JP3662621B2 - 誘導プラズマの発生方法および装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、高周波電圧の誘導によってプラズマを発生させる方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波電圧によって空間に電界を形成すると、その空間内で電子が往復運動を行う。この電子が中性ガスと衝突電離をくり返すことによって、イオンが増大し、プラズマが形成される。高周波電圧によって誘導されるプラズマは、空間に直接、電極を配す必要がないので、電極から発生する不純物の混入を避けることができる。そのために、プラズマ化学やプラズマCVDの分野では材料の成膜やエッチング処理にこの高周波誘導プラズマがしばしば用いられている。
【0003】
図5は従来の誘導プラズマの発生装置の構成を示す断面図である。円筒状の絶縁容器2の上下にフランジ4,9が取り付けられ、上部のフランジ4には上蓋5が被さっている。フランジ4,9の中心には絶縁管11が固定されている。絶縁管11と絶縁容器2との間には冷却水3とともに、図示されていない支えを介して第1コイル1が配されている。第1コイル1は絶縁被覆された導体でもって絶縁管11の外周を軸方向にらせん状に巻回されたものであり、その両端は高周波電源10に接続されている。
【0004】
また、図5において、上蓋5の中心にキャリアガス8を通すための絶縁管8Aと、シードガス7を通すための絶縁管13とが配されている。さらに、上蓋5には絶縁管11の内部に連通する横穴7A,6Aが設けられてあり、それぞれシードガス7,シースガス6を絶縁管11の内部に導いている。絶縁管11の上部内周面と絶縁管13の外周面との間には、スペーサ6Bが介装されている。このスペーサ6Bは、らせん状に形成されてあり、これによってシースガス6をらせん状に流すように誘導している。なお、図5の装置全体は図示されていない真空容器内に収納されている。
【0005】
図5を用いて絶縁管11内部に誘導プラズマ12が形成されるメカニズムを次に説明する。横穴7Aを介してシードガス7が絶縁管11内部の真空中に流される。シードガス7は、例えばArなどの不活性気体が用いられ、誘導プラズマ12の種(シード)になるものである。また、同時に横穴6Aを介してArなどのシースガス6も絶縁管11内部に流される。このシースガス6はらせん状のスペーサ6Bの介在によって絶縁管11の内壁面に沿ったらせん状の流れ(点線で示す)になる。この状態で高周波電源10から第1コイル1に高周波電流を流すと、絶縁管11の内部に軸方向の高周波磁界が発生する。さらに、この磁界を打ち消すために絶縁管11の中心軸のまわりを環状に誘導電流が流れる。シードガス7は、初期は分子自体が中性であるが、このガス中に微小に含まれている初期電子が高周波磁界によって絶縁管11内で周方向に振動する。この電子が中性分子と衝突電離し、イオンおよび電子の増大によってシードガス7がプラズマ状態になる。図5の誘導プラズマ12は上述のメカニズムによって形成されたものであり、この誘導プラズマ12内には誘導電流が流れジュール加熱によって、その領域の温度は数千から数万度にも達する。
【0006】
シースガス6は、誘導プラズマ12が絶縁管11の内壁面に直接触れないようにするためのものである。シースガス6を絶縁管11の内壁面に沿ってらせん状に流すことによって誘導プラズマ12の外周側を冷却し、誘導プラズマ12を絶縁管11の中心軸側へ定在させている。冷却水3を流すことによって、第1コイル1および絶縁管11を冷却するとともに、シースガス6も冷やし、シースガス6自体がプラズマ化することも防いでいる。
【0007】
図5において、誘導プラズマ12が形成されると、絶縁管11の上部から、キャリアガス8を流し、誘導プラズマ12中に混入させる。誘導プラズマ12の高温によって、キャリアガス8とシードガス7とを反応させ、その反応ガスを絶縁管11の下部により取り出す。キャリアガス8は、ガス単独の場合もあれば、ガスと粉末との混合体である場合もある。この誘導プラズマ12は、例えば半導体表面の成膜やエッチングなどのプラズマ処理に使われる。オゾン層の破壊原因とされているフロンをプラズマによって分解する装置などにも使用することができる。
【0008】
しかしながら、前述した図5の装置は、直径の大きい誘導プラズマを形成すると、誘導プラズマ内の温度分布が不均一になるという問題があった。図5の装置において、第1コイル1にはMHzオーダ以上、一般的には10MHzオーダのラジオ周波数領域の高周波電流が流されていた。そのために表皮効果により誘導電流のほとんどが誘導プラズマの外周表面を流れ、高温領域が外周側に片寄り、内部の温度上昇が充分でなかった。したがって、従来は直径にして50〜60mmの誘導プラズマが実用に供されるのが限界であった。プラズマ処理などの実用装置においては、温度分布が均一で、かつ出来るだけ直径の大きい誘導プラズマを用いた方がそのプラズマ処理能力が向上する。
【0009】
図6は、従来の異なる誘導プラズマの発生装置の構成を示す断面図である。この装置は、直径が大きくなっても温度分布が均一な誘導プラズマを形成することができるものであり、その発生原理は発明者が文献1に公表している。
文献1・・・作田他「低周波・大容量誘導プラズマの安定発生条件」 日本AEM学会誌 Vol.1, No.1, P.25 〜P.30 June 1993
図6はプラズマ発生装置が2段に構成されたものであり、上段の装置は図5と同様な構成となっている。したがって、同じ部分は同一参照符号に用いることにより説明は省略する。下段にもう一つの絶縁容器21が設けられ、この絶縁容器21はフランジ41と42とで挟持されている。絶縁容器21の内部には絶縁管22,23が設けられるとともに絶縁管22,23との間にらせん状のスペーサ60Bが介装されている。フランジ41にはキャリアガス80を通すための横穴80Aと、シースガス60を通すための横穴60Aとが設けられ、いずれも絶縁管22の内部に連通している。一方、絶縁容器21の内側には冷却水20に浸された第2コイル15が配され、交流電源14に接続されている。第2コイル15は絶縁被覆された導体よりなり、絶縁管22の外周を巻回している。なお、図5ではキャリアガス8は上蓋5から送り込まれていたが、図6の装置ではフランジ41の横穴80Aから送り込まれている。また、第1コイル1にはMHzオーダないし数10MHzのラジオ周波数領域の高周波電流が流され、第2コイル15には500kHz以下である非ラジオ周波数領域の交番電流が流されている。
【0010】
図6において、第1コイル1の内側に形成される誘導プラズマ18は、図5における誘導プラズマ12と同様のメカニズムにて形成される。この誘導プラズマ18は、シードガス7の流れに従って下方に進み、内径の広い絶縁管22の中に送り込まれ、横穴80Aから流し込まれるキャリアガス80と混ざり合う。絶縁管22の内部にプラズマ状態のものが流れ込んでくるので、絶縁管22の外周に配された第2コイルによる磁界形成によって誘導電流が絶縁管22内に誘起される。これによって、誘導プラズマ19が発生する。絶縁管22の内径は絶縁管11のそれより大きいので、誘導プラズマ18は半径方向に大きく広がった誘導プラズマ19に成長する。なお、シースガス60はらせん状のスペーサ60Bを介して流れ出るので、シースガス6の流れと同様に絶縁管22の内壁面に沿ってらせん状に流れている。このシースガス60によって、誘導プラズマ19が絶縁管22に直接触れないようにしている。上述のように、誘導プラズマ18は誘導プラズマ19の点弧源となっている。すなわち、第2コイル15に流される交番電流の周波数は500kHz以下である非ラジオ周波数領域にあるので、誘導プラズマ19はそれ単独では点弧しない。図6の構成にしておけば、上部の絶縁管11の内径dを必ずしも50ないし60mm以下とする必要はない。誘導プラズマ18は点弧するだけでよく、その内部の温度分布は均一でなくてもよい。プラズマ18が下方に流れ誘導プラズマ19となったときに、第2コイル15による誘導電流によって全体が均一に加熱される。例えば、絶縁管11の内径dを100mm、絶縁管22の内径Dを300mmに構成しても、直径が数100mmでかつ内部まで温度が均一な誘導プラズマを形成することができる。その理由は第1コイル1によって形成される誘導電流はMHzオーダ以上の高周波なので、表皮効果により誘導プラズマ18の表面側だけを主として流れる。一方、第2コイル15によって形成される誘導電流は500kHz以下と低周波になるので、その表皮効果が薄れ誘導プラズマ19の内部まで誘導電流が流れやすくなる。そのために、誘導プラズマ19は内部まで温度が均一になる。交流電源14としては、数kHzから数百Hzという低周波数のものを用いてもよい。交流電源14の周波数が低周波側になるに従って表皮効果が薄れ、プラズマ19の温度がより均一になる。したがって、図5の従来の装置における絶縁管13の内径dは50〜60mmが限度であったのが、図6の装置では絶縁管22の内径Dを数100mmに拡大して構成しても、均一な誘導プラズマ19を得ることができる。図6の装置によって数100mmの直径の誘導プラズマを形成させても、全体の温度が均一なのでプラズマ処理を広い面積で実施することができ、プラズマ処理の効率が大幅に向上する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の装置は、高周波電源が必要であるという問題があった。
高周波電源としては、その周波数が少なくとも1MHzオーダ以上、好ましくは数MHzから数10MHzのラジオ周波数領域のものでないと、プラズマシードガスが点弧しない。しかも、その出力容量としても数10kW以上のものが必要であった。周波数が高くかつ容量も大きくなると、その発生熱量も増加するので設備も大型化しかつ高価なものになってくる。
【0012】
この発明の目的は、誘導プラズマの点弧源として高周波電源を用いなくても済むようにすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明によれば、絶縁管の軸方向の一方端に設けたプラズマトーチ内にシードガスを供給し、前記プラズマトーチの電極対間に直流電圧を印加することにより前記シードガスを予めプラズマ化し、前記プラズマ化したシードガスよりなるプラズマジェットを前記プラズマトーチから前記絶縁管の内部へ射出するとともにキャリアガスを前記絶縁管の内部に供給し、前記絶縁管内において前記プラズマジェットを点弧源とするとともに前記絶縁管の外周に巻回されたコイルに周波数が500kHz以下の交番電流を流して形成した磁界によって前記絶縁管内に誘導電流を誘起させることにより誘導プラズマを発生させ、この誘導プラズマが発生した後に前記プラズマジェットを消弧させることとするとよい。
【0014】
また、上記の方法を実施する誘導プラズマの発生装置として、絶縁管と、この絶縁管の軸方向の一方端に設けられたプラズマトーチと、このプラズマトーチ内にシードガスを供給するシードガス供給手段と、前記絶縁管の内部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記絶縁管の外周に巻回されたコイルと、このコイルに接続され周波数が500kHz以下の交番電流を出力する交流電源とにより構成され、前記プラズマトーチが、その間隙にシードガスが吹き込まれる電極対と、この電極対に並列接続された直流電源と、直流電圧の印加によってプラズマ化した電極間のシードガスよりなるプラズマジェットを前記絶縁管の内部に向けて射出するノズルと、前記電極対と前記直流電源との間に介装されるとともに前記誘導プラズマが発生した後に遮断されてなるスイッチとを備えたものとするとよい。
【0015】
かかる構成において、プラズマトーチが複数配されてなるものとしてもよい。
【0016】
【作用】
この発明の構成によれば、絶縁管の軸方向の一方端にプラズマトーチを設け、このプラズマトーチのノズルから直流電圧の印加によってプラズマ化したプラズマシードガスを絶縁管の内部に向けて射出する。このプラズマ化したシードガスが誘導プラズマの点弧源となり、周波数がMHzオーダ以上の高周波電源は必要なくなり、かつ直流電源の出力容量も1kW程度のものでよい。したがって、設備も小型かつ安価なものになる。
【0017】
かかる構成において、プラズマトーチが複数配される。プラズマトーチのノズルを絶縁管の端面に満遍なく一様に配しておけば、絶縁管の内径を大きくしても誘導プラズマが点弧しやすくなり、直径がどんなに大きい誘導プラズマでも形成することができる。
【0018】
【実施例】
以下、この発明を実施例に基づいて説明する。図1は、この発明の実施例にかかるプラズマ発生装置の構成を示す断面図である。プラズマトーチ100が陰電極101(例えば、タングステンや銅一コンスタンタン)および陽電極102(例えば、銅や黄銅)よりなる電極対103と、この電極対103にスイッチ111を介して並列接続された直流電源104と高電圧パルス電源105とにより構成されている。陽電極102は容器を形成し、絶縁体106を介して陰電極101を支持している。また、陽電極102の絶縁管22側は横穴80A,60Aを形成するとともにプラズマジェット107を射出するノズル108を形成する穴を備えている。さらに、陽電極102には、シードガス7が吹き込まれる吹き込み穴110が設けられている。その他の構成は、図6に説明された従来の構成と同じである。同じ部分には、同一参照符号を付けることにより詳細な説明を繰り返すことは省略する。
【0019】
図1において、シードガス7を吹き込み穴110から陽電極102の内部へ吹き込み、ノズル108から絶縁管22の内部へシードガス7を吹き出させる。シードガス7の流量としては、毎分10〜30リットル程度でよい。その状態でスイッチ111を投入し電極対103に電圧を印加する。高電圧パルス電源105からの高電圧パルスによって陰電極101の先端部と陽電極102のノズル108付近との間にあるシードガス7を絶縁破壊させ、シードガス7をプラズマ状態にする。ここで電極対103の電極間隔を例えば1mmとした場合、前記高電圧パルスの波周値は最低1000V程度であればよい。また、シードガス7の圧力は、プラズマ発生の最初の段階では、印加電圧が直流でも放電しやすい圧力、すなわち100〜200Paの圧力まで減圧している。高電圧パルスが消えた後でも、直流電源104による直流電圧が電極対103に印加されているので、シードガス7のプラズマ状態は維持される。ここで、高電圧パルス印加により一旦プラズマが発生した後シードガス7のプラズマ状態を維持するために必要な直流印加電圧は、電極対103の電極間隔を例えば1mmとした場合、最低20V程度であればよい。吹き込み穴110からは、シードガス7が継続して吹き込まれるのでノズル108からプラズマ化したシードガス7の射出体であるプラズマジェット107が絶縁管22の軸中心付近を下に伸びてくる。
【0020】
図2は、図1のプラズマジェット107が点弧源となって誘導プラズマ112が形成された状態を示す断面図である。絶縁管22の内部にプラズマ状態のプラズマジェットが流れ込んでくるので、絶縁管22の外周に配されるとともに交流電源14(例えば、40ないし50kW以上)が接続された第2コイル15による磁界形成によって誘導電流が絶縁管22内に誘起される。これによって、誘導プラズマ112が発生する。絶縁管22の内径(例えば、100mm以上)は絶縁管11のそれより大きいので、プラズマジェットはキャリアガス80とともに半径方向に大きく広がった誘導プラズマ112に成長する。
【0021】
なお、図1の装置による誘導プラズマ発生の実験では、直径が100mmでかつ内部まで温度が均一な誘導プラズマを形成することができた。実験条件は次の通りである。
絶縁管の内径a=100mm
誘導電流源の周波数f=42kHz
また、上記実験での誘導プラズマの半径方向の温度分布は、10、000K±500Kとほぼ一定であった。
【0022】
以上のように本発明による誘導プラズマ発生装置において、プラズマの加熱・維持のための誘導電流源として、従来のラジオ周波数領域の高周波電源の代わりに500kHz以下の低周波電源を用いることにより、高周波電源を使用した場合に実用可能な誘導プラズマの直径の限界50〜60mmをはるかに越える直径の誘導プラズマが実用可能となることが実験で確認された。
【0023】
上述のように、図1のプラズマジェット107は誘導プラズマ112の点弧源となっている。すなわち、第2コイル15に流される交番電流の周波数は500kHz以下である非ラジオ周波数領域にあるので、誘導プラズマ112はそれ単独では点弧しない。図1の構成にすることによって、MHzオーダ以上の高周波電源が必要なくなった。また、プラズマ発生の最初の段階で陰電極101の先端部と陽電極102のノズル108付近との間にあるシードガス7を絶縁破壊させ、シードガス7をプラズマ状態にするための高電圧は、高電圧パルス電源105の方から印加するようにしているので、高電圧の直流電源は不要であり、直流電源104は30ないし50V,30A、すなわち、1kW程度の小容量のものでよい。しかも、誘導プラズマ112の点弧後は、スイッチ111を遮断しても誘導プラズマ112は継続する。そのため、直流電源104および高圧パルス電源105は誘導プラズマ112の点弧時だけに必要なものである。さらに、プラズマトーチ100は、従来の装置のように第1コイルやその冷却水も不要であり、非常に簡素な装置であるために安価である。
【0024】
高周波電源を用いないで誘導プラズマを点弧させる他の方法として、実開平1−168946号公報に絶縁管22の軸方向の両端に高電圧を印加し、絶縁管22の内部で発生する火花放電を点弧源とする方法が記載されている。図1のプラズマトーチ100による方法も高電圧パルス電源105が用いられているが、高電圧を絶縁管22の軸方向の両端に印加するのではなく、プラズマトーチ100内の電極対103に印加する点が全く異なっている。そのために、プラズマトーチ100内の電極対103のギャップ長を予め小さく設定しておけば、それ程高い高電圧は必要ない。すなわち、高電圧パルス電源105の発生電圧は絶縁管22の大きさに関係せず、プラズマジェット107を点弧させるための最低限の大きさでよい。絶縁管22内のプラズマジェット107は絶縁管22の軸方向に長い方が誘導プラズマ112(図2)が点弧しやすい。このプラズマジェット107の長さは吹き込み穴110からのシードガス7の吹き込み圧力を変えることによって簡単に調整することができる。なお、図1において、高電圧パルス電源105は必ずしもなくてもよい。直流電源104の出力電圧を一時的に昇圧させ、電極対103を絶縁破壊させた後に直流電圧を下げ、プラズマジェット107が安定する電圧に直流電源104を設定してもよい。
【0025】
なお、シードガス7,シースガス60およびキャリアガス80は、いずれもArが一般的であるが、その他に、HeやNeなどの希ガスでもよい。シースガス60は、シードガス7と混ざるので同じ種類のガスが良い。また、キャリアガス80もシースガス60やシードガス7と混ざるので同じ種類のガスが良い。
図3は、この発明の異なる実施例にかかる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図である。プラズマトーチ100Aが陽電極102Aの内部に絶縁体106Aを介して配された複数の陰電極101Aを備え、各陰電極101Aと陽電極102Aとがそれぞれ電極対103Aを形成している。各電極対103Aにはスイッチ111Aを介してそれぞれ直流電源104Aと高電圧パルス電源105Aが並列接続されている。陽電極102Aには各陰電極101Aの下部先端部との対向部にノズル108Aが形成されている。プラズマトーチ100Aの各ノズル108Aからは、それぞれプラズマジェット107Aが同一の絶縁管22内部に射出されている。その他は図1の構成と同じである。
【0026】
図4は、図3のプラズマジェット107Aが点弧源となって誘導プラズマ112Aが形成された状態を示す断面図である。プラズマジェット107Aが誘導プラズマ112Aに成長するメカニズムは、図2において1本のプラズマジェット107について説明されたことと全く同様である。
図3において、同一の絶縁管22内に複数のプラズマジェット107Aを射出させるようにしたので、絶縁管22の直径を極端に大きくして、大きい直径の誘導プラズマ112Aを形成したい場合には非常に有効である。絶縁管22の内径が広い場合に、1本のプラズマジェット107Aでも点弧は可能であるが、複数のプラズマジェット107Aを絶縁管22の端面に満遍なく配した方が点弧しやすくなる。この構成により絶縁管22の内径が大きくても確実に誘導プラズマ112Aが点弧されるようになる。さらに、プラズマジェット107Aの射出後、誘導プラズマ112Aが形成されるまでの時間も短かくなる。例えば、我々は、プラズマジェットを2本とすると、プラズマジェットが1本のときよりも、プラズマジェットの射出後、誘導プラズマが形成されるまでの時間を半減できることを実験で確認した。誘導プラズマ112Aが点弧するまでは流したシードガス7やシースガス60やキャリアガス80が無駄になるが、この装置によって、それらのガス量も節約できる。なお、図3のプラズマトーチ100Aは、陽電極102Aを共通にして2個のプラズマトーチとして構成されたものである。プラズマトーチの数は、その絶縁管の内径に応じて一般に複数設置するとよい。この構成によって、直径がどんな大きさの誘導プラズマでも形成することができ、材料の広い範囲の成膜やエッチング処理を一度に行うことができる。
【0027】
なお、本装置のプラズマジェットには、電極対から発生する不純物が多少含まれるが、直流電流の必要容量が小さいのでその発生不純物は非常に少ない。また、誘導プラズマ形成後、材料処理の間はプラズマジェットを消弧させておくので、誘導プラズマ中には電極対からの不純物は全くなくなる。そのために、本装置は実用上不純物発生による支障は全く生じない。
【0028】
また、図3、図4の装置では、高圧パルス電源105A、直流電源104A、スイッチ111Aは、各陰電極101Aに対して別々になっているが、共通に一つの高圧パルス電源105A、直流電源104A、スイッチ111Aで構成してもよい。
【0029】
【発明の効果】
この発明は前述のように、誘導プラズマの点弧源としてプラズマジェットを射出するプラズマトーチを絶縁管の一方端に配した。これにより、ラジオ周波数領域の高周波電源が不用になり、設備が小型化するとともに安価なものになった。また、プラズマの加熱・維持のための誘導電流源として、ラジオ周波数領域の高周波電源の代りに、500kHz以下の電源を用いるようにした。これにより、高周波電源を使用した場合における、周囲の金属が誘導加熱されることによる温度上昇が生じ、かつ外部機器へのノイズ誘導により電源制御や、電流・電圧、プラズマ温度計測がしにくいという、電源周波数が高周波領域であることによる障害を軽減することができる。
【0030】
かかる構成において、プラズマトーチを複数配する。これにより、誘導プラズマが点弧しやすくなり、直径がどんなに大きい誘導プラズマでも形成することができる。そのために、材料の広い範囲の表面処理が一度に出来、処理工程の能率を高めることができる。また、誘導プラズマの点弧時間が短いので、シースガスやシードガスやキャリアガスなどの無駄も省くことができるという経済的効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例にかかる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【図2】図1のプラズマジェットが点弧源となって誘導プラズマが形成された状態を示す断面図
【図3】この発明の異なる実施例にかかる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【図4】図3のプラズマジェットが点弧源となって誘導プラズマが形成された状態を示す断面図
【図5】従来の誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【図6】従来の異なる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【符号の説明】
22:絶縁管、100,100A:プラズマトーチ、15:第2コイル、14:交流電源、7:シードガス、103,103A:電極対、104:直流電源、107,107A:プラズマジェット、101,101A:陰電極、102,102A:陽電極、105,105A:高電圧パルス電源、111,111A:スイッチ
【産業上の利用分野】
この発明は、高周波電圧の誘導によってプラズマを発生させる方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波電圧によって空間に電界を形成すると、その空間内で電子が往復運動を行う。この電子が中性ガスと衝突電離をくり返すことによって、イオンが増大し、プラズマが形成される。高周波電圧によって誘導されるプラズマは、空間に直接、電極を配す必要がないので、電極から発生する不純物の混入を避けることができる。そのために、プラズマ化学やプラズマCVDの分野では材料の成膜やエッチング処理にこの高周波誘導プラズマがしばしば用いられている。
【0003】
図5は従来の誘導プラズマの発生装置の構成を示す断面図である。円筒状の絶縁容器2の上下にフランジ4,9が取り付けられ、上部のフランジ4には上蓋5が被さっている。フランジ4,9の中心には絶縁管11が固定されている。絶縁管11と絶縁容器2との間には冷却水3とともに、図示されていない支えを介して第1コイル1が配されている。第1コイル1は絶縁被覆された導体でもって絶縁管11の外周を軸方向にらせん状に巻回されたものであり、その両端は高周波電源10に接続されている。
【0004】
また、図5において、上蓋5の中心にキャリアガス8を通すための絶縁管8Aと、シードガス7を通すための絶縁管13とが配されている。さらに、上蓋5には絶縁管11の内部に連通する横穴7A,6Aが設けられてあり、それぞれシードガス7,シースガス6を絶縁管11の内部に導いている。絶縁管11の上部内周面と絶縁管13の外周面との間には、スペーサ6Bが介装されている。このスペーサ6Bは、らせん状に形成されてあり、これによってシースガス6をらせん状に流すように誘導している。なお、図5の装置全体は図示されていない真空容器内に収納されている。
【0005】
図5を用いて絶縁管11内部に誘導プラズマ12が形成されるメカニズムを次に説明する。横穴7Aを介してシードガス7が絶縁管11内部の真空中に流される。シードガス7は、例えばArなどの不活性気体が用いられ、誘導プラズマ12の種(シード)になるものである。また、同時に横穴6Aを介してArなどのシースガス6も絶縁管11内部に流される。このシースガス6はらせん状のスペーサ6Bの介在によって絶縁管11の内壁面に沿ったらせん状の流れ(点線で示す)になる。この状態で高周波電源10から第1コイル1に高周波電流を流すと、絶縁管11の内部に軸方向の高周波磁界が発生する。さらに、この磁界を打ち消すために絶縁管11の中心軸のまわりを環状に誘導電流が流れる。シードガス7は、初期は分子自体が中性であるが、このガス中に微小に含まれている初期電子が高周波磁界によって絶縁管11内で周方向に振動する。この電子が中性分子と衝突電離し、イオンおよび電子の増大によってシードガス7がプラズマ状態になる。図5の誘導プラズマ12は上述のメカニズムによって形成されたものであり、この誘導プラズマ12内には誘導電流が流れジュール加熱によって、その領域の温度は数千から数万度にも達する。
【0006】
シースガス6は、誘導プラズマ12が絶縁管11の内壁面に直接触れないようにするためのものである。シースガス6を絶縁管11の内壁面に沿ってらせん状に流すことによって誘導プラズマ12の外周側を冷却し、誘導プラズマ12を絶縁管11の中心軸側へ定在させている。冷却水3を流すことによって、第1コイル1および絶縁管11を冷却するとともに、シースガス6も冷やし、シースガス6自体がプラズマ化することも防いでいる。
【0007】
図5において、誘導プラズマ12が形成されると、絶縁管11の上部から、キャリアガス8を流し、誘導プラズマ12中に混入させる。誘導プラズマ12の高温によって、キャリアガス8とシードガス7とを反応させ、その反応ガスを絶縁管11の下部により取り出す。キャリアガス8は、ガス単独の場合もあれば、ガスと粉末との混合体である場合もある。この誘導プラズマ12は、例えば半導体表面の成膜やエッチングなどのプラズマ処理に使われる。オゾン層の破壊原因とされているフロンをプラズマによって分解する装置などにも使用することができる。
【0008】
しかしながら、前述した図5の装置は、直径の大きい誘導プラズマを形成すると、誘導プラズマ内の温度分布が不均一になるという問題があった。図5の装置において、第1コイル1にはMHzオーダ以上、一般的には10MHzオーダのラジオ周波数領域の高周波電流が流されていた。そのために表皮効果により誘導電流のほとんどが誘導プラズマの外周表面を流れ、高温領域が外周側に片寄り、内部の温度上昇が充分でなかった。したがって、従来は直径にして50〜60mmの誘導プラズマが実用に供されるのが限界であった。プラズマ処理などの実用装置においては、温度分布が均一で、かつ出来るだけ直径の大きい誘導プラズマを用いた方がそのプラズマ処理能力が向上する。
【0009】
図6は、従来の異なる誘導プラズマの発生装置の構成を示す断面図である。この装置は、直径が大きくなっても温度分布が均一な誘導プラズマを形成することができるものであり、その発生原理は発明者が文献1に公表している。
文献1・・・作田他「低周波・大容量誘導プラズマの安定発生条件」 日本AEM学会誌 Vol.1, No.1, P.25 〜P.30 June 1993
図6はプラズマ発生装置が2段に構成されたものであり、上段の装置は図5と同様な構成となっている。したがって、同じ部分は同一参照符号に用いることにより説明は省略する。下段にもう一つの絶縁容器21が設けられ、この絶縁容器21はフランジ41と42とで挟持されている。絶縁容器21の内部には絶縁管22,23が設けられるとともに絶縁管22,23との間にらせん状のスペーサ60Bが介装されている。フランジ41にはキャリアガス80を通すための横穴80Aと、シースガス60を通すための横穴60Aとが設けられ、いずれも絶縁管22の内部に連通している。一方、絶縁容器21の内側には冷却水20に浸された第2コイル15が配され、交流電源14に接続されている。第2コイル15は絶縁被覆された導体よりなり、絶縁管22の外周を巻回している。なお、図5ではキャリアガス8は上蓋5から送り込まれていたが、図6の装置ではフランジ41の横穴80Aから送り込まれている。また、第1コイル1にはMHzオーダないし数10MHzのラジオ周波数領域の高周波電流が流され、第2コイル15には500kHz以下である非ラジオ周波数領域の交番電流が流されている。
【0010】
図6において、第1コイル1の内側に形成される誘導プラズマ18は、図5における誘導プラズマ12と同様のメカニズムにて形成される。この誘導プラズマ18は、シードガス7の流れに従って下方に進み、内径の広い絶縁管22の中に送り込まれ、横穴80Aから流し込まれるキャリアガス80と混ざり合う。絶縁管22の内部にプラズマ状態のものが流れ込んでくるので、絶縁管22の外周に配された第2コイルによる磁界形成によって誘導電流が絶縁管22内に誘起される。これによって、誘導プラズマ19が発生する。絶縁管22の内径は絶縁管11のそれより大きいので、誘導プラズマ18は半径方向に大きく広がった誘導プラズマ19に成長する。なお、シースガス60はらせん状のスペーサ60Bを介して流れ出るので、シースガス6の流れと同様に絶縁管22の内壁面に沿ってらせん状に流れている。このシースガス60によって、誘導プラズマ19が絶縁管22に直接触れないようにしている。上述のように、誘導プラズマ18は誘導プラズマ19の点弧源となっている。すなわち、第2コイル15に流される交番電流の周波数は500kHz以下である非ラジオ周波数領域にあるので、誘導プラズマ19はそれ単独では点弧しない。図6の構成にしておけば、上部の絶縁管11の内径dを必ずしも50ないし60mm以下とする必要はない。誘導プラズマ18は点弧するだけでよく、その内部の温度分布は均一でなくてもよい。プラズマ18が下方に流れ誘導プラズマ19となったときに、第2コイル15による誘導電流によって全体が均一に加熱される。例えば、絶縁管11の内径dを100mm、絶縁管22の内径Dを300mmに構成しても、直径が数100mmでかつ内部まで温度が均一な誘導プラズマを形成することができる。その理由は第1コイル1によって形成される誘導電流はMHzオーダ以上の高周波なので、表皮効果により誘導プラズマ18の表面側だけを主として流れる。一方、第2コイル15によって形成される誘導電流は500kHz以下と低周波になるので、その表皮効果が薄れ誘導プラズマ19の内部まで誘導電流が流れやすくなる。そのために、誘導プラズマ19は内部まで温度が均一になる。交流電源14としては、数kHzから数百Hzという低周波数のものを用いてもよい。交流電源14の周波数が低周波側になるに従って表皮効果が薄れ、プラズマ19の温度がより均一になる。したがって、図5の従来の装置における絶縁管13の内径dは50〜60mmが限度であったのが、図6の装置では絶縁管22の内径Dを数100mmに拡大して構成しても、均一な誘導プラズマ19を得ることができる。図6の装置によって数100mmの直径の誘導プラズマを形成させても、全体の温度が均一なのでプラズマ処理を広い面積で実施することができ、プラズマ処理の効率が大幅に向上する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の装置は、高周波電源が必要であるという問題があった。
高周波電源としては、その周波数が少なくとも1MHzオーダ以上、好ましくは数MHzから数10MHzのラジオ周波数領域のものでないと、プラズマシードガスが点弧しない。しかも、その出力容量としても数10kW以上のものが必要であった。周波数が高くかつ容量も大きくなると、その発生熱量も増加するので設備も大型化しかつ高価なものになってくる。
【0012】
この発明の目的は、誘導プラズマの点弧源として高周波電源を用いなくても済むようにすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明によれば、絶縁管の軸方向の一方端に設けたプラズマトーチ内にシードガスを供給し、前記プラズマトーチの電極対間に直流電圧を印加することにより前記シードガスを予めプラズマ化し、前記プラズマ化したシードガスよりなるプラズマジェットを前記プラズマトーチから前記絶縁管の内部へ射出するとともにキャリアガスを前記絶縁管の内部に供給し、前記絶縁管内において前記プラズマジェットを点弧源とするとともに前記絶縁管の外周に巻回されたコイルに周波数が500kHz以下の交番電流を流して形成した磁界によって前記絶縁管内に誘導電流を誘起させることにより誘導プラズマを発生させ、この誘導プラズマが発生した後に前記プラズマジェットを消弧させることとするとよい。
【0014】
また、上記の方法を実施する誘導プラズマの発生装置として、絶縁管と、この絶縁管の軸方向の一方端に設けられたプラズマトーチと、このプラズマトーチ内にシードガスを供給するシードガス供給手段と、前記絶縁管の内部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記絶縁管の外周に巻回されたコイルと、このコイルに接続され周波数が500kHz以下の交番電流を出力する交流電源とにより構成され、前記プラズマトーチが、その間隙にシードガスが吹き込まれる電極対と、この電極対に並列接続された直流電源と、直流電圧の印加によってプラズマ化した電極間のシードガスよりなるプラズマジェットを前記絶縁管の内部に向けて射出するノズルと、前記電極対と前記直流電源との間に介装されるとともに前記誘導プラズマが発生した後に遮断されてなるスイッチとを備えたものとするとよい。
【0015】
かかる構成において、プラズマトーチが複数配されてなるものとしてもよい。
【0016】
【作用】
この発明の構成によれば、絶縁管の軸方向の一方端にプラズマトーチを設け、このプラズマトーチのノズルから直流電圧の印加によってプラズマ化したプラズマシードガスを絶縁管の内部に向けて射出する。このプラズマ化したシードガスが誘導プラズマの点弧源となり、周波数がMHzオーダ以上の高周波電源は必要なくなり、かつ直流電源の出力容量も1kW程度のものでよい。したがって、設備も小型かつ安価なものになる。
【0017】
かかる構成において、プラズマトーチが複数配される。プラズマトーチのノズルを絶縁管の端面に満遍なく一様に配しておけば、絶縁管の内径を大きくしても誘導プラズマが点弧しやすくなり、直径がどんなに大きい誘導プラズマでも形成することができる。
【0018】
【実施例】
以下、この発明を実施例に基づいて説明する。図1は、この発明の実施例にかかるプラズマ発生装置の構成を示す断面図である。プラズマトーチ100が陰電極101(例えば、タングステンや銅一コンスタンタン)および陽電極102(例えば、銅や黄銅)よりなる電極対103と、この電極対103にスイッチ111を介して並列接続された直流電源104と高電圧パルス電源105とにより構成されている。陽電極102は容器を形成し、絶縁体106を介して陰電極101を支持している。また、陽電極102の絶縁管22側は横穴80A,60Aを形成するとともにプラズマジェット107を射出するノズル108を形成する穴を備えている。さらに、陽電極102には、シードガス7が吹き込まれる吹き込み穴110が設けられている。その他の構成は、図6に説明された従来の構成と同じである。同じ部分には、同一参照符号を付けることにより詳細な説明を繰り返すことは省略する。
【0019】
図1において、シードガス7を吹き込み穴110から陽電極102の内部へ吹き込み、ノズル108から絶縁管22の内部へシードガス7を吹き出させる。シードガス7の流量としては、毎分10〜30リットル程度でよい。その状態でスイッチ111を投入し電極対103に電圧を印加する。高電圧パルス電源105からの高電圧パルスによって陰電極101の先端部と陽電極102のノズル108付近との間にあるシードガス7を絶縁破壊させ、シードガス7をプラズマ状態にする。ここで電極対103の電極間隔を例えば1mmとした場合、前記高電圧パルスの波周値は最低1000V程度であればよい。また、シードガス7の圧力は、プラズマ発生の最初の段階では、印加電圧が直流でも放電しやすい圧力、すなわち100〜200Paの圧力まで減圧している。高電圧パルスが消えた後でも、直流電源104による直流電圧が電極対103に印加されているので、シードガス7のプラズマ状態は維持される。ここで、高電圧パルス印加により一旦プラズマが発生した後シードガス7のプラズマ状態を維持するために必要な直流印加電圧は、電極対103の電極間隔を例えば1mmとした場合、最低20V程度であればよい。吹き込み穴110からは、シードガス7が継続して吹き込まれるのでノズル108からプラズマ化したシードガス7の射出体であるプラズマジェット107が絶縁管22の軸中心付近を下に伸びてくる。
【0020】
図2は、図1のプラズマジェット107が点弧源となって誘導プラズマ112が形成された状態を示す断面図である。絶縁管22の内部にプラズマ状態のプラズマジェットが流れ込んでくるので、絶縁管22の外周に配されるとともに交流電源14(例えば、40ないし50kW以上)が接続された第2コイル15による磁界形成によって誘導電流が絶縁管22内に誘起される。これによって、誘導プラズマ112が発生する。絶縁管22の内径(例えば、100mm以上)は絶縁管11のそれより大きいので、プラズマジェットはキャリアガス80とともに半径方向に大きく広がった誘導プラズマ112に成長する。
【0021】
なお、図1の装置による誘導プラズマ発生の実験では、直径が100mmでかつ内部まで温度が均一な誘導プラズマを形成することができた。実験条件は次の通りである。
絶縁管の内径a=100mm
誘導電流源の周波数f=42kHz
また、上記実験での誘導プラズマの半径方向の温度分布は、10、000K±500Kとほぼ一定であった。
【0022】
以上のように本発明による誘導プラズマ発生装置において、プラズマの加熱・維持のための誘導電流源として、従来のラジオ周波数領域の高周波電源の代わりに500kHz以下の低周波電源を用いることにより、高周波電源を使用した場合に実用可能な誘導プラズマの直径の限界50〜60mmをはるかに越える直径の誘導プラズマが実用可能となることが実験で確認された。
【0023】
上述のように、図1のプラズマジェット107は誘導プラズマ112の点弧源となっている。すなわち、第2コイル15に流される交番電流の周波数は500kHz以下である非ラジオ周波数領域にあるので、誘導プラズマ112はそれ単独では点弧しない。図1の構成にすることによって、MHzオーダ以上の高周波電源が必要なくなった。また、プラズマ発生の最初の段階で陰電極101の先端部と陽電極102のノズル108付近との間にあるシードガス7を絶縁破壊させ、シードガス7をプラズマ状態にするための高電圧は、高電圧パルス電源105の方から印加するようにしているので、高電圧の直流電源は不要であり、直流電源104は30ないし50V,30A、すなわち、1kW程度の小容量のものでよい。しかも、誘導プラズマ112の点弧後は、スイッチ111を遮断しても誘導プラズマ112は継続する。そのため、直流電源104および高圧パルス電源105は誘導プラズマ112の点弧時だけに必要なものである。さらに、プラズマトーチ100は、従来の装置のように第1コイルやその冷却水も不要であり、非常に簡素な装置であるために安価である。
【0024】
高周波電源を用いないで誘導プラズマを点弧させる他の方法として、実開平1−168946号公報に絶縁管22の軸方向の両端に高電圧を印加し、絶縁管22の内部で発生する火花放電を点弧源とする方法が記載されている。図1のプラズマトーチ100による方法も高電圧パルス電源105が用いられているが、高電圧を絶縁管22の軸方向の両端に印加するのではなく、プラズマトーチ100内の電極対103に印加する点が全く異なっている。そのために、プラズマトーチ100内の電極対103のギャップ長を予め小さく設定しておけば、それ程高い高電圧は必要ない。すなわち、高電圧パルス電源105の発生電圧は絶縁管22の大きさに関係せず、プラズマジェット107を点弧させるための最低限の大きさでよい。絶縁管22内のプラズマジェット107は絶縁管22の軸方向に長い方が誘導プラズマ112(図2)が点弧しやすい。このプラズマジェット107の長さは吹き込み穴110からのシードガス7の吹き込み圧力を変えることによって簡単に調整することができる。なお、図1において、高電圧パルス電源105は必ずしもなくてもよい。直流電源104の出力電圧を一時的に昇圧させ、電極対103を絶縁破壊させた後に直流電圧を下げ、プラズマジェット107が安定する電圧に直流電源104を設定してもよい。
【0025】
なお、シードガス7,シースガス60およびキャリアガス80は、いずれもArが一般的であるが、その他に、HeやNeなどの希ガスでもよい。シースガス60は、シードガス7と混ざるので同じ種類のガスが良い。また、キャリアガス80もシースガス60やシードガス7と混ざるので同じ種類のガスが良い。
図3は、この発明の異なる実施例にかかる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図である。プラズマトーチ100Aが陽電極102Aの内部に絶縁体106Aを介して配された複数の陰電極101Aを備え、各陰電極101Aと陽電極102Aとがそれぞれ電極対103Aを形成している。各電極対103Aにはスイッチ111Aを介してそれぞれ直流電源104Aと高電圧パルス電源105Aが並列接続されている。陽電極102Aには各陰電極101Aの下部先端部との対向部にノズル108Aが形成されている。プラズマトーチ100Aの各ノズル108Aからは、それぞれプラズマジェット107Aが同一の絶縁管22内部に射出されている。その他は図1の構成と同じである。
【0026】
図4は、図3のプラズマジェット107Aが点弧源となって誘導プラズマ112Aが形成された状態を示す断面図である。プラズマジェット107Aが誘導プラズマ112Aに成長するメカニズムは、図2において1本のプラズマジェット107について説明されたことと全く同様である。
図3において、同一の絶縁管22内に複数のプラズマジェット107Aを射出させるようにしたので、絶縁管22の直径を極端に大きくして、大きい直径の誘導プラズマ112Aを形成したい場合には非常に有効である。絶縁管22の内径が広い場合に、1本のプラズマジェット107Aでも点弧は可能であるが、複数のプラズマジェット107Aを絶縁管22の端面に満遍なく配した方が点弧しやすくなる。この構成により絶縁管22の内径が大きくても確実に誘導プラズマ112Aが点弧されるようになる。さらに、プラズマジェット107Aの射出後、誘導プラズマ112Aが形成されるまでの時間も短かくなる。例えば、我々は、プラズマジェットを2本とすると、プラズマジェットが1本のときよりも、プラズマジェットの射出後、誘導プラズマが形成されるまでの時間を半減できることを実験で確認した。誘導プラズマ112Aが点弧するまでは流したシードガス7やシースガス60やキャリアガス80が無駄になるが、この装置によって、それらのガス量も節約できる。なお、図3のプラズマトーチ100Aは、陽電極102Aを共通にして2個のプラズマトーチとして構成されたものである。プラズマトーチの数は、その絶縁管の内径に応じて一般に複数設置するとよい。この構成によって、直径がどんな大きさの誘導プラズマでも形成することができ、材料の広い範囲の成膜やエッチング処理を一度に行うことができる。
【0027】
なお、本装置のプラズマジェットには、電極対から発生する不純物が多少含まれるが、直流電流の必要容量が小さいのでその発生不純物は非常に少ない。また、誘導プラズマ形成後、材料処理の間はプラズマジェットを消弧させておくので、誘導プラズマ中には電極対からの不純物は全くなくなる。そのために、本装置は実用上不純物発生による支障は全く生じない。
【0028】
また、図3、図4の装置では、高圧パルス電源105A、直流電源104A、スイッチ111Aは、各陰電極101Aに対して別々になっているが、共通に一つの高圧パルス電源105A、直流電源104A、スイッチ111Aで構成してもよい。
【0029】
【発明の効果】
この発明は前述のように、誘導プラズマの点弧源としてプラズマジェットを射出するプラズマトーチを絶縁管の一方端に配した。これにより、ラジオ周波数領域の高周波電源が不用になり、設備が小型化するとともに安価なものになった。また、プラズマの加熱・維持のための誘導電流源として、ラジオ周波数領域の高周波電源の代りに、500kHz以下の電源を用いるようにした。これにより、高周波電源を使用した場合における、周囲の金属が誘導加熱されることによる温度上昇が生じ、かつ外部機器へのノイズ誘導により電源制御や、電流・電圧、プラズマ温度計測がしにくいという、電源周波数が高周波領域であることによる障害を軽減することができる。
【0030】
かかる構成において、プラズマトーチを複数配する。これにより、誘導プラズマが点弧しやすくなり、直径がどんなに大きい誘導プラズマでも形成することができる。そのために、材料の広い範囲の表面処理が一度に出来、処理工程の能率を高めることができる。また、誘導プラズマの点弧時間が短いので、シースガスやシードガスやキャリアガスなどの無駄も省くことができるという経済的効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例にかかる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【図2】図1のプラズマジェットが点弧源となって誘導プラズマが形成された状態を示す断面図
【図3】この発明の異なる実施例にかかる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【図4】図3のプラズマジェットが点弧源となって誘導プラズマが形成された状態を示す断面図
【図5】従来の誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【図6】従来の異なる誘導プラズマ発生装置の構成を示す断面図
【符号の説明】
22:絶縁管、100,100A:プラズマトーチ、15:第2コイル、14:交流電源、7:シードガス、103,103A:電極対、104:直流電源、107,107A:プラズマジェット、101,101A:陰電極、102,102A:陽電極、105,105A:高電圧パルス電源、111,111A:スイッチ
Claims (3)
- 絶縁管の軸方向の一方端に設けたプラズマトーチ内にシードガスを供給し、前記プラズマトーチの電極対間に直流電圧を印加することにより前記シードガスを予めプラズマ化し、前記プラズマ化したシードガスよりなるプラズマジェットを前記プラズマトーチから前記絶縁管の内部へ射出するとともにキャリアガスを前記絶縁管の内部に供給し、前記絶縁管内において前記プラズマジェットを点弧源とするとともに前記絶縁管の外周に巻回されたコイルに周波数が500kHz以下の交番電流を流して形成した磁界によって前記絶縁管内に誘導電流を誘起させることにより誘導プラズマを発生させ、この誘導プラズマが発生した後に前記プラズマジェットを消弧させることを特徴とする誘導プラズマの発生方法。
- 請求項1に記載の誘導プラズマの発生方法を実施するものであって、絶縁管と、この絶縁管の軸方向の一方端に設けられたプラズマトーチと、このプラズマトーチ内にシードガスを供給するシードガス供給手段と、前記絶縁管の内部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、前記絶縁管の外周に巻回されたコイルと、このコイルに接続され周波数が500kHz以下の交番電流を出力する交流電源とにより構成され、前記プラズマトーチが、その間隙にシードガスが吹き込まれる電極対と、この電極対に並列接続された直流電源と、直流電圧の印加によってプラズマ化した電極間のシードガスよりなるプラズマジェットを前記絶縁管の内部に向けて射出するノズルと、前記電極対と前記直流電源との間に介装されるとともに前記誘導プラズマが発生した後に遮断されてなるスイッチとを備えたことを特徴とする誘導プラズマの発生装置。
- 請求項2に記載の誘導プラズマの発生装置において、プラズマトーチが複数配されてなることを特徴とする誘導プラズマの発生装置。
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