におけるベンゾシクロブテンの厚みは、10μmより薄い(0.5μm〜5μm)ことが望ましい。スクライブライン領域に10μm以上のベンゾシクロブテンが残されている場合は、特開平9‐275164号公報において指摘されているように、ダイシングブレードの寿命を縮めるという問題が生じるのである。上記スクライブ領域におけるベンゾシクロブテンの厚みは、図1の説明で述べたように5μm程度であれば、十分にチップのハンドリングによる歩留り低下を防ぎ、チップエッジのダメージを防ぐ効果を奏することができるのである。
【0042】
上述のように、素子領域にベンゾシクロブテン膜を残し、スクライブ領域にもベンゾシクロブテン膜を上記素子領域の厚みより薄く残して形成した半導体装置を、上記スクライブ領域でダイシングを行って得られたチップは、上記ベンゾシクロブテン膜による補強効果によって、薄く加工することが容易に可能になる。そして、チップの厚みを薄くすることによって、放熱性を高めると共に、上述した素子の熱抵抗や信号の損失をハンドリング歩留りを低下させることなく下げることができる。
【0043】
したがって、本実施の形態によって形成された半導体チップを無線通信システムに適用することによって、高信頼性および高効率を有する無線通信システムを実現することができるのである。
【0044】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1に係る発明の半導体装置は、スクライブ領域における表面が、素子領域の表面を覆っている有機絶縁材料の厚みよりも薄く上記有機絶縁材料によって覆われているので、上記スクライブ領域の表面を有機絶縁材料によって補強することができる。したがって、上記スクライブ領域に対してダイシングを行って半導体チップに分割する際に、上記半導体チップの周囲にチッピングが発生することを防止できる。
【0045】
その際に、上記スクライブ領域の表面を覆っている上記有機絶縁材料の厚みは素子領域の表面を覆っている有機絶縁材料よりも薄くなっている。したがって、ダイシング時におけるダイシングブレードのダメージを低減できる。さらに、上記スクライブ領域で分割された半導体チップのダイシング端を、上記有機絶縁材料によって補強することができる。したがって、上記半導体チップに対するハンドリングの際に、上記ダイシング端が冶具によって損傷されることを防止して、ハンドリング性を向上できる。そして、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。
【0046】
また、上記第1の発明の半導体装置は、上記有機絶縁材料をベンゾシクロブテンで構成すれば、上記スクライブ領域の表面を上記ベンゾシクロブテンによってより強固に補強できる。したがって、上記ダイシング時におけるチッピングの発生やハンドリング時における上記ダイシング端の損傷を、より確実に防止できるのである。
【0047】
また、上記第1の発明の半導体装置は、上記素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みを5μm以上とすれば、上記半導体中の素子を、上記ベンゾシクロブテンによって確実に保護できる。
【0048】
また、上記第1の発明の半導体装置は、上記有機絶縁材料によって表面が覆われている半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体とすれば、シリコンウェハやガラス基板よりもチッピングが生じ易い上記化合物半導体を用いる場合に、上記ダイシング時におけるチッピングの発生を効果的に防止できる。
【0049】
また、第2の発明の半導体装置は、スクライブ領域における表面が、厚みが10μm未満のベンゾシクロブテンによって覆われているので、上記スクライブ領域の表面をベンゾシクロブテンによって補強することができる。したがって、上記スクライブ領域においてダイシングを行って半導体チップに分割する際に、半導体チップの周囲にチッピングが発生することを防止できる。
【0050】
その際に、上記スクライブ領域の表面を覆っている上記ベンゾシクロブテンの厚みは10μm未満であり、上記スクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みは、上記半導体における素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄い。したがって、上記ダイシング時におけるダイシングブレードに対するダメージを低減できる。さらに、上記スクライブ領域で分割された半導体チップにおけるダイシング端を、上記ベンゾシクロブテンによって補強することができる。したがって、上記半導体チップに対するハンドリングの際に、上記ダイシング端が冶具によって損傷されることを防止して、ハンドリング性を向上できる。そして、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。
【0051】
尚、上記スクライブ領域上のベンゾシクロブテンの厚みは0.5μm〜5μmであることが望ましく、その場合には上記チッピングが防がれると供に、ダイシングブレードの寿命も効果的に延ばされる。
【0052】
また、上記第2の発明の半導体装置は、上記ベンゾシクロブテンによって表面が覆われる半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体とすれば、シリコンウェハやガラス基板よりもチッピングが生じ易い上記化合物半導体を用いる場合に、上記ダイシング時におけるチッピングの発生を効果的に防止できる。
【0053】
また、第3の発明の半導体装置の製造方法は、素子が形成されている半導体の表面をベンゾシクロブテンで覆い、複数の素子領域の間におけるスクライブ領域に対して当該スクライブ領域を覆っているベンゾシクロブテンごとダイシングを行って半導体チップに分割するので、上記スクライブ領域の表面をベンゾシクロブテンで補強することができ、上記スクライブ領域においてダイシングを行う際に半導体チップの周囲にチッピングが発生することを防止できる。
【0054】
その際に、上記スクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みを、上記半導体における素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄くしている。したがって、上記ダイシング時におけるダイシングブレードに対するダメージが低減される。さらに、上記スクライブ領域で分割された半導体チップにおけるダイシング端を、上記ベンゾシクロブテンによって補強することができる。したがって、上記半導体チップをハンドリングする際に、上記ダイシング端が冶具によって損傷されることを防止して、ハンドリング性を向上できる。そして、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。
【0055】
また、上記第3の発明の半導体装置の製造方法は、上記ベンゾシクロブテンによって表面が覆われている半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体で形成すれば、シリコンウェハやガラス基板よりもチッピングが生じ易い上記化合物半導体を用いる場合に、上記ダイシング時におけるチッピングの発生を防止できる。
【0056】
また、第4の発明の無線通信システムは、上記第1の発明の半導体装置を上記スクライブ領域で上記ベンゾシクロブテンごと分割して得られた半導体チップを用いるので、上記素子領域およびダイシング端が上記ベンゾシクロブテンによって補強されてハンドリング性が向上された半導体チップを用いることによって、半導体チップの厚みを薄くすることが容易に可能になる。したがって、放熱性を高めると共に、搭載されている素子の熱抵抗や信号の損失の低下を図って、高信頼性,高効率の無線通信システムを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の半導体装置における縦断面図である。
【図2】 図1におけるスクライブ領域をダイシングして得られたチップの斜視図である。
【図3】 チップ厚みを変えた場合におけるハンドリング歩留りの変化を示す図である。
【図4】 図2に示すチップを冶具で取り扱う場合の状態を示す図である。
【図5】 従来の化合物半導体をダイシングする際に生ずるチッピングの説明図である。
【符号の説明】
11,21…化合物半導体基板、
12,22,23,32…ベンゾシクロブテン膜、
13,15…素子領域、
14…スクライブ領域、
16…素子、
24…電極、
31…チップ、
33…冶具、
34…減圧穴、
35…当接領域。
Claims (8)
- 有機絶縁材料によって半導体の表面が覆われて成る半導体装置において、
上記半導体は、素子が形成されている複数の素子領域と、個々の素子領域の間におけるスクライブ領域を有し、
上記スクライブ領域における表面は、上記有機絶縁材料によって覆われており、
上記スクライブ領域の表面を覆っている上記有機絶縁材料の厚みは、上記素子領域の表面を覆っている上記有機絶縁材料の厚みよりも薄いことを特徴とする半導体装置。 - 請求項1に記載の半導体装置において、
上記有機絶縁材料はベンゾシクロブテンであることを特徴とする半導体装置。 - 請求項2に記載の半導体装置において、
上記素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みは5μm以上であることを特徴とする半導体装置。 - ベンゾシクロブテンによって半導体の表面が覆われて成る半導体装置において、
上記半導体におけるスクライブ領域の表面は、厚みが10μm未満のベンゾシクロブテンによって覆われており、
上記スクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みは、上記半導体における素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄いことを特徴とする半導体装置。 - 請求項2乃至請求項4の何れか一つに記載の半導体装置において、
上記ベンゾシクロブテンによって表面が覆われている半導体は、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体であることを特徴とする半導体装置。 - 素子が形成されている半導体の表面をベンゾシクロブテンで覆い、
複数の素子領域の間におけるスクライブ領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みを、上記素子領域の表面を覆っているベンゾシクロブテンの厚みよりも薄くして、
上記スクライブ領域に対して、当該スクライブ領域を覆っているベンゾシクロブテンごとダイシングを行って半導体チップに分割することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
上記ベンゾシクロブテンによって表面が覆われている半導体を、ガリウム砒素,アルミニウムガリウム砒素,インジウムリン,インジウムガリウム砒素,インジウムガリウムリン,ガリウムナイトライド,ジンクセレナイド,シリコンカーバイド等の化合物半導体で形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項2乃至請求項5の何れか一つに記載の半導体装置を上記スクライブ領域で上記ベンゾシクロブテンごと分割して得られた半導体チップを用いたことを特徴とする無線通信システム。
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