JP3661858B2 - カレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いたシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルのカレンダー加工においてロール剥離性、ロングラン加工性、熱安定性、特にカレンダー加工したシートの引き取り性に優れ、食品、化粧品、飲料用のシュリンクラベル、保香性ヒートシールフィルム、耐油性多層シート等、各種シート、フィルム、特に工業加工用シート、フィルムに有用なカレンダー加工に最適なポリエステル樹脂組成物及びそのシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より塩化ビニル系シート(フィルム)は安価でかつ透明性に優れることからあるゆる用途に多用されている。このシートを加工する方法としては押し出し成型やカレンダー成型が知られているが、押し出し成形ではカレンダー成形と比較して、ダイリップの摩擦が樹脂の加工性(成形性)を左右し、シート(フィルム)の厚さ、幅、流れ方向などにおいて精度が劣り、また大量生産にも不向きである。よって生産性や品質の観点より後者がより多く使われている。
【0003】
また塩化ビニルに可塑剤を添加する事により自由に柔軟性を調節できることからシートとしての加工がしやすく、その用途の代表例としては、木材の意匠性向上のために木目を印刷した化粧版シート(フィルム)がある。
【0004】
しかしながら近年、塩化ビニル焼却時のダイオキシン発生の問題、内分泌撹乱物質等による可塑剤使用抑制の問題より塩化ビニル系シート(フィルム)を他の素材に置き換えようとする動きがある。数ある代替素材の内、ポリエステルはその物理的性状、価格等の面より有力な素材である。しかし、ポリエステルで代替するに当たっては以下の大きな課題がある。
【0005】
それは塩ビシートの成型方法として多用されているカレンダー成型への適用が難しいことである。従来ポリエステル樹脂は、シートやフィルムを製造する方法として、加工の容易さから押し出し成形が主に使用されてきた。しかしながらポリエステル樹脂をカレンダー加工しようとすると、熱可塑化した際のロールへの粘着力が比較的強く、加工時にロールに付着し易いため成型が困難である。そこでロールへの付着を防止するために種々の滑剤を添加することが試みられている。
【0006】
かかる滑剤としては例えばポリエチレンワックスやパラフィンワックス等の炭化水素系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、高級アルコール系滑剤、高級脂肪酸による金属石鹸、脂肪酸アマイド系滑剤、エステル系滑剤、他種の滑剤の検討が行われている。例えば、特開平11−343353、特開2000−136294、特開2000−186191、特開2000−302951、特開2001−64496、特開2001−4019、米国特許公報6068910でシクロヘキサンジメタノールを共重合した非晶性のポリエチレンテレフタレートに様々な滑材を用いてカレンダー加工によりシート化している。
【0007】
これらの中にはロールからの剥離性が良好と記載されているものもあるが、実用化(工業的生産)するにあたって大きな課題があることが判ってきた。すなわち本発明者らが開示されている非晶性ポリエステルと滑剤を使用してカレンダー加工のテストを行ったところ、カレンダーロールからの剥離は、滑剤を多くしていくと達成できるが、このシートをカレンダーロールから剥がし取った後、引き取って、冷却ロールに持っていく際に、樹脂自身の溶融体強度が不足していることから、シートの自重によりいわゆる「たれ」が発生し、カレンダーロールから冷却ロールへの引き取りが上手く行かないという問題が浮上した。すなわち溶融シートの引き取り性不足の問題である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑み、加工時(即ち、カレンダーロールによりシート化する時)におけるロールからのシートの離型性が良好なだけでなく、カレンダーロールからの引き取り性に関しても良好で、しかも出来上がったシートの透明性が良好であるカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を達成すべく、鋭意研究した結果、非晶性ポリエステル樹脂、特定の酸化防止剤、滑剤を配合することにより、カレンダー加工時におけるロール離型が良好なだけでなく、カレンダーロールからの溶融シート引き取り性、シートの透明性に関しても両立化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は以下の特徴を有している。
(1)ポリエステル、式Iに示すヒンダードフェノール型酸化防止剤、滑剤を含むことを特徴とするカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物。
【0011】
式I
【化2】
【0012】
(2)非晶性ポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、かつ、前示カルボン酸成分あたりイソフタル酸成分を5〜50モル%含むか、または、全ジオール成分あたりネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールから選ばれる1種または2種以上のジオールを5〜50モル%含む、共重合ポリエステルであることを特徴とする(1)に記載のカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物。
【0013】
(3)非晶性ポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、かつ、全ジオール成分あたり、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールから選ばれる1種または2種以上のジオールを5〜50モル%含むことを特徴とする(1)または(2)記載のカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物。
【0014】
(4)上記のいずれかに記載の樹脂組成物をカレンダー加工して得られたシート。
【0015】
【発明実施の形態】
本発明のカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物は、非晶性ポリエステル100重量部に対し、式Iに示すヒンダードフェノール型酸化防止剤を好ましくは0.05〜2重量部、滑剤を好ましくは0.01〜5重量部よりなるものである。ここで言う非晶性とは以下のように定義する。すなわち示差走査熱量計(DSC)を用いて−100℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温した後、50℃/minで300℃から−100℃まで冷却し、次に−100℃から300℃まで20℃/minの速度で再度昇温する。その2度の昇温過程のどちらにも明確な融解ピークを持たないことを示す。
【0016】
本発明で使用する非晶性ポリエステルは特に限定はされないが、カレンダー加工して得られるシートの伸度及び機械的物性(特に強度や耐衝撃性)の点からテレフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルが好ましい。ここでいう主成分とは全ジカルボン酸成分及び、グリコール成分をそれぞれ100モル%としたとき、両成分がそれぞれ50モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは65モル%以上であることを意味する。
【0017】
またさらに、かかるテレフタル酸とエチレングリコールを主成分とするポリエステルの場合、▲1▼全ジカルボン酸成分当たりイソフタル酸成分を5〜50モル%(好ましくは10〜40モル%)、および/または、▲2▼全ジオール成分当たり1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれる少なくとも1種のジオール成分を5〜50モル%(好ましくは10〜40モル%)含む共重合組成であれば、樹脂の結晶性が低下して、本発明の樹脂組成物の加工性がより一層向上する。また、▲2▼の場合、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの3者から選ばれる1種又は2種以上のジオールを含む共重合組成であるのがより好ましい。
【0018】
このような共重合ポリエステルであれば、ポリエチレンテレフタレートが示す良好な強伸度や耐衝撃性を保持しつつ、樹脂を非晶性にすることができすので、透明性の点で好ましい結果が得られる。
【0019】
又、上記▲2▼を満たす共重合ポリエステルである場合、ネオペンチルグリコールを含む共重合組成であれば、そのようなポリエステルは、滑剤(特に後述の湯木リン酸エステルの金属塩やポリオレフィン系ワックス)との相溶性が向上し、ロール離型性を得るための滑剤の量を少なくできるので、シートの透明性向上に有利に作用するだけでなく、シートの伸度や強度といった機械的特性も向上する。
【0020】
本発明の非晶性ポリエステル樹脂は、上記のテレフタル酸、イソフタル酸以外の他の多価カルボン酸を共重合しても良く、例えばオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等の公知のものが挙げられ、1種又は2種以上が使用できる。
【0021】
本発明の非晶性ポリエステル樹脂は、上記のエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール以外の他の多価アルコール成分が共重合されていても良く、例えば1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン等が挙げられ、1種又は2種以上が使用できる。
【0022】
本発明における好適な非晶性ポリエステルは、具体的には、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=90〜70/10〜30//100モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/1,2−プロピレングリコール=100//80〜50/20〜50モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/1,3−プロピレングリコール=95〜80/5〜20//90〜70/10〜30モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/1,4−ブタンジオール=95〜70/5〜30//90〜50/10〜50モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/2−メチル−1,3−プロパンジオール=100//60〜80/4.0〜20モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/2−メチル−1,3−プロパンジオール=95〜80/5〜20//70〜90/30〜10モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=100//85〜60/15〜40モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=95〜80/5〜20//90〜70/10〜30モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール=100//75〜50/25〜50モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール=95〜80/5〜20//90〜75/10〜25モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=100//80〜60/20〜40モル%が挙げられる。これらの非晶性ポリエステルであれば、適度な非晶状態であり、加工して得られるシートの透明性がより高くなり、また、ガラス転移温度も下記で示す様な範囲に調節することができる。
【0023】
さらには、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=100//85〜60/15〜40モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=95〜80/5〜20//90〜70/10〜30モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール=100//75〜50/25〜50モル%、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール=95〜80/5〜20//90〜75/10〜25モル%、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=100//80〜60/20〜40モル%であれば、ロール離型性とカレンダーロールからの溶融シートの引き取り性と、出来上がったシートの透明性のバランスが高いレベルで調節でき、さらに好ましい。
【0024】
本発明に用いられる非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、下限は好ましくは15000、より好ましくは18000、さらに好ましくは20000である。上限は好ましくは40000、より好ましくは35000である。数平均分子量が15000未満であると、樹脂凝集力不足のためにシートの強伸度が不足し、脆くなって使用できないことがある。一方、40000以上になると溶融粘度が上がるために、カレンダー加工するのに最適な温度も上がってしまい、結果的にロールからのシートの離型性を悪くしてしまうことがある。
【0025】
本発明に用いられる非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは60当量/106g以下、より好ましくは50当量/106g以下、さらに好ましくは40当量/106g以下である。酸価が60当量/106gを越えると、カレンダー加工時に樹脂を加熱する際、加水分解がより促進され、できあがったシートの機械的強度が低下する。また、樹脂の分解が進むことより、ロールからのシートの離型性も低下する。
【0026】
本発明に用いられるポリエステル樹脂組成物の、220℃、剪断速度100sec-1のときの溶融粘度は、好ましくは6000〜60000dPa・secであり、より好ましくは7000dPa・sec以上、さらに好ましくは8000dPa・sec、上限ではよりましくは50000dPa・sec以下、さらに好ましくは40000dPa・sec以下である。溶融粘度が6000dPa・sec未満だと樹脂の粘着性が増すためにロールからのシートの離型性が低下することがある。一方60000dPa・secを越えると溶融粘度が高すぎて、生産性が低下するため実用的でない場合がある。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂を使用してカレンダー加工によりシートを作成する場合、ロールからの溶融シートの引き取り性を高めるために、当該ポリエステル樹脂に酸化防止剤を配合する必要がある。数ある酸化防止剤のうち、引き取り性に効果の認められるのは式Iに示すトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートである。式Iで示す構造を有するヒンダードフェノール型酸化防止剤により、ロール引き取り性に対して非常に高い効果を得ることができる。
【0028】
式I
【化3】
【0029】
式Iのヒンダードフェノール型酸化防止剤の配合量の下限は0.01重量部であることが望ましく、好ましくは0.02重量部、さらに好ましくは0.05重量部である。配合量の上限は2重量部であることが望ましく、好ましくは1.8重量部、さらに好ましくは1.5重量部である。0.01重量部以下ではロールからのシート引き取り性に対して顕著な効果を示さないことがある。一方2重量部を越えると非晶性ポリエステルとの相溶性が低下して、シートの透明性が損なわれたり、シートを長期使用していると酸化防止剤のブリードアウトが起こったりして、シート外観に対して悪影響をあたえる可能性がある。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂組成物に、ロールからのシート引き取り性をさらに高める目的でチオエーテル系酸化防止剤を配合する方が好ましい。チオエーテル系酸化防止剤とは分子内にチオエーテル基を持つ酸化防止剤であり、その一般例としてはジラウリル−3−3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられるが特に限定はされない。しかし、それらの中でも下記一般式(II)で示されるものが好ましい。これらチオエーテル系酸化防止剤を併用するとロールからの溶融シートの引き取り性が飛躍的に向上する。
【0031】
式II
【化4】
【0032】
(式中R1〜R8はアルキレン基、R9〜R12はアルキル基を示す)
これらのうちR1〜R4がメチレン基、R5〜R8がエチレン基、R9〜R12がラウリル基のペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が汎用性や経済性の観点より好ましい。
【0033】
チオエーテル系酸化防止剤の配合下限は0.01重量部であることが望ましく、より好ましくは0.02重量部、さらに好ましくは0.05重量部である。一方上限は2重量部であることが望ましく、好ましくは1.8重量部、さらに好ましくは1.5重量部である。0.01重量部以下ではロール引き取り性に対して顕著な効果を示さないことがある。一方2重量部を越えると非晶性ポリエステルとの相溶性が低下して、シートの透明性が損なわれたり、シートを長期使用していると酸化防止剤のブリードアウトが起こったりして、シート外観に対して悪影響をあたえる可能性がある。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂には、加工時のポリエステル樹脂の熱劣化を抑制する(熱劣化による樹脂の着色を防止する)ためにその他の酸化防止剤を配合しても良い。当該酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、有機亜リン酸エステル系化合物等が好適である。
【0035】
本発明で使用するフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキジフェニル)プロパン、ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)スルフィド、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)スルフィド、ビス(3−tert−ブチル5−エチル−2−ヒドロキジフェニル)メタン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキジフェニル)メタン、ビス(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、エチレンビス[3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブチラ−ト]、ビス[2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル5−メチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、4−メトキシフェノール、シクロヘキシルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、ハイドロキノン、4−tert−ブチルピロカテコール、エチルガレート、プロピルガレート、オクチルガレート、ラウリルガレート、セチルガレート、β−ナフトール、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキジベンジル)ベンゼン、1,6−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]ヘキサン、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]スルフィド、n−オタタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルアミノ]ヘキサン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−メチルフェノール、ビス[S−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)]チオテレフタレート、1,1,3−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン等が挙げられる。なお、これらの化合物は1種でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0036】
該フェノール系酸化防止剤の配合量は、好ましい上限は1.0重量部以下、特に好ましくは0.8重量部以下、一方好ましい下限は0.01重量部以上、特に好ましくは0.02重量部以上である。配合量が0.01重量部未満では、加工時の熱劣化を抑制する効果が得られ難く、また、1.0重量部を越えると熱劣化を抑制する効果は飽和し経済的でない
【0037】
本発明で使用する有機亜リン酸エステル系化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス[デシルポリ(オキシエチレン)]ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ(デシル)チオホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、フェニル・ビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、フェニル・ジイソデシルホスファイト、テトラデシルポリ(オキシエチレン)・ビス(エチルフェニル)ホスファト、フェニル・ジシクロヘキシルホスファイト、フェニル・ジイソオクチルホスファイト、フェニル・ジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソオクチルホスファイト、ジフェニル・2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルフェニルホスファイト、ジフェニル・(トリデシル)チオホスファイト、ノニルフェニル・ジトリデシルホスファイト、フェニル・p−tert−ブチルフェニル・ドデシルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ビス[オタデシルポリ(オキシエチレン)]ホスファイト,オクチルポリ(オキシプロピレン)・トリデシルポリ(オキシプロピレン)ホスファイト、モノイソプロピルホスファイト、ジイソデシルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、モノイソオクチルホスファイト、ジドデシルホスファイト、モノドデシルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、モノシクロヘキシルホスファイト、モノドデシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、ビス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、モノシクロヘキシル・フェニルホスファイト、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、テトライソオクチル・4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、テトラキス(ノニルフェニル)・ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピルジホスファイト、テトラトリデシル・プロピレンオキシプロピルジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキシルジホスファイト、ペンタキス(ノニルフェニル)・ビス[ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピル]トリホスファイト、ヘプタキス(ノニルフェニル)・テトラキス[ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピル]ペンタホスファイト、ヘプタキス(ノニルフェニル)・テトラキス(4,4’−イソプロピリデンジフェニル)ペンタホスファイト、デカキス(ノニルフェニル)・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、デカフェニル・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、ビス(ブトキシカルボエチル)・2,2−ジメチレン−トリメチレンジチオホスファイト、ビス(イソオクトキシカルボメチル)・2,2−ジメチレントリメチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・エチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・ヘキサメチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・2,2’−オキシジエチレンジチオホスファイト、ペンタドデシル・ジ(ヘキサメチレン)トリチオホスファイト、ジフェニルホスファイト、4,4’−イソプロピリデン−ジシクロヘキシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェニル・アルキル(C12〜C15)ホスファイト、2−tert−ブチル−4−[1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキジフェニル)イソプロピル]フェニルジ(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル・2,2−ジメチレントリメチレンジホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、ヘキサトリデシル・4,4’,4”−1,1,3−ブタントリイル−トリス(2−tert−ブチル−5−メチルフェニル)トリホスファイト、トリドデシルチオホスファイト、デカフェニル・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタボスファイト、ジブチル・ペンタキス(2,2−ジメチレントリメチレン)ジホスファイト、ジオクチル・ペンタキス(2,2−ジメチレントリメチレン)ジホスファイト、ジデシル・2,2−ジメチレントリメチレンジホスファイト並びにこれらのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルジウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウムの金属塩が挙げられる。なお、これらの化合物は1種でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
有機亜リン酸エステル系化合物の配合量は、好ましい上限は3.0重量部以下、特に好ましくは2.0重量部以下であり、好ましい下限は0.01重量部以上、特に好ましくは0.02重量部以上である。配合量が0.01重量部未満では、加工時の熱劣化を抑制する効果が得られ難いことがあり、また、3.0重量部を越えると熱劣化を抑制する効果は飽和し経済的でない場合がある。
【0039】
本発明のポリエステル樹脂を使用してカレンダー加工によりシートを作成する場合、ロールからの溶融シートの離型性を高めるために、当該ポリエステル樹脂に滑剤を配合する必要がある。
【0040】
本発明に用いられる滑剤の配合量は0.01〜5重量部であることが望ましい。好ましい下限は0.05重量部、より好ましい下限は0.1重量部、さらに好ましい下限は0.2重量部である。また好ましい上限は4.5重量部、より好ましい上限は4重量部、さらに好ましい上限は3.5重量部である。滑剤の量が0.01重量部未満ではロール離型性の向上効果が得難いことがあり、5重量部を越えると加工で得られたシートの透明性、着色、印刷性が低下する傾向を示す。
【0041】
本発明に用いられる滑剤としては、ポリオレフィン系ワックス、有機リン酸エステルの金属塩、有機リン酸エステル、アジピン酸またはアゼライン酸と高級脂肪族アルコールとのエステル化合物、エチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどの脂肪酸アマイド、グリセリン高級脂肪酸エステル化合物、ペンタエリスリトール高級脂肪酸エステル化合物、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、石油または石炭より誘導されるパラフィン、ワックス、天然または合成された高分子エステルワックス、高級脂肪酸による金属石鹸等が挙げられる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。特にポリオレフィン系ワックスおよび/または有機リン酸エステルの金属塩を使用するのがロールからのシートの離型性と出来たシートの透明性が両立しやすく好ましい。
【0042】
本発明で滑剤として使用するポリオレフィン系ワックスには、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びこれらの誘導体が挙げられ、当該誘導体としては、アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、マレイン酸といった他のモノマーとの共重合体及び部分的に酸化した分解型がある。
【0043】
本発明で滑剤として使用する有機リン酸エステルの金属塩としては、例えば、下記一般式(III)で表される有機リン酸エステルの金属塩および/または下記一般式(IV)で表される有機リン酸エステルの金属塩が挙げられる。
【0044】
式(III):
[{RO(CfH2fO)n}3-a-oPO(O)a(OH)e]d{M(OH)b}c
〔式中、Rは炭素数4〜30の炭化水素基を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、ZnまたはA1を表し、aは1または2を表し、eは0または1を表し(但し、aが1のときは0または1、aが2のときは0である。)、bは0〜2を表し、cは1または2を表し、dは1〜3を表し、fは2または3を表し、nは0〜60を表し、また、a、b、c、dは金属(M)の価数(以下、mと記載する)との間に次の関係を有する。m=1のとき、b=0,d=1,a=c,m=2のとき、b=0,c=1,a×d=2、または、b=1,d=1,a=c,m=3のとき、b=0,d=3,a=c,b=1,c=1,a×d=2、または、b=2,d=1,a=cであり、さらに、m≧2のとき、金属(M)には互いに異なるホスフェートイオン基が結合していてもよく、その場合に、d=2または3は互いに異なるホスフェートイオン基の合計数である。また、dが2または3のとき、それぞれの[ ]内の構造は互いに同一でも異なっていてもよい。〕
【0045】
式(IV):
[{R1O(CfH2fO)n}3-a-ePO(O)a(OH)e]d{M(OCOR2)s(OH)x }t
〔式中、R1は炭素数4〜30の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜25のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、ZnまたはA1を表し、aは1または2を表し、eは0または1を表し(但し、aが1のときは0または1、aが2のときは0である。)、dは1または2を表し、sは1または2を表し、xは0または1を表し、tは1または2を表し、fは2または3を表し、nは0〜60を表す。また、s+x=1または2であり、a,d,s,tは金属(M)の価数(以下、mと記載する)との間に次の関係を有する。m=2のとき、s=1,d=1,a=tであり、m=3のとき、s=1,t=1,a×d=2、または、s=2,d=1,a=tであり、さらに、m=3のときは、金属(M)には互いに異なるホスフェートイオン基が結合していてもよく、その場合に、d=2は各種ホスフェートイオン基の合計数を意味する。また、dが2のとき、それぞれの[ ]内の構造は互いに同一でも異なっていてもよい。〕
【0046】
上記一般式(III)中のRで表される炭素数4〜30の炭化水素基および一般式(IV)中のR1で表される炭素数4〜30の炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基、アリールアルキル基、アルゲニル基またはアルキルフェニル基が好ましい。また、一般式(III)および一般式(IV)中のMで表されるアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K等が好ましく、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Ca、Ba等が好ましい。
【0047】
当該一般式(III)で表される有機リン酸エステルの金属塩および当該一般式(IV)で表される有機リン酸エステルの金属塩は常法により製造することができ、その製造方法に関しては特に制限されない。
【0048】
一般式(III)で表される有機リン酸エステルの金属塩の好ましい例としては、例えば、下記表1に示す化合物(1)〜化合物(13)、下記表2に示す化合物(14)〜化合物(16)等が挙げられ、一般式(IV)で表される有機リン酸エステルの金属塩の好ましい例としては、例えば、下記表2に示す化合物(15)〜化合物(26)が挙げられる。これらは1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0049】
なお、これらの化合物(化合物(1)〜化合物(26))は、ポリエーテルアルコール成分おけるオキシエチレン単位またはオキシトリメチレン単位の繰り返し数が小数を含む数で示されているように、単体またはポリエーテルアルコール成分におけるオキシエチレン単位またはオキシトリメチレン単位の繰り返し数(式中の(ClH2lO)nの繰り返し数(n))が異なる複数のリン酸エステル金属塩の混合物である。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、用途に応じて他の成分も適宜添加することができる。例えぱ、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、エボキシ化合物、架橋剤等があげられる。
【0052】
本発明のカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物は、前記の成分をヘンシェルミキサー等の公知の混合撹拌装置を用いて混合し、該混合物をバンバリーミキサー、ミキシングロール、ウォーミングロール等で混練して、カレンダー加工に供される。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物をカレンダー加工する際のロール温度は、特に限定されないが、160〜200℃程度が好ましく、特に好ましくは170〜190℃程度である。
【0054】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、カレンダー加工において180℃の加熱ロールへの粘着時間(混練開始から実質的に組成物が加熱ロールに粘着してしまうまでの時間)が15分以内という、優れたロール離型性を有する。
【0055】
また、本発明のポリエステル組成物は、カレンダー加工により0.7mm厚とした際のヘーズが15%以下という、従来のポリエステル樹脂組成物では達成できなかった、カレンダー加工適正(加工後シートの高い透明性)を有する。
【0056】
本発明のポリエステル樹脂組成部をカレンダー加工して得られるシートの厚みは、シートの用途によっても異なるが、一般に10〜1000μm、好ましくは30〜800μmである。なお、ここでの「シート」とは、一般に「フィルム」と呼ばれることが多いような薄厚のものも包含する概念で用いている。
【0057】
本発明のシートは、食品、化粧品、飲料用のシュリンクラベル、保香性ヒートシールフィルム、耐油性多層シート、建材用シート、食品包装用シート、ブリスターパック用シート、文具用シート等に好適であり、特に高い透明性が要求される建材用シート、食品包装容器用シート、ブリスターパック用シート、文具用シートに好適である。また、透明性が高いこと以外に、非晶性ポリエステルを使用していることから、熱可塑化しやすく、加工が比較的容易であるという利点を有するので、印刷が施される化粧板シートに有用である。
【0058】
【実施例】
本発明を更に詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
合成例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
樹脂組成:樹脂を重クロロホルムに溶解し、H−NMRにより定量した。
ガラス転移温度:示差走査熱量計を用い、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し20℃/minの昇温速度で測定した。
数平均分子量:ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いてゲル浸透クロマトグラフィによりポリスチレン換算値として求めた。
酸価:クロロホルム30mlに樹脂1gを溶解し、0.1N水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して求めた。指示薬はフェノールフタレインを用いた。
【0059】
<非晶性ポリエステル(A)の合成例>
撹拌機、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内にテレフタル酸ジメチル960重量部、エチレングリコール580重量部、ネオペンチルグリコール170重量部、テトラブチルチタネート0.34重量部加え、170〜220℃で2時間エステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、反応系を220℃から270℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧してゆき、60分かけて500Paとした。そしてさらに130Pa以下で50分間重縮合反応を行い、非晶性ポリエステル(A)を得た。
【0060】
非晶性ポリエステル(A)はNMR分析の結果、ジカルボン酸成分はテレフタル酸100モル%、ジオール成分はエチレングリコール75モル%、ネオペンチルグリコール25モル%の組成を有していた。またガラス転移温度は78℃、数平均分子量は26000、酸価27当量/106gであった。
非晶性ポリエステル(B)〜(E)は、非晶性ポリエステル(A)と同様にして製造を行った。組成、及び測定結果を表3に示す。(数値は樹脂中のモル%)
【0061】
【表3】
【0062】
<実施例および比較例>
表3に示したポリエステルを表4、5に示した各成分とビーカー内で混合し、該混合物を180℃に設定した2本の6インチチルドロール上で混練した。時折へらでチルドロールに付着した樹脂を剥がしながら混合し、5分混練後、ロール間隔を0.3mmに設定(シート厚み0.3mm設定)し、溶融シートをロールから30cmの距離まで引き取り、その際のたれを目視で観察することにより、シート引き取り性を評価した。またその際のロールからのシートの剥離性も評価した。尚評価基準は以下の通りである。
【0063】
シート剥離性:
○−ロールからの剥離性良好、
×−ロールへの粘着性が強く、剥離が困難で、正常なシートが採取できないシート引き取り性:
◎−たれが全く生じない、
○−わずかにたれが発生するが実用上差し支えない、
×−溶融シートが自重でたれてしまい、正常なシートが採取できない
【0064】
さらに、シートの透明性も以下のように評価した。
上記のシート引き取り性、およびシートの剥離性(ロール離型性)の評価で使用したものと同様の2本のテストロールを用いて、上記と同様の混練を行い、5分後にロール間隔を0.5mmに設定して、シート厚み0.5mmのシートを得た。シートの表面の平滑性を高めるためと厚みを一定にするために、得られたシートを13cm×13cmの大きさに切り、2枚重ねてフェロタイププレート(ステンレスハードクローム)の間に挟んだ。次に180℃、90秒、12N/cm2の条件でプレスして急冷し、0.7mm厚の評価サンプルを得た。
ヘイズの測定:上記評価サンプルを3cm×3cmの大きさに切断し、試験片とした。その試験片を日本電子工業株式会社製ND−Σ80型を使用し、測定した。ヘイズ値が小さいほど透明性が良好であり、ヘイズが15%以下を合格(○)とし、15%を越えるものを不合格×とした。
【0065】
その結果を表4、5に示す。シート引き取り性、透明性評価の欄の内、−はシート剥離性が悪く正常なシートが採取できないため、評価未実施であることを示す。
【0066】
尚、表4、5に記載された安定剤及び滑剤は以下化合物を意味する。
a:トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート
b:ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)
c:テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
d:ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート
e:トリデシルポリ(オキシエチレン)ホスフェート亜鉛塩
f:スチレン変性ポリエチレンワックス
また表中のポリエステル量、酸化防止剤量、滑剤量における数値は重量部である。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリエステル樹脂組成物は、非晶性ポリエステル、酸化防止剤、滑剤を組み合わせた組成物であって、このため過去に難しかったポリエステル樹脂組成物をカレンダー加工する際のロールからのシート離型性はもとより、カレンダーロールから冷却ロールへの溶融シートの引き取り性に極めて優れた特性を持ち、しかも出来上がったシートの透明性が良好である優れた品質のカレンダーシート加工を可能にすることができる。また、加工して得られるシートはポリエステルが有する良好な物理的性状を備えると共に、透明性が高く、しかも内部攪乱物質の疑いのある可塑剤を含まないので、安全性が高く、さらに非晶性ポリエステルを使用していることから、後加工も比較的容易である。
Claims (4)
- 非晶性ポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、かつ、前示カルボン酸成分あたりイソフタル酸成分を5〜50モル%含むか、または、全ジオール成分あたりネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールから選ばれる1種または2種以上のジオールを5〜50モル%含む、共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物。
- 非晶性ポリエステルが、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、かつ、全ジオール成分あたり、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールから選ばれる1種または2種以上のジオールを5〜50モル%含むことを特徴とする請求項1または2記載のカレンダー加工用ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物をカレンダー加工して得られたシート。
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