JP3662959B2 - 電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法 - Google Patents

電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電解粗面化性に優れ、特に粗面化面の外観が均一な電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解粗面化平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム合金素板としては、従来一般的にJIS A1050、A1100、A3003等から成る板厚0.1〜0.5mm程度の冷延板が用いられている。このようなアルミニウム合金冷延板は、通常一般に、半連続鋳造(DC鋳造)により得られた鋳塊の表面を研削により除去し、必要に応じて均質化処理を施した後、所定の温度に加熱して熱間圧延し、その後の冷間圧延途中において中間焼鈍を行い、次いで最終冷間圧延を行うのことにより製造されている。
【0003】
また、特開平3−79798号公報には、連続鋳造圧延でアルミニウム合金溶湯から条帯のコイルを形成した後、冷間圧延、熱処理、矯正等を行い電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金支持体を得る方法が開示されている。
【0004】
更に、特開平5−156414号公報には、双ロール連続鋳造圧延し、熱間圧延で厚さ4〜30mmの条帯のコイルとした後、冷間圧延途中の厚さ1mmの段階において400℃以上で熱処理を行い、更に冷間圧延を行って電解粗面化平版印刷用アルミニウム合金支持体を得る方法、および双ロール連続鋳造圧延し、熱間圧延で厚さ4〜30mmの条帯のコイルとした後、300℃以上で熱処理を行い、更に冷間圧延途中において300℃以上で熱処理を行う電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金支持体を得る方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来一般法によるものは、製造工程が複雑で、長時間の処理工程を必要とし、必然的に製造コストが嵩むという欠点があった。
【0006】
また上記従来一般法では、電解粗面化性を良好とし且つ粗面化面の外観を均一にするためには、鋳造、均質化熱処理、熱間圧延、および冷間圧延時中間焼鈍の各工程毎に条件の制御が必要である。また特に、粗面化面の外観を均一にするためには、鋳造、均質化熱処理、熱間圧延、および冷間圧延時中間焼鈍の各工程毎に結晶粒の制御が必要である。
【0007】
しかも、半連続鋳造(DC鋳造)により得られた鋳塊から所要の厚さのアルミニウム合金素板を製造するには、均質化熱処理および熱間圧延といった高温長時間の工程が必須である。前記の各工程をそれぞれ制御したとしても、鋳造時に過飽和に固溶した元素がこの高温長時間の工程中に析出し、熱間圧延中に粗大な再結晶粒が生じ易くなる。以降の熱処理や加工によって小さい再結晶粒を生成できたとしても、熱間圧延中に生じた粗大な再結晶粒の輪郭が残り、これが圧延方向に延びたストリーク(筋状のむら)として現出し、電解粗面化面の外観の均一性を低下させる原因となる。
【0008】
一方、前記した特開平3−79798号公報および特開平5−156414号公報に開示された方法や、冷間圧延途中での熱処理条件が適正でない場合には、電解粗面化が均一ではなく、粗面化面の外観が不均一になるという欠点があった。
【0009】
一般に、印刷版用アルミニウム合金素板を電解粗面化する際には、必要に応じて前処理として、素板表面の脱脂または酸化皮膜除去のために酸またはアルカリで化学的エッチングを行う。電解粗面化処理自体は、黒鉛等を対極として交流を印加して電解エッチングを行うことにより、素板表面にピットを形成して粗面化する処理である。
【0010】
この粗面化は、印刷性能に係わる感光膜の密着性や保水性を付与するものである。印刷版全体にわたって均一な密着性および保水性が得られる必要があるので、ピットも印刷版全体にわたって均一に形成される必要がある。また、感光膜を設けた印刷版は、露光および現像後に現像の良否を目視判別するので、粗面化面の外観が目視で均一に見えることも必要である。
【0011】
電解粗面化が均一でないとは、電解エッチングにおける過エッチング(溶解タイプ)によりあるいは未エッチング領域の存在により、適切な表面粗さが得られないことを言う。その場合には、感光膜の密着性が悪く、また非画像部の保水性や耐食性が悪くなり、更にこれによって印刷中の非画像部の汚れが生ずるなど、印刷適性に問題が生ずる。
【0012】
粗面化面の外観が不均一であるとは、圧延方向に沿うストリーク(筋模様)が観察されたり、部分的に光沢が失われて曇り状に見える、といった色調むらがあることを言う。これは、前処理としての化学的エッチングおよび電解粗面化処理としての電解エッチングの不均一(不均一エッチング、未エッチング領域の存在、過エッチング)および金属組織の不均一によって生ずる。
【0013】
金属組織の不均一は、結晶方位や結晶粒サイズの不均一、金属間化合物の粗大化や不均一分散等によって生じるが、それが印刷適性に必要な電解粗面化(前処理も含めて)の均一性を損ねない程度であっても、粗面化面の外観には著しい不均一が生ずることがある。
【0014】
粗面化面の外観が不均一で雲状の色むらが生ずると、現像後の画像部検査にとって非常に不都合である。すなわち、この雲状部分は現像後の非画像部にはそのまま存在するが、これが画像部の色調と似ているため、画像部の現像が充分に行われたか否かを目視判別することが困難になる。
【0015】
そこで本発明の目的の一つは、電解粗面化の均一性と粗面化面の外観均一性とを備えた、連続鋳造圧延による電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板を提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、電解粗面化の均一性と粗面化面の外観均一性とを備えた、連続鋳造圧延による電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板を、長時間を必要としない簡素な工程により低コストで且つ能率的に製造する方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の、連続鋳造圧延による電界粗面化平板印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法は、0.20〜0.80wt%のFeを含有し、残部がアルミニウム、結晶粒微細化元素、および不可避的不純物元素から成り、該結晶粒微細化元素は0.01〜0.04 wt %のTiおよび0.0001〜0.02 wt %のBから成る群から選択される少なくとも1種であり、該不純物元素の内でSiの含有量が0.3wt%以下およびCuの含有量が0.05wt%以下であるアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造圧延して厚さ20mm以下の条帯とした後、均質化熱処理することなく圧延し、冷間圧延途中で、累積圧下率50%以上の段階で、昇温速度150℃/sec以上、保持温度440〜600℃の熱処理を少なくとも1回行い、かつ最後の熱処理以降の累積圧下率を80%以下として該冷間圧延を行うことにより、冷延板表層部の結晶粒の寸法および形状を、板面に平行で冷延方向に直角な方向の幅が150μm以下、冷延方向に平行な方向の長さが上記幅の8倍以下となるように、制御することを特徴とする。
【0021】
【作用】
本発明者は、従来技術の問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、上記規定した化学組成のアルミニウム合金を連続鋳造圧延し、且つ冷間圧延板表層部の結晶粒の寸法・形状を上記規定範囲内とすることにより、電解粗面化の均一性と粗面化面の外観の均一性とを確保できることを見出して、本発明の電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板を実現した。
【0022】
そして、上記規定範囲内の結晶粒の寸法・形状は、連続鋳造圧延後上記アルミニウム合金を冷間圧延途中で熱処理して再結晶させることにより得られることを見出して、本発明の電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法を実現した。
【0023】
本発明において、連続鋳造圧延法を用いる理由は下記のとおりである。
連続鋳造圧延は、DC鋳造に比べて鋳造材が非常に薄く、鋳造材表面の凝固速度が大きいので晶出物が微細均一であり、DC鋳造法のように鋳塊を均質化熱処理する必要がない。したがって高温長時間の処理を施されないので、過飽和固溶元素の析出も粗大な再結晶粒の生成もなく、それに起因するストリーク(筋状むら)による電解粗面化面の外観均一性低下が生じない。
【0024】
連続鋳造圧延による鋳造材はDC鋳塊に比べて非常に薄いので、熱間圧延を施さずに冷間圧延に供することができる。また鋳造材が比較的厚く、冷間圧延の前に熱間圧延を行う場合でも、DC鋳造による鋳塊に比べれば連続鋳造圧延による鋳造材は非常に薄いので、冷間圧延に適した厚さにするための熱間圧延は極めて短時間で済み、高温長時間を要さない。
また、本発明において上記規定した化学組成を用いる理由は下記のとおりである。
【0025】
Fe含有量は0.20〜0.80wt%の範囲内とする。Feは機械的強度の向上に必要であって、含有量が下限値未満ではその効果が十分に得られず、また上限値を越えるとAl−Fe系の粗大な金属間化合物が晶出して電解粗面化面のピットの均一性が損なわれる。好ましくは0.50wt%以下である。
【0026】
Si含有量は0.3wt%以下とする。Siはアルミニウム合金に不純物として含まれている元素であり、余り含有量が多くなると電解粗面化の均一性を損なうので、0.3wt%以下とする。
【0027】
Cu含有量は0.05wt%以下とする。Cuはアルミニウム合金に不純物として含まれている元素であるが、電解粗面化の均一性に好ましいので0.001wt%以上含有することが望ましい。しかし余り含有量が多くなると、電解粗面化においてピットが粗大になり易く、また電解粗面化の均一性を損なうので、0.05wt%以下とする。好ましくは0.03wt%である。
【0028】
結晶粒微細化元素は、鋳造時に結晶粒を微細化して割れ発生を防止するために適宜添加してよい。そのために、例えばTiは0.01〜0.04wt%の範囲で、Bは0.0001〜0.02wt%の範囲で添加できる。
【0029】
不純物元素としては、Mg、Mn、Cr、Zr、V、Zn、Be等が含有されることがあるが、これらの不純物は0.05wt%以下程度の微量であれば大きな悪影響を及ぼすことはない。
【0030】
次に、本発明のアルミニウム合金冷延板は、表層部の結晶粒は、板面に平行で冷延方向に直角な方向の幅が150μm以下、冷延方向に平行な方向の長さが上記幅の8倍以下とする。ここで「表層部」とは、粗面化に関与する表面から少なくとも30μm程度の深さまでの領域を指す。
【0031】
前記規定範囲の化学組成を有する連続鋳造圧延アルミニウム合金冷延板において、表層部の金属組織をこのようにすることによって、DC鋳造アルミニウム合金冷延板のような熱間圧延工程で生ずる粗大な再結晶粒が存在しないので、粗大な再結晶粒に起因するストリーク(筋模様)による電解粗面化面の外観均一性低下が生じない。
【0032】
冷延板表層部の結晶粒が上記規定範囲外の幅および長さであると、ストリークが発生し、粗面化面の外観均一性が得られない。
【0033】
冷延板表層部の結晶粒の幅は120μm以下であることがより望ましい。幅に対する長さの倍率(伸び率)は一般に1.5以上であり、6以下が望ましい。
【0034】
また、本発明による電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板の板厚は、一般に1mm以下であり、望ましくは0.1〜0.5mmである。
【0035】
本発明の方法によれば、連続鋳造圧延によりアルミニウム合金条帯のコイルを形成した後、冷間圧延途中で再結晶のための熱処理を行い、その後最終冷間圧延までの工程を行うことにより、表層部結晶粒の寸法および形状が前記規定範囲内である冷延板としてのアルミニウム合金素板を、長時間を必要としない簡素な工程により低コストで且つ能率的に製造することができる。その際、電解粗面化面の外観を均一とするために望ましい結晶粒の状態を確実に得るには、連続鋳造圧延および冷間圧延途中の再結晶熱処理の条件を適切に選択することが重要である。
【0036】
連続鋳造圧延板の製造方法においては、除滓処理等を施して溶製したアルミニウム合金溶湯をハンター法、3C法、ハザレー法、ベルトキャスター法にて板厚20mm以下の条帯(圧延用スラブ)とし、これを巻き取ってコイルとする。これにより、アルミニウム合金溶湯を急冷凝固させ、合金成分を十分にマトリクス中に固溶せしめ、さらに第二相粒子を均一微細に晶出せしめる。板厚20mm以上ではこの効果が乏しくなるし、また板厚が厚いことによりその後の圧延工程数が増加し、生産性が劣る。
【0037】
連続鋳造圧延によりアルミニウム合金溶湯から厚さ20mm以下のアルミニウム合金条帯を形成し、これを巻き取ってコイルとし、均質化熱処理することなく、その後冷間圧延して所定板厚のアルミニウム合金素板とする。その際、冷間圧延途中で適正な条件で熱処理が行われないときは、電解粗面化が不均一で、粗面化面の外観も不均一である。
【0038】
特に、粗面化面の外観の均一性を確保するためには、最終冷間圧延後の表層部の結晶粒の圧延方向に直角な方向の幅が150μm以下になるように冷間圧延途中の熱処理条件を適性に選択すること、且つこの熱処理後の冷間圧延によって所望の板厚となった時点における結晶粒の圧延方向の長さが幅に対する倍率(伸び率)が8以下となるように冷間圧延条件を適性に選択することが重要である。
【0039】
すなわち、最終冷間圧延後の素板表層部の結晶粒の幅は、冷間圧延途中で施された熱処理により生成した再結晶粒の幅がほぼそのまま持ち来される。したがって、最終冷間圧延後の表層部結晶粒幅は、冷間圧延途中熱処理によりほぼ決定される。一方、最終冷間圧延後の表層部結晶粒長さは、冷間圧延途中熱処理で生成した再結晶粒の長さが、熱処理後の冷間圧延により延伸される程度により決定される。
【0040】
冷間圧延途中に行う熱処理の望ましい態様の一例としては、連続焼鈍装置を用いて、1℃/sec 以上の昇温速度で440〜600℃の温度に加熱し、所定温度に到達したら直ちに、または所定温度で30分程度以下の保持をした後、速やかに冷却する。
【0041】
ここで昇温速度を1℃/sec 以上としたのは、粗面化面の外観を均一にするために、昇温はできるだけ高速であることが望ましいからである。本発明者の経験では、昇温速度をあまり遅くすると、再結晶粒が全面的あるいは局所的に粗大化し、粗面化面の外観を均一にすることが困難になることが分かった。その機構はまだ完全に解明されてはいないが、次の理由によるものと推察される。
【0042】
一般に、再結晶が完了したときの結晶粒の大きさは、主として再結晶核の生成数とサブグレインの成長速度とに左右される。すなわち、再結晶核数の多いほど、またサブグレインの成長速度が速いほど、再結晶粒の大きさは微細なものとなる。
【0043】
再結晶核は、不均一に変形した領域に生成し易い。このような領域としては、粗大な分散粒子および旧粒界の近傍、塑性加工によって生じた変形帯および剪断帯などがある。一方、サブグレインの成長は微細な粒子たとえば微細に析出した粒子の存在によって妨げられる。
【0044】
本発明の連続鋳造圧延によるアルミニウム合金冷延板は、鋳造時のFeを主体とする過飽和固溶元素の大部分がそのまま維持される。したがって再結晶熱処理中に第二相化合物粒子が微細に析出し易く、この微細粒子によってサブグレインの成長が妨げられ、再結晶粒は粗大化する。したがって、これを防止するために再結晶温度まで速やかに昇温させることが肝要である。
【0045】
また、熱処理温度を440℃以上としたのは、この温度範囲であれば十分に再結晶が起き、電解粗面化の均一性および粗面化面の外観均一性を容易に確保できる。ただし、熱処理温度があまり高いと、熱処理中に素板の強度が低下して変形を生ずる恐れがある上、再結晶粒が粗大化することがあるので、600℃以下とすることが望ましい。
【0046】
熱処理の保持時間が長過ぎると再結晶粒が粗大化するので、通常は10分以下が望ましく、2分以下とするのが更に望ましい。
【0047】
熱処理温度からの冷却は、生産性向上のためにできるだけ速いことが望ましい。例えば、1℃/sec 以上の冷却速度で100℃以下にまで冷却する。水冷により500℃/sec 以上の冷却速度で急冷すると更に望ましい。
【0048】
熱処理は、通常の連続焼鈍炉で行ってもよく、磁気誘導加熱(Transverse Flux Induction Heating)方式で行ってもよい。特に磁気誘導加熱方式は、熱処理対象材自体の発熱により加熱を行うので、被処理材表面の酸化皮膜生成量が少なく、粗面化処理への悪影響が少ないので好ましい。
【0049】
既に説明したように上記冷間圧延途中の熱処理は、最終冷間圧延後の表層部結晶粒の幅を150μm以下にし、これによって粗面化面の外観を均一にするために行う。この熱処理は上記説明したように再結晶粒の粗大化を防止しうるように急速加熱により行うことが望ましい。この熱処理は冷間圧延途中で1回あるいは複数回行う。複数回行う場合には、その内の少なくとも1回を前記の急速加熱により行うと、急速加熱の再結晶粒粗大化防止効果を得ることができる。複数回の内、1回のみを連続焼鈍炉や磁気誘導加熱による急速加熱で行い、他の熱処理は加熱速度の遅いバッチ式焼鈍炉等を用いて行うようにしてもよい。
【0050】
最終冷間圧延後の表層部結晶粒幅を150μm以下にするために、冷間圧延途中で行う熱処理の条件の他に、塑性加工によって生じた変形帯および剪断帯の量の局部的な差異を減少させるためにその熱処理までの冷間圧延の累積圧下率を考慮すればなお望ましい。特に、急速加熱による熱処理までの累積圧下率を考慮することが望ましい。特に、急速加熱による熱処理前の累積圧下率を50%以上とすることが望ましい。累積圧下率とは、熱処理を挿入しない複数または単一の冷延パスにより付与された合計圧下率を言う。
【0051】
また、最終冷間圧延後の表層部結晶粒の長さを幅の8倍以内にするためには、最終熱処理以降の冷間圧延による累積圧下率80%以下にすることが望ましい。もちろん、冷間圧延工程の設計においては、最終冷間圧延後の素板が所要の機械的強度を具備し得るように、各パスの圧下率と熱処理の条件および時期とを設定する必要がある。
【0052】
なお、冷間圧延途中で熱処理を行う前に、必要に応じてアルカリ洗浄等により圧延油等の付着物を除去する。
【0053】
本発明では、連続鋳造圧延による条帯を冷間圧延に供するので、冷間圧延前に熱間圧延を行わないか、熱間圧延を行ったとしてもその時間は非常に短く、DC法による従来の方法の1/10程度に過ぎないので、高温に長時間さらされることがない。そのため、鋳造時に過飽和に固溶した元素が熱間圧延過程で析出することがほとんどなく、冷間圧延途中で最初に行う熱処理で始めて析出する。再結晶過程で起きるこの析出により、微細な析出粒子が多数均一に分散する。これにより、電解エッチングによるピット形成が均一に起こり、すなわち電解粗面化が均一に行われる。
【0054】
このように、冷間圧延途中で行う熱処理は、先ず第一義的には適切な再結晶化を通して粗面化面の外観均一性に寄与するが、同時に第二義的には過飽和固溶元素の析出を通して電解粗面化の均一性と粗面化面の外観均一性に寄与する。
【0055】
DC鋳造による従来の方法は、鋳塊の均質化熱処理、熱間圧延、および冷間圧延での中間焼鈍を行っていた。これに対して本発明は、連続鋳造圧延により得られた条帯に、熱間圧延は行わないか、行っても非常に短時間であり、主に冷間圧延とその途中での熱処理を施すのみであるから、工程数が従来法に比べて遙かに少なくてすむ。このように長時間を要しない簡素な工程により低コストで且つ能率的に、電解粗面化の均一性と粗面化面の外観均一性とを実現することができる点で、本発明は従来技術に比べて非常に有利であると言える。
【0056】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0057】
【実施例】
表1に示す組成のアルミニウム合金を連続鋳造圧延し、熱間圧延を行わずまたは軽度の熱間圧延を施した後、途中に熱処理を挿入した冷間圧延を行い、アルミニウム合金冷延板を製造した。
【0058】
【表1】
Figure 0003662959
【0059】
表1中のアルミニウム合金Aについては、ハンター連続鋳造圧延機により、厚さ7mmの条帯のコイルとした。これを表2の製版工程により所望厚さの冷延板とした後、圧延方向に矯正して、平版印刷版用アルミニウム合金素板を得た。
【0060】
表1中のアルミニウム合金Bについては、ベルトキャスター式連続鋳造圧延機により、厚さ15.8mmのスラブに鋳造した。熱間圧延後、表2の製版工程により所望厚さの冷延板とした後、圧延方向に矯正して、平版印刷版用アルミニウム合金素板を得た。
【0061】
冷間圧延途中の熱処理条件は次のとおりであった。昇温については、急速加熱として150℃/sec または10℃/sec の昇温速度、低速加熱として0.03℃/sec (=100℃/時間)の昇温速度で行った。所定熱処理温度での保持および冷却については、各昇温速度毎に、150℃/sec の場合は所定温度に到達直後に500℃/sec 以上の冷却速度で水冷、10℃/sec の場合は所定温度に1分間保持した後に空冷、0.03℃/sec の場合は所定温度に2時間保持した後に空冷とした。
【0062】
なお、150℃/sec の昇温速度は磁気誘導加熱装置(Transverse Flux Induction Heater) 、10℃/sec の昇温速度は実験炉、および0.03℃/sec (100℃/時間)の昇温速度はバッチ焼鈍炉によって得た。
【0063】
【表2】
Figure 0003662959
【0064】
表2の製版工程により得られたNo. 1〜No. 16の本発明例および比較例の各合金素板について、引張試験により機械的性質を測定し、電解粗面化の均一性および粗面化面の外観均一性をそれぞれ次のようにして評価した。
【0065】
なお、本発明にしたがって冷間圧延途中で熱処理を行ったものは、主要元素の固溶量がFe固溶量≦250ppm、Si固溶量≦150ppm、Cu固溶量≦120ppmの範囲内であった。
【0066】
(1)電解粗面化の均一性
素板をバミストン/水の懸濁液中でブラシグレイニングした後、アルカリエッチングおよびデスマット処理を施した。
次に、極性が交互に変換する電解波形を持つ電源を用いて、1%硝酸中で、陽極時電気量が150クーロン/dm2 となる電解エッチングにより、電解粗面化を行った。
【0067】
硫酸中で洗浄した後、走査型電子顕微鏡(SEM)により表面を観察した。また、素板表面の目視観察により砂目立ての均一性を評価した。評価は、砂目均一なものは「良好(○)」、少々の未エッチ部のあるものは「やや難あり(△)」、未エッチ部が多いものや砂目が不均一なものは「不良(×)」とした。
【0068】
(2)粗面化面の外観均一性
素板をバミストン/水の懸濁液中でブラシグレイニングした後、アルカリエッチングおよびデスマット処理を施した。
【0069】
次に、極性が交互に変換する電解波形を持つ電源を用いて、1%硝酸中で、陽極時電気量が150クーロン/dm2 となる電解エッチングにより、電解粗面化を行った。
【0070】
硫酸中で洗浄した後、硫酸中で陽極酸化皮膜を形成させてから、表面の目視観察により外観の均一性を評価した。評価は、外観が均一であるものは「良好(○)」、外観がやや均一でないものは「やや難あり(△)」、および外観が均一でないものやストリークが観察されたものは「不良(×)」とした。
【0071】
得られた結果を、最終冷間圧延率、表層部結晶粒の幅、および表層部結晶粒の長さと共に表3に示す。
【0072】
【表3】
Figure 0003662959
【0073】
表3に見られるように、本発明例の合金素板(No. 2,3,4,5,8,10,12,14,15,16)の場合には、表層部結晶粒の幅が150μm以下、幅に対する長さの倍率(伸び率)が8以下であり、電解粗面化の均一性および電解粗面化面の外観均一性が共に良好(○)であった。
【0074】
これに対し、比較例の合金素板(No. 1,6,7,9,11,13)の場合は下記のように不良が生じた。
比較例No. 1および11は、本発明で規定した冷間圧延途中での熱処理を行わなかったもので、電解粗面化が不均一であり、表層部結晶粒が針状組織であり、粗面化面の外観はストリークが顕著であり不均一であった。
【0075】
比較例No. 6および13は、表層部結晶粒の幅に対する長さの倍率(伸び率)が本発明で規定した8を越えているもので、電解粗面化の均一性は良好であったが、粗面化面の外観はストリークが顕著であり不均一であった。
【0076】
比較例No. 7および9は、表層部結晶粒の幅が本発明で規定した150μmを越えているもので、粗面化面の外観にはムラが観察されやや不均一であった。
【0077】
表3に示した結果から、電解粗面化の均一性と粗面化面の外観均一性とを共に良好にするには、本発明で規定した要件を全て満足する必要があることが分かる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電解粗面化の均一性と粗面化面の外観均一性とを備えた、連続鋳造圧延による電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板が提供される。また、この電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板を、長時間を必要としない簡素な工程により低コストで且つ能率的に製造する方法が提供される。

Claims (1)

  1. 0.20〜0.80wt%のFeを含有し、残部がアルミニウム、結晶粒微細化元素、および不可避的不純物元素から成り、該結晶粒微細化元素は0.01〜0.04 wt %のTiおよび0.0001〜0.02 wt %のBから成る群から選択される少なくとも1種であり、該不純物元素の内でSiの含有量が0.3wt%以下およびCuの含有量が0.05wt%以下であるアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造圧延して厚さ20mm以下の条帯とした後、均質化熱処理することなく圧延し、冷間圧延の途中で、累積圧下率50%以上の段階で、昇温速度150℃/sec以上、保持温度440〜600℃の熱処理を少なくとも1回行い、かつ最後の熱処理以降の累積圧下率を80%以下として該冷間圧延を行うことにより、冷延板表層部の結晶粒の寸法および形状を、板面に平行で冷延方向に直角な方向の幅が150μm以下、冷延方向に平行な方向の長さが上記幅の8倍以下となるように、制御することを特徴とする電解粗面化平版印刷版用アルミニウム合金素板の製造方法。
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