JP3662956B2 - 縫合針 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、主に生体組織を縫合する縫合針に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外科手術において、生体を縫合する際には、縫合針が使用される。従来の縫合針には、次のような構成のものがある。
【0003】
▲1▼ 先端に鋭利な針先を有し、基端部(頭部)に縫合用糸を通す側孔を有する構成のもの。
【0004】
▲2▼ 両端に鋭利な針先を有し、その中間付近に縫合用の糸を通す側孔を有する構成のもの。
【0005】
▲3▼ 使い捨て用の縫合針であって、基端部に予め縫合用の糸が固着された構成のもの。
【0006】
▲4▼ 針本体が中空構造をなし、その中空部に縫合用糸を通して装着する構成のもの。
【0007】
しかしながら、上記▲3▼の縫合針は、縫合針に対し糸が固定され、脱着できず、また、上記▲1▼、▲2▼、▲4▼は、いずれも、糸の装着に際し孔に通す作業を要し、その作業に手間がかかるという問題がある。
【0008】
また、生体組織に穿刺した針を抜き取り再び穿刺するように、生体組織の接合部に往復して縫合を行う場合、上記各縫合針では、縫合針の全長を生体組織に通過させないと縫合ができず、縫合針の移動距離が長く、操作性が悪い。さらに、上記▲1▼、▲3▼、▲4▼では、縫合針を抜き取る度に、針の基端部が生体組織の穿刺孔を通過するので、生体組織へ損傷を与える恐れがある。
【0009】
特に、近年注目されている腹腔鏡下手術は、腹壁を貫通して装着されたトロカール管を介して腹腔内に縫合器を挿入し、該縫合器の先端に設けられた円弧状の縫合針を用いて、内視鏡の観察下で、体外からの遠隔操作により縫合を行うものであるが、上述したように、腹腔内において縫合針への糸の脱着が行えないので、縫合の手順に制約を受け、操作性が悪く、手術時間が長くなる等の問題が生じている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、糸の着脱が容易であり、縫合の操作性に優れる縫合針、特に腹腔鏡下手術における縫合に用いるのに好適な縫合針を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下(1)〜(4)の本発明により達成される。
【0012】
(1)先端に鋭利な針先を有する針本体と、前記針本体に密接可能な外套管を有し、前記針本体の長手方向の途中に、縫合用の糸を把持する糸把持手段が設けられ、前記針本体の針先の他端に設けられた持針部と、該持針部に設けられた取り巻き棒と、前記外套管の一端に係止され、該取り巻き棒を介して操作部へと延びている操作線と、該持針部と該外套管の一端との間に備えられたバネとからなり、前記外套管は前記糸把持手段を被包、露出可能となるように、前記針本体軸方向に移動可能な機構を備えたことを特徴とする縫合針。
【0013】
(2)前記外套管の外表面と、前記針本体の外表面とが実質上、連続面を構成している上記(1)に記載の縫合針。
【0014】
(3)前記針本体および前記外套管は、円弧状に湾曲し、且つ、同一軸を有する(1)ないし(2)のいずれかに記載の縫合針。
【0015】
(4)前記針本体は、円弧状に湾曲しており、前記糸把持手段は、前記針本体の湾曲の内側に形成されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の縫合針。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の縫合針を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。 図1は、本発明の縫合針の糸把持手段が被包された状態の実施例を示す側面図、図2は、本発明の縫合針の糸把持手段が露出された状態の実施例を示す側面図、図3は、本発明の縫合針による外套管の移動機構を表す側面図である。図4は、本発明の縫合針の外套管の移動機構を表す側面図である。なお、以下の説明では、各図中の右側を「基端」、左側を「先端」という。
【0018】
図示の縫合針1は、腹腔鏡下手術に用いられる縫合針であって、円弧状に湾曲した針本体2と外套管3を有している。この針本体2の先端には、鋭利な刃先21が形成され、基端には持針部22が形成されている。
【0019】
針本体2の軸線23の曲率半径Rは、特に限定されないが、5〜35mm程度、特に、10〜25mm程度とするのが好ましい。
【0020】
針本体2の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、タングステンおよびこれらの合金のような従来より針に用いられている種々の金属材料が挙げられる。
【0021】
このような針本体2の長手方向の途中には、糸把持手段24が形成されており、該糸把持手段24の設置位置は、針先21からの長さが針本体2の全長に対して1/4〜3/4程度の位置、特に1/3〜2/3程度の位置とするのが好ましい。 基端の持針部には取り巻き棒25が設けられており、外套管の外径よりも持針部の外径の方が大きな径を形成している。
【0022】
外套管3も針本体2と同様に、軸線23の曲率半径Rは、5〜35mm程度、特に10〜25mm程度とするのが好ましい。
【0023】
外套管3の構成材料としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、タングステンおよびこれらの合金のような従来より針に用いられている種々の金属材料やETFE、PTFE等が挙げられる。
【0024】
このような外套管3の内径は、針本体2の外径よりもやや広径であり、外套管3の外表面と、針本体2の外表面とが実質的に連続面を構成している。
【0025】
また、基端には2カ所の固定部31を形成し、固定部31は操作線32を備えており、操作線32の構成材料としては、ステンレス線等の金属の線、より線、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ゴムチューブ等が挙げられる。
【0026】
縫合針1は、針本体2の持針部22と外套管3の基端側の間にバネ5を備え、外套管3の固定部31に接続された操作線32が、針本体2の取り巻き棒25を介して操作部(図示しない)へと延びており、操作線32を操作することにより、外套管3は針本体2の軸方向に摺動可能で、それにより、糸把持手段24を被包、露出することが可能となる。
【0027】
また、糸把持手段24の位置を針先21からの針本体2の全長に対し、1/4〜3/4程度の位置、好ましくは1/3〜2/3程度の長さに形成することにより、縫合針1の全長を生体組織6に通過させなくても、途中の糸把持手段24を生体組織6表面から露出させるだけで縫合糸4を脱着することができ、縫合の操作性が向上する。
【0028】
次に、本発明の第1の実施例である、縫合針1を1本使用した場合の縫合方法(作用)について、腹腔鏡下手術における縫合に適用した例を図5〜図8に基づいて説明する。
【0029】
[1] 図5に示すように、糸把持手段24を被包状態にした縫合針1を生体組織6に刺通し、その先端を少なくとも糸把持手段24が生体組織6の表面から露出する程度に突出させる。
【0030】
[2] 図6に示すように、操作線32を操作して糸把持手段24を露出状態にし、縫合糸4が糸把持手段24部に到達したら、再び操作線32を操作し被包状態にする。この状態が縫合糸4を把持した状態である。
【0031】
[3] 図7に示すように、縫合針1を基端側へ移動し、すなわち、生体組織6から抜き取る動作を行う。これにより、縫合糸4は縫合針1とともに生体組織6の内部に挿通され、縫合針1を生体組織6から針先21まで抜き取る。
【0032】
[4] 図8に示すように、穿刺位置を変えて再び縫合針1を針先21から生体組織6に穿刺し、針本体2の先端側を少なくとも糸把持手段24が生体組織6から露出する程度に突出させる。
【0033】
[5] 操作線32を操作して、糸把持手段24を露出状態にして、縫合糸4を糸把持手段24より抜き取り、再び操作線32を操作し被包状態にする。これで、縫合糸4の把持が解除された状態となる。
【0034】
次に本発明の第2の実施例である、縫合針1を2本使用して連続的な縫合の例を図9に基づいて説明する。
【0035】
[1] 縫合針1を生体組織6の右側から左側へ刺通し、針本体2の糸把持手段24が生体組織6から露出する程度に突出させる。操作線32を操作して、糸把持手段24を露出状態にし、縫合糸4を把持したら糸把持手段24を被包状態にして、生体組織6から抜き取る動作を行う。
【0036】
[2] 糸把持手段24が生体組織6の右側から露出する程度に突出したら、操作線32を操作して、糸把持手段24を露出状態にして、縫合糸4を糸把持手段24から抜き取る。
【0037】
[3] 別の穿刺位置から縫合針1’を生体組織6の左側から右側へ刺通し、糸把持手段24が露出する程度に突出させ、操作線32を操作して、糸把持手段24を露出状態にし、縫合針1により生体組織6内を挿通された縫合糸4を把持した状態にして、再び操作線32を操作して糸把持手段24を被包状態にしたら、生体組織6から抜き取る動作を行う。
【0038】
[4] 糸把持手段24が生体組織6の左側から露出する程度に突出したら、操作線32を操作して、糸把持手段24を露出状態にして、縫合糸4を糸把持手段24から抜き取る。
【0039】
[5] 前記工程[1]〜[4]を所定回数繰り返し行うことより生体組織6の縫合がなされる。
【0040】
以上のように、本発明の縫合針1は、操作線32を操作して外套管3を針本体2の軸線23方向に摺動可能とすることにより、糸把持手段24を露出、被包状態にすることができるため、縫合糸4の着脱を行うことが可能となり、特に、腹腔鏡下手術においては、縫合針1を腹腔内に留置したまま縫合糸4の着脱を容易に行うことができる。
【0041】
しかも、縫合針1の先端側の少なくとも糸把持手段24部を生体組織6から露出させるだけで縫合糸4の着脱を行うことができるので、縫合針1の移動距離が少なく、縫合の操作性に優れるとともに、生体組織6の損傷も少ない。特に、縫合針1の全長を所定に調整することにより、持針部22およびその近傍が生体組織6を通過することなく縫合を行えるので、持針部22等の通過による生体組織6への損傷を考慮することなく縫合することができる。
【0042】
図9は、本発明の縫合針の実施例を示す側面図である。縫合針1の基端側の持針部22を大きくすることにより、持針器等で把持する場合に把持しやすくなる。その他の機能は、第1の実施例と同様である。
【0043】
また、持針部22およびその近傍の形状を任意に設定、例えば、縫合器による針支持に適した形状に設定することができる。
【0044】
以上、本発明の縫合針1を図示の実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、糸把持手段24の構成は、糸を把持し得る機能を持つ任意の構成のものに置換をすることができ、糸把持手段24の設置位置、設置数も任意に設定することができる。
【0045】
また、本発明は、図示のごとき湾曲針に限らず、直線状の針に適用することもできる。
【0046】
また、本発明の縫合針1の用途も、腹腔鏡下手術に用いられるものに限定されず、通常の手術や、その他の縫合作業に用いるものに適用することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の縫合針は、先端に鋭利な針先を有する針本体と、前記針本体に密接可能な外套管を有し、前記針本体の長手方向の途中に、縫合用の糸を把持する糸把持手段が設けられ、前記針本体の針先の他端に設けられた持針部と、該持針部に設けられた取り巻き棒と、前記外套管の一端に係止され、該取り巻き棒を介して操作部へと延びている操作線と、該持針部と該外套管の一端との間に備えられたバネとからなり、前記外套管は前記糸把持手段を被包、露出可能となるように、前記針本体軸方向に移動可能な機構を備えたことにより、縫合糸の着脱を容易に行うことができ、縫合の操作性が格段に向上する。
【0048】
特に、糸把持手段が針本体の長手方向の途中に設けられているので、縫合針の全長を生体組織に通過させなくても縫合糸の着脱を行うことができ、縫合の操作性が向上するとともに、生体組織へ与える損傷も少ない。
【0049】
また、針本体の外表面と外套管の外表面とが実質的に連続面を構成している場合には、縫合針を生体組織に通過させる際に、縫合針の外表面が生体組織6に対して円滑に摺動し、生体組織を損傷することが防止されるので、安全性が高い。
【0050】
このように、本発明の縫合針は、縫合の操作性に優れ、安全性が高いことから、特に、腹腔鏡下手術のような縫合器を用いて遠隔操作により縫合を行う手術に適用する場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の縫合針の糸把持手段が被包された状態の実施例を示す側面図である。
【図2】本発明の縫合針の糸把持手段が露出された状態の実施例を示す側面図である。
【図3】本発明の縫合針による外套管の移動機構を表す側面図である。
【図4】本発明の縫合針による外套管の移動機構を表す側面図である。
【図5】本発明の縫合針による縫合手順を示す側面図である。
【図6】本発明の縫合針による縫合手順を示す側面図である。
【図7】本発明の縫合針による縫合手順を示す側面図である。
【図8】本発明の縫合針による縫合手順を示す側面図である。
【図9】本発明の縫合針による縫合手順を示す側面図である。
【図10】本発明の縫合針の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
1,1’ 縫合針
2 針本体
21 針先
22 持針部
23 軸線
24 糸把持手段
25 取り巻き棒
3 外套管
31 固定部
32 操作線
4 縫合糸
5 バネ
6 生体組織
Claims (4)
- 先端に鋭利な針先を有する針本体と、前記針本体に密接可能な外套管を有し、
前記針本体の長手方向の途中に、縫合用の糸を把持する糸把持手段が設けられ、
前記針本体の針先の他端に設けられた持針部と、該持針部に設けられた取り巻き棒と、前記外套管の一端に係止され、該取り巻き棒を介して操作部へと延びている操作線と、該持針部と該外套管の一端との間に備えられたバネとからなり、
前記外套管は前記糸把持手段を被包、露出可能となるように、前記針本体軸方向に移動可能な機構を備えたことを特徴とする縫合針。 - 前記外套管の外表面と、前記針本体の外表面とが実質上、連続面を構成している請求項1に記載の縫合針。
- 前記針本体および前記外套管は、円弧状に湾曲し、且つ、同一軸を有する請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の縫合針。
- 前記針本体は、円弧状に湾曲しており、前記糸把持手段は、前記針本体の湾曲の内側に形成されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の縫合針。
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