JP3661277B2 - 膜分離方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は膜分離方法に係り、特に、原水を逆浸透(RO)膜分離装置に通水して処理するに当り、RO膜のスライム汚染を防止して、長期に亘りRO膜性能を高く維持する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
逆浸透膜分離装置等の膜分離装置は、各種水処理に広く用いられている。これらの用途に供される分離膜は、処理を継続して行うことにより、原水中の微生物により、膜面にスライムが付着、増殖し、これにより、透過水量の低減、差圧の上昇、膜分離効率の低下が起こり、著しい場合には、膜の閉塞で処理が不可能になるという問題がある。
【0003】
このような膜のスライム汚染を防止するために、殺菌剤として塩素(Cl2 )等の酸化剤を添加する場合があるが、酸化剤による酸化で劣化し易いRO膜には、酸化剤を使用することはできない。
【0004】
このため、定期的に薬品(クエン酸等の酸、アルカリ)によるRO膜の洗浄を行ってスライムを除去することが必要とされている。
【0005】
また、重亜硫酸ソーダ(NaHSO3 )を1回/1日の頻度で500〜1000mg/Lの濃度となるように、30分程度添加してRO膜分離装置内の殺菌が行われる場合もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、薬品洗浄による膜性能の回復は十分ではない上に、運転を停止して薬品洗浄を行うことは、薬品コストの面からも運転効率の面からも好ましいことではない。
【0007】
また、重亜硫酸ソーダの添加では、十分なスライム防止効果を得ることはできない。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、膜分離装置のスライム汚染を防止して、長期に亘り膜性能を高く維持する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の膜分離方法は、原水を膜分離装置に通水して処理する方法において、原水に銀イオンを添加し、膜分離装置からの濃縮水から銀イオンを回収し、回収した銀イオンを原水に添加するとともに、銀イオンを除去した濃縮水を系外へ排出することを特徴とするものである。
【0010】
銀イオン(Ag+ )は、微生物の細胞内のSH基を有する酵素と反応して、微生物の増殖を防止し、スライムの付着を抑制する。本発明においては、原水に銀イオンを添加して膜のスライム汚染を防止すると共に、膜分離装置の濃縮水から銀イオンを回収して再利用するため、薬品コストを低く抑えることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の膜分離方法を詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の膜分離方法の実施の形態を示す系統図である。
【0013】
本実施例においては、原水に銀イオンを添加した後、ポンプP1 でRO膜分離装置(以下「RO装置」と称す。)1に通水してRO膜分離処理し、透過水を処理水として系外へ排出する。
【0014】
ここで、銀イオンの添加には、各種銀塩を用いることができるが、取り扱い性の面から硝酸銀(AgNO3 )を用いるのが好適である。また、この銀イオンの添加濃度は、20〜30ppb程度とするのが好ましい。銀イオンは著しく殺菌性が高いため、このような低濃度添加でも十分にスライム防止効果を得ることができる。
【0015】
一方、RO装置1の濃縮水はイオン交換塔2に通水して濃縮水中に含有される銀イオンを吸着除去した後、系外へ排出する。
【0016】
このような処理を所定時間継続した後は、イオン交換塔2への濃縮水の通水を停止してイオン交換塔2の再生を行う。
【0017】
ここで、イオン交換塔2に充填するイオン交換塔としては、Ag+ の吸着能を有するものであれば良く、一般にはキレート樹脂、イオン交換樹脂等が用いられる。
【0018】
このイオン交換塔2の通水条件は、銀イオンの回収効率の面からSV=5〜15hr-1程度とするのが好ましい。
【0019】
また、イオン交換塔2の再生剤としては、銀イオンを添加濃度として20〜30ppb程度溶出できるものであれば何でも良く、例えば、硝酸、硫酸が使用できる。通常の場合、2〜10重量%程度のHNO3 水が好適に使用され、これをSV=1〜3hr-1で1〜5BV程度通水して再生処理するのが好ましい。
【0020】
イオン交換塔2の再生で得られた再生排水は貯槽3に送給される。この貯槽3の銀イオンを含む再生排水を、ポンプP2 によりRO装置1の原水に添加する。これにより、回収した銀イオンが原水の殺菌に再利用される。
【0021】
この再生排水の添加だけでは原水に添加する銀イオン量が不足する場合には、適宜不足分を原水に添加する。
【0022】
この方法によれば、原水に銀イオンを添加してRO装置1に通水するため、銀イオンの殺菌作用でRO膜のスライム汚染を効果的に防止することができる。また、添加した銀イオンは、RO装置1の濃縮水を処理するイオン交換塔2で回収して再利用することができる。
【0023】
このような本発明の膜分離方法は、特に、酸化劣化し易く、Cl2 等の酸化剤の使用が不可能なRO膜分離装置による処理に極めて有効である。
【0024】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
実施例1
市水を活性炭処理して含有されるCl2 を除去した後砂濾過処理した水を、原水として図1に示す方法に従ってRO膜分離処理した。
【0026】
原水にはAg(NO3 )をAg+ イオンとして20〜30ppbとなるように連続的に添加して、供給量1200L/hr,供給圧力20kgf/cm2 でRO装置に通水して、濃縮水1080L/hrと透過水120L/hrを得た。
【0027】
このRO装置の濃縮水をキレート樹脂「エポラスZ−7」(ミヨシ油脂社製)72Lを充填したイオン交換塔にSV=15hr-1で通水して、濃縮水中のAg+ イオンを回収した。このイオン交換塔は8000hrに1回の割合で5重量%のHNO3 水をSV=2hr-1で3BV通水して再生した。この再生時のキレート樹脂のAg+ イオンの吸着量は4g/L−樹脂であった。
【0028】
再生により得られた再生排水はAg+ イオンを0.1重量%含むものであり、この再生排水は貯槽に貯留した後、原水に添加した。
【0029】
このRO膜分離処理を12000hr継続したところ、RO装置の透過水量は108L/hrであり、運転開始時の120L/hrに対して、低下の度合は小さかった。
【0030】
なお、原水には、RO装置の濃縮水から回収したAgNO3 を添加すると共に、不足分のAgNO3 を別途添加するようにしたが、12000hrの運転期間中、補充したAgNO3 量は120gであった。
【0031】
比較例1
実施例1において、原水へのAg+ イオンの添加を行わなかったこと以外は同様にして処理を行ったところ、12000hrの運転継続後には透過水量は運転開始時の120L/hrから90L/hrに大きく低下した。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の膜分離方法によれば、膜のスライム汚染を防止して、膜性能を高く維持することができるため、長期に亘り安定かつ効率的な膜分離処理を行うことができる。しかも、本発明によれば、銀イオンを回収して再利用するため、薬品コストの低減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膜分離方法の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 RO装置
2 イオン交換塔

Claims (3)

  1. 原水を膜分離装置に通水して処理する方法において、原水に銀イオンを添加し、膜分離装置からの濃縮水から銀イオンを回収し、回収した銀イオンを原水に添加するとともに、銀イオンを除去した濃縮水を系外へ排出することを特徴とする膜分離方法。
  2. 請求項1において、濃縮水をイオン交換塔に通水することで濃縮水から銀イオンを回収し、該イオン交換塔の再生排水を原水に添加することで回収した銀イオンを原水に添加することを特徴とする膜分離方法。
  3. 請求項1または2において、原水に、濃縮水から回収した銀イオンを添加するとともに、不足分の銀イオンを別途添加することを特徴とする膜分離方法。
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